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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】スズ含有物からスズを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 25/00 20060101AFI20240206BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20240206BHJP
   C25C 1/14 20060101ALI20240206BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C22B25/00 101
C22B3/12
C25C1/14
C25C7/06 301A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019149457
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2021031689
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「持続可能な社会の実現「新たな資源循環サイクルを可能とするものづくりプロセスの革新」」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷ノ内 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岸本 章宏
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 25/00
C25C 1/14
C25C 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ含有物からスズを選択的に分離する方法であって、
(1)ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に前記スズ含有物を浸漬してスズを選択的に浸出させる工程
を備える、方法。
【請求項2】
前記ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンがヨウ素のオキソ酸イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化性アルカリ溶液のpHが12以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化性アルカリ溶液は、液量を40mLとして、銅、鉄、鉛及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属線(表面積0.33cm2)を50℃において400rpmで振盪しながら2時間浸漬した場合の重量減少が2mg未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(1)において前記酸化性アルカリ溶液によりスズを浸出させる前、後及び最中よりなる群から選ばれる少なくとも1箇所において、前記スズ含有物の粉砕処理及び/又は物理選別処理を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
(2)前記工程(1)で得られたアルカリ溶液から、陰極上にスズを電解析出させる工程を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により前記アルカリ溶液中でハロゲンのオキソ酸イオンを再生させる、ハロゲンのオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液の再利用方法。
【請求項8】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む、スズ含有物を浸漬してスズを選択的に浸出させることで前記スズを分離するために使用される溶液。
【請求項9】
酸化性アルカリ溶液である、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
スズ含有物からスズを浸出処理した後に電解採取によって再生利用が可能である、請求項8又は9に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ含有物からスズを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スズは、電子電器産業に不可欠な金属であり、その資源の確保は今後ますます高まる。そのため、はんだやめっきとして含まれているスズについて、効率的且つ直接的な分離回収法の開発のニーズは大きい。
【0003】
スズめっきの剥離液は化学メーカーから市販されているが、その組成は複雑であり、試薬コスト、剥離液の使用後の処理、液中に移行したスズの回収に問題がある(剥離液の再生利用も想定されていない)。また、近年では、廃電子基板からのスズの回収(スズは主にはんだとして利用)も大きな課題となっているが、主に酸性溶液を用いた処理が提案されており、組成の複雑さや液の再生利用に課題がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ブリキからのスズの剥離法としてアルカリ溶液を用いた浸出法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、特許文献2では、次亜塩素酸イオンを含むアルカリ溶液(塩素ガスの吹込みにより生成)を用いた浸出処理によってスズを含む種々の非鉄金属を溶解・分離回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5792284号
【文献】特開2013-007119号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Habashi, F. (1997). Handbook of extractive metallurgy. (pp. 683-713) Weinheim, Germany: VCH Verlagsgesellschaft Mbh.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のアルカリ溶液を用いた浸出方法は反応速度が遅い。特許文献2に記載されるような次亜塩素酸イオンを含むアルカリ溶液を用いても、一般的な温度及び濃度ではスズの溶解は非常に遅く、廃電子基板等のスズ含有物からの直接浸出技術には実質的に利用できない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、スズを選択的に且つすばやく浸出することができるとともに、スズの浸出に使用した浸出液を再生利用することが可能なスズの分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に、スズ含有物を浸漬することで、スズを容易に浸出させることができることを見出した。この際、スズを選択的に浸出させることができるため、スズ含有物として廃電子基板等を使用した場合は、はんだとして存在するスズの浸出により実装されている各種電子部品を取り外すことが可能となり、その後のリサイクル処理(銅や貴金属といった非鉄金属やプラスチックの分離回収)も格段に容易となる。また、本発明者らは、浸出処理に使用した後のスズを含むアルカリ性溶液を使用して、スズの電解採取を行うことにより、液中からスズを電析及び回収するとともに、アルカリ溶液の酸化溶解能を回復できることも見出した。すなわち、電解採取後のアルカリ溶液は、スズの浸出に再生利用することができる。これらの知見に基づいて、本発明者らは、さらに研究を重ね、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の態様を包含する。
項1.スズ含有物からスズを分離する方法であって、
(1)ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に前記スズ含有物を浸漬してスズを浸出させる工程
を備える、方法。
項2.前記ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンがヨウ素のオキソ酸イオンである、項1に記載の方法。
項3.前記酸化性アルカリ溶液のpHが12以上である、項1又は2に記載の方法。
項4.前記酸化性アルカリ溶液は、液量を40mLとして、銅、鉄、鉛、及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属線(表面積0.33cm2)を50℃において400rpmで振盪しながら2時間浸漬した場合の重量減少が2mg未満である、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
項5.前記工程(1)において前記酸化性アルカリ溶液によりスズを浸出させる前、後及び最中よりなる群から選ばれる少なくとも1箇所において、前記スズ含有物の粉砕処理及び/又は物理選別処理を行う、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6.さらに、
(2)前記工程(1)で得られたアルカリ溶液から、陰極上にスズを電解析出させる工程
を備える、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7.項6に記載の方法により前記アルカリ溶液中でハロゲンのオキソ酸イオンを再生させる、ハロゲンのオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液の再利用方法。
項8.ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む、スズ含有物からスズを分離するために使用される溶液。
項9.酸化性アルカリ溶液である、項8に記載の溶液。
項10.スズ含有物からスズを浸出処理した後に電解採取によって再生利用が可能である、項8又は9に記載の溶液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スズを選択的に且つすばやく浸出させることができるとともに、スズの浸出に使用した浸出液を再生利用することが可能なスズの分離回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スズ化合物及び銅化合物の25℃における溶解度曲線を示す。
図2】試験例3の酸化性アルカリ溶液を使用して電子基板を処理した結果を示す。
図3】試験例4の酸化剤の電気化学的再生に関する実験結果を示すアノード分極曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で表示する場合、A以上B以下を意味する。また、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する。
【0013】
1.スズ含有物からスズを分離するために使用される溶液
本発明のスズ含有物からスズを分離するために使用される溶液は、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む。
【0014】
ヨウ素のオキソ酸イオンとしては、例えば、亜ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、過ヨウ素酸イオン等が挙げられる。臭素のオキソ酸イオンとしては、例えば、亜臭素酸イオン、臭素酸イオン、過臭素酸イオン等が挙げられる。これらのヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンは、単独で含まれていてもよいし、2種以上が組合せて含まれていてもよい。なかでも、スズ含有物からのスズの浸出量及び浸出速度に優れるうえに、後述の本発明の方法によれば再生利用も可能である観点から、ヨウ素のオキソ酸イオンが好ましく、ヨウ素酸イオンがより好ましい。このヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンは酸化剤として機能し、スズを酸化溶解させるため、本発明の溶液は酸化性溶液である。
【0015】
なお、従来からスズ含有物からスズを分離するために使用される溶液中に含まれる酸化剤と比較しても、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンは特にスズの浸出量及び浸出速度に優れている。なお、ニトロベンゼンスルホン酸イオン及びペロオキソ2硫酸イオンもスズを浸出させることは可能ではあるが、ニトロベンゼンスルホン酸イオンは環境負荷に懸念があるうえに、ニトロベンゼンスルホン酸イオン及びペロオキソ2硫酸イオンともに、スズを浸出させた後に酸化剤を再生することが困難である点において劣っている。
【0016】
本発明の溶液において、上記したヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含ませるために添加する試薬としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属塩を使用することができる。具体的には、亜ヨウ素酸ナトリウム、亜ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、亜臭素酸ナトリウム、亜臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過臭素酸ナトリウム、過臭素酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、スズ含有物からのスズの浸出量及び浸出速度に優れるうえに、後述の本発明の方法によれば酸化剤の再生も可能である観点から、ヨウ素のオキソ酸アルカリ金属塩が好ましく、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム等がより好ましい。また、酸化力を有するスズの浸出液は、上述のような酸化剤試薬の添加でなく、ヨウ化物イオン及び/又は臭化物イオンを含むアルカリ溶液を電解処理することによっても得ることができる。
【0017】
本発明の溶液において、上記したヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンの濃度は、特に制限されるわけではないが、濃度が高いほどスズを酸化溶解させやすく、スズの浸出量及び浸出速度を向上させることができる。なお、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンの濃度を過剰量としても、後述の本発明の方法によれば再利用も可能であるため、過剰に含ませたヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンが無駄となることはない。このような観点から、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンの濃度は、0.01mol/L以上が好ましく、0.02~0.4mol/Lがより好ましい。
【0018】
なお、図1に示す溶解度曲線によれば、強酸性溶液(pHが約1以下)を使用すると、Sn及びSnOの浸出が可能であることが理解できる。しかしながら、強酸性溶液においては、銅や鉄等の他の元素も大量に溶解してしまう。また、上記したヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンは酸化剤であり、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸アルカリ金属塩を水中に溶解させた場合は、pHは5~7程度である。当該pH領域ではSn(OH)4が安定相であり、本溶解度曲線では2価及び4価のスズの溶解度は10-6mol/L以下である。本発明では、例えば、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンとしてヨウ素酸イオンを使用する場合には、スズの浸出(分離)において想定される反応は、以下の式(1)及び/又は(2)で表されることから、当該pH領域ではスズの酸化溶解反応による浸出は進行しにくい。
Sn + 1/3 IO3 - + OH- → HSnO2 -+ 1/3 I- (1)
Sn + 2/3 IO3 - + 2 OH- → SnO3 2- + 2/3 I- + H2O (2)
一方、銅や鉄等とは異なり、スズは強い両性性質を有しているため、スズを選択的に浸出させるためにはアルカリ溶液を使用することが有用である。このため、スズの酸化溶解反応による浸出を進行させるためには、酸化性アルカリ溶液とすることが好ましく、特に、溶解度の観点ではpHは12以上が好ましく、13~16がより好ましい。このようなpH領域においては、銅や鉄等の溶解度は低く、スズを選択的に浸出させることが可能である。
【0019】
なお、本発明の溶液を酸化性アルカリ溶液とするには、塩基を添加することが好ましい。この際使用できる塩基としては、特に制限はないが、上記pHとなるように調整するため、強塩基を使用することが好ましい。このような塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属や、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属等が挙げられる。
【0020】
上記のように、本発明の溶液を酸化性アルカリ溶液とするために水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属等の塩基を使用する場合、その添加量については、pHが上記した範囲になるように調整することが好ましい。具体的には、塩基中に含まれる水酸化物イオンの濃度として、0.01mol/L以上が好ましく、0.1~10mol/Lがより好ましい。
【0021】
本発明の溶液には、上記以外にも、従来からスズの浸出液に含まれている添加剤を含ませることを排除するものではない。このような添加剤としては、例えば、スズに対する錯化剤や他の金属の溶解を抑制する抑制剤等が挙げられる。これら添加剤の濃度は、従来からスズの浸出液に含まれている濃度とすることができる。
【0022】
上記のような構成を有する本発明の溶液は、スズは高速に溶解させる一方で、銅、鉄、鉛及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(特に、銅、鉄、鉛及び金の全ての元素)を溶解させない溶液である。「溶解させない」とは、具体的には、液量を40mLとして、銅、鉄、鉛及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属線(表面積0.33cm2)を50℃において400rpmで振盪しながら2時間浸漬した場合の重量減少を2mg未満、好ましくは1mg未満とすることができる。一方、本発明の溶液は、スズを溶解させる溶液である。具体的には、液量を40mLとして、スズの金属線(表面積0.33cm2)を50℃において400rpmで振盪しながら2時間浸漬した場合の重量減少を20mg以上、好ましくは30mg以上とすることができる。つまり、本発明の溶液は、各種金属元素のなかでも、スズを選択的に溶解させることが可能である。
【0023】
上記のような構成を有する本発明の溶液は、後述の本発明の方法において示されるように、スズ含有物を浸漬することにより、スズを浸出させることができる。また、その後、スズが浸出した本発明の溶液を電解採取工程で処理することで、スズを電析回収するとともに酸化剤であるヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを再生することが可能である。このため、スズを電解析出させた後の溶液を再度スズの浸出に利用(再生利用)することができる。
【0024】
2.スズ含有物からスズを分離する方法
本発明のスズ含有物からスズを分離する方法は、
(1)ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に前記スズ含有物を浸漬してスズを浸出させる工程
を備える。
【0025】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液としては、上記したものを採用することができる。
【0026】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に浸漬させるスズ含有物としては、スズを含有している材料であれば特に制限されない。例えば、廃電子基板(はんだを有する廃電子基板等)、コネクタ(スズめっきやスズ合金めっきを含む)、リードフレーム(スズめっきやスズ合金めっきを含む)、コネクタやリードフレームの製造過程で発生する端材・打ち抜き屑(スズやスズ合金を含む)、めっき処理で生じる端材・屑(スズやスズ合金を含む)等が挙げられる。
【0027】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に浸漬させる際には、必要に応じて、溶液を振盪(又は攪拌)させることもできる。溶液を振盪(又は攪拌)しなくとも、スズを十分浸出させることが可能であるが、溶液を振盪(又は攪拌)させることで、スズの浸出速度をより高めることができる。また、超音波によるスズ含有物や溶液への振動の印加や、浸出液に浸漬しながらのミリング処理(ボールミルやロッドミル)によってもスズの浸出速度を高めることができる。なお、溶液を振盪(又は攪拌)させる場合の条件は適宜設定することができる。
【0028】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に浸漬させる際の温度は特に制限されない。スズの浸出量及び浸出速度の観点からは、10~95℃が好ましく、15~80℃がより好ましく、20~60℃がさらに好ましい。
【0029】
ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に浸漬させる時間は特に制限はなく、スズを十分に浸出させることができる時間とすることができる。具体的には、10分~12時間が好ましく、20分~6時間がより好ましい。
【0030】
また、上記した工程(1)において酸化性アルカリ溶液によりスズを浸出させる前、後及び最中よりなる群から選ばれる少なくとも1箇所において、スズ含有物の粉砕処理及び/又は物理選別処理を行うことでリサイクル処理を効率化することも可能である。特に、本発明においては、酸化性アルカリ溶液によりスズを浸出させる最中にスズ含有物の粉砕処理及び/又は物理選別処理を行うことが可能である点で有用である。なお、粉砕処理及び物理選別処理については、常法にしたがい行うことができる。
【0031】
上記した工程(1)により、ヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液中に、スズ含有物からスズを浸出させることができる。この際、スズ含有物として廃電子基板等を使用した場合は、はんだとして存在するスズの溶解により実装されている各種電子部品を取り外すことが容易となる。つまり、スズの分離回収のみならず、スズ浸出後の廃棄物のその後のリサイクル処理(銅や貴金属といった非鉄金属やプラスチックの分離回収)も格段に容易となり、経済的である。
【0032】
次に、本発明のスズ含有物からスズを分離する方法は、
(2)前記工程(1)で得られた処理後のアルカリ溶液から、陰極上にスズを電解析出させる工程
を備えることが好ましい。なお、工程(1)においては、上記した式(1)及び/又は(2)によりスズを浸出させるものと想定されることから、酸化剤であるヨウ素及び/又は臭素のオキソ酸イオンも減少している。このため、工程(1)を経て得られた溶液は酸化力を失っている。
【0033】
工程(1)において酸化性アルカリ溶液としてヨウ素酸イオンを含む溶液を使用している場合は、この工程では、以下の反応:
陽極上での反応:1/3 I- + 2 OH- → 1/3 IO3 - + H2O + 2 e-
陰極上での反応:HSnO2 - + 3 H2O + 4 e- → Sn + 6 OH-
(Sn(II)として溶解している場合)
SnO3 2- + 3 H2O + 4 e- → Sn + 6 OH-
(Sn(IV)として溶解している場合)
総括反応 :HSnO2 -+ 1/3 I- → Sn + 1/3 IO3 - + OH-
(Sn(II)として溶解している場合)
SnO3 2- + 2/3I- + H2O → Sn + 2/3IO3 -+ 2OH-
(Sn(IV)として溶解している場合)
が起こると想定される。
【0034】
この際使用できる陽極としては、特に制限はなく、炭素電極、白金電極、及び二酸化鉛/鉛系や酸化イリジウム/チタン系といった一般的な不溶性陽極等が使用できる。特に炭素電極が好ましい。また、陰極としては、スズ電極やステンレス電極、炭素電極等が使用できる。
【0035】
なお、後述する一般的な電解採取では、陽極反応は酸素発生である。白金電極を用いた図3の分極測定の結果からは、この酸素発生反応は、電極の電位を約1.2V vs SHEといった高い値に維持しないと十分に進行しないことが分かる。一方、本発明における電解採取の陽極反応は、酸化剤の再生反応が主となる。図3の分極測定の結果からは、約0.6 V vs SHEという電極電位で、上記した陽極反応(ヨウ化物イオンのヨウ素酸イオンへの酸化反応、つまり酸化剤の再生反応)が見られた。このことは、一般的な電解採取に対して、本発明の電解採取は、電解に必要な電圧を約0.6 V低減することができ、消費電力を削減することができることを意味する。
【0036】
電解析出の際には、必要に応じて、溶液を攪拌することもできる。溶液を攪拌しなくとも、スズを十分浸出させることが可能であるが、溶液を攪拌することで、スズの電析速度をより高めることができる。
【0037】
電解析出の際の温度は特に制限されず、20~90℃、特に40~80℃とすることができる。
【0038】
上記工程(2)によれば、工程(1)において浸出したスズを、陰極上に析出させることができる。つまり、スズを分離及び回収することが可能である。
【0039】
また、工程(2)においては、酸化剤としてヨウ素のオキソ酸イオンを採用した場合には、ヨウ素酸イオンを採用した場合の上記した陽極反応のように、酸化剤としてのヨウ素のオキソ酸イオンを再生できる。なお、ヨウ化カリウムを溶解したアルカリ溶液の電解によりヨウ素酸イオンを製造できることは、例えば、既報(Schumacher, J.C. (1960). Electrolytic production of potassium iodate. Chemical Engineering Progress, 56, 83-84.)等により知られている。このため、工程(2)を経た溶液は、工程(1)を施す前のヨウ素のオキソ酸イオンを含む酸化性アルカリ溶液と同等のものとすることができる。なお、上記工程(1)では、スズの溶解とともにアルカリは消費されpHが低下するが、上記工程(2)の電解析出を行うことで、酸化剤だけでなくアルカリも再生されpHは高くなる。このため、工程(1)及び(2)を施した場合は、最終的には、元々使用した本発明の溶液と同程度のpHを有することとなり、再度工程(1)を行うことができる。このため、本発明によれば、上記した本発明の溶液を繰り返し使用(再生使用)することが可能であり経済的である。
【0040】
また、本発明の電解採取の効率化には、陽極室と陰極室を分ける隔膜を備えた装置で電解を行うことが好ましい。これは陽極上で再生された酸化剤が、陰極上に析出したスズと反応(スズの溶解、酸化剤の消費)することを防ぐためである。隔膜の素材については、特に制限されるものではなく、ソーダ電解等で一般的に使用されているイオン交換膜等を使用することができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
なお、以下の実施例においては、(株)ニラコ製の純スズ線(99.9%; 直径1.0mm; 長さ約10mm; 表面積約0.33cm2)、太洋電機産業(株)製の鉛フリーはんだ線(0.3%Ag, 0.7%Cu; 直径1.2mm; 長さ約12mm; 表面積約0.48cm2)、(株)ニラコ製の純銅線(99.9%; 直径0.80mm; 長さ約10mm; 表面積約0.26cm2)、(株)ニラコ製の純鉄線(99.5%; 直径1.0mm; 長さ約10mm; 表面積約0.33cm2)、(株)ニラコ製の純鉛線(99.9+%; 直径1.0mm; 長さ約10mm; 表面積約0.33cm2)、Japan Metal Service, Co. Ltd.製の純金線(99.99%; 直径0.4mm; 長さ約20mm; 表面積約0.25cm2)を使用した。
【0043】
実施例1:ヨウ素酸イオン
NaOH水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製; 50w/v%)及び脱イオン水を混合し、NaOHが1mol/Lとなるように、水溶液を調製した。次に、ヨウ素酸ナトリウムNaIO3(富士フイルム和光純薬(株)製; >99.5%)を0.05mol/Lとなるように添加し、実施例1の溶液(浸出液)とした。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0044】
実施例2:ヨウ素酸イオン
NaOH水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製; 50w/v%)及び脱イオン水を混合し、NaOHが1mol/Lとなるように、水溶液を調製した。次に、ヨウ素酸カリウムKIO3(富士フイルム和光純薬(株)製; >99.5%)を0.05mol/Lとなるように添加し、実施例2の溶液(浸出液)とした。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0045】
実施例3:臭素素酸イオン
NaOH水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製; 50w/v%)及び脱イオン水を混合し、NaOHが1mol/Lとなるように、水溶液を調製した。次に、臭素酸ナトリウムNaBrO3(ナカライテスク(株)製; >99.5%)を0.05mol/Lとなるように添加し、実施例3の溶液(浸出液)とした。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0046】
比較例1:酸化剤なし
NaOH水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製; 50w/v%)及び脱イオン水を混合し、NaOHが1mol/Lとなるように、水溶液を調製し、比較例1の溶液(浸出液)とした。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0047】
比較例2:酸素バブリング
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に、PFAチューブ(内径0.75mm)を介して純酸素ガスを約50mL/minでバブリングした。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0048】
比較例3:過酸化水素
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に、酸化剤として過酸化水素H2O2(富士フイルム和光純薬(株)製; 35.4%)を0.5mol/Lとなるように添加し、比較例3の溶液(浸出液)を得た。なお、過酸化水素の添加は、溶液(1mol/L NaOH)を所定温度に加温後、金属線の投入の直前に行った。
【0049】
比較例4:次亜塩素酸イオン
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムNaClO溶液(富士フイルム和光純薬(株)製; 有効塩素12.7%)を添加して、比較例4の溶液(浸出液)を得た。溶液中のNaClO濃度は0.05mol/Lである。また、次亜塩素酸ナトリウムNaClO溶液の添加は、溶液(1mol/L NaOH)を所定温度に加温後、金属線の投入の直前に行った。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0050】
比較例5:硝酸イオン
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に、酸化剤として硝酸ナトリウムNaNO3(富士フイルム和光純薬(株)製)を0.5mol/Lとなるように添加し、比較例5の溶液(浸出液)を得た。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0051】
比較例6:亜硝酸イオン
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に、酸化剤として亜硝酸ナトリウムNaNO3(シグマ アルドリッチ ジャパン製)を0.5mol/Lとなるように添加し、比較例6の溶液(浸出液)を得た。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0052】
比較例7:ニトロベンゼンスルホン酸イオン
比較例1の溶液(1mol/L NaOH)に、酸化剤として3-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムO2NC6H4SO3Na(Combi-Blocks)を0.05mol/Lとなるように添加し、比較例7の溶液(浸出液)を得た。NaOHの濃度より予想される溶液のpHは約14である。
【0053】
試験例1:ヨウ素酸イオンを含む浸出液による各種金属線の処理
浸出処理は、恒温振盪機(アズワン(株)製; MyBL-100S)を用いて行った。実施例1又は2の溶液(浸出液)40mLを入れたポリプロピレン遠心管を恒温振盪機に設置した。溶液(浸出液)が一定温度(30℃、50℃、又は70℃)に達した後、純スズ線、はんだ線、純銅線、純鉄線、純鉛線、又は純金線を溶液(浸出液)に浸漬し、400rpmの振盪速度で1~24時間保持した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から、酸化剤としてヨウ素酸イオンを含むアルカリ溶液については、50℃において400rpmで振盪しながら2時間浸漬した場合に、表面積約0.33cm2の純スズ線を完全に溶解させ、重量減少は56mgであったことから、十分に溶解させることができた。一方、50℃において400rpmで振盪しながら浸漬した場合に、表面積約0.26cm2の純銅線の重量は2時間後に0mg減少(表面積0.33cm2に換算しても0mg減少)、表面積約0.33cm2の純鉄線の重量は24時間後に1mg増加(2時間に換算しても0.1mg増加であり、重量減少は確認できず)、表面積約0.33cm2の純鉛線の重量は2時間後に1mg減少、表面積約0.25cm2の純金線の重量は24時間後に0mg減少(表面積0.33cm2且つ2時間に換算しても0mg減少)していた。このことから、銅、鉄、鉛、金に対して、スズを高速かつ選択的に酸化溶解できることが理解できる。また、酸化剤として臭素酸イオンを含むアルカリ溶液についても、銅、鉄、鉛、金に対して、スズを高速かつ選択的に酸化溶解することができた。
【0056】
試験例2:他の酸化剤による純スズ線処理
浸出処理は、試験例1と同じポリプロピレン製遠心管と恒温振盪機(アズワン(株)製; MyBL-100S)を用いて行った。所定温度の比較例1~7の溶液(浸出液)40mLに、純スズ線を所定時間浸漬し、重量の変化(mg)を測定した。なお、処理時の振盪速度は、試験例1と同じ400rpmである。表2に結果を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
酸化剤の添加無し、酸素バブリング
表2より、酸化剤を添加していない比較例1では24時間経過後も約3~5mg、酸素バブリングした比較例2では24時間経過後も約20mgしか溶解していないことから、本発明の溶液(浸出液)が、スズの浸出量及び浸出速度ともに優れていることが示唆されている。この結果、酸素によってスズの酸化溶解は進むものの、30℃又は50℃で約20時間経過後も重量減少は20mg以下であり反応速度は遅いことが理解できる。
【0059】
過酸化水素
30℃及び50℃ではスズの酸化溶解は促進しなかった。また、70℃では過酸化水素によってスズの酸化溶解は進むものの、24時間経過後も重量減少は約34mgに過ぎなかった。いずれにしても、実施例1及び2と比較すると酸化溶解には著しく時間を必要とし、浸出量及び浸出速度はいずれも十分ではないことが示されている。
【0060】
次亜塩素酸イオン
30℃ではスズの酸化溶解は促進しなかった。また、50℃では次亜塩素酸イオンによってスズの酸化溶解は進むものの、5時間経過後も重量減少は約25mgであった。いずれにしても、実施例1及び2と比較すると酸化溶解には著しく時間を必要とし、浸出量及び浸出速度はいずれも十分ではないことが示されている。
【0061】
硝酸イオン及び亜硝酸イオン
表2より、スズの酸化溶解は促進されなかったことが分かる。
【0062】
ニトロベンゼンスルホン酸イオン
優れた酸化溶解能を示す。しかし、高環境負荷な薬剤であるとともに、試験例4で示すように酸化剤を再生することが困難であり、本発明の酸化剤に比べて劣っている。
【0063】
試験例3:ヨウ素酸イオンを利用したE-scrapの処理
SUS304製容器(105×67×57 mm)内に実施例1の溶液(浸出液)100mLとスターラチップを入れ、さらにはんだ付けにより部品が実装されている電子基板の一部を浸漬し、ホットスターラーを用いて加温・攪拌を行った。溶液の温度は約26℃、攪拌速度は1000 rpm、処理時間は4時間である。結果を図2に示す。溶液のサンプリングとICP-AES法による金属濃度の定量を行った結果、スズの迅速かつ高い選択性での溶解が示された。はんだ付け部分が選択的に溶解かつ、銅など他の非鉄金属は未溶解で残留していることから、その後のリサイクル処理(銅や貴金属といった非鉄金属やプラスチックの分離回収)も格段に容易となる。
【0064】
試験例4:酸化剤の電気化学的再生に関する予備実験
実施例1の酸化性アルカリ溶液を用いてスズを浸出処理した後を模擬した溶液(水溶液A)を以下の手順で準備した。まず、ヨウ素酸ナトリウムNaIO3を0.025 mol/L含む1 mol/L NaOH溶液を40 mL準備した。その溶液中に、61mgの純スズを加え、浸出液と反応させることで完全に溶解させた。水溶液A中には、反応生成物としてヨウ化物イオン(スズの溶解反応によって、ヨウ素酸イオンがヨウ化物イオンへと変換)が含まれる。
【0065】
また、比較例7の酸化性アルカリ溶液を用いてスズを浸出処理した後を模擬した溶液(水溶液B)を以下の手順で準備した。まず、3-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムO2NC6H4SO3Naを0.05 mol/L含む1 mol/L NaOH溶液 を40 mL準備した。その溶液中に、58mgの純スズを加え、浸出液と反応させることで完全に溶解させた。水溶液B中には、反応生成物として3-ニトロベンゼンスルホン酸イオンの還元物が存在する。この還元物は、3-アミノベンゼンスルホン酸イオンと推定される。
【0066】
酸化剤の電気化学的再生に関する検証として、白金ディスク(直径3mm)を作用極として、1 mol/L NaOH溶液及び、上記の2種類の溶液中で、アノード分極測定(浸漬電位から貴の方向に100mV/sで掃引)を行った。液量は40mL、液温は約23℃、対極は白金線(作用極に対して表面積は18倍)、参照極は銀塩化銀電極である。
【0067】
結果を図3に示す。1 mol/L NaOH中では、白金電極の電極電位を貴に掃引すると、約1.1V vs SHEから酸化電流が流れだす。これは、酸素発生反応に対応している。一般的な電解採取では、陽極反応は酸素発生である。一般的な電解採取では、陽極の電位を約1.2V vs SHEといった高い値に維持する必要があることが分かる。
【0068】
一方、水溶液A中では、電極上で酸素発生が進行するより大きく卑な電位、0.5~0.8V vs SHEの範囲(ピーク位置は約0.6V vs SHE)で酸化電流が流れていることが分かる。この酸化電流は以下の反応:
1/3 I- + 2 OH-→ 1/3 IO3 -+ H2O + 2 e-
に対応しており、電気化学的な手法(すなわち電解採取の陽極反応)によって、スズの溶解反応により消耗されたヨウ素酸イオンを再生できることが分かる。つまり、本発明の電解採取の方法によれば、陰極反応でスズを電析回収するとともに、陽極反応によってヨウ素イオンI-を酸化しヨウ素酸イオンIO3 -を再生すること、つまり浸出溶液の再生が可能であることが示唆される。
【0069】
一方、水溶液B中では、水溶液A中での分極曲線とは異なり、約1.1V vs SHE以下の領域で酸化電流は見られない。これは、ニトロベンゼンスルホン酸イオンO2NC6H4SO3 -の電気化学的な再生が困難なことを意味する。つまり、スズを浸出させた後に、電解採取によってスズの電析回収とアルカリ溶液の酸化溶解能の回復ができることは、浸出のために本発明の酸化剤を使用した場合特有の効果であることが示された。
図1
図2
図3