(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】固体物の噴出速度算出方法および固体物の噴出速度算出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240205BHJP
G01P 3/36 20060101ALI20240205BHJP
G01N 25/02 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01P3/36 C
G01N25/02 Z
(21)【出願番号】P 2023134286
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】木原 大城
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 公一
(72)【発明者】
【氏名】堀 泰規
(72)【発明者】
【氏名】西内 万聡
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110007241(CN,A)
【文献】中国実用新案第212586512(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0251703(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111736075(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111157903(CN,A)
【文献】中国実用新案第209894939(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01R 31/36-31/396
G01P 3/36- 3/40
G01N 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度上昇した電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する方法であって、
電池を発熱させ、または電池を加熱して温度を上昇する工程と、
温度が上昇した電池の噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する工程と、
撮像された上記噴出物中で飛散している固体物
の中から一または複数の固体物を特定
して追跡する工程と、
追跡した上記固体物の速度を算出する工程と
を備える固体物の噴出速度算出方法。
【請求項2】
上記撮像する工程で、複数の上記撮像部で撮像する請求項1に記載の固体物の噴出速度算出方法。
【請求項3】
少なくとも2台の撮像部が、上記噴出物の噴出方向に対して直交し、かつ異なる2方向から撮像する請求項2に記載の固体物の噴出速度算出方法。
【請求項4】
上記2方向が直交している請求項3に記載の固体物の噴出速度算出方法。
【請求項5】
上記追跡する工程で、上記一または複数の固体物を画像解析によって特定して追跡する請求項
1に記載の固体物の噴出速度算出方法。
【請求項6】
上記電池が蓄電池である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体物の噴出速度算出方法。
【請求項7】
温度上昇した電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する装置であって、
電池を発熱させ、または電池を加熱する温度上昇手段と、
温度が上昇した電池から噴出する噴出物を連続して撮像する撮像部と、
撮像された上記噴出物中で飛散している固体物
の中から一または複数の固体物を特定し
て追跡し、この
追跡した固体物の速度を算出する算出部と
を備える固体物の噴出速度算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体物の噴出速度算出方法および固体物の噴出速度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用端末、自動車、再生可能エネルギーなど、多分野で電池の利用が増大している。電池は、使用環境、使用状況によって発熱し、この発熱による熱の制御が不能になって内容物を噴出することがある(熱暴走ともいわれる)。このような熱暴走が起きた際でも安全性が確保されるよう、電池の熱暴走によるシミュレーションが行われている。このシミュレーションにおける重要なパラメータの一つに、噴出された内容物(噴出物)の速度がある。この噴出物の速度を求める方法として、非特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Gongquan Wang、 Depeng Kong、 Ping Ping、 Jennifer Wen、 Xiaoqin He、 Hengle Zhao、 Xu He、 Rongqi Peng、 Yue Zhang、 Xinyi Dai、「Revealing particle venting of lithium-ion batteries during thermal runaway: A multi-scale model toward multiphase process」eTransportation 16 (2023) 100237、p.1-20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、蓄電池の安全弁に整流部を設け、この整流部に近接するように配設したピトー管で噴出物の差圧を測定し、この噴出物の速度を算出している。上記整流部を通過した噴出物は急激に拡散するため、非特許文献1の測定方法では上記差圧の高精度な測定ができず、上記噴出物の正確な速度を求めることが困難になるおそれがある。
【0005】
シミュレーションによって噴出物の速度を求める方法なども知られているが、本発明の発明者らは実験的に噴出物の速度を求める方法について鋭意検討した。上記噴出物には、気体(蒸気)、液体、固体(粒状物)が含まれ、このうち、噴出する上記固体は、電池自体、あるいはこの電池の周辺の部材などに損傷を与えるおそれがある。また、今後の普及が見込まれている全固体電池では、熱暴走によって噴出する固体物の量が多くなることが予想されるため、上記損傷の程度が大きくなるおそれがある。安全性確保などの観点から、噴出する上記固体の噴出速度を求めることが要求されている。
【0006】
このような事情を鑑みて、本開示は、電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を容易に求めることができる噴出速度算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様に係る固体物の噴出速度算出方法は、温度上昇した電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する方法であって、電池を発熱させ、または電池を加熱して温度を上昇する工程と、温度が上昇した電池の噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する工程と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定する工程と、特定した上記固体物の速度を算出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る固体物の噴出速度算出は、電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る固体物の噴出速度算出装置と電池とを示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る固体物の噴出速度算出方法は、温度上昇した電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する方法であって、電池を発熱させ、または電池を加熱して温度を上昇する工程と、温度が上昇した電池の噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する工程と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定する工程と、特定した上記固体物の速度を算出する工程とを備える。
【0012】
当該固体物の噴出速度算出方法(以下、「当該算出方法」ともいう)は、電池から噴出する噴出物を撮像し、撮像した画像で噴出物中の固体物を特定している。このため、固体物を容易に特定できる。また、上記噴出物を連続して撮像しているため、上記特定した固体物の移動を容易に追跡することができる。このため、上記特定した固体物の速度を容易に算出することができ、ひいては上記噴出物の噴出直後の速度を容易に推定することもできる。
【0013】
(2)上記(1)において、上記撮像する工程で、複数の上記撮像部で撮像してもよい。このようにすることで、上記特定した固体物の移動を三次元的に追跡することができ、上記特定した固体物の速度を精度よく算出することができる。
【0014】
(3)上記(2)において、少なくとも2台の撮像部が、上記噴出物の噴出方向に対して直交し、かつ異なる2方向から撮像してもよい。このようにすることで、上記固体物の三次元的な移動を容易に追跡することができる。
【0015】
(4)上記(3)において、上記2方向が直交していてもよい。このようにすることで、上記固体物の三次元的な移動をより容易に追跡することができる。
【0016】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかにおいて、上記撮像する工程において撮像された画像で、上記噴出物の噴出状況を観察する工程をさらに備えていてもよい。すなわち、撮像した画像から、気体、液体も含めた上記噴出物全体の噴出方向、噴出後の広がり、この広がりの速さなどの噴出状況を観察してもよい。
【0017】
(6)本開示の一態様に係る固体物の噴出速度算出装置は、温度上昇した電池から噴出する噴出物の速度を算出する装置であって、電池を発熱させ、または電池を加熱する温度上昇手段と、温度が上昇した電池から噴出する噴出物を連続して撮像する撮像部と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定し、この固体物の速度を算出する算出部とを備える。
【0018】
当該固体物の噴出速度算出装置は、電池から噴出する噴出物を撮像する撮像部を備えるため、撮像した画像で噴出物中の固体物を容易に特定することができる。また、上記撮像部が上記噴出物を連続して撮像しているため、上記特定した固体物の移動を容易に追跡することができる。このため、上記特定した固体物の速度を容易に算出することができる。
【0019】
(7)上記(6)において、上記撮像部を収容するケーシングをさらに備えてもよい。このようにすることで、上記撮像部を上記噴出物から容易に保護することができる。
【0020】
なお、「直交」とは、概ね90°±10°の範囲を意味する。
【0021】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳説する。
【0022】
<噴出速度算出装置>
温度上昇した電池Bから噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する当該噴出速度算出装置100(以下、単に「当該装置100」ともいう)は、
図1で示すように、電池Bを発熱させ、または電池Bを加熱する温度上昇手段(不図示)と、温度が上昇した電池Bから噴出する噴出物を連続して撮像する撮像部と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物の速度を算出する算出部とを備える。また、本実施形態の当該装置100は、上記撮像部が撮像した画像を表示する表示部と、上記噴出物を照射する照明部とを備える。
【0023】
〔電池〕
電池Bとしては、熱暴走によって内容物を噴出(解放)させるものであれば特に限定されるものでなく、例えばリチウムイオン電池などの蓄電池が挙げられる。また、電池Bは、略直方体状あるいは円筒状などの筐体を有するものであってもよいし、シート状部材をラミネートして袋状に形成されたものであってもよい。上記噴出物(電池Bの内容物)は、主に気体(蒸気)であり、液体、固体(粒子状の固体物)が含まれる。上記気体としては、例えば酸化炭素、可燃性ガスなどが含まれる。本実施形態では、電池Bは、略直方体状の筐体を有し、一面(天面)に設けられている一対の電極B1,B2の中間に形成され、熱暴走によって内容物を噴出(解放)させる噴出部としての安全弁Sを有する。電池Bは、安全弁Sが上方(重力方向の反対方向)を向くように載置台150上に載置されている。なお、上記固体物とは、例えば電池Bの内部で破損した電極B1,B2の破片である。
【0024】
〔温度上昇手段〕
温度上昇手段は、電池Bを発熱させ、または電池Bを加熱することで電池Bの温度を上昇させる。温度上昇手段は、例えば、電池Bに加熱面を当接して外部から電池Bを加熱する電熱ヒータなどの加熱器であってもよいし、電池Bに過剰な電気を供給して(過剰充電状態にして)発熱させる電源などであってもよいし、電池Bに刺すなどして内部で短絡させる釘などの鋭利な導電材であってもよい。
【0025】
〔撮像部〕
撮像部は、温度が上昇した電池Bから噴出する噴出物を連続して撮像する。撮像部としては、特に限定されるものではなく、例えばカメラが挙げられる。上記噴出物は、複数の撮像部で撮像されることが好ましい。複数の撮像部で撮像することで、上記噴出物の噴出状況を立体的(三次元的)に捉えることができる。当該装置100は、第1カメラ110と第2カメラ111との2台のカメラを備える。
【0026】
この2台のカメラ110,111は、上記噴出物の噴出方向に対して直交し、かつ異なる2方向から撮像することが好ましい。すなわち、カメラ110,111の撮像方向(撮像領域(画像)の中心における法線方向)が、上記噴出物の噴出方向(本実施形態では上方)に対して略90°であり(本実施形態では略水平)、かつそれぞれの撮像方向が異なるように2台のカメラ110,111を配置して上記噴出物を撮像することが好ましい。このようにすることで、一方のカメラ(第1カメラ110)が一方向における上記噴出物の噴出状況を撮像しつつ、他方のカメラ(第2カメラ111)が上記一方向とは異なる方向における上記噴出状況を撮像することができるため、上記噴出状況を三次元的に捉えることができる。
【0027】
また、上記2方向は直交していることがより好ましい。すなわち、2台のカメラ110,111は、その撮像方向が安全弁S上で略90°に交差するように配置されることがより好ましい。このようにすることで、上記一方向(X方向)とこの一方向に直交する方向(Y方向)とにおける上記噴出状況を撮像することができるため、上記噴出状況を三次元的に捉えることの容易性が向上できる。
【0028】
カメラ110,111が配置される高さ(カメラの設置面から撮像領域の中心までの上下方向における距離)としては、特に限定されるものではないが、カメラ110,111の撮像領域の一部に電池Bの一部が映るような高さに配置されることが好ましい。例えば、カメラ110,111における撮像領域の下方の30%以下、あるいは20%以下の領域に電池Bの上記天面を含む一部が映るような高さに配置されることが好ましい。このようにすることで、安全弁Sからの上記噴出状況を撮像することができる。
【0029】
当該装置100は、上記撮像部を収容するケーシングを備えることが好ましい。すなわち、それぞれのカメラ110,111がケーシング112,113に収容されていることが好ましい。このようにすることで、上記噴出物からカメラ110,111を保護することができる。ケーシング112,113としては、特に限定されるものでなく、例えば金属、樹脂などで形成された箱体であり、カメラ110,111の撮像方向の一面が透明板で形成されたものであってもよい。
【0030】
〔表示部〕
表示部は、カメラ110,111が撮像した画像を表示する。上記表示部としては、特に限定されるものでなく、公知のモニタ120を用いることができる。当該装置100がモニタ120を備えることで、上記噴出状況を目視で観察することができる。
【0031】
〔照明部〕
照明部は、上記噴出物に光を照射する光源である。上記照明部としは、特に限定されるものでなく、公知のLED(Light Emitting Diode)照明などを用いることができる。当該装置100がLED照明を備えることで、カメラ110,111が上記噴出物を鮮明に撮像することができる。本実施形態の当該装置100は、2台のカメラ110,111の間に配置される第1LED照明130と、第1LED照明130との間に第1カメラ110が位置するように配置される第2LED照明131と、第1LED照明130との間に第2カメラ111が位置するように配置される第3LED照明132とを有する。
【0032】
〔算出部〕
算出部は、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物の速度を算出する。具体的には、連続して撮像された複数の画像から上記噴出物中の固体物を特定し、この固体物の移動距離から速度を算出する。算出部としては、特に限定されるものでなく、公知のパーソナルコンピータ140を用いることができる。パーソナルコンピータ140は、カメラ110,111と電気的に接続されている。カメラ110,111は、撮像された画像をパーソナルコンピータ140に送信する。パーソナルコンピータ140は、受信した画像から上記噴出物中の固体物を特定する。特定する上記固体物は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。
【0033】
上記速度は、例えば以下のようにして算出する。まず、第1カメラ110で撮像した複数の画像から、この画像の左右方向(X方向)における上記特定した固体物の時間t0での位置(座標)lx0と、時間t1での位置lx1とを確認し、下記式(1)より特定した固体物のX方向における速度Vxを算出する。
【数1】
【0034】
次に、第2カメラ111で撮像した複数の画像から、この画像の左右方向(Y方向)における上記特定した固体物の時間t0での位置ly0と、時間t1での位置ly1とを確認し、下記式(2)より特定した固体物のY方向における速度Vyを算出する。
【数2】
【0035】
さらに、第1カメラ110および第2カメラ111のいずれかで撮像した複数の画像から、この画像の上下方向(Z方向)における上記特定した固体物の時間t0での位置lz0と、時間t1における位置lz1とを確認し、下記式(3)より特定した固体物のZ方向における速度Vzを算出する。
【数3】
【0036】
下記式(4)より上記特定した固体物の速度Vを算出する。
【数4】
【0037】
<噴出速度算出方法>
当該固体物の噴出速度算出方法は、電池Bを発熱させ、または電池Bを加熱して温度を上昇する工程と、温度が上昇した電池Bの噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する工程と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定する工程と、特定した上記固体物の速度を算出する工程とを備える。当該算出方法は、上記撮像する工程において撮像された画像で、上記噴出物の噴出状況を観察する工程をさらに備えていてもよい。
【0038】
〔温度を上昇する工程〕
温度を上昇する工程では、電池Bを発熱させ、または電池Bを加熱し、電池Bの温度を上昇させることで、熱暴走の状態に移行させる。電池Bの温度を上昇させる方法としては、電源から電極B1,B2に過剰な電気を供給することで内部から発熱させてもよいし、ヒータなどによって外部から加熱してもよい。
【0039】
〔撮像する工程〕
撮像する工程では、温度が上昇した電池Bの噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する。すなわち、熱暴走した電池Bの安全弁Sから噴出する噴出物をカメラ110,111で連続して撮像する。連続して撮像される上記噴出物の1秒間あたりの画像枚数(フレーム数)の下限値としては、例えば100fpsであってもよく、200fpsであってもよく、500fps、1000fps、2000fps、5000fps、あるいは10000fpsであってもよい。上記フレーム数の上限値としては、特に限定されるものでなく、例えば20000fpsであってもよい。上記フレーム数が上記範囲であることで、上記固体物の速度の算出精度を向上することができる。上記フレーム数は、上記噴出状況に応じた撮像をすることができるように可変できるとよい。
【0040】
〔特定する工程〕
特定する工程では、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定する。具体的には、カメラ110,111で撮像した画像がパーソナルコンピータ140に送信され、パーソナルコンピータ140による画像解析で固体物が特定される。上記固体物は、モニタ120に表示される画像から、作業者が目視で特定してパーソナルコンピータ140に指示してもよい。
【0041】
〔算出する工程〕
算出する工程では、特定した上記固体物の速度を算出する。具体的には、上記式(1)乃至上記式(4)を用いて上記固体物の速度を算出する。
【0042】
〔観察する工程〕
観察する工程では、上記撮像する工程において撮像された画像で、上記噴出物の噴出状況を観察する。観察する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、撮像した画像をモニタ120に表示して上記噴出物の広がり(幅、高さ、角度など)、速上記広がりの速さなどを目視によって観察し、あるいはパーソナルコンピータ140による画像処理でデータ化する方法などが挙げられる。
【0043】
<利点>
当該装置100および当該算出方法は、電池Bから噴出する噴出物を連続して撮像しているため、上記噴出物中の固体物を特定し、この特定した固体物の移動を容易に追跡することができる。このため、上記特定した固体物の速度を容易に算出することができる。噴出している上記固体物は、噴出直後の速度と、噴出から一定時間経過した後の速度との変化が比較的小さいため、上記固体物の速度を算出することで上記噴出物の噴出直後の速度を容易に推定することができる。
【0044】
上記噴出物の噴出直後の速度が求められることで、例えば電池Bが熱暴走することによって放出するエネルギーなど、電池Bの安全性に関する各種シミュレーションを精度よく行うことができる。
【0045】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本開示の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本開示の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0046】
上述の安全弁を有する電池のように、噴出物が噴出する箇所が予定されている電池(噴出部が形成されている電池)では、撮像部のカメラは、上述のように噴出部を含む電池の一部を撮像するように配置することが好ましく、噴出物が噴出する箇所が予測できない電池(任意の箇所から噴出物を噴出し、その噴出箇所を噴出部とする電池)では、その電池の全体を撮像するようにカメラを配置してもよい。
【0047】
カメラは1台であってもよい。1台のカメラで固体物の速度を算出する場合は、上記式(1)、上記式(3)及び上記式(4)を用いることで固体物の速度を求めることができる。カメラは、3台以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示の固体物の噴出速度算出装置および固体物の噴出速度算出方法は、電池から噴出する噴出物の速度を求めることができるため、電池の熱暴走による各種シミュレーション、例えば複数の電池を接続した電池パックの安全性のシミュレーションなどに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
100 噴出速度算出装置
110 第1カメラ
111 第2カメラ
112,113 ケーシング
120 モニタ
130 第1LED照明
131 第2LED照明
132 第3LED照明
140 パーソナルコンピータ
150 載置台
B 電池
B1,B2 電極
S 安全弁
【要約】
【課題】本開示は、電池から噴出する噴出物の速度を容易に求めることができる固体物の噴出速度算出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様に係る固体物の噴出速度算出方法は、温度上昇した電池から噴出する噴出物中の固体物の速度を算出する方法であって、電池を発熱させ、または電池を加熱して温度を上昇する工程と、温度が上昇した電池の噴出部から噴出する噴出物を撮像部で連続して撮像する工程と、撮像された上記噴出物中で飛散している固体物を特定する工程と、特定した上記固体物の速度を算出する工程とを備える。
【選択図】
図1