(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ギヤスカイビング加工法
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
B23F5/16
(21)【出願番号】P 2022572856
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049239
(87)【国際公開番号】W WO2022145013
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】城越 教夫
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016113512(DE,A1)
【文献】実開昭63-79120(JP,U)
【文献】米国特許第2121840(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102018004241(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
円筒形状のワークの外周面および内周面のうちの一方の面である被削面に、歯切り加工を行うギヤスカイビング加工方法において、
前記ワークの前記被削面における円周方向の第1加工位置に、所定の切込み量となるように、第1スカイビングカッタを位置決めし、
前記被削面における前記第1加工位置から前記円周方向に180°離れた第2加工位置に、所定の切込み量となるように、第2スカイビングカッタを位置決めし、
前記ワークに対して第1スカイビングカッタを第1軸交差角となるように配置し、前記ワークに対して第2スカイビングカッタを第2軸交差角となるように配置し、
前記ワーク、前記第1、第2スカイビングカッタを同期回転させながら、前記第1、第2スカイビングカッタを前記ワークの回転軸に沿った方向に同時に送って、前記第1、第2スカイビングカッタの一方あるいは双方により、前記被削面の歯切り加工を行い、
前記第1スカイビングカッタと前記第2スカイビングカッタは、ねじれ角が逆のカッタであり、
前記第1軸交差角と前記第2軸交差角は、ワーク回転軸に対して、相互に、逆方向に同一量だけ傾斜した角度であり、
前記被削面の歯切り加工は、第1工程および第2工程の2工程を含み、
前記第1工程では、前記ワーク、前記第1、第2スカイビングカッタを、それぞれの回転軸回りに、第1方向に、同期回転させながら、前記第1、第2スカイビングカッタをワーク中心軸線に沿った方向に同時に送って、前記第1スカイビングカッタにより、前記被削面に創成される歯の左歯面および右歯面のうちの一方の歯面となる部分を切削し、前記第2スカイビングカッタは前記被削面の切削に関与しない状態とし、
前記第2工程では、前記ワーク、前記第1、第2スカイビングカッタを、それぞれの回転軸回りに、前記第1方向とは逆の第2方向に、同期回転させながら、前記第1、第2スカイビングカッタをワーク中心軸線に沿った方向に同時に送って、前記第2スカイビングカッタにより、前記被削面に創成される歯の左歯面および右歯面のうちの他方の歯面となる部分を切削し、前記第1スカイビングカッタは前記被削面の切削に関与しない状態とするギヤスカイビング加工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状のワーク(被削歯車)の外周面および内周面のうちの一方の被削面に、スカイビングカッタ(歯車型工具)を用いて歯切り加工を行うギヤスカイビング加工法に関する。
【背景技術】
【0002】
内歯車、外歯車の歯切り加工法としてギヤスカイビング加工法が知られている。ギヤスカイビング加工は、ワーク(被削歯車)の回転軸と工具回転軸に、軸角を与えた状態で、双方を歯数比に応じた回転比で回転させながら、工具をワークの軸方向に送ることで加工する。
【0003】
図4(a)は、ギヤスカイビング加工におけるスカイビングカッタによる内歯車用のワークの加工状態の一例を示す説明図である。スカイビング加工では、スカイビングカッタ1は、その回転軸1aが、ワーク3(被削内歯車)の回転軸3aと所定の交差角(軸交差角)となるように、配置される。スカイビングカッタ1は、ワーク3の被削面31(円形内周面)における円周方向の所定の加工位置に位置決めされる。ワーク3およびスカイビングカッタ1を同一方向に同期回転させる。この状態で、スカイビングカッタ1を、ワーク3の被削面31に沿って、ワークの回転軸3aの方向に送る。これにより、スカイビングカッタ1の切削刃1bによりワーク3の被削面31に内歯32が形成される。公知のように、創成される歯形に応じて、スカイビングカッタ1の切刃の形状、ねじれ角、スカイビングカッタ1とワーク3との間の軸交差角、スカイビングカッタ1およびワーク3のそれぞれの回転速度、スカイビングカッタ1の送り速度、切込み量等の加工条件が適切に設定される。
【0004】
なお、
図4(b)は
図4(a)に示すスカイビングカッタ1およびワーク3を単純化して示す模式図である。以下に説明する各図(
図1~
図3)においても、同様に、スカイビングカッタおよびワークを単純化して示してある。
【0005】
ここで、特許文献1に記載のスカイビング加工法では、同一のスカイビングツールを用いて、ワークピースに対して、歯切り加工を2回行い、創成される右歯面と左歯面の仕上げ加工を別工程で行うようにしている。特許文献2に記載の歯車加工法においては、スカイビングカッタを、被削材の軸方向および周方向に沿って移動させながら歯切り加工を行い、歯筋方向に歯面形状が変化する歯形、歯筋方向に歯丈が変化する歯形を創成できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-63506号公報
【文献】特開2020-19096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ギヤスカイビング加工では、スカイビングカッタで左歯面と右歯面とが同時に切削される場合には、左右の歯面が異なる形状の歯車の歯切り加工ができない。切削される左右の歯面において、すくい角が鋭角となる歯面に比べて、すくい角がマイナス(鈍角)となる反対側の歯面の加工精度が悪い。
【0008】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、歯すじ方向に沿って変化する歯形、左右の歯面が異なる歯形などを備えた歯車の歯切り加工を効率良く行うことのできるギヤスカイビング加工法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、円筒形状のワークの外周面および内周面のうちの一方の被削面に歯切り加工を行うギヤスカイビング加工法において、
前記ワークの前記被削面における円周方向の第1加工位置に、所定の切込み量となるように、第1スカイビングカッタを位置決めし、
前記被削面における前記第1加工位置から前記円周方向に所定の角度だけ離れた第2加工位置に、所定の切込み量となるように、第2スカイビングカッタを位置決めし、
前記ワークに対して第1スカイビングカッタを第1軸交差角となるように配置し、前記ワークに対して第2スカイビングカッタを第2軸交差角となるように配置し、
前記ワーク、前記第1、第2スカイビングカッタを同期回転させながら、前記第1、第2スカイビングカッタを前記ワークの回転軸の方向に同時に送って前記被削面の歯切り加工を行い、
前記歯切り加工においては、前記第1スカイビングカッタによって、前記被削面に創成される歯の左歯面および右歯面のうちの一方の歯面の切削を行い、前記第2スカイビングカッタによって、前記左歯面および右歯面のうちの他方の歯面の切削を行うことを特徴としている。
【0010】
本発明の方法では、2台のスカイビングカッタを用いてワークの歯切り加工を行う。歯切り加工を1工程で行う場合には、創成される歯の左右の歯面の一方を第1スカイビングカッタにより加工し、他方を第2スカイビングカッタにより加工する。1工程からなる歯切り加工により、左右の歯面が非対称な歯形の歯を、効率よく切削加工できる。
【0011】
また、歯切り加工を2工程で行うこともできる。この場合には、例えば、ワークの被削面に創成される歯の両側の歯面のうちの一方の歯面に対して第1スカイビングカッタの切刃が鋭角のすくい角となるように、加工条件を設定して、当該一方の歯面を切削する。次の工程では、他方の歯面に対して第2スカイビングカッタの切刃が鋭角のすくい角となるように、加工条件を設定して、当該他方の歯面を切削する。これにより、双方の歯面を精度良く切削できる。
【0012】
なお、ワークと第1、第2スカイビングカッタとの間の軸交差角を相互に異なる角度に設定することで、左右の歯面を異なる歯形に加工できる。ワークと第1、第2スカイビングカッタとの間の軸交差角を加工途中で変えることで、歯筋方向の途中から圧力角を変えることができる。これにより、歯筋方向に沿って圧力角が変化する左右対称な歯面、あるいは左右非対称な歯面を備えた三次元歯形が得られる。また、第1、第2スカイビングカッタのラジアル方向の送り量を変えることで、歯筋方向に沿って歯丈が変化するテーパ歯形(三次元歯形)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、内歯車用のワークの粗加工工程における第1、第2スカイビングカッタによるワークの加工状態の一例を示す説明図であり、(b)は軸交差角、回転方向および左歯面、右歯面を示す説明図であり、(c)は第1スカイビングカッタの中心を通るワークの直径線に沿った方向から見た場合の被削面に対する第1スカイビングカッタの配置関係を示す説明図であり、(d)は第2スカイビングカッタの中心を通るワークの直径線に沿った方向から見た場合の被削面に対する第2スカイビングカッタの配置関係を示す説明図である。
【
図2】(a)は仕上げ加工工程における第1、第2スカイビングカッタによるワークの加工状態の一例を示す説明図であり、(b)はワークの被削面に形成される内歯の右歯面、左歯面を示す説明図である。
【
図3】(a)は、内歯車用のワークの粗加工工程における第1、第2スカイビングカッタによるワークの加工状態の一例を示す説明図であり、(b)は主要な加工条件および右歯面、左歯面を示す説明図であり、(c)は第1スカイビングカッタの中心を通るワークの直径線に沿った方向から見た場合の被削面に対する第1スカイビングカッタの配置関係を示す説明図であり、(d)は第2スカイビングカッタの中心を通るワークの直径線に沿った方向から見た場合の被削面に対する第2スカイビングカッタの配置関係を示す説明図である。
【
図4】(a)はスカイビングカッタによる内歯車用のワークの加工状態の一例を示す説明図であり、(b)は、スカイビングカッタおよびワークを単純化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明のギヤスカイビング加工方法を用いた歯切り加工の実施の形態を説明する。以下の例は、本発明のギヤスカイビング加工法を用いた内歯車の加工法である。
【0015】
内歯車用のワークは、例えば、素材鍛造工程および旋削工程を経て得られる。ワークは、粗加工工程(第1歯切り工程)を経て、その被削面である円形内周面に内歯(歯溝)が加工される。次に、ワークは、熱処理等の工程を経た後に、仕上げ工程(第2歯切り工程)において、内歯の左歯面、右歯面に仕上げ加工が施される。粗加工工程および仕上げ工程に、本発明のギヤスカイビング加工が用いられる。
【0016】
図1(a)~(d)を参照して粗加工工程を説明する。粗加工工程では、ワーク3の被削面31における円周方向の第1加工位置P1(1)に、第1スカイビングカッタ10が位置決めされる。また、被削面31における第1加工位置P1
(1)から円周方向に180°の角度だけ離れた第2加工位置P2(1)に、第2スカイビングカッタ20が位置決めされる。すなわち、第1、第2スカイビングカッタ10、20は、ワーク3の回転軸3aを挟み対向する対向位置に配置されている。
【0017】
例えば、第1、第2スカイビングカッタ10、20として、同一構成のカッタが用いられる。また、ワーク3の回転軸3aに対して、第1、第2スカイビングカッタ10、20の回転軸10a、20aを、同一方向に同一角度だけ傾斜させる。すなわち、第1スカイビングカッタ10とワーク3との間の軸交差角(第1軸交差角)をθとすると、第2スカイビングカッタ20とワーク3との間の軸交差角(第2軸交差角)もθである。ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20の回転方向を、時計回りとする。
【0018】
この場合、第1スカイビングカッタ10では、鋭角のすくい角でワーク3の被削面31に当たる切れ刃の刃先部分によって、主として、内歯32の右歯面32Rが形成される部分が切削される。これに対して、第2スカイビングカッタ20では、鈍角のすくい角で被削面31に当たる切れ刃の刃先部分によって、主として、内歯32の左歯面32Lが形成される部分が切削される。
【0019】
第1、第2スカイビングカッタ10、20は、ワーク円周方向においては、直径線L上の第1、第2加工位置P1(1)、P2(2)に対して、被削面31から回転軸3aに沿った方向に外れた位置にある。第1、第2スカイビングカッタ10、20を、ワーク3の回転方向と同一方向に、同期回転させる。所定の切込み量となるように第1、第2スカイビングカッタ10、20をワーク直径方向に位置決めする。この状態で、ワーク3の被削面31に対して、ワーク3の回転軸3aに沿った方向に所定の速度で送りながら、被削面31を切削して内歯32の歯溝を創成する。第1スカイビングカッタ10によって、主として、内歯32の右歯面32Rとなる部分が切削され、第2スカイビングカッタ20によって、主として、内歯32の左歯面32Lとなる部分が切削される。
【0020】
次に、
図2(a)、(b)を参照して、第2歯切り工程である歯面の仕上げ工程を説明する。歯面の仕上げ工程においては、粗加工工程により被削面31に創成された各内歯32の右歯面32Rに、主として、第1スカイビングカッタ10を用いて仕上げ加工が施される。同時に、他方の左歯面32Lに、主として、第2スカイビングカッタ20を用いて仕上げ加工が施される。
【0021】
仕上げ加工においても、第1スカイビングカッタ10とワーク3との間の軸交差角はθに設定され、第2スカイビングカッタ20とワークとの間の軸交差角も同一のθに設定される。また、
図2(a)に示すように、仕上げ加工においては、第1スカイビングカッタ10の加工位置を、第1歯切り工程における直径線L上の第1加工位置P1(1)から右時計回りに微小角度δだけ移動させた第1加工位置P1(2)に変更する。第2スカイビングカッタ20の加工位置を、第1歯切り工程における直径線Lの第2加工位置P2(1)から円周方向における反時計回りに同一の角度δだけ移動させた第2加工位置P2(2)に変更する。移動量(角度)は微小であるが、図においては誇張して示してある。
【0022】
この状態で、ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20を同期回転させ、第1、第2スカイビングカッタ10、20を、ワーク3の回転軸3aの方向に送りながら左右の歯面32R、32Lに仕上げ加工を施す。
図2(b)は、ワーク3の被削面31に形成された内歯32を拡大して示す説明図である。内歯32の右歯面32Rの仕上げ加工は、主として第1スカイビングカッタ10によって施される。反対側の左歯面32Lの仕上げ加工は、主として第2スカイビングカッタ20によって施される。
【0023】
本例のギヤスカイビング加工方法では、第1、第2スカイビングカッタ10、20の送り速度、切込み量等を独立して制御できる。このため、左右の歯面が非対称な歯形の内歯を加工できる。例えば、第1、第2歯切り加工において、第1、第2スカイビングカッタ10、20の軸交差角を、加工途中において変化させることで、歯筋方向の途中から左右の歯面の圧力角を変えることができる。これにより、歯筋方向に沿って左右の歯面の圧力角が対称な状態で変化する三次元歯形を加工できる。また、歯筋方向に沿って左右の歯面の圧力角が非対称な状態で変化する三次元歯形を加工できる。さらに、第1、第2スカイビングカッタ10、20のラジアル方向の送り量(切込み量)を変えることで、左右の歯面が異なる歯形の歯車を加工できる。
【0024】
また、本例の方法によれば、2台の第1、第2スカイビングカッタ10、20を用いているので、単一のカッタを用いる場合に比べて、加工時間を短縮できる。また、各カッタ10、20の切れ刃の刃先摩耗を抑制でき、カッタ10、20の寿命を延ばすことができる。
【0025】
(改変例)
上記の例では、粗加工工程および仕上げ工程のそれぞれにおいて、第1、第2スカイビングカッタ10、20により、ワーク3の被削面31に同時加工を施している。各工程を、第1スカイビングカッタ10による加工と、第2スカイビングカッタ20による加工との2工程とすることもできる。
【0026】
図3は、2工程の場合の内歯車の歯切り加工を示す説明図である。
図3(a)に示すように、粗加工工程では、ワーク3の被削面31における円周方向の第1加工位置P1(1)に、第1スカイビングカッタ10が位置決めされる。また、被削面31における第1加工位置P1
(1)から円周方向に180°の角度だけ離れた第2加工位置P2(1)に、第2スカイビングカッタ20が位置決めされる。すなわち、第1、第2スカイビングカッタ10、20は、ワーク3の回転軸3aを挟み対向する対向位置に配置されている。
【0027】
本例では、
図3(b)に示すように、第1、第2スカイビングカッタ10、20として、ねじれ角が逆のカッタが用いられる。また、第1スカイビングカッタ10とワーク3との間の軸交差角(第1軸交差角)を+θとすると、第2スカイビングカッタ20とワーク3との間の軸交差角(第2軸交差角)は、-θである。すなわち、
図3(c)に示すように、ワーク3の回転軸3aと第1スカイビングカッタ10の回転軸10aとの間の軸交差角は、ワーク3の回転軸3aを中心とする時計回りの方向を正とした場合に、+θである。
図3(d)に示すように、ワーク3の回転軸3aと第2スカイビングカッタ20の回転軸20aとの間の軸交差角は-θである。また、第1工程では、ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20の回転方向は、時計回りである。第2工程では、ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20の回転方向は、反時計回りである。
【0028】
この場合、第1工程では、時計回りに回転する第1スカイビングカッタ10における、鋭角のすくい角でワーク3の被削面31に当たる切れ刃の刃先部分によって、主として、内歯32の右歯面32Rが形成される部分が切削される。これに対して、時計回りに回転する第2スカイビングカッタ20においては、第1スカイビングカッタ10によって切削された部分の表面に沿って切れ刃の刃先が移動し、被削面31の切削は行われない。
【0029】
次の第2工程では、反時計回りに回転する第2スカイビングカッタ20における、鋭角のすくい角でワーク3の被削面31に当たる切れ刃の刃先部分によって、主として、内歯32の左歯面32Lが形成される部分が切削される。これに対して、反時計回りに回転する第1スカイビングカッタ10においては、第2スカイビングカッタ20によって切削された部分の表面に沿って切れ刃の刃先が移動し、被削面31の切削は行われない。
【0030】
歯切り加工においては、第1、第2スカイビングカッタ10、20を、ワーク円周方向においては、直径線L上の第1、第2加工位置P1(1)、P2(2)に対して、被削面31から回転軸3aに沿った方向に外れた位置に、それぞれ位置させる。
【0031】
第1工程では、ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20を、時計回りに同期回転させ、所定の切込み量となるように第1、第2スカイビングカッタ10、20をワーク直径方向に位置決めする。この状態で、ワーク3の被削面31に対して、ワーク3の回転軸3aに沿った方向に所定の速度で送りながら、被削面31を切削して内歯32の歯溝を創成する。第1スカイビングカッタ10によって、主として、内歯32の右歯面32Rが形成される部分が切削される。第2スカイビングカッタ20は実質的に切削には関与しない。
【0032】
第2工程では、ワーク3、第1、第2スカイビングカッタ10、20を、反計回りに同期回転させ、所定の切込み量となるように第1、第2スカイビングカッタ10、20をワーク直径方向に位置決めする。この状態で、ワーク3の被削面31に対して、ワーク3の回転軸3aに沿った方向に所定の速度で送りながら、被削面31を切削して内歯32の歯溝を創成する。第2スカイビングカッタ20によって、主として、内歯32の左歯面32Lが形成される部分が切削される。第1スカイビングカッタ10は実質的に切削には関与しない。
【0033】
次に、第2歯切り工程である歯面の仕上げ工程においても、上記の粗加工工程と同様に加工条件が設定され、第1工程および第2工程が行われる。第1工程では、第1歯切り工程により被削面31に創成された各内歯32の右歯面32Rに、主として、第1スカイビングカッタ10により仕上げ加工が施される。第2工程では、他方の左歯面32Lに、主として、第2スカイビングカッタ20により仕上げ加工が施される。
【0034】
本例のギヤスカイビング加工方法では、第1スカイビングカッタ10の切れ刃の刃先は、右歯面32Rに対してすくい角が鋭角の状態で当たり、第2スカイビングカッタ20は、左歯面32Lに対して、すくい角が鋭角の状態で当たる。したがって、左右の歯面を精度良く加工できる。
【0035】
また、第1、第2スカイビングカッタ10、20の送り速度、切込み量等を独立して制御できるので、
図1、
図2に示す場合と同様に、左右の歯面が異なる歯形の内歯を加工できる。また、2台の第1、第2スカイビングカッタ10、20を用いているので、単一のカッタを用いる場合に比べて、各切れ刃の刃先摩耗を抑制できる。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記の例は、内歯車の歯切り加工に関するものであるが、本発明は、外歯車の歯切り加工にも同様に適用できることは勿論である。