(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240206BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240206BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240206BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240206BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C09J133/04
C08F220/18
C09J7/30
C09J11/06
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2022189163
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2018237067の分割
【原出願日】2018-12-19
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2017253627
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018158151
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】安永 篤史
(72)【発明者】
【氏名】平田 明理
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/118078(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/148182(WO,A1)
【文献】特開2011-037981(JP,A)
【文献】特開2011-032364(JP,A)
【文献】特開2011-016948(JP,A)
【文献】特開2013-114198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
C08F 220/18
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレートを5~90重量%含有する重合性樹脂組成物及び/又は該重合性樹脂組成物の重合物を含有する接着剤組成物であって、t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレート中のp-trans型異性体の含有量は70%以上を有する接着剤組成物。
【請求項2】
t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレート中のp-trans型異性体の含有量とp-cis型異性体の含有量の合計は90%以上を有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレート中のp-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は2.3以上である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
光重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
熱重合開始剤及び不飽和結合を有する化合物をさらに含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
不飽和結合を有する化合物は、不飽和結合1個を有する単官能モノマー(t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレートを除く)及び/又は不飽和結合2個以上を有する多官能モノマーを含有する請求項4又は5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
不飽和結合を有する化合物は、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマー、イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、オキサゾリン基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボニル基含有(メタ)アクリル系モノマーからなる群より選択されるいずれか一つ以上のモノマーを含有する請求項4~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下である、光学材料に用いられる請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
t-ブチルシクロヘキシ
ルアクリレート中のp-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は3.0以上である、電子材料に用いられる請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物を活性エネルギー線及び/又は熱により重合してなる接着剤層。
【請求項11】
偏光フィルムの両面に請求項10に記載の接着剤層を介して透明フィルムを備える偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度なt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは分岐状のアルキル基と(メタ)アクリレート基で置換されたシクロヘキサンであり、cis型とtrans型の立体異性体が存在し、またo-、m-とp-の位置異性体も存在する。このような置換型シクロヘキサン中の特定異性体の含有量や異性体の混合比が化合物の臭気や耐熱性などの物理的、化学的性質に大きく影響を及ぼすことが知られている(特許文献1)。
【0003】
t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは単官能モノマーとして、インク、粘着剤、接着剤、コーティング剤、塗料、光造形用樹脂、封止材等に広く使用されている(特許文献2~4)。しかし、これらの用途に用いられる際に、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの異なる異性体含有量により、それを配合した樹脂組成物の着色や臭気、皮膚刺激性、各種基材への濡れ性や密着性など基本物性への影響について、未だに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-166659号公報
【文献】特開2009-140599号公報
【文献】特開2017-66368号公報
【文献】特開2017-075251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、着色や臭気、皮膚刺激性が低く、各種基材への濡れ性や密着性に優れ、濡れ性向上剤や密着性向上剤として使用可能な重合性樹脂組成物、該組成物を重合して得られる重合物及び、該組成物と重合物からなる成型品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を行い、trans型異性体を70%以上含有するt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを1重量%以上配合させることにより、着色や臭気、皮膚刺激性が低く、各種基材への濡れ性や密着性に優れる重合性樹脂組成物、該組成物を重合して得られる重合物及び、該組成物と重合物からなる成型品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含有する重合性樹脂組成物であって、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体の含有量は70%以上を有することを特徴とする重合性樹脂組成物、
(2)t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体の含有量とp-cis型異性体の含有量の合計は90%以上を有することを特徴とする前記(1)に記載の重合性樹脂組成物、
(3)t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は2.3以上であることを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載の重合性樹脂組成物、
(4)前記(1)~(3)の何れか一項に記載の重合性樹脂組成物に、光重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(5)前記(4)に記載の組成物を活性エネルギー線照射により重合して得られる重合物、
(6)前記(1)~(3)の何れか一項に記載の重合性樹脂組成物に、熱重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする重合性樹脂組成物、
(7)前記(6)に記載の組成物を熱により重合して得られる重合物、
(8)前記(1)~(7)の組成物または重合物を含有することを特徴とする濡れ性向上剤、
(9)前記(1)~(7)の組成物または重合物を含有することを特徴とする密着性向上剤、
(10)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする粘着剤組成物、
(11)前記(10)に記載の粘着剤組成物であって、かつ、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下であることを特徴とする光学用粘着剤組成物、
(12)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とするコーティング組成物、
(13)前記(12)に記載のコーティング組成物であって、かつ、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下であることを特徴とする光学部材用コーティング組成物、
(14)前記(12)に記載のコーティング組成物であって、かつ、p-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は3.0以上であることを特徴とする、ポリオレフィン基材用コーティング組成物、
(15)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とするインク組成物、
(16)前記(15)に記載のインク組成物であって、かつ、p-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は3.0以上であることを特徴とするインクジェット用インク組成物、
(17)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物、
(18)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする接着剤組成物、
(19)前記(18)に記載の接着剤組成物であって、かつ、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下であることを特徴とする光学用接着剤組成物、
(20)前記(18)に記載の接着剤組成物であって、かつ、p-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は3.0以上であることを特徴とする電子材料用接着剤組成物、
(21)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする封止材組成物、
(22)前記(21)に記載の封止材組成物であって、かつ、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下であることを特徴とする有機EL素子用封止材組成物、
(23)前記(11)、(13)、(16)、(19)と(22)に記載のいずれか一種以上組成物を用いて、光学用フィルム、シートの片面又は両面に塗布し、活性エネルギー線照射或いは熱による硬化又は積層硬化で得られた光学用成形品、
(24)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする加飾フィルム用樹脂組成物、
(25)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とするジェルネイル用樹脂組成物、
(26)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする車両用コーティング組成物、
(27)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする建築物用コーティング組成物、
(28)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする界面活性剤、
(29)前記(4)又は(6)に記載の組成物、及び/又は前記(5)又は(7)に記載の重合物を含有することを特徴とする分散剤、
を提供することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のp-trans型異性体の含有量70%以上を有するt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いた重合性樹脂組成物は、臭気や皮膚刺激性が低いため、作業者が液体薬物やその揮発蒸気に接触することが想定される用途においても安全に使用することができる。また、着色が少なく、各種基材への濡れ性や密着性に優れるため、濡れ性向上剤、密着性向上剤として用いることができる。具体的な用途としては、インク(主にインクジェット、オフセット、スクリーン、フレキソ、水系)、粘着剤、接着剤、コーティング剤、塗料、光造形用樹脂、封止材、分散剤、界面活性剤、加飾コート剤、防曇塗料、電池用セパレータ、歯科材料等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に記載する。
本発明の重合性樹脂組成物の構成成分であるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、シクロヘキサン環にt-ブチル基と(メタ)アクリロイル基の2つの置換基が有するため、cis型、trans型の異性体が発生する。また、2つの置換基の位置が、o-位、m-位、p-位に結合することが可能であり、位置異性体も発生する。さらに、axialとequatorialの立体配座も発生する。これらの異性体においては、立体構造の違いにより、分子内エネルギーや分子間相互作用に差異が発生し、各種物性に影響を及ぼす。
【0010】
本発明の重合性樹脂組成物に含まれるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、p-trans型異性体の含有量が70%以上であることが好ましい。本発明の効果を十分に奏する観点から、75%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、実質的に100%であることが特に好ましい。p-trans型異性体の含有量が70%以上であることによって、着色や臭気、皮膚刺激性、各種基材への濡れ性、密着性に優れたものとなる。
【0011】
本発明の重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%以上であることに加えて、p-trans型異性体の含有量とp-cis型異性体の含有量の合計が90%以上の高純度なt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、本発明の効果をより有効に発揮させるためには95%以上であることが特に好ましい。p-trans型異性体の含有量とp-cis型異性体の含有量の合計が90%以上であることによって、着色や臭気、皮膚刺激性や、基材への濡れ性や密着性の低下要因となる他の不純物混入が抑制され、さらに本発明の各種用途へ好適に使用可能な組成物となるため好ましい。
【0012】
本発明の重合性樹脂組成物は、さらに、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体の含有量とp-cis型異性体の含有量のモル比が2.3以上であることが好ましい。2.3以上であると、重合性樹脂組成物中のt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体の含有量が多いため、着色や臭気、皮膚刺激性の低減効果や、基材への濡れ性や密着性向上効果をより発揮させることができるため特に好ましい。
【0013】
p-trans型異性体の含有量が70%以上であるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを高収率で取得する方法としては、出発原料中の異性体の含有量を調整する方法や、p-cis型異性体とp-trans型異性体を再結晶や蒸留精製などの分離方法で制御する方法などが挙げられる。例えば、エステル交換法によりt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを製造する場合、原料としてt-ブチルシクロヘサノールを使用するが、t-ブチルシクロヘサノールの異性体構成をほぼそのままt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートに反映することができる。また、t-ブチルシクロヘサノールは通常t-ブチルフェノールの水添反応で製造され、水添反応に使用される異なる触媒によってcis型、trans型など異性体の選択的合成が可能である。
【0014】
本発明の重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを1~100重量%含有することができる。また、1~90重量%含有することが好ましく、5~70重量%含有することがさらに好ましい。本発明の重合性樹脂組成物は、各種基材に対する濡れ性や密着性が優れている。これは、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のp-trans型異性体の含有量は70%以上であるためと発明者らは推測している。
【0015】
本発明の重合性樹脂組成物中のt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量が1重量%未満の場合、基材に対する濡れ性や密着性の改善効果が十分に得られない場合がある。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートにさらに光重合開始剤や不飽和結合を有する化合物を添加し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として好適に用いることができる。また、樹脂組成物の液体粘度を調整するため、低粘度の不飽和結合1個を有する単官能モノマーを併用することができ、架橋密度を調整するため、不飽和結合2個以上を有する多官能モノマーを併用することができ、さらに柔軟性改善するため単官能又は多官能オリゴマー、非重合性ポリマー等を併用することができる。これらの併用成分は単独で加えてもよいし、2種類以上組み合わせることもできる。それぞれの配合量は、具体的な用途に応じて、適意に調整すれば良いが、樹脂組成物全量中では、単官能モノマーが1~70重量%、多官能モノマーが1~50重量%、オリゴマーは1~50重量%、ポリマーは0.1~10重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物に用いられる多官能モノマー、オリゴマーとしては、不飽和結合2個以上を有する多官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリルアミドが挙げられ、また、主鎖構造からウレタン系、エポキシ系とアクリル系等に分けられる。
【0018】
前記の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アクリレートエステル(ジオキサングリコールジアクリレート)、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。また、市販品で入手容易の観点から、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばSARTOMER社製、商品名CN2203、CN2270、東亜合成社製、商品名M-6100、M-8060、ウレタンアクリレートとしては、例えば日本合成化学社製、商品名UV-3200B、UV-3000B、UV―6640B、UV-3700B、UV-3310B、UV-7000Bや新中村化学工業社製、商品名U-4HA、U-200PA、ダイセル・サイテック社製、商品名EBECRYL245、EBECRYL1259、EBECRYL8210、EBECRYL284、EBECRYL8402、SARTOMER社製、商品名CN944、CN969、CN9002、CN9029、根上工業社製、商品名UN1255、UN-5507、共栄社化学社製、商品名AH-600、UA-306I等を用いることができ、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ダイセル・サイテック社製、商品名EBECRYL1259、EBECRYL605、EBECRYL1606やSARTOMER社製、商品名CN110、CN120、CN153等を使用できる。さらに、樹脂組成物の粘度や取扱いの容易さ等の観点から、ウレタンアクリレートUV-6640BまたはU-200PAがより好ましい。
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記の多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアリル(メタ)アクリルアミド、ウレタンジ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物に用いられる単官能モノマーは、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミドや不飽和ニトリルモノマー、スチレン、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、ビニルエステル、オレフィン等分子鎖中に反応性二重結合を持つラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0021】
前記単官能(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
前記単官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、N-アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシ(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N、N-ジヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)-N-アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-(ジアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)アミノ)アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルフォリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。特に、高純度の工業品で入手容易の観点から、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルモルフォリン、ダイアセトンアクリルアミド、N-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドがより好ましい。
これらの単官能モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物に用いられるオリゴマーやポリマーは、アクリル、エステル、エーテル、ウレタン、アミド等の骨格を有する直鎖状及び/又は分岐状のオリゴマー、ポリマーが挙げられ、具体的には、重量平均分子量が10,000未満の、前記の多官能(メタ)アクリレート及び/又は多官能(メタ)アクリルアミドからなるオリゴマー、及び/又は、重量平均分子量が10,000以上である反応性基を有する或いは有しないポリマーが挙げられる。
【0024】
前記の重量平均分子量が10,000以上の反応性基を有するポリマー(硬化性樹脂)としては、例えば、二官能ポリウレタン(メタ)アクリレート、多官能ポリウレタン(メタ)アクリレート、二官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、二官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、二官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、二官能ポリアミド(メタ)アクリレート、多官能ポリアミド(メタ)アクリレート、二官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリレート、多官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリレート、二官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリルアミド、多官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリルアミド、二官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリレート、多官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリレート、二官能ポリスチレン(メタ)アクリレート、多官能ポリスチレン(メタ)アクリレート、二官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリレート、多官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリレート、二官能エポキシアクリレート(ビスフェノールA型)、多官能エポキシアクリレート(ビスフェノールA型)等が挙げられる。また、これらの硬化性樹は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
前記の重量平均分子量が10,000以上の反応性基を有しないポリマー(熱可塑性樹脂)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、ポリメチルメタクリレートやアクリロニトリルとスチレンの共重合物等のポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材に塗布または成型した後、活性エネルギー線照射により硬化し、粘着シート、3次元成形方法で得られる立体造形物、ハードコーティング膜、防曇膜、及び粘着剤、接着剤、封止材などを有する成型品を製造することができる。
【0027】
前記の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、電子線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。中でも、活性エネルギー線の発生装置、硬化速度及び安全性のバランスから紫外線を使用することが好ましい。又、紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線照射は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気又は酸素濃度を低下させた雰囲気下で行うことが好ましいが、本発明の樹脂組成物にはN-置換(メタ)アクリルアミドを有するため、硬化性が良く、通常の空気雰囲気でも、薄膜も厚膜も、十分に硬化させることができる。活性エネルギー線の照射温度は、好ましくは10~200℃であり、照射時間は、好ましくは1秒~60分である。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際には、必要に応じて光重合開始剤を添加しておくことができるが、電子線を用いる場合には特に必要はない。光重合開始剤はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。市販品としてはBASF社製、商品名Darocur1116、Darocur 1173、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 754、Irgacure 819、Irgacure 907、Irgacure 1300、Irgacure 1800、Irgacure 1870、Irgacure 2959、Darocur 4265、Darocur TPO、UCB社製、商品名ユベクリルP36等を用いることができる。これらの光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
これらの光重合開始剤の使用量は特に制限されていないが、一般に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に対して、0.1~10重量%、中でも1~5重量%が添加されることが好ましい。0.1重量%未満だと十分な硬化性が得られず、10重量%を越えると硬化物の強度など性能が低下してしまう可能性がある。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートにさらに熱重合開始剤や不飽和結合を有する化合物を添加し、重合性樹脂組成物として好適に用いることができる。ここでいう不飽和結合を有する化合物は、前述の各種単官能、多官能のモノマー、オリゴマーのことであり、また、物性調整しやすい熱可塑性の重合物を得るため、不飽和結合1個を有する単官能モノマーが好ましく、さらに得られた重合物を粘着剤、接着剤として用いる場合、凝集力を高めるために架橋点を導入できるモノマーが特に好ましい。前述の単官能モノマーは単独で加えてもよいし、2種類以上組み合わせることもできる。これらの配合量は、具体的な用途に応じて、任意に調整すれば良いが、樹脂組成物全量中では、合計で10~99重量%であることが好ましい。
【0032】
前記の架橋点を導入できるモノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマー、イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、オキサゾリン基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボニル基含有(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。
【0033】
前記の水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド類、その他、2-アクリロイルオキシエチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの1級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの3級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを挙げることができる。中でもヒドロキシアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0034】
前記のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸、などが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0035】
前記アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0036】
前記アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0038】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドグリシジルエーテル、N-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
前記オキサゾリン基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリンなど等が挙げられる。また、高反応性を有する2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリンが好ましく、さらに2-ビニル-2-オキサゾリンが最も好ましい。これら官能基含有(メタ)アクリル系モノマーは、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記カルボニル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0041】
熱重合性樹脂組成物の熱重合は、ラジカル重合開始剤存在下で公知の方法によって行うことができる。例えば、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の方法を用いられる。溶液重合は有機溶媒中の溶液重合法を採用する場合、重合して得られる重合物を溶解する溶媒であれば特に制限は無く、例えば、重合溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ヒドロキシエチルなどのエステル類、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。特に、成形品を形成する際に除去しやすい点から低沸点の酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0042】
また、熱ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物系触媒や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系触媒、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系触媒等を用いることができる。重合開始剤の使用量は、通常重合性単量体成分総量に対して0.001~10重量%程度である。さらに、連鎖移動剤による分子量の調整など通常のラジカル重合技術が適用される。
【0043】
本発明の重合物の分子量は重量平均で1千~300万であり、また5千~250万であることが好ましく、さらに1万~200万であることが特に好ましい。重量平均分子量が1千~300万の範囲内であれば、溶媒で溶解した場合の溶液粘度が高過ぎなく、低過ぎないため、好適に取り扱うことができ、塗膜やシート等の加工精度が高い。このような重合物が30%になるように酢酸エチルで希釈した場合、通常、溶液粘度は10~10万Pa・s/25℃であり、より好ましくは500~1万mPa・s/25℃、特に好ましくは2000~5000mPa・s/25℃である。なお、粘度の測定は、JIS K5600-2-3(1999)のコーンプレート粘度計法に準じて行うことができる。
【0044】
本発明の重合物は、p-trans型異性体の含有量が70%以上を有するt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを構成成分として含有するため、十分な疎水性や親油性、各種基材に対する濡れ性、密着性を有する。このため、そのまま用いることができるが、さらに架橋剤により架橋されることで、より耐熱性、耐久性に優れたものを得ることができる。また、架橋する方法としては、(1)架橋剤を用いて架橋する方法、(2)不飽和基含有化合物及び重合開始剤を含有させ、活性エネルギー線及び/または熱による架橋する方法などが挙げられる。これらの架橋方法は一方を用いてもよいし、両方を併用してもよい。
【0045】
前記(1)架橋剤を用いて架橋する方法としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボキシル基化合物など、前記(メタ)アクリル系樹脂に含まれる官能基と反応し得る官能基を有する化合物を添加し反応させる方法が挙げられる。
【0046】
このうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。より具体的には、イソシアネート化合物としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHX)などのイソシアネート付加物などが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
エポキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(三菱瓦斯化学社製、商品名:TETRAD-X)や1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名:TETRAD-C)などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
アジリジン化合物としては、例えば、市販品としての商品名:HDU、商品名:TAZM、商品名:TAZO(以上、相互薬工社製)などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
カルボキシル基化合物として、L-乳酸、D-乳酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボキシル基、2,6-ナフタレンジカルボキシル基、ジフェニルジカルボキシル基、ジフェノキシエタンジカルボキシル基、ジフェニルエーテルジカルボキシル基、ジフェニルスルホンジカルボキシル基などの芳香族ジカルボキシル基、1,3-シクロペンタンジカルボキシル基、1,3-シクロヘキサンジカルボキシル基、1,4-シクロヘキサンジカルボキシル基などの脂環式ジカルボキシル基、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボキシル基、及びそれらのエステル形成性誘導体などから誘導されるジカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
これらの架橋剤の使用量は、架橋すべき前記重合物中に含まれる官能基の量や分子量とのバランスにより、さらには、用途目的により適宜選択できるが、通常は、重合物100重量%に対して、0.1~15重量%含有されていることが好ましく、0.5~10重量%含有されていることがより好ましい。含有量が0.1重量%よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、粘着剤等の成形品の凝集力が不足して十分な耐熱性が得られない場合があり、また、糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が15重量%を超える場合、架橋後の樹脂組成物の凝集力が大きく、柔軟性及び弾力が低下し、被着体へのなじみ性(濡れ性)が不十分となる傾向がある。
【0051】
さらに、前記架橋剤とともに、架橋を促進するために酸触媒、例えば、パラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウムなどの架橋促進剤を併用することも可能であり、前記架橋促進剤の添加量は架橋剤に対して10~50重量%であることが好ましい。
【0052】
前記(2)不飽和基含有化合物及び重合開始剤を含有させ、活性エネルギー線及び/または熱により架橋する方法としては、架橋剤として活性エネルギー線及び/または熱反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーと重合開始剤を添加し、活性エネルギー線及び/または熱で架橋させる方法が挙げられる。
【0053】
前記活性エネルギー線及び/または熱反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしてはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基のような活性エネルギー線及び/または熱の照射で架橋処理(硬化)し得る1種または2種以上の活性エネルギー線及び/または熱反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマー成分が用いられる。なお一般的には活性エネルギー線及び/または熱反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。多官能モノマーは2種以上を併用することも可能である。
【0054】
前記多官能モノマーは、2官能モノマー、3官能以上のモノマーを用いることができ、具体例としては、2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステルなどのモノマーが挙げられる。
【0055】
前記3官能以上のモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
前記多官能モノマーの使用量は、架橋すべき重合物に対して0.05~50重量%で配合するのが好ましく、柔軟性、接着性(密着性)の点から、より好ましくは、0.1~30重量%である。含有量が0.05重量%よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、粘着剤や接着剤に用いた場合の凝集力が不足し、十分な耐熱性が得られない場合がある。一方、含有量が50重量%を超える場合、例えば、ポリマーの凝集力が高くなりすぎ、柔軟性及び粘着力が低下し、被着体への濡れが不十分となって、剥離の原因となる傾向がある。
【0057】
本発明の樹脂組成物及びそれから作製される成形品の特性を阻害しない範囲で、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤等の他の任意成分を併用してもよい。また、本発明の樹脂組成物硬化(重合や架橋など)システムとして、ラジカル系単独でも、ラジカルとカチオンの混合系でも、ラジカルとアニオンの混合系でも、さらにUV、EBなど活性エネルギー線硬化と熱硬化の混合系でも、好適に使用することができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物を紙、布、不織布、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテートセルロース、トリアセテートセルロース、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチック及び金属等の基材の表面や間に塗布、硬化させることにより、高性能のコーティング層やインク層、粘着剤層、封止材層又は接着剤層を得ることができる。特に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は高透明性のウレタンオリゴマーを有するため、光学用粘着剤、光学用接着剤や封止材、光学用フィルムのコート材等光学用樹脂組成物として好適に用いることができる。又、これらの樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースロール法、スクリーン印刷法、バーコーター法等通常の塗膜形成法が用いられることができる。又、基材間に塗布する方法としては、ラミネート法、ロールツーロール法等が挙げられる。
【0059】
本発明の重合性樹脂組成物やこれを硬化した重合物を特に光学用材料、例えば、光学用粘着剤、コーティング材、接着剤、有機EL用封止材等に用いる場合は、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート中のm-trans型異性体の含有量は1.0%以下とすることが好ましい。m-trans型異性体の含有量を1.0%以下とすることで、m-trans型異性体由来の不純物(原料、副生成物など)の含有量も低減されるため、本発明の重合物が耐黄変性の向上などの光学特性に優れたものとなり、特に好適である。
【0060】
本発明の重合性樹脂組成物やこれを硬化した重合物を、特にポリオレフィン用コーティングやインクジェット用インク、電子材料用接着剤として用いる場合は、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートのp-trans型異性体とp-cis型異性体の含有量のモル比は3.0以上であることが特に好ましい。モル比を3.0以上とすることで嵩高いt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートをより密に配列することができ、基材への濡れ性や密着性、接着性等の界面物性が優れたものとなるため、特に好適である。
【実施例】
【0061】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例に記載する各構成成分の略称は以下の通りである。
TBCHA:t-ブチルシクロヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
STA:ステアリルアクリレート
NVC:N-ビニルカプロラクタム
M-102:テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM-102)
「DMAA」:N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標) DMAA(登録商標))
「DEAA」:N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標) DEAA(登録商標))
「HEAA」:N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標) HEAA(登録商標))
「ACMO」:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標) HEAA(登録商標))
「NIPAM」:N-イソプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標) NIPAM(登録商標))
DAAM:ダイアセトンアクリルアミド(KJケミカルズ(株)製、Kohshylmer(登録商標))
GA:グリシジルアクリレート
AAc:アクリル酸
UV-3000B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製)
UV-6640B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製)
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
Darocur1173:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
Irgacure184:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
IrgacureTPO:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル、熱重合開始剤
PE:ポリエチレン
PP:ポリプロピレン
PET:ポリエチレンテレフタレート(未処理品)
PC:ポリカーボネート
PMMA:ポリメチルメタクリレート
ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂
COP:シクロオレフィンポリマー
TAC:トリアセチルセルロース
PVC:ポリ塩化ビニル
LCP:液晶ポリマー
PEEK:ポリエーテルエーテルケトン
SPCC:冷間圧延鋼板
SUS:304ステンレス鋼
【0062】
実施例A-1、2と比較例A-3、4
TBCHAのp-trans型異性体含有量と色相、臭気、皮膚刺激性、濡れ性、密着性との関係を表1に示す。各種評価は以下の測定方法により行った。
(色相)
透過色専用測定器(日本電色工業(株)社製 TZ6000)により、TBCHAモノマー原液の状態で、APHAを測定した。APHAは、数値が高いほど色が濃いことを示す。
(臭気)
TBCHAモノマー原液を用いて、作業員5名により臭いを嗅いで官能的に評価し、平均値を取った。
(皮膚刺激性)
GLP適合設備にて、OECDガイドラインNo.404に準じて評価した。
(濡れ性の評価)
TBCHA 100重量部に光重合開始剤Darocur1173を5重量部加え、混合溶解させ、紫外線硬化可能な評価液を得た。得られた評価液を表1記載の各種基材にバーコーター(RDS12)で塗工し、塗工液のハジキ具合を目視にて観察した。
〇:ハジキ無し
×:ハジキあり
(密着性の評価)
紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)社製 インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプM04-L41、700mW/cm2、3000mJ/cm2)を使用し、上記の各種基材に塗工した評価液を完全に硬化させた。金属基材も特に脱脂等を行わずにそのまま塗工し、硬化させた。得られた硬化膜を碁盤目試験法により1mm角のます目を100個作成し、セロハンテープを貼り付け、一気に剥がした時に基材側に硬化膜が残ったマス目の数を数えて評価した。残ったマス目数が多いほど密着性が高いことを示す。
◎:残ったマス目数100
〇:残ったマス目数90以上100未満
△:残ったマス目数50以上90未満
×:残ったマス目数50未満
【0063】
【0064】
表1に示すとおり、p-trans型異性体の含有量が70%未満である場合、色相や臭気、皮膚刺激性が強く、多くの基材に対する濡れ性や密着性が不十分であった(比較例A-5、A-6)のに対し、本発明に用いられるTBCHAは、70%以上のp-trans型異性体を含有するため、TBCHA及びそれを含有する重合性樹脂組成物の色相、臭気、皮膚刺激性がともに低く、また各種汎用基材に対する濡れ性と密着性がともに良好であった(実施例A-1~4)。特に密着性については、難密着基材であるPE、ポリイミド、PEEKに対して、p-trans型異性体の含有量が70%以上有するTBCHAも十分に満足できる密着性を示さなかったが、p-trans型異性体の含有量が91%以上の実施例A-2、A-4において改善されることが認められた。従って、p-trans型異性体の含有量を70%以上有するTBCHAを含有する本発明の樹脂組成物は、各種汎用基材に対する濡れ性と密着性に優れるため、粘着剤、接着剤、コーティング剤、インク等に好適に用いることができる。特に、コーティング剤に関してはSUSやSPCCなどの金属片や木材に対しても優れた密着性を示したことから、車両用コーティング剤、建築物用コーティング剤としても好適に用いることができる。
【0065】
実施例A-7~10と比較例A-11~13
紫外線硬化性モノマーとしてACMOを用いて、p-trans型異性体含有量の異なるTBCHAと混合し、実施例A-1と同様に100重量部の混合液に対して開始剤を5重量部加え、各種基材に対する濡れ性、密着性の評価を行った。各評価の結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
表2に示すとおり、ACMO単独の評価である比較例A-11では、多くの基材に濡れ性や密着性が低いのに対して、p-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを添加した実施例A-7~10では、濡れ性、密着性ともに改善された。一方、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAをACMO中に添加しても、依然として多くの基材に対する濡れ性や密着性が不十分であった(比較例A-12、A-13)。従って、表2に示すデータから明らかなように、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるTBCHAを含有する本発明の樹脂組成物が、汎用の紫外線硬化性モノマー等に対する濡れ性向上効果、密着性向上効果を有しており、濡れ性向上剤や密着性向上剤として好適に用いることができる。特に、コーティング剤に関しては、SUSやSPCCなどの金属片や木材に対しても優れた密着性を示したことから、車両用コーティング剤、建築物用コーティング剤としても好適に用いることができる。
【0068】
(重合性樹脂組成物X-1~X-61の調製)
表3-1~表3-6に示す比例(重量部)で、TBCHA、単官能モノマー、オリゴマー、多官能モノマー、重合開始剤を混合して溶解させ、重合性樹脂組成物を調製した。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
実施例B-1~5と比較例B-6、7
粘着剤組成物として重合性樹脂組成物X-1~5とX-6~7を用い、下記方法にて、紫外線硬化型粘着シートの作製及び評価を行った。評価結果を表4に示す。
(紫外線硬化型粘着シートの作製方法)
厚さ100μmのPETフィルム表面に、膜厚が25μmになるように粘着剤組成物を塗布し、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)社製 インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプM04-L41、700mW/cm2、2000mJ/cm2)を使用して硬化させた。その後、温度23℃、相対湿度50%の環境に1日置き、試験用の紫外線硬化型粘着シートを作製した。
(透明性)
ヘイズメーター(日本電色工業(株)社製 NDH-2000)により紫外線硬化型粘着シートの透過率を測定し、透明性を下記通り4段階に分けて評価した。
◎:透過率90%以上
○:透過率85%以上、90%未満
△:透過率50%以上、85%未満
×:透過率50%未満
(粘着力)
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、作製した紫外線硬化型粘着シートを用いて被着体として表4に記載の各種基材の表面に貼り付け、手動式ローラー(45mm幅、重量2Kg)で2往復圧着し、同雰囲気下で30分間放置し、粘着力評価用の積層体を得た。得られた積層体を用いて、引っ張り試験機(ORIENTEC社製 テンシロンRTA-100)により、剥離速度300mm/分にて180°剥離強度(N/25mm)を測定し、粘着力(剥離強度)を下記通り4段階に分けて評価した。なお、本評価においては、測定バラツキの影響を少なくするため、測定を各5回実施し、最大値と最小値を除外した3回分の測定値を平均した値を粘着力として用いた。
◎:30N/25mm以上
○:15N/25mm以上、30N/25mm未満
△:8N/25mm以上、15N/25mm未満
×:8N/25mm未満
(耐汚染性)
上記の粘着力測定の試験と同様に紫外線硬化型粘着シートを被着体に加圧着させ、80℃、24時間放置した後、手動で紫外線硬化型粘着シートを剥がして、被着体表面の汚染状態(粘着剤の残り状態)を目視によって観察した。
◎:汚染なし
○:ごく僅かに汚染がある
△:僅かに汚染がある
×:糊(粘着剤)残りがある
(耐湿熱黄変性)
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間静置した紫外線硬化型粘着シートを用いて、透過スペクトルを透過色測定専用機(日本電色工業(株)製 TZ-6000)により測定し、初期b値とした。その後、紫外線硬化型粘着シートを85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿機に500時間を静置し、耐湿熱黄変性の加速試験を行った。試験後の粘着シートを同様に温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間静置し、透過色測定し、湿熱後b値とした。また、湿熱後b値と初期b値の差は変化値Δbとした(Δb=湿熱後b値-初期b値)。耐湿熱黄変性は下記通り4段階分けて評価した。
◎:初期b値、湿熱後b値は共に0.2以下、かつ、Δbは0.1以下である
○:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に0.2を超えるが、共に0.5以下であり、かつ、Δbは0.2以下である
△:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に0.5を超えるが、共に1.0以下であり、かつ、Δbは0.3以下である
×:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に1.0を超え、或いは、Δbは0.3を超える
(耐光黄変性)
上記の耐湿熱黄変性評価と同様に、耐光黄変性の加速試験を行い、試験前後のb値とそれらの差であるΔbを測定、算出した。耐光黄変性の加速試験は紫外線フェードメーター(スガ試験機(株)社製 U48)を用いて、ブラックパネル温度を63℃に設定し、500W/m2の条件で168時間照射を行った。耐湿熱黄変性と同様に4段階に分けて評価した。
【0076】
【0077】
表4に示すとおり、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性において、p-trans型異性体を70%未満有するTBCHAから得られた紫外線硬化型粘着シート(比較例B-6、7)と比較して、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAから得られた本発明の粘着シート(実施例B-1~5)の方が、いずれの評価試験も良好な結果を得た。また、実施例B-5に示すように、p-trans型異性体含有量が多いTBCHA中を用いると、基材への粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性がさらに優れたものとなる。従って、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAを含有する本発明の紫外線硬化型粘着剤組成物は粘着剤、感圧粘着剤、保護用粘着剤、再剥離用粘着剤、光学用粘着剤等に好適に用いることができる。また、粘着シートの性状からp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物は光学用成型品としても好適に用いることができる。
【0078】
実施例B-8
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置内に、酢酸エチル200重量部と前記重合性樹脂組成物X-8を100重量部加え、さらにAIBN 0.2重量部を加えて撹拌しながら窒素ガスを導入して装置内の空気を窒素に置換した。その後、還流温度まで昇温し、窒素を通しながら7時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを添加して、固形分30%の重合物溶液(B-8)を得た。また、重合物溶液から30重量部を取り出し、溶液中の揮発成分を完全に除去することにより重合物を取得した。その後、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して、濃度0.5重量%の重合物溶液を調製し、一晩静置した。重合物のTHF溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い(島津製作所製Prominence GPCシステム、Shodex KF-806Lカラム、溶離液THF)、ポリスチレン換算値により、重合物の重量平均分子量(Mw)が29万であることを算出した。
【0079】
実施例B-9~11と比較例B-12、13
重合性樹脂組成物X-9~13に変更した以外は、実施例B-8と同様に重合を行い、固形分30%の重合物溶液(実施例B-9~11と比較例B-12、13)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)を測定し、結果を表5に纏めた。
得られたB-9~11とB-12、13の重合物溶液を用いて、下記方法によりアクリル系粘着シートの作製及び評価を行った。
(アクリル系粘着剤の作製方法)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるよう重合物溶液B-8~13をそれぞれ塗布し、80℃で2分間乾燥させて、粘着剤層を形成した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の環境に1日置き、試験用アクリル系粘着シートを得た。
上記と同様に、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性を評価し、結果を表5に纏めた。
【0080】
【0081】
表5に示すとおり、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性において、p-trans型異性体を70%未満有するTBCHAから得られたアクリル系粘着シート(比較例B-12、13)と比較して、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAから得られた本発明の粘着シート(実施例B-8~11)の方が、いずれの評価試験も良好な結果を得た。このように、上記した紫外線硬化型の粘着剤だけでなく、溶液中で重合させたアクリル重合物としても、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAを使用することにより密着性が改善され、耐汚染性や耐湿熱黄変性、耐光黄変性に優れた粘着剤が得られ、感圧粘着剤、保護用粘着剤、再剥離用粘着剤、光学用粘着剤等に好適に用いることができる。また、粘着シートの性状からp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物は光学用成型品としても好適に用いることができる。
【0082】
実施例B-14~16と比較例B-17、18
重合性樹脂組成物X-14~18に変更した以外は、実施例B-8と同様に重合を行い、固形分30%の重合物溶液(実施例B-14~16と比較例B-17、18)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)を測定し、結果を表6に纏めた。
得られた各重合物溶液100gを量り取って、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の50%酢酸エチルの溶液3gを添加し、均一に混合した後、乾燥後の厚みが25μmとなるようにPETフィルムに塗布し、80℃で2分間乾燥させて、さらに40℃の恒温槽で3日間エージングさせた後、温度23℃、相対湿度50%の環境に1日置き、試験用ウレタン系粘着シートを得た。
上記と同様に、ウレタン系粘着シートを用いて、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性を評価し、結果を表6に纏めた。
【0083】
【0084】
表6に示すとおり、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性において、p-trans型異性体を70%未満有するTBCHAから得られたウレタン系粘着シート(比較例B-17、18)と比較して、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAから得られた本発明の粘着シート(実施例B-14~16)の方が、いずれの評価試験も良好な結果を得た。このように、ウレタン系粘着シートにおいてもp-trans型異性体の含有量が70%以上であるTBCHAを使用すると、粘着剤として優れた特性が得られることが示された。
【0085】
実施例B-19~21と比較例B-22、23
重合性樹脂組成物X-19~23に変更した以外は、実施例B-8と同様に重合を行い、固形分30%の重合物溶液(実施例B-19~21と比較例B-22、23)を得た。得られた重合物溶液の重合物の重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表7に示す。得られた各重合物溶液100gを量り取って、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物の50%酢酸エチルの溶液3gを添加し、均一に混合した後、乾燥後の厚みが25μmとなるようにPETフィルムに塗布し、80℃で2分間乾燥させて、さらに80℃で30分間加熱して架橋させた後、温度23℃、相対湿度50%の環境に1日置き、試験用エポキシ系粘着シートを得た。得られたエポキシ系粘着シートを用いて、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性を評価した。結果を表7に示す。
【0086】
【0087】
表7に示すとおり、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性において、p-trans型異性体を70%未満有するTBCHAから得られたエポキシ系粘着シート(比較例B-22、23)と比較して、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAから得られた本発明の粘着シート(実施例B-19~21)の方が、いずれの評価試験も良好な結果を得た。このようにエポキシ系粘着シートおいても、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるTBCHAを使用すると、粘着剤として優れた特性が得られることが示された。
【0088】
実施例B-24
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置内に、水を150重量部と重合性樹脂組成物X-22を100重量部、AIBN 0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0重量部を加えて撹拌しながら窒素ガスを導入して装置内の空気を窒素に置換した後、還流温度まで昇温し、窒素を通しながら8時間反応させた。反応終了後、水を添加して、固形分30%の水系エマルジョン重合物溶液(実施例B-22)を得た。
また、前記重合物溶液から30重量部を取り出し、溶液中の揮発成分を完全に除去することにより重合物を取得した。その後、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して、濃度0.5重量%の重合物溶液を調製し、一晩静置した。重合物のTHF溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い(島津製作所製Prominence GPCシステム、Shodex KF-806Lカラム、溶離液THF)、ポリスチレン換算値により、重合物の重量平均分子量(Mw)が20万であることを算出した。
【0089】
実施例B-25、26と比較例B-27、28
重合性樹脂組成物X-25~28に変更した以外は、実施例B-24と同様に重合を行い、固形分30%の重合物溶液(実施例B-25、26と比較例B-27、28)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)を測定し、結果を表8に纏めた。
得られた実施例B-24~26と比較例B-27、28の重合物溶液を用いて、下記方法によりエマルジョン型粘着シートの作製及び評価を行った。
(エマルジョン型粘着シートの作製方法)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムに、乾燥後の厚みが25μmとなるように重合物溶液B-24~28をそれぞれ塗布し、90℃で2分間乾燥させて、粘着剤層を形成した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の環境に1日置き、試験用エマルジョン型粘着シートを得た。
上記同様に、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性を評価し、結果を表8に纏めた。
【0090】
【0091】
表8に示すとおり、透明性、粘着力、耐汚染性、耐湿熱黄変性、耐光黄変性において、p-trans型異性体を70%未満有するTBCHAから得られたエマルジョン型粘着シート(比較例B-27、28)と比較して、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAから得られた本発明の粘着シート(実施例B-24~26)の方が、いずれの評価試験も良好な結果を得た。このようにエマルジョン型粘着シートおいても、p-trans型異性体の含有量が70%以上であるTBCHAを使用すると、粘着剤として優れた特性が得られることが示された。
【0092】
実施例B-29~31と比較例B-32、33
重合性樹脂組成物X-29~33に変更した以外は、実施例B-24と同様にして重合を行い、固形分30%の重合物溶液(実施例B-29~31と比較例B-32、33)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)を測定し、結果を表9に纏めた。
得られたB-29~33の重合物溶液を用いて下記方法により密着性の評価を行った。
(密着性の評価)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムに、膜厚25μmになるように重合物溶液B-29~33をそれぞれ塗布し、90℃で2分間乾燥させて、塗膜を形成した。得られた塗膜を碁盤目試験法により1mm角のます目を100個作成し、セロハンテープを貼り付け、一気に剥がした時に基材側に硬化膜が残ったマス目の数を数えて評価した。
◎:残ったマス目数100
〇:残ったマス目数90以上100未満
△:残ったマス目数50以上90未満
×:残ったマス目数50未満
【0093】
【0094】
表9に示すとおり、p-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した本発明の重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物と比較して、いずれの基材に対しても良好な密着性を示した(実施例B-29~31)。本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAは多様な基材への密着性に優れるため、インクやコーティング剤として好適に用いることができる。
【0095】
実施例B-34-1、34-2、B-35-1、35-2、36と比較例B-37-1、37-2、B-38-1、38-2
重合性樹脂組成物X-34~38を用い、表10に示す組成比に顔料と顔料分散剤を加えて攪拌し、インク組成物を調製した。また、調製したインク組成物を用いて、インクジェット印刷を行い、得られた印刷物の物性評価を行った。なお、クリアインク組成物においては顔料と顔料分散剤を配合せず、ブラックインク組成物は顔料ピグネントブラック7を6重量部、顔料分散剤アジスパーPB821を4重量部配合したものと配合してないものそれぞれ評価を行った。評価の結果を表10に纏めた。
(粘度)
インク組成物の粘度をJIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計(東機産業(株)社製 RE550型粘度計)により測定した。インクジェット式印刷用のインク組成物として、粘度は下記通り4段階分けて評価した。
◎:5~100mPa・s未満
○:100~500mPa・s未満
△:500~2000mPa・ s未満
×:2000mPa・ s以上
(顔料分散性)
調製したインク組成物を用いて、調製直後及び2ヶ月静置後の顔料の凝集や沈殿状態を目視により観察し、顔料分散性は下記通り4段階分けて評価した。
◎:調製直後も2ヶ月静置後も、顔料の凝集や沈殿は全く認められなかった。
〇:調製直後には全く認められなかったが、2ヶ月静置後、僅かに顔料の沈殿が認められた。
△:調製直後には僅か、2ヶ月静置後には顔料の凝集や沈殿が明瞭に認められた。
×:調製直後にも顔料の凝集や沈殿が明瞭に認められた。
(紫外線照射による印刷物の作製)
得られたインク組成物を厚さ100μmのPETフィルムにバーコーター(RDS12)にて塗布し(乾燥後膜厚10μm)、紫外線照射(アイグラフィックス(株)社製インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタハライドランプM04-L41)により硬化させ、印刷物を作製した。
(硬化性)
上記方法にて印刷物を作成する際、インク組成物が完全硬化(べたつかない状態)するまでの積算光量を測定し、硬化性を評価した。
◎:1000mJ/cm2で完全硬化
○:1000~2000mJ/cm2で完全硬化
△:2000~5000mJ/cm2で完全硬化
×:完全硬化までに5000mJ/cm2以上が必要
(表面乾燥性)
上記方法にて作製した印刷物を、室温23℃、相対湿度50%の環境に5分間静置し、印刷面に上質紙を重ね、荷重1kg/cm2の負荷を1分間かけ、紙へのインクの転写程度を評価した。
◎:インクが乾燥し、紙への転写が全くなかった
○:インクが乾燥し、紙への転写がわずかにあった
△:インクがほぼ乾燥し、紙への転写があった
×:インクが殆ど乾燥せず、紙への転写が多かった
(密着性の評価)
得られたインク組成物を各種基材に塗工し、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)社製インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプM04-L41、700mW/cm2、3000mJ/cm2)を使用し、完全に硬化させた。得られた硬化膜を碁盤目試験法により1mm角のます目を100個作成しセロハンテープを貼り付け、一気に剥がした時に基材側に硬化膜が残ったマス目の数を数えて評価した。
◎:残ったマス目数100
〇:残ったマス目数90以上100未満
△:残ったマス目数50以上90未満
×:残ったマス目数50未満
(インクジェット印刷と印刷適性評価)
上記で作製したインク組成物を市販インクジェットプリンター(富士フイルム(株)社製 LuxelJet U V350GTW)に充填し、コート紙を用いて、ベタ画像を印刷し、インクの印刷適正を以下の方法にて評価した。
(吐出安定性)
得られた印刷物の印刷状態を目視により評価した。
◎:ノズル抜けなく、良好に印刷されている
〇:わずかにノズル抜けあり
△:広い範囲にてノズル抜けがあり
×:不吐出がある
(鮮明度)
顔料を配合したインク組成物から得られた印刷物の画像鮮明度を目視で観察した。
◎:インクにじみが全く見られなく、画像が鮮明であった
○:インクにじみが殆どなく、画像が良好であった
△:インクにじみが若干見られた
×:インクにじみが著しくみられた
(耐熱黄変性)
得られたクリアインク組成物を用いて、サブストレート基板(#125-E20)に膜厚10μmとなるようにバーコーター(RDS12)で塗布し、上記と同様にメタルハライドランプで硬化させた。得られた塗膜の色相をSpcetrolino(GretagMacbeth社製)により測定し、60℃に保持した恒温槽に1週間放置した。その後、塗膜の色相を再度測定し、加熱前後の色相値変化(ΔE=加熱後色相-加熱前色相)により耐黄変性を評価した。
◎:0<=ΔE<=0.2
〇:0.2<ΔE<=0.5
△:0.5<ΔE<=1.0
×:1.0<ΔE
【0096】
【0097】
表10に示すとおり、p-trans型異性体を70%以上有するTBHCHAから得られた本発明のインク組成物は、いずれも、インクジェットインクとして良好な粘度を有し、顔料分散性、硬化性、各種基材に対する密着性、耐熱黄変性に優れ、また、得られた印刷物は優れた吐出安定性や表面乾燥性、鮮明度を示した。特に、硬化性や表面乾燥性について、p-trans型異性体含有量の上昇につれて更なる向上が確認され、TBCHAのp-trans型異性体の含有量が多い程優れる傾向が確認された(実施例B-35-1)。また、インク組成物の顔料分散性は、分散剤を添加しない場合(実施例B-36)においても、添加した場合(実施例B-34-2、35-2)と同様に良好であった。このことから、p-trans型異性体を70%以上有するTBCHAは顔料に対する分散性向上の効果を有し、分散性向上剤としての効果も有することが示された。
【0098】
実施例B-39~41と比較例B-42、43
重合性樹脂組成物X-39~43を用い、下記方法にて、光造形物の試験片作製を行い、硬度、強度および伸度を測定した。評価結果を表11に示す。
(試験片の作製)
水平に設置したガラス板上に厚さ75μmの重剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製ポリエステルフィルムE7001) を密着させ、厚さ1mm、内部が60 mm×100mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側に得られた重合性樹脂組成物(X-39~41、X-42、43)を充填した後、更にその上に厚さ50μmの軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7002)を重ね、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS-4011G X、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04-L41、紫外線照度200 mW/cm2 、積算光量1000mJ/cm2) し、樹脂組成物を硬化させた。その後、両側の剥離PETフィルムを取り除いて、実施例B-39~41及び比較例B-42、43の試験片を得た。
【0099】
(ゴム硬度測定)
作製した実施例用の試験片(B-39~41)及び比較例用の試験片(B-42、43)を用いて、各6枚重ねにし、JISK6253「ゴムの硬さ試験方法」によりショアA硬度を測定した。また、ショアA硬度が90より大きい場合はショアD硬度を測定した。
(破断伸度)
作製した実施例用の試験片(B-39~41)及び比較例用の試験片(B-42、43)を用いて、JIS K6251に準拠した3号ダンベル型に打ち抜いて、ダンベル型試験片を作製した後、JIS K7161に従って、卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフAGS-X)を用い、25℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間距離50mmの条件で破断伸度を測定した。
【0100】
【0101】
表11に示すとおり、p-trans型異性体の含有量が70%以上を有するTBCHAから得られた本発明の樹脂組成物を硬化して得られた共重合物(実施例B-39~41)はいずれもショアD 硬度70以上を示す硬質樹脂であり、またそれらは15%以上の破断伸度と15MPa以上の引張強度を有し、硬質樹脂として良好な強靭性を示した。特にp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを50重量部含有した試験片(実施例B-40)では20%以上の破断伸度と20MPa以上の引張強度が確認され、優れた強靭性を有するため、SLA方式やDLP方式の光造形法による3Dプリンターの硬質なモデル材やSLA方式のサポート材用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としても好適である。
【0102】
実施例B-44~46と比較例B-47、48
重合性樹脂組成物X-44~48を用い、下記方法にて爪装飾用コート剤の作製及び評価を行った。評価結果を表12に示す。
【0103】
(爪装飾コートの作製方法)
重合性樹脂組成物を爪上にフラットブラシを用いて均一に塗布し、ジェルネイル専用UV照射装置(36W)を用いて60秒照射することで、爪上に爪装飾を形成した。
【0104】
(硬化性)
上記方法にて得られた爪装飾の表面を指で触り、べたつき具合を評価した。
◎:べたつきが全くない。
○:若干のべたつきがあるが、表面に指の跡が残らない。
△:べとつきがあり、表面に指の跡が残る。
×:べとつきがひどく、表面に指が貼りつく。
(平滑性)
上記方法にて得られた爪装飾の表面を目視にて確認した。
◎:表面が平滑であり、塗布面全てにおいて凹凸がみられない。
○:全体的に平滑であるが、一部凹凸がみられる。
△:塗布後に一部、フラットブラシによる刷毛跡が残る。
×:塗布後にフラットブラシによる刷毛跡が残る。
(光沢性)
上記方法にて得られた爪装飾の表面を目視にて観察した。
◎:表面光沢がある。
○:光の反射は確認できるが、うっすらと曇りがみられる。
△:表面が全体的に若干曇る。
×:表面が曇る。
(密着性)
上記方法にて得られた爪装飾を他の爪で引っ掻いた後の外観変化を目視にて確認した。
◎:外観に変化なし。
○:爪装飾の一部に浮き上がりがあり、白化が確認された。
△:爪装飾の一部に剥離を確認した。
×:爪装飾の顕著な剥離を確認した。
(除去性)
上記方法にて得られた爪装飾を覆うようにして、アセトンを含んだコットンを載せた。次にアルミホイルで爪全体を覆い、サニメント手袋をした後10分間温水につけて放置した。その後、アルミホイルとコットンを取り除き、布を用いて軽く擦った。
◎:布を用いずとも、容易に爪装飾を剥離することができた。
○:布を用いて軽く擦ると、容易に爪装飾を剥離することができた。
△:布を用いて1分ほど擦り続けると、爪装飾を剥離することができた。
×:アセトンを膨潤しておらず、布で擦っても剥離できない。
【0105】
【0106】
表12に示すとおり、本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物と比較して、硬化性、平滑性、光沢性、密着性、除去性のすべての評価において良好であった(実施例B-44~46)。本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAは硬化性に優れるため、汎用の他の紫外線硬化性モノマーと混合した場合においても、表面タック性や硬度を低下させることなく、爪装飾用コート剤として好適に使用することができる。
【0107】
実施例B-49~51と比較例B-52、53
重合性樹脂組成物X-49~53を用い、下記方法にてプレキュアタイプの加飾コート剤用樹脂組成物の評価を行った。
【0108】
重合性樹脂組成物を厚さ180μmのPCフィルム(「パンライトPC-2151」帝人社製)上にバーコーター(RDS 6)を用い、乾燥後膜厚が5μmとなるように塗布した後、80℃にて3分間乾燥し、未硬化の塗膜を得た後、紫外線照射(高圧水銀ランプ 300mW/cm2、1000mJ/cm2)して塗膜を硬化させ、ハードコート層を有する積層体を得た。得られた積層体を切り取り、ハードコート層の耐表面タック性、伸び率、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性と耐日焼け止め剤性を下記方法により評価を行った。結果を表13に示す。
【0109】
(1)耐表面タック性
得られた積層体を用いて、膜の表面を指で触り、べたつき具合を評価した。
◎:べたつきが全くない。
〇:若干のべたつきがあるが、表面に指の跡が残らない。
△:べたつきがあり、表面に指の跡が残る。
×:べたつきがひどく、表面に指が貼りつく。
【0110】
(2)伸び率
得られた積層体を長さ50mm、幅15mmにカットし、テンシロン万能試験機RTA-100(オリエンテック社製)にチャック間距離25mmにて固定し、温度150℃に設定したオーブン中にて250mm/minの速度にて、外観を目視観察しながら一方向に引張り、塗工層に割れ又は白化を生じたときの試験片の長さ(mm)を測定した。伸び率は下記方法により算出し、評価を行った。
伸び率(%)=(試験後試料片長さ/25)×100%
◎:伸び率が200%以上
〇:伸び率が150以上200%未満
△:伸び率が110%以上150%未満
×:伸び率が110%未満
【0111】
(3)鉛筆硬度
試験片をJIS K 5600に準拠して、鉛筆を45°の角度で10mm程度引っ掻いた後、硬化膜表面に傷の付かない最も硬い鉛筆を鉛筆硬度とした。
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がHB~H
△:鉛筆硬度が3B~B
×:鉛筆硬度が4B以下
【0112】
(4)耐傷性
試験片を#0000のスチールウールを加重250gにて10往復し、硬化膜表面に目視にて観察した。
◎:膜の剥離や傷の発生は認められない。
○:膜の一部にわずかな細い傷が認められる。
△:膜全体に筋上の傷が認められる。
×:膜の剥離が生じる。
(5)耐折り曲げ性
試験片を塗膜面が外側になるように180°に折り曲げ、1kgの重しを載せて10分間放置し、硬化膜表面の割れの有無を目視にて観察した。
◎:まったく割れが見られなかった。
○:折り曲げ部が一部白化した。
△:折り曲げ部において一部割れが見られた。
×:折り曲げ部において割れが見られた。
(6)耐日焼け止め剤性
試験片の表面に日焼け止め剤であるUltraSheer DRY-TOUCH SUNSCREEN SPF100+(ニュートロジーナ社製)を直径1cm程度となるように塗布し、80℃にて6時間加熱し、放冷後、中性洗剤にて洗い流し、表面の状態を観察した。
◎:日焼け止め剤の跡がまったく見られなかった。
○:日焼け止め剤を塗布した部分に透明な後がわずかに見られる。
△:日焼け止め剤を塗布した部分に白く跡が残り、表面が膨れている。
×:日焼け止め剤を塗布した部分がべたつき、表面が剥がれている。
【0113】
【0114】
表13に示すとおり、本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAを配合した重合性樹脂組成物と比較して、耐表面タック性、伸び率、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性、耐日焼け止め剤性のすべての評価において良好であった(実施例B-49~51)。本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAは硬度、伸び性や耐久性に優れるため、加飾コート剤として汎用の他の紫外線硬化性モノマーと混合した場合においても、表面タック性や硬度を低下させることなく、加飾コート剤として好適に使用することができる。
【0115】
実施例B-54~57と比較例B-58、59
重合性樹脂組成物X-54~59を用い、紫外線硬化性接着剤を調製し、下記方法にて偏光板作製及び偏光板の物性評価を行った。結果を表14に示す。
(紫外線照射による偏光板の作製)
卓上型ロール式ラミネーター機(Royal Sovereign製 RSL-382S)を用いて、2枚の透明フィルムの間にポリビニルアルコール系偏光フィルムを挟み、透明フィルムと偏光フィルムの間に、実施例又は比較例の接着剤を、厚さ10μmになるように貼り合わせた。貼り合わせた透明フィルムの上面から紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製 インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製 M04-L41、紫外線照度:700mW/cm2、積算光量:1000mJ/cm2)し、偏光フィルムの両側に透明フィルムを有する偏光板を作製した。なお、透明フィルムとして、アクリル系保護フィルム(カネカ社製のサンデュレンSD-014)を使用した。
【0116】
(表面形状観察)
得られた偏光板表面を目視によって観察し、下記基準で評価した。
◎:偏光板の表面に微小なスジも凹凸ムラも確認できない
○:偏光板の表面に部分的に微小なスジが確認できる
△:偏光板の表面に微小なスジや凹凸ムラが確認できる
×:偏光板の表面に明らかなスジや凹凸ムラが確認できる
(剥離強度)
温度23℃、相対湿度50%の条件下、20mm×150mmに裁断した偏光板(試験片)を、引っ張り試験機(島津製作所製 オートグラフAGXS-X 500N)に取り付けた試験板に両面接着テープを用いて貼り付けた。両面接着テープを貼付していない方の透明保護フィルムと偏光フィルムの一片を、20~30mm程度あらかじめ剥がしておき、上部つかみ具にチャックし、剥離速度300mm/minにて90°剥離強度(N/20mm)を測定した。
◎:3.0(N/20mm)以上
○:1.5(N/20mm)以上、3.0(N/20mm)未満
△:1.0(N/20mm)以上、1.5(N/20mm)未満
×:1.0(N/20mm)未満
(耐水性)
得られた偏光板を20×80mmに切断し、60℃の温水に48時間浸漬した後、偏光子と保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムとの界面における剥離の有無を確認した。判定は下記の基準で行った。
◎:偏光子と保護フィルムとの界面で剥離なし(1mm未満)
○:偏光子と保護フィルムとの界面の一部に剥離あり(1mm以上、3mm未満)
△:偏光子と保護フィルムとの界面の一部に剥離あり(3mm以上、5mm未満)
×:偏光子と保護フィルムとの界面で剥離あり(5mm以上)
(耐久性)
得られた偏光板を150mm×150mmに裁断し、冷熱衝撃装置(エスペック社製TSA-101L-A)に入れ、-40℃~80℃のヒートショックを各30分間、100回行い、下記基準で評価した。
◎:クラックの発生なし
○:端部にのみ5mm以下の短いクラックの発生あり
△:端部以外の場所にクラックが短い線状に発生している。しかし、その線により偏光板が2つ以上の部分に分離してはいない
×:端部以外の場所にクラックの発生あり、その線により、偏光板が2つ以上の部分に分離している
(耐熱黄変性)
得られた偏光板を30mm×30mmに裁断し、透過色相のa値及びb値を測定し((株)島津製作所製の紫外可視分光光度計UV-2450にて、波長380~780nmの平行透過色相a値及び直交透過色相b値を測定し、透過色相のab値(ab=(a2+b2)1/2)を算出した。その後、偏光板を90℃の恒温槽に48時間保持し、耐熱黄変性試験を行った。試験後のab値を同様に算出し、Δab(Δab=試験後のab値-試験前のab値)の値が黄変の指標とした。Δab=0の場合は、黄変せず、Δabが大きくなるほど黄変が大きいことを意味する。
◎:0<=Δab<=2
○:2<Δab<=6
△:6<Δab<=10
×:10<Δab
【0117】
【0118】
表14に示すとおり、本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した偏光板は、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAを配合した偏光板と比較して、偏光板表面にスジやムラがなく、剥離強度、耐水性、耐久性、耐熱黄変性のすべての評価において良好であった(実施例B-54~59)。本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAは保護フィルムであるアクリル系フィルムに対するぬれ性と密着性に優れるため、偏光板として使用するに十分な接着力を有し、また、接着剤として汎用の他の紫外線硬化性モノマーと混合した場合においても、接着力や耐水性、耐久性を低下させることなく、偏光板用接着剤として好適に使用することができる。
【0119】
実施例B-60~B-63と比較例B-64、65
重合性樹脂組成物X-60~65を用い、紫外線硬化性封止材を調製した。その後、得られた封止材を用い、下記方法にて、紫外線硬化による封止材樹脂硬化物の作製及び物性評価を行った。
(紫外線硬化型封止材樹脂硬化物の作製方法)
ガラス板(縦50mm×横50mm×厚さ5mm)上にシリコン製のスペーサー(縦30mm×横15mm×厚さ3mm)をセットし、スペーサーの内部に銅箔(縦5mm×横50m×厚み80μm)を入れ、上記にて調製した紫外線硬化型封止材を注入した。十分に脱気した後、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製 M04-L41、紫外線照度:700mW/cm2、積算光量:1000mJ/cm2)し、封止材樹脂硬化物を作製した。得られた硬化物の特性を下記方法で評価した。結果を表15に示す。
【0120】
(透明性)
作製した硬化物を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、24時間を静止した。それ後、前記と同様にヘイズメーターにより透過率を測定し、透明性を評価した。
(耐湿熱黄変性)
得られた初期の硬化物を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、24時間を静止した。それ後、硬化物の透過スペクトルを透過色測定専用機(TZ-6000、日本電色工業(株)製)により測定し、初期b値とした。硬化膜を用いて、85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿機に500時間を静置し、耐湿熱黄変性の加速試験を行った。試験後の硬化膜を同様に温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間を静止し、透過色測定し、湿熱後b値とした。また、湿熱後b値と初期b値の差は変化値Δbとした(Δb=湿熱後b値-初期b値)。耐湿熱黄変性は下記通り4段階分けて評価した。
◎:初期b値、湿熱後b値は共に0.2以下、かつ、Δbは0.1以下である
○:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に0.2を超えるが、共に0.5以下であり、かつ、Δbは0.2以下である
△:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に0.5を超えるが、共に1.0以下であり、かつ、Δbは0.3以下である
×:初期b値、湿熱後b値は何れか一つまたは共に1.0を超え、或いは、Δbは0.3を超える。
(吸水率試験)
得られた硬化物から1gを切り取って、試験片として温度85℃×相対湿度95%の恒温恒湿機にセットし、48時間静置後、再び試験片の重量を測定し、吸水率を下記式により算出した。
吸水率(%)=(吸湿後重量―吸湿前重量)/吸湿前重量×100
◎:吸水率は1.0%未満
○:吸水率は1.0%以上、かつ2.0%未満
△:吸水率は2.0%以上、かつ3.0%未満
×:吸水率は3.0%以上
(アウトガス試験)
得られた硬化物から1gを切り取って、試験片として温度100℃に設定した恒温槽に静置し、乾燥窒素気流を24時間流して、その後再び試験片の重量を測定し、下記式によりアウトガスの発生率を算出した。
アウトガス発生率(%)=(恒温後の重量―恒温前の重量)/恒温前の重量×100
◎:発生率は0.1%未満
○:発生率は0.1%以上、かつ0.3%未満
△:発生率は0.3%以上、かつ1.0%未満
×:発生率は1.0%以上
(耐ヒートリサイクル性)
得られた硬化物を-40℃で30分間、次に100℃で30分間放置を1サイクルとして100回繰り返し、硬化物の状態を目視によって観察した。
◎:全く変化が見られない
〇:わずかに気泡の発生が見られるが、クラックの発生が見られない。透明である。
△:多少の気泡或いはクラックの発生が見られ、わずかな曇である。
×:気泡又はクラックが全面的に発生し、半透明状態である。
(耐腐食性)
耐湿熱黄変性試験後、銅箔の表面を目視で観察し、銅板から硬化膜をゆっくり剥がして、銅箔(厚み80μm)に貼りあわせた試験片(Cu耐腐食性評価用)を用いて、温度60℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿機に168時間を静置した。その後、硬化膜をアルミ基板又は銅箔から剥がして、目視でアルミ基板と銅箔の表面を観察し、硬化膜の耐腐食性を評価した。
◎:腐食なし
○:僅かに腐食
△:少し腐食
×:著しい腐食
【0121】
【0122】
表15に示すとおり、p-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを配合した本発明の封止材樹脂硬化物は、p-trans型異性体の含有量が70%未満のTBCHAを配合した封止材樹脂硬化物と比較して、透明性、吸水率、アウトガス発生率、体ヒートリサイクル性、耐湿熱黄変性、耐腐食性のすべての評価において良好であった(実施例B-60~63)。本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAは封止材として汎用の他の紫外線硬化性モノマーと混合した場合においても、透明性や吸水性を低下させることなく、封止材用樹脂として好適に使用することができる。
【0123】
以上のように、実施例と比較例の評価結果に示すとおり、本発明のp-trans型異性体の含有量が70%以上のTBCHAを含有する重合性樹脂組成物は、色目や、硬化性、各種基材への密着性、接着性等、各用途で求められる各種物性が良好であることが示された。一方、同じTBCHAであっても、p-trans型異性体の含有量が70%未満であれば、上記用途で求められる各種物性や性能が達成できないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明してきたように、本発明の重合性樹脂組成物は、p-trans型異性体の含有量が70%以上を有するt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを配合することによって、着色も臭気も低く、皮膚刺激性が低く、各種基材への濡れ性や密着性が良好であるため、濡れ性向上剤、密着性向上剤として用いることができる。また、インク(主にインクジェット、オフセット、スクリーン、フレキソ、水系、光造形のモデル材とサポート材)、粘着剤、接着剤、コーティング剤、塗料、光造形用樹脂、封止材、分散剤、界面活性剤、加飾コート剤、防曇塗料、電池用セパレータ、歯科材料等に広く使用することができる。