(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】バイオ燃料電池用アノード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/96 20060101AFI20240206BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240206BHJP
H01M 8/16 20060101ALI20240206BHJP
C12M 1/40 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
H01M4/96 M
H01M4/88 C
H01M8/16
C12M1/40 Z
(21)【出願番号】P 2019217219
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591064508
【氏名又は名称】御国色素株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】井元 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】重森 康司
(72)【発明者】
【氏名】永福 由紀子
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036201(JP,A)
【文献】特開2015-028932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造体である炭素粒子、及び
分散剤
を含み、
前記炭素粒子のD
90径が
2.00μm以上かつ10.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
50
径が1.50μm以上かつ7.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
10
径が0.60μm以上かつ2.50μm以下であり、
前記炭素粒子のメソ孔容積0.30mL/g以上かつ1.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子の平均細孔径が6.0nm以上かつ35.0nm以下である、バイオ燃料電池用のアノード。
【請求項2】
前記炭素粒子が一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記炭素粒子のD
50径が5.00μm以下である、請求項1又は2に記載のアノード。
【請求項4】
前記炭素粒子のメソ孔容積が0.25mL/g以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項5】
前記炭素粒子の平均細孔径が7.5nm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項6】
前記炭素粒子のD
90
径が3.00μm以上かつ7.50μm以下であり、
前記炭素粒子のD
50
径が2.00μm以上かつ5.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
10
径が0.75μm以上かつ1.15μm以下であり、
前記炭素粒子のメソ孔容積が0.45mL/g以上かつ1.00mL/g以下であり、
前記炭素粒子の平均細孔径が11.0nm以上かつ27.0nm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項7】
前記炭素粒子の2.6~200nmにおけるピーク細孔径が5.0nm以上かつ100.0nm以下であり、
前記炭素粒子の全細孔容積が0.30mL/g以上かつ1.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子のマイクロ孔容積が0.001mL/g以上かつ0.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子のBET比表面積が60m
2
/g以上かつ175m
2
/g以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項8】
前記炭素粒子の2.6~200nmにおけるピーク細孔径が5.0nm以上かつ100.0nm以下であり、
前記炭素粒子の全細孔容積が0.30mL/g以上かつ1.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子のマイクロ孔容積が0.001mL/g以上かつ0.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子のBET比表面積が60m
2
/g以上かつ175m
2
/g以下である、請求項6に記載のアノード。
【請求項9】
前記炭素粒子の2.6~200nmにおけるピーク細孔径が15.0nm以上かつ50.0nm以下であり、
前記炭素粒子の全細孔容積が0.45mL/g以上かつ1.00mL/g以下であり、
前記炭素粒子のマイクロ孔容積が0.01mL/g以上かつ0.20mL/g以下であり、
前記炭素粒子のBET比表面積が100m
2
/g以上かつ150m
2
/g以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項10】
前記炭素粒子の2.6~200nmにおけるピーク細孔径が15.0nm以上かつ50.0nm以下であり、
前記炭素粒子の全細孔容積が0.45mL/g以上かつ1.00mL/g以下であり、
前記炭素粒子のマイクロ孔容積が0.01mL/g以上かつ0.20mL/g以下であり、
前記炭素粒子のBET比表面積が100m
2
/g以上かつ150m
2
/g以下である、請求項6に記載のアノード。
【請求項11】
前記分散剤が高分子型分散剤を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項12】
一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体である炭素粒子、
分散媒、及び、
分散剤
を含み、
前記炭素粒子のD
90径が
2.00μm以上かつ10.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
50
径が1.50μm以上かつ7.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
10
径が0.60μm以上かつ2.50μm以下であり、
前記炭素粒子のメソ孔容積0.30mL/g以上かつ1.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子の平均細孔径が6.0nm以上かつ35.0nm以下である、バイオ燃料電池のアノード用組成物。
【請求項13】
原料炭素の微細化を行い
、炭素粒子を得る工程、
前記炭素粒子、分散剤及び分散媒を含む分散スラリーを導電性基材に塗工する工程、及び
前記炭素粒子に酵素を固定する工程、
を含
み、
前記炭素粒子のD
90
径が2.00μm以上かつ10.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
50
径が1.50μm以上かつ7.00μm以下であり、
前記炭素粒子のD
10
径が0.60μm以上かつ2.50μm以下であり、
前記炭素粒子のメソ孔容積0.30mL/g以上かつ1.30mL/g以下であり、
前記炭素粒子の平均細孔径が6.0nm以上かつ35.0nm以下である、バイオ燃料電池用のアノードの製造方法。
【請求項14】
前記微細化がメカニカルミリングにより行われる、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記メカニカルミリングを原料炭素、分散剤及び分散媒を含む混合物に対して行う、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記原料炭素及び前記炭素粒子は一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体である、請求項
13~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1~
11のいずれか一項に記載のアノー
ド、及び
カソード
を備える、バイオ燃料電池。
【請求項18】
酵素型バイオ燃料電池である、請求項
17に記載のバイオ燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ燃料電池用アノード、それの製造方法、及びそれを含むバイオ燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体物質が有するエネルギー変換システムを応用するデバイスの開発に興味が持たれている。そのようなデバイスの一つとしてバイオ燃料電池がある。バイオ燃料電池においては、酵素反応が電極において進行し、電気エネルギーが取り出される。具体的には、酵素を利用したバイオ燃料電池では、アノード(負極)では酵素による燃料の酸化反応によって、電子とプロトンを生成する。電子は、酵素反応により、アノードから導電性基材に伝達され、外部回路を経由して、カソード(正極)に輸送される。プロトンは、アノードから電解質等を介して、カソードに伝達される。バイオ燃料電池は、バイオプロセスを利用するため、温和な条件でかつ高い選択性を有する。また、バイオ燃料電池は、糖及びアルコール等の自然環境中に存在する物質を燃料として利用可能である。バイオ燃料電池は、安全で低環境負荷が小さいため、小型電子機器(例えば、携帯型機器及び体内埋め込み型機器)等の次世代電源として期待されている。
【0003】
特許文献1は、発電していないときよりも発電しているときの水分含有量が大きいアノードを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、依然、バイオ燃料電池の出力の向上は必ずしも十分とは言えない。従来とは異なる方法で出力向上を達成できることが、汎用性の観点からも好ましい。したがって、本開示の主たる目的はバイオ燃料電池のさらなる出力の向上のための新たな手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示はかかる事情に鑑みて為されたものである。従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記目的の達成を試みた。その結果、多孔質粒子の物性等に着目し、特定の多孔質粒子と特定の添加剤を用いることで、上記の主目的を達成できることを見出し、本開示に至った。本開示における一実施形態は次のとおりである:
【0007】
[項1]
多孔質構造体である炭素粒子、及び
分散剤
を含み、
前記炭素粒子のD90径(体積基準、以下同じ)が10.00μm以下である、バイオ燃料電池用のアノード。
[項2]
前記炭素粒子が一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する、項1に記載のアノード。
[項3]
前記炭素粒子のD50径が5.00μm以下である、項1又は2に記載のアノード。
[項4]
前記炭素粒子のメソ孔容積が0.25mL/g以上である、項1~3のいずれか一項に記載のアノード。
[項5]
前記炭素粒子の平均細孔径が7.5nm以上である、項1~4のいずれか一項に記載のアノード。
[項6]
前記分散剤が顔料誘導体型分散剤を含む、項1~5のいずれか一項に記載のアノード。
[項7]
一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体である炭素粒子、
分散媒、及び、
分散剤
を含み、
前記炭素粒子のD90径が10.00μm以下である、バイオ燃料電池のアノード用組成物。
[項8]
原料炭素の微細化を行い、D90径が10.00μm以下の炭素粒子を得る工程、
前記炭素粒子、分散剤及び分散媒を含む分散スラリーを導電性基材に塗工する工程、及び
前記炭素粒子に酵素を固定する工程、
を含む、バイオ燃料電池用のアノードの製造方法。
[項9]
前記微細化がメカニカルミリングにより行われる、項8に記載の製造方法。
[項10]
前記メカニカルミリングを原料炭素、分散剤及び分散媒を含む混合物に対して行う、項8又は9に記載の製造方法。
[項11]
前記原料炭素及び前記炭素粒子は一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体である、項8~10のいずれか一項に記載の製造方法。
[項12]
項1~6のいずれか一項に記載のアノード又は項8~11のいずれか一項に記載の製造方法により得られるアノード、及び
カソード
を備える、バイオ燃料電池。
[項13]
酵素型バイオ燃料電池である、項12に記載のバイオ燃料電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バイオ燃料電池の出力の向上したアノードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<バイオ燃料電池用アノード>
「バイオ燃料電池」とは生体触媒を電極触媒として利用した電池である。バイオ燃料電池の例として、生体触媒として酵素を用いる酵素型バイオ燃料電池(微生物を用いなくてもよい)、及び生体触媒として微生物を用いる微生物型バイオ燃料電池(微生物中の酵素を用いてもよい)が挙げられる。本開示におけるバイオ燃料電池は、酵素型バイオ燃料電池又は微生物型バイオ燃料電池であってよく、好ましくは酵素型バイオ燃料電池である。
【0010】
一般にアノードは、燃料(基質)から化学エネルギーを取り出し電気エネルギーに変換する反応を触媒するように構成される。一般に電池のアノードにおいて、燃料の酸化反応を触媒する酵素の作用により燃料が酸化され、生じた電子が外部回路を流れる。このためには、生体触媒と、外部回路に連結される導電性基材との間で、円滑に電子を授受できること求められる一方、生体触媒に燃料を効率よく供給できることが求められる。この目的のために、本開示におけるカソードは炭素を含み、その炭素に生体触媒が固定される。
【0011】
[炭素粒子]
本開示における炭素粒子は多孔質構造体である。炭素粒子はいわゆるメソポーラス材料であることが好ましい。「メソポーラス材料」とはメソ孔を多数有する多孔質材料である。メソ孔同士が連通していることが好ましい。なお、本明細書において、「メソ孔」とは径が2~50nm(特に5~40nm)の細孔を意味する物とする。また、本明細書においてマイクロ孔とは径が2nm以下の細孔を意味し、マクロ細孔とは径が50nm以上の細孔を意味するものとする。本明細書において「細孔」とは当業者が細孔と認識するものであって、例えば径が150nm以下のもの、特に径が100nm以下のものをいう。
【0012】
炭素粒子は一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体であることが好ましい。多孔質の炭素粒子は、炭素が細孔の外郭部分を構成し、スポンジ状の構造をとることが好ましい。細孔は、他の細孔とは独立した単独孔の他、細孔の一部又は全部が隣接する細孔と相互に連通している連続孔を有していてよい。三次元的な網目構造を有することが好ましい。連通孔の存在により、細孔内部の物質の拡散が促進される。炭素粒子の構造は、3次元TEM等で観察することにより確認できる。
【0013】
(D90径)
炭素粒子のD90径は、1.50μm以上、2.00μm以上、3.00μm以上、又は4.00μm以上であってよく、好ましくは2.00μm以上、より好ましくは3.00μm以上である。また、本開示における炭素粒子のD90径は、10.00μm以下、9.00μm以下、8.00μm以下、7.50μm以下、6.50μm以下、又は6.00μm以下であってよく、好ましくは15μm以下、より好ましくは7.5μm以下である。
【0014】
(D50径)
炭素粒子のD50径は、0.75μm以上、1.00μm以上、1.25μm以上、1.50μm以上、1.75μm以上、2.00μm以上、又は2.25μm以上であってよく、好ましくは1.50μm以上、より好ましくは2.00μm以上である。また、本開示における炭素粒子のD50径は、8.00μm以下、6.00μm以下、5.00μm以下、4.00μm以下、3.00μm以下、又は2.50μm以下であってよく、好ましくは7.00μm以下、より好ましくは5.00μm以下である。なお、本明細書において、D50径、D10径及びD90径は、レーザー回折散乱法を用いて測定される、体積基準の値である。
【0015】
(D10径)
炭素粒子のD10径は、0.50μm以上、0.60μm以上、0.75μm以上、又は0.90μm以上であってよく、好ましくは0.60μm以上、より好ましくは0.75μm以上である。また、本開示における炭素粒子のD10径は、5.00μm以下、2.50μm以下、1.25μm以下、又は1.15μm以下であってよく、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは1.15μm以下である。
【0016】
D90径、D50径、及びD10径、が上記範囲にあることで、バイオ燃料電池の性能が向上し得る。これは、アノードにおいて、炭素粒子間に適度の空隙が適度に存在することで、適度な親水性/撥水性が得られやすくなるとともに、酵素と燃料との相互作用、酵素と炭素間との相互作用、酵素の炭素粒子の固定性、炭素粒子の分散性、基材への塗工性等がバランスよく向上することが理由と推定される。
【0017】
(平均細孔径)
炭素粒子の平均細孔径は、1.5nm以上、4.5nm以上、7.5nm以上、10.0nm以上、12.5nm、又は15.0nm以上であってよく、好ましくは6.0nm以上、より好ましくは11.0nm以上である。また、炭素粒子の平均細孔径は、75.0nm以下、40.0nm以下、30.0nm以下、25.0nm以下、24.0nm以下、22.0nm以下、又は20.0nm以下であってよく、好ましくは35.0nm以下、より好ましくは27.0nm以下、さらに好ましくは23.5nm以下である。平均細孔径は、例えば、窒素を吸着ガスとして用いて得られる全細孔容積及び比表面積から求められる。平均細孔径が上記範囲にあることで、酵素が炭素粒子の細孔内に強固に固定し、酵素反応が進行しやすくなる。
【0018】
(ピーク細孔径)
縦軸をlog微分細孔容積(dV/d(logD))、横軸を細孔径とする、炭素粒子のBJH法による吸着側窒素吸着等温線において、ピーク細孔径が3.0~150.0nmであることが好ましい。ピーク細孔径は、5.0nm以上、10.0nm以上、15.0nm以上、20.0nm以上、又は50.0nm以上であってよく、好ましくは5.0nm以上、より好ましくは15.0nm以上である。ピーク細孔径が、120.0nm以下、100.0nm以下、70.0nm以下、50.0nm以下、40.0nm以下、又は30.0nm以下であってよく、好ましくは100.0nm以下、より好ましくは50.0nm以下である。ピーク細孔径にかかるピークは細孔径2.6nm~200nm(例えば、5.0nm~150nm、特に10nm~100nm)における最大ピークであってよい。吸着側窒素吸着等温線は当該範囲において一峰性又は多峰性(二峰性、三峰性等)であってよい。
【0019】
(全細孔容積)
炭素粒子の全細孔容積(相対圧0.99)は、0.15mL/g以上、0.40mL/g以上、0.50mL/g以上、0.55mL/g以上、又は0.60mL/g以上であってよく、好ましくは0.30mL/g以上、より好ましくは0.45mL/g以上である。また、炭素粒子の全細孔容積は、1.60mL/g以下、1.20mL/g以下、0.9mL/g以下、0.80mL/g以下、又は0.65mL/g以下であってよく、好ましくは1.30mL/g以下、より好ましくは1.00mL/g以下である。全細孔容積の測定手法は、JISZ8830、JISZ8831等を参考にでき、ガス吸着法等により求められる。
【0020】
(メソ孔容積)
炭素粒子のメソ孔容積は、0.15mL/g以上、0.25mL/g以上、0.40mL/g以上、0.50mL/g以上、0.55mL/g以上、又は0.60mL/g以上であってよく、好ましくは0.30mL/g以上、より好ましくは0.45mL/g以上である。また、炭素粒子の全細孔容積は、1.60mL/g以下、1.20mL/g以下、0.9mL/g以下、0.80mL/g以下、又は0.65mL/g以下であってよく、好ましくは1.30mL/g以下、より好ましくは1.00mL/g以下である。メソ孔容積が上記範囲にあることで、酵素を高密度に固定することができ、電池の出力を向上させやすい。メソ孔容積の測定手法は、JIS Z 8830、JIS Z 8831等を参考にでき、BJH法等により求められる。
【0021】
(マイクロ孔容積)
炭素粒子のマイクロ孔容積は、0.001mL/g以上、又は0.01mL/g以上であってよい。また、炭素粒子のマイクロ孔容積は、0.30mL/g以下、0.20mL/g以下、又は0.10mL/g以下であってよく、0.15mL/g以下であることが好ましい。マイクロ孔容積の測定手法は、JIS Z 8830、JIS Z 8831等を参考にでき、HK法、MP法等により求められる。
【0022】
(メソ孔割合)
炭素粒子のメソ孔容積/全細孔容積は、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、0.93以上、0.95以上、又は0.97以上であってよく、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.85以上である。
【0023】
(マイクロ孔割合)
炭素粒子のマイクロ孔容積/全細孔容積は、0.3以下、0.2以下、0.1以下、又は0.05以下であってよく、好ましくは0.15以下である。
【0024】
(BET比表面積)
炭素粒子のBET比表面積は、30m2/g以上、50m2/g以上、70m2/g以上、90/g以上、110m2/g以上、又は120m2/g以上であってよく、好ましくは60m2/g以上であり、より好ましくは100m2/g以上である。また、炭素粒子のBET比表面積は、600m2/g以下、500m2/g以下、300m2/g以下、250m2/g以下、200m2/g以下、170m2/g以下、150m2/g以下、又は140m2/g以下であってよく、175m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積の測定手法は、JISZ8830、JISZ8831等を参考にでき、ガス吸着法等により求められる。BET比表面積が上記範囲にあることで、電極反応活性が高まり、電池出力を向上し得る。炭素粒子のBET比表面積が増大することにより細孔の数が増大し酵素反応場が増大し得るため、性能が向上し得る。
【0025】
(官能基)
炭素粒子はその表面に、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基及び、スルホン基等の官能基を有していてもよい。当該官能基は前駆体由来であってよい。所望の官能基を有することで、親水性/撥水性を調節することが可能である。
【0026】
[酵素]
(酵素の種類)
アノードで利用される酵素は、燃料の種類に応じて、燃料(基質)を酸化できる酵素を選択することができる。例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素、フルクトース脱水素酵素、ガラクトース脱水素酵素、キシロース脱水素酵素、グルコン酸脱水素酵素、ピルビル酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素等を挙げることができる。好ましくは、グルコース脱水素酵素である。補因子又は補酵素要求性についても特に制限はなく、例えば、ピロロキノリンキノン依存性、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸依存性酵素等の酵素が挙げられる。
【0027】
酵素の由来は特に制限されない。したがって、天然に存在する生物体から適当なタンパク質の単離精製技術により精製された天然由来のものであってよく、また遺伝子工学的手法により組み換え体として製造されたものあるいは化学的に合成されたものあってもよい。さらには、市販品を利用することもできる。
【0028】
(メディエーター)
アノードは、酵素の種類に応じてメディエーターを必要としない直接電子移動型の酵素電極として構成してもよいし、メディエーターを介したメディエーター型の酵素電極として構成してもよい。したがって、酵素反応と電極間の電子伝達を媒介するメディエーター等の酵素の触媒活性の発現に必要な物質を、必要に応じてアノードに固定することができる。メディエーター等の固定は、酵素と混合して固定してもよいし、酵素の固定の前、若しくは後に固定してもよい。
【0029】
「メディエーター」とは、酵素の触媒反応に応じて酸化還元される低分子の酸化還元物質であり、酵素と導電性基材間の電子移動を媒介する。したがって、メディエーターは、酵素と電子を授受することができる共に、導電性基材とも電子を授受することができる物質である限り限定されない。例えば、メディエーターは、一重結合と二重結合が交互に並んだπ共役系化合物であることが好ましい。具体的には、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(以下、「ABTS」と略する)、フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンメトスルファート:PMS)、5-エチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンエトスルファート:PES)等のフェナジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェロセンやジメチルフェロセン、フェロセンカルボン酸等のフェロセン系化合物、ナフトキノン、アントラキノン、ハイロドキノン、ピロロキノリンキノン等のキノン系化合物、シトクロム系化合物、ベンジルビオロゲンやメチルビオロゲン等のビオロゲン系化合物、ジクロロフェノールインドフェノール等のインドフェノール系化合物等が挙げられる。
【0030】
(補酵素)
補因子を要求する酵素については、ホロ形態で炭素粒子に固定することできるし、アポ形態で固定することもできる。アポ形態で固定する場合、酵素が活性型に変換できるように、補因子を炭素粒子に固定するか、別途、補因子を炭素粒子に固定した酵素に供給する手段を設けることができる。また、補酵素を要求する酵素の場合にも、補酵素を炭素粒子に固定するか、別途、補酵素を供給する手段を設けることが好ましい。
【0031】
(pH)
アノードにおいては、電極触媒である酵素の大部分がその触媒活性を最大限に発揮し得る中性条件で作動するように構成することが好ましい。酵素は、生体内触媒であるため、電極緩衝液により酵素が機能しやすいpH付近に制御することが好ましい。特に、中性付近では、大多数の酵素が最大活性を発揮し得ることができ、酵素触媒電流の更なる向上を図ることができ、電極性能を向上させることができる。したがって、電極内で用いる緩衝液である電極緩衝液のpHを4~8、特には6~8に調製することが好ましい。例えば、炭素粒子を導電性基材に固定する際に炭素粒子を分散させる溶液、酵素を炭素粒子の細孔に固定する際に酵素を溶かす溶液等、アノードの構築及び作動に際して必要となる溶液を、イミダゾール緩衝液やリン酸緩衝液等を用いて、pH4~8に調製することが好ましく、特にはpH6~8に調製することが好ましい。
【0032】
[結着剤]
アノードは、結着剤を含んでいてよい。結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系結着剤、ポリシロキサン系結着剤等が挙げられ、撥水性や化学安定性等に優れることから、フッ素系結着剤が好ましい。
【0033】
[分散剤]
アノードは分散剤を含んでいてよい。ここで、分散剤は炭素粒子を分散媒中に分散させることができる添加剤である。分散剤は、炭素粒子の極性、分散媒等に応じて選択でき、例えば高分子型分散剤、顔料誘導体型分散剤等を用いればよい。
【0034】
高分子型分散剤とは、高分子量(例えば、分子量500以上、特に1000以上)の分散剤である。アニオン型、カチオン型又はノニオン型であってよい。高分子型分散剤としては、例えば、セルロース系ポリマー、ブチラール系ポリマー、ポリビニルピロリドン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレンアクリル系ポリマー、高級脂肪酸エステル系等が挙げられる。高分子型分散剤は、親水性基(例えば、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミド基及びアミノ基等、特にアルコキシ基及びヒドロキシ基)を1個又は複数有していてよい。
【0035】
顔料誘導体型分散剤とは、有機顔料骨格を有する顔料誘導体型分散剤である。例えば、フタロシアニン誘導体型分散剤、糖含有顔料誘導体型分散剤、ピペリジル誘導体型分散剤、ナフタレン誘導体型分散剤又はペリレン誘導体型分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料誘導体型分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料誘導体型分散剤、スルホン酸基を有する顔料誘導体型分散剤、スルホンアミド基を有する顔料誘導体型分散剤、エーテル基を有する顔料誘導体型分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基又はカルボキサミド基を有する顔料誘導体型分散剤などが挙げられる。
【0036】
高分子型分散剤と、顔料型分散剤とを組み合わせて用いてもよい。この場合、分散剤の量は、高分子分散剤100重量部に対して、顔料誘導体型分散剤が1重量部以上、3重量部以上、15重量部以上、50重量部以上、又は100重量部以上であってよい。分散剤の量は、高分子分散剤100重量部に対して、顔料誘導体型分散剤が300重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、又は30重量部以下であってよく、好ましくは80重量部以下である。
【0037】
分散剤の具体例としては、ルーブリゾール社製ソルスパースシリーズ、EFKA社製EFKAシリーズ、味の素社製アジスパーシリーズ、ビッグケミー社製DISPERBYKシリーズ、Ashland社製のポリビニルピロリドンシリーズ(例えばK15、K30)などが挙げられる。
【0038】
[その他添加剤]
本開示の効果を妨げない範囲で、その他酵素反応に必要な物質や、アノードの安定性向上に必要な添加剤等を適宜含んでよい。
【0039】
[導電性基材]
炭素粒子を固定する基材は外部回路に接続可能な導電性基材である。好ましくは、多孔質基材であり、特に好ましくは導電性繊維の集合体として構成する。例えば、導電性繊維よりなる織布及び不織布等が挙げられる。導電性繊維の材質としては、炭素、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、パラジウム等の金属又は合金、SnO2、In2O3、WO3、TiO2等の導電性酸化物等、当該技術分野で公知の材質の導電性の物質を利用することができる。これらの物質は一種で利用してもよく、また2種以上を混合して利用してもよい。好ましくは、カーボンクロス等の炭素繊維の織布やカーボンフェルト等の炭素繊維の不織布等やグラッシーカーボン等の炭素基材を利用することができる。導電性基材は単層又は2種以上の積層構造をもって構成してもよい。さらにサイズ及び形状等は特に限定されるものではなく、利用目的に応じて適宜調整することができる。
【0040】
[各成分の量]
導電性基材への炭素微粒子の固定量は、導電性基材の種類及び炭素粒子の形状等により適宜変更することができる。例えば、導電性基材1cm2当たり、0.05~0.50mgの炭素粒子を固定してもよい。
【0041】
酵素その他の生体触媒の量は、添加量を変化させて試験することにより、適宜変更することができる。例えば、導電性基材1cm2当たり、0.01mg~10mgの酵素その他の生体触媒を固定してもよい。
【0042】
メディエーターを用いる場合、メディエーターの量は、添加量を変化させて試験することにより、適宜変更することができる。例えば、インクスラリー中、炭素粒子100重量部に対して、1~200重量部、又は5~100重量部であってよい。
【0043】
結着剤を用いる場合、結着剤の量は、炭素粒子100重量部に対して5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、又は75重量部以上であってよい。また、結着剤の量は、炭素粒子100重量部に対して250重量部以下、150重量部以下、100重量部位以下、75重量部以下、又は50重量部以下であってよい。これにより、適度な結着性を保ちつつ、電気抵抗を抑えて円滑な電子の移動を実現することができる。
【0044】
分散剤を用いる場合、分散剤の量は、炭素粒子100重量部に対して5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、25重量部以上、35重量部以上、45重量部以上又は55重量部以上、であってよい。また、分散剤の量は、炭素粒子100重量部に対して200重量部以下、100重量部以下、75重量部以下、又は50重量部以下であってよい。これにより、適度な分散性を保ちつつ、円滑な電子の移動及び良好な酵素反応活性を実現することができる。
【0045】
<アノードの製造方法>
本開示におけるバイオ燃料電池のアノードの製造方法は、原料炭素を微細化して、D90径が10.00μm以下の炭素粒子を得る工程(微細化工程)、前記炭素粒子、分散剤及び分散媒を含むスラリー状混合物を導電性基材に塗工する工程(塗工工程)、及び前記炭素粒子に酵素を固定する工程(酵素固定工程)を含む。
【0046】
[微細化工程]
微細化工程においては、原料炭素を微細化して、D90径が10.00μm以下の炭素粒子を得る。微細化された炭素粒子は、よりバイオ燃料電池としての性能向上に適した炭素粒子(いわば改質炭素粒子)となる。
【0047】
(原料炭素)
「原料炭素」とは、所定の粒径に調整されていない前記炭素粒子の原料であって、特に微細化工程前の原料をいう。ここで、原料炭素も上記炭素粒子と同様に一部又は全部が相互に連通されている複数の細孔を有する多孔質構造体であることが好ましい。
【0048】
(原料炭素の粒径)
原料炭素のD90径は、10.00μm超、12.50μm超、15.00μm超、20.00μm超、25.00μm超、又は30.00μm超であってよく、好ましくは、20.00μm超である。原料炭素のD90径は、75.00μm以下、60.00μm以下、50.00μm以下、45.00μm以下、40.00μm以下、又は35.00μm以下であってよく、好ましくは、50.00μm以下である。
原料炭素のD50径は、5.00μm超、7.50μm超、10.00μm超、12.50μm超、又は15.00μm超であってよく、好ましくは7.50μm超である。原料炭素のD50径は、50.00μm以下、30.00μm以下、又は25.00μm以下であってよく、好ましくは25.00μm以下である。
原料炭素のD10径は、1.00μm超、1.50μm超、2.00μm超、2.50μm超、3.00μm超、又は3.50μm超であってよく、好ましくは、2.00μm超である。原料炭素のD10径は、15.00μm以下、12.50μm以下、7.50μm以下、又は5.00μm以下であってよく、好ましくは7.50μm以下である。
【0049】
(原料炭素の平均細孔径)
原料炭素の平均細孔径は、1.0nm以上、1.5nm以上、2.5nm以上、又は3.0nm以上であってよく、好ましくは2.0nm以上である。また、原料炭素の平均細孔径は、15.0nm以下、10.0nm以下、又は5.0nm以下であってよく、好ましくは7.5nm以下である。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、平均細孔径が変化(増大又は減少)していてもよく、増大していることが好ましい。炭素粒子の平均細孔径は、原料炭素の平均細孔径を1.0とすると、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、又は4.5以上であってよく、好ましくは2.8以上である。炭素粒子の平均細孔径は、原料炭素の細孔分布における平均細孔径を1.0とすると、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、又は4.5以下であってよく、好ましくは6.5以下である。
【0050】
(原料炭素のピーク細孔径)
縦軸をlog微分細孔容積(dV/d(logD))、横軸を細孔径とする、原料炭素のBJH法による吸着側窒素吸着等温線において、ピーク細孔径が、5.0nm以上、10.0nm以上、15.0nm以上、20.0nm以上、又は50.0nm以上であってよく、好ましくは5.0nm以上、より好ましくは15.0nm以上である。ピーク細孔径が、120.0nm以下、100.0nm以下、70.0nm以下、50.0nm以下、40.0nm以下、又は30.0nm以下であってよく、好ましくは100.0nm以下、より好ましくは50.0nm以下である。ピーク細孔径にかかるピークは細孔径2.6nm~200nm(例えば、5.0nm~150nm、特に10nm~100nm)における最大ピークであってよい。吸着側窒素吸着等温線は当該範囲においてピークは一峰性又は多峰性(二峰性、三峰性)であってよい。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、細孔分布におけるピーク細孔径が変化(増大又は減少)していてもよく、減少していることが好ましい。炭素粒子のピーク細孔径は、原料炭素の細孔分布におけるピーク細孔径を1.0とすると、0.3以上、0.6以上、0.9以上であってよく、好ましくは0.5以上である。炭素粒子のピーク細孔径は、原料炭素の細孔分布におけるピーク細孔径を1.0とすると、3.0以下、2.5以下、2.0以下、又は1.5以下であってよく、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5以下である。
【0051】
(原料炭素の全細孔容積)
炭素粒子の全細孔容積(相対圧0.99)は、0.10mL/g以上、0.30mL/g以上、又は0.50mL/g以上であってよく、好ましくは0.30mL/g以上である。また、炭素粒子の全細孔容積は、3.00mL/g以下、2.50mL/g以下、2.00mL/g以下、1.70mL/g以下、1.30mL/g以下、1.10mL/g以下、0.90mL/g以下、又は0.70mL/g以下であってよく、好ましくは1.20mL/g以下、より好ましくは1.00mL/g以下である。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、全細孔容積が変化(増大又は減少)していてもよい。炭素粒子の全細孔容積は、原料炭素の全細孔容積を1.0とすると、0.5以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、又は1.0以上であってよく、好ましくは0.75以上である。炭素粒子の全細孔容積は、原料炭素の全細孔容積を1.0とすると、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であってよく、好ましくは2.0以下である。
【0052】
(原料炭素のメソ孔容積)
原料炭素のメソ孔容積は、0.10mL/g以上、0.20mL/g以上、0.30mL/g以上、又は0.40mL/g以上であってよい。また、原料炭素のメソ孔容積は、1.50mL/g以下、1.20mL/g以下、1.00mL/g以下、0.80mL/g以下、又は0.60mL/g以下であってよい。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、メソ孔容積が変化(増大又は減少)していてもよい。炭素粒子のメソ孔容積は、原料炭素のメソ孔容積を1.0とすると、0.5以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上であり、好ましくは0.75以上である。炭素粒子のメソ孔容積は、原料炭素のメソ孔容積を1.0とすると、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であってよく、好ましくは2.0以下である。
【0053】
(原料炭素のマイクロ孔容積)
原料炭素のマイクロ孔容積は、0.001mL/g以上、0.01mL/g、又は0.10mL/g以上であってよい。また、原料炭素のマイクロ孔容積は、0.60mL/g以下、0.50mL/g以下、又は0.30mL/g以下であってよい。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、マイクロ孔容積が変化(増大又は減少)していてもよく、減少していることが好ましい。炭素粒子のマイクロ孔容積は、原料炭素のマイクロ孔容積を1.0とすると、0.01以上又は0.03以上であってよい。炭素粒子のマイクロ孔容積は、原料炭素のマイクロ孔容積を1.0とすると、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、又は0.1以下であってよく、好ましくは0.25以下である。
【0054】
(原料炭素のメソ孔割合)
原料炭素のメソ孔容積/全細孔容積は、0.6以上、0.7以上、又は0.8以上であってよい。原料炭素のメソ孔容積/全細孔容積は、1.0以下、0.95以下、又は0.90以下であってよい。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、メソ孔容積/全細孔容積が変化(増大又は減少)していてもよい。炭素粒子のメソ孔容積/全細孔容積は、原料炭素のメソ孔容積/全細孔容積を1.0とすると、0.9以上、1.1以上、1.2以上、又は1.3以上であってよい。炭素粒子のメソ孔容積/全細孔容積は、原料炭素のメソ孔容積/全細孔容積を1.0とすると、2.0以下、1.6以下、又は1.4以下であってよい。
【0055】
(原料炭素のマイクロ孔割合)
原料炭素のマイクロ孔容積/全細孔容積は、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下であってよい。原料炭素のマイクロ孔容積/全細孔容積は、0.10以上、0.15以上、又は0.20以上であってよい。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、マイクロ孔容積/全細孔容積が変化(増大又は減少)していてもよく、減少していることが好ましい。炭素粒子のマイクロ孔容積/全細孔容積は、原料炭素のマイクロ孔容積/全細孔容積を1.0とすると、0.01以上、0.03以上、又は0.05以上であってよい。炭素粒子のマイクロ孔容積/全細孔容積は、原料炭素のマイクロ孔容積/全細孔容積を1.0とすると、0.75以下、0.50以下、0.30以下、0.20以下、0.10以下、又は0.05以下であってよく、好ましくは0.25以下である。
【0056】
(原料炭素のBET比表面積)
原料炭素のBET比表面積は、250m2/g以上、300m2/g以上、350m2/g以上、400/g以上、450m2/g以上、500m2/g以上、550m2/g以上、又は600m2/g以上であってよく、好ましくは275m2/g以上であり、より好ましくは375m2/g以上である。また、原料炭素のBET比表面積は、1800m2/g以下、1500m2/g以下、1250m2/g以下、1000m2/g以下、900m2/g以下、又は800m2/g以下であってよく、好ましくは1000m2/g以下である。
原料炭素と比較して、微細化工程後の炭素粒子は、BET比表面積が変化(増大又は減少)していてもよく、減少していることが好ましい。炭素粒子のBET比表面積は、原料炭素のBET比表面積を1.0とすると、0.10以上、0.12以上、0.15以上、0.17以上、又は0.20以上であってよく、好ましくは0.11以上である。炭素粒子のBET比表面積は、原料炭素のBET比表面積を1.0とすると、0.75以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、又は0.25以下であってよく、好ましくは0.45以下である。
【0057】
(原料炭素の製造方法)
原料炭素の製造方法は、炭素前駆体と鋳型粒子を混合して混合物を作製する工程と、上記混合物を非酸化性雰囲気で加熱焼成して焼成物を作製する工程と、上記焼成物中の上記鋳型粒子を除去する工程を含むことが好ましい。この製造方法については、開示される特開2012-188309号公報及び特開2017-91971号公報等に記載の方法を参照してすることができる。
【0058】
炭素前駆体は炭素を含有し、加熱により炭素化するものである限り特に限定はされず、有機樹脂であってよい。炭素前駆体の例として、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系高分子、ポリアクリルアミドやポリアクリロニトリル等のアクリル系、及びポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリビニルピロリドン等のビニル系高分子、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、ポリアミド系高分子、ポリイミド系高分子、フェノール系高分子、エポキシ系高分子、並びに、石油系ピッチや石炭系ピッチ、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の縮合多環炭化水素化合物、インドール、イソインドール、キノリン等の縮合複素環化合物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0059】
鋳型粒子は、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩よりなる群から選択される金属化合物の少なくとも一種から成る鋳型粒子であってよい。金属はアルカリ金属又はアルカリ土類金属であってよく、好ましくはアルカリ土類金属(例えばMg)である。原料炭素の市販品の例として、東洋炭素株式会社から入手できるクノーベルシリーズが挙げられる。
【0060】
(微細化)
原料炭素の微細化は、乾式で行われても、液状媒体と組み合わせて湿式で行われてもよい。湿式で行うことにより、得られる炭素粒子の粒径を上述の範囲に調整しやすい。
【0061】
本開示における原料炭素の微細化はメカニカルミリングにより行われることが好ましい。「メカニカルミリング」とは、機械的エネルギーを付与しながら試料を粉砕する方法であり、その結晶構造、化学構造、物性、形態等を変化させ得る。原料炭素をメカニカルミリングすることにより、原料炭素の粒子同士が激しく接触する。これにより、例えば乳鉢粉砕法及びホモジナイザー処理等に比べ、より微細化することができる。メカニカルミリングとしては、例えば、ビーズミル(いわゆるボールミルを含む)、コロイドミル、ディスクミル、振動ミル、ローラーミル及びターボミル等を挙げることができ、中でもビーズミルが好ましい。装置の種類にあわせて、粉砕時間及び粉砕強度は、所望の粒径、細孔特性等を得るために適宜決定することができる。
【0062】
ビーズミルは、容器の中にビーズと試料を入れ、ビーズをアジテータに衝突させて運動させることにより、試料を粉砕する方法である。ビーズミル装置の例としては、ディスクタイプ、ピンタイプ及びシングルローラータイプ等が挙げられる。
【0063】
メカニカルミリングは原料炭素単体に対して行ってもよいし、原料炭素及び分散媒を含む混合物に対して行ってもよい。当該混合物はさらに分散剤を含んでいてよい。
【0064】
分散媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、N-メチルピロリドン等の水混和性溶媒、酢酸エチル、ヘキサン及びペンタン等の有機溶媒、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
混合物中、原料炭素の量は、0.1~50重量%であってよく、例えば0.5~25重量%であり、好ましくは1~10重量%である。混合物中、分散媒の量は20~99重量%であってよく、例えば50~98重量%であり、好ましくは60~95重量%である。混合物中、分散剤の量は、0.1~10重量%であってよく、例えば0.3~5重量%であり、好ましくは0.1~3%である。各原料が上記範囲にあることで、分散性が向上するとともに、塗工性も向上し得、電池性能が向上し得る。
【0066】
[塗工工程]
導電性基材への炭素粒子への固定は、炭素粒子及び分散媒を含む組成物を導電性基材に塗工することにより行われればよい。当該組成物は通常分散スラリー(分散インク、分散インクスラリー)である。分散スラリーは、超音波処理等により懸濁させて調製してもよい。また、必要に応じて、結着剤を用いてもよい。塗布の方法としては、スクリーンプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレーによる噴霧法等を利用することができる。また、電着法を利用することもでき、例えば、炭素粒子を適当な溶媒に分散させた分散液中に導電性基材と対向電極とを浸漬し、当該導電性基材と対向電極との間に電流を流して導電性基材に炭素粒子を固定することもでき、必要に応じて結着剤を分散スラリーに混合させて用いてもよい。導電性基材への塗工後、分散媒は必要により、乾燥される。
【0067】
スラリーの粘度は、塗工性の観点から、5~10,000mPa・sであってよく、好ましくは10~5,000であってよい。
【0068】
[酵素固定工程]
【0069】
酵素は、炭素粒子に固定される。好ましくは、酵素は炭素粒子の細孔内に固定する。固定の方法は、当該技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。例えば、物理的吸着、共有結合、イオン結合、抗体等の生物化学的特異的結合による担体結合法、2以上の官能基をもつ試薬による架橋法、ゲル内に封入する包括法等によって固定することができる。また、これらを組み合わせてもよく、各々の酵素に最適化な酵素固定法を適宜選択することが望ましい。酵素の固定は炭素粒子を導電性基材に固定した後に行ってもよいし、炭素粒子を導電性基材に固定する前に、炭素粒子に酵素を固定してもよい。
【0070】
<バイオ燃料電池>
本開示におけるバイオ燃料電地は、上述のアノードを含んで作製される。アノードの作製工程は、上述した通りである。バイオ燃料電池セルは、例えば、燃料タンク、アノード、電解質層、カソードの順で積層することにより作製される。バイオ燃料電池セルをバイオ燃料電池として構成してもよく、かかるバイオ燃料電池用セルを複数個直列に電気的に接続して集積させるセルスタックを形成してもよい。セルスタックの形状は、平面状にセルを配列した平面形状であってもよいし、セルを積み重ねる積層形状であってもよい。これにより、バイオ燃料電池の出力を高めることができる。なお、バイオ燃料電池は、原理上はカソードとアノードの反応を隔てる膜が必要ないので、電池デザインの自由度が高い。
【0071】
本開示のバイオ燃料電池の発電機構を説明すると、燃料がアノードに供給されると、アノード上の酵素の触媒作用によって燃料が酸化される。酵素の酸化に伴って生じる電子を導電性基材に伝達する。酵素から導電性基材への電子の伝達は、メディエーターを介して行ってもよい。
【0072】
続いて、電子はアノードから外部回路を通ってカソードに伝達され、電流が発生する。一方、酵素による燃料の酸化反応に伴い電子と共に生じたプロトンは電解質層を通ってカソードに移行する。カソード上で、プロトンは大気から取り込んだ酸素と外部回路を通して移動してきた電子との反応により水を生成する。
【0073】
[バイオ燃料電池用カソード]
一般にバイオ燃料電池におけるカソードは、外部(空気)から酸素が供給され、その酸素が電子を受け取り、プロトンと反応して水を生ずる。したがって、カソードでは、生体触媒と、外部回路に連結される導電性基材との間で、円滑に電子を授受できること求められる一方、酵素に酸素を効率よく供給できることが求められる。カソードは、カソード上に空気を送り込む必要のあるアクティブ型としてもよいし、空気を送り込む必要のないパッシブ型(ガス拡散型)の電極としてもよい。
【0074】
カソードは酵素を含むことができる。カソードで利用される酵素は、バイオ燃料電池のカソード側で利用されるものであり、酸素の還元反応を触媒する酵素である限りは、当該技術分野で公知の酵素を利用することができる。例えば、ビリルビンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等の酸化還元酵素の利用が好ましい。酵素は、一種類のみを単独で、若しくは複数種類の酵素を組み合わせて利用することができる。補酵素及び補因子要求性の有無についても特に制限はない。特に好ましくは、ビリルビンオキシダーゼである。
【0075】
酵素の由来は特に制限されない。したがって、天然に存在する生物体から適当なタンパク質の単離精製技術により精製された天然由来のものであってよく、また遺伝子工学的手法により組み換え体として製造されたものあるいは化学的に合成されたものあってもよい。例えば、天野エンザイムから入手できるMyrothecium verrucaria由来のビリルビンオキシダーゼ(MvBOD)等を利用することができる。
【0076】
導電性基材上への酵素の固定は、アノードと同様に行うことができる。メディエーター等の酵素の触媒活性、及び電極との電子の授受に必要な物質を固定することもできる。また、これらの物質を別途供給する手段を設けてもよく、燃料等に混合するように構成してもよい。また、補因子を要求する酵素については、ホロ形態で導電性基材に固定することできるし、アポ形態で固定することもできる。アポ形態で固定する場合、酵素が活性型に変換できるように、補因子を導電性基材に固定するか、別途、補因子を導電性基材に供給する手段を設けることができる。また、補酵素を要求する酵素の場合にも、補酵素を炭素粒子に固定するか、別途、補酵素を供給する手段を設けてもよい。
【0077】
[バイオ燃料電池用電解質層]
本開示におけるバイオ燃料電池用セルの電解質層は、プロトン等を透過できるイオン伝導性を有すると共に、プロトン等のイオン以外のアノード構成成分、カソード構成成分、及び電子を透過させないという性質を有する限り、その素材及び形状等に制限はない。例えば、固体電解質膜を利用して隔膜として構成することができる。固体電解質膜としては、スルホン基、リン酸基、ホスホン基、及びホスフィン基等の強酸基、カルボキシル基等の弱酸基、及び極性基を有する有機高分子等のイオン交換機能を有する固体膜等が例示されるが、これらに限定するものではない。具体的にはセルロース膜、及びテトラフルオロエチレンとパーフルオロ〔2-(フルオロスルフォニルエトキシ)プロピルビニルエーテル〕:tetrafluoroethyleneとperfluoro[2-(fluorosulfonylethoxy)propylvinyl ether]の共重合体であるナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸(PFS)系の樹脂膜を利用することができる。
【0078】
[燃料タンク]
燃料タンクには、燃料が充填されている。燃料としては、アノードの触媒酵素によって進められる酸化還元反応により電子を放出可能な物質であれば特に制限はない。したがって、燃料は、酵素の基質と成り得る物質であり、当該酵素の種類に応じて適宜選択することができる。好ましくは、バイオマス燃料である。「バイオマス」とは生物由来の資源を意味し、これら自体でもよいが、これらを加工したものが好ましい。
【0079】
例えば、糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類等を使用することができる。単糖類としては、炭素数4のエリトロース、トレオース、炭素数5のアラビノース、キシロース、リボース、炭素数6のグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等が挙げられる。二糖類としては、マルトース、ラクトース、スクロース等を、また、多糖類としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース等を例示できる。糖類以外にも、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、フタル酸、乳酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、アルコール類、脂肪類、ペプチド、タンパク質等のポリアミノ酸類、アミン類等を用いることができる。
【0080】
燃料は、適当な溶媒に溶解させた形態で供給する、若しくはゲルに燃料を封入させる等、バイオ燃料電池の構造に応じてその供給形態は適宜選択される。溶媒は、水性媒体であり、蒸留水の他、イミダゾール緩衝液やリン酸緩衝液等の適当な緩衝液であってもよい。ゲルとしては、アガロース、アガロペクチン、アラビアゴム、カラーギナン、コラーゲン、ゼラチン等の天然高分子、ポリアクリルアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルエーテル系重合体等の合成高分子等を好適に利用することができる。燃料には、必要に応じて、メディエーターを含んで構成することができる。メディエーターについては上述した。
【実施例】
【0081】
以下に、本開示の実施形態を実施例により詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
<酵素の調製方法>
アノード電極における酵素として、グルコース脱水素酵素(GDH) (東洋紡社製GLD-321(GDH(PQQ-dependent))を用いた。
【0083】
カソード電極における酵素として、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)(天野エンザイム社製、BO''Amano''3[BO-3])を用いた。
<多孔質炭素インクスラリーの作製>
原料炭素を粉砕して、得られた炭素粒子を媒体に分散させることで、多孔質炭素インクスラリーを得た。炭素粒子の粉砕は、乾式粉砕及び/又は湿式粉砕で行った。
[実施例1]
原料炭素としてMgO多孔質炭素「35nm設計メソ孔クノーベル」(東洋炭素(株)製)5.0重量%、及び、分散剤としてメチルセルロースポリマー0.5重量%(炭素粒子に対して10重量%)に対して、N-メチル-2-ピロリドンを加えて100重量%として混合物を得た。得られた混合物に対して粒径がD10:0.91μm、D50:2.19μm、D90:5.48μmに到達するまでビーズミル装置を用いて湿式粉砕を行い、多孔質炭素を微細化させた分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。ここで、D10、D50及びD90は体積基準であり、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(日機装社製マイクロトラックBlueraytrac)を用いて湿式法(分散媒:N-メチル-2-ピロリドン)により測定した。細孔特性については、JIS Z 8830及びJIS Z 8831に準拠して行った。
【0084】
細孔特性の測定条件は次のとおりである:
窒素吸着法
前処理方法:120℃で8時間、真空脱気を行った。
測定方法:定容法を用いて、窒素による吸着脱離等温線を測定した。
吸着温度:77K
飽和蒸気圧:実測
吸着質断面積:0.162nm2
吸着質:窒素
平衡待ち時間:500sec※
※吸着平衡状態(吸脱着の際の圧力変化が所定の値以下になる状態)に達してからの待ち時間
平均細孔径:試料の全ての細孔を一つの円筒形細孔と仮定し算出
2.6-200nmにおけるピーク細孔径:BJH法による吸着側窒素吸着等温線における最大ピーク
全細孔容積:BET法により吸着等温線の相対圧(P/Po)0.99の吸着量から算出
細孔容積:BJH法(メソ孔)、MP法(マイクロ孔)により算出
比表面積:BET法により算出
測定装置:BELSORP-miniII(マイクロトラック・ベル製)
前処理装置:BELPREP-vacII(マイクロトラック・ベル製)
【0085】
次に、得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し実施例1の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0086】
[実施例2]
分散剤の量を炭素粒子に対して20重量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し実施例2の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0087】
[実施例3]
分散剤の量を炭素粒子に対して30重量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し実施例3の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0088】
[実施例4]
分散剤の量を炭素粒子に対して40重量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤とKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し実施例4の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0089】
[実施例5]
分散剤の量を炭素粒子に対して20重量%としたこと、及び、原料炭素を事前に乾式粉砕したこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し実施例5の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0090】
[比較例1]
分散剤を用いないこと、及び、湿式粉砕を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例1の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0091】
[比較例2]
分散剤の量を炭素粒子に対して20重量%としたこと、及び、湿式粉砕を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例2の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0092】
[比較例3]
分散剤を用いないこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例3の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0093】
[比較例4]
分散剤を用いないこと、原料炭素を事前に乾式粉砕したこと、湿式粉砕をしなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例4の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0094】
[比較例5]
分散剤の量を炭素粒子に対して20重量%としたこと、原料炭素を事前に乾式粉砕したこと、湿式粉砕をしなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例5の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0095】
[比較例6]
分散剤を用いないこと、原料炭素を事前に乾式粉砕したこと以外は、実施例1と同様の手順で分散スラリーを得た。得られた分散スラリーに含まれる炭素粒子の粒径及び細孔特性を表1に示す。
得られた分散スラリー200.0gに結着剤としてKFポリマーL#9130(クレハ製、固形分13%)19.2g、N-メチル-2-ピロリドン30.8gを添加し、撹拌混合し比較例6の多孔質炭素分散インクスラリーを得た。
【0096】
<電極及び電池セルの作製>
バイオ燃料電池のアノード電極の作製では、炭素繊維(日本カーボンGF-20-P21E,2.0cm2)を実施例1~5及び比較例1~6の多孔質炭素含有インクスラリー(1,2-ナフトキノンを7.0mg/gとなるように添加)に浸して引き揚げて、乾熱乾燥(60℃、24h)で溶媒を除去した。
カソード側電極の作製では、炭素繊維(日本カーボンGF-20-P21E、4.0cm2)をMgO多孔質炭素インクスラリー(ABTSを12.5mg/gとなるように添加)に浸して引き揚げて、乾熱乾燥(60℃、24h)で溶媒を除去した。
バイオ燃料電池の組み立てでは、アノードに酵素溶液(0.125mL:GDH0.5mg,1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.0,1Mグルコース)、カソードに酵素溶液(0.24mL:ビリルビンオキシダーゼ(BOD)25mg,1.2Mリン酸カリウムpH7.0)を含浸させ、両極間にセルロース膜を挟み込んで電池セルを組み立て、最後に、アノードに1Mグルコースを0.1mL滴下した。
【0097】
【0098】
<バイオ燃料電池の電気化学測定>
得られた電池セルについて電子負荷装置(菊水電子工業株式会社製、直流電子負荷装置PLZ70UA)を用いて、0.1mAステップ/10secホールドで電流値を上昇させて、1回目の放電試験を行った。電圧が0.1Vまで降下したところで放電を終了した。その後、電池セルを約5分間放置してセル電圧を回復させた後、2回目の放電試験を行った。最大電力及び0.1V時電流値を表2に示す。
[表2]
【0099】
表2の結果より、アノードが分散剤を含み、かつ、特定範囲の粒径を有する場合、最大電力及び0.1V時の電流値が有意に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示におけるアノードは、バイオ燃料電池のアノードとして利用できる。そのアノードを含むバイオ燃料電池は、バイオ燃料電池が要求されるあらゆる分野、例えば、電子、医療、食品、環境分野等の産業分野において利用可能である。そのアノードを含むバイオ燃料電池は、特に卓上電卓等の携帯型機器や心臓ペースメーカー等の体内埋め込み式機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能である。