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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】無機分離層を有する色変換フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240205BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G02B5/20
G02F1/13357
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023021384
(22)【出願日】2023-02-15
(65)【公開番号】P2023183369
(43)【公開日】2023-12-27
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】22179215.3
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン アルバート ルヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】デニス サバニ
(72)【発明者】
【氏名】ファンジャン リン
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ ビシグ
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516691(JP,A)
【文献】特開2019-061230(JP,A)
【文献】特開2021-102679(JP,A)
【文献】特開2021-091870(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022195(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/081380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光で励起すると、緑色光と赤色光を放出する色変換フィルムであって、前記色変換フィルムは次の多数の層を含み、
・1つの層は、緑色発光ペロブスカイト結晶を含む緑色発光ポリマー層である;及び
・1つの層は、インジウムおよび/またはカドミウムを含む赤色発光コアシェル量子ドットを含む赤色発光ポリマー層である;及び
前記赤色発光ポリマー層および前記緑色発光ポリマー層は、1つまたは複数の分離層によって分離されている;
前記分離層の少なくとも1つが
・無機材料からなり;及び
・連続層であり;及び
前記色変換フィルム全面をカバーする;
前記分離前記赤色発光ポリマー層および前記緑色発光ポリマー層とは直接接触され、または
1つ以上の非発光ポリマー層は赤色発光ポリマー層と分離の間にあり、前記非発光ポリマー層が存在するときはPETフィルムが選ばれる、
ことを特徴とする、色変換フィルム。
【請求項2】
前記分離層は、酸素及び水蒸気の拡散を妨げ、
・10g/m2*日未満の水蒸気透過率(WVTR)(40℃/90%r.h.の温度/相対湿度でISO 15106-3:2003によって決定される);及び/又は
・10cm/m2*bar未満の酸素透過率(OTR)(温度23℃/相対湿度90%、及び大気圧で、ISO15105によって決定される)
を有する請求項1記載の色変換フィルム。
【請求項3】
保護層は、前記赤色発光ポリマー層および前記緑色発光ポリマー層の外側に配置され、
前記保護層は、無機材料からなり、及び連続層である、
請求項1又は2に記載の色変換フィルム。
【請求項4】
前記分離層または前記保護層が、金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物およびシリコン窒化物からなる群から独立して選択される、請求項3に記載の色変換フィルム。
【請求項5】
前記分離層または前記保護層が、SiO(x=1.7~2.3)、AlO(x=1.3~1.7)およびSi(x=3およびy=3.5~4.5)からなる群から独立して選択される、請求項3に記載の色変換フィルム。
【請求項6】
前記分離層または前記保護層が、SiO(x=1.7~2.3)、AlO(x=1.3~1.7)およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項3に記載の色変換フィルム。
【請求項7】
前記緑色発光ポリマー層および/または前記赤色発光ポリマー層のポリマーが独立してアクリレートまたはメタクリレートを含む、請求項1又は2に記載の色変換フィルム。
【請求項8】
前記緑色発光ペロブスカイト結晶が臭化ホルムアミジニウム鉛(FAPbBr)から選択され;および/または前記赤色発光コアシェル量子ドットは、インジウムを含むコアシェル量子ドットから選択される、請求項1又は2に記載の色変換フィルム。
【請求項9】
・10~500マイクロメートルの総フィルム厚さを有する;及び
・分離層は1nm~10マイクロメートルの厚さを有する;及び/又は
・緑色発光層と分離層との間に1つ以上の前記非発光ポリマー層が配置される、
請求項1又は2に記載の色変換フィルム。
【請求項10】
・1つ以上の第1の保護層が、前記分離層とは反対側の前記赤色発光ポリマー層に隣接して配置される;及び
・1つ以上の第2の保護層が、前記分離層とは反対側の前記緑色発光ポリマー層に隣接して配置され、
これにより、各保護層が独立して
・無機材料からなり;及び
・連続層であり;及び
前記色変換フィルムの全領域をカバーする;及び
任意に、前記赤色発光ポリマー層と前記保護層との間に1つ以上の前記非発光ポリマー層が配置され、および/または前記緑色発光ポリマー層と前記保護層との間に1つ以上の前記非発光ポリマー層が配置される、
ことをさらに含む、請求項3に記載の色変換フィルム。
【請求項11】
・1つの前記第1の保護層、1つの前記第2の保護層および1つの前記分離層;及び
・1つの前記第1の保護層、1つの前記第2の保護層、および2つの前記分離層、
を含む多数の層を含む、請求項10に記載の色変換フィルム。
【請求項12】
前記保護層と前記赤色発光ポリマー層または前記緑色発光ポリマー層との間に配置された1つ以上の非発光ポリマー層を含む、請求項3に記載の色変換フィルム。
【請求項13】
層配列を備え、以下の多数の層を含む、請求項3に記載の色変換フィルム。
a.護層/緑色発光ポリマー層/離層/赤色発光ポリマー層/護層;
又は
b.護層/1つ以上の非発光ポリマー層/緑色発光ポリマー層/1つ以上の非発光ポリマー層/離層/赤色発光ポリマー層/護層;又は
c.護層/1つ以上の非発光ポリマー層/緑色発光ポリマー層/1つ以上の非発光ポリマー層/離層/非発光ポリマー層/赤色発光ポリマー層/非発光ポリマー層/護層
【請求項14】
前記緑色発光ポリマー層のポリマーが、前記赤色発光ポリマー層のポリマーよりも極性が低く、極性の比率は、Zgreen:Zred < 1:2で示される;及び
ここで、Zは(酸素、窒素、硫黄、およびリン)の合計の炭素に対するモル比によって決定される、
請求項1又は2に記載の色変換フィルム。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の色変換フィルムを含むディスプレイバックライト構成要素。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の色変換フィルムを含む発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色のペロブスカイト結晶の層と赤色のコアシェル量子ドットの層と、それによってこれらの層を分離する特定の分離層とを含む色変換フィルムに関する。本発明はさらに、そのようなフィルムを製造する方法、およびそのようなフィルムを含むデバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
最先端の液晶ディスプレイ(LCD)またはディスプレイ構成要素は、発光結晶(量子ドット)ベースの構成要素を含む。特に、そのようなLCDのバックライト構成要素は、赤、青、および緑の光からなるRGBバックライトを含み得る。今日、通常、発光結晶(量子ドット)を使用して、このようなバックライト構成要素のバックライト色を生成している。
【0003】
このような構成要素の製造は、さまざまな課題に直面している。課題の1つは、発光結晶を構成要素に埋め込むことである。発光結晶の化学的特性が異なるため、発光結晶を構成するさまざまな埋め込み材料間、または同じ材料内に埋め込まれた発光結晶間でさえ、非互換性がある可能性がある。このような非互換性は、ディスプレイ構成要素の材料の劣化につながる可能性があり、したがって、そのようなディスプレイの寿命に影響を与える可能性がある。
【0004】
さらに、発光結晶ベースの構成要素は、湿度及び/又はや酸素による劣化に関する問題に対処することがよくある。発光ペロブスカイト結晶は主に湿気/水の存在によって劣化し、発光コアシェル量子ドットは主に酸素の存在によって劣化する。湿度と酸素の両方に対して十分な安定性を備えた、緑色発光ペロブスカイト結晶と赤色発光コアシェル量子ドットを含むディスプレイ構成要素を実現することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によって解決される問題は、従来技術の欠点を克服することである。特に、本発明は、安定性に関する先行技術の欠点を克服する。
【0006】
特に明記しない限り、次の定義がこの仕様に適用される:
【0007】
本発明の文脈で使用される用語「a」、「an」「the」および同様の用語は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む」という用語は、「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」のすべてを含むものとする。本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、百分率は重量%として与えられる。「独立して」は、1つの置換基/イオンが、指定された置換基/イオンの1つから選択され得るか、または上記の2つ以上の組み合わせであり得ることを意味する。
【0008】
「発光結晶」(LC)という用語は、この分野で知られており、本発明の文脈では、半導体材料でできた2~100nmの結晶に関する。この用語は、通常2~10nmの範囲の量子ドットと、通常10~100nmの範囲のナノ結晶を含む。
【0009】
LCは、その用語が示すように、発光を示す。本発明の文脈において、発光結晶という用語は、単結晶と多結晶粒子の両方を含む。後者の場合、1つの粒子は、結晶または非晶質の相境界によって接続された複数の結晶ドメイン(粒子)で構成されている場合がある。発光結晶は、直接バンドギャップ(通常は1.1~3.8eV、より通常は1.4~3.5eV、さらに通常は1.7~3.2eV)を示す半導体材料である。バンドギャップ以上の電磁放射が照射されると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が残る。形成された励起子(電子-電子正孔ペア)は、フォトルミネッセンスの形で放射的に再結合し、最大強度はLCバンドギャップ値を中心に、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子源および正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示す可能性がある。
【0010】
「量子ドット」(QD)という用語は知られており、特に、典型的には2~10nmの直径を有する半導体ナノ結晶に関連する。この範囲では、量子ドットの物理半径はバルク励起ボーア半径よりも小さく、量子閉じ込め効果が支配的になります。その結果、QDの電子状態、したがってバンドギャップは、QDの組成と物理的サイズの関数になります。つまり、吸収/発光の色はQDのサイズと関連しています。量子ドット サンプルの光学品質は、それらの均一性と直接関連しています (単分散量子ドットが多いほど、発光の FWHM が小さくなります)。量子ドットがボーア半径よりも大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合の非放射経路が支配的になる可能性があるため、サンプルは発光しなくなる可能性があります。したがって、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズとサイズ分布によって定義されます。典型的な量子ドット組成物は、カドミウムまたはインジウムを、例えばセレン化カドミウム(CdSe)、リン化インジウム(InP)の形で含む。
【0011】
「コアシェル量子ドット」という用語は知られており、具体的には、典型的にはインジウム含有コアまたはカドミウム含有コアを含み、典型的にはCdSeコアを有するか、または典型的には硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化カドミウム(CdS)、またはそれらの組み合わせを含む追加のシェルを有するInPコアを有する量子ドットに関する。コアシェル量子ドットは、複数のシェルまたはシェル勾配を含む場合がある。
【0012】
「ペロブスカイト結晶」という用語は知られており、特にペロブスカイト構造の結晶化合物を含む。このようなペロブスカイト構造は、それ自体が知られており、一般式 M1M2X3 の立方晶、擬立方晶、正方晶、または斜方晶として記述されている。ここで、M1は配位数12(cuboctaeder)の陽イオン、M2は配位数6(octaeder)の陽イオン、Xは格子の立方晶、擬立方晶、正方晶、または斜方晶の位置にある陰イオンである。これらの構造では、選択された陽イオンまたは陰イオンが他のイオン(確率論的または規則的に最大30原子%)に置き換えられ、元の結晶構造を維持したまま、ドープされたペロブスカイトまたは非化学量論的ペロブスカイトが得られる。好ましくは、発光ペロブスカイト結晶は、ほぼ等尺性(球状または立方体など)である。直交する3つの次元すべてのアスペクト比(最長方向:最短方向)が1~2の場合、粒子はほぼ等尺性であると見なされる。したがって、LCsの集合体は好ましくは、50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、より好ましくは75~100%(n/n)等尺性ナノ結晶を含む。
そのような発光ペロブスカイト結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号より知られている。
【0013】
「ポリマー」という用語は知られており、繰り返し単位(「モノマー」)を含む有機および無機の合成材料を含む。ポリマーという用語には、ホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。さらに、架橋ポリマーおよび非架橋ポリマーが含まれる。文脈に応じて、ポリマーという用語は、そのモノマーおよびオリゴマーを含むものとする。ポリマーには、例として、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー、シラザンポリマー、シリコンポリマーおよび環状オレフィン共重合体を含む。ポリマーは、この分野で一般的であるように、重合開始剤、安定剤、および充填剤などの他の材料を含むことができる。
【0014】
本発明の第1の態様は、青色光による励起時に緑色および赤色光を放射する色変換フィルムに関する。本発明のフィルムは多数の層を含み、その1つの層は緑色発光ペロブスカイト結晶を含む緑色発光ポリマー層である; 1つの層は、インジウムまたはカドミウムを含む赤色発光コアシェル量子ドットを含む赤色発光ポリマー層であり; それにより、赤色発光ポリマー層および緑色発光ポリマー層は、1つまたは複数の分離層によって分離される。適切な分離層は、無機材料からなり、赤色および/または緑色発光ポリマー層の全領域をカバーする。さらに、色変換フィルムは、赤色発光ポリマー層および/または緑色発光ポリマー層に取り付けられた1つまたは複数の保護層を含んでもよい。さらに、色変換フィルムは、1つ以上の非発光ポリマー層を含んでもよい。
【0015】
本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0016】
色変換フィルム:
色変換フィルムは、それ自体が知られており、ディスプレイなどの商品に広く応用されている。本発明によれば、そのようなフィルムは、青色光を部分的または完全に赤色光および緑色光に変換する。通常、青色光は部分的に変換され、青色、緑色、および読み取りスペクトルの光が放出されます。青色光の強さ、緑色・赤色発光体の濃度・膜厚・量を調整することで、お客様のご要望に合わせて発光色を調整することができる。
このような色変換フィルムは、積層構造として記述され、「赤色発光ポリマー層」、「緑色発光ポリマー層」、「分離層」、および「保護層」などの個々の層によって識別され、必要に応じて「非発光ポリマー層」によって識別される。
色変換フィルムは、通常、すべての個々の層を含めて、10~500マイクロメートル、好ましくは20~250マイクロメートル、最も好ましくは30~200マイクロメートルのフィルム厚さを有する。
【0017】
本発明の色変換フィルムを組み立てて、ディスプレイバックライト構成要素を得ることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載の色変換フィルムを含むディスプレイバックライト構成要素も提供する。
【0018】
本発明の色変換フィルムを組み立てて、液晶ディスプレイなどの発光デバイスを得ることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載の色変換フィルムを含む発光デバイス、好ましくは液晶ディスプレイも提供する。
【0019】
分離層:
分離層は、ラミネート構造や色変換フィルムに実装されることがよくあります。名前が示すように、その機能は2つの層を空間的に分離することである。
【0020】
本発明によれば、分離層は本質的に無機材料からなるか、または無機材料からなる。適切な無機材料は、金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物、およびシリコン窒化物からなる群から選択することができる。適切な無機材料には、SiO(x=1.7~2.3)、AlO(x=1.3~1.7)、およびSi(x=3およびy=3.5~4.5)が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の文脈において、分離層は、完全に、または本質的に完全に、第1の発光ポリマー層の1つの表面をカバーする。積層構造の境界上のセクションが機能層でコーティングされず、それによって製造が可能または容易になるフィルム製造(「予備領域」)が当分野で知られている。そのようなコーティングされていない領域が存在する場合でも、当業者は、積層構造(すなわち、色変換フィルム)が予備領域を除いて分離層によって完全に覆われていることを理解するであろう。このようなスペア領域は、通常、積層構造の総領域の5%未満である。
【0022】
本発明の文脈において、分離層は、第1の発光層と第2の発光層との間に配置される。分離層および発光層は、直接接触していてもよく、または1つ以上の非発光ポリマー層によって離間されていてもよい。
【0023】
本発明の文脈において、分離層は連続層である。連続という用語が意味するように、層は非多孔性で、欠陥がありません。通常、そのような層の厚さは、1nmから10マイクロメートルの間、好ましくは10nmから1マイクロメートルの間である。通常、このような層の厚さは10ナノメートルを超える。このような層は、本明細書に記載の材料から構成される場合、特に酸素および水蒸気に対してガスバリア特性を示す。
【0024】
有利な実施形態では、分離層は湿気バリアの特性を提供する。実施形態において、分離層は、10g/m2*日未満、好ましくは1g/m2*日未満、最も好ましくは0.1g/m2*日未満の水蒸気透過率(WVTR)を有する。WVTRは、ISO 15106-3:2003によって、40℃/90%r.h.の温度/相対湿度で決定される場合がある。
【0025】
有利な実施形態では、分離層は酸素バリアの特性を提供する。実施形態において、酸素透過速度(OTR)は、10cm/m2*日未満、好ましくは1cm/m2*日未満、最も好ましくは0.1cm/m2*日未満である。OTRはISO15105により温度23℃/90%r.h.及び大気圧で測定される。
【0026】
本明細書で論じる分離層を1つ以上含めることによって、光学特性が悪影響を受けないことが見出された。むしろ、フィルムの安定性が向上し、有益な光学特性が保持される。
【0027】
保護層:
保護層は、ラミネート構造や色変換フィルムに実装されることがよくある。名前が示すように、それらの機能は積層構造のより敏感な層を保護することである。このように、保護層は例えば上層および/または下層として発光層の外側に配置される。積層構造におけるその位置を除いて、化学組成および他の特性は、層を分離するために上述した通りである。その結果、保護層は本質的に無機材料で構成されているか、無機材料で構成されている。本発明の文脈において、分離層は連続層である。連続という用語が意味するように、層は非多孔性で、欠陥がない。通常、このような層の厚さは1nm~10マイクロメートル、好ましくは10nm~1マイクロメートルである。
このような層は、本明細書に記載の材料から構成される場合、特に酸素および水蒸気に対してガスバリア特性を示す。さらに、そのような保護層は、本発明の積層構造および色変換フィルムの機械的完全性を改善する。1つまたは複数の保護層を含めることによって、光学特性が悪影響を受けないことが判明した。むしろ、機械的安定性が向上し、光学特性が保持される。
【0028】
有利な実施形態では、本明細書に記載の色変換フィルムが提供される。分離層の反対側の緑色発光ポリマー層に付着した1つまたは複数の第2保護層と、
これにより、各保護層は独立して無機材料で構成される; 連続層であり、好ましくは1nmから10マイクロメートルの厚さを有する; そして色変換フィルムの全面をカバーする。
【0029】
非発光ポリマー層:
このような層は当分野で知られており、相溶性を改善するため、または接着を改善するため、または製造を容易にするために色変換フィルムに含めることができる。PETフィルムまたはアクリル酸フィルムは、非発光ポリマー層の典型的な例である。
【0030】
緑色発光ポリマー層:
緑色発光結晶は、式(I)の化合物から選択されたペロブスカイト結晶である:
【0031】
「M (I)
ここで、A1は、1つまたは複数の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
M1は、1つまたは複数のアルカリ金属、特にCsを表し、
M2は、M1以外の1つまたは複数の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、疑似ハロゲン化物、および硫化物からなる群から選択される1つまたは複数の陰イオン、特にBr、
aは1-4を表し、
bは1-2を表し、
cは3-9を表し、
ここで、M1、またはA1、またはM1およびA1のいずれかが存在する。
【0032】
本発明のさらに有利な実施形態では、緑色発光結晶は、式(I’)の緑色発光ペロブスカイト結晶である:
【0033】
FAPbBr (I’)
特に、式(I)は、青色光を吸収すると、500nmから550nmの間、特に525nmから535nmnmを中心とする緑色光スペクトルの波長の光を放出するペロブスカイト発光結晶を記述する。
【0034】
適切なポリマーは、アクリレートおよびメタクリレートの群から選択することができる。
【0035】
赤色発光ポリマー層:
赤色のコアシェル量子ドットが知られており、このような量子ドットは、より短い波長の光による励起に応答して赤色光(630nm+/-30nm)を放出する。適切な結晶は、II-VI半導体化合物の群から、およびIII-V半導体化合物の群から選択される。
【0036】
好ましい実施形態では、好ましい赤色発光コアシェル量子ドットは、インジウムまたはカドミウム、最も好ましくはインジウムを含むコアを有する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、赤色発光コアシェル量子ドットは、リン化インジウムまたはセレン化カドミウム、最も好ましくはリン化インジウムを含むコアを有する。
【0038】
適切なポリマーは、アクリレートおよびメタクリレートの群から選択することができる。
【0039】
赤色のコアシェル量子ドットの結晶サイズは広い範囲で変化する可能性があるが、通常は1-10nm範囲内である。このような結晶は量子ドットと呼ばれ、微結晶と区別される。II-VI半導体化合物については、適切な範囲は1-10nm、好ましくは3-8nmである。III-V半導体化合物については、適切な範囲は1-8nm、好ましくは2-4nmである。
【0040】
有利な実施形態:
好ましくは、発光結晶(ペロブスカイトおよびコアシェルQD)は、単分散のサイズ分布を示す。本発明の文脈において、「単分散」という用語は、集団の少なくとも約60%、好ましくは集団の75%から90%、またはそれらの間の任意の整数または非整数が特定された粒子サイズの範囲内で該当する量子ドットの集団を指す。単分散粒子の集団は、直径の二乗平均平方根(rms)が20%未満、より好ましくはrmsが10%未満、最も好ましくはrmsが5%未満である。粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、顕微鏡検査によって決定することができる。
【0041】
本発明のさらに有利な実施形態では、緑色発光ポリマー層中のM2の濃度は、100~1000ppm、好ましくは300~1000ppm、最も好ましくは500~1000ppmであり、および/または赤色発光中のM+M3’の濃度は、ポリマー層は>300ppm、好ましくは>600ppm、最も好ましくは>1,200ppmであり、および/または赤色コア-シェル量子ドットはプレートレット構造を有する。
【0042】
本発明のさらに有利な実施形態では、赤色コアシェル量子ドットは、1nm≦sp≦10nm、特に3mn≦sp≦8nm、特に2nm≦sp≦6nm、特に2nm≦sp≦4nmの特定のサイズspを有する。
【0043】
別の有利な実施形態では、緑色発光ポリマーは、炭素zに対する(酸素+窒素+硫黄+リン)の合計のモル比を有し、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25を有する。z値は、ポリマーの極性の指標である。z≦0.3 の値は、非極性ポリマーを示す。ポリマーの極性がフィルムの性能に影響を与え、緑色発光フィルムのポリマーの極性が低いほど性能が向上することがわかった。好ましくは、緑色発光層zgreen中のポリマーのz値は、赤色発光層zred中のポリマーのz値未満である。好ましくは、Zgreen:Zred<1:2; より好ましくは、Zgreen:Zred<1:5である。
【0044】
別の有利な実施形態では、緑色および/または赤色発光ポリマーはアクリレートを含み、非常に具体的にはポリマーが環状脂肪族または環状芳香族アクリレートを含む。
【0045】
有利な実施形態では、固体ポリマーは、イソボルニルアクリレート(CAS 5888-33-5)、イソボルニルメタクリレート(CAS7534-94-3)、ジシクロペンタニル-アクリレート(CAS 79637-74-4、FA-513AS(日立化成、日本))、メタクリル酸ジシクロペンタニル(CAS 34759-34-7、FA-513M(日立化成、日本))、アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(CAS 86178-38-3)、メタクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(CAS 7779-31-9)、アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル(CAS 84100-23-2)、メタクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル(CAS 46729-07-1)を含む。
【0046】
別の有利な実施形態では、緑色および/または赤色発光ポリマー層のポリマーは架橋されている。
【0047】
別の有利な実施形態では、緑色および/または赤色発光ポリマー層のポリマーは、多官能性アクリレートを含む。
【0048】
本発明のフィルムは、市販の出発材料および当業者に知られている積層工程を使用して製造することができる。以下に示す例は、そのような製造を示している。
【0049】
建築:
本発明のフィルムは、多数の異なる建築で実施することができる。
【0050】
第1の実施形態において、本発明のフィルムは、赤色発光ポリマー層および緑色発光ポリマー層に加えて、1つの第1無機保護層、1つの第2無機保護層および1つの無機分離層を含む。接着層または他の非発光ポリマー層などの1つまたは複数の追加の層が存在し得ることが理解される。
【0051】
第2の実施形態では、本発明のフィルムは、赤色発光ポリマー層および緑色発光ポリマー層に加えて、1つの第1無機保護層、1つの第2無機保護層、および発光層間の2つの無機分離層を含む。ここでもまた、接着層または他の非発光ポリマー層などの1つまたは複数の追加の層が存在し得ることが理解される。
【0052】
第3の実施形態では、本発明のフィルムは多数の層を含み、1つ以上の無機層と緑色および赤色発光ポリマー層との間に非発光ポリマー層が存在する。この実施形態では、発光ポリマー層と無機分離/保護層との直接接触は、1つまたは複数の非発光ポリマー層を導入することによって回避される。
【0053】
さらなる実施形態において、本発明のフィルムは、無機保護層/緑色発光ポリマー層/無機分離層/赤色発光ポリマー層/無機保護層の層配列を含む。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明のフィルムは、無機保護層/1つまたは複数の非発光ポリマー層/緑色発光ポリマー層/1つまたは複数の非発光ポリマー層/無機分離層/赤色発光ポリマー層の層配列/無機保護層を含む。; または
【0055】
さらなる実施形態において、本発明のフィルムは、以下の層配列を含む: 無機保護層/1つ以上の非発光ポリマー層/緑色発光ポリマー層/1つ以上の非発光ポリマー層/無機分離層/非発光ポリマー層/赤色発光ポリマー層/非発光ポリマー層/無機保護層。
【実施例
【0056】
実施例1:緑色発光ポリマー層と赤色発光ポリマー層との間に無機バリア層(無機分離層)を有する本発明による色変換フィルムの調製。
【0057】
緑色インクの形成: 組成がホルムアミジニウム三臭化鉛(FAPbBr)の緑色のペロブスカイト発光結晶は、次のようにトルエンで合成される。すなわち、16mmol PbBr(5.87g、98% ABCR、カールスルーエ(DE))および16mmol FABr(2.00g、Greatcell Solar Materials、Queanbeyan、(AU))を、イットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)で6時間粉砕した。純粋な立方体FAPbBrが得られ、XRDで確認された。オレンジ色のFAPbBr粉末をオレイルアミン(80-90、Acros Organics、Geel(BE))(重量比FAPbBr:オレイルアミン=100:15)およびトルエン(>99.5%、puriss、Sigma Aldrich)に加えた。FAPbBrの最終濃度は1wt%であった。
次に、混合物を、直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用して、周囲条件(特に定義されていない場合、すべての実験の大気条件は、35℃、1気圧、空気中)で一定期間ボールミリングして分散させた。緑色発光のインクが得られる。
【0058】
緑色発光ポリマー層の形成: 0.1gの緑色インクを、1wt%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI ヨーロッパ、オランダ)および2wt%ポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン、ShinEtsu、KMP-590)をスピードミキサーに入れ、トルエンを真空(<0.01mbar)で蒸発させた。室温で。次いで、得られた混合物を、無機層の側で25ミクロンのバリアフィルム(供給者:I-components(Korea);PET基板上のSiO層)上に50ミクロンの層厚でコーティングし、次いで第2のバリアフィルムでラミネートした。これは、無機層の側面が緑色発光ポリマー層に隣接していた同じタイプのものである。その後、ラミネート構造を60秒間UV硬化させた(水銀ランプと石英フィルターを備えたUVAcube100、Hoenle、ドイツ)。得られた膜の初期性能は、22nmのFWHMで526nmの緑色発光波長を示した。
【0059】
赤色発光ポリマー層の形成: 0.1gの赤色発光結晶は、InPコアとZnSシェル(トルエンに1wt%懸濁)を有する等尺性コアシェルQDであり、UV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.5g FA-DCPA、日立化成、日本/0.5g Miramer M2372、ミウォン、韓国))と混合された。1wt%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI ヨーロッパ、オランダ)および2wt%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン)を含む、ShinEtsu、KMP-590)をスピードミキサーに入れ、室温で真空(<0.01mbar)によりトルエンを蒸発させた。次いで、得られた混合物を、緑色発光フィルム上のバリアフィルムのPET側に50ミクロンの層厚でコーティングし、次いで、前に使用したものと同じタイプのバリアフィルムでラミネートし、無機層の側が赤色発光ポリマー層に隣接するようにした。その後、ラミネート構造を 60秒間UV硬化させた(水銀ランプと石英フィルターを備えたUVAcube100、Hoenle、ドイツ)。得られたフィルムの初期性能は、45nmのFWHMで630nmの赤色発光波長を示した。
【0060】
フィルムの安定性は、60℃、相対湿度90%の人工気候室で、上記で作成した色変換フィルムのカット片を1,000時間テストした。次いで、緑色および赤色発光ポリマー層について、いわゆるエッジ進入を測定した(エッジ進入とは、フィルムの中心に向かってフィルムエッジから始まる酸素および/または湿気の拡散による劣化したペロブスカイト結晶および/またはコアシェル量子ドットに起因するデッドエッジを意味する)。
【0061】
エッジ進入結果は、60℃/90%r.Hで1,000時間を変更:
- グリーンエッジ侵入:0.7mm
- レッドエッジ侵入:0.5mm
【0062】
これらの結果から、緑色発光ポリマー層と赤色発光ポリマー層の両方が高温・高湿下で良好なエッジ侵入耐性を示す色変換フィルムを得ることができたことがわかる。高温高湿試験後の緑と赤の発光波長は一定であった。
【0063】
実施例1に対する比較例: 緑色発光ポリマー層と赤色発光ポリマー層との間に無機バリア層(無機分離層)を含まない色変換フィルムの作製。
【0064】
この手順は、例1における以前の手順と同じであるが、次の手順が変更されている。
-緑色発光ポリマー層がバリアフィルム1枚のみでラミネートされた。ラミネート用の2番目のフィルムはPETフィルムであった。
-グリーン層のUV硬化後、PETフィルムをサンドイッチ構造から取り外した。
-次いで、赤色発光ポリマー層を緑色発光ポリマー層上に直接形成し、続いて実施例1のように赤色層のUV硬化前にバリアフィルムでラミネートした。
【0065】
緑と赤の発光波長とFWHMは、実験1と同じであった。
【0066】
フィルムの安定性は、60℃、相対湿度90%の人工気候室で、上記で作成した量子ドット色変換フィルムのカット片を1,000時間テストした。次いで、緑色発光ポリマー層および赤色発光ポリマー層についてエッジ進入を測定した。
【0067】
エッジ進入結果は、60℃/90%r.Hで1,000時間を変更:
- グリーンエッジ侵入:0.7mm
- レッドエッジ侵入:2.0mm
【0068】
これらの結果は、緑色発光ポリマー層と赤色発光ポリマー層との間の無機分離層のない色変換フィルムは、赤色発光ポリマー層への大きなエッジ進入をもたらすことを示している。