(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電磁コイル
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20240206BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240206BHJP
H01F 5/04 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H01F5/00 D
H01F5/04 L
(21)【出願番号】P 2022530643
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022405
(87)【国際公開番号】W WO2021251499
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020102556
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508264841
【氏名又は名称】有限会社 宮脇工房
(74)【代理人】
【識別番号】100127661
【氏名又は名称】宮坂 一彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-504881(JP,A)
【文献】特開2001-178053(JP,A)
【文献】特開2006-067639(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092884(WO,A1)
【文献】特開2017-208963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H01F 5/00
H01F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなり、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置される電磁コイルであって、
前記電磁コイルは、有効コイル部と、前記有効コイル部の長手方向の一方側に位置する第1コイルエンド部と、前記有効コイル部の前記長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部と、を有し、
前記有効コイル部は、複数の導電性基材が
編み組されてなるコイル用導線によって構成されており、
前記第1コイルエンド部は、個体導電材でなる第1エンド部材によって構成されており、
前記第1エンド部材は、前記有効コイル部を構成している一のコイル用導線及び他のコイル用導線のそれぞれの一端側と連結され、前記一のコイル用導線及び前記他のコイル用導線との間を電気的に接続しており、
前記第2コイルエンド部は、個体導電材でなる第2エンド部材によって構成されており、
前記第2エンド部材は、前記有効コイル部を構成している前記コイル用導線の他端側と連結されており、
第1の相の電流が供給される「一の前記電磁コイル」の前記空芯領域に、第2の相の電流が供給される「他の前記電磁コイル」の前記有効コイル部が嵌め込められるように構成されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなり、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置される電磁コイルであって、
前記電磁コイルは、有効コイル部と、前記有効コイル部の長手方向の一方側に位置する第1コイルエンド部と、前記有効コイル部の前記長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部と、を有し、
前記電磁コイルには、当該第1コイルエンド部が前記長手方向から第1の側に曲がった形状を有する第1形状コイルと、当該第2コイルエンド部が前記長手方向から前記第1の側とは反対側である第2の側に曲がった形状を有する第2形状コイルと、の2種の態様のコイルが含まれ、
前記第1形状コイル及び前記第2形状コイルは、前記第1形状コイルと前記第2形状コイルとを互いに組み合わせることにより、前記第1形状コイル及び前記第2形状コイルのいずれか一方の当該空芯領域に他方の当該有効コイル部が配置されるよう構成されており、
前記有効コイル部は、複数の導電性基材が
編み組されてなるコイル用導線によって構成されており、
前記第1コイルエンド部は、個体導電材でなる第1エンド部材によって構成されており、
前記第1エンド部材は、前記有効コイル部を構成している一のコイル用導線及び他のコイル用導線のそれぞれの一端側と連結され、前記一のコイル用導線及び前記他のコイル用導線との間を電気的に接続しており、
前記第2コイルエンド部は、個体導電材でなる第2エンド部材によって構成されており、
前記第2エンド部材は、前記有効コイル部を構成している前記コイル用導線の他端側と連結されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁コイルにおいて、
前記コイル用導線の端部にはスペーサが装着され、前記コイル用導線の前記端部は前記第1エンド部材及び前記第2エンド部材と連結されていることを特徴とする電磁コイル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記個体導電材は金属でなり、
前記第1エンド部材は、前記コイル用導線の一端側にかしめ固定されており、
前記第2エンド部材は、前記コイル用導線の他端側にかしめ固定されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記個体導電材は金属でなり、
前記第1エンド部材は、前記コイル用導線の一端側に溶着固定されており、
前記第2エンド部材は、前記コイル用導線の他端側に溶着固定されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記個体導電材は金属でなり、
前記第1エンド部材は、前記コイル用導線の一端側に導電性接着剤で固定されており、
前記第2エンド部材は、前記コイル用導線の他端側に導電性接着剤で固定されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記導電性基材として用いられる線は、銅を含む導電性の線であり、
前記導電性基材の平均半径は120μm以下である、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁コイルにおいて、
前記導電性基材は裸導体線であり、
前記コイル用導線は複数の前記裸導体線が編組みされた編組線でなる、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項9】
請求項7に記載の電磁コイルにおいて、
前記導電性基材はエナメル線であり、
前記コイル用導線は、複数の前記エナメル線が撚られた「リッツ線」でなる、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記第2コイルエンド部には、前記第2エンド部材に連成又は連結された回路結線端子が配設されており、
前記電磁コイルは、前記回路結線端子以外の全域の表面において絶縁層が設けられている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項11】
請求項10に記載の電磁コイルにおいて、
前記有効コイル部における前記絶縁層は、前記導電性基材の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層であることを特徴とする電磁コイル。
【請求項12】
請求項11に記載の電磁コイルにおいて、
前記有効コイル部における前記絶縁層は、前記導電性基材の周囲に形成された電着絶縁塗膜であることを特徴とする電磁コイル。
【請求項13】
請求項10に記載の電磁コイルにおいて、
前記有効コイル部における前記絶縁層は、前記導電性基材の周囲に形成された絶縁塗布膜であることを特徴とする電磁コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空芯形の電磁コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
コアレス電気機械装置に用いられる電磁コイルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図15は特許文献1に記載された電磁コイル9Aを説明するために示す図である。
図15(a)は電磁コイル9Aの外観を示す斜視図であり、
図15(b)は電磁コイル9Aの右側面図である。
【0004】
特許文献1に記載された電磁コイル9Aは、
図15(a)に示すように、コイル用導線が空芯領域901Aを囲むようにして巻回されてなる。電磁コイル9Aは、有効コイル部902Aと、有効コイル部902Aの長手方向の一方側に位置する第1コイルエンド部903Aと、有効コイル部の長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部904Aとを有している。第2コイルエンド部904Aには回路結線端子905Aが配設されている。
特許文献1に記載された電磁コイルには、第1コイルエンド部903Aが長手方向から-Z方向の側に曲がった形状を有する第1形状コイル(電磁コイル9A)と、第2コイルエンド部が長手方向から+Z方向の側に曲がった形状を有する第2形状コイル(図示を省略)と、の2種の態様のコイルが含まれている。なお、第2形状コイルについても第1形状コイルと同様に有効コイル部、第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有している(図示を省略)。以下において、第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を単に「コイルエンド部」という場合がある。
【0005】
特許文献1に記載された電磁コイルは、第1形状コイル(電磁コイル9A)と第2形状コイル(図示を省略)とを互いに組み合わせることにより、第1形状コイル及び第2形状コイルのいずれか一方の当該空芯領域に他方の当該有効コイル部が配置されるように構成されている。このため、これらのコイルを組み合わせることによりコイルアセンブリーを容易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された電磁コイル(従来の電磁コイル)は、導電性基材を複数束ねて構成した編組線等をコイル用導線として、かかるコイル用導線を曲げるようにしてフォーミングしたものである。このため、コイルエンド部における巻回方向転換部934A,944Aは、大きな曲率半径を有する湾曲形状とならざるを得なかった。
コイルエンド部は電気的エネルギーと機械的エネルギーとの間のエネルギー変換に直接的に寄与しない部分であるにも拘わらず、上記事情もあってコイルエンド部が占有する長さL903A,L904Aは比較的大きなものとならざるを得なかった《
図15(b)を併せて参照》。このようにコイルエンド部が占有する長さL903A,L904Aが大きくなると、電磁コイル9A全体としての抵抗値も大きくなり、その結果、電気機械装置の始動トルクの減衰も大きなものとなってしまう。
【0008】
加えて、従来の電磁コイルは導電性基材を複数束ねて構成したコイル用導線を曲げるようにしてフォーミングするものであるため、加工工程上、曲げの部分である巻回方向転換部934A,944Aで断線や線径歪みの問題が生じ易い(断線・線径歪みの加工工程問題)。また、曲げの部分では内側に位置する導電性基材と外側に位置する導電性基材との間で材料の伸びのバラつき(差)が生じ易く、この伸びバラつきによるインピーダンスの歪みの問題も生じ易い。これらの問題は、編組線に限らず例えばリッツ線を用いた場合においても同様に生じうる。
【0009】
一方、市場からは、電気機械装置の機械的な抵抗を抑えて機械的振動を抑えることが望まれている。この見地から、電気機械装置の磁石の移動に伴って発生する有効コイル部における渦電流を低減することも強く期待されている。
【0010】
そこで本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、渦電流の発生を低減しつつも、従来よりもコイルエンド部を小さくすることができ、且つ、コイル用導線のフォーミングによる断線・線径歪みの加工工程問題を解消できる電磁コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなり、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置される電磁コイルが提供される。
この電磁コイルは、有効コイル部と、有効コイル部の長手方向の一方側に位置する第1コイルエンド部と、有効コイル部の長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部と、を有し、有効コイル部は、複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線によって構成されており、第1コイルエンド部は、個体導電材でなる第1エンド部材によって構成されており、第1エンド部材は、有効コイル部を構成している一のコイル用導線及び他のコイル用導線のそれぞれの一端側と連結され、一のコイル用導線及び他のコイル用導線との間を電気的に接続しており、第2コイルエンド部は、個体導電材でなる第2エンド部材によって構成されており、第2エンド部材は、有効コイル部を構成しているコイル用導線の他端側と連結されており、第1の相の電流が供給される「一の電磁コイル」の空芯領域に、第2の相の電流が供給される「他の電磁コイル」の有効コイル部が嵌め込められるように構成されている。
【0012】
本発明の別の一態様によれば、導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなり、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置される電磁コイルが提供される。この電磁コイルは、有効コイル部と、有効コイル部の長手方向の一方側に位置する第1コイルエンド部と、有効コイル部の長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部と、を有する。この電磁コイルには、当該第1コイルエンド部が長手方向から第1の側に曲がった形状を有する第1形状コイルと、当該第2コイルエンド部が長手方向から第1の側とは反対側である第2の側に曲がった形状を有する第2形状コイルと、の2種の態様のコイルが含まれる。第1形状コイル及び第2形状コイルは、第1形状コイルと第2形状コイルとを互いに組み合わせることにより、第1形状コイル及び第2形状コイルのいずれか一方の当該空芯領域に他方の当該有効コイル部が配置されるよう構成されている。
有効コイル部は、複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線によって構成されている。第1コイルエンド部は、個体導電材でなる第1エンド部材によって構成されている。第1エンド部材は、有効コイル部を構成している一のコイル用導線及び他のコイル用導線のそれぞれの一端側と直接的に又は間接的に連結され、一のコイル用導線及び他のコイル用導線との間を電気的に接続している。
第2コイルエンド部は、個体導電材でなる第2エンド部材によって構成されている。第2エンド部材は、有効コイル部を構成しているコイル用導線の他端側と直接的に又は間接的に連結されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコイルによれば、渦電流の発生を低減しつつも、従来よりもコイルエンド部を小さくすることができ、且つ、コイル用導線のフォーミングによる断線・線径歪みの加工工程問題を解消できる電磁コイルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1に係る電磁コイル1A,1B及び複数の電磁コイル1A,1Bでそれぞれ構成された第1コイル・サブアセンブリー100AS,第2コイル・サブアセンブリー100BS,コイルアセンブリー100を説明するために示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る電磁コイル1Aを説明するために示す図である。
【
図3】第1エンド部材130Aを説明するために示す図である。
【
図4】第2エンド部材140Aを説明するために示す図である。
【
図5】実施形態1に係る電磁コイル1A及び電磁コイル1Bの製造方法、並びに、第1コイル・サブアセンブリー100AS,第2コイル・サブアセンブリー100BS,コイルアセンブリー100の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【
図6】コイル用導線110A(編組線20)の準備について説明するために示す図である。
【
図7】実施形態1に係る電磁コイル1Aの製造工程(一部)を説明するために示す図である。
【
図8】実験例における実験構成を示す模式図である。
【
図10】実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bを説明するために示す図である。
【
図11】実施形態2の絶縁層形成工程S180における電磁コイル2A‘の状態を説明するために示す図である。
【
図12】実施形態3に係る電磁コイル3Aの製造工程(一部)を説明するために示す図である。
【
図13】変形例に係る電磁コイル7,7’を説明するために示す図である。
【
図14】変形例に係る電磁コイル8,8’,8’’を説明するために示す図である。
【
図15】特許文献1に記載された電磁コイル9Aを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電磁コイルの実施形態について図面を参照して説明する。各図面は一例を示した模式図であり、必ずしも実際の寸法、比率等を厳密に反映したものではない。
【0016】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bの構成
(1)電磁コイル1A,1B及びコイルアセンブリー100の概要
実施形態1に係る電磁コイル1は、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置される空芯形の電磁コイルである。
電磁コイル1が適用される電気機械装置は、空芯形のコイルを用いる電気機械装置であれば如何なるものであってもよい。コアレスモーターは好適な適用対象の1つである。
図1(a)は、コアレスモーターに用いられる集中巻きタイプの電磁コイルのコイルアセンブリー100の一例である。図に示すように、コイルアセンブリー100は、複数の電磁コイル1A,1B(下付き文字による数字はIndex番号)がローターの永久磁石(図示を省略)の移動方向ROTに沿って互いに接するようにして列状に配置されている。このように電磁コイル1はいわゆるコアレスモーターに好適に適用することができる。
【0017】
なお、図において、コアレスモーターの回転軸AX1に平行な方向を「y方向」とし、回転軸AX1に垂直な方向を「x方向」とし、x方向及びy方向に垂直な方向を「z方向」とする。また、回転軸AX1を起点として回転軸AX1に垂直な方向を「径方向」とし、径方向に直交し回転軸AX1と並行な方向を「周方向」とする。以下の説明において、これらの方向の定義に従って配置される電磁コイル1A,1Bについても、かかる方向関係の定義と同様の定義を用いる。
【0018】
電磁コイル1には、以下に説明するように第1形状コイル1A及び第2形状コイル1Bの2種の態様のコイルが含まれている。
第1形状コイル1Aと第2形状コイル1Bとが組み合わされてコイルアセンブリー100(後述)が形成されて、例えば2相駆動の電気機械装置にコイルアセンブリー100が用いられるときには、第1形状コイル1AはA相の駆動電流を供給するものとし、第2形状コイル1BはB相の駆動電流を供給するものとすることができる。
なお、本明細書において第1形状コイル1Aを単に電磁コイル1Aということがあり、相互に言い換えが可能である。同様に第2形状コイル1Bを単に電磁コイル1Bということがあり、相互に言い換えが可能である。
第1形状コイル1A及び第2形状コイル1Bは構成上共通する要素が多いため、以下、
図1~
図4を参照しながら電磁コイル1A(第1形状コイル1A)を中心に説明を続ける。
【0019】
(2)電磁コイル1A(第1形状コイル1A)
図1(d)の左側の図は、第1形状コイルとしての電磁コイル1Aの外観を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る電磁コイル1Aを説明するために示す図である。
図2(a)において、中央の図は電磁コイル1Aの平面図、下の図は正面図、上の図は背面図、右の図は右側面図をそれぞれ示している。
【0020】
図1(d)の左側の図及び
図2(a)に示すように、電磁コイル1Aは、導電性の部材(詳細は後述)が空芯領域101Aを囲むようにして巻回されてなる。ここでの「巻回」には、空芯領域101Aを完全に360°に渡って取り囲むように巻く場合の他、空芯領域101A の周りを1周するまでには至らない(360°には至らない)ものの空芯領域101Aを囲むような巻き方も含まれる。参考までに実施形態1で示した電磁コイル1Aは、
図1(d)の左側の図における右側の回路結線端子105Aから反時計回りに辿っていくと、有効コイル部102A(後述)、第1コイルエンド部103A(後述)、有効コイル部102A(後述)の順に形成されて図面左側の回路結線端子105Aに至っており、空芯領域101Aの周りを約0.75周して「巻回」するように構成されている。
【0021】
電磁コイル1Aは、有効コイル部102Aと、有効コイル部102Aの長手方向LDの一方側LD1に位置する第1コイルエンド部103Aと、有効コイル部102Aの長手方向LDの他方側LD2に位置する第2コイルエンド部104Aとを有している。なお、第2コイルエンド部104Aには回路結線端子105Aが配設されている。
【0022】
「有効コイル部」とは、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの間のエネルギー変換を有効に行う部分である。典型的には、その長手方向LDが磁石の移動方向と直交するような位置関係で配置される部分である。「第1コイルエンド部」,「第2コイルエンド部」は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの間のエネルギー変換に直接的に寄与しない部分ということもできる。
なお、各図において、有効コイル部102Aとして表面に編組線に類似した模様が描かれているが、実際には編組線は露出しておらず、図における模様は、編組線の模様に倣うように形成された絶縁層106A(後述)の模様を描いたものである。他の図面における有効コイル部102A,102B等の表示においても同様である。
【0023】
電磁コイル1A(第1形状コイル1A)は、第1コイルエンド部103Aが長手方向LDから第1の側D1に曲がった形状を有する。なお、「第1の側D1」は、
図1(a)に示すコイルアセンブリー100を想定した場合には「径方向の内側」と言い換えることもできる。符号135Aは、側面から見たときに第1の側D1に突出した内径凸部を示している。
【0024】
図2(a)に示すように、第1コイルエンド部103Aは渡り部133Aを有する。渡り部133Aは、第1コイルエンド部103Aをy方向に沿って正面視したときに、左右に配置された有効コイル部102Aの間を渡すように接続している。渡り部133Aは、有効コイル部102Aが配置された位置よりも一段内径側(第1の側D1)に下がった位置に位置するように構成されている。換言すると、渡り部133Aは、有効コイル部102Aが配置されている面から一段下に退避するような形で構成されている《
図1(d)の左側の図及び
図2(a)を参照》。
これにより、電磁コイル1Aには、左右に配置された有効コイル部102Aに挟まれた領域に溝領域136Aが形成され、この溝領域136Aにより、互いに干渉することなく電磁コイル1Bの有効コイル部102Bを電磁コイル1Aの溝領域136Aの部分にスライドするようにして嵌め込むことができる。
【0025】
第1コイルエンド部103Aは、導電性の部材の巻回方向を転換する部位である巻回方向転換部134Aを有する。電磁コイル1Aを平面視したとき、導電性の部材の形状は、巻回方向転換部134Aにおいて、有効コイル部の長手方向LD(y方向に沿った方向)から有効コイル部の長手方向LDに垂直な方向に、略90度の角度で屈折するようにして導電性の部材が方向転換されている。つまり、巻回方向転換部134Aは、大きな曲率半径を有する湾曲形状ではなく角を有するようにして屈折した形状となっている。第1コイルエンド部103Aには左右2か所に巻回方向転換部134Aを有している。
【0026】
なお、電磁コイル1Aを回転軸AX1(中心軸)に垂直な面で切断して見たときに、電磁コイル1Aの外径は、円環をN等分した分割リング形状を有し、当該分割リング形状の2つの側辺のなす角度が360°/N以下となっていることが好ましい。この点の構成・作用・効果については、本出願の発明者が従前発明した特許文献1の記載内容を援用して本明細書に取り入れることができる。また他の技術的特徴についても、本発明の趣旨に反しない限り適宜援用して本明細書に取り入れることができる。
【0027】
(3)電磁コイル1B(第2形状コイル1B)の概要
続いて、
図1(d)に戻って電磁コイル1Bについて説明する。
図1(d)の右側の図は、第2形状コイルとしての電磁コイル1Bの外観を示す斜視図である。
図1(d)の右側の図に示すように、電磁コイル1B(第2形状コイル1B)では、第1コイルエンド部103Bにおいて電磁コイル1Aの内径凸部135Aのような部位は存在しない。一方、第2コイルエンド部104Bにおいては長手方向LDから第2の側D2に曲がった形状を有する。なお、「第2の側D2」は、第1の側D1とは反対側であり、
図1(a)に示すコイルアセンブリー100を想定した場合には「径方向の外側」と言い換えることもできる。符号145Aは、側面から見たときに第2の側D2に突出した外径凸部を示している。
【0028】
電磁コイル1Bは、第1コイルエンド部103B及び第2コイルエンド部104Bの形状以外の点において基本的に電磁コイル1Aと同様の構成を有する。このため、電磁コイル1Aと共通する要素(例えば有効コイル部102B,コイル用導線110B等)については、本明細書の電磁コイル1Aに関する説明を符号の添え字AをBに読み替えながら援用して説明することができる。
【0029】
(4)第1形状コイル1A及び第2形状コイル1Bの組み合わせ
図1(b)は第1コイル・サブアセンブリー100ASの斜視図である。
図1(c)は第2コイル・サブアセンブリー100BSの斜視図である。
図1(b)に示すように、第1コイル・サブアセンブリー100ASはN個(Nは自然数。ここでは8個)の電磁コイル1A(第1形状コイル1A)を配列することにより構成されている。具体的には第1コイル・サブアセンブリー100ASは、隣接する電磁コイル1Aの有効コイル部102の外側面同士が互いに接した状態で(互いに接着されている)N個の電磁コイル1Aがリング状に配列されてなる。
図1(c)に示すように、第2コイル・サブアセンブリー100BSは同様にN個の電磁コイル1B(第2形状コイル1B)を配列することにより構成されている。具体的には第2コイル・サブアセンブリー100BSは、隣接する電磁コイル1Bの有効コイル部102Bの外側面同士が互いに接した状態で(互いに接着されている)、N個の電磁コイル1Bがリング状に配列されてなる。
【0030】
第1形状コイル1A(電磁コイル1A)及び第2形状コイル(電磁コイル1B)は、これらを互いに組み合わせることにより、第1形状コイル1A及び第2形状コイル1Bのうちいずれか一方のコイルの当該空芯領域101A,101Bに、他方のコイルの当該有効コイル部102B,102Aが配置されるよう構成されている。
【0031】
組み合わせ、嵌め込みについて詳しく説明すると、上記したように第1形状コイル1Aの第1コイルエンド部103Aの渡り部133Aは有効コイル部102Aから一段内径側に下がった形で形成されており、これにより溝領域136Aが設けられている。かかる溝領域136Aには第2形状コイル1Bの有効コイル部102Bをスライドできるようになっており、その結果上記した配置をとることができる。
【0032】
上記のような構成となっているため、第1コイル・サブアセンブリー100AS《
図1(b)参照》の右側から左側に向けて、第2コイル・サブアセンブリー100BS《
図1(c)参照》をスライドさせて組み合わせることによりコイルアセンブリー100を構成することができる《
図1(a)参照》。このとき、例えば第1形状コイル(電磁コイル1A1)の当該空芯領域には、第2形状コイル(電磁コイル1B1,1B2)の有効コイル部が配置されることとなる。
【0033】
(5)電磁コイル1A(第1形状コイル)の詳細
ここで再び
図2に戻って、電磁コイル1Aの詳細について説明を続ける。
【0034】
(5-1)コイル用導線110A
図2(b)は、電磁コイル1Aの有効コイル部102Aを
図1(d)で示す仮想面PL1で切断し、当該切断面を矢印Aに沿って見たときの断面図である。
図2(b)に示すように、有効コイル部102Aは、複数の導電性基材10が束ねられてなるコイル用導線110Aによって構成されている。「複数の導電性基材10が束ねられてなるコイル用導線110A」は複数の導電性基材10が撚られた、又は/及び、編み込まれたコイル用導線110Aということもできる。
【0035】
「導電性基材10」としては、ここでは裸導体線11を採用している。
「裸導体線11」は、その周囲に絶縁材料が皮膜されておらず導電性の部材たる導体が剥き出しの状態となっている線をいうものとする。例えば、銅を主原料とした無垢の「裸銅線」の他、炭素を用いた「カーボン線」、裸銅線等にスズめっき・ニッケルめっき等が施された「めっき線」などが「裸導体線11」に含まれる。ここで説明する例では「裸導体線11」としてスズめっき線を採用している。
【0036】
導電性基材10の太さは電気機械装置の仕様に応じて適宜の太さを選択することができる。導電性基材10として用いられる線は、銅を含む導電性の線であるとして、導電性基材10の平均半径が120μm以下であることが好ましい。更に、導電性基材10の平均半径が100μm以下であることがより好ましい。導電性基材10の平均半径が50μm以下であることがより一層好ましい。このような径を有する導電性基材10を採用することにより、渦電流の発生を低減することができるからである《詳細は[実験例]で後述》。
【0037】
コイル用導線110Aは複数の裸導体線11が編組みされた編組線20でなっている。 具体的には例えば
図2(b)に示すように、コイル用導線110Aは、裸導体線11が6本単位で撚られた撚線15を中間材とし、3セットの当該撚線15が編組みされた編組線20でなっている。コイル用導線110Aをこのような構成とすることにより、渦電流の発生を低減することができる《詳細は[実験例]で後述》。
【0038】
編組線20の少なくとも表面において絶縁層106Aが設けられている。
絶縁層106Aは、絶縁性の部材であれば如何なるものからなっていてもよい。
実施形態1において、少なくとも有効コイル部102Aにおける絶縁層は、導電性基材10の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層107Aである。この絶縁層107Aは、導電性基材10の周囲に形成された電着絶縁塗膜であることが好ましい。ここでの絶縁層107Aは、別言すると、導電性基材10に対し電着塗装して得られた「電着絶縁塗膜」である。絶縁層107Aとしての電着絶縁塗膜は、導電性基材10を皮膜するものであり、絶縁材料からなり絶縁機能を有する。
【0039】
他方、有効コイル部102Aにおける絶縁層106Aは導電性基材10の周囲に形成された絶縁塗布膜であったとしても、またこれも好ましい。比較的安価に絶縁層106Aを構成することができ、経済的にも有利な電磁コイル1を得ることができるからである。なお、ここでの絶縁層106Aは、別言すると、導電性基材10に対し絶縁塗布材を塗布して得られた「絶縁塗布膜(電着絶縁塗装膜を除く)」である。絶縁層106Aとしての絶縁塗布膜は、導電性基材10を皮膜するものであり、絶縁材料からなり絶縁機能を有する。
【0040】
コイル用導線110Aは、上記した編組線20及び絶縁層106Aを含んでいる。
【0041】
(5-2)第1エンド部材130A
図3は第1エンド部材130Aを説明するために示す図(斜視図)である。
図3に示すように、第1コイルエンド部103Aは個体導電材でなる第1エンド部材130Aによって構成されている。
「個体導電材」とは、「導電性の部材」のバリエーションの1つであり、ワイヤー(線材)を束ねたようなものではなく1個体となっている導電性の部材をいう。例えば、銅を含む金属でなり所定の形状に鋳造又は鍛造されたものであってもよい。銅板(銅を含む金属を圧延したもの)が所定の形状にプレスされたものであってもよい。
【0042】
第1エンド部材130Aは、例えばコイル用導線110A1,110A2の一端側111Aを受容し嵌合することができるように、開口部131Aが設けられている(
図3参照)。
【0043】
第1エンド部材130Aは、有効コイル部102Aを構成している一のコイル用導線110A《例えば
図2(a)中央の平面図の右側のコイル用導線110A1》及び他のコイル用導線110A(同左側のコイル用導線110A2)のそれぞれの一端側(LD1の側)と「連結」され、一のコイル用導線110A1及び他のコイル用導線110A2との間を電気的に接続する。ここでの「連結」には、実施形態1のように直接的に連結されている場合の他、実施形態2のようにスペーサ40等を介して間接的に連結されている場合も含まれる(実施形態2は後述する)。
【0044】
第1エンド部材130Bが電磁コイル1Aの一部として組み込まれたときには、次のような構造となっている。すなわち、個体導電材は金属でなるとして、第1エンド部材130Aは、コイル用導線110Aの一端側にかしめ固定されている。具体的には、第1エンド部材130Aの開口部131Aにコイル用導線110Aの一端側111Aが嵌挿された状態で、第1エンド部材130Aの開口部131Aの内側の壁がコイル用導線110Aの一端側111Aを「かしめる」ようにして、第1エンド部材130Aがコイル用導線110Aに強固に固定されている《
図2(a)、
図3、後述の
図7(b)等を参照》。
【0045】
なお、第1エンド部材130Aにおける開口部131Aへのコイル用導線110Aの挿入代(しろ)は、コイル用導線110Aの連結部132Aとなる。かかる連結部132Aはオーバーラップ部132Aと言うこともできる。組み上がった状態の電磁コイル1Aでは、第1エンド部材130A及びコイル用導線110Aはオーバーラップ部132Aで密接に連結され電気的に接続されることとなる。
【0046】
第1エンド部材130Aは、平面視したとき角において部材が略90°に屈折している。かかる屈折した部分は、電磁コイル1Aに組み上げた際「巻回方向転換部134A」となる《
図2(a)の中央の平面図を参照》。
第1エンド部材130Aは、その他にも内径凸部135A、渡り部133A、斜めに形成された側辺など、上記第1コイルエンド部103Aで説明した構造に対応した構造を有しており、これらの構造の説明は上記第1コイルエンド部103Aの説明を援用する。
【0047】
(5-3)第2エンド部材140A
図4は第2エンド部材140Aを説明するために示す図である。
図4(a)は第2エンド部材140Aの斜視図、
図4(b)は第2エンド部材140Aの平面図をそれぞれ示す。
図4に示すように、第2コイルエンド部104Aは個体導電材でなる第2エンド部材140Aによって構成されている。
【0048】
第2エンド部材140Aは、コイル用導線110A1,110A2《
図2(a)中央の平面図参照》の他端側(LD2の側)を受容し嵌合することができるように開口部141Aが設けられている。また、第2エンド部材140Aには回路結線端子105Aが配設されている。
【0049】
第2エンド部材140Aは、有効コイル部102Aを構成しているコイル用導線110A1,110A2の他端側と「連結」される《
図2(a)参照》。ここでの「連結」には、実施形態1のように直接的に連結されている場合の他、実施形態2のようにスペーサ40等を介して間接的に連結されている場合も含まれる(実施形態2は後述する)。
【0050】
第2エンド部材140Bが電磁コイル1Aの一部として組み込まれたときには、次のような構造となっている。すなわち、上記した個体導電材は金属でなるとして、第2エンド部材140Aは、コイル用導線110Aの他端側にかしめ固定されている。具体的には、第2エンド部材140Aの開口部141Aにコイル用導線110Aの他端側112Aが嵌挿された状態で、第2エンド部材140Aの開口部141Aの内側の壁がコイル用導線110Aの他端側112Aを「かしめる」ようにして、第2エンド部材140Aがコイル用導線110Aに強固に固定されている《後述する
図7(b)等も参照》。
【0051】
なお、第2エンド部材140Aにおける開口部141Aへのコイル用導線110Aの挿入代(しろ)は、コイル用導線110Aの連結部142Aとなる。かかる連結部142Aはオーバーラップ部142Aと言うこともできる。組み上がった状態の電磁コイル1Aでは、第2エンド部材140A及びコイル用導線110Aはオーバーラップ部142Aで密接に連結され電気的に接続されることとなる。
【0052】
なお、コイル用導線110Aの一端側は第1エンド部材130Aのオーバーラップ部132Aにおいてかしめ固定されており、コイル用導線110Aの他端側は第2エンド部材140Aのオーバーラップ部142Aでかしめ固定されているが、参考までに、コイル用導線110Aのうち上記オーバーラップ部132A,142A以外の部分が有効コイル部102Aを構成することとなる。また、第1エンド部材130Aの部分が第1コイルエンド部103Aを構成し、第2エンド部材140A(但し、回路結線端子105Aの部位を除く)の部分が第2コイルエンド部104Aを構成することとなる《
図2(a)中央の平面図参照》。
【0053】
(5-4)絶縁層106A
電磁コイル1Aにおいて、回路結線端子105A以外の全域の少なくとも表面において絶縁層106Aが設けられている。ここでの「全域」とは、具体的には、電磁コイル1Aの第1エンド部材130A、コイル用導線110A及び第2エンド部材(回路結線端子105Aの部位を除く)の全ての領域の全表面ということもできる。
第1エンド部材130A及び第2エンド部材140Aにおける絶縁層は、上記したコイル用導線110A(編組線20)に設けられた絶縁層106Aと同様の構成を採ることができる。もっとも、コイル用導線110A(編組線20)に設けられた絶縁層106Aと異なる構成の絶縁層とすることは妨げない。
【0054】
(6)電磁コイル1B(第2形状コイル1B)の詳細
上記したように、電磁コイル1B(第2形状コイル1B)は、第1コイルエンド部103B及び第2コイルエンド部104Bの形状以外の点において基本的に電磁コイル1A(第1形状コイル1A)と同様の構成を有する。よって電磁コイル1Aの説明を電磁コイル1Bの説明として援用する。
【0055】
2.実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bの製造方法
図5は、実施形態1に係る電磁コイル1A(第1形状コイル1A)及び電磁コイル1B(第2形状コイル1B)の製造方法、並びに、第1コイル・サブアセンブリー100AS,第2コイル・サブアセンブリー100BS,コイルアセンブリー100の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図5に示すように、実施形態1に係る電磁コイル1Aの製造方法は、大まかに捉えると、第1エンド部材段取り工程S110、第2エンド部材段取り工程S120及びコイル用導線段取り工程S130を「前工程」とし、第1エンド部材挿入工程S140及び第1エンド部材連結工程S150、並びに、第2エンド部材挿入工程S160及び第2エンド部材連結工程S170を「中工程」とし、絶縁層形成工程S180を「後工程」としてなっている。これら全体を纏めて「第1形状コイル形成作業S100」と総称することとする。
一方で電磁コイル1Bの製造方法についても同様の構成となっており、全体を纏めて「第2形状コイル形成作業S200」と総称することとする。
【0056】
以下、電磁コイル1Aを中心に、編組線20で「複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線110A」を構成した場合を想定して説明を続ける。
【0057】
A.電磁コイル1A(第1形状コイル1A)の製造方法
(1)第1エンド部材段取り工程S110
第1エンド部材段取り工程S110は、
図3で示すような第1エンド部材130Aを準備する(第1エンド部材準備ステップS112)等を行うことにより、中工程の前段取りを行う工程である。
【0058】
(2)第2エンド部材段取り工程S120
第2エンド部材段取り工程S120は、
図4で示すような第2エンド部材140Aを準備する(第2エンド部材準備ステップS122)等を行うことにより、中工程の前段取りを行う工程である。
なお、この工程では、回路結線端子105Aを予めマスキングしておいてもよい(端子部マスキングステップS124)。具体的には、回路結線端子105Aに対して、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、エナメル、ウレタン、ワニス等の浸透性絶縁塗布材を塗布してマスキングを予め行っておく。これにより、後述する絶縁層形成工程S180における絶縁材料の影響を受けないよう処置する。
【0059】
(3)コイル用導線段取り工程S130
コイル用導線段取り工程S130は、コイル用導線110Aを準備し、後工程(第1エンド部材への挿入・嵌合・連結)のためにコイル用導線110Aを段取る工程である。コイル用導線段取り工程S130には編組線準備ステップS132及び編組線フォーミングステップS134が含まれる。
【0060】
(3-1)編組線準備ステップS132
編組線準備ステップS132は、コイル用導線110Aとしての編組線20を作成し準備するステップである。
図6は、コイル用導線110A(編組線20)の準備について説明するために示す図である。
図6(a)は撚線15や編組線20を長手方向に垂直な面で切断したときの断面図である。
編組線準備ステップS132においては、まず、導電性基材10としての裸導体線11(ここではスズめっき線を想定)を6本単位で撚った撚線15を作成しこれを中間材とする《
図6(a)(i)参照》。次いで、かかる撚線15を3セット寄せ集め、これらを互いに編み組して編組線20を作成する《
図6(a)(ii)参照》。この段階で編組線20の周囲を外側から全体的に押圧するなどして軽くフォーミングを行ってもよい。このようにして作成された編組線20は、
図6(b)の斜視図で示すような所定の厚みを持った略板状のコイル用導線110Aとなる。
なお、実施形態1の電磁コイル1Aでは有効コイル部102Aにコイル用導線110Aが2本用いられ、電磁コイル1Bでは有効コイル部102Bにコイル用導線110Bが2本用いられるが、これら合計4本のコイル用導線110A,110Bは仕様を共通化することが好ましい。そうすることにより、必要な本数の編組線20を編組線準備ステップS132においてバッチ処理的にまとめて作成することができる。
【0061】
(3-2)編組線フォーミングステップS134
図7は実施形態1に係る電磁コイル1Aの製造工程(一部)を説明するために示す図である。
図7(a)は編組線フォーミングステップS134を説明するための斜視図である。
【0062】
編組線フォーミングステップS134においては、まず、編組線20をカットするなどして所定の長さに調整する《
図7(a)の左側の図参照》。次いで、編組線20の両端部である一端側111A及び他端側112Aにおいて、所定の長さ(上記したオーバーラップ部142Aに対応する長さ)に渡って周囲を外側から潰すようにして編組線20の両端部の外径寸法を小さくする《
図7(a)の右側の図参照》。これにより、編組線20の両端部が、第1エンド部材130Aの開口部131A及び第2エンド部材140Aの開口部141Aに挿入できるようにしておく。
【0063】
(4)第1エンド部材挿入工程S140
図7(b)は第1エンド部材挿入工程S140及び第2エンド部材挿入工程S160を説明するための斜視図である。
第1エンド部材挿入工程S140は、編組線フォーミングステップS134で潰して外形寸法を小さくしておいたコイル用導線110A(編組線20)の一端側111Aを、第1エンド部材130Aの開口部131Aから挿入しオーバーラップ部132Aに嵌め合わせる工程である《
図7(b)参照》。
【0064】
(5)第1エンド部材連結工程S150
図7(c)は第1エンド部材連結工程S150及び第2エンド部材連結工程S170を説明するための斜視図である。
第1エンド部材連結工程S150は、第1エンド部材挿入工程S140で嵌め合わせた第1エンド部材130Aとコイル用導線110Aとを強固に連結する工程である《
図7(c)参照》。
第1エンド部材130Aとコイル用導線110Aとの連結は、かしめ固定によって行ってもよい。かしめ固定は、例えば、第1エンド部材130Aのオーバーラップ部132A内に位置する所定部位《
図7(c)のかしめ部137A参照》に対して、圧着工具等を用いて第1エンド部材130Aの外側から圧力を掛け、第1エンド部材130Aのオーバーラップ部132Aを塑性変形させる。すると、第1エンド部材130Aの開口部131Aの内部の壁がコイル用導線110Aの外周を強く押さえつけるようになる。これにより、第1エンド部材130Aはコイル用導線110Aの一端側111Aに密着するようにして強固に固定されつつ電気的に接続される。
なお、上記したかしめ固定を行った後に、はんだ等の導電性を有する材料を用いて第1エンド部材130Aとコイル用導線110Aとの間を接合・固定する処置を更に施してもよい。
【0065】
(6)第2エンド部材挿入工程S160及び第2エンド部材連結工程S170
第2エンド部材挿入工程S160は、編組線フォーミングステップS134で潰して外形寸法を小さくしておいたコイル用導線110Aの他端側112Aを、第2エンド部材140Aの開口部141Aから挿入しオーバーラップ部142Aに嵌め合わせる工程である《
図7(b)参照》。
第2エンド部材連結工程S170は、第2エンド部材挿入工程S160で嵌め合わせた第2エンド部材140Aとコイル用導線110Aとを強固に連結する工程である《
図7(c)参照》。第1エンド部材連結工程S150と同様に、圧着工具等を用いて、第2エンド部材140Aのオーバーラップ部142A内に位置するかしめ部147Aに対してかしめ固定を行うことにより連結してもよい。
第2エンド部材挿入工程S160及び第2エンド部材連結工程S170については、上記した第1エンド部材挿入工程S140及び第1エンド部材連結工程S150と基本的に同様の内容にて実施することができる。
【0066】
(7)絶縁層形成工程S180
絶縁層形成工程S180は、回路結線端子105A以外の領域(部位)の、少なくとも表面に絶縁層106Aを設ける工程である。
【0067】
図示を省略するが、絶縁層形成工程S180としては、絶縁性を有する溶質を用いた水溶性の材料を少なくともコイル用導線110Aに浸透させる浸透ステップと、浸透した水溶性の材料を固化する固化ステップと、をこの順序で実施するのが好ましい。この場合、水溶性の材料は、絶縁性を有し且つ接着性を有するものを採用するのが好ましい。
なお、浸透ステップにおいては、上記水溶性の材料を第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(マスキングした部分は除く)の表面にも付着させる処理を併せて実施してもよい。
【0068】
絶縁層形成工程S180は、例えば次のように実施してもよい。すなわち、液槽・容器等(以下、単に液槽とする)の内側に熱硬化性樹脂の溶液を満たしたうえで、液槽の内側に、第1エンド部材連結工程S150及び第2エンド部材連結工程S170を実施した(組み上げた)電磁コイルを投入する。こうすると、水溶性の材料がコイル用導線110Aを構成する複数の導電性基材10の間に浸透(浸入)する。この際、第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(マスキングした部分は除く)の表面においても水溶性の材料が付着する。このように導電性基材10等の周囲に水溶性の材料が付着した状態で、コイル用導線110A、第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(被塗物)を液槽から引き上げる。そして、水溶性の材料が付着した被塗物に対して加熱することにより、被塗物の周囲に付着した水溶性の材料に由来する材料を固化させる。
【0069】
また、水溶性の材料の浸透及び固化は、いわゆる電着絶縁塗装によって行うことが更に
好ましい。
例えば、液槽に水溶性の材料を含む水溶液を満たし、被塗物が水溶液に全没するように被塗物を浴槽の内側に投入する。こうすることで水溶性の材料が、被塗物のうちコイル用導線110Aを構成する複数の導電性基材10の間に浸透(浸入)する。この状態で被塗物と電極の間に絶縁皮膜の膜厚を制御するための直流電圧を印加して、コイル用導線110A(微視的に言うと導電性基材10)の周囲や第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(マスキングした部分は除く)の表面に、水溶性の材料に由来する電着絶縁塗装膜を析出させる。これにより導電性基材10の周囲や第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(マスキングした部分は除く)の表面には電着絶縁塗膜でなる絶縁層106Aを形成することができる。
直流電圧を印加する際に、液槽内の水溶液に対し超音波を印加してもよい。超音波を印加することで被塗物の周囲から気泡や不純物を除去することができ、絶縁品質を向上させることができる。
【0070】
なお、絶縁層106Aの形成は上記した電着絶縁塗装によるものに限定されるものではない。例えば、図示を省略するが、コイル用導線110Aの導電性基材10の周囲や第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A(マスキングした部分は除く)の表面に、絶縁材料を塗布して絶縁塗布膜を形成し、当該絶縁塗布膜をもって絶縁層106Aとする方法を採用してもよい。このように塗布による絶縁塗布膜を形成する方法であれば、電着絶縁塗装による場合に比べ、安価に絶縁層106Aを構成することができ、経済的にも有利なコイルを得ることができる。
【0071】
B.電磁コイル1B(第2形状コイル1B)の製造方法
電磁コイル1Bについても、上記電磁コイル1Aの製造方法と同様の工程を実施することにより得ることができる(
図5の第2形状コイル形成作業S200を参照)。
【0072】
以上説明した工程を実施することにより、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bを得ることができる。
【0073】
参考までに、各々の電磁コイル1A,1Bを得た後には、第1コイル・サブアセンブリー形成作業S300、第2コイル・サブアセンブリー形成作業S400及びコイルアセンブリー形成作業S500を行うことができる(詳細は上記「1.電磁コイル1A,1Bの構成」の章を参照)。また、コイルアセンブリー形成作業S500によりコイルアセンブリーが組み上がった後は、回路結線端子105Aに施してあるマスキングについては、例えばはんだ炉内で加熱することにより選択的に除去することが可能である(端子部マスキング除去作業S600)。
【0074】
3.実験例
発明者は、電気機械装置の磁石の移動に伴う渦電流の発生に関する実験を行い、渦電流
の発生を抑制するコイルについての新たな知見を得たので、以下に説明する。
【0075】
(1)実験構成
図8は、実験例における実験構成を示す模式図である。
電気機械装置の磁石の移動を模式的に再現するため、
図8に示すように、振り子状の実験治具を構成した。具体的には、ロッド710の一端側710bに固定部材720を介して永久磁石MGa,MGbを配設し(符号730は永久磁石MGa,MGbのペアを示す)、ロッド710の他端側710aを回動軸AX2に固定した。ロッド710の他端側710aはベアリング軸に接続して低い摩擦係数の下で回動するようにした。
その上で、回動軸AX2の直下に試料(図においてSampleと記す)を配置するように構成した。試料は非磁性体からなる試料固定台740の上面に固定されるようにし、試料の上面の水準と振り子の先端に配設されている永久磁石ペア730との間に隙間Gを設定して、試料と永久磁石ペア730とが空間的に接触しないようにした。
【0076】
(2)試料・実験方法
(2-1)試料
試料(Sample)は基本的には電磁コイルを想定しているが、具体的には「導電性の部材(例えば導電性基材10,コイル用導線110A、第1エンド部材130A及び第2エンド部材140A)」の材料の諸候補を想定し、これらの試料(Sample)を実験に付するものとした。更に具体的には、
図9(後述)で示す表の第2列に示すような諸材料を平面視で30mm×10mmの矩形の形に整形して、それぞれ試料として準備した。
【0077】
(2-2)実験方法
先ず、実験番号に対応した試料を試料固定台740に配置する。その際、どの実験番号の場合であっても隙間Gはが凡そ1mm程度となるように試料固定台740の位置を調整するものとする。
次いで、永久磁石ペア730の中心の高さが回動軸AX2の高さと一致するように(すなわちロッド710が水平となるように)永久磁石ペア730を
図8の実線で描いた状態にまで持ち上げる。
次いで、振り子を開放する。
そうすると、永久磁石ペア730は、
図8の矢印C0の方向に動き始め、試料(Sample)の直上を矢印C1方向,矢印C2方向と交互に動くようにして往復して振動することとなる。かかる振動は、振り子と空気との抵抗の他、主に永久磁石ペア730が試料の近傍を通過することに伴う渦電流の発生による損失によって、減衰し、やがて停止することとなる。実験データはこの往復振動を観測することによって得るものとする。観測内容は、振り子が往復した回数(振り子が停止するまでの回数。以下単に往復回数という。)及び振動した時間(振り子が停止するまでの所要時間。以下単に振動時間という。)とする。往復回数及び/又は振動時間が大である程、渦電流の発生による損失が少ないとの仮定の下、往復回数及び/又は振動時間が大である程、渦電流の発生が少ないであろうと判定することとした。なお、実験番号6,7の試料は導体線ではないが比較のためにこれらについても観測を行った。以上のような実験方法で、実験番号1~7までの実験を行った。
【0078】
(3)実験結果
図9は、実験例における実験結果を示す表である。
図9に示すように、導電性基材(導体部)の平均半径が100μm以下である実験番号2,4,5については、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。更に導電性基材(導体部)の平均半径が50μm以下であると更に渦電流の発生は小さくなる。また、複数の裸導体線が編組みされている編組線である実験番号4,5については、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。また、実験番号2のマグネットワイヤー(導電性基材たる導電部に予め絶縁皮膜が施されたもの)も、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。さらに、実験番号3のめっき銅線についても、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。
【0079】
(4)考察
(4-1)上記実験結果から、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bを構成するに当たり、導電性基材10の平均半径は120μm以下であることが好しく、更には100μm以下であるとより好ましく、更には50μm以下であるとより一層好ましいことが明らかになった(実験番号2,4,5)。
(4-2)実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bを構成するに当たり、上記(1)の条件の下、コイル用導線110Aは複数の裸導体線11が編組みされている編組線20でなることがより好ましいことが明らかになった(実験番号4,5)。
(4-3)実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bを構成するに当たり、上記(1)の条件の下、コイル用導線110Aは導電性基材10に予め絶縁皮膜が施された「マグネットワイヤー」が用いられてなることがより好ましいことが明らかになった(実験番号2)。
(4-4)導電性基材10は銅線にニッケルめっきが施されたニッケルめっき線又は銅線にスズめっきが施されたスズめっき線であっても好適であることも明らかになった(実験番号3)。
以上より、上記(4-1)~(4-4)の何れか1つ又はそれらの組み合わせを充足する導電性基材10,コイル用導線110Aを採用することにより、渦電流の発生を低減することができることが実験により確認された。
【0080】
4.実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bの効果
(1)電磁コイル1A,1Bの有効コイル部102A,102Bは、複数の導電性基材10が束ねられてなるコイル用導線110A,110Bによって構成されているため渦電流の発生を低減することができる。[実験例]の章で述べたとおり、磁石の移動による影響を受けやすい「有効コイル部」においては、例えば金属でなる個体導電材(例えば銅板など)を採用するのではなく、複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線を採用することにより渦電流の発生を低減が期待できるからである。
【0081】
また、第1コイルエンド部103A,103B及び第2コイルエンド部104A,104Bは、線材を用いた部材ではなく個体導電材でなる第1エンド部材130A,130B及び第2エンド部材140A、140Bで構成されているため、従来の電磁コイルのような湾曲した部分を設けることなく、有効コイル部102A,102Bの長手方向LDから鋭角に方向を変えながら空芯領域101A,101B周りを巻回することができ、その結果、従来よりもコイルエンド部を小さくすることができる。
さらに、第1エンド部材130A、130B及び第2エンド部材140A,140Bは個体導電材でなるため、つまり撚ったり/編み込みしたりしたものでもないため、線材の断線・線径歪みの加工工程問題も生じない。
したがって、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bは、渦電流の発生を低減しつつも、従来よりもコイルエンド部を小さくすることができ、且つ、コイル用導線のフォーミングによる断線・線径歪みの加工工程問題を解消できる電磁コイルとなる。
いうなれば、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bは、有効コイル部(磁石の移動による影響を有効に受け取る領域)には例えば編組線20を採用して渦電流が低減できるものを配置しながらも、磁石の移動による影響を大きくは受けないコイルエンド部には個体導電材を配置してコイルエンド部が占有する長さ・体積を小さくし且つ断線・線径歪みの加工工程問題も解決できるものとなっている。
【0082】
(2)上記のように従来よりもコイルエンド部が小さくなると、コイルエンド部の分の抵抗を従来よりも小さくすることができる。実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bは、同じ励磁電圧であれば、電磁コイルに流れる電流を従来よりも大きくすることができ、従来よりも更にトルクを高めることができる。別の観点でいうと、同じトルクを得るのであれば、従来よりもコンパクトな電磁コイル1A,1Bとすることができる(スペース効率を高めることができる)。
【0083】
(3)第1エンド部材130A、130B及び第2エンド部材140A,140Bは個体導電材でなるため適宜の外形を造ることができる。よって、異形状の電磁コイル同士を組み合わせてコイルアセンブリー100を構築するような場合、特に巻回方向転換部134A,134B、内径凸部135A、外径凸部145Bなどのように輪郭が鋭く変化するような複雑な立体形状の電磁コイルを用いて構築するような場合においても、実施形態1によれば比較的容易にそのような電磁コイルを構築することができる。
【0084】
(4)第1エンド部材130A,130Bは、コイル用導線110A,110Bの一端側にかしめ固定されており、第2エンド部材140A、140Bは、コイル用導線110A,110Bの他端側にかしめ固定されている。このため、溶着のように熱源を必要とせず簡便に連結することができ、生産性の優れた電磁コイル1A,1Bとなる。
また、本発明の実施態様として紹介はしていないが、例えば、第1エンド部材130A及びコイル用導線110Aの間や第2エンド部材140A及びコイル用導線110Aの間を「溶接」によって連結・固定した場合には、溶接部分に酸化膜が形成されるため、電磁コイルに大きな電流を流すと溶接部分の抵抗成分により発生するジュール熱が大きくなってしまうという問題を生じやすい。他方、かしめによる固定であればそのような問題は生じない。
【0085】
(5)実施形態1では、有効コイル部102A,102Bにおける絶縁層106A,106Bは、導電性基材10の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層であることが好ましい。
絶縁層106A,106Bを、絶縁塗布材を塗布した絶縁塗布膜で構成した場合には、塗布時の液垂れ・基材への塗布材の偏った付着等の影響を受けやすい。一方で、絶縁層106A,106Bを「導電性基材10の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層」で構成することにより、浸透による効果でコイル用導線110A,110Bの内部の導電性基材間にまでも水溶性の材料が行き渡って銅電線基材間の隙間を埋めることができ、上記した液垂れ・偏った付着等を生じることもなく、電磁コイルの部位に依らず均質な絶縁層となる。その結果、均質な絶縁耐圧特性を得ることができ、絶縁特性の安定した高品質の電磁コイルとなる。
【0086】
(6)また有効コイル部102A,102Bにおける絶縁層106A,106Bは、導電性基材10の周囲に形成された電着絶縁塗膜であることが更に好ましい。
電着塗装膜は、一般に電着塗料溶液の中に被塗装物を全没させて所定の電圧を印加して形成するものである。電着塗装溶液がコイル用導線110A,110Bの外側及び内側にまで行き渡るようにして浸透し、且つ、コイル用導線110Aの外側に位置する導電性基材10に対してだけでなく内側に位置する導電性基材10に対しても同様に電圧が印加されることとなるため、コイル用導線110Aの外側から内側に渡って均質な絶縁層106A,106Bとなる。したがって、部位に依らずより均質な絶縁耐圧特性を得ることができ、絶縁特性の安定した高品質の電磁コイルとなる。
【0087】
[実施形態2]
図10は、実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bを説明するために示す図である。
図10(a)は電磁コイル2A(第1形状コイル2A)の斜視図であり、
図10(b)は電磁コイル2B(第2形状コイル2B)の斜視図である。基本的な構成及び特徴が実施形態1と同じ構成要素については、実施形態1における符号の百の桁の数字を1から2に置き換えながら(実施形態1では100番台、実施形態2では200番台に対応している)実施形態1における当該構成要素の説明を援用するものとし、ここでの説明は省略する。
【0088】
実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bは基本的には実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bと同様の構成を有するが「導電性の部材」の巻回回数において実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bとは異なる。
【0089】
例えば電磁コイル2Aでは、
図10(a)に示すように、「導電性の部材」が左手前の側より順次、第2エンド部材240A1、コイル用導線210A3、第1エンド部材230A1、コイル用導線210A1、第2エンド部材240A2、コイル用導線210A4、第1エンド部材230A2、コイル用導線210A2、第2エンド部材240A3と連結されながら、空芯領域201Aを取り囲むように約2回巻回している(厳密にいうと1と3/4回巻回している。後述する
図11も併せて参照)。
これに対応するようにして、コイル用導線210Aが4本となり、第1エンド部材230A1,230A2の態様が異なっており、第2エンド部材240A1,240A2、240A3の態様が異なっている。特に、第2エンド部材240A2においては、巻回方向転換部(符号による図示は省略)や渡り部233Aが設けられており、コイル用導線210A1とコイル用導線210A4との間を電気的に接続している。しかしながら、基本的なところは実施形態1に係る電磁コイル1Aと同様の設計思想となっており同様の構成となっている。
【0090】
電磁コイル2Bについても、
図10(b)に示すように、実施形態1に係る電磁コイル1Bと基本的に同様の構成を有しつつ、「導電性の部材」が空芯領域201Bを取り囲むように約2回巻回している。
【0091】
図10(c)は、電磁コイル2Aの有効コイル部202Aを
図10(a)で示す仮想面PL2で切断し当該切断面を矢印Bに沿って見たときの断面図である。
図10(c)に示すように、電磁コイル1Aにおける有効コイル部202Aの断面は、複数の導電性基材10が束ねられてなるコイル用導線210A1及びコイル用導線210A2が2段に積層する形となっている。それぞれのコイル用導線210A1及びコイル用導線210A2は個々にみると実施形態1に係るコイル用導線110Aと同様の構造となっている。
なお、電磁コイル2Bの有効コイル部202Bの断面図も基本的に
図10(c)と同様となる。このため電磁コイル2Bの有効コイル部202Bの断面構造についての図示及び説明を省略する。
【0092】
電磁コイル2A,2Bの製造方法は、基本的には実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bの製造方法と同様の構成を有する(
図5~7参照)。ただし、絶縁層形成工程S180において工夫が必要である。
【0093】
図11は、実施形態2の絶縁層形成工程S180における電磁コイル2A‘の状態を説明するために示す図である。
実施形態2の電磁コイル2A,2Bは上記したように「導電性の部材」が2回巻回(2T)しているため、1周目の「導電性の部材」と2周目の「導電性の部材」とが密着した状態で絶縁層を形成しようとすると、1周目の「導電性の部材」と2周目の「導電性の部材」との間に絶縁層が形成できなくなる虞がある。
そのため、
図11に示すように、絶縁層形成工程S180を実施する際には、例えば、コイル用導線210A2とコイル用導線210A4との間でSP1で示す間隔を空ける、第1エンド部材230A1と第1エンド部材230A2との間でSP2で示す間隔を空ける、第2エンド部材240A2と第2エンド部材240A2との間でSP3で示す間隔を空けるといったように、1周目の「導電性の部材」と2周目の「導電性の部材」との間で間隔を空けた状態としながら「導電性の部材(コイル用導線210A,第1エンド部材230A,第2エンド部材240A。Index番号は省略)」に対し絶縁材料を浸透・付着・塗布等を行う。
【0094】
なお、実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bは「導電性の部材」の巻回回数以外の構成においては、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bと基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bが有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0095】
[実施形態3]
図12は、実施形態3に係る電磁コイル3Aの製造工程(一部)を説明するために示す図(斜視図)である。基本的な構成及び特徴が実施形態1と同じ構成要素については、実施形態1における符号の百の桁の数字を1から3に置き換えながら(実施形態1では100番台、実施形態3では300番台に対応している)実施形態1における当該構成要素の説明を援用するものとし、ここでの説明は省略する。
【0096】
実施形態3に係る電磁コイル3A,3Bは基本的には実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bと同様の構成を有するが、コイル用導線310Aの端部にスペーサ40が装着されている点において実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bとは異なる。
【0097】
すなわち、電磁コイル3A,3Bが組み上がった状態の図示は省略するが、コイル用導線310Aの端部(一端側311A,他端側312A)にはスペーサ40が装着され、このコイル用導線310Aの端部(一端側311A,他端側312A)は第1エンド部材330A及び第2エンド部材340A1,340A2とそれぞれ連結されている。別言すると、第1エンド部材330Aとコイル用導線310Aとの間はスペーサ40を介して連結されている。また、第2エンド部材340A1,340A2とコイル用導線310Aとの間はスペーサ40を介して連結されている。なお、図示は省略するが、スペーサ40の外寸法は第1エンド部材330Aの開口部331Aや第2エンド部材340Aの開口部341Aの内寸法に対応するように設計されており、互いに嵌め合わせることができるようになっている。
【0098】
実施形態3に係る電磁コイル3A,3Bの製造方法においては、新たにスペーサ装着ステップが必要となる。
図12(a)の左側の図に示すように、コイル用導線段取り工程S130の編組線フォーミングステップS134を実施した後に、コイル用導線310Aの一端側311A及び他端側312Aにスペーサ40を装着する(スペーサ装着ステップ)。具体的にはコイル用導線310Aの一端側311A及び他端側312Aにスペーサ40をそれぞれ挿入し、各スペーサ40の外部から圧着工具等を用いて圧力をかけて「かしめ」ることで固定する。また、「かしめ」に替えて又は「かしめ」に加えて、溶着による固定を行ってもよいし、導電性接着剤による固定を行ってもよい。いずれにせよ固定を行った後は
図12(a)の右側の図の状態となる。
【0099】
その後、
図12(b)に示すように、実施形態1における第1エンド部材挿入工程S140及び第2エンド部材挿入工程S160と同様にして、スペーサ40が装着されたコイル用導線310Aの端部を第1エンド部材330Aの開口部331A及び第2エンド部材340A1,340A2の開口部341Aに挿入することができる。
【0100】
このように電磁コイル3A,3Bを製造すると、第1エンド部材330Aとコイル用導線310Aとの間はスペーサ40を介して「間接的に連結」されることとなる。また、第2エンド部材340Aとコイル用導線310Aとの間はスペーサ40を介して「間接的に連結」されることとなる。
この場合においても第1エンド部材330A又は第2エンド部材340Aとコイル用導線310Aとの間はかしめ固定によって連結することもできる。
【0101】
コイル用導線310Aとして例えば編組線を採用したとき、編組線の端部を直に第1エンド部材330Aの開口部331Aに挿入して嵌め合わせることも可能であるが、編組線の端部に導電性基材10(線材)のほつれ、毛羽立ち等が生じることがある。
一方で、実施形態3においてはスペーサ40を導入することにより上記の場合編組線の端部にスペーサ40を一旦装着するので、そのようなほつれ、毛羽立ち等を無くすことができ、接続信頼性が一層高い電磁コイルとなる。
【0102】
なお、実施形態3に係る電磁コイル3A,3Bはコイル用導線の端部にスペーサ40が装着されている点以外の構成においては、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bと基本的に同様の構成を有する(
図5~7参照)。そのため、実施形態1に係る電磁コイル1A,1Bが有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0103】
[実施形態4]
実施形態4に係る電磁コイル4A,4Bは基本的には実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bと同様の構成を有するが、コイル用導線の端部にスペーサ40が装着されている点において実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bとは異なる(図示を省略)。
すなわち実施形態4に係る電磁コイル4A,4Bは、「導電性の部材」の巻回回数が約2回であり(実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bと同様の構成)、且つ、実施形態3と同様に、コイル用導線410の両端にスペーサ40が装着されたものとなっている。つまり、コイル用導線410Aの端部にはスペーサ40が装着され、このコイル用導線410Aの端部は第1エンド部材430A及び第2エンド部材440Aとそれぞれ連結されている。別言すると、第1エンド部材430Aとコイル用導線410Aとの間はスペーサ40を介して連結されている。また、第2エンド部材440Aとコイル用導線410Aとの間はスペーサ40を介して連結されている(図示を省略)。
【0104】
なお、実施形態4に係る電磁コイル4A,4Bはコイル用導線の端部にスペーサ40が装着されている点以外の構成においては、実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bと基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態2に係る電磁コイル2A,2Bが有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0105】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0106】
(1)各実施形態では、第1エンド部材又は/及び第2エンド部材とコイル用導線との間の連結・固定は、かしめ固定による例をもって説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、個体導電材は金属でなり、第1エンド部材は、コイル用導線の一端側に溶着固定され、第2エンド部材は、コイル用導線の他端側に溶着固定されるように構成してもよい。ここでの「溶着固定」は、銀、スズ等の金属粉末を加熱して溶かして着けるもので、いわゆるはんだ付けも本発明の溶着固定のうちに含まれるものとする。溶着固定によると、溶着材が第1エンド部材/第2エンド部材とコイル用導線との間を埋めることができ、接触抵抗が低減され接続信頼性が高い電磁コイルとなる。
【0107】
また例えば、個体導電材は金属でなり、第1エンド部材は、コイル用導線の一端側に導電性接着剤で固定され、第2エンド部材は、コイル用導線の他端側に導電性接着剤で固定さるように構成してもよい。ここで「導電性接着剤で固定」とは、例えば銀ペースト(銀粉入りグリス)などを接着部分に塗布し接合したうえで、加熱して有機成分を飛ばして硬化させる固定をいう。溶着と同様に接着剤が第1エンド部材/第2エンド部材とコイル用導線との間を埋めることができ、接触抵抗が低減され接続信頼性が高い電磁コイルとなる。
【0108】
(2)各実施形態では、裸導体線11を導電性基材10とした編組線20をコイル用導線とした例をもって説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、導電性基材10はエナメル線12であり、コイル用導線は、複数のエナメル線12が撚られた「リッツ線30」でなるように構成してもよい(図示を省略)。
いわゆるリッツ線30は、編組線20より安価で工業上は魅力的であるが、曲げに弱くフォーミングによる断線・線径歪みの加工工程問題を生じ易いため、従来ではコイル用導線として採用しづらかった。しかし、本発明によれば、コイル用導線はコイルエンド部には用いず直線状の有効コイル部のみ組み込まれることから、上記問題を気にすることなく採用することができる。したがって、リッツ線30は本発明に好適に用いることができ経済的な電磁コイルを実現することができる。
【0109】
(3)各実施形態では、「導電性の部材」を約1回巻回(1T)する又は約2回巻回(2T)する例をもって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、3回以上巻回するものであってもよい。もっとも、本発明は「導電性の部材」の巻回回数が2回以下の電磁コイルがより好適である。3回以上巻回するものであると、段重ねとなるコイル用導線(編組線等)の間に絶縁塗装剤を設ける工程(絶縁層形成工程S180)の難易度が上がる。「導電性の部材」の巻回回数が2回以下であれば製造性に優れた経済面でも有利な電磁コイルとすることができる。
【0110】
(4)各実施形態では、第1の相の電流が供給される「一の電磁コイル」の空芯領域に第2の相の電流が供給される「他の電磁コイル」の有効コイル部が嵌め込められるように構成された電磁コイルとして、
図1,2,7,10,11等に示されるような構造を有する電磁コイル1A,1Bを紹介しながら説明した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図13に示される構造を有する電磁コイル7,7’や
図14に示される構造を有する電磁コイル8,8’,8’’についても同様に、第1の相の電流が供給される「一の電磁コイル」の空芯領域に第2の相の電流が供給される「他の電磁コイル」の有効コイル部が嵌め込められるように構成された電磁コイルとして適用可能である。
なお、
図13は、変形例に係る電磁コイル7,7’を説明するために示す図であり、これらの電磁コイルの説明は本発明者による特願2020-147041を援用することができる。
図14は変形例に係る電磁コイル8,8’,8’’を説明するために示す図である。符号800’は電磁コイル8’を用いたコイルアセンブリーの例である。電磁コイル8,8’,8’’の説明は本発明者による特願2021-98086を援用することができる。
【0111】
(5)各実施形態においては、2相で励磁されて動作する電気機械装置を例に説明をしたが(
図1等)、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、3相で励磁される電気機械装置に対しても適用可能である。
【0112】
(6)本発明の適用先としてコアレスモーターを例に説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コアレス型の発電機、回生制動機、アクチュエーター等の電気機械装置一般に対しても適用可能である。さらに、本発明の適用先としてコアレス(鉄心なし)の電気機械装置に限定されるものではない。本発明はコアード(鉄心ありで鉄心の周りに当該電磁コイルを配置するもの)の電気機械装置に適用してもよい。
【0113】
(7)各実施形態においては、コアレスモーター等の回転を前提とした電気機械装置を例に説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リニア型の電気機械装置に用いることもできる。例えば
図1(a)に示すかご型のコイルアセンブリーの周方向の1か所を仮想的に切断して展開したような構成とすることにより、リニア型の電気機械装置向けのコイルアセンブリーとすることもできる。この場合、本明細書におけるローター(回転子)はムーバー(可動子)と読み替えることができる。
【符号の説明】
【0114】
1,1A,1B,1A1,1B1,1B2,2A,2A’,2B,3A,3B,4A,4B,7,7‘,8,8’,8’’、9A…電磁コイル、1A,2A…第1形状コイル、1B,2B…第2形状コイル、10…導電性基材、11…裸導体線、12…エナメル線、15…撚線、20…編組線、30…リッツ線、40…スペーサ、100,800’…コイルアセンブリー、100AS…第1コイル・サブアセンブリー、100BS…第2コイル・サブアセンブリー、101A,101B,201A,201B,901A…空芯領域、102A,102B,202A,202B,302A,402A,902A…有効コイル部、103A、103B,903A…第1コイルエンド部、104A,104B,904A…第2コイルエンド部、105A,905A…回路結線端子、106A,106B…絶縁層、107A…水溶性の材料が固化した絶縁層、110A,110A1,110A2,110B,210A,210A1,210A2,210A3,210A4,310A,410,410A…コイル用導線、111A,311A,411A…一端側、112A,312A,412A…他端側、130A,130B,230A,230A1,230A2,330A…第1エンド部材、131A,331A,341A…開口部、132A…連結部(オーバーラップ部)、133A,233A…渡り部、134A,134B,934A,944A…巻回方向転換部、135A…内径凸部、136A…溝領域、137A,147B…かしめ部、140A,140B,240A,240A1,240A2,240A3,340A,340A1,340A2…第2エンド部材、141A…開口部、142A…連結部(オーバーラップ部)、145B…外径凸部、710…ロッド、710a…ロッドの他端側、710b…ロッドの一端側、720…固定部材、730…永久磁石ペア、740…試料固定台