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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20240205BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240205BHJP
   B01J 27/232 20060101ALI20240205BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240205BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240205BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J27/232 A
F01N3/08 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023042840
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】高須 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】尾上 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大野原 佑
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140846(JP,A)
【文献】特開2020-157262(JP,A)
【文献】特開平11-300203(JP,A)
【文献】特開2019-150781(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111841534(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106573229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/00-53/94
F01N 3/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
基材と、
該基材の上に配置される触媒層と、を備えており、
前記触媒層は、
前記基材の上に配置され、触媒金属として少なくともPdを含む第1層と、
前記第1層の上に配置され、触媒金属およびNOx吸蔵材を含む第2層と、
前記第2層の上に配置され、触媒金属として少なくともRhを含む第3層と、
を含み、
前記第2層は、前記排ガスの流通方向において前記基材の上流側端部から下流側に向けて配置され、前記触媒金属として少なくともPtおよびPdを含む上流側部分と、
前記排ガスの流通方向において前記基材の下流側端部から上流側に向けて配置され、前記触媒金属として少なくともPtを含む下流側部分と、
を有しており、
ここで、前記上流側部分における前記触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率A、前記下流側部分における前記触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率B、前記上流側部分における前記触媒金属の含有量に対するPt含有量の比をPt含有率C、前記下流側部分における前記触媒金属の含有量に対するPt含有量の比をPt含有率Dとしたときに、
前記Pd含有率Aは0.05以上0.3以下であり、かつ、
前記Pd含有率Aは前記Pd含有率Bよりも高く、
前記Pt含有率Cは0.7以上0.9以下であり、
前記Pt含有率Dは0.8以上である、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第2層のPd含有量に対する前記第2層のPt含有量の比が3以上である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記下流側端部は触媒金属としてPdを含み、前記Pd含有率Bが0.3未満である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記Pd含有率Bに対する前記Pd含有率Aの比(A/B)が2以上である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記上流側部分のコート量(g/L)に対する前記下流側部分のコート量(g/L)が0.9以上1.1以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記NOx吸蔵材がアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記NOx吸蔵材がバリウムを含む、請求項6に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記第3層は、触媒金属としてRhおよびPdを含む、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記第2層のPt含有量の合計が3.5g/L以上5g/L以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項10】
前記第2層のPd含有量の合計が0.5g/L以上1.25g/L以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
前記基材の筒軸方向の長さを100%としたときに、前記上流側部分の筒軸方向の長さが30%以上70%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項12】
前記基材の筒軸方向の長さを100%としたときに、前記下流側部分の筒軸方向の長さが30%以上70%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれる。従来、これらの有害成分を除去するために、基材と、触媒金属を含む触媒層と、を備えた排ガス浄化用触媒が用いられている。排ガス浄化用触媒に供給された排ガスは、触媒層と接触し、有害成分が浄化される。例えば、排ガス中のHCやCOは酸化されて水(HO)や二酸化炭素(CO)に変換(浄化)され、排ガス中のNOxは還元されて窒素(N)に変換(浄化)される
【0003】
内燃機関の始動時は、排ガス浄化用触媒が十分に暖機されておらず、触媒金属の活性が低い。このため、触媒金属が所定の活性温度に達するまで、有害成分の残った状態で排ガスが排出されてしまう虞がある。そのため、内燃機関の始動時に供給する混合気の空燃比(A/F)を薄くして、内燃機関の制御をリーン(酸素過剰)の状態、所謂、リーン始動制御とすることで、COやHCを低減させることがある。しかし、リーン雰囲気ではNOxから酸素を引き抜くことが困難で、NOxを浄化できない課題がある。そこで、リーン始動制御時の暖機過程におけるNOxの排出を抑制するために、NOx吸蔵材を含むNOx吸蔵還元(NSR:NOx Storage-Reduction)触媒が広く用いられている(特許文献1~3参照)。
【0004】
特許文献1には、三層からなり、下層にPtおよび/またはPdと酸素吸蔵材とを含み、中層にPtおよび/またはPdとNOx吸蔵材とを含み、表層にRhを含む排ガス浄化用触媒が開示されている。特許文献2には、Pdと、PtおよびRhの一種およびNOx吸蔵材と、を含み、Pdが上流側に担持されている排ガス浄化用触媒が開示されている。特許文献3には、PtおよびPdを含む金属層と、耐火性無機酸化物およびNOx吸蔵材とを含む触媒層を備え、PtとPdの担持量の比率(Pt/Pd)が0.7以上1未満である排ガス浄化用触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-143935号公報
【文献】特開2009-000624号公報
【文献】特開2010-104898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NOx吸蔵材は、混合気の空燃比が酸素過剰(リーン)である状態ではNOxを硝酸塩の形態で一時的に吸蔵し、空燃比がストイキ~リッチに切り替えられると吸蔵したNOxを放出する機能を有する成分である。排ガス中のNOxは、大部分が一酸化窒素(NO)であり、NOx吸蔵材がNOxを硝酸塩の形態で好適に吸蔵するためには、当該NOが酸化されたNOを生成する必要がある。本発明者らが検討した結果によれば、Ptはリーン雰囲気下でのNO酸化性能が高いが、その一方でPtは耐熱性が低い。高温かつ雰囲気変動する環境下では、Ptがシンタリングすることで触媒性能が低下しやすい傾向にある。このため、NOx吸蔵性能が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は上述の課題を鑑みてなされたものであり、NOx吸蔵性能が良好である排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって下記の構成の排ガス浄化用触媒が提供される。
【0009】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(1)は、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、基材と、該基材の上に配置される触媒層と、を備えている。上記触媒層は、上記基材の上に配置され、触媒金属として少なくともPdを含む第1層と、上記第1層の上に配置され、触媒金属およびNOx吸蔵材を含む第2層と、上記第2層の上に配置され、触媒金属として少なくともRhを含む第3層と、を含む。上記第2層は、上記排ガスの流通方向において上記基材の上流側端部から下流側に向けて配置され、上記触媒金属として少なくともPtおよびPdを含む上流側部分と、上記排ガスの流通方向において上記基材の下流側端部から上流側に向けて配置され、上記触媒金属として少なくともPtを含む下流側部分と、を有している。ここで、上記上流側部分における上記触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率A、上記下流側部分における上記触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率Bとしたときに、上記Pd含有率Aは0.5未満であり、かつ、上記Pd含有率Aは上記Pd含有率Bよりも高い。
【0010】
排ガス浄化用触媒の上流側の領域では、高温の排ガスが流入しやすいため、Ptの劣化(例えば浄化性能の低下)が生じやすい。そこで、第2層上流側部分においてNOx吸蔵材と、触媒金属としてのPdおよびPtと、を含むことにより、Ptの耐熱性を向上させることができる。また、排ガス浄化用触媒の下流側の領域では、高温の排ガスが比較的流入し難いため、Ptの劣化が進行しにくい。このため、第2層下流側部分においては、NO酸化性能が高いPtを多く含むことにより、NOx吸蔵量を高くすることができる。かかる構成によれば、耐久後もPtのNO酸化性能が好適に発揮され、NOx吸蔵性能が良好な排ガス浄化用触媒を実現することができる。
【0011】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(2)では、上記排ガス浄化用触媒(1)において、上記第2層のPd含有量に対する上記第2層のPt含有量の比が3以上である。
かかる構成によれば、Pdを含むことによって好適にPtの耐熱性が向上し、PtのNO酸化性能がより効果的に発揮されるため、NOx吸蔵性能に優れる排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0012】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(3)では、上記排ガス浄化用触媒(1)または(2)において、上記下流側端部は触媒金属としてPdを含み、上記Pd含有率Bが0.3未満である。
かかる構成によれば、第2層下流側部分において、より好適にNOx吸蔵量を増加させることができる。
【0013】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(4)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(3)のいずれか1つにおいて、上記上流側部分における上記触媒金属の含有量に対するPt含有量の比をPt含有率Cとしたときに、該Pt含有率Cは0.5以上0.7以下である。
かかる構成によれば、好適なNOx吸蔵性能を発揮させることができる。
【0014】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(5)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(4)のいずれか1つにおいて、上記下流側部分における上記触媒金属の含有量に対するPt含有量の比をPt含有率Dとしたときに、該Pt含有率Dは、0.7以上である。
かかる構成によれば、好適なNOx吸蔵性能を発揮させることができる。
【0015】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(6)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(5)のいずれか1つにおいて、上記Pd含有率Bに対する上記Pd含有率Aの比(A/B)が2以上である。
かかる構成によれば、特に高温の排ガスが流入しやすい上流側部分において、好適にptの耐熱性を向上させることができる。これにより、NOx吸蔵性能に優れる排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0016】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(7)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(6)のいずれか1つにおいて、上記上流側部分のコート量(g/L)に対する上記下流側部分のコート量(g/L)が0.9以上1.1以下である。
かかる構成によれば、好適なNOx吸蔵性能を発揮させることができる。
【0017】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(8)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(7)のいずれか1つにおいて、上記NOx吸蔵材がアルカリ土類金属を含む。また、ここに開示される排ガス浄化用触媒(9)では、上記排ガス浄化用触媒(8)において、NOx吸蔵材がバリウムを含む。
かかる構成によれば、NOx吸蔵材がより好適に硝酸塩の形態でNOxを吸蔵することができる。
【0018】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(10)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(9)のいずれか1つにおいて、上記第3層は、触媒金属としてRhおよびPdを含む。
かかる構成によれば、COおよびHCをより好適に浄化することができるため、NOの酸化反応が阻害されにくくなる。これにより、NOx吸蔵性能がさらに向上する。
【0019】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(11)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(10)のいずれか1つにおいて、上記第2層のPt含有量の合計が3.5g/L以上5g/L以下である。また、ここに開示される排ガス浄化用触媒(12)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(11)のいずれか1つにおいて、上記第2層のPd含有量の合計が0.5g/L以上1.25g/L以下である。
かかる構成によれば、PdによるPtの耐熱性向上効果と、PtのNO酸化性能とが好適に発揮される。これにより、NOx吸蔵性能に優れる排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0020】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(13)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(12)のいずれか1つにおいて、上記基材の筒軸方向の長さを100%としたときに、上記上流側部分の筒軸方向の長さが30%以上70%以下である。また、ここに開示される排ガス浄化用触媒(14)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(13)のいずれか1つにおいて、上記基材の筒軸方向の長さを100%としたときに、上記下流側部分の筒軸方向の長さが30%以上70%以下である。
かかる構成によれば、好適なNOx吸蔵性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス浄化システムの構成を模式的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の筒軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0023】
図1は、一実施形態に係る排ガス浄化システム100を示す模式図である。排ガス浄化システム100は、内燃機関2から排出される排ガスに含まれる有害成分、例えば、HC、CO、NOxを浄化する。この排ガス浄化システム100は、内燃機関2と排気経路3とを備えている。本実施形態に係る排ガス浄化システム100は、内燃機関2と、排気経路3と、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)8と、センサ9とを備えている。本技術における排ガス浄化用触媒は、この排ガス浄化システム100の一構成要素として内燃機関2の排気経路3に設けられている。そして排気経路3の内部を、排ガスが流通する。図中の矢印は排ガスの流れ方向を示している。なお、本明細書において、排ガスの流れに沿って内燃機関2に近い側を上流側、内燃機関2から遠ざかる側を下流側という。
【0024】
内燃機関2には、酸素と燃料ガスとを含む混合気が供給される。内燃機関2は、この混合気を燃焼させることで発生した熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。内燃機関2に供給される酸素と燃料ガスとの比率は、ECU8によって制御される。燃焼された混合気は排ガスとなって排気経路に排出される。本実施形態において、内燃機関2はガソリン車両のガソリンエンジンを主体として構成されている。ただし、内燃機関2はガソリンエンジン以外のエンジンであってもよい。内燃機関2は、例えばディーゼルエンジンであってもよく、ハイブリッド車に搭載されるエンジンであってもよい。
【0025】
ECU8は、内燃機関2とセンサ9とに電気的に接続されている。ECU8は、内燃機関2の運転状態を検出する各種センサ(例えば、酸素センサや、温度センサ、圧力センサ)9から信号を受信し、内燃機関2の駆動を制御する。ECU8の構成については従来と同様でよく、特に限定されない。ECU8は、例えば、プロセッサや集積回路である。ECU8は、例えば、車両等の運転状態や、内燃機関2から排出される排ガスの量、温度、圧力等の情報を受信する。また、ECU8は、例えば受信した情報に応じて、内燃機関2に対する燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を実施する。
【0026】
内燃機関2は、図示しない排気ポートにおいて排気経路3と接続される。本実施形態の排気経路3は、エキゾーストマニホールド4と排気管5とにより構成されている。内燃機関2は、エキゾーストマニホールド4を介して、排気管5に接続されている。排気管5の途中には、上流側から順に、第1触媒6と第2触媒7とが配置されている。ただし、第1触媒6と第2触媒7との配置は任意に可変であってよい。また、第1触媒6と第2触媒7との個数は特に限定されず、それぞれ複数個が設けられてもよい。また、第2触媒7の下流側には、さらに第3触媒が配置されていてもよい。
【0027】
ここに開示される排ガス浄化用触媒は、内燃機関2の排気経路3に配置される。ここに開示される排ガス浄化用触媒は、第1触媒6および第2触媒7のうちの少なくとも一方に使用することができる。
【0028】
図2は、排ガス浄化用触媒1の斜視図である。排ガス浄化用触媒1は、内燃機関2の排気経路内に配置されて、当該内燃機関2から排出される排ガスを浄化するものである。排ガス浄化用触媒1は、基材10と、基材10に形成された触媒層20(図3参照)と、を備える。なお、図2等において、矢印は、排気経路内に配置された際の排ガスの流れ方向を示す。矢印Xは、基材10の筒軸方向を示す。X1は、排ガスの流れ方向における上流側(フロント側)を示し、X2は排ガスの流れ方向における下流側(リア側)を示す。
【0029】
基材10は、排ガス浄化用触媒1の骨組みを構成する部材である。図2に示すように、本実施形態における基材10は、筒軸方向Xに延びる円筒形の外形を有している。なお、基材の外形は、図2に示す形状に限定されない。例えば、基材10の外形は、楕円筒形、多角筒形などでもよい。また、基材10には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、基材10は、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素などのセラミックス製でもよい。また、基材10は、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金などの合金製でもよい。
【0030】
図3は、排ガス浄化用触媒1を筒軸方向Xに沿って切断した断面の一部を拡大した部分断面図である。図3に示すように、基材10は、ストレートフロー型の基材である。すなわち、基材10は、複数のセル12と、当該複数のセル12を仕切る隔壁14とを有している。セル12は、筒軸方向Xにおいて基材10を貫通するガス流路である。排ガス浄化用触媒1に供給された排ガスは、セル12を通過して外部へ排出される。なお、セル12の形状、大きさ及び数等は特に限定されない。これらのセル12の構成は、排ガスの流量や成分などを考慮して適宜変更できる。例えば、図2に示すように、本実施形態におけるセル12の正面形状(筒軸方向Xに沿って見た形状)は正方形である。しかし、セルの正面形状は、平行四辺形、長方形、台形等の矩形、その他の多角形(例えば三角形、六角形、八角形)、円形状等の種々の幾何学形状でもよい。
【0031】
隔壁14は、隣接した2つのセル12を仕切る緻密部材である。この隔壁14は、筒軸方向Xに沿って、基材10の上流側端部10aから下流側端部10bまで延びている。このため、セル12に流入した排ガスは、筒軸方向Xに沿って直線的に流動する。すなわち、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒1では、基材10の筒軸方向Xと排ガス流通方向とが略同一方向になる。なお、ここに開示される技術を限定するものではないが、隔壁14の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。これによって、基材10の機械的強度を十分に確保できる。一方、隔壁14の厚みは、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。これによって、セル12の孔径を十分に確保できるため、セル12の閉塞による圧損上昇を抑制できる。
【0032】
基材10の全長や容量は、特に限定されず、内燃機関2の性能や排気管5の寸法等に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、基材10の筒軸方向Xに沿う長さ(全長)は、10mm~500mm(好適には50mm~300mm)の範囲内で設定され得る。また、基材10の体積(セル12の容積を含んだ見掛けの体積)は、概ね0.1~5L、例えば0.5~2L程度であるとよい。
【0033】
触媒層20は、基材10の表面(具体的には、隔壁14の上)に設けられている。触媒層20は、典型的には連通した多数の空隙を有する多孔質体である。なお、本明細書において「基材の上に触媒層が配置される」とは、触媒層の大部分が基材(隔壁)の表面上に存在していることを意味しており、触媒層の一部が基材(隔壁)の内部に入り込むことを禁止することを意図したものではない。典型的には、断面SEM画像に基づいた分析において、触媒層の80%以上(典型的には90%以上、例えば95%以上)が基材(隔壁)の表面に付着していれば、「基材の上に触媒層が配置される」ということができる。
【0034】
触媒層20は、排ガスを浄化する場である。排ガス浄化用触媒1に流入した排ガスは、排ガス浄化用触媒1の流路内(セル12)を流動している間に触媒層20と接触する。これによって、排ガス中の有害成分が浄化される。
【0035】
触媒層20は、上記したとおり、基材10の隔壁14の表面に設けられた多孔質層である。触媒層20の気孔率は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。これによって、触媒層20内部に排ガスが浸透しやすくなるため、より好適な浄化性能を発揮できる。一方、触媒層20の気孔率の上限は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、15%以下が特に好ましい。これによって、触媒層20の強度を十分に確保できる。なお、触媒層の気孔率は、筒軸方向に沿った断面SEM写真に画像解析処理を実施することによって測定できる。ここでの画像解析処理には、Image-Jなどの従来公知の解析ソフトを使用できる。
【0036】
図4は、ここに開示される排ガス浄化用触媒1の構成を模式的に示す図である。図4に示すように、排ガス浄化用触媒1は、基材10と、該基材10の上に配置される触媒層20と、を備えている。触媒層20は、基材10の上に配置される第1層21と、第1層21の上に配置される第2層22と、第2層22の上に配置される第3層23と、を含む。そして、第2層22は、排ガスの流通方向(基材10の筒軸方向Xでもある。)において基材10の上流側端部10a(図2参照)から下流側に向けて配置される第2層上流側部分22aと、排ガス流通方向において基材10の下流側端部10b(図2参照)から上流側に向けて配置される第2層下流側部分22bと、を有している。ここに開示される排ガス浄化用触媒1では、第2層22において触媒金属とNOx吸蔵材とを含んでおり、第2層上流側部分22aにおける触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率A、第2層下流側部分22bにおける触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率Bとしたときに、Pd含有率Aは0.5未満であり、かつ、Pd含有率AはPd含有率Bよりも高いことを特徴とする。
【0037】
触媒金属は、排ガス中の有害成分(HC、CO、NOx)の酸化(又は還元)を促進する金属材料である。具体的には、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)は、触媒金属との接触によって酸化反応が促進される。これによって、HCやCOは、水(HO)や二酸化炭素(CO)に変換される。一方、窒素酸化物(NOx)は、触媒金属との接触によって還元反応が促進される。これによって、NOxは、水(HO)と窒素(N)に変換される。触媒金属の具体例として、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)等の貴金属触媒が挙げられる。
【0038】
NOx吸蔵材は、混合気の空燃比が酸素過剰(リーン)である状態ではNOxを硝酸塩の形態で一時的に吸蔵し、空燃比がストイキ~リッチに切り替えられると吸蔵したNOxを放出する機能を有する成分である。かかるNOx吸蔵材としては、NOxに電子を供与し得る金属を含む材料(典型的には塩基性材料)を使用できる。NOx吸蔵材の一例としては、リチウム(Li)、カリウム(K)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属や、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)のようなアルカリ土類金属などが挙げられる。NOx吸蔵材は、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等の形態で含有されていてもよい。これらのなかでも、高いNOx吸蔵能を有する観点から、NOx吸蔵材は、アルカリ土類金属を含むことが好ましく、Baを含むことがより好ましい。特に限定されないが、例えば、第2層22においてNOx吸蔵材は、炭酸バリウムとして含まれ得る。第2層22は、上述したNOx吸蔵材を2種以上含んでいてもよい。
【0039】
NOx吸蔵材は、上記したとおり、混合気の空燃比が酸素過剰(リーン)である状態ではNOxを硝酸塩として一時的に吸蔵するが、この反応は一酸化窒素(NO)が酸化されたNOの状態であるときに生じ得る。排ガス中においてNOxは、ほとんどがNOとして存在しており、NOx吸蔵材が好適にNOxを硝酸塩の形態で吸蔵するためには、当該NOを酸化させる必要がある。触媒金属のうちPdおよびPtは酸化触媒としての活性が高く、本発明者らの検討によれば、特にPtはリーン雰囲気下でのNO酸化性能が高い。その一方で、Ptは耐熱性が低い傾向にあり、例えばガソリン車のような高温かつ雰囲気変動する環境下では、Ptがシンタリングすることで触媒性能が低下しやすい。したがって、耐久後においても高いNOx吸蔵性能を発揮させるためには、リーン雰囲気下におけるPtの耐熱性(耐久性)を向上させることが好ましい。そこで、ここに開示される排ガス浄化用触媒1では、第2層上流側部分22aにおいて、NOx吸蔵材と、触媒金属として少なくともPdおよびPtと、を含んでいる。NOx吸蔵材およびPtとともに、さらにPdを含むことにより、Ptの耐熱性を向上せることができる。特に排ガス流通方向における上流側部分では、高温の排ガスが流入しやすい傾向にある。すなわち、第2層上流側部分22aにおいてPdを含むことによりPtの耐熱性を向上し、耐久後であってもPtのNO酸化性能が好適に発揮されてNOx吸蔵性能を向上させることができる。これにより、高いNOx吸蔵性能を有する排ガス浄化用触媒1を実現することができる。
【0040】
第2層上流側部分22aは、上記したとおり触媒金属としてPdを含む。ここで、第2層上流側部分22aの触媒金属の含有量(g/L)に対する第2層上流側部分22aのPd含有量(g/L)の比(Pd含有量/触媒金属の含有量)を、Pd含有率Aとする。このとき、Pd含有率Aは0.5未満であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。一方で、上記したとおり、第2層上流側部分22aにおいてPdを含むことにより、Ptの耐熱性が向上して、NOx吸蔵性能が向上する。かかる観点からは、第2層上流側部分22aにおいてPd含有率Aは、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。
【0041】
第2層上流側部分22aは、上記したとおり触媒金属としてPtを含む。Ptを含むことにより、NOの酸化が好適に進み、NOx吸蔵材によってNOxが吸蔵されやすくなる。ここで、第2層上流側部分22aの触媒金属の含有量(g/L)に対する第2層上流側部分22aのPt含有量(g/L)の比(Pt含有量/触媒金属の含有量)を、Pt含有率Cとする。NOx吸蔵量を増加させる観点からは、Pt含有率Cは0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。一方で、Pdを所定量含むことにより、Ptの耐熱性(耐久性)を向上させることができる。かかる観点からは、Pt含有率Cは、0.95以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。
【0042】
第2層上流側部分22aにおけるPd含有量は、特に限定されないが、0.1g/L~1.5g/Lであることが好ましく、0.1g/L~0.75g/Lであることがより好ましい。また、第2層上流側部分22aにおけるPt含有量は、特に限定されないが、0.5g/L~2.5g/Lであることが好ましく、1g/L~1.75g/Lであることがより好ましい。
【0043】
特に限定されないが、第2層上流側部分22aにおけるNOx吸蔵材の含有量は、10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましく、20g/L以上がさらに好ましく、30g/L以上が特に好ましい。これによって、NOx吸蔵材(より具体的にはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属)と、NOとの化学反応が好適に進み、硝酸塩の形態でNOxを一時的に吸蔵することができる。NOx吸蔵材の含有量の上限は特に限定されないが、例えば50g/L以下が好ましく、45g/L以下であってもよく、40g/L以下であってもよい。なお、本明細書において、「NOx吸蔵材の含有量」は、例えば、誘導結合プラズマ分析(ICP:Inductively Coupled Plasma)や、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)、蛍光X線分析(XRF:X-Ray Fluorescence)等を用いることによって測定することができる。
【0044】
第2層上流側部分22aは、上記した触媒金属およびNOx吸蔵材以外の任意成分を含んでもよい。かかる任意成分としては、例えば、酸素吸蔵能を有する酸素吸蔵材(OSC材:oxygen storage capacity)、安定化剤などが挙げられる。
【0045】
OSC材としては、例えば、セリアや、セリア含有複合酸化物、例えば、CZ複合酸化物(CeO-ZrO複合酸化物)などが挙げられる。CZ複合酸化物は、CeOおよびZrOに加えて、希土類酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属種、アルミナ、シリカ等をさらに含んでいてもよい。CZ複合酸化物は、多結晶体または単結晶体であってよい。第2層上流側部分22aがOSC材を含む場合、OSC材の含有量は特に限定されないが、例えば30g/L~100g/Lであることが好ましく、50g/L~90g/Lであることがより好ましい。なお、本明細書において、「OSC材の含有量」は、例えば、上記したICP、EPMA、XRF等を用いることによって測定することができる。
【0046】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1の第2層下流側部分22bは、NOx吸蔵材と、触媒金属として少なくともPtと、を含んでいる。これにより、PtのNO酸化作用が好適に発揮されて、NOx吸蔵性能が向上する。
【0047】
第2層下流側部分22bは、第2層上流側部分22aと比較して高温の排ガスが流入し難く、第2層上流側部分22aよりもPtが劣化しにくい傾向にある。したがって、第2層下流側部分22bは、触媒金属としてPdを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。Ptの耐熱性(耐久性)を向上させる観点からは、第2層下流側部分22bは、触媒金属としてPtおよびPdを含んでいることが好ましい。ここで、第2層下流側部分22bの触媒金属の含有量(g/L)に対する第2層下流側部分22bのPd含有量(g/L)の比(Pd含有量/触媒金属の含有量)を、Pd含有率Bとする。このとき、Pd含有率BはPd含有率Aよりも低い。Pd含有率Bは、Pd含有率Aよりも低い限りにおいて特に限定されないが、例えば、0.3未満であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。Pd含有率Bは0であってもよいが、Ptの耐熱性を向上させる観点からは、Pd含有率Bは、例えば0.05以上であることが好ましく、0.1以上であってもよい。例えば、Pd含有率Bは、0.05以上0.1以下であることが好ましい。
【0048】
第2層下流側部分22bは、上記したとおり触媒金属としてPtを含んでいる。ここで、第2層下流側部分22bの触媒金属の含有量(g/L)に対する第2層下流側部分22bのPt含有量(g/L)の比(Pt含有量/触媒金属の含有量)を、Pt含有率Dとする。第2層下流側部分22bにおいては、第2層上流側部分22aと比較して高温の排ガスが流入し難く、Ptが劣化しにくい傾向にある。このため、好適なNO酸化性能を有するPtがより多く含まれているとよい。かかる観点からは、Pt含有率Dは、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。Pt含有率Dは1であってもよいが、Pdを含むことによってPtの耐熱性(耐久性)を向上させ、耐久後においても好適なNOx吸蔵性能を確保することができる。かかる観点からは、Pt含有率Dは0.95以下であってもよい。
【0049】
第2層下流側部分22bにおけるPd含有量は、特に限定されないが、0g/L~1.5g/Lであることが好ましく、0.1g/L~0.5g/Lであることがより好ましく、0.1g/L~0.25g/Lであることがさらに好ましい。また、第2層下流側部分22bにおけるPt含有量は、特に限定されないが、0.5g/L~3g/Lであることが好ましく、1.5g/L~2.5g/Lであることがより好ましい。
【0050】
なお、上記した第2層上流側部分22aおよび第2層下流側部分22bのPd含有量とPt含有量は、それぞれ、ICPとEPMAを用いることによって求めることができる。以下、第2層上流側部分のPd含有量の測定手順を例に挙げて説明する。まず、第2層上流側部分全体が含まれるように、第1層~第3層の上流側領域を排ガス浄化用触媒から切り出してサンプルを作成する。次に、サンプルを粉砕した粉体に対してICPを実施することによって、当該上流側領域のPdの総重量(g)を測定する。また、筒軸方向に沿った上流側領域の断面に対してEPMAを実施することによって上流側領域の元素マップを取得する。そして、この元素マップに基づいて、上流側領域のPd存在量Pdtotalに対する第2層上流側部分のPd存在量Pd22aの比(Pd22a/Pdtotal)を算出する。なお、この元素マップの解析には、従来公知の画像解析ソフト(Image-Jなど)を使用できる。そして、ICPで取得した「Pdの総重量(g)」に、「元素マップで取得したPdの存在比率(Pd22a/Pdtotal)」を掛けることによって第2層上流側部分のPdの重量(g)を算出できる。そして、この算出結果を、基材の容量(L)で除算することによって、「第2層上流側部分のPd含有量(g/L)」を算出することができる。
【0051】
特に限定されないが、第2層下流側部分22bにおけるNOx吸蔵材の含有量は、10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましく、20g/L以上がさらに好ましく、30g/L以上が特に好ましい。これによって、NOx吸蔵材(より具体的にはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属)と、NOとの化学反応が好適に進み、硝酸塩の形態でNOxを吸蔵することができる。NOx吸蔵材の含有量の上限は特に限定されないが、例えば50g/L以下が好ましく、45g/L以下であってもよく、40g/L以下であってもよい。
【0052】
第2層下流側部分22bは、上記した触媒金属およびNOx吸蔵材以外の任意成分(例えば、他の触媒金属やOSC材等)を含んでいてもよい。第2層下流側部分22bがOSC材を含む場合、OSC材の含有量は特に限定されないが、例えば30g/L~100g/Lであることが好ましく、50g/L~90g/Lであることがより好ましい。
【0053】
上記したとおり、第2層上流側部分22aは、高温の排ガスが流入しやすいため、Pdを含むことによるPtの耐熱性向上効果がより好適に発揮される。かかる観点からは、Pd含有率AはPd含有率Bよりも高いとよい。具体的には、Pd含有率Bに対するPd含有率Aの比(A/B)が1.5以上であることが好ましく、2以上であってもよく、3以上であることがより好ましく、6以上であってもよい。かかるPd含有率Bに対するPd含有率Aの比(A/B)の上限は特に限定されないが、例えば10以下程度であるとよい。
【0054】
第2層22は、上記した観点から触媒金属として少なくともPdおよびPtを含む。NOx吸蔵量を好適に増加させる観点からは、第2層22におけるPt含有量の合計(g/L)がPd含有量の合計(g/L)よりも多いことが好ましい。第2層22におけるPdとPtの含有量の合計の割合は特に限定されないが、第2層22のPd含有量(g/L)に対する第2層22のPt含有量の合計(g/L)の比(以下、単に「Pt/Pd」ともいう。)が3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、4.5以上であってもよい。Ptの耐熱性を好適に向上させる観点からは、第2層22におけるPt/Pdは、6以下であることが好ましく、例えば5.7以下であってもよい。
【0055】
第2層22におけるPd含有量は、特に限定されないが、0.1g/L~1.5g/Lであることが好ましく、0.5g/L~1.25g/Lであることがより好ましい。また、第2層22におけるPt含有量は、特に限定されないが、1g/L~5.5g/Lであることが好ましく、3.5g/L~5g/Lであることがより好ましい。
【0056】
第2層上流側部分22aは、排ガス浄化用触媒(基材)の上流側端部10aから、下流側に向けて配置される。第2層上流側部分22aの筒軸方向の長さLaは基材の全長Lよりも短ければよい。第2層上流側部分22aの筒軸方向の長さLaは、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒全体の長さLの20%以上(例えば25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上)であって、80%以下(例えば75%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、例えば60%以下)であるとよい。
【0057】
第2層下流側部分22bは、排ガス浄化用触媒(基材)の下流側端部10bから上流側に向けて配置される。第2層下流側部分22bの筒軸方向の長さLbは基材の全長Lよりも短ければよい。第2層下流側部分22bの筒軸方向の長さLbは、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒全体の長さLの20%以上(例えば25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上)であって、80%以下(例えば75%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、例えば60%以下)であるとよい。
【0058】
特に限定されないが、第2層上流側部分22aが上記排ガス浄化用触媒(基材)の長さLの凡そ50%(すなわち基材全長の1/2)にあたる部分に形成され、第2層下流側部分22bが上記排ガス浄化用触媒(基材)の長さLの凡そ50%(すなわち基材全長の1/2)にあたる部分に形成されていると好ましい。これにより、第2層上流側部分22aと第2層下流側部分22bとの構成を顕著に異ならせることができ、本願発明の効果を高いレベルで発揮することができる。
【0059】
第2層上流側部分22aの筒軸方向の長さLaと、第2層下流側部分22bの筒軸方向の長さLbとの合計(La+Lb)は、La+Lb≒Lであることが好ましい。かかる態様とすることで、第2層22を通らずに隔壁内をすり抜ける排ガスが無くなるため、より好適にNOxを吸蔵することができる。ただし、第2層上流側部分22aの筒軸方向の長さLaと、第2層下流側部分22bの筒軸方向の長さLbとの合計(La+Lb)は、例えばL≦La+Lb<2Lであってもよく、L≦La+Lb<1.5Lであってもよい。すなわち、ここに開示される排ガス浄化用触媒は、筒軸方向の中央部分において第2層上流側部分22aと第2層下流側部分22bとが一部重なり合った多層構造(例えば上下二層構造)とすることもできる。その場合、Ptの耐熱性向上の観点から、第2層上流側部分22aを排ガスに接する表面側(隔壁14の表面から遠い側)に配置することが好ましい。
【0060】
第2層上流側部分22a、第2層下流側部分22bのそれぞれのコート量は特に限定されない。隔壁14の排ガスの流通性を高くして、圧損を低減する観点からは、基材の体積1L当たりについて、それぞれ概ね200g/L以下、好ましくは180g/L以下、例えば155g/L以下とするとよい。一方、NOx吸蔵量の増加、および他の排ガス浄化性能をより良く向上する観点からは、基材10の体積1Lあたりについて、それぞれ概ね10g/L以上、好ましくは30g/L以上、例えば50g/L以上とするとよい。上記範囲を満たすことにより、圧損の低減と排ガス浄化性能の向上とをさらに高いレベルで両立することができる。なお、第2層上流側部分22aについてのコート量とは、単位体積あたりの基材10に含まれる第2層上流側部分22aの重量をいう。また、第2層下流側部分22bについてのコート量とは、単位体積あたりの基材10に含まれる第2層下流側部分22bの重量をいう。ただし、基材の体積は、筒軸方向Xに沿って第2層22が形成されている部分の基材についてのみ考慮し、当該第2層22が形成されていない部分の基材については考慮しない。
【0061】
第2層上流側部分22aに対する第2層下流側部分22bとのコート量の比は、特に限定されないが、0.9以上1.1以下であることが好ましい。第2層上流側部分22aと第2層下流側部分22bとのコート量を概ね均一(すなわち、上記したコート量の比の範囲内)とすることで、NOx吸蔵性能を向上させることができる。ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。NO酸化反応は、反応が進みにくい傾向にある。このため、上記したように第2層上流側部分22aと第2層下流側部分22bとのコート量を概ね均一とすることで、排ガスの流速が一定になりNOと触媒金属との接触頻度を増やすことができる。これにより、NO酸化反応を好適に促進できるものと推測される。すなわち、ここに開示される技術では、基材の体積1L当たりの第2層上流側部分22aと第2層下流側部分22bとのコート量が概ね均一であるにもかかわらず、上記したようにPd含有量とPt含有量とを調整することにより、従来に比してNOx吸蔵性能を向上させることができる。
【0062】
第1層21は、図3に示すように、筒軸方向Xと直交する厚み方向において、第2層22および第3層よりも基材10の表面に近い側に配置される。第1層21は、例えば、隔壁14の表面に配置されているとよい。第1層21は、触媒金属として少なくともPdを含む。
【0063】
第1層21は、暖機運転中に供給される低速の排ガスを浄化する機能を有し得る。具体的には、暖機運転中の排ガスは、流速が非常に遅いため、排ガス浄化用触媒1の上流側から触媒層20の内部に浸透し、第1層21まで到達しやすい。運転開始時においては、触媒金属の大部分が酸化しており、触媒活性が低下している。そして、暖機運転を開始すると、排ガス温度の上昇に伴って触媒金属から酸素が徐々に解離して浄化性能が上昇(回復)する。Pdは、他の触媒金属よりも酸化状態での触媒活性に優れている。このため、第1層21が触媒金属として少なくともPdを含むことにより、暖機運転による回復(酸素の解離)が十分に進行する前でも一定の排ガス浄化性能を発揮することができる。これによって、暖機運転中の有害成分のエミッションをさらに低減できる。
【0064】
第1層21のPd含有量は、0.5g/L以上が好ましく、1.0g/L以上がより好ましく、2g/L以上がさらに好ましく、2.3g/L以上が特に好ましい。これにより、暖機運転中の有害成分のエミッションをより好適に低減できる。特に限定されないが、第1層21のPd含有量は、10g/L以下が好ましく、8g/L以下がより好ましく、6g/L以下がさらに好ましく、5g/L以下が特に好ましい。なお、第1層21のPd含有量は、上記したICPとEPMAを用いる測定方法により求めることができる。
【0065】
第1層21は、上記した触媒金属以外の任意成分を含んでもよい。かかる任意成分としては、例えば、OSC材、その他の触媒金属、触媒金属が担持されていない助触媒、安定化剤などが挙げられる。助触媒の好適例としては、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属元素が挙げられる。助触媒は、例えばアルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等の形態で含有されていてもよい。第1層21は、助触媒として硫酸バリウムを含むことが好ましい。第1層21における、このようなBa等のアルカリ土類金属元素の含有量は、筒軸方向Xに沿って第1層21が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば0.1g/L~10g/L(好ましくは1g/L~10g/L)程度であるとよい。特に限定されないが、第1層21において、触媒金属としてのPdと、助触媒成分(特にはBa)とを共存させることにより、BaからPdへの電子供与によりPdのシンタリングが抑制されて、Pdの触媒活性を向上することができる。したがって、助触媒成分を含む場合には、第1層21に助触媒成分を含み、Pdと共存させることが好ましい。
【0066】
第1層21の筒軸方向Xに沿う長さは、特に限定されないが、例えば、基材10の全長Lを100%としたときに、上流側端部10aから80%以上の長さであるとよく90%以上の長さであってもよく、100%(すなわち、基材10の全長Lと同じ長さ)であってもよい。また、第1層21のコート量は特に限定されない。隔壁14の排ガスの流通性を高くして、圧損を低減する観点からは、基材10の体積1L当たりについて概ね80g/L~150g/L、好ましくは100g/L~120g/L以下とするとよい。なお、第1層21についてのコート量とは、単位体積あたりの基材10に含まれる第1層21の重量をいう。ただし、基材の体積は、筒軸方向Xに沿って第1層21が形成されている部分の基材についてのみ考慮し、第1層21が形成されていない部分の基材については考慮しない。
【0067】
第3層23は、図3に示すように、筒軸方向Xと直交する厚み方向において、第1層21および第2層22よりも基材10の表面から遠い側に配置される。第3層23は、触媒層20において、最も表層側に配置され得る。第3層23は、触媒金属として少なくともRhを含む。
【0068】
第3層23は、触媒層20のうち、排ガスが最初に接触する領域であり得る。排ガスに含まれるHCやCOが、第2層22に到達すると、Ptの酸化作用がHCやCOに対して優先的に発揮され、NOに対する酸化性能が低下し得る。Rhは、高い触媒能(典型的には三元性能)を有している。このため、ここに開示される排ガス浄化用触媒1では、第2層22よりも先に排ガスと接触し得る第3層23において、触媒金属として少なくともRhを含んでいる。これにより、HCやCOが第3層23で好適に浄化されやすくなり、第2層22に含まれるPtは、HCやCOに阻害されることなく、NO酸化性能を発揮することができる。したがって、排ガス浄化用触媒全体のNOx浄化性能を向上させることができる。
【0069】
第3層23において、触媒金属の含有量に対するRh含有量の比(Rh含有量/触媒金属の含有量)は、例えば0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
【0070】
第3層23のRh含有量は、0.01g/L以上が好ましく、0.1g/L以上がより好ましく、0.2g/L以上がさらに好ましい。これにより、好適な浄化性能を発揮させることができる。特に限定されないが、第3層23のRh含有量は、1g/L以下が好ましく、0.8g/L以下がより好ましく、0.5g/L以下であってもよい。なお、第3層23のRh含有量は、上記したICPとEPMAを用いる測定方法により求めることができる。
【0071】
特に限定されないが、第3層23は、触媒金属としてRhに加えてさらにPdを含むことが好ましい。Pdは、特に酸化触媒としての活性が高く、排ガス中の有害成分の内、上記したCOやHCに対して高い酸化作用を示すことができる。このため、COやHCをさらに好適に浄化することができ、第2層22にHCやCOが到達することをさらに抑制することができる。したがって、排ガス浄化用触媒全体のNOx浄化性能をより好適に向上させることができる。
【0072】
第3層23がPdを含む場合、第3層23のPd含有量は特に限定されないが、例えば0.01g/L以上が好ましく、0.05g/L以上がより好ましく、0.1g/L以上がさらに好ましい。これにより、好適な浄化性能を発揮させることができる。特に限定されないが、第3層23のPd含有量は、1g/L以下が好ましく、0.5g/L以下がより好ましく、0.3g/L以下であってもよい。なお、第3層23のPd含有量は、上記したICPとEPMAを用いる測定方法により求めることができる。
【0073】
第3層23は、上記した触媒金属以外の任意成分を含んでもよい。かかる任意成分としては、例えば、OSC材、その他の触媒金属、安定化剤などが挙げられる。
【0074】
第3層23の筒軸方向Xに沿う長さは、特に限定されないが、例えば、基材10の全長Lを100%としたときに、上流側端部10aから80%以上の長さであるとよく90%以上の長さであってもよく、100%(すなわち、基材10の全長Lと同じ長さ)であってもよい。また、第3層23のコート量は特に限定されない。隔壁14の排ガスの流通性を高くして、圧損を低減する観点からは、基材10の体積1L当たりについて概ね50g/L~150g/L、好ましくは70g/L~100g/Lとするとよい。なお、第3層23についてのコート量とは、単位体積あたりの基材10に含まれる第3層23の重量をいう。ただし、基材の体積は、筒軸方向Xに沿って第3層23が形成されている部分の基材についてのみ考慮し、第3層23が形成されていない部分の基材については考慮しない。
【0075】
触媒層20には、第1層21、第2層22、および第3層23のそれぞれが含有する触媒金属の他に、これらの触媒金属を担持する担体を含み得る。このような担体としては、従来この種の用途に使用し得ることが知られている担体(典型的には粉体)を適宜採用することができる。例えば、担体の好適例としては、アルミナ(Al)、アルカリ土類金属酸化物、希土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO)などの金属酸化物や、これらの固溶体、例えばセリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物:CeO-ZrO)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、アルミナおよびCZ複合酸化物の少なくとも一方を使用することが好ましい。担体は、多結晶体または単結晶体であってよい。
【0076】
担体の形状(外形)は特に制限されず、より大きい比表面積を確保できるという観点から、粉末状のものが好ましく用いられる。例えば、担体の平均粒子径(レーザ回折・散乱法により測定される平均粒子径)は、例えば20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、例えば7μm以下であってもよい。かかる平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。かかる平均粒子径を有する担体を用いることにより、触媒金属の分散性や、担体自体の耐熱性等が向上し得る。
【0077】
特に限定されないが、触媒層全体の触媒金属の含有量は、例えば、筒軸方向Xに沿って触媒層20が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、0.5g/L以上であることが好ましく、1g/L以上であることがより好ましく、2g/L以上であることがさらに好ましい。触媒金属の含有量の上限は、特に限定されないが、筒軸方向Xに沿って触媒層20が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、8g/L以下であることが好ましく、7g/L以下であることがより好ましく、6g/L以下であってもよい。また、触媒層全体のコート量は、基材10の体積1L当たりについて概ね150g/L~450g/L、好ましくは200g/L~400g/L、より好ましくは250g/L~350g/Lとするとよい。
【0078】
上記したような構成の排ガス浄化用触媒1は、例えば以下のような方法で製造することができる。まず、基材10と、触媒層20を形成するためのスラリーを用意する。スラリーは、第1層形成用スラリーと、第2層上流側部分形成用スラリーと、第2層下流側部分形成用スラリーと、第3層形成用スラリーとを用意する。これらの触媒層形成用スラリーは、それぞれ異なる触媒金属成分(典型的には触媒金属をイオンとして含む溶液)を必須の成分として含む。また、各触媒層形成用スラリーは、それぞれ、その他の任意成分、例えば担体、NOx吸蔵材、助触媒、OSC材、バインダ、各種添加剤などを含み得る。なお、NOx吸蔵材としては、アルカリ土類金属の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。また、バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾルなどを採用し得る。またスラリーの性状(粘度や固形分率など)は、使用する基材10のサイズや、セル12(隔壁14)の形態、触媒層20の所望の性状などによって適宜調整するとよい。例えば、これらのスラリーの粘度は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)等のセルロース系のポリマーによって制御することができる。
【0079】
第1層21、第2層22および第3層23の形成は、従来使用されている方法、例えば含侵法やウォッシュコート法等で行うことができる。一例では、上記調製した第1層形成用スラリーを、適当な基材(例えばハニカム基材)の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給する。このとき、余分なスラリーをセル12から排出させてもよい。スラリーを供給した基材を、所定の温度で乾燥、焼成することにより、第1層21を基材10の隔壁14の表面に形成することができる。乾燥は、例えば、50℃~150℃程度(好ましくは50℃~90℃)の温度で、30分~2時間行うとよい。また、焼成は、酸素含有雰囲気下(例えば大気中)で、焼成温度が概ね450℃~1000℃程度、例えば500℃~700℃で行うとよい。
次いで、第2層上流側部分形成用スラリーを基材の一方の端部(上流側端部10a)からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って流出側方向に向けて所定の長さまで供給する。そして、上記と同様の条件で乾燥および焼成処理をすることにより、第2層上流側部分22aを形成することができる。同様にして、第2層下流側部分形成用スラリーを基材の他方の端部(下流側端部10b)からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って流入側方向に向けて所定の長さまで供給する。そして、上記と同様の条件で乾燥および焼成処理をすることにより、第2層下流側部分22bを形成することができる。
そして、第3層形成用スラリーを、基材10の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給する。そして、上記と同様の条件で乾燥および焼成処理をすることにより、第3層23を形成することができる。
【0080】
上述した排ガス浄化用触媒は、自動車やトラック等の車両や、自動二輪車や原動機付き自転車をはじめとして、船舶、タンカー、水上バイク、パーソナルウォータークラフト、船外機などのマリン用製品、草刈機、チェーンソー、トリマーなどのガーデニング用製品、ゴルフカート、四輪バギーなどのレジャー用製品、コージェネレーションシステムなどの発電設備、ゴミ焼却炉などの内燃機関から排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。
【0081】
以下、ここで開示される技術の試験例を説明する。なお、以下の説明は、ここで開示される技術を試験例に示されるものに限定することを意図したものではない。
【0082】
<実施例1>
まず、基材として、円筒形状のストレートフロー型のハニカム基材(直径:118.4mm、筒軸方向の長さL:114.3mm、容積:1.26L)を準備した。次いで、4種類のスラリー(第1層形成用スラリー、第2層上流側部分形成用スラリー、第2層下流側部分形成用スラリー、第3層形成用スラリー)を用意した。
【0083】
具体的には、第1層形成用スラリーは、硝酸パラジウム水溶液と、セリアジルコニア複合酸化物粉末(CZ)と、アルミナ粉末(Al)と、助触媒としての硫酸バリウム(BaSO)と、をイオン交換水中で混合することで調製した。第2層上流側部分形成用スラリーは、硝酸白金水溶液と、硝酸パラジウム水溶液と、アルミナ粉末(Al)と、セリアジルコニア複合酸化物粉末(CZ)と、NOx吸蔵材としての炭酸バリウム(BaCO)と、をイオン交換水中で混合することで調製した。第2層下流側部分形成用スラリーは、硝酸白金水溶液と、硝酸パラジウム水溶液と、セリアジルコニア複合酸化物粉末(CZ)と、アルミナ粉末(Al)と、NOx吸蔵材としての炭酸バリウム(BaCO)と、をイオン交換水中で混合することで調製した。第3層形成用スラリーは、硝酸ロジウム水溶液と、硝酸パラジウム水溶液と、セリアジルコニア複合酸化物粉末(CZ)と、アルミナ粉末(Al)と、をイオン交換水中で混合することで調製した。上記した各スラリーは、それぞれミリングして粒子径を制御した。
【0084】
次いで、各層のコートを実施した。上記用意した第1層形成用スラリーを、基材の上流側端部から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。第1層形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が2.35g/L、OSC材の含有量が40g/L、アルミナの含有量が67g/L、硫酸バリウムの含有量が5g/Lとなるように調整した。そして、これを90℃の乾燥機で1時間通風乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、基材の表面に第1層を形成した。
【0085】
また、上記用意した第2層上流側部分形成用スラリーを、基材の上流側端部から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の50%に当たる部分にコートした。第2層上流側部分形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が0.75g/L、Ptの含有量が1.75g/L、OSC材の含有量が90g/L、アルミナの含有量が30g/L、炭酸バリウムの含有量が30g/Lとなるように調整した。そして、これを90℃の乾燥機で1時間通風乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、第1層の表面に第2層上流側部分を形成した。
【0086】
また、上記用意した第2層下流側部分形成用スラリーを、基材の下流側端部から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の50%に当たる部分にコートした。第2層下流側部分形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が0.50g/L、Ptの含有量が2.00g/L、OSC材の含有量が90g/L、アルミナの含有量が30g/L、炭酸バリウムの含有量が30g/Lとなるように調整した。そして、これを90℃の乾燥機で1時間通風乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、第1層の表面に第2層下流側部分を形成した。
【0087】
また、上記用意した第3層形成用スラリーを、基材の下流側端部から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。第3層形成用スラリーのコート量は、Rhの含有量が0.2g/L、Pdの含有量が0.1g/L、OSC材の含有量が20g/L、アルミナの含有量が64g/Lとなるように調整した。そして、これを90℃の乾燥機で1時間通風乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、第2層の表面に第3層を形成した。このようにして、第1層、第2層上流側部分、第2層下流側部分および第3層を有する、実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0088】
<実施例2~4および比較例1~10>
第2層上流側部分のPt含有量およびPd含有量と、第2層下流側部分のPt含有量およびPd含有量を、表1に示すように異ならせた。これらのこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4および比較例1~10の排ガス浄化用触媒を得た。なお、表1に示す「第2層上流側部分のPd含有率A」とは、第2層上流側部分の触媒金属含有量の合計(g/L)に対する第2層上流側部分のPd含有量(g/L)の比(Pd含有量/触媒金属含有量の合計)から算出される値であり、「第2層上流側部分のPt含有率C」とは、第2層下流側部分の触媒金属含有量の合計(g/L)に対する第2層上流側部分のPt含有量(g/L)の比(Pt含有量/触媒金属含有量の合計)から算出される値である。また、表1に示す「第2層下流側部分のPd含有率B」とは、第2層下流側部分の触媒金属含有量の合計(g/L)に対する第2層下流側部分のPd含有量(g/L)の比(Pd含有量/触媒金属含有量の合計)から算出される値であり、「第2層下流側部分のPt含有率D」とは、第2層下流側部分の触媒金属含有量の合計(g/L)に対する第2層下流側部分のPt含有量(g/L)の比(Pt含有量/触媒金属含有量の合計)から算出される値である。また、表1に示す「Pt/Pd」は、第2層のPd含有量の合計に対する第2層のPt含有量の合計の比である。
【0089】
<NOx吸蔵性能の評価>
各実施例および各比較例に対してNOx吸蔵性能の評価試験を行った。各実施例および各比較例の触媒をエンジン(排気量4.8L)に設置して、触媒床温度1000℃で50時間保持することにより耐久試験を行った。耐久試験後、触媒温度を100℃以下に調節した。そして、熱交換器を用いて触媒の入りガス温度を300℃に調整し、排ガスを流入させた。このときの排ガスの空燃比(λ)は、1.08に制御した。次に、触媒に流入するガスのNOx濃度P1と、触媒から流出するガスのNOx濃度P2とを測定した。そして、このP1とP2との差(P1-P2)をNOx吸蔵量(mg/L)として算出した。結果を表1に示す。なお、NOx吸蔵量が多いほど、NOx吸蔵性能が高いと言える。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、Pd含有率Aが0.5未満であり、かつ、Pd含有率AがPd含有率Bよりも高い実施例1~実施例4は、NOx吸蔵量が220mg/Lを超えており、良好なNOx吸蔵性能を有することがわかる。
【0092】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 排ガス浄化用触媒
2 内燃機関
3 排気経路
4 エキゾーストマニホールド
5 排気管
6 第1触媒
7 第2触媒
8 ECU
9 センサ
10 基材
10a 上流側端部
10b 下流側端部
12 セル
14 隔壁
20 触媒層
21 第1層
22 第2層
22a 第2層上流側部分
22b 第2層下流側部分
23 第3層
100 排ガス浄化システム
【要約】
【課題】NOx吸蔵性能が良好である排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】ここに開示される排ガス浄化用触媒は、基材10と、該基材10の上に配置される触媒層20と、を備えている。触媒層20は、少なくともPdを含む第1層21と、触媒金属およびNOx吸蔵材を含む第2層22と、少なくともRhを含む第3層23と、を含む。第2層22は、触媒金属として少なくともPtおよびPdを含む第2層上流側部分22aと、触媒金属として少なくともPtを含む第2層下流側部分22bと、を有しており、第2層上流側部分22aにおける触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率A、第2層下流側部分22bにおける前記触媒金属の含有量に対するPd含有量の比をPd含有率Bとしたときに、Pd含有率Aは0.5未満であり、かつ、Pd含有率Aは前記Pd含有率Bよりも高い。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4