(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】搬送方法および搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240206BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20240206BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240206BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01L21/304 622L
B24B37/08
B24B41/06 A
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2019188058
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519368781
【氏名又は名称】株式会社オーテック
(73)【特許権者】
【識別番号】519368828
【氏名又は名称】株式会社永和
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】加邉 克博
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-243996(JP,A)
【文献】特開2011-009295(JP,A)
【文献】特開2015-085397(JP,A)
【文献】特開平11-207611(JP,A)
【文献】特開2003-161604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
B24B 37/08
B24B 49/10
B24B 49/12
B24B 41/06
H01L 21/304
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送方法であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドを、該搬送ヘッドを取り付けた回動可能なアームを回動させることにより前記キャリア上を通過させ、
該キャリア上の通過時、前記搬送ヘッドに配設した変位センサーにより、前記搬送ヘッド側から、前記キャリアの表面と前記ホールとの高低差に基づいて該ホールの内周縁を検出し、
前記アームの位置を制御する制御手段によって、前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの位置データから前記ホールの中心位置を算出し、該算出したホールの中心位置に基づいて、前記ウェーハを保持する前記搬送ヘッドの位置を前記アームを介して制御することで、前記ウェーハを前記キャリアのホール内に搬送することを特徴とする搬送方法。
【請求項2】
前記変位センサーをレーザーセンサーとすることを特徴とする請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記搬送ヘッドの外周部に沿って等間隔で前記変位センサーを4つ配設し、
前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの4つの位置データのうち、3つの位置データの組み合わせを選択する工程Aと、
該選択した3つの位置データの組み合わせから2つの短辺と1つの斜辺からなる三角形を構成する工程Bと、
前記2つの短辺の各々の垂直二等分線の交点を前記ホールの中心位置の候補として得る工程Cと、
前記工程Aで選択したものとは異なる3つの位置データの組み合わせを選択して工程Bおよび工程Cを繰り返すことで、前記ホールの中心位置の異なる候補を1つ以上得る工程Dと、
前記工程Aから前記工程Dにより得られた前記ホールの中心位置の全ての候補の平均から前記ホールの中心位置を算出する
平均算出工程とを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送方法。
【請求項4】
ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送装置であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドと、該搬送ヘッドが取り付けられており回動可能なアームと、該アームの位置を制御する制御手段とを有しており、
前記搬送ヘッドには変位センサーが配設されており、
該変位センサーは、前記アームにより前記キャリア上を通過する前記搬送ヘッド側から、前記キャリアの表面と前記ホールとの高低差に基づいて該ホールの内周縁を検出可能なものであり、
前記制御手段は、前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの位置データから前記ホールの中心位置を算出し、該算出したホールの中心位置に基づいて、前記ウェーハを保持する前記搬送ヘッドの位置を前記アームを介して制御可能なものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記変位センサーがレーザーセンサーであることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ヘッドの外周部に沿って等間隔で前記変位センサーが4つ配設されて
おり、
前記制御手段は、前記アームを制御する制御部と、前記変位センサーの位置データを取得するデータ処理部と、前記位置データから前記キャリアの前記ホールの中心位置を算出するプログラムを備えた演算部とを有しており、
前記演算部のプログラムは、
前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの4つの位置データのうち、3つの位置データの組み合わせを選択する工程Aと、
該選択した3つの位置データの組み合わせから2つの短辺と1つの斜辺からなる三角形を構成する工程Bと、
前記2つの短辺の各々の垂直二等分線の交点を前記ホールの中心位置の候補として得る工程Cと、
前記工程Aで選択したものとは異なる3つの位置データの組み合わせを選択して工程Bおよび工程Cを繰り返すことで、前記ホールの中心位置の異なる候補を1つ以上得る工程Dと、
前記工程Aから前記工程Dにより得られた前記ホールの中心位置の全ての候補の平均から前記ホールの中心位置を算出する平均算出工程とが組まれているものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面研磨装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送方法および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体基板等のウェーハの両面を研磨する装置として、複数の円形穴状のホールを有するキャリアをサンギヤ(太陽歯車)とインターナルギヤ(内歯歯車)に噛合させ、ホール内にウェーハをセットし、このウェーハの両面を上定盤と下定盤で挟み込むように保持するとともに、サンギヤ等によってキャリアを遊星歯車運動させ、同時に上定盤と下定盤を相対方向に回転させることによってウェーハの両面を同時に研磨するような装置が知られている。このようなキャリアのホール内にウェーハを搬送して装填する技術として、例えば特許文献1のような方法および装置が知られている。
【0003】
特許文献1では、カメラやCCD等の視覚センサーにより、キャリアのワーク保持面を光学的に認識して画像認識データを出力し、該画像認識データを処理し、キャリアのワーク保持面における基準マークを基にしてキャリアのホールの位置を決定している。そして、決定したホール位置に基づいてワーク搬送のためのロボットアームの制御を行っている。
このように従来ではキャリアのホールをカメラで画像データとして捉え、それを基にウェーハの搬送を行っていた。
【0004】
しかしながら、キャリアのホール内へのウェーハの搬送にあたって、カメラの画像を用いる場合、カメラと画像処理用のコンピュータ等が必要であり高価でかつ場所もとる装置となってしまう。そのため全ての両面研磨装置に対して設置することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、両面研磨装置等のウェーハ加工装置におけるキャリアのホールにウェーハを安価に搬送することができる搬送方法および搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送方法であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドを、該搬送ヘッドを取り付けた回動可能なアームを回動させることにより前記キャリア上を通過させ、
該キャリア上の通過時、前記搬送ヘッドに配設した変位センサーにより、前記搬送ヘッド側から、前記キャリアの表面と前記ホールとの高低差に基づいて該ホールの内周縁を検出し、
前記アームの位置を制御する制御手段によって、前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの位置データから前記ホールの中心位置を算出し、該算出したホールの中心位置に基づいて、前記ウェーハを保持する前記搬送ヘッドの位置を前記アームを介して制御することで、前記ウェーハを前記キャリアのホール内に搬送することを特徴とする搬送方法を提供する。
【0008】
このような本発明の搬送方法であれば、カメラ等の視覚センサーや画像処理用コンピュータなどの高価で場所もとる設備がなくとも、変位センサーを用いて、コンパクトで簡便かつ安価に、キャリアのホールの中心位置を算出してウェーハをホール内にズレなく正確に搬送することが可能である。
【0009】
このとき、前記変位センサーをレーザーセンサーとすることができる。
【0010】
変位センサーとしてレーザーセンサーはよく用いられており、簡便に用意することができる。
【0011】
このとき、前記搬送ヘッドの外周部に沿って等間隔で前記変位センサーを4つ配設し、
前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの4つの位置データのうち、3つの位置データの組み合わせを選択する工程Aと、
該選択した3つの位置データの組み合わせから2つの短辺と1つの斜辺からなる三角形を構成する工程Bと、
前記2つの短辺の各々の垂直二等分線の交点を前記ホールの中心位置の候補として得る工程Cと、
前記工程Aで選択したものとは異なる3つの位置データの組み合わせを選択して工程Bおよび工程Cを繰り返すことで、前記ホールの中心位置の異なる候補を1つ以上得る工程Dと、
前記工程Aから前記工程Dにより得られた前記ホールの中心位置の全ての候補の平均から前記ホールの中心位置を算出することができる。
【0012】
このようにすれば、キャリアのホールの中心位置をより正確に算出することができ、より確実にウェーハをホール内に搬送することができる。
【0013】
また本発明は、ウェーハ加工装置の上下定盤間に配置されるキャリアのホールにウェーハを搬送する搬送装置であって、
前記ウェーハを保持する搬送ヘッドと、該搬送ヘッドが取り付けられており回動可能なアームと、該アームの位置を制御する制御手段とを有しており、
前記搬送ヘッドには変位センサーが配設されており、
該変位センサーは、前記アームにより前記キャリア上を通過する前記搬送ヘッド側から、前記キャリアの表面と前記ホールとの高低差に基づいて該ホールの内周縁を検出可能なものであり、
前記制御手段は、前記ホールの内周縁を検出したときの前記変位センサーの位置データから前記ホールの中心位置を算出し、該算出したホールの中心位置に基づいて、前記ウェーハを保持する前記搬送ヘッドの位置を前記アームを介して制御可能なものであることを特徴とする搬送装置を提供する。
【0014】
このような本発明の搬送装置であれば、カメラ等の視覚センサーや画像処理用コンピュータなどの高価で場所もとる設備がなくとも、配設された変位センサーにより、コンパクトで簡便かつ安価に、キャリアのホールの中心位置を算出でき、さらにはウェーハのキャリアのホール内への正確な搬送が可能なものとなる。
【0015】
このとき、前記変位センサーがレーザーセンサーであるものとすることができる。
【0016】
変位センサーとしてレーザーセンサーはよく用いられており、簡便に用意することができる。
【0017】
このとき、前記搬送ヘッドの外周部に沿って等間隔で前記変位センサーが4つ配設されているものとすることができる。
【0018】
このようなものであれば、キャリアのホールの中心位置の算出をより正確に行うことができ、ウェーハのホール内への搬送をより確実に行うことができるものとなる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の搬送方法および搬送装置であれば、ウェーハのキャリアのホールへの搬送の際に使用されていた、比較的高価で場所をとる視覚センサーや画像処理用コンピュータが無くとも、変位センサーの使用により、コンパクトで簡便かつ安価にキャリアのホールの中心位置を算出することができ、ウェーハをホール内にズレなく正確に搬送して装填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の搬送装置の一例を示す概略図である。
【
図2】搬送ヘッドおよびアームの一例を示す概略図である。
【
図3】変位センサーによるホールの内周縁検出の一例を示す説明図である。
【
図5】平面視での変位センサーによるホールの内周縁検出の一例を示す説明図である。(1)検出開始時の様子であり、(2)検出終了後の様子である。
【
図6】変位センサーの位置データからホールの中心位置を算出する工程の説明図である。(1)工程A-Cを示しており、(2)工程Dおよび平均算出工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明における搬送装置の一例を示す。なお、両面研磨装置も一緒に図示している。ここではウェーハ加工装置として両面研磨装置を例に挙げて説明するが、機構がほとんど同じである両面ラップ装置とすることもできる。
本発明の搬送装置1は、例えば半導体基板としてのシリコンウエーハなどのウェーハの両面を研磨する両面研磨装置2に対して、従来のような高価なカメラや画像処理用コンピュータを必要とせずに、加工中にウエーハを保持しておくキャリアの円形穴状のホール内に正確に装填してセットすることができる安価で省スペースな装置である。
【0022】
まず本発明の搬送装置を適用可能な両面研磨装置2について説明する。
図4に両面研磨装置の縦断面図の一例を示す。
図4に示すように、上定盤UTと下定盤LTとの間にキャリアCが載置される。このキャリアCを遊星歯車運動させるためのサンギヤSG及びインターナルギヤIGを備えており、キャリアCの外周部には、これらサンギヤSG及びインターナルギヤIGに噛合するための外歯が設けられるとともに、キャリアCの内部には、ウエーハWを嵌入せしめて保持する円形穴状のホールHが設けられている。
なお、キャリアCのホールHの内周縁は、キャリア母材そのものからなるものとすることもできるし、キャリア母材に対して樹脂等からなるインサートを配置したものとすることもできる。また、上下定盤UT、LTには、互いに対向する面に、ウェーハWを研磨するための研磨布PPが貼り付けられている。
このようにキャリアCを備える両面研磨装置2自体は、例えば従来と同様のものを用いることができる。
【0023】
なお両面研磨する際には、キャリアCのホールH内にウェーハWを搬送した後、水平方向に揺動可能な上定盤UTをスイング移動させてウエーハWを下定盤LTと上定盤UTで挟持する。サンギヤSG等を回転させることでキャリアCを遊星歯車運動させると同時に挟持面に研磨液を供給しつつ、下定盤LTと上定盤UTを相対方向に回転させ、ウェーハWの両面を各定盤の挟持面側の研磨布PPで研磨するようにしている。
【0024】
このような両面研磨装置2に対し、キャリアCのホールHにウェーハを搬送するための本発明の搬送装置1では、ウェーハWを保持する搬送ヘッド3と、該搬送ヘッド3が取り付けられており回動可能なアーム4と、該アーム4の位置を制御する制御手段5とを有している。また搬送ヘッド3には変位センサー6が配設されている。
ここで
図2に搬送ヘッド3およびアーム4の一例を示す。
アーム4は搬送ヘッド3がその先端に取り付けられており、搬送ヘッド3を自在に回動可能である。回動機構自体は特に限定されず、例えば従来と同様のものとすることができる。このアーム4および搬送ヘッド3は制御手段5によりその動きを制御可能である。特には、ウェーハカセット7から取り出したウェーハWをキャリアCのホールH内へ搬送できるよう、アーム4を介して搬送ヘッド3の位置調整等ができるものである。
【0025】
また搬送ヘッド3のウェーハWを保持する構造は特に限定されず、例えば従来と同様のものとすることができる。制御手段5によりウェーハカセット7から出されたウェーハWを吸着等により保持し、かつ、ホールHの上方でウェーハWを脱離させることができれば良い。
【0026】
変位センサー6は、該変位センサー6と物体との距離を測定するものであり、下定盤LT(研磨布PP)上に配置されたキャリアCのホールHの中心位置を取得するために用いられるものである。より具体的には、アーム4によりキャリアC上を通過する搬送ヘッド3側から、キャリアCの表面とホールHとの高低差に基づいてホールHの内周縁を検出できるものである。
変位センサー6は、例えばレーザーセンサーとすることができる。レーザーセンサーであれば小型で簡便に用意でき、比較的低コストである。レーザーをキャリアCの表面に向かって照射し、レーザーセンサーと物体との距離を測定可能なものである。
【0027】
搬送ヘッド3のキャリアC上の通過に伴い、ホールHの上方を通過する場合に、レーザーセンサー等の変位センサー6との距離がそれまでと比較して大きく変化する。すなわち、キャリアCの表面の上方を水平に通過している場合、変位センサー6による測定距離は、該表面と変位センサー6との距離でほぼ一定の状態であるが、搬送ヘッド3に配設された変位センサー6がホールHの上方に達すると、ホールHは空洞のため、変位センサー6と対向するものは下定盤LTに貼り付けられた研磨布PPとなり、およそキャリアCの厚さ分だけ、変位センサー6による測定距離が大きくなる変化が生じる。また、変位センサー6の位置が、ホールHの上方からキャリアCの表面の上方へ移るときは、逆にキャリアCの厚さ分だけ測定距離が小さくなる変化が生じる。この測定距離の変動(キャリアCの表面とホールHとの高低差)により、キャリアCの表面とホールHの境目、すなわち、ホールHの内周縁(また、その上方に位置する変位センサー6の位置データ)を検出することが可能なものである。
【0028】
図3に変位センサーによるホールの内周縁検出の様子を示す。
図3に示す例では、キャリアCにおいてホールHを形成する内周縁にはインサートIが配設されている。この場合、ホールHの内周縁であるインサートIの角とホールH自体(すなわち空洞)とで段差があるため高低差が生じている。搬送ヘッド3の外周部に配設された変位センサー(レーザーセンサー)6からキャリアCの表面に向かってレーザーを照射しつつ、アーム4により搬送ヘッド3が変位センサー6ごと回動してキャリアCの上方を通過すると、上述したように、ホールHの内周縁を境に測定距離が大きく変動することが分かる。
【0029】
また変位センサー6の数は限定されず、適宜決定することができるが、例えば変位センサー6が4つ配設されているものとすることができる。ここでは、この4つの変位センサー6が、平面視において等間隔で搬送ヘッド3の外周部に配設されている。4つ有していれば、より正確にキャリアCのホールHの中心位置を算出することができるので好ましい。数が多いほど数多くのホールHの内周縁に関する位置データを取得することができ、ホールHの中心位置をより正確に算出しやすいが、コスト面も考慮して数を決定すれば良い。
【0030】
また制御手段5は例えばコンピュータとすることができる。このコンピュータの機能としては、大きく分けて、例えば、アーム4等を制御する制御部、変位センサー6からの信号データを処理して位置データを取得するデータ処理部、該位置データからキャリアCのホールHを算出する演算部からなっている。当然、これら以外の機能を有していても良い。さらには両面研磨装置2の上下定盤UT、LT等も制御可能なものとすることもできる。
制御部により、連結されているアーム4を所望のように回動するよう制御可能である。また、アーム4と搬送ヘッド3の位置関係、さらには搬送ヘッド3の中心とその外周部に配設された変位センサー6との位置関係を予め取得してデータ入力しておくことで、アーム4の回動状態等からアーム4、搬送ヘッド3、ひいては変位センサー6の位置データを取得することができ、かつ、位置制御することが可能である。例えば、アーム4の回動の支点をX=0、Y=0とする、水平面の仮想のXY座標を設定することができ、該XY座標において変位センサー6等の位置を座標化して取得できるし、所望の座標の位置に移動させることができる。
特には、演算部で算出されたホールHの中心位置に基づいて、ウェーハWを保持する搬送ヘッド3の位置をアーム4を介して制御可能である。具体的には、ホールHの中心位置にまで搬送ヘッド3の中心(保持されたウェーハWの中心)が一致するようにアーム4を回動可能である。
【0031】
また、制御手段5のデータ処理部は変位センサー6からの信号を受信することができ、変位センサー6による測定距離のデータの推移を取得することができる。そして、取得した測定距離のデータにおける上記変動から、キャリアCのホールHの内周縁を検出したタイミングを知ることができ、その時の変位センサー6の位置データ(言い換えると、内周縁の上方に位置する変位センサー6の位置データ、あるいは、内周縁の位置データ)を例えば制御部からの情報により取得可能なものである。
さらには、演算部では、この取得した位置データからホールHの中心位置を算出可能である。ホールHの中心位置を算出できればよく、算出プログラム自体は特に限定されない。後述する本発明の搬送方法の説明においては、その一例を詳述する。
【0032】
以上のような本発明の搬送装置であれば、ホールHの中心位置を算出することができ、かつ、搬送ヘッド3で保持したウェーハWをホールHにまで正確に搬送して装填することが可能である。従来のような視覚センサーを配設したものでは、その視覚センサーの他、画像処理用コンピュータなど比較的高価な機器・処理ソフトが必要となり、全体として高価で場所をとる搬送装置となってしまう。これは研磨ウェーハWのコスト高にもつながり得る。
一方で本発明においては、比較的低コストである変位センサー6を配設したものであるので、安価で省スペースな装置とすることができる。データ処理のためのコンピュータとしても、変位センサー6による測定距離のデータの処理ができればよいので、画像のような複雑なデータを処理する必要もなく、処理ソフトも簡易で安価なものとすることができる。
【0033】
次に、
図1-3の本発明の搬送装置1を用いた本発明の搬送方法について説明する。なお、ここでは変位センサー6としてレーザーセンサーを用い、搬送ヘッド3の外周部に等間隔で4つの変位センサー6を配設した場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。
まず、制御手段5によりアーム4を回動させて、搬送ヘッド3(および変位センサー6)を、両面研磨装置2の下定盤LT上に配設されているキャリアCのホールHの上を通過させ、変位センサー6によりホールHの内周縁を検出する。
ここで
図5は平面視での変位センサー6によるホールHの内周縁検出の一例を示す説明図である。ホールHの内周縁の検出開始時と検出終了後の様子を示している。
図5中、円はホールHの内周縁(エッジ)を示しており、a、b、c、dは搬送ヘッド3に配設された4つの変位センサー6を示しており、ほぼ正方形の各頂点に位置する配置となっている。また、制御手段5により、丸数字の0(アーム4の支点)からサンギヤSG側(サンギヤSGの中心)を結ぶラインをX軸とする仮想のXY平面が設定されている。ここではX軸に沿って、搬送ヘッド3を移動させる。
【0034】
搬送ヘッド3をキャリアCの上を通過させるとき、まず、適宜決めたホールHと搬送ヘッド3とが重なるような検出開始位置までウェーハWを保持した搬送ヘッド3を旋回させる。そして、変位センサー6からキャリアCの表面に向けてレーザーを直下に照射して該表面と変位センサー6との距離を測定しつつ、搬送ヘッド3を移動させる。
図3を参照して説明したようにして測定距離の変動からホールHの内周縁を検出する。
図5の例では、変位センサーa、dがホールHからキャリアCの表面への上がる段差を検出し、変位センサーb、cがキャリアCの表面からホールHへの下がる段差を検出する。
そして、このホールHの内周縁の検出したときの変位センサー6(abcdの全て)の位置データ(PQRS)を制御手段5の制御部等から取得する。
【0035】
次に、制御手段5の演算部において、取得した4つの位置データからホールHの中心位置を算出する。この算出工程は、例えば以下の工程からなるものとすることができる。
図6はこの算出工程の説明図である。
図6(1)が下記の工程A-Cを示しており、
図6(2)が下記の工程Dおよび平均算出工程を示している。
(工程A)
上記4つの位置データ(PQRS)のうち、3つの位置データの組み合わせを選択する。
例えばQRSやPRSのような組み合わせが考えられるが、ここではまずQRSを選択する。
(工程B)
選択した3つの位置データの組み合わせから2つの短辺と1つの斜辺からなる三角形を構成する。
ここでは△QRSとする。2つの短辺がQRとRSであり、1つの斜辺がQSである。
(工程C)
2つの短辺の各々の垂直二等分線の交点をホールHの中心位置の候補として得る。
ここではT1がホールHの中心位置の候補である。
(工程D)
工程Aで選択したものとは異なる3つの位置データの組み合わせを選択して工程Bおよび工程Cを繰り返すことで、ホールHの中心位置の異なる候補を1つ以上得る。
例えば、PQR、PRS、PQSをそれぞれ選択して、同様にして候補T2、T3、T4を得る。なお、T1以外に1つ以上の候補を得ればよいが、候補数が多いほどより正確にホールHの中心位置を算出することができるので好ましい。
(平均算出工程)
工程Aから工程Dにより得られたホールHの中心位置の全ての候補の平均からホールHの中心位置を算出する。
ここでは、T1-T4の平均の値(座標)として、ホールHの中心位置Tを算出する。
【0036】
このようにして算出したホールHの中心位置Tに基づいて、制御手段5の制御部により、アーム4を介して、ウェーハWを保持する搬送ヘッド3の位置を制御する。例えば、搬送ヘッド3の中心(保持されたウェーハWの中心)をホールHの中心位置Tに一致させるようにアーム4を回動させる。その後、搬送ヘッド3からウェーハWを脱離させてキャリアCのホールH内にウェーハWを搬送する。
以上のような本発明の搬送方法によって、低コスト、省スペースの設備で簡便かつ安価に、両面研磨装置2のキャリアCのホールH内に正確にウェーハWを搬送して装填することができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
1…本発明の搬送装置、 2…両面研磨装置、 3…搬送ヘッド、
4…アーム、 5…制御手段、 6、a、b、c、d…変位センサー、
7…ウェーハカセット、
C…キャリア、 H…キャリアのホール、 UT…上定盤、 LT…下定盤、
SG…サンギヤ、 IG…インターナルギヤ、 PP…研磨布、
I…インサート、 W…ウェーハ、
P、Q、R、S…ホールの内周縁を検出したときの変位センサーの位置データ、
T1、T2、T3、T4…ホールの中心位置の候補、
T…ホールの中心位置の候補の平均値(算出したホールの中心位置)。