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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】固形燃料燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23B 50/04 20060101AFI20240206BHJP
   F23L 1/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F23B50/04
F23L1/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021026192
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127943
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】500410123
【氏名又は名称】株式会社エルコム
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】相馬 督
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176817(JP,A)
【文献】特開2014-134372(JP,A)
【文献】特開2005-083631(JP,A)
【文献】特開2010-139167(JP,A)
【文献】実開昭61-034329(JP,U)
【文献】特開2008-267645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23B 10/00 - 99/00
F23L 1/00 - 99/00
F23G 5/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを含んだ固形燃料をその溶融温度以上の温度で燃焼させる装置であって、
燃焼室が内部に形成された燃焼部と、
前記固形燃料を空気と混合して斜め下方に向かって前記燃焼室内に噴射する噴射口を有する燃料噴射部と、
燃焼用の空気を前記燃焼室内に噴射する1又は複数の噴射口を有する燃焼空気噴射部とを備えており、
前記燃料噴射部の噴射口における前記固形燃料及び空気の噴射方向が、前記燃料噴射部の噴射口と前記燃焼室の内底面とを結ぶと共に前記燃料噴射部の噴射口と平面視における前記燃焼室の中心部とを結ぶ線分に沿っており、
前記燃焼空気噴射部における少なくともいずれかの噴射口である第1噴射口が、前記燃料噴射部の噴射口より下方に配置され、噴射範囲が前記燃焼室の内底面に掛かるように、平面視において前記燃焼室の中心部に向かう方向に対して傾斜した方向に空気を噴射することで、平面視において前記燃焼室の中心部の周囲を前記燃焼室の内底面の近傍で旋回する旋回気流を形成し、
前記燃焼空気噴射部における少なくともいずれかの噴射口である第2噴射口が、前記燃料噴射部の噴射口より下方に配置され、前記燃焼室の中心部に向かって空気を噴射し、
前記燃料噴射部が噴射した前記固形燃料が、前記内底面に到達する前に前記旋回気流に巻き込まれて前記内底面の上方で浮遊しつつ燃焼することを特徴とする固形燃料燃焼装置。
【請求項2】
前記旋回気流が、前記燃焼室からの排気における一酸化炭素の濃度が120ppm以下となるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の固形燃料燃焼装置。
【請求項3】
前記第1噴射口が、鉛直方向に関して前記燃料噴射部の噴射口との間の距離と前記燃焼室の内底面との間の距離とが等しい位置又はそれより下方の位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の固形燃料燃焼装置。
【請求項4】
前記燃焼部の外側において一方向に沿った空気の供給管をさらに備えており、
前記燃焼空気噴射部が、
前記供給管から前記燃焼室の中心部に向かって直線状に延びた第1空気流路部と、前記第1噴射口と前記第1空気流路部を連結する流路部であって、前記第1空気流路部に沿って前記燃焼室の中心部に向かう空気の流れを、前記燃焼室の中心部の周囲を旋回する方向への流れに変更して前記第1噴射口から噴射されるように湾曲した第1湾曲流路部とを有しており、
前記供給管から前記燃焼室の中心部に向かって、前記第1空気流路部と平行に前記第2噴射口まで直線状に延びた第2空気流路部を有していることを特徴とする請求項に記載の固形燃料燃焼装置。
【請求項5】
前記燃料噴射部が、前記燃焼部の外壁に挿入され、前記固形燃料と混合した空気が通過する燃料供給流路部と、前記燃料供給流路部の外表面に沿って冷却用の空気が通過する冷却空気流路部とを有していることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の固形燃料燃焼装置。
【請求項6】
前記燃料噴射部が、その噴射口と前記燃料供給流路部を連結する流路部であって、前記燃料供給流路部に沿った空気の流れを変更してその噴射口から噴射されるように湾曲した第2湾曲流路部を有しており、
前記冷却空気流路部が、前記第2湾曲流路部内に形成された開口を有し、当該開口を通じて前記冷却用の空気を前記第2湾曲流路部の内表面に当たるように流出させることを特徴とする請求項に記載の固形燃料燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックを含んだ固形燃料を燃焼させる固形燃料燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室内に供給された固形燃料を燃焼させる特許文献1のような燃焼装置がある。本装置では、木屑チップからなる固形燃料を燃焼室の内底面に堆積させる。そして、堆積した固形燃料の周囲に配置されたノズルから燃焼用の空気を噴射し、旋回気流を形成しつつ固形燃料を燃焼させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-134372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固形燃料がプラスチックを含んでいる場合、高温の燃焼室内でプラスチックが溶融する。プラスチックを含んだ固形燃料に特許文献1のような従来の装置を適用すると、燃焼室の内底面において固形燃料が溶融して溜まる。溶融して溜まった固形燃料は、その内部まで燃焼が進みにくく、不完全燃焼が生じやすくなる。また、不完全燃焼によって燃え残りが生じたまま焼却処理を終了した場合、燃え残った燃料が冷えて固まる。固まった燃料は、焼却処理を再開しても燃えにくく、さらなる不完全燃焼の原因になる。このようにして、焼却処理を繰り返すほど、不完全燃焼の原因となる燃え残りが燃焼室内に増え続けてしまう。
【0005】
本発明の目的は、プラスチックを含んだ固形燃料を燃焼させても不完全燃焼が生じにくい固形燃料燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固形燃料燃焼装置は、プラスチックを含んだ固形燃料をその溶融温度以上の温度で燃焼させる装置であって、燃焼室が内部に形成された燃焼部と、前記固形燃料を空気と混合して斜め下方に向かって前記燃焼室内に噴射する噴射口を有する燃料噴射部と、燃焼用の空気を前記燃焼室内に噴射する1又は複数の噴射口を有する燃焼空気噴射部とを備えており、前記燃焼空気噴射部における少なくともいずれかの噴射口である第1噴射口が、前記燃料噴射部の噴射口より下方に配置され、噴射範囲が前記燃焼室の内底面に掛かるように空気を噴射することで、平面視において前記燃焼室の中心部の周囲を前記燃焼室の内底面の近傍で旋回する旋回気流を形成し、前記燃料噴射部が噴射した前記固形燃料が、前記内底面に到達する前に前記旋回気流に巻き込まれて前記内底面の上方で浮遊しつつ燃焼する。
【0007】
これによると、燃料噴射部より下方に配置された第1噴射口から燃焼用の空気が噴射される。この空気の噴射により、燃焼室の内底面の近傍に旋回気流が形成される。燃料噴射部から噴射された固形燃料は燃焼室の内底面に向かって一旦落下するが、内底面に到達する前に内底面の近傍に形成された旋回気流に巻き込まれることで浮き上がり、内底面の上方で浮遊しつつ燃焼する。したがって、固形燃料が内底面に到達しにくく、溶融した固形燃料が内底面に付着しにくい。よって、プラスチックを含んだ固形燃料を燃焼させても、溶融した固形燃料が内底面において不完全燃焼を発生させることが抑制される。また、内底面に固形燃料の燃え残りが生じにくく、燃え残りによる不完全燃焼も生じにくい。
【0008】
また、本発明においては、前記旋回気流が、前記燃焼室からの排気における一酸化炭素の濃度が120ppm以下となるように形成されることが好ましい。これによると、旋回気流が適切に形成された結果、溶融した固形燃料が内底面に付着が抑制され、排気中の一酸化炭素の濃度が120ppm以下となるまで不完全燃焼が抑制される。
【0009】
また、本発明においては、前記第1噴射口が、鉛直方向に関して前記燃料噴射部の噴射口との間の距離と前記燃焼室の内底面との間の距離とが等しい位置又はそれより下方の位置に配置されていることが好ましい。これによると、燃焼室の内底面の近傍に適切に旋回気流を形成でき、もって、不完全燃焼を適切に抑制できる。
【0010】
また、本発明においては、前記燃料噴射部の噴射口における前記固形燃料及び空気の噴射方向が、前記燃料噴射部の噴射口と前記燃焼室の内底面とを結ぶ線分に沿っていることが好ましい。これによると、内底面に向けて固形燃料が噴射される。したがって、かかる内底面に向けて噴射された固形燃料は、その近傍に形成された旋回気流に速やかに巻き込まれ、これによって不完全燃焼が抑制されつつ適切に燃焼する。
【0011】
また、本発明においては、前記線分が前記燃料噴射部の噴射口と平面視における前記燃焼室の中心部とを結んでおり、前記燃焼空気噴射部における少なくともいずれかの噴射口である第2噴射口が、前記燃料噴射部の噴射口より下方に配置され、前記燃焼室の中心部に向かって空気を噴射することが好ましい。これによると、燃料噴射部から固形燃料が中心部に向けて噴射されたところに、第2噴射口からその中心部に向かって空気が噴射される。このため、燃料噴射部から噴射された固形燃料が第2噴射口からの空気によって巻き上げられる。よって、固形燃料が燃焼室の内底面により到達しにくく、溶融した固形燃料が内底面に付着して不完全燃焼の原因となるのがさらに抑制される。
【0012】
また、本発明においては、前記燃焼部の外側において一方向に沿った空気の供給管をさらに備えており、前記燃焼空気噴射部が、前記供給管から前記燃焼室の中心部に向かって直線状に延びた第1空気流路部と、前記第1噴射口と前記第1空気流路部を連結する流路部であって、前記第1空気流路部に沿って前記燃焼室の中心部に向かう空気の流れを、前記燃焼室の中心部の周囲を旋回する方向への流れに変更して前記第1噴射口から噴射されるように湾曲した第1湾曲流路部とを有しており、前記供給管から前記燃焼室の中心部に向かって、前記第1空気流路部と平行に前記第2噴射口まで直線状に延びた第2空気流路部を有していることが好ましい。これによると、1本の供給管から燃焼部の中心部に向けて第1空気流路部及び第2空気流路部を互いに平行に延びるように設けると共に、第1空気流路部からの空気の流れる方向を第1湾曲流路部によって変更している。これにより、空気の噴射方向の異なる2つの噴射口を簡易な構成で設けることが可能である。
【0013】
また、本発明においては、前記燃料噴射部が、前記燃焼部の外壁に挿入され、前記固形燃料と混合した空気が通過する燃料供給流路部と、前記燃料供給流路部の外表面に沿って冷却用の空気が通過する冷却空気流路部とを有していることが好ましい。燃焼室の熱が伝導することで燃料供給流路部が高温になると、プラスチックを含んだ固形燃料が燃料供給流路部と接触して溶融するおそれが高まる。かかる溶融した固形燃料は、焼却処理後に冷えて固まる。固まった固形燃料は、焼却処理を再開しても燃料供給流路部から移動しにくく、焼却処理を繰り返すほど、燃料供給流路部に固形燃料が溜まっていくおそれがある。これに対し、上記構成によると、冷却空気流路部を通過する空気によって燃料供給流路部が冷却される。このため、燃料供給流路部に固形燃料が溜まっていくことを抑制できる。
【0014】
また、本発明においては、前記燃料噴射部が、その噴射口と前記燃料供給流路部を連結する流路部であって、その噴射口からの空気の噴射方向を前記燃料供給流路部に沿った方向から変更するように湾曲した第2湾曲流路部を有しており、前記冷却空気流路部が、前記第2湾曲流路部内に形成された開口を有し、当該開口を通じて前記冷却用の空気を前記第2湾曲流路部の内表面に当たるように流出させることが好ましい。これによると、燃料供給流路部からの空気の流れる方向を第2湾曲流路部によって変更している。したがって、簡易な構成で燃料と空気の噴射方向を調整できる。また、冷却空気流路部が第2湾曲流路部内に開口しており、その開口から第2湾曲流路部の内表面に向けて空気が噴射される。したがって、燃料供給流路部に関する上記効果と同様、第2湾曲流路部に固形燃料が溜まっていくことも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る燃焼装置の全体構成を示す模式図である。
図2図1の燃焼装置のII-II線断面に対応する模式図である。
図3図1の枠IIIで囲まれた領域の拡大図である。
図4図1の枠IVで囲まれた領域の拡大図である。
図5図1の枠Vで囲まれた領域の拡大図である。
図6】実施例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る固形燃料燃焼装置1(以下、燃焼装置1という。)について図1図5を参照しつつ説明する。燃焼装置1はプラスチックを主材料とする固形燃料を燃焼させる装置である。本実施形態の固形燃料は、いわゆる発泡スチロール(ポリスチレン)の廃材がペレット状に成形されたものからなる。なお、ポリスチレンの他、ポリエチレンやポリプロピレンの発泡材の廃材がペレット状に成形されたものが固形燃料として用いられてもよい。また、固形燃料の原料は発泡材の形態をしていなくてもよい。さらに、ペレット化されていない、例えば廃材が細かく破砕されただけのものが固形燃料とされてもよい。
【0017】
燃焼装置1は、図1及び図2に示すように、円柱状の空間である燃焼室100aが内部に形成された燃焼部100と、固形燃料を貯留したホッパ2と、ホッパ2内の固形燃料を適宜の量で下方へと送出する燃料送出部3と、燃料送出部3からの固形燃料を燃焼室100a内へと供給する燃料供給部200と、燃焼用の空気を燃焼室100a内に供給する燃焼空気供給部300と、燃焼装置1の各部の動作を制御する制御部400と、燃焼室100a内の状況を監視する燃焼監視部410と、点火用のバーナ4とを備えている。これらの部材において、燃焼装置1における固形燃料の燃焼時に高温となるような部分は、高い耐熱性を有する金属やセラミックス等の材料から構成されている。以下、「円周方向」及び「径方向」は、燃焼室100aの中心軸C上の点を中心とする水平面に沿った円の円周方向及び径方向を示す。中心軸Cは鉛直方向に沿っている。また、径方向に沿って中心軸Cに向かう側を「内側」、中心軸Cから離隔する側を「外側」と規定する。なお、図1及び図2は、各部の位置関係を部分的に正確に反映しているが全ての位置関係を正確に反映しているわけではない。例えば、図1は、燃料噴射部250並びに燃焼空気噴射部310及び320の鉛直方向に関する位置関係を正しく示しているが、水平方向に関する正しい位置関係は示していない。一方、図2は、燃料噴射部250並びに燃焼空気噴射部310及び320の水平方向に関する位置関係を正しく示しているが、鉛直方向に関する正しい位置関係は示していない。
【0018】
燃焼部100は、燃焼室100aを画定する外壁101と、燃焼室100aを外部と連通させる開口部102と、開口部102に設けられた扉103と、燃焼室100aからの排気が流出する排気口106とを有している。外壁101は円筒状の概略形状を有している。燃焼室100a内は、固形燃料の燃焼時、固形燃料を構成するプラスチックの溶融温度以上の高温になる。このため、外壁101は、外側壁101a及び内側壁101bからなる2重壁の構造を有している。また、外側壁101a内には真空に維持された密閉空間が形成されている。内側壁101bは中実の壁部である。これらの構成により、高温の燃焼室100aから外壁101を通じて熱が放出されるのが抑制されている。開口部102は、外壁101を構成する側壁を水平方向に貫通している。扉103は、片開き方式で外壁101に取り付けられており、燃焼室100aと外部を連通させる開状態と、燃焼室100aと外部の連通を遮断した閉状態とを選択的に取ることができる。固形燃料の燃焼時には扉103が閉状態に維持される。排気口106は、燃焼室100aの上部に形成されており、固形燃料の燃焼によって熱せられた燃焼室100a内の空気を燃焼部100外に流出させる開口である。燃焼部100外へと流出した排気は、図示しない配管系統を通り、給湯のために水を加熱したり暖房のために空気を加熱したり等、その熱が適宜利用された後、大気中に放出される。
【0019】
ホッパ2は、固形燃料を貯留する空間が内部に形成された容器である。ホッパ2には下端に開口が形成され、この開口を通じて燃料送出部3へと固形燃料が落下する。燃料送出部3はスクリューコンベア等の燃料の搬送機構を有し、ホッパ2からの固形燃料を、その送出量を調整しつつ下方の燃料供給部200へと送出する。
【0020】
燃料供給部200は、固形燃料の噴射用の気流を発生させる送風機201と、送風機201が発生させた気流が通る流路部202及び203と、流路部203と接続された燃料噴射部250と、冷却用の気流を発生させる送風機261とを有している。なお、以下において「気流」とは空気の流れを示す。流路部202及び203は気流の通路が内部に形成された管状の部材であり、パイプや継手等から構成されている。流路部202は、送風機201の気流の送出口から上方に向かって湾曲しつつ流路部203の外側の端部と繋がっている。流路部203は、流路部202との接続部から内側に向かって水平に延びている。流路部203の途中には上方から燃料送出部3が接続されている。これにより、燃料送出部3から送出された固形燃料が流路部203内を通過する気流と混合する。流路部203において内側の端部は燃料噴射部250と接続されている。
【0021】
燃料噴射部250は、図2及び図3に示すように、外壁101に挿入された直管部251と、円盤状のフランジ板256及び257からなるフランジ部255と、直管部251の先端に設けられたエルボ管254(本発明における第2湾曲流路部)とを有している。直管部251は円筒状の管部材によって構成されており、径方向に沿って直線状に延びている。直管部251は、外側壁101aに挿入されたソケット部104を貫通しており、内側壁101bに形成された貫通孔105内まで延びている。直管部251は、内管252(本発明における燃料供給流路部)及び外管253からなる二重管の構造を有している。内管252は外管253内に、これらの間に円筒状のジャケット空間253aが形成されるように挿入されている。ジャケット空間253aは、直管部251の内側の端部において内側に向かって開口した開口253bを有している。ジャケット空間253a内には、送風機261が発生させた冷却用の気流が供給される。なお、送風機201が発生させた気流の一部が流路部202及び203から分岐した流路を通じてジャケット空間253a内に供給されてもよい。ジャケット空間253a内を内管252の外表面に沿って気流が通過することにより内管252が冷却される。このように内管252の冷却用の気流が通過するジャケット空間253aを画定する内管252及び外管253の外壁は、本発明における冷却空気流路部に対応する。
【0022】
内管252内には流路部203からの気流が通過する流路252aが形成されている。直管部251の端部にはフランジ板257が固定されている。フランジ板257は内管252の外側端部の外周面及び外管253の外側の端面に固定されている。これにより、フランジ板257は、ジャケット空間253aの外側端部の開口を塞いでいる。フランジ板257は、流路部203の内側の端部に固定されたフランジ板256とボルト・ナット258で固定されている。これにより、流路部203と直管部251が接続されている。流路部203において固形燃料と混合した気流(以下、燃料混合気流という。)は、流路252aの外側端部の開口から流路252a内に流入する。
【0023】
エルボ管254は、大きく開いたV字型の形状を有する管部材である。エルボ管254の一端には直管部251が挿入されており、他端は燃焼室100a内において斜め下方(図1及び図3の矢印Pに示す方向)に向かって開口した開口254aを形成している。矢印Pは、図1に示すように、エルボ管254の開口254aの中心と燃焼室100aの内底面100cの中心C1とを結ぶ線分に沿っている。エルボ管254は、直管部251が挿入された一端部から内側に向かって延び、そこから湾曲して、他端部の開口254aに向かって斜め下方に延びている。エルボ管254内には、流路252aの内側端部の開口及びジャケット空間253aの開口253bが配置されている。
【0024】
流路252aの外側端部の開口から流入した燃料混合気流は、流路252aを通過し、流路252aの内側端部の開口から、図3の矢印Qに沿ってエルボ管254内に流入する。また、ジャケット空間253a内に供給された冷却用の気流がジャケット空間253aの内側端部の開口253bから図3の矢印Rに沿ってエルボ管254内に流入する。矢印Q及びRの両方とも、外側から内側へと向かって直進する方向を示す。流路252aからエルボ管254内に流入した燃料混合気流は、エルボ管254の内表面254bに当たって方向を変え、エルボ管254の開口254aから矢印Pに沿って燃焼室100a内へと噴射される。これにより、燃料混合気流は、図2に示すように、燃焼室100aの中心部に向かって噴射される。中心部は、平面視において中心軸Cの周辺部に相当する。例えば、本実施形態における中心部は、平面視において中心軸Cを中心とし、半径が燃焼室100aの半径の3分の1である円Gの内部とする。以下、この中心部を「中心部G」とする。また、ジャケット空間253aからエルボ管254内に流入した気流は、エルボ管254の内表面254bに当たって方向を変え、エルボ管254の開口254aから矢印Pに沿って燃焼室100a内へと燃料混合気流と共に噴射される。ジャケット空間253aからの冷却用の気流がエルボ管254の内表面254bに当たることでエルボ管254が冷却される。
【0025】
なお、上記のように、エルボ管254の開口254aは燃料混合気流の噴射口であり、本発明における燃料噴射部の噴射口に対応する。また、エルボ管254は、かかる噴射口と直管部251を連結する流路部(本発明における第2湾曲流路部)を構成している。
【0026】
燃焼空気供給部300は、図1に示すように、燃焼用の空気を供給するための気流を発生させる送風機301と、送風機301が発生させた気流が通る流路部302及び303と、流路部302及び303と接続された燃焼空気噴射部310及び320とを有している。流路部302及び303は気流の通路が内部に形成された管状の部材であり、パイプや継手等から構成されている。流路部302は、送風機301の気流の送出口から、燃焼部100の側壁の外表面に沿って鉛直上方に延びている。流路部303(本発明における供給管)は、流路部302の途中から分岐し、流路部302との間に燃焼部100を挟む位置まで水平に延び、そこから燃焼部100の側壁の外表面に沿って鉛直上方に延びている。
【0027】
燃焼空気噴射部310は、流路部302からの気流を燃焼室100a内に噴射する部材である。燃焼空気噴射部310は、図1に示すように燃料噴射部250より下方において、図2に示すように円周方向に関して燃料噴射部250から時計回りに少し離隔した位置に配置されている。燃焼空気噴射部310は、図2及び図4に示すように、水平方向に沿って延びた直管部311及び312を有している。直管部311及び312は、いずれも、円筒状の管部材であり、その両端部に開口が形成されている。一方の端部は流路部302と接続されており、その開口を通じて流路部302からの気流が直管部311及び312内に流入する。他方の端部は外壁101に挿入されたソケット部110を通じて燃焼部100内に挿入されている。ソケット部110は、外側壁101aの外側の壁部に固定された平板部111と、平板部111から外側壁101aを貫通し、内側壁101bに形成された貫通孔115内まで延びた円管部112及び113を有している。円管部112及び113は、図2及び図4に示す通り、円管部112が円管部113の上方に配置されるように互いに鉛直方向に並んでおり、互いに平行に延びている。円管部112及び113のそれぞれは、図2に示すように径方向に対して傾斜した方向に沿って直線状に水平に延びている。直管部311及び312は、円管部112及び113をそれぞれ貫通しており、円管部112及び113に沿ってそれぞれ延びている。直管部311及び312の燃焼室100a側の開口311a及び312a(それぞれ本発明における第1噴射口)は貫通孔115内に配置されている。開口311a及び312aからは、流路部302から直管部311及び312に流入した気流が、直管部311及び312に沿って、図2及び図4の矢印S1及びS2が示す方向に噴射される。この噴射方向は、開口311a及び312aから内側に向かう方向に対して傾斜しており、開口311a及び312aから内側に向かう径方向成分と、平面視において反時計回りに向かう円周方向成分とを含んでいる。
【0028】
直管部312から噴射される気流は、図1に示す円錐台状の領域Wの範囲に噴射される。つまり、開口311aから遠いほど気流の到達範囲が、開口311aの中心を通り矢印S2に沿った軸と直交する方向に広がるような領域に気流が噴射される。直管部312は、かかる領域Wが燃焼室100aの内底面100cに掛かるように内底面100cの充分近くに配置されている。直管部311も同様に、円錐台状の気流の噴射領域が内底面100cに掛かるように内底面100cの充分近くに配置されている。
【0029】
燃焼空気噴射部320は、流路部303からの気流を燃焼室100a内に噴射する部材である。燃焼空気噴射部320は、図1に示すように燃料噴射部250より下方において、図2に示すように円周方向に関して燃焼空気噴射部310から半周ほど離隔した位置に配置されている。燃焼空気噴射部320は、図2及び図5に示すように、径方向に沿って延びた直管部321(本発明における第1空気流路部)及び322(本発明における第2空気流路部)並びに、直管部322の先端に設けられたエルボ管323(本発明における第1湾曲流路部)を有している。直管部321及び322は、いずれも、円筒状の管部材であり、その両端部に開口が形成されている。一方の端部は流路部303と接続されており、その開口を通じて流路部303からの気流が直管部321及び322内に流入する。他方の端部は外壁101に挿入されたソケット部120を通じて燃焼部100内に挿入されている。ソケット部120は、外側壁101aの外側の壁部に固定された平板部121と、平板部121から外側壁101aを貫通し、内側壁101bに形成された貫通孔125内まで延びた円管部122及び123を有している。円管部122及び123は、図2及び図5に示す通り、円管部122が円管部123の上方に配置されるように互いに鉛直方向に並んでおり、互いに平行に延びている。円管部122及び123のそれぞれは、図2に示すように、径方向に沿って直線状に水平に延びている。直管部321及び322は、流路部303から中心部Gに向かって、円管部122及び123をそれぞれ貫通するように円管部122及び123に沿って水平且つ直線状に延びている。
【0030】
直管部321の燃焼室100a側の開口321a(本発明における第2噴射口)は貫通孔125内に配置されている。開口321aからは、流路部303から直管部321に流入した気流が、直管部321に沿って図2及び図5の矢印T1が示す方向に噴射される。矢印T1は、図2に示すように、平面視において開口321aから内底面100cの中心C1に向かう方向を示す。直管部321は、直管部312と同様に、円錐台状の気流の噴射領域が内底面100cに掛かるように内底面100cの充分近くに配置されている。
【0031】
エルボ管323は、図2に示すように、大きく開いたV字型の形状を有する管部材である。エルボ管323の一端には直管部322の内側の端部が挿入されている。エルボ管323の他端には、図2の矢印T2が示す方向に開口した開口323aが形成されている。矢印T2は、図2に示すように、矢印T1が示す方向から平面視で時計回りに鋭角の角度で回転した方向を示す。エルボ管323は、直管部322が挿入された一端部から内側に向かって延び、そこから湾曲して、他端部の開口323aに向かって延びている。直管部322からエルボ管323内に流入した気流は、エルボ管323の内表面323bに当たって方向を変え、エルボ管323の開口323aから矢印T2が示す方向に燃焼室100a内へと噴射される。この噴射方向は、開口323aから内側に向かう径方向成分と、平面視において反時計回りに向かう円周方向成分を有している。このように、エルボ管323の開口323aは燃焼用の空気の噴射口であり、本発明における第1噴射口に対応する。また、エルボ管323は、かかる噴射口と直管部322を連結する流路部(本発明における第1湾曲流路部)を構成している。エルボ管323は、直管部312と同様に、円錐台状の気流の噴射領域が内底面100cに掛かるように内底面100cの充分近くに配置されている。
【0032】
以上の構成において、燃焼空気噴射部310及び320における直管部311及び312並びにエルボ管323から燃焼用の気流が噴射される際、その気流は、燃焼室100aの内底面100c近傍において、内側に向かう方向に対して傾斜した方向に噴射される。この方向は、上記の通り、円周方向に関し、平面視において反時計回りの方向に対応する成分を有している。これにより、燃焼室100aの内底面100c近傍には、平面視において反時計回りに中心部Gの周囲を旋回する旋回気流が発生する。かかる旋回気流は、後述の通り、燃料噴射部250から噴射された固形燃料を巻き込み、燃焼室100a内で浮遊させ続ける程度の風速となるように形成される。なお、上記反時計回りの旋回気流に代えて、平面視で時計回りに中心部Gの周囲を旋回する旋回気流を発生させてもよい。
【0033】
燃焼監視部410は、燃焼室100a内の燃焼状況を監視するための各種センサーを備えている。かかるセンサーには、燃焼室100a内の温度を監視する燃焼温度センサーや燃焼室100aからの排気を監視する排気監視センサーが含まれている。燃焼温度センサーは、燃焼室100a内の空気の温度を検出するセンサーであり、燃焼室100a内に設けられている。排気監視センサーは、燃焼室100a内の排気口106付近又は排気口106と接続された排気の流路に設けられ、排気口106を通じて燃焼部100外へと流出する排気の温度や圧力、一酸化炭素濃度等を検出するセンサーである。これらのセンサーの検出方式はどのようなものであってもよい。例えば、一酸化炭素濃度の検出には、定電位電解式や非分散型赤外線式等の方式が用いられる。これらのセンサーの検出結果は制御部400に送信される。
【0034】
制御部400は、燃料送出部3、バーナー4並びに送風機201、261及び301等、燃焼装置1の各部の動作を制御するための各種の電子回路を有している。制御部400は、各部の動作の制御により、燃焼室100aにおいて固形燃料を以下のように燃焼させる。まず、着火時、制御部400は、燃料噴射部250から燃料混合気流を、燃焼空気噴射部310及び320から気流をそれぞれ噴射させつつバーナー4を駆動する。これにより、燃焼室100a内で固形燃料が燃焼し始める。固形燃料の燃焼が安定すると、制御部400はバーナー4の駆動を停止する。制御部400は、安定な燃焼時、燃焼監視部410におけるセンサーの検出結果に基づいて、燃焼室100a内の温度や圧力等の燃焼条件を所望の範囲に維持するように各部の動作を制御しつつ固形燃料を燃焼させる。特に、制御部400による制御は、燃焼室100aにおける固形燃料の燃焼を良好な状態に維持した結果として排気口106からの排気中の一酸化炭素濃度が低くなるように調整されている。具体的には、排気口106からの排気中の一酸化炭素濃度が120ppm以下となるように調整されていることが好ましい。
【0035】
排気中の一酸化炭素濃度を低くするには、燃焼室100aにおける固形燃料の不完全燃焼を抑制する必要がある。本実施形態のように固形燃料が主にプラスチックからなる場合、固形燃料は高温の燃焼室100a内で溶融する。仮に、従来の燃焼装置のように燃焼室の内底面に固形燃料を堆積させて燃焼させる方式を適用すると、燃焼室の内底面において固形燃料が溶融して溜まる。溜まった固形燃料はその内部まで燃焼が進みにくく、不完全燃焼が生じやすくなる。不完全燃焼によって燃え残りが生じたまま焼却処理を終了した場合、燃え残った燃料が冷えて固まる。固まった燃料は、焼却処理を再開しても燃えにくく、さらなる不完全燃焼の原因になる。このようにして、焼却処理を繰り返すほど、不完全燃焼の原因となる燃え残りが燃焼室内に増え続けてしまう。
【0036】
これに対し、本実施形態によると、上記の通り、燃焼空気噴射部310及び320における直管部311及び312並びにエルボ管323からの気流の噴射により燃焼室100aの内底面100cの近傍に旋回気流が発生する。制御部400は、かかる旋回気流が以下の通りに作用して不完全燃焼を抑制するように、燃焼装置1の各部、特に、送風機201、261及び301の動作を制御する。つまり、制御部400がこれらの送風機の動作を制御することで、適切な強さの旋回気流が内底面100cの近傍に形成されるように、燃焼空気噴射部310及び320における直管部311及び312並びにエルボ管323から噴射される気流の風速を設定する。これによって、燃料噴射部250から噴射され、内底面100cに向かって一旦降下した固形燃料が、内底面100cに到達する前に旋回気流に巻き込まれることで浮き上がる。そして、燃焼室100aの中心部Gの周囲を旋回し続ける旋回気流に乗って内底面100cの上方にて浮遊しつつ燃焼することになる。したがって、溶融した固形燃料が内底面100cに付着するのが抑制され、もって、不完全燃焼が抑制される。
【0037】
本実施形態によると、直管部311及び312並びにエルボ管323が、燃料噴射部250の下方であって、円錐台状の気流の噴射範囲が内底面100cに掛かるほど内底面100cに近い高さに配置されている。したがって、旋回気流は、内底面100cへの固形燃料の付着を防ぐような、内底面100c近傍の適切な位置に形成されやすい。このことが、不完全燃焼を抑制する制御部400による上記制御を実現しやすくさせている。なお、後述の実施例に示す通り、排気中の一酸化炭素濃度を低下させる観点では、直管部311及び312並びにエルボ管323の噴射口(開口311a、312a及び323a)が内底面100cに近いほど好ましい。例えば、排気中の一酸化炭素濃度を120ppm以下とするために、内底面100cを基準とした直管部311及び312並びにエルボ管323の噴射口(以下、直管部311等の噴射口とする。)の高さが燃料噴射部250の噴射口の高さの1/2以下であることが好ましい。つまり、鉛直方向に関して直管部311等の噴射口と燃料噴射部250の噴射口との間の距離が直管部311等の噴射口と内底面100cとの間の距離と等しくなるか、直管部311等の噴射口と内底面100cとの間の距離より大きくなるように、直管部311及び312並びにエルボ管323が配置されていることが好ましい。また、排気中の一酸化炭素濃度をさらに低水準とするために、直管部311等の噴射口の高さが燃料噴射部250の噴射口の高さの1/4以下であることがより好ましい。
【0038】
また、本実施形態によると、固形燃料が燃料噴射部250から矢印Pに沿って噴射される。矢印Pは、燃焼室100aの内底面100cの中心C1に向かっている。したがって、内底面100cに向けて噴射された固形燃料は、その近傍に形成された旋回気流に速やかに巻き込まれ、適切に燃焼する。さらに、燃焼室100aの内底面100cの中心C1に向けて燃料噴射部250から固形燃料が噴射されたところに、燃焼空気噴射部320の直管部321から中心C1に向かって空気が噴射される。このため、燃料噴射部250から噴射された固形燃料が直管部321からの空気によって巻き上げられる。よって、固形燃料が内底面100cに到達しにくく、溶融した固形燃料が内底面100cに付着して不完全燃焼の原因となるのがさらに抑制される。
【0039】
また、本実施形態によると、燃焼空気噴射部320において、流路部303から燃焼室100aの中心部Gに向けて直管部321及び322を互いに平行に延びるように設けると共に、直管部322からの空気の流れる方向をエルボ管323によって変更している。直管部321からは中心部Gに向かって気流が噴射される。このような簡易な構成により、空気の噴射方向の異なる2つの噴射部を設けることが可能である。
【0040】
また、本実施形態によると、燃料噴射部250において、ジャケット空間253aを通過する冷却用の気流によって内管252が冷却される。仮に、燃焼室100aの熱が伝導することで内管252が高温になると、内管252内の流路252aを通過する固形燃料が流路252aの壁面と接触して溶融するおそれが高まる。かかる溶融した固形燃料は、焼却処理後に冷えて固まる。固まった固形燃料は、焼却処理を再開しても流路252aから移動しにくく、焼却処理を繰り返すほど、流路252aに固形燃料が溜まっていくおそれがある。これに対し、上記の通り、ジャケット空間253aを通過する空気によって内管252が冷却される。このため、流路252aに固形燃料が溜まっていくことを抑制できる。さらに、内管252を含む直管部251の先端に設けられたエルボ管254内にジャケット空間253aの開口253bが形成されており、その開口253bからエルボ管254の内表面254bに向けて空気が噴射される。したがって、流路252aに関する上記効果と同様、エルボ管254の内表面254bに固形燃料が溜まっていくことも抑制できる。
【0041】
以下、上述の実施形態に係る実施例について説明する。本実施例では、上述の実施形態の通り、燃焼装置1を用いて固形燃料を燃焼させ、安定な燃焼時における排気口106からの排気中の一酸化炭素濃度を測定した。一酸化炭素濃度の測定は燃焼排ガス分析計HT-1300Z(ホダカ;定電位電解式)により行った。かかる燃焼実験を、燃焼空気噴射部310の高さを変えつつ2回行った。燃焼空気噴射部320の位置は変えていない。1回目の実験では、燃焼空気噴射部310の直管部311及び312(図6の直管部311X及び312Xに対応)を図6に示す範囲h1に配置した。範囲h1は、燃焼室100aの内底面100cの位置を基準として1/4*Hの高さから1/2*Hの高さまでの範囲である。Hは燃料噴射部250の噴射口の高さである。2回目の実験では、直管部311及び312(図6の直管部311Y及び312Yに対応)を図6に示す範囲h2に配置した。範囲h2は、燃焼室100aの内底面100cの高さから1/2*Hの高さまでの範囲である。なお、2回の燃焼実験のいずれにおいても、安定な燃焼時、燃料噴射部250からの固形燃料の噴射量は約25kg/時間、燃料噴射部250からの空気の噴射速度は約10m/秒、燃焼空気噴射部310の直管部311及び312からの空気の噴射速度はそれぞれ約20m/秒、燃焼空気噴射部320の直管部321及びエルボ管323からの空気の噴射量はそれぞれ約20m/秒とした。また、固形燃料には、発泡ポリスチレンからなる、直径8mm、長さ約10~20mmの円柱状のペレットを用いた。この固形燃料の比重は約0.3g/cm3であり、発熱量は約9600kcal/kgである。
【0042】
その結果、1回目の実験では、排気口106からの排気中の一酸化炭素濃度が120ppm以下となった。一方、2回目の実験では、排気口106からの排気中の一酸化炭素濃度が4~7ppmとなった。これにより、排気中の一酸化炭素濃度を低下させる観点では、燃料の噴射量や空気の噴射量が同じである条件で比較すると、直管部311及び312並びにエルボ管323の噴射口(開口311a、312a、323a)が内底面100cに近いほど好ましいことが示される。また、排気中の一酸化炭素濃度を120ppmにするためには、内底面100cを基準としたこれらの噴射口の高さが燃料噴射部250の噴射口の高さの1/2以下であることが好ましく、さらに一酸化炭素濃度を低水準にするためには燃料噴射部250の噴射口の高さの1/4以下であることがより好ましいことが示される。
【0043】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、燃焼空気噴射部310及び320の直管部311、312及び321並びにエルボ管323から円錐台状の気流が噴射される。しかし、円錐台状の気流を噴射するこれらの部材の代わりに、ストレート状の気流を噴射する部材が採用されてもよい。この場合でも、噴射された気流の範囲は、噴射方向と直交する断面に関して噴射口の径より大きく広がることになる。したがって、かかる部材を内底面100cの近傍に配置することで、その気流が内底面100cに掛かるように部材の位置を調整することが可能である。内底面100cに掛かるように燃焼空気噴射部から気流を噴射させることで、上記の通り、燃焼室100aにおいて固形燃料を適切に燃焼させることができるような旋回気流を内底面100cの近傍に形成しやすい。
【0045】
また、上述の実施形態では、燃焼空気噴射部310及び320において、内底面100cを基準とした空気の噴射口の高さが燃料噴射部250の高さの1/2以下であることが好ましいとしている。しかし、燃料噴射部250の噴射口より低い位置であれば、燃焼空気噴射部310及び320の噴射口の高さが燃料噴射部250の高さの1/2より大きくてもよい。この場合、燃焼空気噴射部310及び320からの空気の噴射方向や風速を適宜調整することにより、不完全燃焼を抑制するのに充分な強さの旋回気流が内底面100cの近傍に適切に形成されればよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、燃料噴射部250において、燃料混合気流がエルボ管254の開口254aから矢印Pに沿って燃焼室100a内へと噴射される。矢印Pは、図1に示すように、エルボ管254の開口254aの中心と燃焼室100aの内底面100cの中心C1とを結ぶ線分に沿っている。しかし、燃料混合気流の噴射方向が、エルボ管254の開口254aの中心と燃焼室100aの内底面100cにおける中心C1とは異なる点とを結ぶ線分に沿っていてもよい。この場合でも、固形燃料は、開口254aから内底面100cに向かって噴射され、その近傍に形成された旋回気流に速やかに巻き込まれ、適切に燃焼する。
【0047】
また、上述の実施形態では、燃焼空気噴射部310及び320からの気流の噴射方向がいずれも水平に沿っている。しかし、噴射方向が水平方向以外の方向であってもよい。例えば、直管部311の開口311aからの気流の噴射方向が斜め上方であってもよい。かかる場合であっても、開口311aから気流が噴射される領域が燃焼室100aの内底面100cに掛かっていれば、内底面100cの近傍に適切に旋回気流を形成できる。
【0048】
また、上述の実施形態では、固形燃料として、発泡スチロール(ポリスチレン)の廃材等のプラスチックを主材料とするものが想定されている。しかし、プラスチックを一部でも含んだ固形燃料について本実施形態の燃焼装置1が用いられてよい。プラスチックを一部でも含んでいれば、そのプラスチックが不完全燃焼の原因となるおそれがある。しかしながら、燃焼装置1は、かかるプラスチックの不完全燃焼を上記の通り抑制し、固形燃料を適切に燃焼させることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 燃焼装置
100 燃焼部
100a 燃焼室
100c 内底面
101 外壁
200 燃料供給部
250 燃料噴射部
300 燃焼空気供給部
310、320 燃焼空気噴射部
400 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6