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特許7430865微生物植病原体の増殖を抑制する光線力学的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】微生物植病原体の増殖を抑制する光線力学的方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20240206BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240206BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20240206BHJP
   A01N 43/72 20060101ALI20240206BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20240206BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A01N43/90 105
A01P3/00
A01N35/02
A01N43/90 101
A01N43/72
A01N25/00 102
A01N59/20 Z
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2022518778
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2019052796
(87)【国際公開番号】W WO2021061109
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】522113981
【氏名又は名称】ティーディーエー リサーチ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TDA RESEARCH, INC.
【住所又は居所原語表記】12345 West 52nd Avenue, Wheat Ridge, CO 80033 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】フランス,クリストファー,ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム,ベル
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0064964(US,A1)
【文献】特公昭48-003838(JP,B1)
【文献】国際公開第03/075664(WO,A1)
【文献】Journal of the American Society for Horticultural Science,123(6),pp.987-991
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の微生物病原体の増殖を抑制する方法であって、
前記植物に以下を含む組み合わせを適用することと:
活性酸素種光増感剤である色素含有化合物;および
前記微生物病原体に対する前記色素含有化合物の微生物致死率を高めるための銅化合物;
前記植物に光を暴露して、前記色素含有化合物と前記銅化合物の前記組み合わせを活性化させ、植物の微生物病原体の増殖を抑制することと、を含
前記微生物病原体に対する前記組み合わせの前記微生物致死率を高めるために、前記植物にアスコルビン酸塩を適用することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記銅化合物が銅塩であることにより、前記微生物病原体に対する前記色素含有化合物の前記微生物致死率を高める、植物の微生物病原体の増殖を抑制するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅塩は、前記活性酸素種光増感剤単独の微生物病原体増殖抑制と比較して前記微生物病原体増殖抑制を増加させるのに十分な量で提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記銅塩および前記色素含有化合物は、前記微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記銅塩および前記色素含有化合物は、前記微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供され、前記組み合わせは、相加的な効果モデルに基づいて期待されるlogキル(log kill)と比較して、少なくとも1桁の大きさで微生物病原体のlogキルを増加させ、前記相加的な効果モデルは、式、P=X+Y(100-1)/100によって計算されるように、期待殺傷率を決定し、式中、Pは前記活性酸素種光増感剤および前記銅塩の前記組み合わせを用いた病原体の期待殺傷率であり、Xは前記活性酸素種光増感剤を単独で使用した場合の前記病原体の殺傷率、Yは前記銅塩を単独で使用した場合の前記病原体の殺傷率である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記色素含有化合物は、リボフラビン、誘導体化リボフラビン、ルミクローム、誘導体化ルミクローム、クルクミン、フルオレセイン、エオシンY、エリスロシン、フラビン含有化合物およびローズベンガルBからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記色素含有化合物は、リボフラビンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
銅塩は、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、酸化銅、および臭化銅からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記色素含有化合物は、質量基準で約1~100ppmの濃度で提供され、銅塩は、質量基準で約0.1~100ppmの銅の濃度で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記色素含有化合物は、質量基準で約5~50ppmの濃度で提供され、前記銅塩は、銅の質量基準で約2~10ppmの濃度で提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記植物を光に暴露することは、前記植物を自然光に暴露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記植物を光に暴露することは、前記植物を人工光に暴露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせは、土壌浸漬、ピペッティング(pipetting)、灌漑、噴霧、リスティング(listing)、散水、注ぎ込みの少なくとも1つによって前記植物に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物病原体は、細菌性病原体、シアノバクテリア、藻類、真菌性病原体、またはウイルス病原体のいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記植物は、非木質作物植物、木質植物、芝草、果実のなる木、木の実のなる木、または観賞用植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組み合わせは、少なくとも1つの農業上許容されるアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記農業上許容されるアジュバントは、界面活性剤、浸透剤、湿潤剤、展着剤、保湿剤および乳化剤からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記色素含有化合物および銅塩は、前記植物に同時に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記色素含有化合物および銅塩は、前記植物に順に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記植物に前記組み合わせを適用することは、前記組み合わせの成分を含む組成物を前記植物に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
銅塩は、前記植物または環境に対する不要な損傷を避けるために、質量基準で100ppm未満の濃度で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記色素含有化合物および銅塩は、有機農法に適している、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記銅塩と反応して活性酸素種を生成するために、アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを前記植物に適用することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
活性酸素種光増感剤である前記色素含有化合物は、リボフラビン、誘導体化リボフラビン、ルミクローム、誘導体化ルミクローム、クルクミン、フルオレセイン、エオシンY、エリスロシン、およびローズベンガルBからなる群から選択され;前記銅化合物が銅イオン含有有機錯体であり、前記微生物病原体に対する前記色素含有化合物の前記微生物致死率を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記銅イオン含有有機錯体は、前記活性酸素種光増感剤単独の微生物病原体増殖抑制と比較して前記微生物病原体増殖抑制を増加させるのに十分な量で提供される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記銅イオン含有有機錯体および前記色素含有化合物は、前記微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供され、前記組み合わせは、前記活性酸素種光増感剤と前記銅イオン含有有機錯体をそれぞれ単独で使用した場合の前記微生物病原体増殖抑制の和よりも大きい程度に微生物病原体増殖抑制を高める、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記銅イオン含有有機錯体は、前記微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供され、前記組み合わせは、相加的な効果モデルに基づいて期待されるlogキルと比較して、少なくとも1logまたは少なくとも1桁の大きさで微生物病原体のlogキルを増加させ、前記相加的な効果モデルは、式、P=X+Y(100-1)/100によって計算されるように、期待殺傷率を決定し、式中、Pは前記活性酸素種光増感剤および前記銅イオン含有有機錯体の前記組み合わせを用いた病原体の期待殺傷率であり、Xは前記活性酸素種光増感剤を単独で使用した場合の前記病原体の殺傷率、Yは前記銅イオン含有有機錯体を単独で使用した場合の前記病原体の殺傷率である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記色素含有化合物は、リボフラビンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記銅イオン含有有機錯体は、銅エタノールアミン、銅EDTA、クラウンエーテルに錯化された銅イオン、およびポリエチレングリコールに錯化された銅イオンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記組み合わせは、少なくとも1つの農業上許容されるアジュバントをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記農業上許容されるアジュバントは、界面活性剤、浸透剤、湿潤剤、展着剤、保湿剤および乳化剤からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記色素含有化合物および前記銅イオン含有有機錯体は、前記植物に同時に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記色素含有化合物および前記銅イオン含有有機錯体は、前記植物に順に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記植物に前記組み合わせを適用することは、前記組み合わせの成分を含む組成物を前記植物に適用することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記銅イオン含有有機錯体は、前記植物または環境に対する不要な損傷を避けるために、質量基準で100ppm未満の濃度で使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記色素含有化合物および前記銅イオン含有有機錯体は、有機農法に適している、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
銅塩と反応して活性酸素種を生成するために、アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを前記植物に適用することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府出資の研究または開発に関する記述)
本発明は、米国農務省契約番号2017-33610-27303による米国政府の資金を利用して行われたものである。政府は、この発明について一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
技術分野は概して、光増感剤化合物と少量であるが相乗的に有効な量の銅化合物の両方を含む化合物および組成物を使用する、植物における微生物病原体の光線力学的抑制に関する。より具体的には、技術分野は、少量の銅化合物によって抑制が劇的に増加する植物における微生物病原体の光線力学的抑制に関する。この分野はさらに、有機農業的方法と一致して使用され得、特定の環境規制から免除されるような低濃度の銅化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
活性酸化種による植物病原体の抑制は、作用機序のために標的生物において耐性が発達するのが遅いという利点を有する。第2の利点は、酸化種は一般的な材料との反応によって分解する傾向があり、したがって環境に残留しないため、一般に他の抗菌剤よりも環境への危険性が少ないことである。抗菌剤として酸化剤を使用することの不利な点は、それらの反応性に関連する:酸化剤は迅速に反応するため、その効果は持続しない。これはそれらの有効性を制限し得、頻繁な再適用が必要になり得る。例として、過酸化水素は効果的な抗菌剤および農薬であるが、水と酸素への分解を触媒するなど、一般的な材料が過酸化水素と反応し得るため、有用性は限られる。
【0004】
酸化性抗菌種はまた、それらが光エネルギーによって駆動される反応によって必要とされる場所で生成され得る。このプロセスは、光線力学的療法または光線力学的抑制と呼ばれる。微生物病原体の光線力学的抑制は、微生物病原体に有害な影響を与え得る一重項酸素などの活性酸素種(ROS)を生成するために、感光剤を光に暴露することを含む。この光線力学療法(PDT)は、酸素を消費し、過酸化物、スーパーオキシドアニオン(O -1)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、ヒドロペルオキシルラジカル(・OOH)、および一重項酸素()を含むいくつかの活性酸素種(ROS)の少なくとも1つを生成する。PDTには、光エネルギーを活性酸素種に変換する効率を高める光活性化剤または光触媒が必要である。このプロセスは、抗菌光線力学療法(aPDT)とも呼ばれる。既存の光線力学的抑制技術および用途には、さまざまな欠点がある。例えば、感光剤は、単独で使用した場合の効果が低いか、有機農業の慣行と一致しない物質から作られているか、またはその両方である。
【0005】
別のクラスの抗菌材料は、銅化合物(例えば、硫酸銅(CuSO4)および水酸化銅(Cu(OH)2))からなる。銅化合物は農薬として使用される;ただし、農薬として銅化合物を使用することにはいくつかの欠点がある。第一に、銅塩は農薬として広く使用されているため、一部の害虫は耐性を発達させている。第二に、銅は環境への危険性もあり、地表水への銅の排出は制限され得る。最後に、農薬として使用される銅塩は、水溶液中において高濃度で作物に適用され(例えば、水中で1%の硫酸銅)、蒸発によって作物に析出物が残り得る。これらの析出物は望ましくなく、作物の価値を低下させる。環境中の高レベルの銅の広い散布は、農業における高濃度の銅系抗菌剤の継続的な使用に対する厳しい制限である。
【0006】
(本発明の簡単な説明)
本発明は先行技術の制限を解決し、植物の微生物病原体の増殖を抑制する方法を提供し、該方法は、活性酸素種光増感剤である色素含有化合物;および微生物病原体に対する色素含有化合物の微生物致死率を高めるための銅化合物を含む組み合わせを植物に適用することと、植物に光を暴露して、色素含有化合物と銅化合物の組み合わせを活性化させ、植物の微生物病原体の増殖を抑制することと、を含む。特定の実施形態では、銅化合物は、微生物病原体に対する色素含有化合物の微生物致死率を高める銅塩である。銅塩は、活性酸素種光増感剤単独の微生物病原体増殖抑制と比較して微生物病原体増殖抑制を増加させるのに十分な量で提供され得る。
【0007】
本発明の特に有益な実施形態では、銅塩および色素含有化合物は、微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供される。微生物病原体の増殖の相乗的に有効な抑制が定義され得、組み合わせは、相加的な効果モデルに基づいて期待されるキル(kill)と比較して、微生物病原体のキルを少なくとも1桁増加させる。微生物病原体のキルがlogキル(log kill)単位で測定される場合、相乗的に有効なキルは、キルが1log単位で増加することである。この相加的な効果モデルは、式、P=X+Y(100-1)/100によって計算されるように、期待殺傷率を決定し、式中、Pは活性酸素種光増感剤および銅塩の組み合わせを用いた病原体の期待殺傷率であり、Xは活性酸素種光増感剤を単独で使用した場合の病原体の殺傷率、Yは銅塩を単独で使用した場合の病原体の殺傷率である。
【0008】
好ましい実施形態では、色素含有化合物は、リボフラビン、誘導体化リボフラビン、ルミクローム、誘導体化ルミクローム、クルクミン、フルオレセイン、エオシンY、エリスロシン、フラビン含有化合物およびローズベンガルBからなる群から選択される。最も好ましくは、色素含有化合物は、リボフラビンである。
【0009】
好ましい実施形態では、銅塩は、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、酸化銅、および臭化銅からなる群から選択される。
【0010】
任意の実施形態では、方法は、微生物病原体に対する前記組み合わせの微生物致死率を高めるために、植物にアスコルビン酸塩を適用するステップをさらに含む。
【0011】
実施形態では、色素含有化合物は、質量基準で約1~100ppmの濃度で提供され得、銅塩は、質量基準で約0.1~100ppmの銅の濃度である。より好ましくは、色素含有化合物は、質量基準で約5~50ppmの濃度で提供され、銅塩は、銅の質量基準で約2~10ppmの濃度で提供される。
【0012】
実施形態では、植物を光に暴露することは、植物を自然光に暴露することを含む、またはその代わりに、植物を光に暴露することは、植物を人工光に暴露することを含む。
【0013】
組み合わせは、土壌浸漬、ピペッティング(pipetting)、灌漑、噴霧、リスティング(listing)、散水、注ぎ込みの少なくとも1つによって植物に適用され得る。
【0014】
微生物病原体は、細菌性病原体、シアノバクテリア、藻類、真菌性病原体、またはウイルス病原体のいずれかを含み得る。植物は、非木質作物植物、木質植物、芝草、果実のなる木、木の実のなる木、または観賞用植物であり得る。組み合わせは、少なくとも1つの農業上許容されるアジュバントをさらに含み得、農業上許容されるアジュバントは、界面活性剤、浸透剤、湿潤剤、展着剤、保湿剤および乳化剤からなる群から選択され得る。
【0015】
色素含有化合物および銅塩は、同時に植物に適用され得る、または順に植物に適用され得る。組み合わせは、組み合わせの成分を含む組成物を植物に適用することによって植物に適用され得る。
【0016】
好ましい実施形態では、銅塩は、植物または環境に対する不要な損傷を避けるために、質量基準で100ppm未満の濃度で使用される。別の実施形態では、色素含有化合物および銅塩は、有機農法に適している。
【0017】
任意の実施形態では、方法は、銅塩と反応して活性酸素種を生成するためのアスコルビン酸および炭酸水素ナトリウム、またはその代わりに銅塩と反応して活性酸素種を生成するためのアスコルビン酸塩を植物に適用するステップをさらに含む。方法のアスコルビン酸塩は、農業上許容される塩であり得る。
【0018】
好ましい実施形態では、活性酸素種光増感剤である色素含有化合物は、リボフラビン、誘導体化リボフラビン、ルミクローム、誘導体化ルミクローム、クルクミン、フルオレセイン、エオシンY、エリスロシン、およびローズベンガルBからなる群から選択され;銅化合物が銅イオン含有有機錯体であり、微生物病原体に対する色素含有化合物の微生物致死率を増大させる。
【0019】
任意の実施形態では、銅イオン含有有機錯体は、活性酸素種光増感剤単独の微生物病原体増殖抑制と比較して微生物病原体増殖抑制を増加させるのに十分な量で提供される。
【0020】
好ましい実施形態では、銅イオン含有有機錯体および色素含有化合物は、微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供され、前記組み合わせは、活性酸素種光増感剤と銅イオン含有有機錯体をそれぞれ単独で使用した場合の微生物病原体増殖抑制の和よりも大きい程度に微生物病原体増殖抑制を高める。別の実施形態では、銅イオン含有有機錯体および色素含有化合物は、微生物病原体の増殖を抑制するために相乗的に有効な量で提供され、組み合わせは、相加的な効果モデルに基づいて期待されるlogキルと比較して、少なくとも1log、または1桁の大きさで微生物病原体のlogキルを増加させ、相加的な効果モデルは、式、P=X+Y(100-1)/100によって計算されるように、期待殺傷率を決定し、式中、Pは活性酸素種光増感剤および銅イオン含有有機錯体の組み合せを用いた病原体の期待殺傷率であり、Xは活性酸素種光増感剤を単独で使用した場合の病原体の殺傷率であり、Yは銅イオン含有有機錯体を単独で使用した場合の病原体の殺傷率である。好ましい実施形態では、色素含有化合物はリボフラビンである。他の好ましい実施形態では、銅イオン含有有機錯体は、銅エタノールアミン、銅EDTA、クラウンエーテルに錯化された銅イオン、およびポリエチレングリコールに錯化された銅イオンからなる群から選択される。方法は、少なくとも1つの農業上許容されるアジュバントをさらに含み得、任意で農業上許容されるアジュバントは、界面活性剤、浸透剤、湿潤剤、展着剤、保湿剤および乳化剤からなる群から選択され得る。
【0021】
任意の実施形態では、色素含有化合物および銅イオン含有有機錯体は、同時に植物に適用され得る、または任意で順に植物に適用され得る。方法は、組み合わせを組み合わせの成分を含む組成物を植物に適用することによって植物に適用することを含む。
【0022】
好ましくは、銅イオン含有有機錯体は、植物または環境に対する不要な損傷を避けるために、質量基準で100ppm未満の濃度で使用される。好ましくは、色素含有化合物および銅イオン含有有機錯体は、有機農法に適している。
【0023】
任意の実施形態では、方法は、銅塩と反応して活性酸素種を生成するためのアスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを植物に適用するステップ、または銅塩と反応して活性酸素種を生成するためのアスコルビン酸塩を植物に適用するステップを含み得る。アスコルビン酸塩は、農業上許容される塩であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】リボフラビンの構造。
【0025】
図2】ルミクロームの構造。
【0026】
図3】フラビン含有化合物、フラビンモノヌクレオチドの例。
【0027】
図4】修飾フラビン、FLASH-01aの構造。
【0028】
図5】修飾フラビン、FLASH-07aの構造。
【0029】
図6】クルクミン、エノール、およびケトの形態の構造。
【0030】
図7】ハロゲン化キサンテンローズベンガルの構造。
【0031】
図8】フェノチアジニウムメチレンブルーの構造。
【0032】
図9】トリスカチオン性フラーレンBB6の代表的な構造。
【0033】
図10】フルオレセインの構造。
【0034】
図11】HIGROW HG-GL36B出力光6スペクトル
【0035】
図12】実施例1の結果。
【0036】
図13】実施例1のデータ。
【0037】
図14】15分間の暴露後の大腸菌の低減
【0038】
図15】実施例2の結果。
【0039】
図16】Xanthomonas hortorum pv.の結果。ゼラニウムのPelargonii (実施例5を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
植物上の微生物病原体の光線力学的抑制のための様々な組成物および方法が本明細書に記載される。細菌性、真菌性、ウイルス性、または微生物病原体の光線力学的抑制は、光増感剤化合物および銅化合物(任意で銅塩または銅イオン含有有機錯体であり得る)を植物に適用し、植物を光に暴露することによって実施され得る。光増感剤化合物は、リボフラビン、誘導体化リボフラビン、ルミクローム、誘導体化ルミクローム、クルクミン、フルオレセイン、エオシンY、エリスロシン、フラビン含有化合物およびローズベンガルBからなる群から任意で選択され得る。
【0041】
驚くべきことに、光駆動による活性酸素種(ROS)の生成による抗菌効果は、銅塩などの低レベルの銅化合物の存在によって劇的に強化されることがわかった。例えば、光増感剤と銅塩の組み合わせは、光駆動抗菌プロセスまたは銅塩のいずれかを個別に生成するよりもはるかに大きな抗菌効果を生成し、それぞれの相加的な効果を超える。一例は、光活性化剤がリボフラビンであり、硫酸銅が添加される光駆動プロセスの組み合わせである(以下の実施例1を参照)。リボフラビン(ビタミンB2)は、人間の消費と環境に安全な天然素材である。ビタミンとして、それは人間の必須栄養素である。リボフラビンおよび銅塩はどちらも、米国食品医薬品局(FDA)の一般に安全と認められている(GRAS)リストにある。リボフラビンおよび銅を含む抗菌または殺虫製剤は、有機農薬として適格であり、有機農産物の栽培に使用され得る。
【0042】
本発明の特定の実施形態は、光活性化剤および銅塩との組み合わせを使用する。これらの2つの成分は、溶媒中の混合物として組み合わされ得る。例えば、光活性化剤および銅塩の両方は水に溶解され得る。混合物は完全に均質である必要はない。銅を使用する場合、銅塩はCu+1またはCu+2であり得る。
【0043】
光増感剤
光増感剤は、光(UVおよび/または可視光)を吸収し、その光を、銅と相互作用して相乗効果を生み出し得るエネルギーのある中間体に効率的に変換する任意の材料であり得る。実施例2に示すように、我々は、リボフラビン、エリスロシン、ローズベンガル、およびエオシンYを試験した;これらはすべて効果的であり、リボフラビンが試験条件下で最も効果的であった。リボフラビンの光分解によって生成されるルミクローム、およびリボフラビンテトラアセテート(2’,3’,4’,5’-テトラアセチルリボフラビン)は、光増感反応に効果的である。帯電した、例えば正に帯電した官能基をフラビン誘導体に添加して、これらの分子を細菌の負に帯電した表面に付着させたり、または水への溶解度を高めたりし得る(図2)。光増感剤の部分分解生成物を含む、一連の追加官能基を含む適切な発色団を含む化合物は、本発明で使用するのに適した光増感剤であり得る。
【0044】
上記のように、光増感剤化合物を使用して、植物に存在する微生物病原体の光線力学的抑制を可能にし得る。光増感剤化合物は、活性酸素種(ROS)を生成することによって光に反応する。生成されるROSのタイプに応じて、光増感剤は2つのクラス、すなわちタイプI光増感剤とタイプII光増感剤に分類され得る。一方では、タイプI光増感剤は、酸素の存在下で適切な波長で励起されると、電子の引き抜きまたは基質からの移動によって短命のフリーラジカルを形成する。一方、タイプII光増感剤は、「一重項酸素」として知られる高反応性酸素状態を形成し、これは、本明細書では「活性一重項酸素種」とも呼ばれる。一重項酸素は概して比較的長寿命であり、作用半径が大きくなり得る。
【0045】
光増感剤化合物は、一般に、金属化または非金属化され得ることを理解されたい。本発明の好ましい実施形態は、非金属化される。特定の金属化光増感剤は、それらが金属化状態にあると効果が低下することが知られている。例えば、クロリン光増感剤化合物が銅で金属化されている場合、生成されるROS(タイプI)は、例えば半減期が非常に短いため、微生物抑制の利用可能性が低くなる傾向がある。対照的に、同じ光増感剤化合物がマグネシウムなどの他の金属で金属化されている場合、生成されるROSは微生物抑制の利用可能性がより高くなる。したがって、(光増感剤を金属化するために)光増感剤と共に化学量論に近い量で使用される銅は有利ではない。銅は、少なくとも高濃度では、タイプII光増感剤に悪影響を与えることが知られていることが理解されるべきである。タイプII光増感剤の形成を可能にしない金属を選択すると、少なくとも反応性の一重項酸素種が生成されないか、または生成が少ないため、通常、微生物病原体の増殖の抑制がはるかに低くなることが理解されるべきである。クロリンと錯体を形成したときにタイプII光増感剤を形成しないことが知られている金属の非限定的な例は、Cu、Co、Fe、Ni、およびMnである。したがって、光増感剤と少量の銅含有化合物との組み合わせの相乗効果、特に本発明の好ましい実施形態は、驚くべきことであり、銅が光増感剤を使用した植物病原体の抑制にどのように悪影響を与え得るかについての既存の理解に反する。
【0046】
金属化状態は、別個の非金属化光増感剤と金属塩または他の金属含有化合物との混合物と混同されるべきではない。本発明の好ましい光増感剤は、光増感剤化合物自体が金属イオンに結合するか、または化学的に錯化する形態では使用されない。
【0047】
本明細書で使用される「一重項酸素光増感剤」という用語は、光によって励起されたときに反応性一重項酸素種を生成する化合物を指すことを理解されたい。言い換えれば、この用語は、上記で定義されたタイプIIプロセスがタイプIプロセスと比較して支配的である光増感剤を指す。
【0048】
また、本発明の潜在的な光増感剤の選択に関連するのは、例えば、以下の米国特許出願:US2015/0208896、US2015/0208898、US2015/0209808、US2015/0210960、US2015/0210963、US2015/0210964、US2015/0211165、およびUS2015/0211170に記載されるProcter & Gamble Companyにおける研究者による研究であり、これらの文献は本明細書に参照をもって組み込まれる。
【0049】
光増感剤は、任意に、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、1,1’-ビフェニル-4-アミン、ベンゾフェノン、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオール、1,1’-ビフェニル-4-アミン、1,1’-ビフェニル-4-オール、1,1’:2’,1’’-テルフェニル、1,1’:3’,1’’-テルフェニル、1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’-クアテルフェニル、1,1’:4’,1’’-テルフェニル、1,10-フェナントロリン、1,1’-ビフェニル、1,2,3,4-ジベンズアントラセン、1,2-ベンゼンジカルボニトリル、1,3-イソベンゾフランジオン、1,4-ナフトキノン、1,5-ナフタレンジオール、10H-フェノチアジン、10H-フェノキサジン、10-メチルアクリドン、1-アセトナフトン、1-クロロアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-ナフタレンカルボニトリル、1-ナフタレンカルボキシアルデヒド、1-ナフタレンスルホン酸、1-ナフタレノール、2(1H)-キノリノン、2,2’-ビキノリン、2,3-ナフタレンジオール、2,6-ジクロロベンズアルデヒド、21H,23H-ポルフィン、2-アミノアントラキノン、2-ベンゾイルチオフェン、2-クロロベンズアルデヒド、2-クロロチオキサントン、2-エチルアントラキノン、2H-1-ベンゾピラン-2-オン、2-メトキシチオキサントン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2-メチル-9(10-メチル)-アクリジノン、2-メチルアントラキノン、2-メチルベンゾフェノン、2-ナフタレンアミン、2-ナフタレンカルボン酸、2-ナフタレノール、2-ニトロ-9(10-メチル)-アクリジノン、9(10-エチル)-アクリジノン、3,6-アクリジンジアミン(qcridinediamine)、3,9-ジブロモペリレン、3,9-ジシアノフェナントレン、3-ベンゾイルクマリン、3-メトキシ-9-シアノフェナントレン、3-メトキシチオキサントン、3’-メチルアセトフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4’-フルオロアセトフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4’-メチルアセトフェノン、4-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、6-メチルクロマノン、7-(ジエチルアミノ)クマリン、7H-ベンズ[de]アントラセン-7-オン、7H-ベンゾ[c]キサンテン-7-オン、7H-フロ[3,2-g][1]ベンゾピラン-7-オン、9(10H)-アクリジノン、9(10H)-アントラセノン、9(10-メチル)-アクリジノン、9(10-フェニル)-アクリジノン、9,10-アントラセンジオン、9-アクリジンアミン、9-シアノフェナントレン、9-フルオレノン、9H-カルバゾール、9H-フルオレン-2-アミン、9H-フルオレン、9H-チオキサンテン-9-オール、9H-チオキサンテン-9-オン、9H-チオキサンテン-2,9-ジオール、9H-キサンテン-9-オン、アセトフェノン、アクリデン、アクリジン、アクリドン、アントラセン、アントラキノン、アントロン、α-テトラロン、ベンズ[a]アントラセン、ベンズアルデヒド、ベンズアミド、ベンゾ[a]コロネン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[f]キノリン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[rst]ペンタフェン、ベンゾフェノン、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラメチル、クリセン、コロネン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンゾ[b,def]クリセン、ジベンゾ[c,g]フェナントレン、ジベンゾ[def,mno]クリセン、ジベンゾ[def,p]クリセン、DL-トリプトファン、フルオランテン、フルオレン-9-オン、フルオレノン、イソキノリン、メトキシクマリン、メチルアクリドン、ミヒラーケトン、ナフタセン、ナフト[1,2-g]クリセン、N-メチルアクリドン、p-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ、ペンタセン、ペリレンキノノイド顔料、フェナントレン、フェナントレンキノン、フェナントリジン、フェナントロ[3,4-c]フェナントレン、フェナジン、フェノチアジン、p-メトキシアセトフェノン、ピラントレン、ピレン、キノリン、キノキサリン、リボフラビン5’-(二水素ホスフェート)、チオキサントン、チミジン、キサンテン-9-オン、キサントン、およびそれらの混合物からなる群から選択される光活性部位を含み得る。他の適切な水溶性光活性化剤は、フルオレセインおよびその誘導体;好ましくは、ハロゲン置換フルオレセイン;より好ましくは、ブロモフルオレセインおよびヨードフルオレセイン、例えばジブロモフルオレセイン、ジヨードフルオレセイン、ローズベンガル、エリスロシン、エオシン(例えば、エオシンY)、クルクミン、プロトポルフィリンIX、レサズリン、ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、ジヒドロローダミン123および関連するクロモフォア、メチレンブルー、およびローズベンガルを含む。
【0050】
銅含有化合物
本発明の銅化合物は、銅塩(好ましくはCu+2、および任意でCu+1)、および銅エタノールアミン錯体などの銅-有機錯体化合物を含み得る。非限定的な例は、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、酸化銅、オクタン酸銅、臭化銅(またはそれらの銅+1状態のこれらの塩の還元生成物)ならびに、銅エタノールアミン錯体、グルコン酸銅、オルトリン酸銅、ピロリン酸銅、またはそれらの農業的に許容される塩およびそれらの水和物形態を含む。
【0051】
活性酸素種(ROS)を生成する光活性化剤と銅の間の相乗効果を使用して植物保護製品を定義する際には、我々はどの銅化合物が許容されるかを考慮する必要がある。元素銅を使用した大腸菌での実験は有意な性能を示さなかったが、成功した試験は必ずしも可溶性塩または可溶性化合物のみに基づく必要はなかった。さらに、かろうじて溶解する塩も有効であるため、本発明の実施は、溶解度の高い銅水溶性塩を用いた製剤のみに限定されるべきでない。他の形態の浮遊された銅が効果的であり得る。
【0052】
Cu+2塩の水への溶解度は、pHの関数であり、炭酸塩と重炭酸塩の存在によっても影響を受ける。銅塩は一般にpH5.5の蒸留水に溶ける。より高いpH値では、可溶性銅の量はpHと総銅濃度の両方の関数であり、pH6.5で最大4mg/lの可溶性銅、pH7.4で最大1.3mg/lの可溶性銅である。本発明は、低レベルの銅化合物が、植物病原体の増殖を減少させることに対する光増感剤との相乗効果に及ぼす重要な貢献を教示する。好ましい実施形態では、10mg/lの硫酸銅、または4mg/lの銅のみが使用される。制御放出用に設計された製剤を含め、水への溶解度が制限された銅化合物を使用する場合でも、本発明が操作可能であることは明らかであるはずである。
【0053】
光増感剤と銅含有化合物の組み合わせ
光増感剤と銅含有化合物の組み合わせは、別々に使用された場合のいずれかの成分の個々の貢献よりもはるかに大きい植物病原体の増殖の低減につながる。この方法で増殖を遅らせ得る植物病原体には、グラム陰性菌、グラム陽性菌、シアノバクテリア、藻類、真菌、およびウイルスが含まれる。
【0054】
光増感剤化合物、銅含有化合物および他の任意の添加剤またはアジュバントの組み合わせが本明細書および請求項にわたって記載されている場合、組み合わせの成分の各1つの農業的に有効な量は、宿主植物に対して最小限のまたは非植物毒性でありながら抗菌活性を提供するように使用され得ることを理解されたい。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、1以上の農業的に適切なアジュバントを含む。いくつかの実施形態において、1以上の農業的に適切なアジュバントのそれぞれは、1以上のアクチベーターアジュバント(例えば、1以上の界面活性剤;1以上の油性アジュバント、例えば、1以上の浸透剤)1以上の湿潤剤または展着剤;1以上の保湿剤;1以上の乳化剤;1以上のドリフト制御剤;1以上の増粘剤;1以上の沈着剤;1以上の水質調節剤;1以上の緩衝剤;1以上の消泡剤;1以上のUV遮断薬;1以上の抗酸化剤;1以上の肥料、栄養素、および/もしくは微量栄養素;ならびに/または1以上の除草剤からなる群から独立して選択される。例示的なアジュバントは、参照によりその全体が組み込まれる、Hazen, J.L. Weed Technology 14: 773-784 (2000)に提供される。
【0056】
光増感剤化合物および銅含有化合物は、抗菌組成物の一部として提供され得る。また、抗菌組成物は、水などの送達流体を含み得る。抗菌組成物は、成分の特定の濃度および相対比率を有するように提供され得る。例えば、抗菌組成物は、約100nMと約50mMの間、1マイクロモルと約1000マイクロモルの間、5マイクロモルと約200マイクロモルの間の光増感剤化合物、約10マイクロモルと約150マイクロモルの間、約20マイクロモルと約100マイクロモルの間の光増感剤化合物、または約25マイクロモルと約75マイクロモルの間の光増感剤化合物、を有し得る。
【0057】
抗菌組成物はまた、例えば、約2マイクロモルと約10,000マイクロモルの間の銅含有化合物、約5マイクロモルと約5,000マイクロモルの間の銅含有化合物、約10マイクロモルと約1,000マイクロモルの間の銅含有化合物、約25マイクロモルと約500マイクロモルの間の銅含有化合物、約50マイクロモルと約100マイクロモルの間の銅含有化合物、を有し得る。1マイクロモル/Lの銅は0.0635mg/Lであることに留意されたい。また、10ppmのCuSO4は4ppmの銅に相当し、これは62.7マイクロモルである。
【0058】
抗菌組成物中の光増感剤化合物と銅含有化合物の重量による相対割合は、例えば、約1000:1と約1:1000との間、約500:1と約1:500との間、約100:1と約1:100との間、または約10:1と約1:10との間とし得る。
【0059】
銅と光増感剤の相対モル比は、1:1程度であることが最も好ましい。
【0060】
抗菌組成物中に存在し得る他の添加剤に関して、界面活性剤は、植物の葉の被覆を補助するためのアジュバントとして存在し得る。界面活性剤は、許容されるポリソルベート型界面活性剤(例えば、Tween(登録商標) 80)、非イオン性界面活性剤ブレンド(例えば、Altox(商標) 3273)、または他の適切な界面活性剤とし得る。
【0061】
光増感剤と銅含有化合物の適用
本発明の光増感剤化合物およびエンハンサー化合物は、微生物病原体の光線力学的抑制のために植物に適用し得る。光増感剤化合物およびエンハンサー化合物は、植物に同時に適用し得る。例えば、光増感剤化合物およびエンハンサー化合物ならびに送達液を含むように、抗菌組成物が調製され得る。抗菌組成物は、噴霧、霧吹き、散水、注ぎ込み、または他の任意の適切な方法によって植物に適用され得る。抗菌組成物は、植物の葉、根および/または茎に適用され得る。他の添加剤も抗菌組成物に含められ得、他の適用方法も実施され得る。
【0062】
抗菌組成物が適用される植物は、それらが自然光に暴露される屋外または屋内(例えば、温室)であり得、それらが人工光に暴露される屋内であり得る。入射光への暴露は、光増感剤化合物が、順に微生物の増殖の崩壊を促進するROSを生成し得るように提供される。
【0063】
操作としては、光増感剤化合物とエンハンサー化合物を植物に感染した微生物病原体に接触させる。光増感剤とエンハンサー化合物の両方は、病原微生物の細胞壁および細胞間物質と接触するようになる。
【0064】
アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩添加剤
アスコルビン酸(別称:ビタミンC)は、本発明の抗菌組成物の致死率をさらに高め得る任意添加剤である。アスコルビン酸は固体であり、pKaが4.17である。本発明の植物保護製剤は、溶液のpHが7になるように緩衝化されているので、それは主にアスコルビン酸塩の形態で存在する。少量の銅はアスコルビン酸塩の酸化を触媒し、過酸化水素を含むROSを生成することが示されている(Zhu et al, RSC Adv., 2016, 6, 38541)。これらは、暗室(夜間など)でも植物病原体の防除に有用である。
【0065】
病圧が高いとき、または光強度が少ないと期待されるとき(例えば、どんより曇った日、夕方または夜間の適用)には、アスコルビン酸を添加して光増感抗菌性能を補い得る。銅の存在下でのアスコルビン酸塩の酸化の効果は、添加するアスコルビン酸塩の濃度を制御することで制御され得る。高濃度であれば効果が長く、一方で低濃度であれば効果が短くなるだろう。植物保護用途では、中性のpHを維持し、アスコルビン酸をアスコルビン酸塩に変換するために含まれなければならない得られる溶液のイオン強度が過度に高く、したがって塩辛いため、高濃度のアスコルビン酸を含めることは問題となり得る。
【0066】
本発明に記載されているような植物保護用途の光線力学的療法では、製剤へのアスコルビン酸の配合は、10と0.0001%の間、5と0.005%の間、1と0.01%の間の重量%レベルで有益であることが判明した。
【0067】
微生物病原体および植物
抗菌組成物が適用可能な微生物病原体は、真菌性病原体および細菌性病原体を含む。抗菌組成物が適用され得る真菌性病原体は、トマトおよびジャガイモなどの植物に感染し得るAlternaria solani;ブドウの他、軟果および球根作物に感染し得るBotrytis cinerea;または芝草に一般的に感染し得るSclerotinia homoeocarpaを含む。Alternaria、Botrytis、またはSclerotinia属の他の真菌性病原体も、抗菌組成物の適用を受け得る。抗菌組成物は、例えば、Colletotrichum、Fusarium、Puccinia、Erysiphaceae、Cercospora、Rhizoctonia、Bipolaris、Microdochium、Venturia inaequalis、Monilinia fructicola、Gymnosporangium juniperi-virginianae、Plasmodiophora brassicae、Ustilago zeae、Phytophthora、Pythium、Fusarium oxysporum、Phytophthora infestans、Taphrina deformans、Powdery Mildew、Phragmidium spp.、その他の真菌性病原体のような様々な植物病を引き起こす病原体に罹患しているかまたは感受性がある植物に適用され得る。
【0068】
抗菌組成物が適用可能な細菌性病原体は、Erwinia amylovaraなどのグラム陰性菌、または木本植物に感染し得るErwinia属の他の細菌性病原体を含む。E. amylovaraは、ナシ、リンゴ、および他のバラ科作物を含む様々な植物に火傷病を引き起こす。抗菌組成物は、種々の植物病を引き起こす病原体、例えば、Pseudomonas、Xanthomonas、Agrobacterium、Curtobacterium、Streptomyces、大腸菌、(オリーブ急速衰弱症候群(OQDS)病を引き起こす)Xylella fastidiosa、またはその他の細菌性病原体に罹患または感受性を有する植物に適用され得る。
【0069】
抗菌組成物は、微生物病原体の影響を受ける様々な種類の植物に使用され得る。作物植物、芝生植物、樹木、および微生物病原体に感染した他の植物が処理され得る。また、本明細書に記載の抗菌組成物は、植物および病原体の種類、ならびに微生物感染の状態に応じて、微生物病原体に対して様々な抑制効果を有し得ることに留意されたい。本明細書では、抗菌組成物が植物上の微生物病原体の増殖を抑制することができると記載されているが、かかる表現は限定されるべきものではなく、微生物病原体の抑制、微生物病原体に対する予防、微生物病原体の破壊または微生物病原体に対する毒性の増大を一般的に含むものと理解されるべきである。
【0070】
植物の種類
化合物または組成物は、微生物病原体の影響を受け得る様々な種類の植物に使用され得る。植物は、非木質作物植物、木質植物、または芝草であり得る。植物は、食用作物植物、非食用作物植物、果実植物、野菜植物、マメ科植物、穀物植物、飼料植物、油糧種子植物、畑作物、庭作物、温室植物、ハウス植物、花卉、芝草、果樹などの樹木、および微生物病原体の影響を受け得る他の植物からなる群から選択され得る。
【0071】
いくつかの実施態様では、植物は芝草である。本明細書で使用される場合、「芝草」という用語は、グランドカバーを提供する栽培された草、例えば、一定の高さを維持するために定期的に切断または刈り取られるターフまたは芝生を指す。草はイネ科に属し、6つの亜科に細分され、そのうち3つは一般的な芝草を含む:涼しい季節の芝草のFestucoideae亜科;暖かい季節の芝草のキビ亜科およびEragrostoideae亜科。限られた数の種が芝草として広く使用されており、一般に均一な土壌被覆を形成し、草刈りおよび交通に耐えるという基準を満たす。一般的に、芝草は、成長点を切断することなく草刈りを容易にする圧縮されたクラウンを備える。本文脈では、「芝草」という用語は、1種類以上の草を栽培し、比較的均一な土壌を形成している領域を含み、同種の異なる品種を組み合わせたブレンド、または異なる種および/もしくは品種を組み合わせた混合を含む。
【0072】
いくつかのシナリオでは、組み合わせは、植物における微生物病原体の増殖を抑制するための相乗的な反応を示し得る。本明細書で使用される「相乗」または「相乗的な」という用語は、それらの組み合わせ効果がそれらの個々の効果の合計よりも大きくなるように、組み合わせ(または組成物)の2つ以上の成分の相互作用を指すことを理解されたい。これは、本明細書の文脈において、2つ以上の光増感剤、銅含有化合物の作用を含み得る。
【0073】
いくつかのシナリオでは、S. R. Colby, “Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations”, Weeds 15, 20-22 (1967)に示されるアプローチが使用されて、相乗効果を評価し得る。期待される効果、Eは、次のように表される:E=X+Y-[(X*Y/100]、式中、Xは、組み合わせの第1成分の、未処理対照の%で表される効果であり、Yは組み合わせの第2成分の未処理対照の%で表される効果である。観察された効果が期待される効果よりも高いとき、2つの成分は相乗的に有効な量で存在すると言われる。より好ましくは、本発明において、2つの成分は、観察された効果が期待される効果よりも少なくとも1桁高いとき、より好ましくは観察された効果が期待される効能よりも少なくとも2桁高いとき、最も好ましくは観察された効果が期待される効果よりも3桁以上高いとき、相乗的に有効な量で存在すると言われる。
【0074】
本発明の製剤の適用は、植物が植物病原体に感染する前または後のいずれかで植物に行い得る。従って、本方法は、予防法として、または感染した植物の処理として使用され得る。
【0075】
実施例及び実験
実施例1:LED青色光源を用いた10ppmのCuSO4と18ppmのリボフラビンを用いた大腸菌の光線力学的処理。
【0076】
大腸菌(E.coli)細菌(ATCC 25922)を用いて、生物を様々な試験条件に暴露する試験を実施した。光活性化のための光源は、青色LEDライト(HIGROW 2019)で、大腸菌を入れた容器から7cmの距離に置いた。光活性化剤はリボフラビン(Aldrich R7649、ロットWXBB4048V、純度98.6%)を18ppmの濃度で使用した。硫酸銅は10ppmの濃度(水溶液)で使用した。試験は、湿潤剤Silwet(登録商標)L-77を0.0125%の濃度で含んだ。Silwet(登録商標)L-77 はCollierville, TNの Helena Agri-Enterprises, LLC の製品であり、水性スプレーで使用すると濡れ拡がり特性が向上する非イオン性有機シリコーン界面活性剤コポリマーである。Silwet(登録商標)L-77は、27306-78-1のCAS登録番号を有する。各試験は、5分から30分の間で変化する、規定された時間の間で行われた。暴露時間終了後、細菌を希釈してプレーティングし、コロニーを計数し、未処理の対照との比較により、対応する低減が決定された。
【0077】
その結果を図12に示し、以下に要約する。暗室において18ppmのリボフラビンは、測定可能なキルを生じなかった。暗室で10ppmの硫酸銅は30分で0.226-logキルを与えただけであった。青色光のみ(銅も光増感剤もなし)では、30分後に0.2775-logキルを生じた。18ppmのリボフラビン単独で青色光を照射すると、30分後に0.83-logキルを示し、わずかながらキルさせることができた。10ppmの硫酸銅単独で青色光を照射すると、30分後に0.954-logキルを示し、わずかながらキルさせることができた。驚いたことに、10ppmの硫酸銅と18ppmのリボフラビンを青色光で照射すると、5分で3.67-logキル、15分で6.89-logキル、30分で完全キル(7.73-logキル)が得られた。
【0078】
10ppmの硫酸銅単独と18ppmのリボフラビン単独に基づく期待される効果Eは、次のように計算され得る:E=X+Y(100-X)/100、式中、Xは、組み合わせの第1成分の、未処理対照の%で表される効果であり、Yは組み合わせの第2成分の未処理対照の%で表される効果である。まず、上記のlogキルデータを(対照の接種と比較して)大腸菌の存在率に変換する必要がある。Log低減率を低減率に変換する式は、%低減=(1-10-L)X100であり、LはLog低減率である。したがって、18ppmのリボフラビン単独で青色光を照射した場合、30分後に0.83-logキルをもたらし、これは85.208%の低減である。10ppmの硫酸銅単独で青色光を照射した場合、30分後に0.954-logキルをもたらし、これは88.88%の低減である。したがって、期待される効果は、85.208+88.88-(85.208*88.88)/100=98.355と予測されよう。98.355%の低減は1.785-logキルに過ぎない。実際の効果は7.73-logキルであり、これは古典的な抗菌剤の相加理論で予測されるよりも5.945-log大きい。相乗効果は、6桁近く多くの細菌を死滅させる原因となる。
【0079】
18ppmのリボフラビンと10ppmの硫酸銅の組み合わせは、病原体の低減の劇的な相乗効果を有する。それは、相加効果より100万倍も優れている。これは明らかに予測されない。抗菌剤と抗生物質のさらなる組み合わせは、相加的、相乗的、または場合によっては拮抗的な相互作用につながり得る(Ocampo 2014, Bollenbach 2015)。したがって、光処理抗菌システムでリボフラビンに銅を添加すると、100万倍超優れた結果は言うまでもなく、大幅に改善された結果が得られることは明らかではない。生データは、図13に見られる表に記載される。
【0080】
また、我々は光強度の影響を評価するための試験も行った。これらの試験は、10ppmの硫酸銅と18ppmのリボフラビン(水溶液)を使用して青色光の下で15分間暴露し、減光フィルターを使用して光強度を下げた。450nmから460nmの範囲における全光強度は353W/mであった。結果を表14に示す。我々は、16W/m(全光強度の4.5%)で0.71logキルを観察し、我々は、56W/m(全光強度の15.9%)で1.8logキルを観察し、我々は、195W/m(全光強度の55%)で3.12logキルを観察し、全強度(353W/m、100%)は6.9logキルを生じた。これらの結果は、光強度の増加により所望の効果が増加するため、これが光活性化プロセスであることを確認するものである。
【0081】
実施例1で使用した硫酸銅の濃度と、先行技術で汎用農薬に使用されている濃度との違いを認識することが重要である。ボルドー混合物(CuSO4とCa(OH)2)およびブルゴーニュ混合物(CuSO4とNa2CO3)では硫酸銅を1%以上(ブルゴーニュ混合物は20%まで)使用する。好ましい実施形態では、本発明は、硫酸銅を10ppmの濃度で使用することを教示し、これは1,000分の1の低濃度である。広く使用されている銅系農薬CuPRO(登録商標) 5000(CuPRO(登録商標)2019)は、水酸化銅を含む。ラベルの説明書によると、銅の濃度が最も低い場合の推奨混合率は、水100ガロン(834lbs)あたり4lbsのCuPRO(登録商標)(2.45lbsの水酸化銅)であり、これは0.030Mまたは0.294.%の銅濃度に相当する。その濃度は、本発明の好ましい製剤で使用される10ppmの値よりも294倍高い。したがって、本発明で使用される銅のレベルだけを、広く使用されている製品が推奨する最低濃度と比較すると、我々はほぼ300倍も低い濃度を使用することになる。本明細書で引用した複数の試験は、10ppmの硫酸銅を使用する;より高い濃度(例えば100ppm)では、銅自体の抗菌特性により、リボフラビンの非存在下でいくつかの抗菌活性を生じ得る。
【0082】
実施例2:銅塩を用いた光増感剤と広域スペクトル光源を用いた相乗的な大腸菌の殺傷。
【0083】
この実施例では、我々は、異なる光増感剤(水中50μM)を硫酸銅と組み合わせた場合と組み合わせない場合を比較する。農業用アジュバントであるスティッカースプレッダー、Silwet(登録商標) L-77も0.0125%の濃度で含まれた。実験条件は、実施例1と同じにした。大腸菌を試験菌とし、硫酸銅を10ppmとし、光暴露時間を30分とした。ただし、この試験シリーズでは、我々は、UVを含む太陽光のスペクトルを再現した光源を使用した。それは、爬虫類を飼育するテラリウムに使用され、その中にはそれらの光にUV成分を必要とするものがある。本明細書では、それは、「爬虫類ライト」(Zoo Med 2019)と呼ばれる。我々は、リボフラビン(R)、エリスロシン(ER)、ローズベンガル(RB)、エオシンY(Y)、およびリボフラビン一リン酸(RMP);銅ありおよびなし、を試験した。結果(3試験平均)を図15に示す。すべての色素が相乗的な殺傷効果を示し、銅と組み合わせたリボフラビンが期待外の最大の相乗的なlogキルを生じた。
【0084】
各試験の中央値を使用すると(図15を参照)、光増感剤と銅の組み合わせが相乗効果をもたらすことは明らかである。まず、爬虫類ランプの下で10ppmの硫酸銅を30分間照射しても0.131-Logキル(26.04%キル)にしかならず、単独で使用した光増感剤もあまり効果がないERは0.13-Logキル(25.88%キル)を有し;RBは0.16-Logキル(30.81%キル)を有し;Rは0.115-Logキル(23.26%キル)を有し;EYは平均0.87-Logキル(6.46%キル)を有し;そしてRMPは平均0.042-Logキル(3.17%キル)を有する。
【0085】
古典的な相加理論を用いると、18ppmのERと10ppmの硫酸銅の組み合わせで期待されるキルは45.18%(0.261-Logキル)である。実際の中央値は1.22-Logキルであり、期待より0.959-Log高いので、これは相乗効果であると言える。
【0086】
古典的な相加理論を用いると、18ppmのEYと10ppmの硫酸銅の組み合わせで期待されるキルは30.82%(0.160-Logキル)である。実際の中央値は1.86-Logキルであり、期待より1.70-Log高いので、これは相乗効果であると言える。
【0087】
古典的な相加理論を用いると、18ppmのRと10ppmの硫酸銅の組み合わせで期待されるキルは43.24%(0.246-Logキル)である。実際の中央値は3.473-Logキルであり、期待より3.23-Log高いので、これは相乗効果であると言える。また、これは相加理論から期待されるよりも平均して1,000倍超の効果がある。
【0088】
古典的な相加理論を用いると、18ppmのRBと10ppmの硫酸銅の組み合わせで期待されるキルは48.82%(0.159-Logキル)である。実際の中央値は1.38-Logキルであり、期待より1.22-Log高いので、これは相乗効果であると言える。
【0089】
古典的な相加理論を用いると、18ppmのRMPと10ppmの硫酸銅の組み合わせで期待されるキルは28.38%(0.144-Logキル)である。実際の中央値は4.13-Logキルであり、期待より3.98-Log高いので、これは相乗効果であると言える。これは期待よりのほぼ1万倍の効果である。
【0090】
実施例3:より高い光増感剤濃度での追加試験。
【0091】
この実施では、我々は爬虫類ライトも使用した。この試験では、光強度は8,520Lux、または26W/mであった(比較のため、これは曇りの日の完全な昼光、または温室内の一般的な光レベルであり得る)。我々は、以下のような結果を観察した。30分間のリボフラビン(10ppm)+Silwet(0.0125%)は、0.15のlog低減を示した。1時間、50ppmのリボフラビンは、1.6のlog低減を示した。Silwet(Helena 2019参照)は、農薬とともに一般的に使用される農業用非イオン性有機ケイ素界面活性剤の湿潤アジュバントおよび展着剤であり、一般にスティッカースプレッダーとしても知られる)。Silwet(登録商標)L-77抗菌活性がほとんどない。
【0092】
30分間の硫酸銅(10ppm)+Silwet(0.0125%)は、0.13のlog低減を示した。30分間、40ppmの硫酸銅も0.13のlog低減を示した。30分間のリボフラビン(18ppm)+硫酸銅(10ppm)+Silwet(0.0125%)は、3.8のlog低減を示した。再び、我々は、光活性化剤と銅の組み合わせで、1,000倍超の結果向上を見る。この実施例は、光活性化剤と銅塩の組み合わせが、最も関連性の高い条件:すなわち一般的な光レベルで、光活性化剤と銅の両方の有効濃度が最も低い状態で高い効果を発揮することを示し、これは経済的な理由からも望ましい。この実施例では、光源はUV光を含む。しかし、青色LEDを用いた実施例で示したように、UVは必要ない。
【0093】
実施例4:銅化合物としての銅エタノールアミン
【0094】
この実施例では、我々は、銅エタノールアミン(製品ラベルより:銅エタノールアミン錯体、混合(Mono CAS#14215-52-2およびTri CAS#82027-59-6)27.9%;その他の成分72.1% 合計100.0% 金属銅換算、9%;ガロンあたりの0.909lbsの量の元素銅を含む)(EPA登録番号8959-10)を含む、市販の殺藻剤製品、Cutrine(登録商標)を試験した。銅エタノールアミンは、銅塩を中性pHの溶液に保つのに有効である。試験は上記のように、爬虫類ライトの下で30分間行われた。これまでの試験データから、これらの条件下ではリボフラビン単独では1-logキルを大きく下回ることが得られている。
【0095】
CuSO4を10ppmで用いた上記試験は、銅3.98ppmに相当する。我々は、当初、低濃度と高濃度でのCutrine(登録商標)を試験したが、ここでは、低濃度は以前通りの約3.98ppmの銅に調整され、高濃度は39.8ppmの銅(100ppmのCuSO4と同じ銅濃度)に調整される。我々は、それらを18ppmのリボフラビンの有り無しで試験した。また、試験は3重で行われた。また、18ppmかつ爬虫類ランプの下で30分のリボフラビン単独は、0.115-Logキル(大腸菌)を有する。3.98ppmの銅のCutrine(登録商標)は0.30-Logキルを有し、39.8ppmのCutrine(登録商標)は3.1-Logキルを有する。
【0096】
3.98ppmの銅のCutrine(登録商標)と18ppmのリボフラビンの組み合わせで、2.5-Logキルが観察された。相加理論に基づいて期待されるキルは、わずか0.314-Logキルである。従って、実際のキルは期待されるものより2.18-Log高く、これは相乗効果である。
【0097】
39.8ppmの銅のCutrine(登録商標)と18ppmのリボフラビンの組み合わせで、7.4-Logキルが観察された(実質的に完全に殺傷)。相加理論に基づいて期待されるキルは、わずか3.11-Logキルである。従って、実際のキルは期待されるものより4.29-Log高く、これは明らかに相乗効果である。
【0098】
実施例5:ゼラニウムの植物におけるXanthomonas hortorum pv. Pelargoniiの低減。
【0099】
これらの試験において、ゼラニウムの挿し木「アメリカンブライトレッド(American Bright Red)」がSyngenta Flowers(Gilroy, CA)から入手された。挿し木は発根させ、Joly Ranch Potting Mix #2を入れた3.5インチポットに植え付けた。植物は最初に1.5g/ポット(Osmocote Plus、微量栄養素を含む15-9-12)で施肥され、週に3回手で水が与えられた。植物を樹立させ、高さ約15cmまで成長させた。実験は、温度が65~90°Fに維持され、光のレベルが1000~2000フートキャンドルの温室ハウスで行われた。実験は、処理ごとに3ブロック(処理ごとに10植物、総数60)のランダム化ブロック設計で設定された。単一製品の適用は、02/27/19に行われた。殺菌剤CuProT/N/O 2005(水酸化銅、35%の金属銅当量を含む)は2lbs/100ガロン(100ガロンあたり0.7lbsの金属銅当量)で使用され、同じ日に標準対照として適用された。すべての製品は、ハンドスプレーを使用して流出するまで植物の表面に噴霧された。
【0100】
細菌接種物の生産のために、Xanthomonas hortorum pv. pelargonii(旧X. campestris pv. Pelargoni、X575)の培養物を、5%ショ糖で補正したDifco Nutrient Agar(Difco Laboratories、Detroit、MI)上で28±1℃で48時間増殖させた。細菌をNAプレートから採取し、生理食塩水(NaCl、8.5g/l)に懸濁し、分光光度法でA600から1X105コロニー形成単位/mlで調整した。葉および茎に細菌懸濁液が流出するまで噴霧し、それらは透明なポリエチレン袋に24時間封入された。処理物は、殺菌剤を適用した(02/28/19)24時間後に接種された。処理1では、非接種植物(生理食塩水を噴霧)が対照として用いられた。接種後2週間目に各植物の葉の斑点数が数えられた。各処理はANOVAとLSDを用いて比較した。また、植物毒性の任意の兆候があるかどうかを判断するために、視覚的な比較も行われた。
【0101】
このデータは、リボフラビンだけを20ppmにした処理Eは、部分的な効果しかないことを示す。しかし、リボフラビンを20ppm、硫酸銅を10ppmとした処理Cは有効である。リボフラビンと硫酸銅にアスコルビン酸ナトリウムを加えた処理Dは、市販品のCuPROと同程度の効果がある。必要な銅の量を大幅に減らすことができるのは、本発明の利点である。100ガロンあたり0.7lbsの金属銅換算値、またはLあたり0.839gの銅を含む市販のCuPRO製品の処理Fと、10ppmの硫酸銅、またはLあたり0.00398gの銅を含む処理Dを比較すると、本発明の解決策は、銅の濃度を200倍超低下させながら、同等の結果を提供することが分かる。(図16を参照)。
【0102】
本発明は、その特定の好ましいバージョンを参照してかなり詳細に説明されてきたが、他のバージョンが可能である。したがって、添付の請求項の精神および範囲は、法律で義務付けられている場合を除き、本明細書に含まれる好ましいバージョンの説明に限定されるべきではない。
【0103】
読者の注意は、本明細書と同時に提出され、参照により本明細書に組み込まれるすべての参考文献に向けられる。
【0104】
本明細書の特徴はすべて(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、特に明記されない限り、同じ、同等または同類の目的を果たす別の特徴に取って代わってよい。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、同等の類似の特徴を有する一連の一般的な例としてのみ記載される。

図1
図2
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