IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エスの特許一覧

<>
  • 特許-多孔質膜センサ組立体 図1
  • 特許-多孔質膜センサ組立体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】多孔質膜センサ組立体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240205BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240205BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20240205BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G01N33/48 H
G01N21/05
G01N35/08 A
G01N33/49 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022538174
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020087498
(87)【国際公開番号】W WO2021123442
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】PA201901514
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ケーア,トマス
(72)【発明者】
【氏名】アナスン,ヴィリ・リネゴー
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/197308(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/124001(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/069656(WO,A1)
【文献】特表2008-505324(JP,A)
【文献】特表2018-533011(JP,A)
【文献】特表2018-533012(JP,A)
【文献】Nam-Trung Nguyen and Zhigang Wu,TOPICAL REVIEW; Micromixers - a review,Journal of Micromechanics and Microengineering,,2004年12月08日,Volume 15, Number 2,R1-R16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 21/05
G01N 35/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合流体試料を分析するセンサ組立体であって、
前記複合流体試料を保持するための試料チャンバであって、チャンバ壁によって画定され、前記試料チャンバ内における流体処理のために入口から出口への流れの方向を画定する前記入口および前記出口を有する、試料チャンバ
を備え、
前記試料チャンバは、第1の試料空間および第2の試料空間を備え、
前記第2の試料空間は、分析物を検出する多孔質膜センサ素子を備え、
前記多孔質膜センサ素子は、前記流体試料に接触するセンサ面を画定する前面を有する多孔質膜を備え、前記センサ面は、前記第2の試料空間の方を向いており、前記多孔質膜は、前記センサ面にある各開口部から前記多孔質膜の中に延びる行き止まりの細孔を備え、前記細孔は、前記分析物に関して、前記第2の試料空間との拡散性流体連通のために構成され、
前記試料チャンバは、
前記第1の試料空間と前記第2の試料空間との間で、前記第2の試料空間の上流に配置される流れを乱す要素
をさらに備え、
前記第1の試料空間は、それぞれのさらなる分析物を検出する1つまたは複数のさらなるセンサ素子を備え、
前記流れを乱す要素は、前記第2の試料空間の送りチャンネルを前記第1の試料空間の下流端に接続する接続ノズルとして形成される、センサ組立体。
【請求項2】
前記多孔質膜センサ素子は、高分子量分析物を検出するように構成される、請求項1に記載のセンサ組立体。
【請求項3】
前記流れを乱す要素は、前記試料チャンバの幾何学的形状における急激な変化として形成される、請求項1または2に記載のセンサ組立体。
【請求項4】
前記流れを乱す要素は、前記第1の試料空間を形成する試料チャンネルの主軸に対してある角度で配置された接続ノズルとして形成され、前記角度は、前記主軸に対して少なくとも30度、少なくとも40度、少なくとも50度、少なくとも70度、または約90度である、請求項1からのいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項5】
前記流れを乱す要素は、前記第2の試料空間の入口穴から少なくとも0.3mm、0.5mm、1mm、および/または3mmまで、5mmまで、または10mmまでの距離で前記第2の試料空間の上流に位置する、請求項1からのいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項6】
前記センサ面は、平面である、請求項1からのいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項7】
前記センサ面は、前記試料チャンバの前記第2の試料空間内の流体処理のための前記入口から前記出口への前記流れの方向に平行に配置される、請求項1からのいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項8】
前記第2の試料空間は、上壁、前記上壁とは反対側の底壁、および前記上壁と底壁とを接続する周壁によって画定された円筒形状を有し、送り穴は、前記第2の試料空間の上流端に配置され、排出穴は、前記第2の試料空間の下流端に配置され、前記多孔質膜センサ素子は、前記第2の試料空間の前記上壁に配置される、請求項1からのいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項9】
前記送り穴および前記排出穴は、互いに対向して前記周壁に配置される、請求項に記載のセンサ組立体。
【請求項10】
前記上壁から前記底壁への方向において見られるときの前記第2の試料空間の高さは、前記第2の試料空間の横断寸法の2分の1未満、または3分の1未満、または5分の1未満、またはさらには10分の未満である、請求項またはに記載のセンサ組立体。
【請求項11】
前記底壁は、前記第2の試料空間の周辺部と比較して、前記第2の試料空間の中央部における前記上壁からの前記底壁の距離を減少させるように湾曲している、請求項から10のいずれか一項に記載のセンサ組立体。
【請求項12】
前記多孔質膜センサ素子は、光プローブによって前記分析物を検出するように構成される、請求項1から11のいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項13】
前記多孔質膜は、半透明膜である、請求項1から12のいずれかに記載のセンサ組立体。
【請求項14】
多孔質膜センサは、前記半透明膜の前面に配置された反射層をさらに備える、請求項13に記載のセンサ組立体。
【請求項15】
前記多孔質膜は、半透明膜であり、多孔質膜センサは、
前面に背を向けた前記半透明膜の後面に接続され、前記後面を通じて前記半透明膜のプローブ領域へプローブ光を送るようになされた光入力ポートと、
前記半透明膜の前記後面に接続され、前記後面を通じて前記半透明膜から光応答を集めるようになされた光出力ポートと
をさらに備える、請求項12から14のいずれか一項に記載のセンサ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一態様では、1つまたは複数の分析物に関して複合流体試料を分析するセンサ組立体であって、複合流体試料を保持する試料チャンバを備えるセンサ組立体に関する。さらなる態様によれば、本発明は、試料チャンバ中に存在する複合流体試料の連続的な部分中の高分子量成分を検出するセンサ組立体に関する。さらなる態様によれば、本発明は、試料チャンバ中に配置された多孔質膜センサを備えるセンサ組立体に関する。さらなる態様によれば、本発明は、多孔質膜センサを備える試料チャンバ中に存在する複合流体試料の連続的な部分中の高分子量成分を検出するセンサ組立体に関する。さらなる態様によれば、本発明は、多孔質膜センサを備える試料チャンバ中に存在する複合流体試料の連続的な部分中の高分子量成分を検出し、試料チャンバ中に配置されたさらなるセンサによって同じ複合流体試料のさらなる分析物を検出するセンサ組立体に関する。またさらなる態様によれば、少なくとも高分子量成分は、光プローブによって検出される。
【背景技術】
【0002】
連続的な部分および不連続的な部分を含む複合流体中の分析物の検出は、難しいが頻繁に遭遇する測定問題である。典型的には、測定は、例えば濾過、沈殿、および/または遠心分離による分離を含む試料調製の各ステップ、ならびに問題になっている分析物に対して感度がよい化学的な指示反応および/または物理的相互作用を用いた続く検出測定ステップを含む。この文脈における難解な課題は、しばしば、特に、利用可能な試料の体積が小さい場合、および分析される流体が非常に複雑である場合、測定を損なうことなく、適切な試料の検出のための調製および提示にある。その上、そのような状況においては非常に頻繁に、複数のパラメータが同じ試料に対して決定され、これは、分析物の検出のための所与の測定と他のパラメータの測定とを統合することに関するさらなる制約を課す。
【0003】
したがって、同じ試料の複数のパラメータを決定するための他の測定技法との簡単な統合にさらに適合している複合流体中の分析物の選択的検出を可能にする非常に感度がよいが単純で高速の技法が必要とされている。さらに、所望の技法は、検出測定のための分析物の穏やかな分離、抽出、および/または隔離を、すなわち、分析される流体の残りの部分を損なうことなく、提供するために必要とされる。
【0004】
そのような検出技法は、食品産業から廃水処理にわたって製薬応用および医療装置までに及ぶ様々な産業に関連し、そこでは、知られている技法は、しばしば大きい試料体積と時間がかかる分析手順を必要とする。
【0005】
そのような測定技法の応用についての一例は、患者の血液試料などの体液中の分析物の検出に関連している。分析物は、光、例えば、分光測光法によって検出可能である体液分析のための研究室の試験パラメータのいずれかであり得る。血液の分析における干渉源の1つとして、溶血は、血液パラメータ分析装置において決定されるようないくつかの血液パラメータの測定に影響を及ぼし得る。したがって、血液試料中の遊離ヘモグロビンのレベルを無視することは、気づかない人を誤った方向に導く可能性があり、結果として、影響を受けた血液パラメータ値に基づいて間違った診断を与える。しかしながら今までのところ全血試料の血漿部分中に存在する遊離ヘモグロビンのレベルを確実に決定することは、血漿部分を細胞成分から分離し、続いて分離された血漿部分を分析することを必要とする複雑なプロセスを伴った。そのような手順は、時間がかかり、幼児における血液パラメータの連続しているモニタリングを用いて新生児ケアなどにおけるとても小さい試料だけが一度に利用可能である場合に法外に高いものであり得る。全血中の血漿部分に存在する成分を測定する他の手法は、マイクロ流体デバイス内の専用測定における血漿部分の分析前に、例えばマイクロ流体デバイス内で、マイクロ濾過技法により細胞成分から血漿部分の分離することを伴う。例えば、Archibongらによる、Sensing and Bio-Sensing Research 3(2015),p.1~6に刊行された最近の科学記事は、全血試料から分離された血漿部分を光学的に分析する小型測定チャンバを開示する。このタイプのデバイスでは、小型マイクロ流体チャンバが、光ファイバのインタフェースに取り付けられる。マイクロ流体チャンバの底部は、流体および化学化合物がデバイスの内側に流れると同時に、望まない粒子を濾過して除去することを可能にする多孔質膜からなる。濾過液を受け入れるマイクロ流体チャンバの内側は、直角入射反射ジオメトリの単一光ファイバによって光学的にプローブすることができる。しかしながら、詰まりの問題により、開示されたデバイスは、測定後の試料の完全な洗い落としが、難しくまたは少なくともとても時間がかかり、後の試料間の相互汚染というさらなる危険を冒す信頼できないものであり得るので、連続および反復する使用にではなく使い捨て用品として最も役立つ。さらに、この特定のタイプのデバイスでは、濾過液をプローブするための光路の変更という結果になる濾過膜の圧力により引き起こされる変形により、光プローブから定量的な結果を得るためのさらなる課題が生じ得る。
【0006】
さらなる例、すなわち、乳業などの食品産業における用途では、濾過および検出の大部分の伝統的な方法は、試料にとって有害であるとともに同じ試料に対して実行される統合された複数パラメータの測定に不適合である比較的大きい試料体積を必要とするとともに時間がかかる測定手順を伴うという上述した欠点を有する残留物の目視検査、分光測定、または細菌計数のために濾紙、漉し器などを含む。同様の課題は、廃水分析および処理などの環境技術の分野でも遭遇し、そこでは、濾過および検出の最も伝統的な方法は、残留物の分光測定および細菌計数のために濾紙、漉し器などを含む。
【0007】
濾過に基づく手法は、例えば全血試料を分析するために使用されるときに、いくつかの欠点を有する。濾過装置は、濾過器の細孔を通じて試料フィードから濾過液分析/測定チャンバへの少なくとも濾過液の流体の流れに本来的に頼る。通過流の幾何学的形状において、残余分(ここでは、赤血球細胞)は、徐々に濾過細孔を詰まらせる。交差流の幾何学的形状では、残余分は、濾過膜の表面に沿ってもたらされ、特にシステムが反復使用(10~100回を超えるサンプル)を意図する場合、これによって詰まりに関する問題を軽減するが、除去することはない。交差流の幾何学的形状は、残余分と濾過装置の表面との間に摩擦および剪断相互作用も引き起こす。
【0008】
これらの問題に対処する改善された分離および測定技法は、出願人によって同時係属の国際特許出願WO2017/085162A1、WO2017/085180A1、およびWO2019/197308A1に開示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
やはり、特に難しい応用分野は、ポイントオブケア構成における体液の分析である。動脈血の分析などのために体液試料中の複数のパラメータを分析する現代のポイントオブケア分析装置は、ほんの数例を挙げると、患者の安全性の厳しい要件および制約、使用者の使いやすさ、1分以下の範囲内の短い測定時間、信頼性/再現性、定量的出力の精度、ならびに品質管理システムおよび医療測定機器向けの安全性の指令の遵守の対象となる。正確で適合した結果が、上述した要件および制約と一致するとても少量の試料流体(典型的には、100μl未満、またはさらに50μl未満)について得られなければならない。したがって、最も先進のポイントオブケア分析システムは、コンパクトなセンサ組立体をそのコアに有する自動化流体処理および測定インフラのまわりで設計されている。そのようなセンサ組立体は、反復使用のためであり、典型的には、壁の少なくとも1つに直接一体化された小型化高精度センサを有する試料チャンバ壁によって画定された試料空間を有する。そのような体液用のセンサ組立体の一例は、例えば、欧州特許明細書EP2147307B1に開示されている。EP2147307B1のセンサ組立体は、血液パラメータなどの体液試料中の複数の異なるパラメータを同時に測定するのに特に適している電気化学センサ素子および光学センサ素子を備える。したがって、複合流体中の分析物に関する非常に感度がよく、単純で、選択的な検出についての上述した必要性を満たす新しい測定技法が、ミリメートル範囲の試料チャンネル幅、およびサブミリメートル範囲の試料チャンネル高さを有するそのようなセンサ組立体と統合するのに適しているべきであることが望ましい。
【0010】
光プローブにより流体試料中の分析物を検出するデバイスは、本出願人による上述した出願WO2019197308A1に説明されており、多孔質センサ素子は、流体試料を保持するために備える試料チャンバのチャンバ壁に配置される。センサ面は、開いた細孔を有し、流体試料に接触するように試料チャンバの方を向き、拡散によって複合流体試料の少なくとも連続的な部分から細孔内で分析物を受け入れる。
【0011】
本発明の長所の1つは、複合流体中の分析物を検出する多孔質膜デバイスを動作させるときに得られる測定の正確さ、再現性、および信頼性は、複合流体試料から多孔質膜の細孔の中への問題になっている分析物の拡散輸送によって強く影響を受ける可能性があり、光プローブによる実際の測定が行われるという知見の中にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、体液用の自動化されたポイントオブケア分析システム内での統合を容易にする小型化された手法で実施できる、高速かつ信頼できる応答を用いて流体中の分析物を検出するための、改善された装置および方法が依然として必要とされている。より一般的には、流体分析システムにおける、特に、同じ流体試料に関する複数のパラメータを測定するための分析システムにおける、小型化および統合に対して適合された、高速かつ信頼できる応答を用いて、全血試料などの複合流体の一部における物質を検出するための、改善された装置および方法が依然として必要とされている。
【0013】
したがって、一態様によれば、本発明の目的は、複合流体の連続的な部分中の分析物を特に検出するための、例えば、全血試料の血漿部分中の分析物を検出するための、知られている装置、センサ、システム、および/または方法の欠点のうちの少なくともいくつかを克服する、改善された検出装置および/または方法を提供することである。さらなる態様によれば、本発明の目的は、センサ組立体と統合するために小型化することができる、そのような検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様によれば、本発明は、複合流体試料を分析するセンサ組立体に関し、このセンサ組立体は、複合流体試料を保持するための試料チャンバであって、チャンバ壁によって画定され、試料チャンバ内における流体処理のために入口から出口への流れの方向を画定する入口および出口を有する試料チャンバを備え、試料チャンバは、第1の試料空間および第2の試料空間を備え、第2の試料空間は、分析物を検出する多孔質膜センサ素子を備え、多孔質膜センサ素子は、流体試料に接触するセンサ面を画定する前面を有する多孔質膜を備え、センサ面は、第2の試料空間の方を向いており、多孔質膜は、センサ面にある各開口部から多孔質膜の中に延びる細孔を備え、細孔は、分析物に関して、第2の試料空間との拡散性流体連通のために構成され、試料チャンバは、第1の試料空間と第2の試料空間との間で第2の試料空間の上流に配置される流れを乱す要素をさらに備える。
【0015】
(当技術分野で『ベッドサイト(bedsite)』システムとも呼ばれる)ポイントオブケア測定システム、および同様に研究室環境の文脈において、血液ガス分析は、
血液ガス分析装置の使用において訓練を受けた使用者ではない可能性がある、看護師などの使用者によってしばしば引き受けられる。詳細には、血液ガス分析の入口構造に注射器または毛細管などの手持ち式血液試料容器を使用者が正しく配置することが、血液ガス分析装置の中への血液試料の吸い出しにおいて困難な状況を構成することが分かっている。入口構造に対する血液試料容器の不正確な配置および位置合わせは、使用者の日常のワークフローにおける悩ましい遅延および/またはフラストレーションをもたらし得るだけでなく、血液試料の損失、または血液ガス分析装置もしくはその周囲の汚染という結果にもなり得る。
【0016】
本発明の特定の態様によれば、体液中、および特に全血試料中の分析物パラメータに関するポイントオブケア(POC)測定のために、本明細書中の実施形態のいずれかによるシステム/方法を使用することが提示される。
【0017】
POC測定は、当技術分野において『ベッドサイト』測定とも呼ばれる。本文脈において、用語『ポイントオブケア測定』は、患者のすぐ近くで実行される測定、すなわち、研究室において実行されない測定を意味すると理解されたい。したがって、本実施形態によれば、血液ガス分析装置の使用者は、例えば、患者のベッドを収容する病室内または病棟内、あるいは同じ病院部門の近くの部屋内で、血液試料を取り出す患者の近くで手持ち式血液試料容器中の全血試料の測定を行う。そのような使用では、使用者の専門知識のレベルは、初心者からベテランまでしばしば様々であり、センサ入力に基づいてそれぞれの個々の使用者のスキルに合った命令を自動的に出力する血液ガス分析装置の能力は、したがって、そのような環境において特に有益である。
【0018】
センサ組立体は、連続的な部分および不連続的な部分を備える複合流体を分析するのに役立ち、特に、複合流体の連続的な部分中の分析物を選択的に検出するのに役立つ。このセンサ組立体は、複数の分析物パラメータを測定する流体分析装置構成内、例えば、現代の動脈血分析装置内で小型化および/または統合化するのに特に役立つ。
【0019】
用語「複合流体」は、本明細書中で使用されるとき、液体部分および粒子状の部分などの連続的な部分および不連続的な部分を有する流体を指す。典型的には、分析物は、複合流体試料の連続的な部分の成分である。したがって、分析される流体は、分析物を含む連続的な部分を少なくとも含む。分析される流体は、不連続的な部分、すなわち、粒子状の部分をさらに含むことができる。粒子状の部分は、例えば、固体粒子、破片および他の汚染物質、(赤血球細胞などの)生体細胞または微生物、液滴、気泡、ならびにそれらの組合せを含むことができる。分析される流体は、全血試料、全血の血漿部分、脊髄液、尿、肋膜、腹水、廃水、任意の種類の注入のために予め用意された流体、分光学などの光プローブによって検出することが可能な成分を有する流体、または空気、二酸化炭素含有ガス、一酸化炭素含有ガスなどの気体であり得る。
【0020】
以下にさらに説明されるように、分析物は、光プローブなどの適切なプローブ技法によって検出可能な任意の物質であり得る。例えば、分析物は、分析される流体の連続相に存在し得る分子のサブセットであり得る。例えば、全血試料を分析するときに、分析物は、特定の薬物とすることができ、測定は、例えば、薬物摂取量を決定し、それに応じて薬物の投薬を調整するために、血漿相中の薬物含有量を決定するためのものであり得る。全血試料を分析する別の例では、分析物は、溶血の程度を決定するためのビリルビンであり得る。全血試料を分析するさらに別の例では、分析物は、二酸化炭素であり得る。
【0021】
用語「流体」は、粒子相などの連続相および不連続相を含む複合流体を含む液体および/または気体を指す。本発明の実施形態を用いて分析される関連流体の例は、体液、特に、全血試料、全血の血漿部分、脊髄液、尿、肋膜、腹水を含むが、これらに限定されない。関連流体のさらなる例は、廃水、任意の種類の注入のために予め用意された流体、分光学によって検出することが可能な成分を有する流体、または空気、二酸化炭素含有ガス、一酸化炭素含有ガスなどの気体を含む。用語「試料」は、本発明の多孔質膜を用いた分析に使用され、または必要とされる流体の一部を指す。
【0022】
用語「全血」は、血液血漿および細胞成分で構成される血液を指す。血漿は、体積の約50%~60%を表し、細胞成分は、体積の約40%~50%を表す。細胞成分とは、赤血球(赤血球細胞)、白血球(白血球細胞)、および血小板(thrombocyte)(血小板(platelet))である。好ましくは、用語「全血」は、人間被験者の全血を指すが、動物の全血も指し得る。赤血球は、全血液細胞の総数の約90%~99%を構成する。それらは、形が崩れていない状態で直径約7μmおよび厚さ約2μmの両凹の円板として成形される。赤血球は、非常に柔軟であり、これは、それらがとても狭い毛細管を通過し、その直径を約1.5μmまで減少させることを可能にする。赤血球のコア成分の1つは、組織へ輸送するために酸素を結合し、次いで酸素を解放するとともに、老廃物として肺に送達されるように二酸化炭素を結合するヘモグロビンである。ヘモグロビンは、赤血球が赤色である原因であり、したがって全体で血液が赤色である原因である。白血球は、全血液細胞の総数の約1%未満を構成する。それらは、約6から約20μmの直径を有する。白血球は、例えば、細菌またはウイルスの侵入に対する身体の免疫システムに関与する。血小板は、約2から約4μmの長さおよび約0.9から約1.3μmの厚さを有する最小の血液細胞である。それらは、凝固にとって重要な酵素および他の物質を含む細胞片である。特に、それらは、血管の破れを封止するのを助ける一時的な血小板血栓を形成する。
【0023】
用語「血液血漿」または「血漿」は、血液およびリンパ液の液体部分を指し、これは、血液の体積の約半分(例えば、約50体積%~60体積%)を構成する。血漿は、細胞を持たない。それは、全ての凝固因子、特にフィブリノゲンを含み、体積で約90%~95%の水を含む。血漿成分は、電解質、脂質代謝物質、例えば感染または腫瘍のためのマーカ、酵素、基質、タンパク質、およびさらなる分子成分を含む。
【0024】
用語「廃水」は、洗浄について、流しについて、または製造プロセスにおいて使用された水を指し、したがって老廃物および/または粒子を含み、よって飲食の用意には適していない。
【0025】
試料チャンバは、入口から出口へ延びるチャンネルとして形成され、流れを乱す要素によって互いから分離される第1の試料空間および第2の試料空間を含む。第1の試料空間は、流れを乱す要素と入口との間で入口から出口への方向に見られるように流れを乱す要素の上流に配置され、第2の試料空間は、流れを乱す要素の下流に配置される。全ての実施形態において、流れを乱す要素は、第2の試料空間の上流で混合試料とそれ自体の混合をもたらすようになされている。これによって、試料チャンバ内の流体処理中の第2の試料空間の上流の流れの履歴から独立して、初期状態の試料が第2の試料空間内に用意され得る。第2の試料空間内に初期状態の試料を提示することによって、多孔質センサ素子のセンサ面に隣接した流体試料の界面層内の分析物濃度は、流体試料全体を表すことが確実にされ得る。これによって、信頼できる再現可能なパラメータ測定を、界面層から多孔質膜の細孔の中に抽出されるサブ試料から得ることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、流れを乱す要素は、入口から出口への方向に試料チャンバを通じて流される流体中で、例えば、層流条件から乱流条件または同様に乱される流量条件へ、流量条件を移行させるように構成され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、流れを乱す要素は、入口から出口への方向に試料チャンバを通じて流される流体試料の層流攪拌をもたらすように流量条件を移行させるように構成される。また、ここで、流れを乱す要素は、試料チャンバの第1の試料空間の下流、および少なくとも同じ試料チャンバの第2の試料空間の上流で、流体とそれ自体の混合を可能にする。しかしながら、これらの実施形態では、次に、流れを乱す要素は、測定される少なくとも複合流体試料の流体処理中に適用される典型的な流量のために試料チャンバ全体にわたって層流レジームを維持するように構成される。センサ組立体の本実施形態は、患者の溶血の測定を含む全血試料に関する測定での使用に特に役立つ。これによって、全血試料の粒子状層に対する過度の剪断力を避けることができ、さもなければ、これにより溶血測定を役に立たないものにさせる望ましくない溶血をもたらし得る。引き起こされた流れの乱れにより層流の混合を引き起こすように流れを乱す要素を構成することによって、試料チャンバにおける流体処理中に流体試料内の過度の剪断力によって分析される流体試料に損傷を与えるリスクなしで、試料チャンバを満たしている間に第2の試料空間の上流で第1の試料空間を通じて流れの履歴から独立して、代表的な試料が、第2の試料空間内のセンサ面上のやはり界面で測定のために提示されることが確実にされ得る。
【0028】
有利には、流れを乱す要素は、第1の試料空間を第2の試料空間と接続する送りチャンネルの上流端内にまたはそこに配置され得る。有利には、そのような送りチャンネルの上流端内にまたはそこに配置された流れを乱す要素は、第1の試料空間から受け取った層流からその下流の乱流または同様に乱された流れパターンへなど、流れパターンを移行させるように構成される。より詳細には、流れを乱す要素は、いくつかの実施形態では、少なくとも、第1の試料空間を第2の試料空間と接続する送りチャンネル内で、入口から出口への方向に試料チャンバを通じて流される流体の攪拌を引き起こすようになされている。これによって、流れを乱す要素は、第1の試料空間を通った後に、少なくとも第2の試料空間に入る前に、流体とそれ自体の混合を可能にする。これによって、代表的な流体試料界面が第2の試料空間内で多孔質膜センサ面に確実に提示される可能性が増大する。
【0029】
有利には、試料チャンバを通じた流体処理の流れにおける流れの乱れは、局所的であり、第2の試料空間の上流(場合によってはすぐ上流)にある。したがって、流れを乱す要素は、局所的な流れの乱れを引き起こすように、およびいくつかの実施形態では、第2の試料空間の上流(場合によってはすぐ上流)でそこを通じて流される流体を攪拌するように構成され、一方、第2の試料空間内における流体処理のための流量条件もまた層流である。
【0030】
センサ組立体の動作は、典型的には、入口から試料チャンバを通じて出口へある量の流体を流すことによって試料チャンバを流体で満たすステップと、満たすことが完了すると流れを停止するステップと、試料チャンバ内でこのようにして提示される流体試料に関する測定を行うステップと、を含む。
【0031】
分析物は、拡散によって流体試料から多孔質膜の中に抽出される。以下に説明される光プローブなどの適切なプロービング機構を適用して、次いで、分析物が検出され得る。用語「検出」は、本明細書中で使用されるとき、所与の分析物の存在の単なる定常的な検出、および/または複合流体試料中の分析物の濃度を決定するための測定などの定量的な測定を含むと考えられる。多孔質膜の細孔は、試料チャンバと拡散性流体連通している。細孔は、分析物に関して、細孔内の流体と試料チャンバの第2の試料空間内の流体試料との間の拡散性流体連通のために構成される。したがって、細孔は、複合流体試料の不連続相のよりずっと大きい粒子が細孔に入るのを防ぎつつ、拡散輸送を通じて分析物を試料チャンバ内の複合流体試料の連続的な部分と交換するように構成される。
【0032】
述べたように、本発明の実施形態による試料組立体内の所与の流体試料に関する測定を行う測定デバイスの動作は、典型的には、例えば、以前から存在している流体試料から、試料チャンバから生じる、何らかの以前から存在している流体試料、および任意の汚染物質を除去するように、入口から出口への流れの方向に、水洗するステップ、すなわち、試料チャンバを通じて水洗流体を流すステップなどの流体処理のステップを含む。さらに、センサ組立体を用いる測定デバイスの動作は、典型的には、試料チャンバ内に存在する較正流体に対して行われる測定によってデバイスを較正するステップを含む。したがって、試料組立体の動作は、入口から出口へ流れの方向に試料チャンバを通じて異なる流体を流すことによって試料チャンバを満たすこと、排出すること、および再び満たすことなどの頻繁な流体処理動作を含む。
【0033】
最も好ましくは、第1のおよび/または第2の試料空間は、センサ組立体における流体処理中の層流のために構成される。信頼できるおよび再現可能な流体交換性能を実現するために、1つまたは複数の分析物を検出するための試料チャンバを通る層流は、通常望ましい。したがって、センサ組立体における流体ハンディング中に層流流量条件を維持することも望ましい。しかしながら、これとは対照的に、流れを乱す要素は、第2の試料空間のすぐ上流で流体試料とそれ自体の混合をもたらす。好ましくは、流れの乱れは、第1の試料空間と第2の試料空間との間、すなわち、第1の試料空間の下流と第2の試料空間の上流の間の試料チャンバの一部に局所化される。さらに、第1の試料空間の下流で流れを乱す要素における流れの乱れを維持しつつ、同時に、層流流量条件は、第1の試料空間内でセンサ組立体における流体ハンディング中に維持されるのが好ましい。さらに、第2の試料空間の上流で流れを乱す要素に局所化された流れの乱れを維持しつつ、同時に、層流流量条件は、第2の試料空間内でセンサ組立体における流体ハンディング中に維持されるのも好ましい。
【0034】
第1の試料空間と第2の試料空間との間で第2の試料空間の上流に配置される流れを乱す要素を与えることによって、第2の試料空間内の多孔質膜センサ面に接触する流体試料の境界層に由来する不規則な減少の測定アーチファクトは、ますます減少し、または防がれもする。例えば、チャンバ壁の一部および/または第2の試料空間に向いている多孔質膜センサ面にくっついている以前から存在している流体のほんのわずかの残りによる、ボーダー層の減少、およびチャンネル壁近くのとても薄いボーダー層内の流体試料の相互汚染の影響が、低減され、またはこれによって未然に防がれさえされ得る。
【0035】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、多孔質膜センサ素子は、高分子量分析物を検出するように構成される。
本出願の文脈において、用語「高分子量」は、1.66×10-20g(10,000Da)以上、例えば、4.98×10-20g(30,000Da)以上、または例えば8.30×10-20g(50,000Da)以上の分子量を指す。複合流体の連続的な部分中の高分子量分析物を検出する一例は、全血試料中の溶血を検出している。
【0036】
本発明の特定の長所は、複合流体の連続的な部分中に存在する高分子量成分について複合流体試料を分析するときに、センサ面を備えるチャンバ壁の近くの拡散輸送が特に重要であることを理解することである。理論に縛られることなく、複合流体中の高分子量成分を分析するときの測定に関するこの驚くべき繊細さの理由の1つは、不連続的な部分の大きい粒子によって形成された「ラビリンス」を通り、チャンバ壁に向かう、連続的な部分中のそのような高分子量成分の拡散を妨げる「ラビリンス効果(labyrinth effect)」にあり得る。このラビリンス効果により、不連続相の粒子を通る高分子量成分の拡散率は、多孔質膜中の分析のための分析物が、連続的な部分のボーダー層から実質的に引き出され、センサ面に接触する程度まで下がり得るが、これは、センサ面からさらに遠い複合流体試料のより深い領域から細孔に入るセンサ面への分析物の拡散が、不連続的な部分によって効率的にブロックされ得るからである。
【0037】
この成果は、第2の試料空間の上流に流れを乱す要素を設けることによって未然に防がれない場合、少なくとも減少する。流れを乱す要素によって、複合流体試料は、第2の試料空間のすぐ上流で攪拌され、多孔質膜センサ面に接触するためのボーダー層中の高分子量分析物の代表的な濃度を有する複合流体試料が与えられる。理論に縛られることなく、これは、複合流体試料の連続的な部分のとても薄いボーダー層中の高分子量分析物成分についての明らかな拡散性減少における減少に起因し得るものであり、というのも、さもなければ、以前から存在している流体試料のほんのわずかの残りにより、第2の試料空間の上流で、入口からずっと、チャンバ壁にくっつく水洗流体および/または較正流体を生じさせ得るからである。これは、複合流体の連続的な部分中の高分子量成分を分析するときに、より信頼できる再現可能な測定をもたらす。
【0038】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、第1の試料空間は、それぞれのさらなる分析物を検出する1つまたは複数のさらなるセンサ素子を備える。これにより、センサ組立体は、第2の試料チャンバ内の多孔質膜センサ素子により検出可能な分析物と第1の試料空間内に配置された1つまたは複数のさらなるセンサ素子によって検出可能なさらなる分析物との両方を含む複数の分析物に関する同時分析に適合している。さらなるセンサ素子を、流れを乱す要素の上流で第1の試料空間内に配置することによって、これは、流れを乱す要素の下流で第2の試料空間内に配置された多孔質膜センサ素子によって検出される分析物についての測定品質と干渉することなく実現される。
【0039】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、流れを乱す要素は、試料チャンバの幾何学的形状における急激な変化として形成される。例えば、流れを乱す要素は、入口から出口へ試料チャンバを通じた流れの方向における急激な変化によって流れの乱れをもたらすように構成される。いくつかの実施形態によれば、試料チャンバは、鋭い隅のある曲がりを備える入口から出口へ延びるチャンネルであってもよく、第2の試料空間は、鋭い隅のある曲がりの下流に配置される。有利な実施形態によれば、曲がりは、曲がりに従うチャンネルの中心線が曲がりにおいてチャンネルの幅よりも少ない曲率半径を有する場合に鋭い隅のある曲がりとみなされ得る。有利な実施形態によれば、入口から出口への試料チャンバの主方向に従う方向の最小曲率半径が、曲がりにおけるチャンネルの幅よりも小さい曲率半径を有する場合、曲がりは、鋭い隅のある曲がりとみなされ得る。鋭い隅のある曲がり、またはチャンネルの方向における同様の急激な変化は、流れを乱す要素の結果としてのデッドスペースがより容易に防がれ得るという他の流れを乱す要素を上回る利点を有する。そのようなデッドスペースは、デッドスペースが泡、液滴、および同様の洗い落とすのが難しい連想汚染を引き付ける可能性があり、次の試料を汚染し、したがって、そのような次の試料で行われる測定を汚染し得るので、望ましくない。
【0040】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、流れを乱す要素は、第2の試料空間の送りチャンネルを第1の試料空間の下流端に接続する接続ノズルとして形成される。これによって、チャンネルの方向における急激な変化の効率的で単純な実施が実現可能である。
【0041】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、流れを乱す要素は、第1の試料空間を形成する試料チャンネルの主軸に対してある角度で配置された接続ノズルとして形成され、角度は、上記主軸に対して少なくとも30度、少なくとも40度、少なくとも50度、少なくとも70度、または典型的には約90度である。これによって、チャンネルの方向における急激な変化のさらに効率的で単純な実施が実現可能である。
【0042】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、流れを乱す要素は、第2の試料空間の入口穴のから少なくとも0.3mm、0.5mm、1mm、および/または3mmまで、5mmまで、または10mmまでの距離で第2の試料空間のすぐ上流に位置する。これによって、第2の試料空間の上流すぐ近くの流れの乱れが実現される。有利には、いくつかの実施形態によれば、第1の試料空間は、上壁と底壁を接続する上壁、底壁、および側壁を有するチャンネルとして形成され、それによって、入口から出口への第1の試料空間の主方向に直交する切断面に見られるような実質的長方形断面を画定する。有利には、第1の試料空間の長方形断面は、数ミリメートルの範囲内、例えば、10mmまで、5mmまで、または3mmまで、および少なくとも1mm、または少なくとも2mm、例えば、約2.4mmで上壁および底壁に平行な横断方向に見られるような幅を有するとともに、サブミリメートル範囲内、例えば、1mm未満、0.8mm未満、0.5mm未満、および少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、または少なくとも0.3mm、例えば、約0.4mmで上壁および底壁に直交する方向に見られるような高さを有する。さらに、有利には、流れを乱す要素は、第1の試料空間の下流端でT形接合またはL形接合を形成するノズルである。好ましくは、ノズルは、その下流端で、第1の試料空間の上壁および底壁の一方に接続する。
【0043】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、センサ面は、平面である。
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、センサ面は、試料チャンバの第2の試料空間内の流体処理のための入口から出口への流れの方向に平行に配置される。これによって、センサ面と試料面の効率的な接触が実現される。さらに、流体処理動作中にセンサ面に接触する流体のスムーズで効率的な交換が実現される。さらに、これによって、相互汚染を減じることができる。
【0044】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、第2の試料空間は、上壁、上壁とは反対側の底壁、および上壁と底壁とを接続する周壁によって画定された円筒形状を有し、送り穴は、すなわち、流れの乱れに向かう、第1の試料チャンバに向かう、および入口に向かう方向に見られるように第2の試料空間の上流端に配置され、排出穴は、すなわち、出口に向かう方向に見られるように第2の試料空間の下流端に配置される。好ましくは、多孔質膜センサ素子は、上壁に配置される。いくつかの実施形態によれば、円筒形状は、センサ面に平行な切断面に見られるような円形断面または楕円断面を有することができる。
【0045】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、送り穴および排出穴は、周壁に配置される。好ましくは、送り穴および排出穴は、互いに対向して配置される。これによって、流体処理動作を行うときに、第2の試料空間を通じた流れの単純な流れパターンが実現される。したがって、流体処理動作中にセンサ面に接触する流体のさらにスムーズで効率的な交換が実現される。さらに、これによって、相互汚染を減じることができる。
【0046】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、ある方向に見られるような第2の試料空間の高さは、上壁から底壁までであり、第2の試料空間の横断寸法の2分の1未満、または3分の1未満、または5分の1未満、またはさらには10分の未満である。これによって、多孔質膜センサ素子において行われる測定の品質に妥協することなく、より小さい体積の流体試料が必要とされる。この特徴は、多孔質膜センサ素子の測定が、特に高分子量分析物に関して、センサ面に接触する複合流体試料の比較的薄いボーダー層との分析物の拡散交換に依拠するという本発明の知見からさらに利益を得る。
【0047】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、底壁は、第2の試料空間の周辺部と比較して、第2の試料空間の中央部における上壁からの底壁の距離を減少させるように湾曲している。好ましくは、多孔質膜センサ素子は、上壁に配置される。好ましくは、本実施形態では、多孔質膜センサ素子は、平面である。底壁は、少なくとも底壁が送り/排出穴におけるよりも中央部において上壁に近くなるように、送り穴から排出穴へ上壁に向かう方向に沿って膨れるように曲がっていてもよい。好ましくは、膨れは、試料チャンバに存在する異なる流体間で切り替えるとき(例えば、水洗/較正<=>試験試料)、空にするのが難しいデッドスペースを防ぐようにゆるやかである。これにより、さらに減じられた試料体積が測定品質について妥協することなく実現でき、一方、効率的な流体処理動作のための滑らかな流れパターンをさらに実現し、したがって、流体処理動作中の上述した困難な状況のいずれに関するリスクもさらに減じる。
【0048】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、多孔質膜センサ素子は、光プローブによって分析物を検出するように構成される。これによって、非常に感度がよいプロービング機構が提供される。
【0049】
用語「光学的」および「光」、ならびに関連した用語は、一般に、可視スペクトル範囲、赤外スペクトル範囲、および紫外スペクトル範囲内の電磁放射を指し、用語「可視の」は、典型的には、400nm~700nmの範囲の波長を有する電磁放射を指し、用語「赤外」は、700nm~1mmの範囲内の波長を有する電磁放射、「近赤外」の約700nm~3μm、「中赤外」の3μm~50μm、および「遠赤外」の50μm~1mmの典型的な部分範囲を有する電磁放射を幅広く指し、用語「紫外」または「UV」は、10nm~400nmの範囲内の波長を有する電磁放射、「近紫外」の300nm~400nm、「中紫外」の200nm~300nm、および「遠紫外」の122nm~200nmの典型的な部分範囲を有する電磁放射を幅広く指す。当業者は、所与のセンサ素子について、および特に所与の半透明膜材料について述べたスペクトル範囲の有用性が、これらの材料を通じて入出力光を伝播させるスペクトル範囲および材料の適合性次第であると理解するであろう。
【0050】
さらに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、多孔質膜は、半透明膜であり、多孔質膜センサは、半透明膜の前面に配置された反射層と、前面に背を向けた半透明膜の後面に接続され、後面を通じて半透明膜のプローブ領域へプローブ光を送るようになされた光入力ポートと、半透明膜の後面に接続され、後面を通じて半透明膜から光応答を集めるようになされた光出力ポートと、をさらに備える。
【0051】
用語「半透明」は、光が通過することを可能にする材料の特性を指す。用語「透明」は、光が散乱されることなく材料を通過することを可能にする材料の特性を指す。したがって、用語「透明」は、用語「半透明」のサブセットとみなされる。
【0052】
光入力ポートは、後面を通じて半透明膜の中にプローブ光を送るように構成されている。光出力ポートは、後面を通じて半透明膜からのプローブ光に対する光応答を集めるように構成される。プローブ光を注入することと、半透明膜の後面からの光応答を集めることとの両方によって、非常に少量の試料流体を分析するために設計される、非常に小さい試料チャンバを備えた小型化された試料組立体内へのセンサ素子を統合することを可能にするコンパクトな設計が実現される。
【0053】
典型的には、半透明膜の後面は前面に平行であり、後面から半透明膜を補強する/強化する機械的支持を与えるためにさらなる透明な裏張りが後面に施されてもよく、裏張りは、半透明膜と、入力ポートおよび/または出力ポートなどのセンサ素子のさらなる光学構成要素との間の空所を埋める透明パッドであり得る。典型的には、センサ素子は、センサ素子ハウジング内など機械的取付部に一緒に保持される。半透明膜の後面とさらなる光学構成要素のいずれかとの間の任意の空所は、透明パッドの構成要素ですっかり満たされてもよい。好ましくは、いくつかの実施形態によれば、透明パッドは、5%以内まで、好ましく2%以内、最も好ましくは1%以内までなどの公差以内まで半透明膜と整合された屈折率である。
【0054】
上述したように、多孔質膜センサ素子は、分析される流体に接触するセンサ面を有する。センサ面は半透明膜の前面に形成され、反射層は前面に施される。半透明膜は、前面から反射層を通じて半透明膜の中に延びる小さい細孔、好ましくは行き止まりの細孔を含む。各小さい細孔は開口部を有し、この開口部を通じて半透明膜の前面にある流体空間と連通することができる。したがって、細孔は、反射層を貫いて細孔と流体空間との間で流体連通を可能にする。細孔は、後面の方の方向に前面にあるそれぞれの開口部から半透明膜の中に延びる。好ましくは、細孔は、細孔の端部が半透明膜内にあることを意味する「行き止まり」である。行き止まりの細孔は、半透明膜を通じて後面まで、あるいは膜内部の任意の共通の槽または受容部まで、ずっとは続かない。細孔は、半透明膜の前面で流体空間と流体連通しているに過ぎない。いくつかの実施形態では、行き止まりの細孔は、縦横に延びてもよく、したがって、少なくとも一部の細孔は、互い接続されてもよく、X形、Y形、V形、または同様の相互接続された形を形成することに留意されたい。そのような構成は、細孔は前面からのみ満たされ、細孔が互いに交差する場合でも、細孔を通過するかなり大きい正味の物質移動が動作下で生じないので、行き止まりと同様にみなされる。
【0055】
半透明膜は、透明な高分子膜から作製することができ、細孔は、例えば、同時係属の国際特許出願WO2017/085162A1、およびWO2017/085180A1(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるようないわゆるトラックエッチング技法を用いてそこに製造される。
【0056】
細孔は、特に拡散/拡散輸送によって、流体の第1の部分から分析物を選択的に受け入れるバイアル(vial)/キュベットを形成する一方、粒子状の部分は、細孔に入るのを効果的に防がれる。これらのバイアル/キュベットは、プローブ光と分析物の効率的な相互作用のために、少なくともプローブ領域内に配置される。細孔の開口部は、さらなる部分、例えば連続的な部分からの分析物が細孔を通じて半透明膜の中に入ることを可能にしつつ、分析される流体の粒子状の部分が細孔の外側で維持されるように寸法決めされ、そのため、入力ポートから注入されたプローブ光は、分析物と相互作用し、したがって光プローブによって分析物を検出することができる。前面で細孔の開口部を適切に寸法決めすることによって、例えば、全血試料の血漿部分中の関連成分が細孔に入ることを可能にしつつ、センサ面における全血試料の赤血球細胞が細孔に入るのを防ぐことを可能にし、関連成分は、全血試料の血漿部分中(またはより一般には流体試料の関連部分中)に存在する物質であり、これは、センサを用いて測定/検出されることになる。
【0057】
この構成によって、小さいが代表的な分析物部分が、複合流体から穏やかに抽出され、高度の重ね合わせでプローブ領域内のプローブ光に効率的に曝されることが実現される。半透明膜の中に直接貫く細孔を有するとともにセンサ面にあるそれらの各開口部から検知位置まで比較的短い距離を有する半透明膜の表面にプローブ領域が直接配置されるので、この分離は、特に単純で高速の手法で実現され、したがって、特に試料の迅速な拡散交換を容易にする。
【0058】
細孔の典型的な断面寸法は、約100nmまでのミクロンおよびサブミクロン範囲内にある。細孔の中へのおよび細孔からの分析物輸送は、拡散によって実現される。効率的な動作について、細孔は、下塗り流体で満たされ、これは、好ましくは、例えば、第1の検出測定を実行する前に下塗りステップ中に細孔の中に満たされる。下塗り流体は、分析される流体に影響を及ぼし得ない。したがって、下塗り流体は、分析される流体に適合しなければならない。有利には、下塗り流体は、緩衝水溶液などの水洗流体とすることができ、これは、分析される流体の試料を置き換えるために、満たす、空にする、および再び満たす手順の間に、試料チャンバを水洗するのに使用することもできる。水洗流体は、基準流体または較正流体とすることもできる。
【0059】
有利には、いくつかの実施形態によれば、細孔は、液体で満たされる。知られている液体で細孔を下塗りすることにより、分析される流体中の関連成分を表すサブ試料を単独で拡散により細孔の中に抽出することを可能にする。これは、細孔を介して光プローブ領域の中へおよびそこからの高速、効率的、およびよく制御された分析物の交換を可能にする。有利には、いくつかの実施形態によれば、液体は、水溶液である。これは、水溶性分析物を検出するのに特に役立つ。代替として、細孔は非水性液体で満たされることが考えられ、これは、例えば、分析される流体が非水性液体でもあるときに特に役立つ。
【0060】
動作下で、半透明膜の前面は、例えば、全血試料または流体と接触することができる。半透明膜内の小さい細孔は、前面における開口部を通じて全血試料または流体と連通する。細孔開口部は、全血試料の血漿相のサブ試料を選択的に抽出するように、または分析物を含む流体のサブ試料を抽出するように寸法決めされる。赤血球細胞は、半透明膜の前面上にある開口部を通じて細孔に入ることはできない。細孔直径よりも大きいものは、細孔に入ることができず、これは、例えば、流体中に含まれる何らかの破片を除く。述べたように、好ましくは、細孔は、半透明膜の前面と連通するだけの行き止まりであり、すなわち、サブ試料は、細孔の内側の光プローブのために抽出され、測定後、半透明膜の前面における同じ開口部を通じて再び排出される。サブ試料体積は、細孔の総内容積に対応する。任意の濾過液の濾過および正味の物質移動は、任意の共通の濾過液の受容部の中にも任意の濾過液出口にも、細孔含有層を通じて行われない。次いで、光学検出は、細孔内に含まれるサブ試料に関してのみ実行される。反射層は、半透明膜内の光プローブ領域を全血試料または流体を収容する流体空間から光学的に分離する。プローブ領域を流体空間から光学的に分離することによって、プローブされた信号に対する全血試料の無傷の赤血球細胞または流体中の破片の任意の寄与は、有効に抑制され得る。したがって、測定は、流体中の分析物の内容に特有のものである。
【0061】
関連成分の代表的な内容を有する小さいサブ試料は、任意の適切な手法で細孔へ移送することができる。小さい行き止まりの細孔は、毛管力および/または拡散により前面の開口部を通る全血試料または流体からの光プローブのためにサブ試料のとても効率的で高速の抽出を可能にする。典型的な動作モードでは、半透明膜の前面表面は、分析される全血試料または流体に前面が接触する前に、水洗流体によって接触される。これによって、血液分析装置内の水洗、較正、および/または品質管理の目的に一般に使用される水溶液などの流体が全血である場合、細孔は、全血試料または流体に適合する液体、および詳細には、血漿相と適合する液体のプリフィルで「下塗り」される。例えば、全血分析システム内の洗い落としに使用される典型的な水洗液は、そのような液体として使用することができる。水洗液は、人間の血漿に対応する濃度のK、Na、Cl、Ca2+、O、pH、CO、およびHCO3-を含む水溶液である。次いで、全血試料または流体が血漿適合液体/流体適合液体で下塗りされる前面表面に接触させられるとき、全血試料または流体の血漿相中の成分の代表的なサブ試料は、関連成分の拡散によってとても効率的で穏やかな手法で事前に満たされた細孔の中に抽出および移送される。特に、細孔内の流体と基準液体との間の分析物の内容物の任意の濃度勾配は、拡散移送を駆動し、これによって細孔内でサブ試料を流体中の分析物濃度を表す分析物濃度で製造する。
【0062】
サブ試料体積は、細孔の総内容積に対応する。任意の濾過液の濾過および正味の物質移動は、任意の共通の濾過液受容部の中にも任意の濾過液出口にも、測定中には細孔含有層を通じて行われない。次いで、光学検出が、細孔内に含まれたサブ試料のみに基づいて実行される。半透明膜への入力光の閉じ込めは、全血試料または流体を含む流体空間から光プローブを光学的に分離する。流体空間から光プローブを光学的に分離することによって、検知信号に対する流体中の全血試料または破片の無傷の赤血球細胞の寄与は、有効に抑制することができる。したがって、測定は、流体中の分析物の内容に特有である。
【0063】
細孔の内容物は、好都合には、半透明膜の後面から、またはより一般には半透明膜の方を向いている反射層の側から、光学的にプローブすることができ、前面における反射層は、細孔を備える光プローブ領域を半透明膜の前面に接触する流体から光学的に分離する。反射層は、半透明膜の後面からの方向から反射層に到達する光を反射させるようになされ、これによってプローブ光が半透明膜の前面における流体に到達し、これと相互作用することが防がれる。したがって、光プローブは、細孔内部のサブ試料に対してのみ選択的に実行される。
【0064】
さらにいくつかの実施形態によれば、センサ組立体は、光入力ポートに接続された光源をさらに備え、光源は、プローブ用放射線を発するために構成される。さらに、いくつかの実施形態によれば、センサ組立体は、光出力ポートに接続された検出器をさらに備え、検出器は、光源による入力ポートを通じたプローブ領域の照明に応答して、プローブ領域から出現する光を検出するように構成され、検出器は、検出された光を表す信号を生成するようになされている。光源は、システムが働くために、細孔内の分析物が光を吸収し、または光学的に刺激された応答を他の方法で与える領域内で光を伝達する任意の光源であってもよい。サイズ、重さ、効率などに関するその特性により、発光ダイオードは、組立体内の小型化および/または統合を意図する実施形態にとって好ましい。検出器は、検出される分析物を示す出力信号を生成するために、光出力ポートから受信した光応答を検出し、光応答を分析するのに適した任意の光学検出構成であり得る。有利には、一実施形態によれば、検出器は、分光光度計を含むことができ、光プローブ装置は、プローブ領域から出現する光を分光光度分析するように構成されている。これは、プローブ領域内のサブ試料から出現する光の1つまたは複数の関連成分の分光シグネチャを解決することを可能にする。小型化およびコンパクトさの目的のために、例えば、ポイントオブケア構成の内容において、検出器は、スペクトル全体の吸収を検出することができるフォトダイオードまたは分光計を備えることができる。代替として、アレイまたはダイオードが使用されてもよく、各ダイオードは異なる波長で光を発し、フォトダイオードは検出器として使用される。ダイオードは、異なる間隔で光を発するように多重化され得る。次いで、吸収は、特定の間隔がフォトダイオードによって検出された光と比較されることで、ダイオードから発せられた光を比較することによって見つけられる。
【0065】
以下の実施形態は、特に体液を光学的にプローブする内容におけるセンサ素子に使用するために、細孔を寸法決めするための有利なルールおよび範囲を開示する。
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔の開口部の断面寸法は、約1μm以下、約800nm以下、好ましくは約500nm以下、またはさらに約400nm以下である。細孔開口部の断面寸法は、用途に応じて、好ましくは、サイズ選択性(より小さい細孔開口部の直径)とサブ試料/分析物の迅速な交換(より大きい細孔開口部の直径)とのバランスをとるようになされる。所与の値は、例えば、特に、血漿部分中の分析物を有する全血などの体液の分析に役立つ。
【0066】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔の開口部の断面寸法は、少なくとも200nmである。細孔開口部の断面寸法は、好ましくは、用途に応じて、サイズ選択性(より小さい細孔開口部の直径)とサブ試料/分析物の迅速な交換(より大きい細孔開口部の直径)とのバランスをとるようになされる。挙げられた範囲の値は、例えば、特に、血漿部分中の分析物を有する全血などの体液の分析に役立つ。
【0067】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔に沿った軸方向の細孔の長さは、100μm未満、50μm未満、好ましくは30μm未満である。好ましくは、細孔の長さは、用途に応じて、プローブ領域内の光プローブ場と相互作用するために増加した試料体積(より長い細孔の長さ)を与える所望のものと、試料/分析物の迅速な交換(より短い細孔の長さ)とのバランスをとるようになされている。所与の値は、全血試料の血漿部分中の分析物を有する全血などの体液の分析に特に役立つ。
【0068】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔に沿った軸方向の細孔の長さは、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、および好ましくは少なくとも10μmである。好ましくは、細孔の長さは、用途に応じて、プローブ領域内の光プローブ場と相互作用するために増加した試料体積(より長い細孔の長さ)を与える所望のものと、試料/分析物の迅速な交換(より短い細孔の長さ)とのバランスをとるようになされている。所与の値は、全血試料の血漿部分中の分析物を有する全血などの体液の分析に特に役立つ。
【0069】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔は直線である。直線状の細孔は細孔の長さを通じての有効な輸送を容易にし、これによって高速のサブ試料/分析物交換を実現する。
【0070】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔は、半透明膜を指向性イオン衝撃に曝し、その後に化学エッチングを行うことで形成されるトラックエッチングされた細孔である。トラックエッチングは、例えば、上述の寸法の直線状で狭いが深い細孔を形成するのに特によく適している。細孔は、例えば、単一指向性イオン衝撃の露出から生じる単方向配置に形成することができる。代替として、細孔は、異なる方向から複数の指向性イオン衝撃の露出を与えることによって多方向配置に形成されてもよい。したがって、細孔の配置は、例えば、エッチングステップを実行する前に1つまたは複数の指向性イオン衝撃の露出によって生成/規定することができる。
【0071】
適切な半透明膜は、例えば、細孔が一端で閉じられているという修正を伴うが、企業IT4IP(IT4IP S.A./avenue Jean-Etienne Lenoir 1/1348 Louvain-la-Neuve/Belgium)から市販されているものに類似するいわゆるトラックエッチングされた細孔を有する透明な高分子膜から製造することができる。膜内の通り抜ける細孔は、例えば、イオン衝撃のトラック、およびしたがってこれらのトラックに従ってエッチングされた細孔が、透明な高分子膜内で行き止まりの細孔を形成するように止まるように、裏張りシートを多孔質膜の後面に積層することによって、またはイオンを減速させることによって閉じることができる。典型的には、膜は、堅い透明な要素によって裏打ちされて、半透明膜に十分な機械的強度を与えるようになっている。
【0072】
好ましくは、半透明膜は、光を吸収しない材料で作製されるべきであり、同時に、例えば、材料をトラックエッチングすることによって材料中に行き止まりの細孔を製造することが可能であるべきである。これに適している材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)、またはPETの類似物(ポリエチレンテレフタレートポリエステル(PETPまたはPET-P))、またはポリカーボネート(PC)である。半透明膜は、細孔の中への拡散を増大させるために、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の親水性コーティングを含むことができる。親水性コーティングは、ある動作モードのセンサ素子のためにセンサ素子を構成するように選ばれ得る。いくつかの動作モードでは、センサ素子は、それが使用中であると、決して完全に乾燥せず、したがってそれが始動時に親水性でありさえすればよい。センサ素子の他の動作モードについては、センサ素子の寿命全体にわたって親水性を永久に維持するコーティングが施される。これは、センサ面に提示された液体試料からの高速サブ試料抽出をまだ維持しつつ、センサ素子が続く使用の間に完全に乾燥することを可能にする動作モードを可能にする。したがって、センサ素子が使用の間に完全に乾燥することができるにしても、液体試料にセンサ面が接触してから光プローブ結果を得るまで高速測定のターンアラウンドが実現され得る。
【0073】
有利には、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、少なくともプローブ領域内に細孔を備える所与の体積の半透明膜の多孔性は、50体積%から5体積%の間、30体積%から10体積%の間、または約15体積%である。多孔性は、細孔による半透明膜内に生成された空所の体積、すなわち、細孔の体積について特徴とすることができ、細孔の体積は、細孔によって貫かれる半透明膜の体積が参照される。ここで、この体積は、細孔が分布する前面エリアと、センサ面に直交する垂直方向から見て半透明膜の中への細孔の貫通の最大深さによって半透明膜の中にシフトされた同一の平行なエリアとの間の体積として画定される。
【0074】
それに加えて、多孔性は、集積された細孔の体積についてさらに特徴付けることができ、これは、光プローブに利用可能であるサブ試料体積に等しい。好都合なことに、細孔の体積は、等価な細孔の体積の深さDELTAとして表すことができ、これは、細孔開口部が分布している対応する前面エリアが参照される細孔の体積である。したがって、半透明膜の多孔性は、以下の通り、等価な細孔の体積の深さDELTAに変換することができる。所与の前面エリアa内に開口部を有する細孔は、細孔の総体積Vを有する。次いで、等価な細孔の体積の深さは、細孔の総体積を所与の前面エリアで除算すると、DELTA=V/Aとして計算される。
【0075】
有利には、いくつかの実施形態によれば、等価な細孔の体積の深さDELTAは、20μm未満、または15μm未満、または10μm未満、あるいは3μmから5μmまでの範囲内であり、等価な細孔の体積の深さDELTAは、細孔の総体積Vを細孔の開口部が分布している前面エリアAで除算したものとして画定される。これによって、関連成分の代表的な濃度を有する小さいサブ試料が得られる。小さいサブ試料体積は、高速サブ試料交換を促進するのに望ましく、これによってセンサ素子の応答時間、およびセンサ素子を用いる測定のサイクル時間を減少させる。小さいサブ試料体積は、半透明膜の前面に近い全血試料中の血漿部分の境界層の減少の影響を防ぐためにさらに望ましい。さもなければ、そのような減少の影響が、小さいまだ持続している試料に生じ得、例えば、等価な細孔の体積の深さが臨界値を超える場合、赤血球細胞は、全血試料体積から半透明膜の前面における境界層の方への関連成分の効率的な拡散交換を妨げ得る。
【0076】
好ましくは、等価な細孔の体積の深さDELTAは、少なくとも1μm、代替として少なくとも2μm、または3μmから5μmの範囲内であり、等価な細孔の体積の深さは、上述したように画定される。より大きいサブ試料体積は血漿中の関連成分に関する光学的にプローブされた情報に貢献するので、より大きいサブ試料体積は、よりよい信号対ノイズレベルを実現するために望ましい。
【0077】
さらに、いくつかの実施形態によれば、応答時間を減少させること、サイクル時間を減少させること、および/または一方で小さいまだ持続している全血試料または流体における減少の影響を防ぐこと、他方で必要なもしくは所望の信号対ノイズ比の間の有用な妥協は、1μmから20μmの範囲内、好ましくは2μmから10μm、または約4μm~5μmの範囲内で、等価な細孔の体積の深さDELTAについて見つけられる。
【0078】
さらに、センサ素子のいくつかの実施形態によれば、細孔の内壁表面は、例えば、親水性のコーティングでコートされている親水性である。これによって、乾燥した細孔を液体で効率的に毛細管駆動により満たすことが実現される。さらに、親水性のコーティングは、さもなければ、疎水性染料、ヘモグロビン、および他のタンパク質などのある種の疎水性物質が、細孔の内側に堆積し、これによりセンサに付着物が徐々にもたらされることになり、これによって水溶液で洗い落とすのが難しくなるのを防ぐ。
【0079】
有利には、いくつかの実施形態によれば、反射層は、金属で作製される。そのような金属コーティングは、比較的経済的だが、十分な反射率を有するよく制御された手法で施すことができる。
【0080】
有利には、いくつかの実施形態によれば、反射層は、白金、パラジウム、または主成分として白金もしくはパラジウムを含む合金で作製される。これらの材料は、例えば、吸光度プローブによって、ある種の物質、例えば、遊離ヘモグロビンの検出に関連する電磁スペクトル(深紫から青)のスペクトル範囲内で良好な反射率を示す。さらに、これらの材料は、生体適合性であり、例えば、人為的な溶血をもたらさない。さらに、これらの材料は、概して化学的に安定であり、特に全血試料などの生体液、または前述した体液のいずれかの化学的環境において化学的に安定である。
【0081】
代替として、いくつかの実施形態によれば、反射層は、銀またはアルミニウムで作製することができる。さらに有利には、いくつかの実施形態によれば、試料体積の方を向いている反射層の表面は、さらなるパッシベーション層によって包まれ、特に反射層の材料として銀またはアルミニウムを用いるときに、これによって装置の寿命を強化する。適切なパッシベーションは、例えば、SiOの薄層で作製することができ、好ましくは、SiOの薄層は、透明とされ、細孔の開口部を妨げないように十分に薄くなければならない。これらの材料は、関連するスペクトル範囲(赤)内で良好な反射率を与えることもでき、環境において生体適合性および化学的安定である。
【0082】
有利には、いくつかの実施形態によれば、反射層の厚さは、使用される金属に応じて10nm~100nmの間である。そのような層厚は、センサ面にある細孔の開口部を詰まらせることなく蒸着技法によって反射層を施すことを可能にする。同時に、層厚は、プローブ領域と、分析される流体、例えば、全血試料を含む試料体積との間の強化された光学的分離を確実にするために、試料体積へ伝播する光の十分な減衰を与えるのに十分でなければならない。好ましくは、伝達される光は、スペクトルの検出範囲内、すなわち、関連成分を表す信号が現れるスペクトル範囲内の5%未満、1%未満、またはさらに0.1%未満である。例えば、全血試料の血漿部分中のヘモグロビンを測定するために、適切なスペクトル範囲は、380nmから700nmまで、380nmから450nmまで、400nmから430nmまで、または約416nmである。
【0083】
本発明またさらなる態様によれば、流体中のヘモグロビンなどの分析物を光学的に検出する方法が提供される。方法は、試料チャンバ中の流体試料を供給するステップと、センサ組立体およびシステムの開示において本明細書中に説明されたような分析物について上記流体試料を光学的にプローブするステップとを実施し、それぞれの実施形態に関して説明されたのと同じ利点を少なくとも実現する。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、複合流体中の分析物試料を検出する方法は、上で開示したようなセンサ組立体を用意するステップと、細孔を基準液体で満たすように多孔質膜センサ素子のセンサ面を基準液体に接触させるステップと、センサ面を分析される複合流体の試料と接触させるステップと、安定化するために複合流体中の分析物が細孔の中に拡散することを可能にする拡散時間だけ待機するステップと、多孔質膜の後面からプローブ領域に入力光を注入するステップと、入力光に応答して細孔から多孔質膜の後面の方へ発せられる光を集め、これによって細孔内部の流体を光学的にプローブするステップと、光プローブの結果に基づいて、複合流体の分析物レベルを確立するステップとを含む。好ましくは、基準液体は、流体に適合している、および特に、水洗、較正、および/または品質管理のための液体などの細孔に入り得るその部分と適合している水溶液である。有利には、分析物は、抽出されたサブ試料において代表的な量で分析物が存在することによる色変化によって細孔内で光学的に検出される。有利には、いくつかの実施形態によれば、光プローブは、プローブ用入力光に対する光応答として細孔から出現する光の分光光度分析を実行するステップを含む。有利には、いくつかの実施形態によれば、光プローブは、吸光度を測定している。これは、比較的単純だが有効な構成の利点を有する。詳細には、方法は、多孔質膜センサ素子のセンサ面を分析される複合流体試料と接触させるための流体処理のステップを含む。これらの流体処理のステップは、試料チャンバが満たされたことを決定する所定の基準が満たされるまで、分析される複合流体を試料チャンバの入口を通じて、第1の試料空間を通じて、第1の試料空間を第2の試料空間と接続し、流れを乱す要素を備える接続用送りチャンネルを通じて、第2の試料空間を通じて、および出口を通じて流すことを含む。基準は、例えば、試料チャンバの入口および出口に配置された適切な流体界面検出器によって判定されることが可能である。試料チャンバを通じて複合流体を流すことは、少なくとも層流レジーム中の第1および第2の試料空間を通じた流れを維持する一方、接続用チャンネルを通じた流れは、第2の試料空間のすぐ上流で流れを乱す要素における流れの乱れを示すように実行される。
【0085】
本発明を、主に、血液分析の分析の文脈における使用を参照して本明細書において説明してきたが、当業者は、本発明の範囲を離れることなく、本発明が同等の手法で他の内容においても役立つことを理解するであろう。
【0086】
例えば、センサ素子は、発色/消費アッセイのための読取装置に使用されてもよい。そのような装置は、アッセイの前に血漿を製造するために、分離ステップを実行する必要がないという利点を有する。例として、以下のタイプのアッセイは、本発明の実施形態によるセンサ素子を含む装置を用いて実行することができる。受容体リガンドが膜チャンネル内側に結合することができるサンドウィッチアッセイがある。一部が細孔内に結合されるアッセイ、例えば、ブロモクレゾール・グリーン(BCG)を用い、これによってアルブミンと特異的に有色錯体を形成するブロモクレゾール・グリーン・アルブミン・アッセイがある。620nmで測定される色の強度は、流体中のアルブミン濃度に正比例し、例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST:aspartate aminotransferase)活性アッセイキットのような酵素活性アッセイであり、アスパラギン酸塩からα-ケトグルタル酸へのアミノ基の転移によりグルタメートが発生し、AST酵素活性の存在に比例して比色(450nm)生成物が生成される結果となる。
【0087】
センサ素子は、ビール醸造、廃水分析、食品検査、および染料生産のモニタリング作業などの非医療用途に使用することもできる。ビール醸造では、正確な色が求められる。センサ素子は、液体を測定し、読取値を正しい色の液体と比較することによって、ビールが所望の色を有するかどうか決定するために使用することができる。廃水は、成分の有無について分析することができる。牛乳、ジュース、および他のスラリーなどの液体の食品検査では、センサ素子は、成分または分析物の有無について分析するために使用することができる。センサ素子は、例えば、染物業において、所望の色、所望の内容物、または製品の他の化学特性の生成中に測定基準を得るために、ある種の化学製品の生産にさらに役立ち得る。
【0088】
有利には、いくつかの実施形態によれば、そのようなセンサ素子を備えるセンサ素子、または血液分析システムは、流体中の分析物レベルの定量的測度を生じさせるために、検出器によって発生された信号と予め画定された較正基準を比較するために構成されたプロセッサをさらに備える。さらに、有利には、いくつかの実施形態によれば、較正基準は、タートラジン染料を含む水溶液などの染色ベースの較正解決策に基づいて得られる。好ましくは、染色ベースの水溶液が、タートラジンなどの較正染料を添加した典型的な水洗液から用意される。
【0089】
本発明の好ましい実施形態を添付図面に関してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】本発明の一実施形態によるセンサ組立体を備える液体試料分析装置の図である。
図2】一実施形態によるセンサ組立体の概略断面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に図1および図2を参照して、センサ組立体の一実施形態を、液体試料分析装置におけるその動作に関連して説明する。
図1は、シグナルプロセッサ8を有する分析部を有する液体試料分析装置1と、1つまたは複数の分析物センサ3(a~i)、4と、試料チャンバ2と、流体処理インフラ20とを概略的に示す。測定を実行するために、使用者は、分析装置1の入力ポート12a/bに液体試料を与えることができる。液体試料は、試料チャンバ2の第1の試料空間2aへ入口ポート6を通じて移送され、この第1の試料空間2aは、複数の分析物センサ3、4を備える。やはり上述したように、分析物センサ3、4は、複合液体試料、例えば全血試料中の分析物パラメータに関する実質的に同時の測定を行うように配置される。好ましくは、正確で信頼できるデータを得るために必要な試料量は、できるだけ小さい。体液中、特に全血中の複数の異なるパラメータを同時に測定するのに特に適しているセンサ組立体設計、および血液分析装置内のその使用の詳細な例は、例えば、EP2147307B1に見つけられる。本実施形態は、ここでは試料チャンバ2の下流端に配置された多孔質膜センサ素子100の追加によって、この知られている組立体とは異なる。事前にプログラムされた命令がシグナルプロセッサ8に読み込まれた後、および/またはユーザ入力の後、分析物センサ3、4を用いて測定が実行される。分析物センサ3、4は、それぞれの分析物についての物理的パラメータを表す信号を生成し、この信号を分析部のシグナルプロセッサ8へ供給する。シグナルプロセッサ8は、分析物センサ3、4から信号を受け取り、これを処理し、処理された信号を使用者または続く/さらなるデータ分析への出力として示すようになされている。測定後、液体試料は排出され、試料チャンバは次の測定のために準備される。
【0092】
図1に示された分析装置の実施形態は、血液パラメータの測定に特に適合しており、センサ組立体の下流に任意の酸素化測定装置9をさらに備える。したがって、典型的には、測定、較正作業、および品質管理の手順を実行することは、流体処理インフラ20によってなされ得る異なる液体の装填、取り出し、水洗、清浄、および再装填を伴う。流体処理は、事前にプログラムされた命令および/またはユーザ入力に従ってシグナルプロセッサ8によって自動化された手法で制御することができる。流体処理インフラ20は、水洗/洗い落とし、較正、および品質管理の作業のために処理液(RINSE/CAL1、CAL2、QC1、QC2、QC3)で事前に満たされたいくつかの槽21を含む。処理液(RINSE/CAL1、CAL2、QC1、QC2、QC3)は、知られている組成を有する。所与のバッチの正確な組成は、槽21を備えるカセットに取り付けることができるチップ25に記憶することができ、チップ25は、シグナルプロセッサ8によって読むことができる。所与の処理ステップのための処理液(RINSE/CAL1、CAL2、QC1、QC2、QC3)は、流体切換弁22によって選択され、供給ライン12cを介して入口ポート6を通じて試料チャンバへ移送され得る。試料チャンバを正しく満たすことは、例えばそれぞれ入口6(「LS入口」10a)で、出口7(「LS BG」10b)で、および酸素化測定装置9(「LS OXI」10c)の直後で、試料チャンバ2の上流および下流に位置する液体センサ10a、10b、10cによってシステムを通じて、液界面の伝播を観察することにより目視検査によってまたは知られている手順に従って監視および検証することができる。分析装置を通じての流体の流れは、試料チャンバ2および酸素化測定装置9の下流に配置され、そこに流体ライン13を介して接続されたポンプ23、ここでは蠕動ホースポンプによって駆動される。排出された流体は、最終的に流体ライン14を通じて廃棄物槽24へ輸送される。
【0093】
始動すると、進行中の手法で、稼働時間中に、分析装置1は、自己制御ルーチンを実行する。何らかの異常が検出される場合、分析装置1は、使用者に偏差を示し、誤差状態を克服する手法をさらに示すことができる。他方で、分析装置が正常動作を示すとき、測定は、直ちに実行され得る。有利には、いくつかの実施形態によれば、自己制御ルーチンは、アイドル時間中に、すなわち、使用者の試料に対して実際の測定を実行するために使用されていない分析装置がアイドル状態にあるときに実行することができる。自己制御ルーチンは、例えば、チップ25に記憶されているような正確に知られている組成を用いて、較正グレード処理液上で実行される連続する反復測定を含むことができる。次いで、よく知られている組成に対して異なる分析物センサ3、4ごとに得られる信号は、それぞれの分析物測定のための基準を継続的に更新するために使用することができる。
【0094】
多孔質膜センサ素子110を有する第2の試料空間2bは、第1の試料空間2aと出口7との間で試料チャンバ2の下流部分に一体化されている。第2の試料空間2bは、試料チャンバ2の幾何学的形状の方向における急激な変化として流れを乱す要素104を含む短い送りチャンネル102を通じて第1の試料空間2aに接続されている。
【0095】
図2は、複合流体試料を保持する試料チャンバ2の断面詳細図を示し、試料チャンバ2は、チャンバ壁によって画定され、試料チャンバ2内における流体処理のために入口6から出口7への流れの方向を画定する入口6および出口7を有する。試料チャンバ2は、流れを乱す要素104を備える送りチャンネル102を通じて接続された第1の試料空間2aおよび第2の試料空間2bを備える。したがって、流れを乱す要素104は、第1の試料空間2aと第2の試料空間2bとの間で第2の試料空間2bの上流に配置される。
【0096】
第2の試料空間2bは、分析物を検出する多孔質膜センサ素子110を備える。多孔質膜センサ素子110は、流体試料に接触するセンサ面を画定する前面を有する多孔質膜を有する。センサ面は、第2の試料空間2bの方を向いており、多孔質膜は、センサ面にある各開口部から多孔質膜の中に延びる細孔を備える。細孔は、分析物に関して、第2の試料空間2bとの拡散性流体連通のために構成される。本明細書に概略的に示された実施形態において、センサ組立体は、全血試料中の複数の分析物を検出するように構成され、第2の試料空間2b内の多孔質膜センサ素子110は、高分子量分析物を検出するように構成され、より詳細には、溶血の基準としてヘモグロビンを検出するように構成される。
【0097】
第1の試料空間2aは、すでに上述したものなどのそれぞれのさらなる分析物を検出するいくつかのさらなるセンサ素子を備える。第1の試料空間2aは、典型的な流体処理動作中に層流レジームを維持するように構成される。第1の流体空間2aは、入口6から出口7への主方向に直交する切断面に見られるような長方形断面を有し、第1の試料空間2aのチャンネルの幾何学的形状を画定する典型的な寸法は、2mmから4mmの間、例えば2.4mmの幅、および0.3mmから0.5mmの間、例えば0.4mmの高さである。
【0098】
流れを乱す要素104は、試料チャンバ2の幾何学的形状における急激な変化として形成される。詳細には、流れを乱す要素は、第2の試料2b空間の送りチャンネル104を第1の試料空間2aを形成するチャンネルの主方向に実質的に直交する第1の試料空間2aの下流端に接続する接続ノズルとして形成され、送りチャンネル102の口におけるチャンネルの方向における急激な変化が、送りチャンネル102に局所化された流れの乱れを生成する。流体処理中、検出測定の準備で試料チャンバを満たすとき、局所化された流れの乱れにより、第2の試料空間2bに入る直前に流体試料とそれ自体の混合を行う。送りチャンネル102は、第1の試料空間2aの下流端における送りチャンネル102の口から第2の試料空間2bの入口穴まで測定されると約2mmの長さを有する。これにより、「よく攪拌された」複合流体試料が。第2の試料空間2bで直ちに調製される。
【実施例
【0099】
多孔質膜センサ素子を用いる測定のための試料空間のすぐ上流に流れを乱す要素を設けることによって、複合流体の連続的な部分中の高分子量分析物の検出に関する測定品質の改善を実現することができる。改善は、溶血した全血に関するおよび対応する溶血した血漿試料に関する測定間の信号比(WB/P比)を評価することによって定量化することができる。理想的なセンサ構成は、100%に近いWB/P比を有する。
【0100】
実現された改善は、試料チャンバ内の多孔質センサ素子の2つの異なる位置について行われた溶血した全血(HWB)に関する測定からの以下の比較データによって示される。データは、以下に表1および表2によって与えられる2つのデータセットにまとめられる。各データセットは、細胞の遊離ヘモグロビンの濃度100mg/dL(HWB100)を有する3つの公称同一の全血試料、および細胞の遊離ヘモグロビンの濃度100mg/dL(HWB100-血漿)を有する3つの対応する溶血した血漿試料に関する測定を含み、全血試料は45%のヘマトクリット値を有する。これらの試料と接触する多孔質膜は、光学的にプローブされ、所与の試料についての信号は、416nmの波長および461nmの波長における吸収度の差として毎回決定される。表中に与えられる信号値は、任意の単位で表されているのに対して、このように多孔質膜センサ素子ごとに決定され、ともに平均されたWP/P比は、パーセント単位で表されている。第1の試料空間の内側の第1の位置から試料チャンバの出口部分に一体化されている第2の試料空間内の第2の位置まで多孔質センサ素子を移動させることによって、第1の位置についての平均値66.5%から第2の位置についての平均値89.4%へのWB/P比の増加が観察される。
【0101】
表1に見られる第1のデータセットは、入口が第1の試料空間に連結する約15mm下流でそれぞれの試料チャンバの第1の試料空間の内側の第1の位置にそれぞれ配置されている多孔質膜センサPM3、PM4、PM5、PM6、PM8、PM10を用いた測定からのデータを示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表2に見られる第2のデータセットは、直角におよび上記連結の約2mm下流で第1の試料空間を連結する流れチャンネル内のそれぞれのセンサ組立体の第2の試料空間の内側の第2の位置にそれぞれ配置された多孔質膜センサPM19、PM20、PM21、PM22を用いた測定からのデータを示す。多孔質膜センサ素子の第2の位置は、図1および図2に概略的に示されるように、第2の試料空間内の位置に対応する。
【0104】
【表2】
図1
図2