(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】眼圧及び頭蓋内圧を調節するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240206BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240206BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240206BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240206BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240206BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240206BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240206BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20240206BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/02
A61P27/06
A61P25/00
C12N15/55 ZNA
C12N15/09 110
C12N9/16 Z
C12N15/60
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020569201
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065231
(87)【国際公開番号】W WO2019238692
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】301046835
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリストル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,コリン・ジョナサン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/067382(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/186772(WO,A2)
【文献】特表2016-501531(JP,A)
【文献】特表2010-540564(JP,A)
【文献】JAIN, A., et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,2017年,Vol. 114,No. 42,pp. 11199-11204
【文献】JIMENEZ, A., et al.,Investigative Ophthalmology & Visual Science,2009年,Vol. 50,p. 4054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清型ShH10のAAVベクタービリオンであって、
(i)哺乳動物細胞において有効な核局在化配列を含むRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記AAVベクタービリオン。
【請求項2】
(a)アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11
である、及び/又は
(b)炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14
である、
請求項1に記載のAAVベクタービリオン。
【請求項3】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼがCas9酵素
である、請求項1又は2に記載のAAVベクタービリオン。
【請求項4】
Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はSpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、及びSpCas9 VQRから成る群より選択されるそれらの変異体である、請求項3に記載のAAVベクタービリオン。
【請求項5】
(a)RNA誘導型エンドヌクレアーゼが触媒的に活性である、又は
(b)RNA誘導型エンドヌクレアーゼが触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含
む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン。
【請求項6】
転写抑制ドメインは、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、請求項5に記載のAAVベクタービリオン。
【請求項7】
請求項1~
6いずれか1項において定義されるAAVベクタービリオンを、医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる、医薬組成物
。
【請求項8】
(a)硝子体内注射又は前房内注射のような眼内注射用に製剤化されるか;又は
(b)髄腔内注射、頭蓋内注射、頭蓋内注入、脳室内注射、又は脳室内注入のような中枢投与用に製剤化される、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に定義されるような第1及び第2のAAVベクタービリオンを含んでなる治療用キットであって、前記第1及び第2のAAVベクタービリオンは、それぞれ異なる第1及び第2の標的配列に相補的な、それぞれ異なる第1及び第2のガイドRNAをコードする、前記治療用キット。
【請求項10】
(a)第1及び第2の標的配列が、同一のアクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子に由来する;
(b)第1及び第2のベクタービリオンが、コードされたガイドRNA以外は同一である;
(c)前記第1及び第2のベクタービリオンが、それぞれ医薬的に許容される担体と組み合わせて別々の組成物に製剤化される;又は
(d)前記第1及び第2のベクタービリオンが、医薬的に許容される担体と組み合わせて同一の組成物に製剤化される、
請求項
9に記載の治療用キット。
【請求項11】
眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するための医薬組成物であって、請求項1~
6のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオンを含む、前記医薬組成物。
【請求項12】
前記使用が、高眼圧及び/又は緑内障の治療における使用
である、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
緑内障は、原発性又は続発性緑内障であり、原発性緑内障は、開放角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は正常眼圧緑内障(NTG)である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するための医薬組成物であって、請求項1~
6のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオンを含む、前記医薬組成物。
【請求項15】
前記使用が、水頭症又は特発性頭蓋内圧亢進症の治療における使用
である、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
AAVベクタービリオンは、請求項1~
6のいずれか1項に記載の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記AAVベクタービリオンは、それぞれ異なる標的配列に相補的なそれぞれ異なるガイドRNAをコードする、
請求項
11~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
(a)哺乳動物細胞において有効な核局在化配列を含むRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第1のAAVベクタービリオン;及び
(b)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的なガイドRNAであって前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオン、
を含んでなる、治療用キット。
【請求項18】
(a)アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11
である、及び/又は
(b)炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14
である、
請求項
17に記載のキット。
【請求項19】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼがCas9酵素で
ある、請求項
17又は18に記載のキット。
【請求項20】
Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はSpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、及びSpCas9 VQRから成る群より選択されるそれらの変異体である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
(a)前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが触媒的に活性である、又は
(b)前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含
む、請求項
17~20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
転写抑制ドメインは、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記第2のベクタービリオンが、異なる標的配列にそれぞれ相補的な複数のガイドRNAをコード
する、請求項
17~22のいずれか1項に記載のキット。
【請求項24】
標的配列が同一の遺伝子に由来する、請求項23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
眼圧、房水産生、頭蓋内圧、又はCSF産生を調節する方法に使用するための、請求項
17~24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
眼圧、房水産生、頭蓋内圧、又はCSF産生を調節する方法に使用するための医薬組成物であって、
第1のAAVベクタービリオン及び第2のAAVベクタービリオンを含み、
前記
第1のベクタービリオンは、血清型ShH10のものであって、哺乳動物細胞において有効な核
局在化配列を含むRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、
前記第2のベクタービリオンは、血清型ShH10のものであって、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的なガイドRNAであって前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ShH10血清型のウイルスベクターと、眼圧及び頭蓋内圧の調節並びに緑内障及び水頭症のような関連病態の治療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は全世界で不可逆な失明の主因であり、2020年までにこの疾患によって1120万人が両眼を失明すると推定される。現在、直接医療費は、米国だけで年間30億ドルと推定され、その費用の45%を処方薬剤費が占める。英国も同等であり、緑内障の罹患率は40歳以上の全国民の2%と推定されている。現行の治療選択肢は不十分であり、診断後の終生の経過観察及び治療の必要性によって深刻化する。
【0003】
初期の病態は多様であり、決定的な療法は存在しない。しかしながら、これまでの臨床試験では、長期にわたって眼圧(IOP)を十分に低下させれば、視神経への継続的な傷害を止めることにより進行と視力喪失が概ね予防されることが示されている。
【0004】
水頭症又は頭蓋内圧の上昇は、広範囲の神経系障害によって引き起こされる重要な病態である。統一的な原因は、脳脊髄液(CSF)の産生と漏出との間の不均衡である。先天性奇形、髄膜炎、及び脳腫瘍のような多くの病態が水頭症を引き起こす可能性がある。特発性頭蓋内圧亢進症のような他の病態も、CSF圧の上昇によって重大な疾病及び失明をもたらす可能性がある。
【0005】
現行の治療法に経口医薬品が含まれるが、多くの受容し難い副作用によってそれらの使用は制限されている。シャント術式の外科的介入は、失敗及び合併症の比率が高い(ある研究では、5歳以上の小児で48%、成人で27%に達する)。
【0006】
従って、緑内障、水頭症、及び関連病態へのさらなる治療選択肢が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、周囲組織に優先して毛様体と脈絡叢に形質導入することが可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。より詳細には、アデノ随伴ウイルスのShH10血清型は、毛様体及び脈絡叢への効果的で特異的な形質導入をもたらし得ることが見出されている。
【0008】
毛様体は、眼における房水の産生に関与しており、房水産生を低下させることによって眼圧(IOP)を下げることを目的とした、緑内障に対する数多くの療法の標的となっている。
【0009】
脈絡叢は、生理学的には毛様体に酷似しており、脳脊髄液(CSF)の産生を担っている。脳にCSFが蓄積すると、頭蓋内圧(ICP)の上昇と特発性頭蓋内圧亢進症及び水頭症のような病態をもたらす可能性がある。
【0010】
他のアデノウイルス血清型を含めた他種のウイルスは、毛様体と脈絡叢に形質導入することが全くできないか又はこれらの組織に対して十分に特異的でないため、臨床使用への実行可能な選択肢とならない。
【0011】
故に、本発明のウイルスベクターは、眼圧若しくは頭蓋内圧の低下及び/又は房水若しくはCSFの産生の低下から利益を受け得る、緑内障及び水頭症のような病態の治療への高度に標的指向された遺伝子編集アプローチを可能にする。
【0012】
本発明は、血清型ShH10のAAVベクタービリオンを提供し、該AAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる。
【0013】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためAAVベクタービリオンを提供し、該AAVベクターは、血清型ShH10のものであり:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0014】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、該AAVベクターは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0015】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、該AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0016】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、該AAVベクターは、血清型ShH10のものであり:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0017】
本発明はまた、AAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、眼圧又は房水産生を調節する方法を提供し、該AAVベクターは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0018】
本発明はまた、AAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法を提供し、該AAVベクターは、血清型ShH10のものであり:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0019】
このように、本発明のベクター及び方法は、眼圧、頭蓋内圧、房水産生、又はCSF産生の調節から利益を受け得るか又はそれによって軽減され得る病態又は症状の治療に有用である。治療は、療法的(既存の病態又は症状に対して)又は予防的(そのリスク状態にある個体における病態又は症状の発症を予防、阻害、又は遅延させることを模索する)であり得る。本発明の文脈における「調節」は、典型的には関連特性の低下を示すが、増加を阻害する傾向を示す場合もある。従って、調節は、関連特性の絶対的な低下を構成し得るが、関連特性の定常状態を維持すること又は治療しない場合に生じるより遅い増加速度をもたらすことを構成する場合もある。
【0020】
眼圧の上昇(高眼圧)は、緑内障の発症における主要な危険因子である。眼圧(IOP)の低下は、IOPが正常範囲内である緑内障のタイプにおいてさえ有用であることが示されている。従って、本発明のベクター及び方法は、高眼圧及び/又は緑内障の治療に有用である。
【0021】
緑内障は、原発性又は続発性であり得る。
原発性緑内障は、開放角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は正常眼圧緑内障(NTG)であり得る。
【0022】
頭蓋内圧の上昇、CSFの過剰産生、又はCSF漏出の障害は、水頭症及び特発性頭蓋内圧亢進症のような病態をもたらす場合がある。従って、本発明のベクター及び方法は、水頭症及び特発性頭蓋内圧亢進症の治療に有用である。
【0023】
水頭症は、正常圧水頭症を含めた交通性水頭症又は非交通性水頭症であり得る。いずれの症例も、先天性又は後天性であり得る。
AAVベクタービリオンは、逆位末端反復配列(ITR)に隣接する「ペイロード」配列を含んでなる、1本鎖DNAゲノムを含有する。従って、特定の核酸配列を含んでなるベクタービリオンに本明細書が言及する場合、そのベクタービリオンは、そのような配列を含んでなる1本鎖DNAゲノム分子を含有すると理解される。ベクタービリオンが2以上の特定の核酸配列を含有すると述べられる場合、それらの配列は、典型的には、同一の1本鎖DNAゲノム分子の一部を形成するものである。同様に、ベクタービリオンが特定の分子(例えばRNA又はタンパク質)をコードすると述べられる場合、そのベクタービリオンは、その分子をコードする配列を含んでなる1本鎖DNAゲノムを含有すると理解される。
【0024】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はSpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、若しくはSpCas9 VQRなどのそれらの変異体のようなCas9酵素であり得る。
【0025】
SaCas9及びその変異体は比較的小さいサイズであるために、AAVゲノムの制限されたコード能に鑑みて好ましい場合がある。
しかしながら、Cpf1のような他のRNA誘導型エンドヌクレアーゼも有用であり得る。
【0026】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、典型的には触媒的に活性である。しかしながら、ある状況では、触媒的に活性でないRNA誘導型エンドヌクレアーゼが利用される場合がある。触媒的に活性でないRNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインのような転写抑制ドメインも含み得る。従って、このベクターゲノムは、触媒的に活性でないRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及び抑制ドメインを含んでなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含有する。
【0027】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含み得る。
ガイドRNAは、特にエンドヌクレアーゼがCas9酵素である場合、典型的にはsgRNAであろう。
【0028】
しかしながら、ガイドRNAは、あるいはcrRNAであってもよい。そのような状況では、エンドヌクレアーゼ活性に必要ならば、例えば、エンドヌクレアーゼがCas9酵素である場合は、ベクタービリオンは、tracrRNAをコードする核酸配列も含み得る。Cpf1は、tracrRNAを必要としないと考えられている。
【0029】
アクアポリン遺伝子は、その産物が毛様体又は脈絡叢において発現される、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11のような、いずれのアクアポリン(AQP)遺伝子でもよい。
【0030】
毛様体では、AQP1、AQP4、及びAQP5が最も高度に発現されるアクアポリンであり、眼の病態への特に良好な標的を代表し得る。
AQP1及びAQP4は、脈絡叢においても発現されるため、脳の病態への特に良好な標的になり得る。
【0031】
いくつかの態様では、アクアポリン遺伝子はAQP1であり、その標的配列はエクソン1内に位置している。例えば、ガイドRNAは、配列:GATGATGTACATGACAGCCCG、GATCGCTACTCTGGCCCAAAGT、GATGTGACCCACACTTTGGGC、TCTTCTGGAGGGCTGTGGTGG、ACCAATGCTGATGAAGACGAA、若しくはTAGGGAGGAGGTGATGCCCGAを含んでなるか又はそれらから成るcrRNA部分を含み得る。
【0032】
例えば、ガイドRNAは、配列:GATGATGTACATGACAGCCCG又はGATCGCTACTCTGGCCCAAAGTを含んでなるか又はそれらから成るcrRNA部分を含み得る。
【0033】
AQP1遺伝子を標的とする2つのガイドRNAの送達に関わる本発明の側面では、配列:GATGATGTACATGACAGCCCG及びGATCGCTACTCTGGCCCAAAGTのような、これらcrRNA配列の2つを使用し得る。
【0034】
上に示したcrRNA配列は、マウスAQP1に対する相補性のために設計されたが、ヒトのような他の哺乳動物種においても作動することが期待され得る。当業者であれば、どの所与の生物種においても、選択される遺伝子を標的とするのに適した配列を設計することが可能であろう。例えば、ヒトAQP1を標的とする際に使用するためのgRNAは、配列:CTGAGCATCGCCACGCTGGCG、ACCGATGCTGATGAAGACAAA、又はCCGCCGTCTGGTTGTTCCCCAを含むか又はそれらから成り得る。
【0035】
同様に、炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子は、その産物が毛様体又は脈絡叢において発現される、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14のような、いずれのCAR遺伝子でもよい。CAR15は、マウスの毛様体においても発現される。CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、及びCAR14、例えばCAR2、CAR3、及びCAR14は、眼において特に良好な標的を代表し得る。CAR2、CAR4、及びCAR12は、脈絡叢において高度に発現されると考えられている。
【0036】
本発明はさらに、記載のようなベクタービリオンを医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物を提供する。
医薬組成物は、眼内注射用に、より詳細には、硝子体内注射又は前房内注射用に(例えば緑内障の治療のような眼科適用のために)製剤化され得る。医薬組成物は、中枢投与、即ち中枢神経系(CNS)への直接投与用に製剤化され得る。中枢投与用の組成物は、例えば、髄腔内注射、又は例えば脳室内注射又は注入による頭蓋内注射若しくは注入用に製剤化され得る。そのような投与は、水頭症の治療に特に適していよう。
【0037】
本発明はさらに、記載のようなAAVベクタービリオンを産生するパッケージング細胞を提供する。
本発明はまた、記載のようなベクタービリオンの複数の集団を含んでなる治療用キットを提供し、各集団は異なるガイドRNAをコードする。異なる集団によってコードされるガイドRNAは、同一の遺伝子内又は異なる遺伝子内の標的配列へ指向され得る。同一の遺伝子へ指向される異なるガイドRNAをコードするベクタービリオンの少なくとも2つの集団を提供することが特に望ましい場合があるのは、これが、例えば遺伝子の一部を欠失させることによる、遺伝子不活性化の効率を高めることができるからである。典型的には、このアプローチは、触媒的に活性のあるエンドヌクレアーゼを必要とする。
【0038】
このように、該キットは、記載のような第1及び第2のAAVベクタービリオン(又はベクタービリオンの集団)を含むことができ、前記第1及び第2のベクター(又はベクタービリオンの集団)は、それぞれ異なる第1及び第2の標的配列に相補的なそれぞれ異なる第1及び第2のガイドRNAをコードしており、第1及び第2の標的配列は、同一のアクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子に由来し得る。
【0039】
異なるベクタービリオン又はベクタービリオンの集団は、それらがコードするガイドRNA以外は同一であり得る。
異なるベクタービリオン又はベクタービリオンの集団は、同じ組成物の一部として提供されても、別々の組成物において提供されてもよい。それぞれの組成物は、独立して、それぞれのベクタービリオン又はベクタービリオンの集団を、医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物であり得る。
【0040】
従って、本発明は、
(a)血清型ShH10の第1のAAVベクタービリオンであって:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを第1の前記標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、第1のAAVベクタービリオン;並びに
(b)血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンであって:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを第2の前記標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記第2のAAVベクタービリオン、
を含んでなる、治療用キットを提供する。
【0041】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる。
【0042】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、該AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる。
【0043】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる。
【0044】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与すらためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる。
【0045】
本発明はまた、第1及び第2のAAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、眼圧又は房水産生を調節する方法を提供し、第1のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
第2のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0046】
本発明はまた、第1及び第2のAAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法を提供し、第1のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
第2のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む。
【0047】
すべてのそのような場合において、第1及び第2の標的配列は異なっており、同一の遺伝子に由来しても異なる遺伝子に由来してもよい。上記のように、第1及び第2の標的配列が同一の遺伝子に由来することが望ましい場合があるのは、これが、例えば遺伝子の一部を欠失させることによる、遺伝子不活性化の効率を高めることができるからである。
【0048】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼとガイドRNAを別々のベクターの同時投与によって送達することも可能である。
従って、本発明はまた:
(a)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第1のAAVベクタービリオン;及び
(b)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオン、
を含んでなる、治療用キットを提供する。
【0049】
第2のベクタービリオンは、異なる標的配列にそれぞれ相補的な複数のガイドRNA、例えば2つのガイドRNAをコードし得る。標的配列は、同一の遺伝子に由来しても異なる遺伝子に由来してもよい。上記のように、2つの標的配列が同一の遺伝子に由来することが望ましい場合があるのは、これが、例えば該遺伝子の一部を欠失させることによる、遺伝子不活性化の効率を高めることができるからである。
【0050】
それぞれのガイドRNAは、sgRNAでもcrRNAでもよい。
ベクターが複数のsgRNAをコードする場合、sgRNAは、同一のcrRNA成分をそれぞれ含み得る。
【0051】
当該ベクターが1つのcrRNA又は複数のcrRNAをコードする場合、第1のベクターにコードされるエンドヌクレアーゼの活性に必要であるならば、適合可能なtracrRNAをコードすることもできる。しかしながら、いずれのtracrRNAも、追加的又は選択的に第1のベクターにコードされ得る。
【0052】
第1及び第2のベクタービリオンは、同じ組成物の一部として提供されても、別々の組成物において提供されてもよい。それぞれの組成物は、独立して、それぞれのベクタービリオン又は複数のビリオンを医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物であり得る。
【0053】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる。
【0054】
本発明はさらに、眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる。
【0055】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる。
【0056】
本発明はさらに、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンを提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる。
【0057】
本発明はまた、眼圧又は房水産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる。
【0058】
本発明はさらに、眼圧又は房水産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる。
【0059】
本発明はまた、頭蓋内圧又はCSF産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる。
【0060】
本発明はさらに、頭蓋内圧又はCSF産生を調節するための医薬品の製造におけるAAVベクタービリオンの使用を提供し、前記AAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる。
【0061】
本発明はさらに、第1及び第2のAAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、眼圧又は房水産生を調節する方法を提供し、第1のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み;そして第2のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。
【0062】
本発明はさらに、第1及び第2のAAVベクタービリオンを被験者へ投与することを含んでなる、頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法を提供し、第1のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み;そして第2のAAVベクタービリオンは、血清型ShH10のものであり、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。
【0063】
当該ビリオンは好適な用量で投与することができ、当業者は、使用される特定のベクターと臨床状況に依拠して、適正な用量を決定することが可能であろう。例えば、前記又はそれぞれのベクターの1×107~1×1011ゲノムコピー(gc)、例えば前記又はそれぞれのベクターの5×107~5×1010gc、例えば前記又はそれぞれのベクターの1×108~1×1010gcの単回用量が好適であり得る。しかしながら、より低い力価もあり得る。
【0064】
本発明のベクターが眼に投与される場合、そのような投与量は、ミュラーグリア細胞への形質導入が相対的に低いレベルであっても、毛様体の形質導入には良好なレベルを提供することが見出されている。
【0065】
「患者」、「被験者」、及び「個体」という用語は、交換可能的に使用し得る。本発明の組成物及び方法が適用される被験者は、典型的には哺乳動物であり、ヒト、又は非ヒト霊長動物(例えば類人猿、旧世界猿、又は新世界猿)、家畜動物(例えばウシ又はブタ)、伴侶動物(例えばイヌ又はネコ)、若しくは齧歯動物(例えばマウス又はラット)のような実験動物などの非ヒト哺乳動物でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
公表されたマイクロアレイデータの解析より、マウス毛様体では、アクアポリン1、4、5、並びに炭酸脱水酵素2、3、及び14が、最も豊富なアイソフォームであることを確認する。CELデータファイルをGEOレポジトリ(GSE 10246-Lattin JE et al. Expression analysis of G Protein-Coupled Receptors in mouse macrophages[マウスマクロファージにおけるGタンパク質共役受容体の発現解析], Immunome Res. 2008 Apr 29;4:5.)より直接ダウンロードして、Partek Genomics Suite 6.6(Partek社)へ読み込んだ。ロバストマルチアレイ平均法のバックグラウンド補正(median polish法で縮約する分位数正規化)を使用して、データを正規化した。次いで、毛様体について、チップ上のすべてのAQP遺伝子及びCAR遺伝子の発現のヒストグラムを作成した。他の眼組織全体と比較して、毛様体ではAQP4、AQP5、並びにCar2、3、6、及び14が特に豊富であった。
【
図2】
マウス毛様体では、アクアポリン及び炭酸脱水酵素の主要なアイソフォームが検出可能である。A)切開したマウス眼組織のウェスタンブロット解析により、Aqp1、4、及びCar2タンパク質の角膜、網膜、及びRPE間の相対レベルを同定する。B)切開マウス眼組織に対するTaqmanプローブを使用した定量的PCRは、RNA転写産物の同等な組織レベルを示す(各群につきn=3個の眼)。
【
図3】
T7エンドヌクレアーゼ1ゲノム切断アッセイによるin vitro試験により、いくつかの活性なSaCas9 sgRNAガイドを同定する。異なるpAAV-SaCas9-sgRNAプラスミドをマウスB6-RPE細胞株へリポフェクタミン3000トランスフェクションした後3日目にゲノム切断アッセイを実施した。DNA 1000 tapestationを使用してDNA切断産物の相対強度を評価し、対応領域における相対的なゲノム挿入欠失(indel)発生率の計算を可能にした。
【
図4-1】
A)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Bのプラスミドマップ。
【
図4-2】
B)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Bの配列。
【
図4-3】
B)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Bの配列(続き)。
【
図5-1】
A)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Eのプラスミドマップ。
【
図5-2】
B)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Eの配列。
【
図5-3】
B)AAV-SaCas9プラスミドmAqp1エクソン1ガイド1Eの配列(続き)。
【
図6-1】
アクアポリン1は、マウス毛様体において発現され、CRISPR-SaCas9によって破壊することができる。マウスの眼は、角膜、毛様体、及びRPEにおいてアクアポリン1(Aqp1)を優勢的に発現する。A)代表的なウェスタンブロット、B)タンパク質、及びC)定量的PCR(n=3~4個の眼)。
【
図6-2】D)試験したショートガイドRNA(sgRNA)の配列及び位置を表示する、マウスAqp1のエクソン1の概略図。
【
図6-3】E)各sgRNAのindel生成効率を同定する、プラスミドトランスフェクションされたマウスAqp1 sgRNAのT7エンドヌクレアーゼ1アッセイ。ラベルB及びEを、ShH10血清型AAVベクターへパッケージして、マウスB6-RPE細胞株に個別に及び組み合わせて感染させるために使用した。F)T7エンドヌクレアーゼ1アッセイ、及びG)定量的PCRを、mAqp1について実施した。sgRNAをE単独で、及びBと組み合わせて(Mix)使用すると、Aqp1の発現が有意に低下した。ダンの多重比較法を用いるクラスカル・ウォリス検定。
***p=0.001、
****p<0.001、n=10~12。
【
図6-4】H)Mix sgRNAで処理したB6-RPE細胞より配列決定したオンターゲットゲノムDNA改変のグラフ表示。プラスミドライゲーション及び配列決定法を使用して、介在83bp領域の完全な切除と塩基挿入が主たる変化であることを実証する。
【
図7】
マウスでは、毛様体アクアポリン1のCRISPR-Cas9媒介性の破壊により眼圧が低下する。mAqp1 sgRNA B及びEを同比率でコードするShH10ウイルス(Mix)の2×10
10ゲノムコピーを野生型C57BL/6Jマウスの片眼へ硝子体内注射してから3週間後、A)T7エンドヌクレアーゼ1アッセイにより、処理した眼から切除した毛様体にのみゲノムDNAの切断があることを実証する。B)SaCas9 DNAも、注射した眼由来の毛様体組織にのみPCRによって検出可能である。C)mAqp1破壊により、眼圧(IOP)は平均2.9mmHg低下する(対応のあるt検定、n=18対)。D)IOPは、対照のShH10 CMV-GFPウイルス注射によって変化しない(片側ANOVA、n=12~42個の眼)。単離した毛様体におけるAqp1タンパク質の低下を示す、E)代表的なウェスタンブロット、及びF)デンシトメトリー(対応のあるt検定、p=0.009、n=7対)。G)角膜又はH)網膜のいずれにおいても、厚さの有意な「オフターゲット」増加は見られない(対応のあるt検定、n=9対。UN=非注射、MIX=ShH10-CMV-SaCas9-sgRNA B及びE)。
【
図8】
2種の緑内障実験モデルでは、毛様体アクアポリン1の破壊により眼圧が低下する。マイクロビーズモデルを使用して、各試行あたり3~5匹のマウスについての3回の独立した実験から表示データをプールする。A)未処理(UN)の眼とShH10-CMV-SaCas9-sgRNA B及びE(Mix)で処理した眼の眼圧(IOP)。高眼圧の誘発後1週目に注射すると、その処理によりIOPの上昇が縮小した(両側ANOVA,p=0.0003、n=12匹のマウス)。B)最終時点での分析は、IOPの平均3.9mmHgの低下を示した(対応のあるt検定、p=0.002、n=12対)。点線は、0日目における12.7mmHgの平均ベースラインIOPを表す。処理した眼におけるレベル低下を実証する対応付けたex vivo毛様体のmAQP1タンパク質の、C)代表的なウェスタンブロット、及びD)デンシトメトリー(対応のあるt検定、p=0.0008、n=12)。コルチコステロイド誘発高眼圧モデルを使用して、各試行あたり5及び6匹のマウスについての2回の独立した実験から表示データをプールする。E)Mixで処理した眼では、ステロイド誘発の3週間後にIOPが平均2.9mmHg低下している(対応のあるt検定、p<0.0001、n=11)。点線は、0日目における11.3mmHgの平均ベースラインIOPを表す。mAQP1タンパク質レベルの低下を実証するex vivo毛様体の、F)代表的なウェスタンブロット、及びG)デンシトメトリー(対応のあるt検定、p=0.0025、n=11)。
【
図9】
ヒト毛様体は、アクアポリン1を発現しており、CRISPR-Cas9媒介性遺伝子破壊を可能にするためにShH10ウイルスの標的とすることができる。6名のドナーに由来する、角膜移植の残りのヒトex vivo毛様体組織を入手して、7日間まで培養で維持した。A)即時切除を施行した2名のドナーに由来する、アクアポリン1(hAQP1)についての代表的なウェスタンブロット。B)全ドナーに由来する組織の、プールしたqPCR発現データ(n=2~6)。AQP1は、毛様体及び角膜内皮において豊富であった。hAQP1のエクソン1を標的とする3つのヒトsgRNAを同様に作製して、C)293T細胞において、プラスミドトランスフェクション及びT7エンドヌクレアーゼ1アッセイによって試験した。D)sgRNA Kを選択して、ShH10ウイルスへパッケージした。感染性の293T細胞は、T7エンドヌクレアーゼ1アッセイによると、さらに高いindel形成率を示した。ヒト毛様体を、ユビキタスCMVプロモーターの制御下でGFPを発現するShH10ウイルスとともに培養した。
【発明の詳細な説明】
【0067】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びCRISPRシステム
本発明では、CRISPR(「clustered regularly interspaced short palindromic repeats」:クリスパー)システムを使用して、標的遺伝子の発現を調節する。
【0068】
CRISPR(又はCRISPR-Cas)システムは、原核生物のRNA誘導型防御システムに由来する。少なくとも11種の異なるCRISPR-Casシステムがあり、これらは3種の主要型(I~III)へグループ分けされている。II型CRISPR-Casシステムは、ゲノム工学ツールとして採用されている。
【0069】
ほとんどのII型CRISPR-Casシステムは、3種の成分を利用する:
-DNAニッカーゼ活性を有しているタンパク質エンドヌクレアーゼCas(CRISPR随伴タンパク質)、本明細書では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(又はRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ)と表す;
-典型的にはおよそ20ヌクレオチドで、標的遺伝子内の標的配列(「プロトスペーサー」)に相補的な短鎖配列を含んでなる、「標的指向性(targeting)」又は「ガイド」RNA(CRISPR-RNA又はcrRNA);及び
-crRNAと相互作用してCasエンドヌクレアーゼを動員する「足場」RNA(トランス作用性CRISPR RNA又はtracrRNA)。
【0070】
これら成分の組立て及びcrRNAと染色体内の標的配列とのハイブリダイゼーションにより、典型的にはその標的配列又はその近傍でエンドヌクレアーゼによる染色体の切断を生じる。
【0071】
切断には、標的DNAが、crRNA標的配列の十分近傍に、典型的には標的配列の3’端のすぐ隣に位置した、Cas酵素の認識部位(プロトスペーサー隣接モチーフ、又はPAM)を含有することも必要とする。
【0072】
DNA破断の細胞修復は、その標的座位での塩基の挿入/欠失/変異及び突然変異をもたらし得て、その遺伝子座の不活性化をもたらすことも多い。
この3成分システムは、crRNAとtracrRNAを一緒に融合して、キメラ一本鎖ガイドRNA(sgRNA又は単にgRNAと略される)を創出することによって簡素化されている。sgRNAの標的配列とのハイブリダイゼーションが、PAM部位の隣接/上流での標的DNAの切断をもたらす。故に、sgRNAは、crRNA成分(標的配列を決定する)とtracrRNA成分(エンドヌクレアーゼを動員する)を含んでなるとみなすことができる。従って、本明細書に記載のような使用のためのベクターは、同一のtracrRNA成分をそれぞれ有する、複数のsgRNAをコードし得る。
【0073】
SaCas9によって認識される、sgRNA由来のtracrRNA成分の例は、以下の配列:
GTTTTAGTACTCTGGAAACAGAATCTACTAAAACAAGGCAAAATGCCGTGTTTATCTCGTCAACTTGTTGGCGAGATTTTT
を有して、以下の実施例に記載のベクターにおいて使用される。
【0074】
本発明の文脈において有用なII型CRISPRシステムの大多数で、エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質である。例としては、黄色ブドウ球菌(SaCas9)、化膿連鎖球菌(SpCas9)、髄膜炎菌(NM Cas9)、サーモフィルス菌(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラ(TD Cas9)、又はSpCas9のD1135E、VRER、EQR、又はVQR変異体のような変異体が挙げられる。
【0075】
これらの酵素によって認識されるPAM配列は、以下の通りである:
【0076】
【0077】
比較的小さなサイズであるため、SaCas9とその変異体は、AAVゲノムの制限されたコード能に照らして、好ましい場合がある。例えば、Ran et al., Nature 520, 186-191 (2015)、及びその中で引用された参考文献を参照のこと。
【0078】
ある種のCRISPR-Casシステムは、tracrRNAを機能に必要としない場合がある。例えば、Cpf1は、クラス2CRISPR-Casシステムの1本鎖RNA誘導型エンドヌクレアーゼであって、Cas9とは異なる特徴を有するロバストDNA干渉に媒介すると報告されており、tracrRNAを必要とせず、TリッチPAM配列を認識する。それは、ねじれ型(staggered)2本鎖破断を介してDNAを切断する。Zetsche et al., Cell, Volume 163(3), p759-771, 2015年10月22日(最初にオンラインで公表されたのは2015年9月25日)を参照のこと。
【0079】
本明細書において、「ガイドRNA」という用語は、crRNAとsgRNAを包含するように使用される。典型的には、本発明のベクターは、関連する標的部位へ指向されるsgRNAをコードする。しかしながら、エンドヌクレアーゼが機能するのに必要とするならば、tracrRNAも提供される限りにおいて、crRNAを利用するベクターも使用してよい。必要とされる場合、tracrRNAは、crRNAと同じベクターか又はエンドヌクレアーゼと同じベクターによって適宜コードされ得る。
【0080】
CRISPRシステムのタンパク質成分は、エンドヌクレアーゼとして表され、適正なRNA因子と結合する場合に、酵素活性(即ちDNAニッカーゼ活性)を有し得る。このような態様において、エンドヌクレアーゼは、染色体のDNAを関連する標的部位で切断するものである。
【0081】
触媒的に活性のあるエンドヌクレアーゼを使用する場合、ガイドRNAによって認識される標的配列は、切断によって遺伝子の不活性化が生じる場合は、その遺伝子のどの部分にあってもよい。ある態様では、標的配列が遺伝子の転写部分に位置していて、場合によってはコーディング配列の内部にあることが望ましい場合がある。
【0082】
アクアポリン遺伝子、特にAQP1の場合、標的配列(又は2つのガイドRNAを利用する場合は、両方の標的配列)は、第1エクソン配列内に位置することが望ましい場合がある。
【0083】
本明細書に記載されるいくつかのアプローチでは2つの異なるガイドRNAを利用し、単一細胞へ送達され、同じ遺伝子内の異なる標的配列をそれぞれ指向する。このことは、関連遺伝子の一部の欠失を引き起こすことによる遺伝子不活性化の効率を高める場合がある。そのような場合、両方の標的配列は、同じ遺伝子の転写部分に位置しており、場合により同じ遺伝子のコーディング配列内にともに位置してもよい。
【0084】
ガイドRNAによって特定される切断部位は、好適な距離、例えば1kbより長く、1kb以下、500bp以下、又は250bp以下、例えば50bp~250bp離れていてもよい。それらは、少なくとも10bp、少なくとも25bp、少なくとも50bp離れていてもよい。
【0085】
しかしながら、エンドヌクレアーゼタンパク質は、酵素的に活性である必要はない。触媒的に不活性(又は「活性でない」)エンドヌクレアーゼタンパク質も、ガイドRNAの標的となるプロトスペーサー部位で結合する能力を保有するため、本発明の文脈では使用することができる。結合すると、触媒的に活性でないエンドヌクレアーゼは、転写の開始(例えばプロトスペーサー部位が遺伝子のプロモーター内にある場合)又は伸張(それがエクソン又はイントロン内部にある場合)を立体的に阻害する場合がある。あるいは、触媒的に活性でないエンドヌクレアーゼは、標的遺伝子の発現を阻害するために、転写抑制ドメインへ融合させてもよい。そのような抑制ドメインは、DNAメチル化又は異質染色質化、又はヒストン脱アセチル化を含めた様々な機序を介して転写の抑制又はサイレンシングを引き起こす場合がある。関連する機序に依拠して、エンドヌクレアーゼ-リプレッサー融合体は、転写領域(エクソン配列とイントロン配列が含まれる)、並びにプロモーター、及び転写エンハンサーなどの他の転写因子結合部位を含めた調節配列を含めた、関連遺伝子の異なる部分へ(適正なガイドRNAの設計によって)標的指向し得る。例としては、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン(例えばKox1タンパク質由来)、HP1αタンパク質のCS(クロモシャドウ)ドメイン、Hes1タンパク質のWRPWドメイン、MXI1(Max相互作用タンパク質)、mSin3相互作用ドメイン、及びヒストン脱メチル化酵素LSD1(エンハンサー領域へ標的指向し得る、Lys特異的ヒストン脱メチル化酵素1)が挙げられる。
【0086】
エンドヌクレアーゼ-リプレッサー融合体は、複数の抑制ドメインを含み得る。例えばそれは、同じ抑制ドメインの複数コピー、例えば、同じ抑制ドメインの2、3、4、又は5個の連続した反復配列を含み得る。例えば、4個の連結したmSin3相互作用ドメインの配列は、SID4Xと表記される。
【0087】
転写抑制ドメイン、及び触媒的に活性でないエンドヌクレアーゼとのそれらの使用のさらなる詳細については、例えば、Gilbert et al., Cell 154, 442-451 (2013);Dominguez et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 17, 5-15, (2016)、及びそれらの中で引用された参考文献を参照のこと。
【0088】
故に、「エンドヌクレアーゼ」という用語は、文脈が他に求めなければ、触媒的に活性のあるタンパク質と触媒的に活性のないタンパク質の両方を包含するように使用される。触媒的に活性のないエンドヌクレアーゼは、接頭辞の「d」によって、例えばdCas、dCas9、又はdCpf1と示される場合がある。遺伝子発現を阻害するための触媒的に活性のないエンドヌクレアーゼの使用は(抑制ドメインと一緒であるかどうかに関わりなく)、CRISPR干渉又は「CRISPRi」としばしば表される。
【0089】
エンドヌクレアーゼは、配列PKKKRKVを有する、SV40ラージT抗原NLSのような、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列(NLS)を含み得る。当業者には、多くの他の哺乳動物NLS配列が公知である。エンドヌクレアーゼは、複数コピーのNLS、例えば2又は3コピーのNLSを含み得る。複数NLS配列が存在する場合、それらは、典型的には同じNLSの反復配列である。
【0090】
典型的には、AAVベクターゲノム内では、システムのエンドヌクレアーゼ成分をコードする遺伝子は、RNAポリメラーゼIIプロモーター、例えばウイルス又はヒトのRNAポリメラーゼIIプロモーターの転写制御下にある。例としては、サイトメガロウイルス(CMV)若しくはSV40のプロモーター、又は哺乳動物の「ハウスキーピング」プロモーターが挙げられる。RNA成分(sgRNA、crRNA、又はtracrRNA)をコードする遺伝子は、典型的にはU6又はH1プロモーターのようなRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えばヒトRNAポリメラーゼUIIプロモーター)、又は亢進された活性を保持するか又は有するその変異体の転写制御下にある。
【0091】
ある状況では、上記で考察したように、主として、AAVベクターが担い得るゲノムの比較的制限されたサイズによって課される制約のために、異なるペイロードを担う複数のベクタービリオンを利用することが有益であり得る。
【0092】
例えば、同じ遺伝子内の異なる標的配列をそれぞれ指向する2つの異なるガイドRNAを単一細胞へ送達することは、関連する遺伝子の一部の欠失を引き起こすことによる遺伝子不活性化の効率を高める場合がある。しかしながら、サイズ制約のために、単一のベクターゲノムでは、エンドヌクレアーゼと複数のガイドRNAをコードすることが可能でない場合がある。1つの可能な解決法は、エンドヌクレアーゼと1つのガイドRNAをそれぞれコードする2個のベクタービリオンを利用することを包含する。別の解決法は、エンドヌクレアーゼをコードする1つのビリオンと2個(以上)のガイドRNAコードするもう1つのビリオンを利用することを包含する。それぞれのビリオンが単独で完全なCRISPR装置を担い、標的遺伝子の発現を下方制御することが可能になるはずであるため、第1の選択肢(エンドヌクレアーゼと1つのガイドRNAをそれぞれコードする2個のベクタービリオン)の方がより魅力的であり得る。エンドヌクレアーゼとガイドRNAを異なるベクターへ分離するこの「スプリット」アプローチは、それぞれのタイプの1つのベクターによって形質導入されて下方制御を達成する細胞に依拠する。唯1個のビリオン単独での形質導入では、効果が無いであろう。
【0093】
あるいは、大きなエンドヌクレアーゼの使用には、エンドヌクレアーゼが1つのベクターにコードされ、ガイドRNA(又は複数のガイドRNA)が別のベクターにコードされることが必要になり得る。例えば、エンドヌクレアーゼが転写抑制ドメインを含むCRIPSRiアプローチを利用する場合、AAVベクターゲノムには、ガイドRNAもコードする十分な能力がなく、ガイドRNAをコードするさらなるベクターの使用が必要になるかもしれない。
【0094】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損性のパルボウイルスであって、その1本鎖DNAゲノムは、145ヌクレオチドの末端逆位配列(ITR)を含めて約4.7kbの長さである。AAV血清型2(AAV2)ゲノムのヌクレオチド配列は、Srivastava el al., J Virol, 45: 555-564 (1983)に提示され、Ruffing el al., J Gen Virol, 75: 3385-3392 (1994)によって訂正されている。ITR内には、ウイルスのDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、及び宿主細胞染色体組込みを指向するシス作用性の配列が含まれる。3個のAAVプロモーター(その相対的なマップ位置により、p5、p19、及びp40と命名される)が、rep遺伝子及びcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーデングフレームの発現を推進する。2つのrepプロモーター(p5及びp19)は、単一のAAVイントロンの(ヌクレオチド2107及びヌクレオチド2227での)選択的スプライシングと共役して、rep遺伝子から4種のrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40)の産生をもたらす。Repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を保有する。cap遺伝子は、p40プロモーターより発現され、3種のカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)をコードする。選択的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位が、この3種の関連カプシドタンパク質の産生に関与する。VP2及びVP3は、VP1タンパク質が徐々に短くなったバージョンであり、同一のC末端を有するが、VP1のN末端由来の配列を徐々に長く欠失している。
【0095】
AAV複製、ゲノムのカプシド形成、及び組込みを指向するシグナルは、AAVゲノムのITR内に含まれるため、ゲノムの内部配列(複製及び構造カプシドタンパク質rep-capをコードする)の一部又は全部を発現カセットのような外来DNAに置換して、repタンパク質及びcapタンパク質をトランスで提供することができる。本明細書では、AAVベクターゲノムのITR間に位置する配列を「ペイロード」と表す。
【0096】
特定のAAV粒子の実際の収容能は、利用するウイルスタンパク質に依って変動し得る。典型的には、ベクターゲノム(ITRが含まれる)は、約0.7kb~約5kb、例えば約5kb以下、例えば約4.9kb以下、約4.8kb以下、又は約4.7kb以下である。
【0097】
野生型のAAV ITRは、それぞれ典型的には、長さ145塩基であるが、より短い配列も機能的であり得る。例えば、以下の実施例に記載されるベクターは、野生型AAV2 ITRと機能的に同等である130塩基の配列を利用する。従って、ペイロードは、典型的には、長さ約4.7kb以下、約4.6kb以下、約4.5kb以下、又は約4.4kb以下である。好ましくは長さ4.4kb以下である。
【0098】
故に、組換えAAV(rAAV)は、最大約4.7kb、約4.6kb、約4.5kb、又は約4.4kbのユニークなペイロード配列を含有し得る。
標的細胞の感染後、ベクターからのタンパク質発現及び複製には、相補的DNA鎖を合成して2本鎖ゲノムを形成することが必要である。この第2鎖の合成は、導入遺伝子の発現における律速工程を代表する。
【0099】
第2鎖合成の必要性は、いわゆる「自己相補的AAV」(scAAV)ベクターを使用することによって回避することができる。ここでは、ペイロードが2コピーの同じ導入遺伝子ペイロードを互いに反対の配向で含有する。即ち、第1のペイロード配列にその配列の逆相補体が続く。これらのscAAVゲノムは、相補的ペイロード配列が互いに分子内でハイブリダイズするヘアピン構造、又は2個のゲノム分子が互いにハイブリダイズした2本鎖複合体のいずれかを採用可能である。そのようなscAAVからの導入遺伝子発現は、慣用のrAAVよりずっと効率的であるが、ベクターゲノムの有効なペイロード収容能は、ペイロード配列の2つの相補的コピーを担うゲノムの必要性の故に半分になる。
【0100】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、典型的には大きすぎてscAAVベクターに収容されないが、scAAVベクターには、ガイドRNA配列(及び、必要であればtracrRNA)を担うことに用途を見出す場合があり、エンドヌクレアーゼは、別のベクターよりトランスで提供される。
【0101】
scAAVベクターゲノムには、ITR配列の1つに1以上の突然変異を含有することで1つの末端反復配列での分解を阻害し、結果としてscAAV産生の収率を高める場合がある。従って、scAAV内のITRの1つを末端分解部位のために欠失させても、不活性化突然変異を末端分解部位に含有してもよい。例えば、Wang et al., Gene Therapy (2003) 10, 2105-2111及びMcCarty et al., Gene Therapy (2003) 10, 2112-2118を参照のこと。故に、AAVゲノムの両端にある2つのITR配列は、同一である必要はないことが明らかであろう。
【0102】
scAAVについては、McCarty, Molecular Therapy, 16(10), 2008, 1648-1656に概説されている。
本明細書において、「rAAVベクター」という用語は、一般に、1コピーの所与のペイロード配列のみを有するベクターを表すために使用され(即ち、rAAVベクターはscAAVベクターではない)、「AAVベクター」という用語は、rAAVベクター及びscAAVベクターの両方を包含するために使用される。
【0103】
AAVベクターゲノム内のAAV配列(例えばITR)は、限定されるものではないが、AAV血清型のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV PHP.Bを含めた組換えウイルスを導くことができるどのAAV血清型に由来してもよい。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は当該技術分野において公知である。例えば、AAV1の完全ゲノムは、GenBank受託番号:NC_002077に提供され;AAV2の完全ゲノムは、GenBank受託番号:NC_001401及び Srivastava et al., J. Virol., 45: 555-564 (1983)に提供され;AAV3の完全ゲノムは、GenBank受託番号:NC_1829に提供され;AAV4の完全ゲノムは、GenBank受託番号:NC_001829に提供され;AAV5ゲノムは、GenBank受託番号:AF085716に提供され;AAV6の完全ゲノムは、GenBank受託番号:NC_001862に提供され;AAV7ゲノム及びAAV8ゲノムの少なくとも一部は、GenBank受託番号:AX753246及びAX753249にそれぞれ提供され;AAV9ゲノムは、Gao et al., J. Virol., 78: 6381-6388 (2004)に提供され;AAV10ゲノムは、Mol. Ther., 13(1): 67-76 (2006)に提供され;AAV11ゲノムは、Virology, 330(2) :375-383 (2004)に提供され;AAV PHP.Bは、Deverman et al., Nature Biotech. 34(2), 204-209に記載され、その配列はGenBank受託番号:KU056473.1で寄託されている。
【0104】
ITR配列は、いかなる好適なAAV型に由来してもよい。例えば、それらは、AAV2に由来しても、その機能的同等物であってもよい。以下の実施例に記載されるscAAVベクターは、野生型AAV2 ITRに対して機能的に同等であって、以下の配列:
CCTGCAGGCAGCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCT
及び
AGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCGACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGCTGCCTGCAGG
を有するITRを含有する。
【0105】
AAVベクターは、第1の血清型(「A」)由来のゲノムITR及び第2の血清型(「B」)由来のタンパク質を有し得る。そのようなベクターは、「AAV A/B」型と表す場合がある。しかしながら、ウイルスタンパク質がビリオン粒子の血清学的特性を主に決定するため、そのようなベクターは、依然として血清型Bのものであると表す場合がある。従って、本実施例に記載されるベクターは2型/ShH10のものであるが、一般的には、そのカプシドタンパク質の故に、血清型ShH10のものであるとみなされる。
【0106】
本発明のベクターゲノムを含んでなるビリオン粒子は、典型的には、ウイルスゲノムの複製、ウイルスタンパク質(例えばrepタンパク質及びcapタンパク質)の発現、及びビリオン粒子の組み立てが可能なパッケージング細胞において産生される。パッケージング細胞は、例えばアデノウイルス、E1欠失アデノウイルス、又はヘルペスウイルス由来のヘルパーウイルス機能を必要とする場合もある。当該技術分野では、パッケージング細胞においてAAVベクター粒子を産生する技術は標準技術である。例えばWO01/83692号には、偽型AAVの産生について開示されている。様々な態様では、AAVカプシドタンパク質を修飾して組換えベクターの送達を高めることができる。当該技術分野では、カプシドタンパク質に対する修飾が一般的に公知である。例えばUS2005/0053922号及びUS2009/0202490号を参照のこと。
【0107】
パッケージング細胞を産生する1つの方法は、AAV粒子産生に必要な成分をすべて安定的に発現する細胞株を創出することである。例えば、AAVのrep遺伝子とcap遺伝子を欠いたAAVゲノム、AAVゲノムから分離したAAVのrep遺伝子とcap遺伝子、及びネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能マーカーを含んでなる1つのプラスミド(又は複数のプラスミド)を細胞のゲノムへ組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al., 1982, Proc. Natl. Acad. S6. USA, 79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al., 1983, Gene, 23:65-73)、又は直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter, 1984, J. Biol. Chem., 259:4661-4666)のような手順によって、細菌プラスミドへ導入されている。次いで、パッケージング細胞株にアデノウイルスのようなヘルパーウイルスを感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能で、AAVの大量産生に適していることである。他の好適な方法の例では、プラスミドではなくアデノウイルス又はバキュロウイルスを利用して、AAVゲノム及び/又はrep遺伝子とcap遺伝子をパッケージング細胞のへ導入する。
【0108】
あるいは、AAVゲノム、AAVタンパク質、及び必要とされるヘルパーウイルス機能をコードする1以上のプラスミドで好適な細胞を単に形質転換させることによって、パッケージング細胞を産生することができる。いわゆる「3重トランスフェクション」法では、これら遺伝子セットの1つをそれぞれ担う3種のプラスミドを利用する。Grieger et al., Nature Protocols 1(3), 1412-128 (2006)、及びその中で引用された参考文献を参照のこと。
【0109】
AAV産生の一般的な原理については、例えば、Carter, 1992, Current Opinions in Biotechnology, 1533-539;及びMuzyczka, 1992, Curr. Topics in Microbial, and Immunol., 158: 97-129に概説されている。様々なアプローチが、Ratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4: 2072 (1984);Hermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6466 (1984);Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5: 3251 (1985);McLaughlin et al., J. Virol., 62: 1963 (1988);及びLebkowski et al., 1988 Mol. Cell. Biol., 7: 349 (1988);Samulski et al. (1989, J. Virol., 63: 3822-3828);米国特許第5,173,414号;WO95/13365号と対応の米国特許第5,658.776号;WO95/13392号;WO96/17947号;PCT/US98/18600号;WO97/09441号(PCT/US96/14423号);WO97/08298号(PCT/US96/13872号);WO97/21825号(PCT/US96/20777号);WO97/06243号(PCT/FR96/01064号);WO99/11764号;Perrin et al. (1995) Vaccine 13: 1244-1250;Paul et al. (1993) Human Gene Therapy 4: 609-615;Clark et al. (1996)Gene Therapy 3: 1124-1132;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;及び米国特許第6,258,595号に記載されている。
【0110】
scAAV産生の技術については、Grieger et al., Molecular Therapy 24(2), 287-297, 2016に記載されている。
このように、本発明は、本明細書に記載される個々の感染性AAVビリオン粒子を産生可能なパッケージング細胞を提供する。パッケージング細胞は、典型的には、哺乳動物細胞、例えば霊長動物細胞、例えばヒト細胞のような真核細胞である。典型的には、それは細胞株である。1つの態様では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞(HEK293細胞又はHEK293T細胞)、及びPerC.6細胞(同族の293株)のような安定的に形質転換された癌細胞であり得る。別の態様では、パッケージング細胞は、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換したヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、及びFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)のように、形質転換された癌細胞ではない細胞である。
【0111】
ShH10血清型
本発明のAAVビリオン粒子は、Klimcsak et al., (2009), A Novel Adeno-Associated Viral Variant for Efficient and Selective intravitreal Transduction of Rat Muler Cells[ラットミュラー細胞の効率的及び選択的な硝子体内形質導入のための新規アデノ随伴ウイルス変異体].PloS ONE 4(10): e7467(doi: 10. 1371/journal.pone.0007467)に記載のようなShH10血清型である。この血清型は、毛様体及び脈絡叢の効率的で特異的な形質導入を提供することが見出されている。
【0112】
AAVベクタービリオンにおける血清型の主たる決定因子は、カプシドタンパク質である。ShH10カプシドタンパク質VP1の公表配列は下記の通りであり、本明細書では、「ネイティブ」ShH10VP1配列と表す:
VP1:
【0113】
【0114】
この配列は、残基:V319(AAV6ではI)、D451(AAV6ではN)、N532(AAV6ではD)、及びN642(AAV6ではH)以外は、AAV6のVP1カプシドタンパク質と同一である。
【0115】
AAV6(Rutledge et al., J. Virol., 72(1), 309-319, 1998)との類推によって、VP2及びVP3のネイティブ配列は以下の通りであると考えられる:
VP2:
【0116】
【0117】
VP3:
【0118】
【0119】
従って、本発明のAAVビリオンは、典型的には、上記ネイティブVP1配列を有するか又はそれに対して少なくとも90%の同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む。VP1カプシドタンパク質は、ネイティブ配列に対して少なくとも90%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。典型的には、VP2カプシドタンパク質は、残基:V319、D451、N532、及びN642のうち1、2、3、又は4個すべてを含有することが望ましく、これら残基の4個すべてを含有することが好ましいであろう。
【0120】
追加的又は代替的に、本発明のAAVビリオンは、典型的には、上記ネイティブVP2配列を有するか又はそれに対して少なくとも90%の同一性を有するVP2カプシドタンパク質を含む。VP2カプシドタンパク質は、ネイティブ配列に対して少なくとも90%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。典型的には、VP2カプシドタンパク質は、残基V:182、D314、N395、及びN505のうち1、2、3、又は4個すべてを含有することが望ましく、これら残基の4個すべてを含有することが好ましいであろう。
【0121】
追加的又は代替的に、本発明のAAVビリオンは、典型的には、上記ネイティブVP3配列を有するか又はそれに対して少なくとも90%の同一性を有するVP3カプシドタンパク質を含む。VP3カプシドタンパク質は、ネイティブ配列に対して少なくとも90%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。典型的には、VP3カプシドタンパク質は、残基:V117、D249、N330、及びN440のうち1、2、3、又は4個すべてを含有することが望ましく、これら残基の4個すべてを含有することが好ましいであろう。
【0122】
典型的には、VP1、VP2、及びVP3のタンパク質の全3種は、それぞれのネイティブ配列に対して少なくとも90%の同一性、例えば、ネイティブ配列に対して少なくとも90%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0123】
追加的又は代替的に、VP1、VP2、及びVP3のタンパク質の全3種は、残基:V117、D249、N330、及びN440(VP1配列のように番号付け)のうち1、2、3、又は4個すべてを含有し、好ましくはこれら残基の4個すべてを含有し得る。
【0124】
上記に提示される候補配列と参照配列の間のアミノ酸配列同一性%は、両配列を並置させて必要であればギャップを導入し、保守的置換を配列同一性の一部として考慮せずに、最適アライメントを達成した後で、参照配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。同一性(%)値は、WU-BLAST-2(Altschul et al., Methods in Enzymology, 266: 460-480 (1996))によって決定し得る。WU-BLAST-2は、そのほとんどがデフォルト値へ設定される、いくつかの検索パラメータを使用する。調整可能パラメータは以下の数値で設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。アミノ酸配列同一性(%)の値は、WU-BLAST-2によって決定されるような一致する同一残基数を、参照配列の全残基数(アライメントスコアを最大化するためにWU-BLAST-2によって参照配列へ導入されるギャップは無視する)で割り、100を掛けることによって決定される。
【0125】
保存的置換は、アミノ酸クラス内での置換及び/又はBLOSUM62マトリックスにおいて陽性スコアとなる置換として定義され得る。
ある分類によれば、アミノ酸クラスは、酸性、塩基性、非荷電極性、及び非極性であり、酸性アミノ酸はAsp及びGluであり;塩基性アミノ酸はArg、Lys、及びHisであり;非荷電極性アミノ酸はAsn、Gln、Ser、Thr、及びTyrであり;そして非極性アミノ酸はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、Trp、及びCysである。
【0126】
別の分類によれば、アミノ酸クラスは、低親水性、酸/酸アミド/親水性、塩基性、低疎水性、及び芳香族性であり、低親水性アミノ酸はSer、Thr、Pro、Ala、及びGlyであり;酸/酸アミド/親水性アミノ酸はAsn、Asp、Glu、及びGlnであり;塩基性アミノ酸はHis、Arg、及びLysであり;低疎水性アミノ酸はMet、Ile、Leu、及びValであり;そして芳香族アミノ酸はPhe、Tyr、及びTrpである。
【0127】
BLOSUM62マトリックスにおいてスコアが陽性になる置換は以下の通りである:
【0128】
【0129】
アクアポリン(AQP)
アクアポリンは、水分子が生体膜を通過する輸送を促進する膜内在性タンパク質である。それらは、6個の膜貫通へリックスの束が5つのループ領域に連結し、ループ領域のうち2つは、保存されたアスパラギン-プロリン-アラニン(NPA)モチーフを保有して膜の各側にそれぞれ位置している、共通の全体構造を共有する。
【0130】
水輸送におけるその役割の故に、それらは、房水及びCSFなどの細胞外液の産生を含めた様々な機能に関与している。AQP1ノックアウトマウスは、正常マウスと比較して低下したIOPを示し(Zhang et al., J. Gen. Physiol., 2002, 119: 561-569)、AQP4に対するsiRNAは、IOPを低下させるための療法として提唱されている(WO2008/067382号)が、効力は実証されていない。
【0131】
哺乳動物は、13種の異なるアクアポリン遺伝子を保有すると考えられている。ヒト及びマウスのアクアポリン遺伝子の詳細を以下の表1及び表2に示す。
毛様体及び/又は脈絡叢では、少なくともアクアポリンAQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、及びAQP11を発現すると考えられている。故に、これらのいずれも治療の標的を代表し得る。
【0132】
毛様体では、AQP1、AQP4、及びAQP5が最も高度に発現するアクアポリンであり、眼の病態への特に良好な標的を代表し得る。
AQP1とAQP4は、脈絡叢でも高度に発現しているため、脳の病態への特に良好な標的になり得る。
【0133】
【0134】
【0135】
炭酸脱水酵素(CAR)
炭酸脱水酵素は、二酸化炭素及び水の重炭酸イオン及びプロトンへの相互変換を触媒する酵素のファミリーである。アセタゾラミド、メタゾラミド、ドルゾラミド、及びブリンゾラミドのような局所炭酸脱水酵素阻害剤が緑内障の治療に使用されているのは、主に房水の産生に対するそれらの阻害効果の故である。
【0136】
酵素の細胞内局在は多様である。それらは、細胞質性(CAR1、2、3、7、及び13)、ミトコンドリア性(CAR5a及び5b)、分泌性(CAR6)、又は膜結合性であり得る(ヒト及びチンパンジー以外の種ではCAR4、9、12、14と、及び15)。CAR8、10、及び11の機能は不明なままであり、触媒活性を有さないかもしれない。CAR15は、ヒト及びチンパンジーでは発現していないようである。
【0137】
ヒト及びマウスの炭酸脱水酵素遺伝子についての詳細を以下の表3及び表4に示す。毛様体及び/又は脈絡叢では、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、及びCAR14が発現していると考えられている。マウスの毛様体では、CAR15も発現している。毛様体では、CAR2、CAR3、及びCAR14が最も高度に発現していると考えられているため、良好な標的の代表となる。緑内障において炭酸脱水酵素を低下させるためのsiRNAの使用に関わる以前の研究(Jimenez et al., RNAi: A New Strategy for Treating Ocular Hypertension Silencing Carbonic Anhydrases[炭酸脱水酵素を沈静化することによって高眼圧を治療するための新たな戦略]ARVO Abnr 405, 2006)では、CAR2、CAR4、及びCAR12に対するsiRNAがウサギにおいてIOPを低下させると報告されている。従って、CAR4及びCAR12も、良好な標的の代表になり得る。
【0138】
脈絡叢では、CAR2、CAR4、及びCAR12が最も高度に発現していると考えられている。
【0139】
【0140】
【0141】
緑内障
緑内障は、視神経に傷害が生じる、眼に悪影響を及ぼす病態であって、失明につながる可能性がある。
【0142】
緑内障は、原発性又は続発性であり得る(続発性緑内障では、IOPの上昇が別の病態又は損傷の結果として生じる)。
原発性緑内障のサブタイプには、開放角緑内障(最も一般的なタイプ)、閉塞隅角緑内障、及び正常眼圧緑内障(NTG、低眼圧緑内障又は正常圧緑内障としても知られている)が含まれる。
【0143】
続発性緑内障は、例えば、眼損傷、炎症(例えばブドウ膜炎)、白内障、糖尿病(糖尿病性網膜症)、網膜中心静脈閉塞、血管新生(例えば新生血管緑内障をもたらす虹彩の血管新生)、及び腫瘍のように眼への血流を制限する病態より生じ得る。
【0144】
いずれの場合でも、視神経への傷害の主因は、眼圧(IOP)である。眼圧(IOP)の低下は、視神経への継続的な傷害を止めることによって、進行及び失明を概ね予防する。このことは、IOPが正常範囲内にある、正常眼圧緑内障にも当てはまる(Anderson DR; Normal Tension Glaucoma Study. Collaborative normal tension glaucoma study.[正常眼圧緑内障研究:正常眼圧緑内障についての共同研究]Curr. Opin. Ophthalmol. 2003 Apr; 14(2): 86-90)。
【0145】
現在、IOPを低下させるための治療アプローチの大多数は、例えば線維柱帯網又はシュレム管を介した、房水の眼からの漏出(又は流出)を改善させることが中心である。毛様体による房水産生を低下させることが比較的無視されてきたのは、おそらく好適なアプローチがまだ同定されていないためであろう。しかしながら、本発明の材料及び方法は、房水産生を阻害するための簡便で直截的な手段を提供する。IOPを低下させること又はその増加を阻害することより、すべてのタイプの緑内障が恩恵を受ける可能性があるため、本明細書に記載されるベクター及び方法は、(限定されるものではないが)上記の緑内障を含めた多様な緑内障の治療に使用するための可能性を有すると考えられる。
【0146】
本明細書に記載される材料及び方法は、新生血管緑内障、網膜中心静脈閉塞、眼虚血症候群、及び慢性網膜剥離のような、虹彩ルべオーシス(虹彩血管新生)を引き起こす病態にも有益であり得る。それらは、「盲目の痛みを伴う眼」を引き起こす病態にも使用を見出すかもしれない。
【0147】
CSF産生及び頭蓋内圧に関連した病態
脳脊髄液(CSF)は、毛様体と生理学的に酷似している脈絡叢によって産生される。結果として、本明細書に記載されるベクター及び方法は、CSF産生を阻害すれば病理又は症状が改善される病態を治療するために使用することができる。
【0148】
水頭症は、脳内に脳脊髄液(CSF)が蓄積する病態であり、典型的には、必ずではないが、頭蓋内圧の上昇をもたらす。水頭症は、「交通性」(髄液循環への再吸収又は漏出における欠陥によって引き起こされる)又は「非交通性」(脳内のCSF流における欠陥によって引き起こされる)として分類することができ、いずれも先天性又は後天性であり得る。
【0149】
後天性水頭症は、髄膜炎、脳腫瘍、及び神経系障害を含めた広範囲の病態によって引き起こされ得る。
正常圧水頭症は、CSF圧が正常境界内にあるか又はごく間欠的に上昇する、交通性水頭症の特定の形態である。
【0150】
現行の治療法には経口医薬品が含まれるが、現行の薬剤は受容し難い多くの副作用を示し、その使用を制限する。脳室と腹部の間にシャントを導入することによる外科的介入も可能であるが、そのような手技は、失敗及び合併症の比率が高い(ある研究では、5歳以上の小児で最大48%、成人で27%)。
【0151】
病態の根本原因に拘らず、CSF産生を阻害することは、頭蓋内圧を低下させることに役立ち、それ故に療法上の利益を提供するはずである。
CSF産生を阻害することから恩恵を受ける可能性がある他の関連病態には、良性頭蓋内亢進症(BIH)又は偽性脳腫瘍(PTC)としても知られる特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)が含まれる。IIHの患者は、頭痛、悪心、嘔吐、及び耳鳴りを示す。治療しないでおくと、この病態は、視神経円板の腫脹から失明を引き起こす可能性がある。
【0152】
医薬組成物及び投与経路
本明細書に記載の核酸、ビリオン等は、医薬組成物に製剤化することができる。
投与は、末梢性、例えば静脈内、皮膚、若しくは皮下、経鼻、筋肉内、又は腹腔内であり得る。しかしながら、典型的には、緑内障を治療するための投与は、硝子体内又は前房内の注射によるものであり、水頭症を治療するための投与は、例えば髄腔内注射又は頭蓋内への注射若しくは注入、例えば脳室内への注射又は注入による、中枢性、即ち、中枢神経系(CNS)への直接投与であろう。
【0153】
医薬組成物は、上記の物質の1つに加えて、医薬的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、又は当業者に周知の他の材料を含み得る。そのような材料は、無害であるべきで、有効成分の効力に干渉してはならない。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路に依拠する場合がある。
【0154】
静脈内、皮膚、又は皮下注射の場合、有効成分は、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性、及び安定性を有する、非経口的に許容される水溶液剤の形態であろう。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液のような等張性のビヒクルを使用して、好適な溶液剤を調製することが十分可能である。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/又は他の添加剤を必要に応じて含めてよい。
【0155】
CNSへ直接投与するための組成物は、典型的には、保存剤や他の賦形剤を欠いた最小限の組成物であって、投与時に特別に調製され得る。
投与は、好ましくは、「予防有効量」又は「治療有効量」(場合に応じて)でなされ、これは、その個体が恩恵を示すのに十分な量である。投与される実際量と投与の速度及び時間経過は、個々の被験者とその病態の本質及び重篤度に依拠し得る。治療薬の処方、例えば投与量の決定等は、医療従事者と他の医師の責任の範囲内にあり、典型的には治療すべき障害、個々の患者の病態、送達部位、投与方法、及び医療従事者に公知の他の因子が考慮される。
【0156】
上記した技術及びプロトコールの例については、「レミントン製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」第20版(2000)、出版元:リッピンコット、ウィリアム&ウィルキンス(Lippincott, Williams & Wilkins)に見出すことができる。
【実施例】
【0157】
材料及び方法:
DNAクローニング
sgRNAガイドを挿入するためのアクセプター部位を有するAAV-SaCas9をコードするプラスミドは、Addgene(https://www.addgene.org/61591)より購入した。Golden Gate法を使用して合成オリゴヌクレオチド(シグマ、英国)を挿入し、様々なRNAガイドを創出した。Maxi Prepプラスミドキット(キアゲン、英国)を使用して、プラスミドを増やした。
【0158】
【0159】
細胞培養
自然に形質転換されるマウスのRPE(網膜色素上皮)細胞株B6-RPE071及びヒト ミュラー細胞株(UCLB、英国ロンドン)を、10%熱不活化胎仔ウシ血清(FCS)、2ミリモル/L L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、100U/mLペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(いずれもPAA Laboratories、オーストリア、パッシングより購入)を含有するDMEM培地において、5%CO2雰囲気にて37℃で培養した。
【0160】
マウス飼育
すべてのin vivo実験において、6~8週齢の雌性C57BL/6Jマウスを使用した。マウスはCharles River Laboratoriesより入手し、英国内務省からの許可の下にブリストル大学で維持した。150μlのケタミン/Rompun混合物の腹腔内注射により麻酔した後、Micron IVプラットフォーム(Phoenix research labs、米国)での基底部造影又はTonolab反跳式眼圧計による測定(iCare、フィンランド)のようなin vivo手技を実施した。
【0161】
マウス及びヒトのsgRNAの設計
Ensembl(https://www.ensembl.org)より出力したマウスAqp1 cDNA配列をBenchling(https://benchling.com)に読み込んだ。各標的についてコンピュータで予測されるオフターゲット部位に基づいて、最適なsgRNAのいくつかを選択し、Golden Gate Assemblyプロトコル(ニュー・イングランド・バイオラボ)を使用して、プラスミドへクローニングした。簡潔に言えば、T4 PNK酵素とT4リガーゼバッファー(ニュー・イングランド・バイオラボ)を使用して、選択したsgRNAをアニーリングさせてDNA断片のピースにした後、T7リガーゼ酵素とT7リガーゼバッファー(Enzymatics)をBsal-HF酵素(ニュー・イングランド・バイオラボ)とともに使用して、SaCas9-AAVプラスミドへ挿入した。次に、クローニングしたプラスミドをコンピテント大腸菌(インビトロジェン)へ形質転換して溶原培地(LB)にて培養し、さらなる実験のために多量のプラスミドを産生した。製造業者のプロトコールに従って、プラスミド・ミニプレップキット(シグマ)又はマキシプレップキット(キアゲン)によってプラスミドDNAを抽出した。すべてのクローン化プラスミドDNAについて配列決定し(Eurofins Genomics)、sgRNAが成功裡に挿入されたことを確認した。
【0162】
in vitroプラスミドトランスフェクション
マウスRPE細胞とヒト ミュラー細胞を2.5×104個/cm2の濃度で播き、60~70%の細胞集密度に達するまで培養した。トランスフェクション効率を向上させるために、トランスフェクションの当日、培地を半量まで減少させて単純DMEMに交換した。各ウェルの細胞に対して、100μlのOpti-MEM(ギブコ、英国)中の1~2μgのプラスミドDNAを、0.5~0.75μlのリポフェクタミン3000(インビトロジェン、英国)とともに加えた。細胞を48時間トランスフェクトした後で次の実験に進んだ。
【0163】
アデノ随伴ウイルス及び眼内注射
血清型AAV2/1、2/2、2/5、2/6、及び2/8をコードするAAV-CMV-eGFPは、Vector Biolabs(米国)より購入した。ShH10血清型のベクターはUCL眼科研究所(ロンドン)にて産生されたものであり、カプシドプラスミドは、米国カリフォルニア州バークレイ大学のJohn Flanneryの贈与品であり、Addgene(https://www.addgene.org/64867)にて入手可能である。3重プラスミドトランスフェクションによってHEK-293T細胞にてShH10ウイルスを産生した後、AVBミディアムFPLCカラム(GEライフサイエンス)を使用して精製した。すべてのウイルスを1×1013ゲノムコピー/mlの出発濃度に調整し、手術用顕微鏡下で32ゲージ針とハミルトンシリンジを使用して2μlの容量で硝子体内注射した。
【0164】
免疫組織化学
頸椎脱臼による安楽死の後、眼を取り出して、冷4%パラホルムアルデヒド(PFA)で30分間固定し、次いでoptimal cutting temperature embedding medium(サーモ・サイエンティフィック、英国)に入れて凍結切片を作製し(ライカ、M3050S)、12μm厚の各眼の広域断片図を提供した。この眼切片は、GFP検出のために即座にマウントするか又は免疫組織化学分析用に染色した。
【0165】
ウェスタンブロット(WB)
製造業者のプロトコールに従って、細胞又は組織よりCellytic MTバッファー(シグマ)によってタンパク質を抽出した。タンパク質の濃度は、BCAキット(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を使用して測定した。4~12%Bis-Trisゲル電気泳動(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)の後で、タンパク質をiBlot PVDF膜(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)へ転写した。0.1%TBST中の5%ミルクで1時間ブロッキングした後、ブロッキングバッファー中の抗Aqp1抗体(1:1000、アブカム)で膜を4℃にて一晩染色した。0.1%TBSTで洗浄後、HRP結合2次抗体(セル・シグナリング、米国マサチューセッツ州)又はDyLight800 2次抗体(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)とともに膜をインキュベートした。シグナルは、ECL試薬(シグマ)で発色させて、電子画像システム(コニカ・ミノルタ)又はLi-Cor画像システム(LI-COR Biosciences)に保存した。β-アクチン(セル・シグナリング)又はラミンB1(アブカム)をハウスキーピング対照として使用した。
【0166】
RNA単離及び定量的RT-PCR
マウスREP、角膜、毛様体、脈絡膜、及び網膜などのマウス眼組織より、RNeasyミニキット(キアゲン、ドイツ、ハンブルグ)を製造業者のプロトコールに記載されるように使用して、全mRNAを精製した。ワンステップTaqMan q-PCR法(アプライドバイオシステムズ)を使用して、Aqp1遺伝子発現について試験した。同一の試料において結果を測定し、各処理群からの産物の蛍光強度の相対比について、2-ΔΔCt法2を使用して刺激によって算出した。
【0167】
GeneArtゲノム切断アッセイ
DNeasy Blood&Tissueキット(キアゲン)を使用して、トランスフェクトされた細胞よりゲノムDNAを抽出した。遺伝子特異的な2本鎖破断が起きた遺伝子座を、Q5高忠実度DNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)と以下のフォワードプライマー:5’-GGAGGAACTGCTGGCATGCACC-3’;リバースプライマー:5’-CTAGAGTGCCAGCCTCTGCCCT-3’を使用するPCRで増幅させた。PCR産物を変性して再度アニーリングさせ、indelのある鎖がindelが無いか又は異なるindelがある鎖へ再アニーリングされるようにミスマッチを産生した。続いて、ミスマッチを検出し、T7エンドヌクレアーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)によって37℃で20分間切断し、プロテイナーゼK(ニュー・イングランド・バイオラボ)による37℃で5分間のインキュベーションによって終結させた。続いて、アガロースゲル電気泳動で断片を分析した。切断活性のより正確な結果のために、Agilent DNA 1000アッセイ(Agilent Technologies)用にPCR反応物をブリストル大学ゲノミクス研究施設へ送付した。結果を、ImageJ 1.46r(米国国立衛生研究所)を使用して定量した。
【0168】
in vivo実験
Vetelar(ケタミン塩酸塩100mg/mL、ファイザー、英国)及びRompun(キシラジン塩酸塩20mg/mL、バイエル、英国)と無菌水との比0.6:1:84の混合物の腹腔内(i.p.)注射によって、成体のC57BL/6マウスを麻酔した。滅菌33ゲージ針を装着したハミルトンマイクロシリンジを使用して、ShH10-Aqp1(2種のプラスミドを混合)を2μlの容量で片眼に硝子体内注射した。対照として役立つ反対側の眼は、未処理のままにするか又はShH10-GFPを硝子体内注射した。眼異常を発症したごく数匹のマウスは、除外した。
【0169】
2.5%イソフルランを100%酸素とともに使用してマウスを麻酔し、Tonolab反跳式眼圧計(TonoVet)によってIOPを測定した。IOPは、午後遅く(午後4時頃)に測定した。処理後3週間又は6週間でさらなる分析のためにマウスをと殺した。
【0170】
この方法は、承認済みのブリストル大学研究ガイドラインに準拠して行われ、内務省プロジェクトライセンス30/3045及び30/3281の下での実験プロトコールはすべてブリストル大学の倫理審査会によって承認された。
【0171】
高眼圧モデル
成体C57BL/6マウスをVetelar及びRompunで麻酔した。既報3の手順に従って、各マウスの両眼の眼周囲結膜脳弓を通して、デキサメタゾン-21-アセテート(DEX-Ac)(シグマ、200μg/眼)を注射した。同じDEXA処理を週1回施して、IOPをある一定レベルに安定させた。DEX-Ac処理の2週間後に、各マウスの片眼へAAV処理物を無作為に硝子体内注射した。
【0172】
マイクロビーズ閉塞モデルの誘導とマイクロビーズ(インビトロジェン)の調製については、既報4の通りである。マイクロビーズ注射の前にIOPベースラインを測定した。トロピカミド点眼剤によって瞳孔を拡張させた後で、各眼の前眼房へ約3×106個のビーズを注射した。マイクロビーズ注射の1週間後に、各マウスの片眼へAAV処理物を無作為に硝子体内注射した。
【0173】
AAV処理後3週目に、すべてのマウスのIOPを測定した。実験の終点で、Micron IV(Phoenix research labs)を使用して、網膜と角膜の厚さを測定した。次いで、毛様体におけるAqp1タンパク質発現と網膜中の神経節細胞計数のためにマウスをと殺した。
【0174】
免疫蛍光及び免疫組織化学
マウスの両眼を切り出して、2%パラホルムアルデヒド(サーモフィッシャー)で4℃にて一晩固定し、エタノールで脱水後、パラフィン包埋とヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色のために、ブリストル大学の組織学研究所へ送付した。
【0175】
マウスの両眼を、ドライアイスを使用して、OCT(optimal cutting temperature compound、サーモ、米国マサチューセッツ州ウォルサム)において瞬間凍結させた。12μm厚の凍結切片を4%PFAで10分間固定し、ウサギ抗マウスAqp1抗体(1:100希釈、アブカム)、及びヤギ抗マウスCD45抗体(1:100希釈、BDバイオサイエンス)を、2次抗体(1:200希釈、ライフテクノロジーズ)とともに用いて免疫染色した。マウス網膜を切開して、4%PFAで2時間固定した。2%Trition及び2%BSAで1時間ブロッキング後、網膜をBrn-3α(1:50希釈、サンタクルズ)で一晩染色し、フラットマウントした。すべての画像をライカSP5-AOBS共焦点レーザー走査型顕微鏡で撮影した。Brn-3αによる神経節細胞の計数は、Volocity(バージョン6.2.1)によって解析した。
【0176】
臭素化チミジン類似体5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)アッセイ
BrdU溶液(BDバイオサイエンス)を各マウスへ100μl(1μg)i.p.注射した。24時間後、眼の凍結切片のためにマウスをと殺した。凍結切片を4%PFAで10分間固定した。PBSで洗浄後、切片を2N HClとともに37℃で15分間インキュベートした。次いで、PBS洗浄に続き、切片を抗BrdUビオチン化抗体(eBioscience)とともに室温で2時間インキュベートし、BrdUに対するストレプトアビジンeFluor 570(eBioscience)でインキュベーションした。最後に、切片を共焦点イメージング(ライカSP5-AOBS)用にマウントした。
【0177】
ヒト組織の培養及びトランスフェクション
正常ドナーの眼よりヒト眼組織を単離した。いずれのドナーの眼も、ドナーの家族からインフォームドコンセントを受諾後にブリストル・アイバンクより入手し、ヒト組織に関わる研究に対するヘルシンキ宣言のガイドラインに従って管理した。単離したヒト毛様体を上皮細胞培池(ScienCell Research Laboratories)において培養した。毛様体は、経時的インキュベーションの間、ShH10-GFP又はShH10-Aqp1で処理した。毛様体組織を凍結切片のために採取し、24時間、72時間、及び7日間の培養でのGFP発現を検出した。切断活性とAqp1タンパク質発現についても検出し、処理した毛様体組織において最終時点で定量した。
【0178】
統計処理
したがって、結果を平均±標準偏差(S.D.)として提示する。2つの個別実験群の比較は、対応のないスチューデントのt検定とマン・ホイットニー検定によって実施した。多重比較については、ノンパラメトリック解析を、片側ANOVA検定をダン検定とともに使用して実施した。いずれの解析も、グラフパッドプリズム6(グラフパッド・ソフトウェア、バージョン6.01、米国、ラホヤ)を使用して実施した。全体を通して、両側検定を使用した。P≦0.05で有意差有りとみなした。
【0179】
1. Chen, M. et al. Characterization of a spontaneous mouse retinal pigment epithelial cell line B6-PRE07(自発性マウス網膜色素上皮細胞株:B6-PRE07 の特性決定).Investigative ophthalmology & visual science 49, 3699-3706, doi: 10.1167/ivos.07-1522 (2008).
2. Livak, K. J, & Schmittgen, T. D. Analysis of relative gene expression data using real-time quantitative PCR and the 2(-Delta Delta C(T) Method(リアルタイム定量的PCRと2(-ΔΔC(T))法を使用する、相対的な遺伝子発現データの解析).Methods (San Diego, Calif.) 25. 402-408, doi: 10.1006/meth.2001. 1262 (2001).
3. Patel, G. C. et al. Dexamethasone-induced Ocular Hypertension in Mice: Effects of Myocilin and Route of Adminisitration(マウスにおけるデキサメタゾン誘発高眼圧:ミオシリンと投与経路の効果).The American journal of pathology 187, 713-723, doi: 10.1016/j.ajpath.2016.12.003 (2017).
4. Ito, Y. A., Belforte, N., Cueva Vargas, J. L. & Di Polo, A. A Magnetic Microbead Occulsion Model to Induce Ocular Hypertension-Dependent Glaucoma in Mice(マウスにおいて高眼圧依存性緑内障を誘発する磁気マイクロビーズ閉塞モデル).Journal of Visualized experiments: JoVE, e53731, doi: 10.3781/53731 (2016).
結果:
AAVは有糸分裂後細胞における永続的な発現を可能にし、毛様体上皮のターンオーバーはほとんど無いため、これらの細胞への遺伝子送達は持続するはずである。我々は、マウスにおいてShH10血清型の硝子体内注射が効率的な毛様体形質導入をもたらし、毛様体を硝子体内経路より感染させることが可能な、試験した中で唯一の血清型であることを確認した(表1)。オフターゲットの眼組織についても特性決定した。5×1013、5×1012、及び5×1011ゲノムコピー/mlの力価で2μlのShH10-CMV-eGFPを硝子体内注射してから3週間後、両眼についてGFPシグナルの存在を凍結切片によって試験した。毛様体上皮細胞ではGFP発現を観察したが、網膜の形質導入レベルは、投与に使用する力価が低下するにつれて低減した(データ示さず)。また、ドナーの眼由来のex vivo組織を使用して、ShH10がヒト毛様体上皮を感染させることができることを確認した。死後24時間以内に入手したドナーの眼より強膜骨環を切り出し、培養で48時間維持した後で、ビヒクル又は1×1013ゲノムコピー/mlで2μlのShH10-CMV-eGFPを加えた。48時間培養後の蛍光顕微鏡検査法は、ウイルス無しの培養物ではGFPシグナルが無いことを示したが、1×1013gc ShH10-CMV-eGFPで処理した培養物は、広範な低レベルシグナルと、周辺領域での強シグナルの焦点を示した(データ示さず)。
【0180】
その後の実験は、1×1011gc/mlの濃度で2μlのボーラス量により、ミュラーグリア細胞はほとんど感染させることなく、良好なレベルの毛様体形質導入を達成できることを示している。
【0181】
マイクロアレイデータベースを解析し、マウス眼におけるアクアポリン及び炭酸脱水酵素のアイソフォームの相対発現マップを構築した。これにより、Aqp1、4、5、並びにCar2、3、及び14を最も豊富な転写産物として同定し、したがって、これらは、房水産生において重要な役割を果たす可能性がある(
図1)。マウス眼について、主要なアクアポリン及び炭酸脱水酵素のアイソフォームのタンパク質及びRNAの発現並びに組織分布を決定した(
図2)。これにより、遺伝子標的の毛様体発現とガイド選択を確認した。
【0182】
AAVへパッケージすることが可能な新たに記載されたSaCas9を使用するCRISPR-Cas9システムについて試験した。このシステムは、RNAガイド(sgRNA)を使用して、SaCas9が2本鎖DNA破断を引き起こして、典型的にはindel形成と未熟な終止コドンをもたらすように標的遺伝子へ指向させる。Aqp1及びCar2を標的とするいくつかのSaCas9ガイドRNAについて、マウス眼細胞株を用いてin vitroで試験した。T7エンドヌクレアーゼI切断アッセイによって、indel効率が最大26%に達する数種の活性ガイドRNAを同定した(
図3)。2種の有望なガイドRNAを産生して、ShH10ベクターへパーケージした。プラスミドのマップと配列を
図4と
図5に示す。
【0183】
Aqp1は、マウスの毛様体に豊富であるが、角膜にも存在している。レベルについて、定量的PCRとウェスタンブロットによって特性決定した(
図6A~6C)。マウスAqp1のエクソン1を標的とするいくつかのSaCas9特異的sgRNAを設計して、マウスB6-RPE細胞株に対してT7エンドヌクレアーゼ1アッセイを使用してその効力を試験した。B6-RPE細胞におけるAqp1転写物の破壊効率が他のsgRNAより良好であり、エクソン1でのスペーシングが最適であるために、2つのAqp1 sgRNA(BとE、1Bと1Eとしても知られている)を選択して、ベクターへパッケージした。この2つのベクターの混合物を使用してB6-RPE細胞にin vitroで感染させ、72時間後に未処理細胞又はGFPウイルス感染細胞と比較して、Aqp1 RNA転写産物の破壊を確認した(
図6F)。また、SaCas9とsgRNA 1B及び1Eとをコードするウイルスである50:50混合物(「Mix」と称する)をB6-RPE細胞株に使用することによって、Aqp1 RNA転写産物の破壊を確認した(
図6G)。介在エクソン1領域の完全切除を含めたオンターゲット効果を確認した(
図6H)。
【0184】
Aqp1のエクソン1を標的とする2種のShH10ベクターの同じ混合物(「Mix」)を野生型C57BL/6Jマウスの硝子体腔へ注射した。注射から3週間後、選択した眼より毛様体を切除して、Aqp1遺伝子座のゲノム編集、SaCas9 DNAの存在、及び平均2.9mmHgのIOP低下を観察した(
図7C)。対照のGFP発現性ShH10ウイルスを使用すると、IOPの低下を観測しなかった。Aqp1について、ウェスタンブロットによって、毛様体のAqp1タンパク質レベルを試験した(
図7E~7F)。CRISPR処理した眼では、対照の眼と比較して、Aqp1のレベルが低下した。完全な破壊を見ることができないのは、ウェスタンブロッティングのために着色されていない、ウイルスを形質導入された毛様体上皮のみを切除することが容易でないからである。in vivo OCTイメージングを使用すると、角膜の浮腫及び肥厚化又は網膜浮腫を含めたオフターゲット効果は見られなかった(
図7G~7H)。
【0185】
2匹の高眼圧モデルマウスの片眼へShH10-SaCas9ベクターの同じ混合物を導入した。ベクター処理から3週間後、いずれのモデルでも、IOPの有意な低下と毛様体でのAqp1タンパク質発現の有意な低下があった。平均のIOP低下は、マイクロビーズモデル及びステロイドモデルにおいてそれぞれ3.9mmHg及び2.9mmHgであった(
図8)。
【0186】
ex vivoドナーのヒト眼を使用すると、Aqp1は、ウェスタンブロッティング及び定量的PCRによりヒト毛様体でも検出されて豊富である(
図9A~9B)。故に、いくつかのヒトsgRNAガイドを設計して、ヒト293T細胞株に対して試験した。数多くのsgRNAの中で最も有効なものとしてヒトAqp1の1つのsgRNA Kを選択し、これをShH10ベクターへさらにパッケージしてから293T細胞に対して試験して、ヒトAqp1遺伝子座におけるゲノム編集を確認した(
図9D)。我々はまた、GFPをコードするShH10ウイルスをユビキタスCMVプロモーターの制御下で使用して、7日間までの共培養によって、ShH10がヒト毛様体に感染して形質導入することが可能であることを示した(データ示さず)。
【0187】
【0188】
CMVプロモーター下でeGFPを発現する1×1013gc/mlの様々なAAV血清型2μlをC57BL/6Jマウスに硝子体内注射した。3週間後、両眼を摘出し、16μmの厚さで凍結切開し、マウントして、共焦点顕微鏡法によって画像処理した。各血清型を注射した5個の独立した眼について試験し、その結果の概要を示した(ND=検出せず)。
【0189】
さらなる調査を行って、脈絡叢での脳脊髄液形成を調節するための、例えば水頭症の療法として我々のアプローチの適切性について調査した。
C57BL/6Jマウスの側脳室由来の脈絡叢を切り出して組織培養した。CMV-GFPをコードするShH10を5×1011ゲノムコピー加えて、72時間インキュベートした。脈絡叢上皮に沿ってGFP発現が見られ、ShH10がこれらの細胞種を感染させる能力を有することを実証した(データ示さず)。C57BL/6Jマウス脳の冠状凍結切片に対する免疫組織化学により、Aqp1及びAqp4の脈絡叢での存在が実証された。Aqp4が皮質ニューロンに存在するのに対し、Aqp1発現は脈絡叢のみに限定されているように見えた(データ示さず)。
【0190】
本発明について上記の例示態様と共に記載してきたが、本開示により、当業者には多くの等価な修飾態様と変形態様が明らかであろう。従って、説明された本発明の例示態様は、例証用のものであって限定するものではないとみなされる。記載の態様に対して、本発明の精神及び範囲より逸脱することなく、様々な変更を施してよい。本明細書に引用したすべての文書は明示的に援用される。
【0191】
特許出願及び登録特許を含めた、本願のすべての参考文献の教示は、本明細書に完全に援用される。本願が優先権を主張するいずれの特許出願も、出版物及び参考文献について本明細書に記載されるやり方で、その全体が本明細書に援用される。
【0192】
疑念の回避のために、「~を含んでなる(comprising)」、「~を含む(comprise)」、及び「~を含む(comprises)」という本明細書の用語は、それぞれ「~から成っている(consisting of)」、「~から成る(consist of)」、及び「~から成る(consists of)」という用語といかなる場合でも置換可能でもよいと本発明者によって企図される。「約(about)」(又は「概ね(around)」)という用語は、すべての数値において5%の変動を許容する。即ち、約1.25%という値は、1.19%~1.31%を意味する。
【0193】
本明細書に記載される特別な態様は、本発明の例証として示すのであって、それを限定するものとして示すのではないと理解されたい。本発明の主たる特徴は、本発明の範囲より逸脱することなく、様々な態様に利用することができる。当業者は、定型的な試験だけを使用して、本明細書に記載される具体的な手順に対する数多くの均等物を認識するか又は確認することができるだろう。そのような均等物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲によって網羅される。本明細書において言及されるすべての出版物及び特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術水準を示している。出版物及び特許出願は、いずれもそれぞれ個別の出版物又は特許出願が具体的かつ個別的に援用されると示されるのと同じ程度に、本明細書に援用される。
【0194】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「~を含んでなる(comprising)」という用語と共に使用される場合、「1つ(one)」を意味し得るが、それはまた、「1以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、及び「1又は1より多い(one or mor than one)」の意味と一致する。特許請求の範囲における「又は(or)」という用語は、選択肢のみを表すと明確に示されるわけでも選択肢が互いに排他的であるわけでもなければ「及び/又は(and/or)」を意味するために使用されるが、本開示では、選択肢のみと「及び/又は」を表す定義を支持する。本願を通して、「約」という用語は、値を決定するために利用される測定、方法に固有の変動誤差、又は研究対象間に存在する変動が値に含まれることを示すために使用される。
【0195】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、「~を含んでなる(comprising)」(及び「~を含む(comprise)」と「~を含む(comprises)」などの「含んでなる」のあらゆる形)、「~を有している(having)」(及び「~を有する(have)」と「~を有する(has)」などの「~を有している」のあらゆる形)、「~を包含している(including)」(及び「~を包含する(includes)」と「~を包含する(include)」などの「~を包含している」のあらゆる形)、又は「~を含有している(containing)」(及び「~を含有する((contains)」と「~を含有する(contain)」などの「~を含有している」のあらゆる形)という語は、包括的又は非制限的(open-ended)であって、列挙されない追加の要素又は方法工程を排除するものではない。
【0196】
本明細書において使用されるような「又はそれらの組合せ」という用語は、その用語に先行する列挙項目のすべての順列及び組合せを表す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」には、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つが含まれ、ある特定の文脈において順序が重要であれば、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABも含まれると企図される。この例に続けば、BB、AAA、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等のような1以上の項目又は用語の繰返しを含有する組合せが明らかに含まれる。当業者は、典型的には、文脈から他に明らかでなければ、どの組合せにおいても項目又は用語の数に制限が無いことを理解されよう。
【0197】
本明細書に開示され特許請求された組成物及び/又は方法はすべて、本開示に照らせば、過度の実験をすることなく作製及び実施することが可能である。本発明の組成物及び方法を好ましい態様に関して記載してきたが、当業者には、この組成物及び/又は方法に対して、そして本明細書に記載の方法の工程又は工程の連続において、本発明の概念、精神、及び範囲より逸脱することなく、種々の変更を適用し得ることが明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換態様及び修飾態様はすべて、添付の特許請求項によって規定される本発明の精神、範囲、及び概念の範囲内にあると考えられる。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 血清型ShH10のAAVベクタービリオンであって、
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記AAVベクタービリオン。
[項目2] 眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む、前記AAVベクタービリオン。
[項目3] 前記使用が、高眼圧及び/又は緑内障の治療における使用である、項目2に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目4] 前記緑内障が、原発性又は続発性緑内障である、項目3に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目5] 前記原発性緑内障が、開放角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は正常眼圧緑内障(NTG)である、項目3又は4に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目6] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目1~5のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目7] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP4、又はAQP5である、項目6に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目8] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目1~7のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目9] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目8に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目10] 頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列、
を含む、前記AAVベクタービリオン。
[項目11] 前記使用が、水頭症又は特発性頭蓋内圧亢進症の治療における使用である、項目10に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目12] 前記水頭症が、交通性水頭症又は非交通性水頭症である、項目11に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目13] 前記水頭症が、正常圧水頭症である、項目11又は12に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目14] 前記水頭症が、先天性又は後天性である、項目11~13のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目15] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目1に記載のAAVベクタービリオン又は項目10~14のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目16] アクアポリン遺伝子が、AQP1又はAQP4である、項目15に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目17] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目1又は項目10~16のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目18] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目17に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目19] RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9酵素である、項目1~18のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目20] Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はそれらの変異体である、項目19に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目21] 変異体が、SpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、又はSpCas9 VQRである、項目20に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目22] RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性である、項目1~21のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目23] RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含む、項目1~22のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目24] 転写抑制ドメインが、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、項目23に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目25] エンドヌクレアーゼが、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含む、項目1~24のいずれか1項に記載のAAVベクタービリオン又は使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目26] 項目1~25のいずれか1項において定義されるようなAAVベクタービリオンを、医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる、医薬組成物。
[項目27] 眼内注射用に製剤化される、項目26に記載の医薬組成物。
[項目28] 硝子体内又は前房内注射用に製剤化される、項目26に記載の医薬組成物。
[項目29] 中枢投与用に製剤化される、項目26に記載の医薬組成物。
[項目30] 髄腔内注射、頭蓋内注射、頭蓋内注入、脳室内注射、又は脳室内注入用に製剤化される、項目29に記載の医薬組成物。
[項目31] 項目1~25のいずれか1項に定義されるようなAAVベクタービリオンを産生する、パッケージング細胞。
[項目32] 項目1~25のいずれか1項に定義されるような第1及び第2のAAVベクタービリオンを含んでなる治療用キットであって、前記第1及び第2のAAVベクタービリオンは、それぞれ異なる第1及び第2の標的配列に相補的な、それぞれ異なる第1及び第2のガイドRNAをコードする、前記治療用キット。
[項目33] 第1及び第2の標的配列が、同一のアクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子に由来する、項目32に記載の治療用キット。
[項目34] 第1及び第2のベクタービリオンが、コードされたガイドRNA以外は同一である、項目32又は33に記載の治療用キット。
[項目35] 前記第1及び第2のベクタービリオンが、それぞれ医薬的に許容される担体と組み合わせて別々の組成物に製剤化される、項目32~34のいずれか1項に記載の治療用キット。
[項目36] 前記第1及び第2のベクタービリオンが、医薬的に許容される担体と組み合わせて同一の組成物に製剤化される、項目32~34のいずれか1項に記載の治療用キット。
[項目37] (a)血清型ShH10の第1のAAVベクタービリオンであって:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記第1のAAVベクタービリオン;並びに
(b)血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンであって:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記第2のAAVベクタービリオン、
を含んでなる、治療用キット。
[項目38] 第1及び/又は第2の標的配列が、アクアポリン(AQP)遺伝子に由来する、項目37に記載のキット。
[項目39] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目38に記載のキット。
[項目40] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP4、又はAQP5である、項目39に記載のキット。
[項目41] 第1及び/又は第2の標的配列が、炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子に由来する、項目37~40のいずれか1項に記載のキット。
[項目42] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目41に記載のキット。
[項目43] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目42に記載のキット。
[項目44] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9酵素である、項目37~43のいずれか1項に記載のキット。
[項目45] Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はそれらの変異体である、項目44に記載のキット。
[項目46] 変異体が、SpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、又はSpCas9 VQRである、項目45に記載のキット。
[項目47] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性である、項目37~46のいずれか1項に記載のキット。
[項目48] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含む、項目37~46のいずれか1項に記載のキット。
[項目49] 転写抑制ドメインが、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、項目48に記載のキット。
[項目50] 前記又はそれぞれのエンドヌクレアーゼが、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含む、項目37~49のいずれか1項に記載のキット。
[項目51] 第1及び第2の標的配列が、同一の遺伝子に由来する、項目37~50のいずれか1項に記載のキット。
[項目52] 眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは:
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記AAVベクタービリオン。
[項目53] 前記使用が、高眼圧及び/又は緑内障の治療における使用である、項目52に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目54] 前記緑内障が、原発性又は続発性緑内障である、項目53に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目55] 前記原発性緑内障が、開放角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は正常眼圧緑内障(NTG)である、項目53又は54に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目56] 第1及び/又は第2の標的配列が、アクアポリン(AQP)遺伝子に由来する、項目52~55のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目57] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目56に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目58] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP4、又はAQP5である、項目57に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目59] 第1及び/又は第2の標的配列が、炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子に由来する、項目52~58のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目60] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目59に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目61] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目60に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目62] 頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、そして
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第1の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第1の標的配列へ指向させることが可能な第1のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含み;
血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと組み合わせて投与するためのものであり、前記第2のAAVベクタービリオンは、
(i)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;及び
(ii)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の第2の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記第2の標的配列へ指向させることが可能な第2のガイドRNAをコードする核酸配列、
を含んでなる、前記AAVベクタービリオン。
[項目63] 前記使用が、水頭症又は特発性頭蓋内圧亢進症の治療における使用である、項目62に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目64] 前記水頭症が、交通性水頭症又は非交通性水頭症である、項目63に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目65] 前記水頭症が、正常圧水頭症である、項目63又は64に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目66] 前記水頭症が、先天性又は後天性である、項目62~65のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目67] 第1及び/又は第2の標的配列が、アクアポリン(AQP)遺伝子に由来する、項目62~66のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目68] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目62~67のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目69] アクアポリン遺伝子が、AQP1又はAQP4である、項目68に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目70] 第1及び/又は第2の標的配列が、炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子に由来する、項目62~69のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目71] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目70に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目72] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目71に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目73] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9酵素である、項目52~72のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目74] Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はそれらの変異体である、項目73に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目75] 変異体が、SpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、又はSpCas9 VQRである、項目74に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目76] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性である、項目52~75のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目77] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含む、項目52~75のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目78] 転写抑制ドメインが、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、項目77に記載のキット。
[項目79] 前記又はそれぞれのエンドヌクレアーゼが、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含む、項目52~78のいずれか1項に記載のキット。
[項目80] 第1及び第2の標的配列が、同一の遺伝子に由来する、項目52~79のいずれか1項に記載のキット。
[項目81] (a)RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第1のAAVベクタービリオン;及び
(b)アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオン、
を含んでなる、治療用キット。
[項目82] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目81に記載のキット。
[項目83] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP4、又はAQP5である、項目82に記載のキット。
[項目84] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目81に記載のキット。
[項目85] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目84に記載のキット。
[項目86] RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9酵素である、項目81~85のいずれか1項に記載のキット。
[項目87] Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はそれらの変異体である、項目86に記載のキット。
[項目88] 変異体が、SpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、又はSpCas9 VQRである、項目87に記載のキット。
[項目89] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性である、項目81~88のいずれか1項に記載のキット。
[項目90] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含む、項目81~89のいずれか1項に記載のキット。
[項目91] 転写抑制ドメインが、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、項目90に記載のキット。
[項目92] 前記エンドヌクレアーゼが、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含む、項目81~91のいずれか1項に記載のキット。
[項目93] 前記第2のベクタービリオンが、異なる標的配列にそれぞれ相補的な複数のガイドRNAをコードする、項目81~92のいずれか1項に記載のキット。
[項目94] 前記標的配列が、同一の遺伝子に由来する、項目93に記載のキット。
[項目95] 眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、前記ベクタービリオン。
[項目96] 眼圧又は房水産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる、前記ベクタービリオン。
[項目97] 前記使用が、高眼圧及び/又は緑内障の治療における使用である、項目95又は96に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目98] 前記緑内障が、原発性又は続発性緑内障である、項目97に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目99] 前記原発性緑内障が、開放角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は正常眼圧緑内障(NTG)である、項目97又は98に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目100] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目95~99のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目101] アクアポリン遺伝子が、AQP1、AQP4、又はAQP5である、項目100に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目102] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目95~99のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目103] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目102に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目104] 頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的で前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含んでなる、前記ベクタービリオン。
[項目105] 頭蓋内圧又はCSF産生を調節する方法に使用するためのAAVベクタービリオンであって、血清型ShH10のものであり、アクアポリン遺伝子又は炭酸脱水酵素遺伝子由来の標的配列に相補的でRNA誘導型エンドヌクレアーゼを前記標的配列へ指向させることが可能なガイドRNAをコードする核酸配列を含み、そして血清型ShH10の第2のAAVベクタービリオンと併せて投与するためのものであり、前記第2のベクタービリオンは、前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含んでなる、前記ベクタービリオン。
[項目106] 前記使用が、水頭症又は特発性頭蓋内圧亢進症の治療における使用である、項目104又は105に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目107] 前記水頭症が、交通性水頭症又は非交通性水頭症である、項目106に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目108] 前記水頭症が、正常圧水頭症である、項目106又は107に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目109] 前記水頭症が、先天性又は後天性である、項目106~108のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目110] アクアポリン(AQP)遺伝子が、AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、又はAQP11である、項目104~109のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目111] アクアポリン遺伝子が、AQP1又はAQP4である、項目110に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目112] 炭酸脱水酵素(CAR)遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CR5b、CAR6、CAR8、CAR9、CAR10、CAR12、又はCAR14である、項目104~109のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目113] CAR遺伝子が、CAR2、CAR3、CAR4、CAR12、又はCAR14である、項目112に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目114] RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9酵素である、項目95~113のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目115] Cas9酵素が、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、髄膜炎菌Cas9(NM Cas9)、サーモフィルス菌Cas9(ST Cas9)、トレポネーマ・デンティコラCas9(TD Cas9)、又はそれらの変異体である、項目114に記載の使用のためのAAVベクタービリオン。
[項目116] 変異体が、SpCas9 D1135E、SpCas9 VRER、SpCas9 EQR、又はSpCas9 VQRである、項目115に記載のキット。
[項目117] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性である、項目95~116のいずれか1項に記載のキット。
[項目118] 前記又はそれぞれのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に活性でなく、転写抑制ドメインをさらに含む、項目95~116のいずれか1項に記載のキット。
[項目119] 転写抑制ドメインが、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメイン、CSドメイン、WRPWドメイン、MXI1、mSin3相互作用ドメイン、又はヒストン脱メチル化酵素LSD1ドメインである、項目118に記載のキット。
[項目120] エンドヌクレアーゼが、哺乳動物細胞において有効な核局在化配列をさらに含む、項目95~119のいずれか1項に記載のキット。
[項目121] ガイドRNAをコードする核酸配列が、異なる標的配列にそれぞれ相補的な複数のガイドRNAをコードする、項目95~120のいずれか1項に記載のキット。
[項目122] 前記標的配列が、同一の遺伝子に由来する、項目121に記載のキット。
【配列表】