(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】防つるシート
(51)【国際特許分類】
A01N 25/34 20060101AFI20240206BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240206BHJP
A01N 39/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A01N25/34 A
A01P17/00
A01N39/02 A
(21)【出願番号】P 2020009197
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2023-01-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年8月21日 香川県農場試験場満濃地(香川仲多度郡まんのう町炭所西2253-1)において試験施行
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年10月17日 三重県四日市市智積町3359付近の東名阪自動車道傍の傾斜地において試験施行
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591260513
【氏名又は名称】七王工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊治
(72)【発明者】
【氏名】平泉 顕
(72)【発明者】
【氏名】長野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】江崎 孝二
(72)【発明者】
【氏名】金泥 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】増田 智司
(72)【発明者】
【氏名】杉原 正俊
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220600(JP,A)
【文献】特表平10-508001(JP,A)
【文献】特開2019-024348(JP,A)
【文献】特開2007-222040(JP,A)
【文献】特開2004-166502(JP,A)
【文献】特開2002-335762(JP,A)
【文献】特開2018-149739(JP,A)
【文献】特開2012-065566(JP,A)
【文献】特開2016-169562(JP,A)
【文献】特表平09-501941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/34
A01P 17/00
A01N 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から、孔につる忌避剤が付着している複数の多孔質石からなる多孔質石層、つる忌避剤が含まれてなるアスファルト層及びポリエステル不織布層の順で積層一体化されてなる防つるシート。
【請求項2】
ポリエステル不織布層の裏面に粘着剤層が設けられ、該粘着剤層の裏面に離型シートが設けられている請求項1記載の防つるシート。
【請求項3】
アスファルト層は、つる忌避剤が含まれてなる改質アスファルト層である請求項1記載の防つるシート。
【請求項4】
多孔質石が軽石である請求項1記載の防つるシート。
【請求項5】
つる忌避剤含有アスファルトを加熱して流動状態とし、ポリエステル不織布表面に塗布すると共に、流動状態となっている塗布されたつる忌避剤含有アスファルトの上に、孔につる忌避剤が付着している複数の多孔質石を載置することを特徴とする請求項1記載の防つるシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に敷設する防つるシートに関し、特に山を切り開いて建設した道路の両側の法面に敷設するのに適した防つるシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地面から雑草等の植物が生育するのを抑制するため、地面に防草シートを敷設することが行われている。かかる防草シートとして、表面側から、短繊維不織布よりなる保水層、アスファルトよりなる遮光層及び長繊維不織布よりなる補強層の順で積層一体化してなるものが知られている(特許文献1、請求項1)。そして、アスファルトよりなる遮光層に植物忌避剤を含有させることも提案されている(特許文献1、段落0043)。
【0003】
かかる防草シートは、地面から雑草が生育するのを防止しうるものの、地面に沿って茎を伸ばすつる植物の生育を抑制することが困難であった。すなわち、防草シートが敷設されていない箇所で生育したつる植物が、地面に沿って防草シート表面まで茎を伸ばし、防草シートをつる植物が覆ってしまうということがあった。なぜなら、防草シート表面が短繊維不織布よりなり保水層で構成されており、植物忌避剤が存在しないからである。
【0004】
このため、短繊維不織布よりなる保水層にも、植物忌避剤を塗布又は含浸させることも考えられる。しかしながら、短繊維不織布に植物忌避剤を塗布又は含浸させても、雨水によって植物忌避剤が流出し、防草シート表面においてつる植物の茎が伸びるのを長期に亙って防止することができなかった。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、防草シート表面において、つる植物の茎が伸びるのを長期に亙って防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、表面側から、孔につる忌避剤が付着している複数の多孔質石からなる多孔質石層、つる忌避剤が含まれてなるアスファルト層及びポリエステル不織布層の順で積層一体化されてなる防つるシートに関するものである。
【0008】
本発明に係る防つるシートは、その表面側が多孔質石層よりなる。多孔質石層は、複数の多孔質石からなり、その質量が300~700g/m2程度である。そして、多孔質石の孔には、つる忌避剤が付着している。多孔質石としては、微細な孔の開いた石であれば任意のものが採用しうるが、特に軽石を用いるのが好ましい。多孔質石の粒径は、2~64mm程度であるのが好ましい。つる忌避剤としては、従来公知のものが用いられるが、特にクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを用いるのが好ましい。
【0009】
多孔質石の孔につる忌避剤を付着させるには、つる忌避剤を含む粘着剤又は接着剤を多孔質石に塗布すればよい。粘着剤又は接着剤としては、従来公知のものを用いることができ、特にアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。つる忌避剤の付着量は任意であるが、多孔質石の質量に対して、1~5質量%であるのが好ましい。
【0010】
多孔質石層の裏面側には、つる忌避剤が含まれてなるアスファルト層が積層されている。アスファルト層の質量は700~2000g/m2程度である。つる忌避剤としては、従来公知のものが用いられ、特にクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを用いるのが好ましい。つる忌避剤の含有量は任意であるが、アスファルトの質量に対して、0.1~1.0質量%であるのが好ましい。アスファルトとしては、従来公知の石油アスファルト又は天然アスファルトを用いることができるが、特に改質アスファルトを用いるのが好ましい。改質アスファルトは多孔質石等との付着性に優れており、多孔質石層とアスファルト層及びアスファルト層とポリエステル不織布層との一体化が強固になるからである。また、改質アスファルトは耐候性に優れているからである。アスファルト層は、ポリエステル不織布に含浸されているのが好ましい。すなわち、アスファルト層は、ポリエステル不織布の内部及び裏面まで浸入しているのが好ましい。これにより、敷設した防つるシートの下面からの雑草等の生育を防止することができる。
【0011】
アスファルト層と一体化されているポリエステル不織布層としては、従来公知のものを用いうるが、ポリエステル長繊維で構成されたスパンボンド不織布を用いるのが好ましい。ポリエステル長繊維は耐候性に優れており、また、引張強度等の機械的強度が高いからである。ポリエステル不織布層の目付は50~300g/m2程度である。
【0012】
ポリエステル不織布層の裏面には粘着剤が塗布されているのが好ましい。粘着剤が塗布されていると、防つるシートを地面に敷設する際にずれにくくなり、作業性が向上する。また、粘着剤面には、合成樹脂製フィルムや離型紙等の離型シートを貼着しておくのが好ましい。防つるシートを運搬する際に、べたつきにくくなり、取扱性が向上する。粘着剤及び離型シートが備えた防つるシートは、離型シートを取り除き、粘着剤面を地面に当接しながら、敷設することになる。
【0013】
本発明に係る防つるシートは、以下の如き製造方法で得ることができる。まず、粘着剤液又は接着剤液につる忌避剤を溶解又は分散させた溶液を、多孔質石に塗布して、その孔につる忌避剤が付着した多孔質石が複数準備する。一方、アスファルトにつる忌避剤を含有せしめた忌避剤含有アスファルトを準備する。また、ポリエステル不織布を準備する。そして、忌避剤含有アスファルトを加熱混合して流動状態とし、ポリエステル不織布表面に塗布すると共に、流動状態となっている忌避剤含有アスファルトの上に複数の多孔質石を載置する。以上の方法で、本発明に係る防つるシートを得ることができる。なお、ポリエステル不織布の裏面に粘着剤を塗布し、さらに粘着剤面に離型シートを貼着してもよいことが前述したとおりである。
【0014】
本発明に係る防つるシートは、つる植物の茎が伸びる恐れのある地面に敷設する。たとえば、山を切り開いて建設した道路は、法面からつる植物の茎が伸び、道路に侵入することがある。したがって、この法面に防つるシートを敷設しておけば、道路につる植物の茎が侵入するのを防止することがてきる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防つるシートは、その表面に、孔につる忌避剤を付着せしめた多孔質石が複数存在している。すなわち、つる忌避剤が孔に付着しているため、雨水等によって、つる忌避剤が流出しにくくなっている。したがって、防つるシートの表面に、つる植物の茎が伸びるのを、長期に亙って防止しうるという効果を奏する。
【実施例】
【0016】
実施例1
クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを含有するアクリル系バインダー液を軽石に塗布し、軽石100質量部に対し、2質量%のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルが付着している多孔質石を準備した。また、改質アスファルト100質量部とクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステル0.6質量部を混合し、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステル含有アスファルトを準備した。さらに、目付200g/m2のポリエステルスパンボンド不織布を準備した。そして、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステル含有アスファルトを加熱して流動状態とし、ポリエステルスパンボンド不織布に1.3kg/m2含浸した。その際に、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステル含有アスファルトの上に、準備した多数の多孔質石を500g/m2載置し、防つるシートを得た。