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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】上掛け用寝具
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
A47G9/02 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023106618
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598044556
【氏名又は名称】藤井株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137372
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 徳子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹晴
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-013075(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155086(JP,U)
【文献】特開2011-47071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0032441(US,A1)
【文献】特開2021-7667(JP,A)
【文献】特開平7-263(JP,A)
【文献】特開2011-167320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0304485(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0397078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0390254(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
A47G 9/06
A47G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体を覆う中央部と
中央部の左右に配置された、伸縮部から構成される寝具において
中央部は短尺方向に80cm~90cmの幅で長尺方向にわたる領域を占め、
伸縮部は、製造時の弾性糸の挿入による縦方向への伸縮性が付与されており、
短尺方向に30cmの幅で長尺方向にわたる領域を占め、
伸縮部と中央部の長尺方向の寸法比が1:1.1~1.6であって、
伸縮部の縦方向の伸縮率が中央部の縦方向の伸縮率の1.1倍から1.6倍であって、
展開された寝具の自然状態において中央部が立体的に隆起しており、
使用に際し、伸縮部が使用者の身体に沿って密着するとともに、身体を覆う中央部にドーム状の空間を形成することを特徴とする上掛け用寝具
【請求項2】
長尺方向の両端部に帯状部材を取り付けた請求項1記載の上掛け用寝具

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する上掛け用寝具に関する。より詳しくは異なる伸縮性を有する領域から構成される毛布又はブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
人は就寝中に複数回の寝返りを行うが、その際に毛布やブランケット等の上掛け用寝具がずれ落ちたり、使用者の首元又は足元に隙間が生じることがある。特に薄い寝具を使用したときには、その軽さ故ずれが生じやすい。
【0003】
また、毛布と掛け布団とを重ねて使用する場合に、寝返りにより掛布団がずれ落ちて、掛け布団と毛布の間に隙間が生じる。掛け布団の上に毛布を重ねて使用する場合においても掛け布団から毛布がずれ落ちることがあった。
【0004】
そうすると、就寝中の布団内の保温性が保てず、肩先の隙間から流入した冷気により体が冷えてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、布団のずれ落ち防止や上掛け用寝具と体との間の隙間抑制の工夫が施された寝具が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022‐59637号公報
【文献】特開2016―93288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の寝具は上掛け寝具と敷寝具との間に設けられる、伸縮自在な材料により形成された被覆シート部材が敷寝具と共に就寝者の全周を囲み、また、当該被覆シート部材が就寝者に向かって縮むように形成されている。しかしながら、このような寝具は寝具全体が重くなってコスト高なうえ、敷寝具上に横たわった就寝者に向かって被覆シート部材が縮むように構成されているため、圧迫感を感じる。また、就寝時には被覆シート部材と敷布団との隙間に体を潜り込ませなければならず面倒かつ不便である。
【0008】
特許文献2の寝具には就寝者の身体の形状に合わせて湾曲したキルティングが施されており、就寝者との密着性が高いというものであるが、就寝中の様々な寝姿すべての形状に沿うものではなく、就寝者の肩先などに生じる隙間を抑制する効果は十分とは言えない。
【0009】
そこで、本願では使用者が寝返りを打ってもその動きに沿って追随する薄くて軽い寝具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本願請求項1では、使用者の身体を覆う中央部と中央部の左右に配置された伸縮部から構成される寝具において、伸縮部と中央部の長尺方向の寸法比を1:1.1~1.6に形成し、伸縮部の少なくとも縦方向の伸縮率を中央部の縦方向の伸縮率の1.1倍から1.6倍に形成し、展開したとき自然状態で寝具中央部が立体的に隆起するように形成するのである。
【0011】
請求項2では、寝具の長尺方向の両端部に帯状部材を取り付けるのである。
【発明の効果】
【0012】
寝具中央部が使用者の身体を包み込み、寝具中央部に比し伸縮性の高い、中央部の両サイドに配置された伸縮部が錘のように垂下して寝具中央部の立体形状を形成・保持するとともに、使用者の身体への密着性を保持する。したがって、肩先や足元からの隙間風の流入を可及的に防止するのである。
【0013】
使用者の身体を覆う、寝具中央部は凹凸が少なく摩擦力が大きいため、寝返りなどの使用者の動きに寝具が追従し、寝具のずれ落ちを抑制できる。さらに寝具の上又は下に配置した掛布団との間の摩擦力も大きいため、掛布団のずり落ちを抑制する。
【0014】
表面に凹凸を有する伸縮部と伸縮性の低い、フラットな中央部と、異なる表面形状の領域を形成することで、平面的な生地でありながら使用に際して、使用者の周りに立体的な空間を形成することができる。この寝袋のような立体的なドーム状空間により形成された大きな空気層は、寝具の首元及び足元への密着性が高いことと相まって、保温性が高い。
【0015】
体温を包み込む効果を持たせることができるため寝具自体を薄くかつ軽く形成することが可能である。
【0016】
身体に沿って寝具がドーム状に盛り上がり、体を包み込むように体の上面側を覆い、寝返りを打っても寝具は体に追随して動き、布団のめくれや外気の侵入を防ぐことができる。
【0017】
寝具両側に配した伸縮部がフラットな中央部に比し生地量が多く重量があるため抑えとしての効果もあり、使用者の身体に程よくフィットするのである。
【0018】
薄手、軽量であるため、洗濯・乾燥容易であり、折り畳んでも薄く、保管場所を取らない。
【0019】
寝具自体の重さや、紐状部材を使用した締め付けなど、過度の圧迫により寝具のずれや隙間風を防止するのではなく寝具自体が立体的形状を形成し、且つ、体に沿うように密着するため、体の動きを妨げることなく楽に寝返りを打つことができる。
【0020】
長尺方向の両端部に伸縮性の低い又は伸縮性のない帯状部材を取り付けることで、縦方向の形態安定性を確保するのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】長尺方向の両端部を非伸縮性部材で端部処理を行っている寝具の平面図。
図2】長尺方向の両端部を非伸縮性部材で端部処理していない寝具の自然状態を表す平面図。
図3】同、両端部を伸ばした状態を表す平面図。
図4】敷布団の上にあおむけに寝た使用者が寝具をかけた状態を示す説明図。
図5】同、寝返りを打って横向きになった状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の最適な実施形態について以下、図面1を参照しながら詳説する。
【0023】
本願発明の寝具の実施形態の一つ、より具体的には上掛け用毛布又はブランケット(以下、「毛布」という。)のサイズは一般的なシングルサイズの幅140cmx200cm
を有する。
【0024】
この実施形態における毛布1の出来上がり寸法は長尺方向の長さは両端部において200cm、幅方向に140cmである。
【0025】
毛布1は伸縮性の異なる2つの領域によって構成されることを特徴とする。伸縮部1a―1aは毛布1の両端部から中央方向へそれぞれ30cmx毛布長さの200cm程度を占める領域を指す。使用者の身体を覆う、毛布1の中央部1bは幅80cmx長さ200cm程度の領域であり、伸縮部と中央部の伸縮性の縦方向の比は1.1~1.6倍程度が好ましい。
【0026】
使用者の身体を覆う中央部の幅は人の肩幅をもとに算出している。20代女性の平均肩幅は405mm、20代男性の平均肩幅は451mmとなっているため、本願における中央部の幅は使用者が横向きに寝たときの身体の前後を覆う幅、即ち80cm~90cmを目安としている。
【0027】
伸縮部1a-1aへは編成時に弾性糸2の挿入により、毛布には少なくとも縦方向への伸縮性が付与されている。弾性糸2の挿入本数や挿入間隔は適宜変更可能である。
【0028】
また、この実施例では毛布1の長尺方向の両端部に非伸縮性部材、または伸縮性の低い紐状部材3―3が取り付けられている。毛布の取り扱いを容易にし、使用時に伸縮性が付与されていることによる毛布の捲れを防止するためである。当該実施例においてはシングルサイズの寝具の長尺方向の寸法200cmが自然状態で保持できるように、毛布の生地を伸ばした状態で紐状部材3を取り付けている。
【0029】
長尺方向両端部において出来上がり寸法が200cmとなるため、この実施形態については、伸縮性が小さい中央部1bの縦方向の寸法は上下方向に少なくとも10cm程度ずつ長くなる。これは一般的なシングルサイズの毛布の長さ200cmに比し、20cm程度長くなるため、使用者の首元や足元をより確実に覆うことができるのである。
【0030】
中央部1bに比べて伸縮部1a-1aは縦方向への伸縮性が大きく、使用されている生地の重量が重くなり、使用者の身体を中央部1bが覆うと、両端の伸縮部1a-1aが使用者の体の形状に沿って蛇腹状に縮まって密着するとともに錘のような効果を奏して使用者と毛布との間に隙間が生じることを可及的に抑制し、使用者の身体が冷気に触れることを防止するのである。
【0031】
また、使用者が寝返りをうっても中央部1bは使用者の動きに追随して体に沿い、一方、伸縮部1a-1aは自重で使用者の身体に沿って垂下し、使用者の寝返り後の身体の形状にも沿うため使用者と毛布との間に隙間が生じるのを防ぐのである。
【0032】
前述のとおり、中央部1bは伸縮部1aに比し、上下方向に約10cmずつ長く形成されており、首回り及び足回りを確実に覆うだけでなく、上下方向から入り込む隙間風を可及的に抑制することと相まって寝袋のような一つのドーム状の空間を形成するため、当該ドーム状空間の保温性を維持することができる。
【0033】
また、伸縮部1aでは生地表面に凹凸が生じるが、中央部1bは伸縮部1aに比しよりフラットな状態となるため摩擦力が大きい。この摩擦力により使用者の動きに追随しやすい上、毛布1を掛布団の上又は下に配置したときにも掛布団とのずれを防止する効果が期待できるのである。
【0034】
本願に係る寝具の形状は経編などによる編物、織物による寝具類及びストレッチキルトを施した寝具類に応用が可能である。また、シングルサイズはもちろん、ダブルサイズや種々の寸法の寝具に応用が可能である。
【0035】
また、毛布の少なくとも中央部に、厚さ方向に突出する複数の綿パイル糸を配置するように編成すると、高い吸水性を有し肌触りが良好となる。また、中央部の摩擦力がより大きくなることで使用者の寝返りなどの動きに毛布が追随して動くのである。
【0036】
図2は本願に係る毛布の他の実施例を示す平面図である。
【0037】
毛布4は毛布1同様、伸縮性の異なる2つの領域によって構成されることを特徴とする。伸縮部4a―4aは毛布4の両端部から中央方向へそれぞれ30cmx毛布長さの200cm程度を占める領域のことをいう。使用者の身体を覆う、毛布4の中央部4bは幅80cmx長さ200cm程度の領域であり、伸縮部と中央部の縦方向への伸縮性の比は1.1~1.6倍程度が好ましい。
【0038】
毛布の伸縮部4a-4aへは編成時に弾性糸5の挿入により、少なくとも縦方向への伸縮性が付与されている。弾性糸5の挿入本数や挿入間隔は適宜変更可能である。
【0039】
長尺方向両端部において出来上がり寸法が200cmとなるため、この実施形態については、伸縮性が小さい中央部1bの縦方向の出来上がり寸法は上下方向に20cm程度ずつ長くなる。これは一般的なシングルサイズの毛布の長さ200cmに比し、40cm程度長くなるため、使用者の首元や足元をより確実に覆う形状となっている。
【0040】
中央部4bに比べて伸縮部4a-4aは伸縮性が大きく、使用されている生地の重量も重いため、使用者の身体を中央部4bが覆うと、両端の伸縮部4a-4aが使用者の体の形状に沿って密着して垂下し、使用者と毛布との間に隙間が生じることを可及的に抑制し使用者の身体が冷気に触れることを防止できるのである。
【0041】
図4は実際に布団の上にあおむけ状態で寝た使用者が、本願発明に係る毛布を体にかけた状態を示す図である。寝具中央部があおむけになった使用者の身体全体を覆うとともに、左右の伸縮部が蛇腹状に縦方向に縮んで敷布団に密着しているため、寝具伸縮部と敷布団との間に隙間が生じず隙間風が入る余地がない。一方、使用者の身体全体を覆う寝具中央部は一つの大きなドーム状空間を形成し、寝袋のように内部に大きな空気層を形成して使用者の体温をよく保持するのである。
【0042】
また、使用者が寝返りをうっても中央部4bは使用者の動きに追随して体に沿い、一方、伸縮部4a-4aは自重で使用者の身体に沿って垂下し、使用者の寝返り後の身体の形状にも沿うため隙間が生じるのを防ぐのである。
【0043】
その状態を示しているのが図5である。図5に示すように寝返りを打って使用者が横向きになると寝具伸縮部が使用者の身体の形状に沿ってよく追随していることがわかる。また、寝具中央部に形成されていたドーム状空間は大きな空間を形成しつつ、使用者の身体の形状に沿って変形しながらも寝袋状形態を保持するのである。
【0044】
毛布の長尺方向の両端部は、従来より行われている一般的な端部処理が行われている。例えば、バイアステープの取り付けによるものやロックミシン仕上げ、メロー仕上げなどが考えられる。
【0045】
図2では自然状態で載置した毛布の様子を表している。弾性糸が使用されていない毛布
4の中央部4bはフラットな状態でありながら、中央部4bの両サイドに配置した伸縮部の影響を受け自然状態で立体的に盛り上がっている。当該毛布4を使用すると、体を覆う中央部4bがドーム状の大きな空気層を形成し、当該空気層を囲むように伸縮部4aが使用者の身体の側面の形状に沿うため、中央部4bが寝袋のように使用者を包み込み、寝返りなどの動きによく追従するとともに、肩先や足元は伸縮部4bが使用者の身体に沿うことによって閉じられ、隙間風の流入を防ぐのである。
【0046】
図3図2の毛布4の両端部を伸ばした状態、即ちシングルサイズの縦方向の長さ200cmまで伸ばした状態を示す平面図である。
【0047】
本願毛布の素材としては、汗を吸収しやすく、肌触りが良好な木綿を含むことが望ましい。保温に適した羊毛や、絹などの天然繊維に加え、ポリエステルやナイロン等の素材も肌触りがよく、保温性に優れた素材として適している。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明にかかる寝具は経編又は織物からなる寝具類に応用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、4、毛布 2、弾性糸 3、帯状部材 1a、4a、伸縮部 1b、4b、中央部
【要約】
【課題】上掛け寝具と身体との間に隙間が生じると隙間風が入り寝具内の保温性が保てない。また、寝返りを打つと上掛け寝具がその動きに追随せずその場合も隙間が生じてしまう。そこで、可及的に隙間を生じず寝返りなどの動きによく追随する上掛け用寝具を提供することを目的とする。新規な構造によって保温性を維持し上掛け用寝具を軽量に編成する。
【解決手段】そこで本願では、使用者の身体を覆う中央部と中央部の左右に配置された伸縮部から構成される上掛け用寝具において、伸縮部と中央部の長尺方向の寸法比を1:1.1~1.6に形成し、伸縮部の少なくとも縦方向の伸縮率を中央部の縦方向の伸縮率の1.1倍から1.6倍に形成し、展開したとき自然状態で寝具中央部が立体的に隆起するように形成するのである。また、取り扱いを容易にするために寝具の長尺方向の両端部に伸縮性の低い帯状部材を取り付けるのである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5