IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丹羽 功一の特許一覧

<>
  • 特許-自走式立体型洗車場 図1
  • 特許-自走式立体型洗車場 図2
  • 特許-自走式立体型洗車場 図3
  • 特許-自走式立体型洗車場 図4
  • 特許-自走式立体型洗車場 図5
  • 特許-自走式立体型洗車場 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】自走式立体型洗車場
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
B60S3/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023144036
(22)【出願日】2023-09-05
【審査請求日】2023-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302007998
【氏名又は名称】丹羽 功一
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 功一
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0060217(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0250086(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008026566(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0128223(KR,A)
【文献】中国実用新案第202574150(CN,U)
【文献】中国実用新案第207141033(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102862550(CN,A)
【文献】国際公開第2012/028141(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に重なる複数階の床を有し、
ずれかの階の前記床は、車両が自走可能な自走床を含み
更に、前記自走床へ車両が入場する入口である入場口と、
前記自走床から車両が退場する出口である退場口と、
を備え
前記自走床を仕切る構成で複数の洗車室がそれぞれ設けられ、
前記洗車室は、車両が自走することによって進入可能とされ、作業者が洗車作業を行う空間を構成し、
前記洗車室が設けられた階の前記自走床を覆う構成で天井が設けられ、
前記洗車室には、水を放出する放水部と、当該洗車室の内側の空間と外側の空間との間を仕切る仕切壁と、が設けられ
更に、前記洗車室内の水を傾斜した床によって集めて排水する排水部が設けられる
自走式立体型洗車場。
【請求項2】
上下に重なる複数階の前記自走床を有し、
前記自走床が設けられた各階において、前記自走床を仕切る構成で複数の前記洗車室がそれぞれ設けられる
請求項1に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項3】
前記複数階のうちの所定の上方階に前記自走床が設けられ、
前記上方階の前記自走床に前記洗車室及び前記排水部が設けられ、
前記上方階と前記上方階よりも下の階とに跨る構成で、前記上方階の前記排水部を流れた水を前記上方階よりも下の階側へ導く誘導路が設けられている
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項4】
前記上方階の前記自走床と前記上方階の一つ下の階の前記自走床の間で車両が自走するための傾斜走路を備えたスロープ部を有し、
前記誘導路は、前記スロープ部に形成された流路を有し、前記排水部を流れた水を前記流路内に導いて前記スロープ部において流す
請求項3に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項5】
前記誘導路は、前記上方階と前記上方階よりも下の階とに跨る管を有し、前記排水部を流れた水を前記管内に導いて前記管内において流す
請求項3に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項6】
前記放水部の放水よりも高圧で洗浄水を供給する高圧供給装置を有し、
前記洗車室として、前記高圧供給装置が設けられる第1の洗車室と、前記高圧供給装置が設けられない第2の洗車室とが設けられ、
前記第1の洗車室は、地階ではない最も低い地上階に設けられ、
前記地上階よりも上の階又は下の階である所定階が、前記第2の洗車室が設けられ且つ前記第1の洗車室が設けられない階とされており、
前記地上階には、前記第1の洗車室から前記地上階又は前記自走式立体型洗車場の外側に設けられた貯留槽に前記第1の洗車室で流された泥水を誘導する泥水路が設けられる
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項7】
いずれかの前記洗車室には、当該洗車室内の空間と当該洗車室の後方側の空間とを仕切る後方壁が設けられ、更に、当該洗車室内を冷却又は加熱する空調装置、又は、当該洗車室内の空気と当該洗車室外の空気とを換気する換気装置、若しくは、前記洗車室内の空気と当該自走式立体型洗車場の場外の空気とを換気する換気装置、の少なくともいずれかが設けられている
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項8】
前記排水部は、前記洗車室における前記仕切壁の前端部よりも前側において、当該洗車室から前側に流れた水を集める前方溝を有する
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項9】
前記排水部は、前記洗車室の床の後端部側において前記洗車室の横方向一端側から他端側に水を流す後方溝と、当該洗車室における前記仕切壁の前端部よりも前側において、当該洗車室の横方向一方側から他方側に続く前方溝と、を有し、当該洗車室の床は、後方側となるにつれて低位置となる傾斜床である
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【請求項10】
複数の前記洗車室が所定方向に並んでおり、
前記自走床において前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室の前側に隣接して車両の走路が設けられ、
前記排水部は、前記走路において前記所定方向一方側から他方側に続く走路溝を有し、
前記走路溝は、前記走路において前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室寄りに設けられ、前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室における前記仕切壁の前端部から距離を隔てた前側において設けられている
請求項1又は請求項2に記載の自走式立体型洗車場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自走式立体型洗車場に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゲート式の洗車場システムが開示される。この洗車場システムは、洗車場の出入口に自動ゲ-トが設けられ、洗車場が多数のガレ-ジ状の洗車室に区画される。各洗車室には、天井にシャワ-装置とエア-吹出装置が設けられる。自動ゲ-トには、満車放送装置と料金徴収口とが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-172271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の洗車場システムでは、所定範囲の土地を利用するにあたって、所定数の洗車室等の平面的な利用しか使用できず、洗車室の上方や下方の利用は一切できないため、土地を有効に利用する上で改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的の一つは、所定範囲の土地をより有効に利用する形態で、車両が自走可能なエリアに洗車室が設けられる洗車場を実現し得る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである自走式立体型洗車場は、
上下に重なる複数階の床を有し、
少なくともいずれかの階の前記床は、車両が自走可能な自走床であり、
更に、前記自走床へ車両が入場する入口である入場口と、
前記自走床から車両が退場する出口である退場口と、
を備え
前記自走床を仕切る構成で複数の洗車室がそれぞれ設けられ、
前記洗車室は、車両が自走することによって進入可能とされ、
前記洗車室が設けられた階の前記自走床を覆う構成で天井が設けられ、
前記洗車室には、水を放出する放水部と、当該洗車室の内側の空間と外側の空間との間を仕切る仕切壁と、が設けられ
更に、当該洗車室内の床を流れる水を集めて排水する排水部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、所定範囲の土地をより有効に利用する形態で、車両が自走可能なエリアに洗車室が設けられる洗車場を実現し得る
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る自走式立体型洗車場を概念的に例示する説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係る自走式立体型洗車場の内部構成等を概念的に例示する説明図である。
図3図3は、いずれかの階の自走床のレイアウトを概念的に例示する説明図である。
図4図4は、洗車室内を前側から見た構成を概念的に例示する説明図である。
図5図5は、洗車室内を洗車室の一方の仕切壁側から横方向に見た構成を概念的に例示する説明図である。
図6図6は、図5の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の〔1〕~〔12〕の各々は、本開示に含まれる特徴的技術の一例である。
【0010】
〔1〕上下に重なる複数階の床を有し、
少なくともいずれかの階の前記床は、車両が自走可能な自走床であり、
更に、前記自走床へ車両が入場する入口である入場口と、
前記自走床から車両が退場する出口である退場口と、
を備え
前記自走床を仕切る構成で複数の洗車室がそれぞれ設けられ、
前記洗車室は、車両が自走することによって進入可能とされ、
前記洗車室が設けられた階の前記自走床を覆う構成で天井が設けられ、
前記洗車室には、水を放出する放水部と、当該洗車室の内側の空間と外側の空間との間を仕切る仕切壁と、が設けられ
更に、当該洗車室内の床を流れる水を集めて排水する排水部が設けられる
自走式立体型洗車場。
【0011】
上記〔1〕に記載の自走式立体型洗車場は、上下に重なる複数階の床が構成され、いずれかの階には、車両が自走して移動できる洗車室が仕切壁によって区画された構成で並んで設けられる。そして、この自走式立体型洗車場は、洗車室が設けられた階の上の階又は下の階も床が設けられた利用階とされているため、当該利用階を洗車室が設けられるエリア又は他の用途のエリアとして利用することができる。よって、この自走式立体型洗車場によれば、所定範囲の土地をより有効に利用し得る形態で、車両が自走可能なエリアに洗車室が設けられる洗車場を実現し得る。
【0012】
〔2〕上下に重なる複数階の前記自走床を有し、
前記自走床が設けられた各階において、前記自走床を仕切る構成で複数の前記洗車室がそれぞれ設けられる
〔1〕に記載の自走式立体型洗車場。
【0013】
上記〔2〕の自走式立体型洗車場は、複数階の自走床が設けられ、各自走床に洗車室が設けられるため、自走式の洗車エリアを上下に重ねることができ、限られた土地に自走式の洗車室をより多く設けることができる。しかも、この自走式立体型洗車場は、各自走床が車両を自走可能なエリアであるため、上下に洗車場エリアが重なって配置された構成であっても、利用者が車両を運転してより自由に洗車室に入ることができ、自走床や洗車場から出るときも、より自由に車両を出庫することができる。
【0014】
〔3〕前記複数階のうちの所定の上方階に前記自走床が設けられ、
前記上方階の前記自走床に前記洗車室及び前記排水部が設けられ、
前記上方階と前記上方階よりも下の階とに跨る構成で、前記上方階の前記排水部を流れた水を前記上方階よりも下の階側へ導く誘導路が設けられている
〔1〕又は〔2〕に記載の自走式立体型洗車場。
【0015】
従来、自走式の洗車エリアを上下に重ねて配置した構成のものは提供されていないが、複数の階に自走式の洗車室が設けられるように上下に洗車場エリアを重ねて配置すると、上方階の洗車室で大量の排水が生じることになるため、この排水の処理が問題になる。この点、上記〔3〕の自走式立体型洗車場は、上方階の洗車室で流れた排水を、誘導路によって下の階側へ導くことができるため、高い位置で洗車される場合であっても、高い位置で生じた排水を適切に下方階側に誘導することができる。
【0016】
〔4〕前記上方階の前記自走床と前記上方階の一つ下の階の前記自走床の間で車両が自走するための傾斜走路を備えたスロープ部を有し、
前記誘導路は、前記スロープ部に形成された流路を有し、前記排水部を流れた水を前記流路内に導いて前記スロープ部において流す
〔3〕に記載の自走式立体型洗車場。
【0017】
上記〔4〕の自走式立体型洗車場は、高い階(上方階)で洗車が行われた場合の洗車に伴う排水を、車両が自走するスロープ部の構造を利用して下方階側へ誘導することができる。よって、この自走式立体型洗車場は、大掛かりな排水構造の設置を抑えて、より簡易な構造で下方側に適切に排水することができる。
【0018】
〔5〕前記誘導路は、前記上方階と前記上方階よりも下の階とに跨る管を有し、前記排水部を流れた水を前記管内に導いて前記管内において流す
〔3〕又は〔4〕に記載の自走式立体型洗車場。
【0019】
上記〔5〕の自走式立体型洗車場は、高い階(上方階)で洗車された場合の排水を、上方階と上方階よりも下の階とに跨る管を利用して下側に適切に導くことができる。
【0020】
〔6〕上下に重なる複数階の前記自走床を有し、
前記自走床が設けられた各階において、前記自走床の一部をなす前記車両の走路が設けられるとともに、前記自走床を仕切る構成で複数の前記洗車室がそれぞれ設けられ、且つ、各々の前記洗車室の前側に前記走路が配置され、
少なくともいずれかの階において、当該階の前記走路及び当該階の複数の前記洗車室の前記自走床を覆うように前記天井が設けられ、且つ、当該階の前記走路を照らす第1照明部と、当該階の複数の前記洗車室を照らす第2照明部とが設けられ、当該階の各々の前記洗車室内を照らすように各々の前記第2照明部が設けられている
〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0021】
上記〔6〕の自走式立体型洗車場は、所定範囲の土地において複数の洗車室を密集させた構造(密度を高めた構造)で配置し、天井で覆われた走路を明るくしつつ、天井で覆われた各洗車室内を個別に明るくして洗車作業を行いやすくすることができる。特に下の階の洗車エリアは、洗車室や走路が天井で覆われた上で、相対的に低いエリアに位置する構成であるため、天井によるメリットを享受し得るものの、特に洗車室が暗くなりやすいが、上記自走式立体型洗車場は、各々の洗車室が走路の照明部(第1照明部)とは異なる第2照明部によって照らされるため、明るさが強調され、洗車作業が行いやすくなる。また、洗車室のみを明るくする構成だけでは、日照が無い場合又は減った場合に洗車エリアの走路が暗くなりやすく、当該洗車場を外側から見た場合に、走路の暗さが印象を悪くし、利用者が走路への侵入を躊躇する懸念があるが、洗車室とは異なる第1照明部が走路に設けられていれば、このような問題を低減又は解消することができる。
【0022】
〔7〕複数の前記洗車室の各々に前記照明部が設けられ、
少なくともいずれかの前記洗車室の前記照明部は、当該自走式立体型洗車場が所定の暗さになる条件又は所定時刻が到来する条件のうちの少なくともいずれかの条件を含む第1条件を満たした場合において当該照明部が設けられた前記洗車室に車両が入っていない場合には、第1の明るさで当該照明部が設けられた前記洗車室の内部を照射し、前記第1条件を満たし且つ当該照明部が設けられた前記洗車室に車両が配置される場合には、前記第1の明るさよりも明るい第2の明るさで当該照明部が設けられた前記洗車室の内部を照射する
〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0023】
上記〔7〕の自走式立体型洗車場は、ある程度の暗さになった場合や所定時刻が到来した場合に、洗車室に車両が入っていなくても、ある程度の明るさで洗車室内を照らすことができ、場外から見た場合の洗車室の雰囲気を良くすることができる。例えば、洗車室外がある程度の明るさであっても、天井で覆われ且つ仕切壁で区切られた奥まった構造の洗車室内は暗くなりやすく、利用者が入場を躊躇しやすいが、第1の明るさで洗車室内が個別に照射されていれば、洗車室内が暗すぎることに起因する入場への躊躇等を抑えやすくなる。但し、継続的に照明光を照射すると、消費電力が増大することが懸念されるが、上記自走式立体型洗車場は、車両が洗車室内に入っていない場合には、明るさを抑えた状態で照明光を照射することができるため、消費電力を確実に抑制することができ、車両が駐車していない状態で明るすぎるようなことを防ぐことができる。一方で、洗車室に車両が入った場合には、車両が入っていない場合よりも明るく照らすることができるため、洗車作業を行いやすくすることができる。特に、この特徴を用いると、車両が入っている洗車室と入ってない洗車室がある場合に、明るさの差ができるため、車両が入っていない洗車室が存在することを遠く(例えば自走式立体型洗車場の外側など)から見て把握することができ、車両が入っていない洗車室が存在することを知らせる上で非常に有利になる。
【0024】
〔8〕前記放水部の放水よりも高圧で洗浄水を供給する高圧供給装置を有し、
前記洗車室として、前記高圧供給装置が設けられる第1の洗車室と、前記高圧供給装置が設けられない第2の洗車室とが設けられ、
前記第1の洗車室は、地階ではない最も低い地上階に設けられ、
前記地上階よりも上の階又は下の階である所定階が、前記第2の洗車室が設けられ且つ前記第1の洗車室が設けられない階とされており、
前記地上階には、前記第1の洗車室から前記地上階又は前記自走式立体型洗車場の外側に設けられた貯留槽に前記第1の洗車室で流された泥水を誘導する泥水路が設けられる
〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0025】
上記〔8〕の自走式立体型洗車場は、上記高圧供給装置による高圧洗浄が可能な第1の洗車室と、上記高圧供給装置による高圧洗浄が想定されない第2の洗車室とに分けることができる。そして、洗車場を、高圧洗浄を行えるようにした地上階(地階ではない最も低い階)と、高圧洗浄が想定されない所定階とに分けて管理し、上記地上階には、高圧洗浄で想定される泥水を貯留槽に誘導するように泥水路を確保することができる。上記自走式立体型洗車場は、貯留槽が地上階又は自走式立体型洗車場の外側に設けられる場合に適用されるものであるため、上記地上階よりも上方の階又は下方の階に大掛かりな機器(吸引機能を有する車両など)を移動させずに済み、貯留槽から泥を排出する作業を大掛かりな機器等を用いて行いやすくなるが、仮に、第1の洗車室が上方の階や下方の階に設けられると、高圧供給装置によって?がし落とされた多量の泥を貯留槽まで誘導することが困難になる。これに対し、上記自走式立体型洗車場は、所定階において第1の洗車室を設けない構成とし、高圧洗浄を行うことを困難にしているため、高圧洗浄に起因する泥が上記地上階よりも上の階又は下の階である所定階に蓄積することを防ぐことができ、高圧洗浄に起因する泥が上記上の階又は上記下の階から上記地上階側に排水を移動する過程で詰まりを生じさせてしまうことを防ぐことができる。一方、上記地上階の上記第1の洗車室において高圧洗浄で生じた泥は、上記地上階に設けられた泥水路によって貯留槽に導くことができる。泥水路は、地上階の第1の洗車室からできるだけ短く構成することができるため、高圧洗浄で生じた泥が詰まるリスクを抑えることができ、万が一詰まりが生じた場合でも地上階の付近であるため、対応しやすい。
【0026】
〔9〕いずれかの前記洗車室には、当該洗車室内の空間と当該洗車室の後方側の空間とを仕切る後方壁が設けられ、更に、当該洗車室内を冷却又は加熱する空調装置、又は、当該洗車室内の空気と当該洗車室外の空気とを換気する換気装置、若しくは、前記洗車室内の空気と当該自走式立体型洗車場の場外の空気とを換気する換気装置、の少なくともいずれかが設けられている
〔1〕から〔8〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0027】
上記〔9〕の自走式立体型洗車場は、いずれかの洗車室において当該洗車室内の空間と当該洗車室の後方側の空間とを仕切る後方壁が設けられるため、洗車中に使用する洗浄水が後方側の空間に飛び散ることを抑えることができる。但し、このような構成とした場合、当該洗車室の上下左右及び後方側が閉塞される構成となるため、洗車室内の空気の状態が洗車作業に適さない状態で維持されてしまう懸念がある。これに対し、上記自走式立体型洗車場は、洗車室内の冷却又は加熱、若しくは、洗車室内の空気を洗車室外又は場外の空気と換気することができるため、洗車室内の温度や湿度などを調整しやすい。よって、洗車室の遮蔽性を高めつつ、洗車室内での作業者の作業の快適性を高めやすい。
【0028】
〔10〕前記排水部は、前記洗車室における前記仕切壁の前端部よりも前側において、当該洗車室から前側に流れた水を集める前方溝を有する
〔1〕から〔9〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0029】
洗車室において、一部が仕切壁の前端部よりも前側に飛び出すように車両が配置された状態で洗車が行われた場合、洗車の過程で仕切壁の前端部よりも前側に水が流れるような事態が生じ得る。このような事態が生じると、走路に水が溜まってしまい、車両が走路を走る際に問題が生じやすい。例えば、洗車後に走路を走行して退場しようとする車両に水が跳ねてかかってしまったり、車両が走路でスリップしたりする懸念がある。特に、上記自走式立体型洗車場のように自走床が天井で覆われるような構成のものでは、走路の水が乾きにくく、水が滞留した場合にその滞留が継続しやすいため、このような問題が顕著になりやすい。これに対し、上記〔10〕の自走式立体型洗車場は、洗車の過程で仕切壁の前端部よりも前側に水が流れるような事態が生じても、その水が前方溝に集められやすくなる。よって、上記問題の発生を抑えることができる。
【0030】
〔11〕前記排水部は、前記洗車室の床の後端部側において前記洗車室の横方向一端側から他端側に水を流す後方溝と、当該洗車室における前記仕切壁の前端部よりも前側において、当該洗車室の横方向一方側から他方側に続く前方溝と、を有し、当該洗車室の床は、後方側となるにつれて低位置となる傾斜床である
〔1〕から〔10〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0031】
上記〔11〕の自走式立体型洗車場は、洗浄作業中に洗車室の床に流れた水を傾斜床によって洗車室の後方側に集め、後方側に設けられた後方溝に流し込んで排出する構造であるため、洗車室の前側に水が流れ出しにくくなり、「洗車室前側に水が流れ込んで走路に滞留すること」を確実に抑えることができる。更に、この自走式立体型洗車場は、傾斜床と後方溝とによって前側への排出を抑える構造に加え、前方溝の構造(仕切壁の前端部よりも前側に横方向一方側から他方側に続く溝を設ける構造)を併用する。よって、傾斜構造によって前側に水が流れることを確実に抑えつつ、仮に洗車室の前側に水が流れ出してしまっても、前方溝によって排水することができるため、洗車室の前側に水が滞留することを、より一層確実に抑えることができる。特に、上記自走式立体型洗車場のように自走床が天井で覆われるような構成のものでは、走路の水が乾きにくく、水が滞留した場合にその滞留が継続しやすいという問題がある。これに対し、上記〔11〕の自走式立体型洗車場は、傾斜床及び後方溝による排出構造(後方側に積極的に水を流して排出する構造)と前方溝による排出構造(仕切壁の前端部よりも前側に流れ出した場合に備えた排出構造)との併用によって、上記問題の発生を格段に抑えることができる。
【0032】
〔12〕複数の前記洗車室が所定方向に並んでおり、
前記自走床において前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室の前側に隣接して車両の走路が設けられ、
前記排水部は、前記走路において前記所定方向一方側から他方側に続く走路溝を有し、
前記走路溝は、前記走路において前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室寄りに設けられ、前記所定方向に並ぶ複数の前記洗車室における前記仕切壁の前端部から距離を隔てた前側において設けられている
〔1〕から〔11〕のいずれか一つに記載の自走式立体型洗車場。
【0033】
上記〔12〕の自走式立体型洗車場は、走路において所定方向一方側から他方側に続く走路溝が設けられ、この走路溝が複数の洗車室に跨るような構成で配置されるため、各洗車室から水が斜め前側に流れ出てしまっても、走路溝によって補足されやすい。そして、走路溝は、走路において洗車室寄りに設けられているため、走路の中央側に水が流れ出しにくくなり、走路中央側に水が滞留して乾かずに維持されてしまうような事態を抑えやすい。特に、走路が天井に覆われた構成のものでは、走路中央側に水が滞留してしまうと、乾くまでに時間がかかりやすく、走路を走行する車両によって水が跳ねてしまったり、車両が走路でスリップしたりする懸念が一層高まるが、上記のように走路溝が設けられていれば、この問題を確実に抑えることができる。また、走路溝は、所定方向に並ぶ複数の洗車室における仕切壁の前端部から距離を隔てた前側において設けられているため、各洗車室において、一部が仕切壁の前端部よりも前側に飛び出すように車両が配置された状態で洗車が行われた場合であっても、前側に流れた水が走路溝によって補足されやすい。よって、前側に飛び出す車両配置で洗車がなされることに起因する走路への水の流れ込みや滞留を確実に抑えることができる。
【0034】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に関する。
図1図2に例示される自走式立体型洗車場1(以下、洗車場1ともいう)は、上下に重なる複数階の床を有する立体型の構造をなす。具体的には、洗車場1は、複数階の自走床4と、各階の天井5と、少なくともいずれかの階の自走床4への入場口6と、少なくともいずれかの階の自走床4からの退場口8と、を有する。図1図2等に例示される代表例では、自走式立体型洗車場1は三階建てとなっている。自走式立体型洗車場1は、以下の説明において、単に洗車場1とも称される。
【0035】
入場口6は、車両100が洗車場1に入るために通過する入口である。入場口6には、入口用のゲート装置91が設けられている。入場口6は、洗車場1と洗車場1の外側の走路との間に設けられ、洗車場1の外側の走路から洗車場1内に入ろうとする車両が通過する入口である。図1の例では、1つの入場口6が設けられているが、入場口6は2以上であってもよい。退場口8は、車両100が洗車場1から出るために通過する出口である。退場口8には、出口用のゲート装置92が設けられている。退場口8は、洗車場1と洗車場1の外側の走路との間に設けられ、洗車場1から洗車場1の外側の走路に移動しようとする車両が通過する出口である。図1の例では、1つの退場口8が設けられているが、退場口8は2以上であってもよい。
【0036】
代表例では、車両100が入口付近に位置する場合に車両100を検知してゲート装置91が開くように構成されている。また、例えば、車両100が退場口8付近に位置する場合において、図示されていない精算システムにて精算が完了している場合に、出口用のゲート装置92が開くように構成されている。図1の例では、入場口6にゲート装置91が設けられているが、ゲート装置91が設けられていなくてもよい。図1の例では、退場口8にゲート装置92が設けられているが、ゲート装置92が設けられていなくてもよい。図1の例では、入場口6と退場口8が同じ階において隣接して設けられているが、同じ階において離れて設けられていてもよく、異なる階に設けられていてもよい。
【0037】
自走床4は、車両100が自走可能な床である。自走床4は、人が歩くことが可能な床でもある。自走床4は、洗車室10の外側の走路70と洗車室10内の室内床36とを含む。本実施形態では、図3のように、自走床4のうち、洗車室10において左右両側の壁の間に配置される床が室内床36である。自走床4のうち、洗車室10の外側に配置される床が走路70である。
【0038】
天井5は、自走床4を覆う構成で自走床4の上方に設けられる。図2の例では、洗車室10が設けられた各階の各自走床4を覆う構成で各天井5が設けられる。図4のように、天井5は、洗車室10内において自走床4の上方に設けられる室内天井部46と、洗車室10の外側において走路70の上方に設けられる走路天井部79とを備える。
【0039】
図1図2の例では、1階のエリアが符号4Aで示され、2階のエリアが符号4Bで示され、3階のエリアが符号4Cで示される。なお、図1図2の例は、地上3階を有する構造であるが、これに加えて地階が設けられていてもよい。自走式立体型洗車場1は、自走床4が水平又は水平に近い構造で配置され、各階の自走床4がスロープで連結されたフラット式の構造であってもよい。或いは、自走式立体型洗車場1は、車両100が駐車できる階を1階分未満(例えば半階分)ずつずらしたスキップ式の構造であってもよい。或いは、自走式立体型洗車場1は、昇降スロープを兼ねた緩い勾配の駐車スペースで構築された連続傾床式の構造であってもよい。図2等に示される代表例では、各階のエリア4A~4Cの自走床4が水平又は水平に近い構造で配置されたフラット式の構造となっている。
【0040】
本明細書において、自走式立体型洗車場1の上下方向とは、鉛直方向を意味し、重力の方向と平行な方向が上下方向である。そして、水平方向は、上記上下方向と直交する平面方向を意味する。洗車室10の前後方向は、上記上下方向と直交する方向のうちの一の方向であり、例えば、洗車室10に配置される仕切壁40が延びる方向が前後方向である。図3の例では、各洗車室10の前後方向がいずれも第2方向となっているが、第2方向とは異なる方向を前後方向とするような洗車室が設けられていてもよい。洗車室10の横方向(左右方向)は、当該洗車室10の前後方向と直交する方向であって且つ上下方向と直交する方向である。図3の例では、各洗車室10の横方向(左右方向)がいずれも第1方向となっているが、第1方向とは異なる方向を横方向とするような洗車室が設けられていてもよい。洗車室10は、当該洗車室10の前後方向において車両が入る側(開放側)が前方側であり、車両が入る側とは反対側が後方側である。
【0041】
図2のように、走路70は、自走床4の一部をなし、洗車室10に入庫するまで又は洗車室10から出庫した後に車両100が自走する対象の床であり、作業者等が歩くことができる床である。自走式立体型洗車場1では、車両100が洗車室10に入る場合、入場口6から入った後、走路70上を自走して洗車室10に進入するようになっている。図2図3の例では、走路70は、洗車室10が設けられる各階のエリアの走路70をなす洗車エリア走路部72と、各階の洗車エリア走路部72の間の走路をなす中間走路部74とを備える。図2図3の例では、中間走路部74は、傾斜構造のスロープ部80と、水平構造の水平部88とを備える。図3の構成では、図3に示される洗車室10が設けられる階とその下の階との間での走路70を構成する中間走路部74が内側に設けられ、図3に示される洗車室10が設けられる階とその上の階との間での走路70を構成する中間走路部74が外側に設けられる。内側の中間走路部74の端部74Xは、図3に示される洗車室10が設けられる階の下の階の走路に接続されている。外側の中間走路部74の端部74Yは、図3に示される洗車室10が設けられる階の上の階の走路に接続されている。
【0042】
図3の例では、複数の洗車室10が所定方向(第1方向)に並んでおり、自走床4において所定方向(第1方向)に並ぶ複数の洗車室10の前側に隣接して洗車エリア走路部72(車両の走路)が直線状に設けられている。図3の例では、図面左側において並ぶ5つの洗車室10の各前側に洗車エリア走路部72が第1方向に延びる構成で設けられる。なお、これら5つの洗車室10において前側は図面右側である。また、図面右側において並ぶ3つの洗車室10の各前側に洗車エリア走路部72が第1方向に延びる構成で設けられる。なお、これら3つの洗車室10において前側は図面左側である。
【0043】
自走式立体型洗車場1では、上方階の自走床4と上方階の一つ下の階の自走床4の間で車両が自走するための傾斜走路を備えたスロープ部80を有する。例えば、図3に示される構成が2階の構成である場合、2階の自走床4と一つ下の1階の自走床4の間で車両が自走するための傾斜走路を備えた構成でスロープ部80が構成される。
【0044】
スロープ部80は、いずれかの上方階の自走床4と当該上方階の一つ下の階の自走床4の間で車両100が自走するための床部分である傾斜走路82を備える。スロープ部80は、傾斜走路82以外の構造(例えば、走路とは区画された歩行用のスペース等)が設けられていてもよい。水平部88は、車両100が自走するための床部分である水平走路88Aを備える。水平部88は、水平走路88A以外の構造(例えば、走路とは区画された歩行用のスペース等)が設けられていてもよい。例えば、図3で示される洗車室10のエリアが2階のエリアである場合、内側の中間走路部74は、2階と1階との間で移動するための走路として機能し、外側の中間走路部74は、3階と1階との間で移動するための走路として機能する。図3で示される洗車室10のエリアが2階のエリアである場合、2階の洗車エリア走路部72に接続される構成で、一方のスロープ部80における傾斜走路82の第2方向一端部が接続され、その傾斜走路82が第2方向に沿って延び、傾斜走路82の第2方向他端部が水平部88における水平走路88Aの第1方向一端部に接続される。そして、水平走路88Aが第1方向に沿って延び、水平走路88Aの第1方向他端部に、他方のスロープ部80における傾斜走路82の第2方向他端部が接続され、その傾斜走路82が第2方向に沿って延び、その傾斜走路82の第2方向一端部が端部74Xとされる。
【0045】
図3の例では、図3に示される階の洗車エリア走路部72に接続される内側の中間走路部74のうち、洗車エリア走路部72に接続される一方側の傾斜走路82は、洗車エリア走路部72から離れるほど走路面(車両が接触する面)が低位置となるように洗車エリア走路部72と水平走路88Aとの間において傾斜して設けられる。水平走路88Aは、走路面が水平に配置されていてもよく、若干傾斜して配置されていてもよい。図3に示される階とは異なる階に接続される他方側の傾斜走路82は、当該異なる階の走路に近づくにつれて低位置となるように(水平走路88Aから離れるにつれて低位置となるように)傾斜して設けられる。
【0046】
図3のように、自走床4を仕切る構成で洗車室10が設けられる。洗車室10は、車両100が自走することによって進入可能とされた洗車空間構成部である。各洗車室10は、例えば、図3図5のような構成をなしている。洗車室10は、左右両側に仕切壁40が設けられ、仕切壁40が左右に対向して配置される。仕切壁40は、洗車室10の前後に延びて配置され、厚さ方向を横方向(左右方向)とする板状又はシート状の構成をなす。仕切壁40は、当該仕切壁40が設けられた洗車室10の横方向(左右方向)において洗車室10の内側の空間と当該洗車室10の外側の空間とを仕切る構成をなす。洗車室10の仕切壁40は、隣の洗車室10(隣接室)との間を仕切るように構成されていてもよく、洗車室10内の空間と走路70の空間とを仕切るように構成されていてもよく、洗車室10内の空間と洗車場1の場外の空間とを仕切るように構成されていてもよい。
【0047】
洗車室10では、室内天井部46と室内床36とが上下に対向して配置される。仕切壁40、室内天井部46、室内床36の後方側には後方壁48が設けられる。後方壁48は、洗車室10内の空間と当該洗車室10の後方側の空間とを仕切る壁である。洗車室10の後方側の空間は、他の洗車室10内の空間であってもよく、走路70の空間であってもよく、洗車場1の外側の空間であってもよい。一対の仕切壁40の間の空間であって、室内天井部46と室内床36の間の空間であり、且つ後方壁48の前側の空間が洗車室10内の空間であり、この空間は前側が開放した構成をなす。室内天井部46は、天井5の一部をなし、洗車室10内の室内床36を上方側から覆う構成をなす。
【0048】
洗車室10内には、照明部14や空調装置16なども設けられている。空調装置16は、洗車室10内を冷却又は加熱する空調装置であってもよく、その他の空調装置であってもよい。例えば、空調装置16は、エアーコンディショナーとして構成され、洗車室10内に温風を供給する機能と、冷風を供給する機能とを有する。空調装置16に代えて又は空調装置16に加えて、扇風機やサーキュレータなどが設けられていてもよい。また、空調装置16に代えて又は空調装置16に加えて洗車室10内の空気と洗車室10外の空気とを換気する換気装置、若しくは、洗車室10内の空気と自走式立体型洗車場1の場外の空気とを換気する換気装置が設けられていてもよい。例えば、図4図5の構成のものにおいて、後方壁48の後方側が洗車場1の場外の空間である場合、この後方壁48に換気装置を設け、洗車室10内の空気と自走式立体型洗車場1の場外の空気とを換気するように構成されていてもよい。或いは、図4図5の構成のものにおいて、後方壁48の後方側が走路70の空間である場合、この後方壁48に換気装置を設け、洗車室10内の空気と走路70の空間の空気とを換気するように構成されていてもよい。なお、空調装置16や換気装置は、洗車室10に車両100が進入したことを検知部18が検知した場合に動作が許可され、自動的に又は使用者の操作によって駆動するようになっていてもよく、この場合、洗車室10に車両100が進入したことを検知部18が検知しない場合に空調装置16や換気装置の動作が禁止されるようになっていてもよい。
【0049】
洗車室10内には、水を放出する放水部20や高圧供給装置22なども設けられる。放水部20は、例えば低い水圧で水を放出する低圧放水部21を備える。図4の例では、低圧放水部21とは別で、高圧の洗浄水を供給する高圧供給装置22が設けられている。低圧放水部21は、例えば、水を放出する放水口と、放水口へと水を通す流路と、当該流路の開度を変更可能な操作部と、放水口に接続されるホースなどを有する。操作部は、公知の蛇口であってもよく、人による操作に応じて流路の開度を変更し得る器具や装置であればその他の構成であってもよい。ホースは、撓み変形自在な構造であることが望ましく、ホースの先端部には水を放出するための放出器具が設けられていてもよい。放出器具は、シャワー構造や水圧を高める噴射構造などの公知の様々な構造を採用し得る。
【0050】
高圧供給装置22は、洗浄水を高い水圧で放出可能な装置であり、放水部20の放水よりも高圧で洗浄水を供給可能とされている。高圧供給装置22は、公知の様々な高圧洗浄機の構成を採用することができる。放水部20は、例えば、上記操作部によって上記流路の開度を全開にした場合の当該流路での水圧が例えば、0.15MPa以上且つ0.74MPa以下となっている。高圧供給装置22は、例えば、常用吐出圧力が1.0MPa以上であることが望ましく、3.0MPa以上であると更に望ましく、5.0MPa以上であるとより一層望ましい。なお、高圧供給装置22の常用吐出圧力は、20.0MPa以下とすることができる。高圧供給装置22の最大吐出圧力が2.0MPa以上であることが望ましく、4.0MPa以上であると更に望ましく、6.0MPa以上であるとより一層望ましい。なお、高圧供給装置22の最大吐出圧力は、30.0MPa以下とすることができる。高圧供給装置22は、モータを動力とするものが望ましいが、他の動力(例えばエンジンなど)であってもよい。高圧供給装置22の給水方式は、水道直結式であってもよく、タンク式であってもよい。なお、高圧供給装置22は、洗車室10に車両100が進入したことを検知部18が検知した場合に動作が許可され、自動的に又は使用者の操作によって駆動するようになっていてもよく、この場合、洗車室10に車両100が進入したことを検知部18が検知しない場合に高圧供給装置22の動作が禁止されるようになっていてもよい。
【0051】
本実施形態では、洗車室10として、図4に例示されるような高圧供給装置22が設けられる第1の洗車室と、高圧供給装置22が設けられない第2の洗車室とが備えられている。図4のような高圧供給装置22が設けられた第1の洗車室は、地上階に設けられる。本明細書において、地上階とは、地階ではない最も低い階である。図4のような洗車室から高圧供給装置22を省略した第2の洗車室は、地上階よりも上の階に設けられる。図1の例では、1階が地上階であり、当該地上階よりも上の階である2階及び3階は、第2の洗車室が設けられ且つ第1の洗車室が設けられない階とされている。更に、地上階には、第1の洗車室で流された泥水を流し込む貯留槽62が設けられる。貯留槽62は、図1のように洗車場1の敷地外に設けられていてもよく、洗車場1の敷地内に設けられていてもよい。貯留槽62は、例えば公知の油水分離層として機能し、後述の泥水路61から流れ込んだ泥水に含まれる泥を沈殿させて貯留し、泥を低減した水を排水する機能を有する。
【0052】
洗車室10に車両100が進入したことを検知する検知部18を有する。検知部18は、公知の近接センサや人感センサなどとして構成されていてもよく、距離センサなどとして構成されていてもよい。検知部18は、洗車室10内の所定位置(例えば中央位置)に物体が存在することができる物体検知センサを好適に用いることができ、光電センサ、超音波センサなど、様々な検知方式を用いることができる。例えば、検知部18は、洗車室10内の所定位置(例えば中央位置)に物体が存在する場合に物体検知信号を管理装置60に与え、上記所定位置に物体が存在しない場合に非検知信号を管理装置60に与える。なお、検知部18が管理装置60に与える物体検知信号は、物体が存在することを特定できる情報であればよく、非検知信号は、物体が存在しないことを特定できる情報であればよい。
【0053】
例えば、低圧放水部21において制御弁が設けられており、検知部18によって車両100が検知された場合(具体的には検知部18が物体検知信号を出力する場合)に制御弁が開状態となって低圧放水部21からの放水が許容され、検知部18によって車両100が検知されていない場合(具体的には検知部18が非検知信号を出力する場合)に制御弁が閉状態となって低圧放水部21からの放水が禁止されるようになっていてもよい。このような構成のものでは、制御弁が開状態となっているときに低圧放水部21において放水口を開く操作(例えば蛇口を開く操作など)がなされると、低圧放水部21から水が放出され、制御弁が閉状態となっているときに低圧放水部21において放水口を開く操作を行っても、低圧放水部21から水が放出されないことになる。
【0054】
本実施形態では、上下に重なる複数階の自走床4を有しており、自走床4が設けられた各階において、自走床4の一部をなすように車両の走路70が設けられる。そして、各々の階では、自走床4を仕切る構成で複数の洗車室10がそれぞれ設けられ、且つ、各々の洗車室10の前側に走路70が配置される。このような構成において、各階の走路70及び各階の複数の洗車室10の自走床4を覆うように天井5が設けられている。そして、図2図4図5のように、各階の走路70や洗車室10に照明光を照射するように照明部14が設けられている。具体的には、照明部14として、第1照明部14Aと第2照明部14Bとが設けられている。第1照明部14Aは、洗車室10の外部に設けられ、走路70を照らす照明部である。第2照明部14Bは、洗車室10の内部に設けられ、洗車室10内を照らす照明部である。例えば、図3の各洗車室10が2階の洗車室であり、図4図5が2階の洗車室である場合、2階の走路70を照らすように第1照明部14Aが設けられ、2階の各々の洗車室10を照らすように各々の第2照明部14Bが設けられる。
【0055】
図2のように、走路70を覆う天井である走路天井部79において、走路70を照らすように第1照明部14Aが設けられている。第1照明部14Aは、1以上の光源を有し、この光源によって走路70に向けて照明光を照射する装置である。第1照明部14Aは、1つの照明器具によって構成されていてもよく、複数の照明器具によって構成されていてもよい。図2の例では、各階の洗車室10外において第1照明部14Aが1箇所に配置された例が示されるが、いずれかの階又は各階において複数箇所に第1照明部14Aが配置されていてもよい。
【0056】
図4図5のように、各々の洗車室10内の室内天井部46には、各々の洗車室10内を照らすように第2照明部14Bが設けられている。第2照明部14Bは、1以上の光源を有し、この光源によって洗車室10内に向けて照明光を照射する装置である。第2照明部14Bは、1つの照明器具によって構成されていてもよく、複数の照明器具によって構成されていてもよい。
【0057】
洗車室10に設けられた第2照明部14Bは、第1条件を満たした場合であって且つ当該洗車室10に車両が入っていない場合に、第1の明るさで当該第2照明部14Bが設けられた洗車室10の内部を照射する。上記第1条件は、自走式立体型洗車場1が所定の暗さになるという条件であってもよく、所定時刻が到来するという条件であってもよく、自走式立体型洗車場1が所定の暗さになり且つ所定時刻が到来するという条件のいずれかの条件であってもよい。第2照明部14Bは、上記第1条件を満たし且つ当該第2照明部14Bが設けられた洗車室10に車両が配置される場合には、上記第1の明るさよりも明るい第2の明るさで当該第2照明部14Bが設けられた洗車室10の内部を照射する。第1の明るさと第2の明るさを分ける場合、例えば、第2照明部14Bにおいて所定個の光源から照明光を照射する状態を第1の明るさとし、第2照明部14Bにおいて上記所定個の光源に加え更に1以上の光源から追加で照明光を照射する状態を第2の明るさとしてもよい。或いは、第2照明部14Bにおいて所定個の光源から所定の光束で照明光を照射する状態を第1の明るさとし、第2照明部14Bにおいて上記所定個の光源から上記所定の光束よりも大きい光束で照明光を照射する状態を第2の明るさとしてもよい。
【0058】
自走式立体型洗車場1の所定位置に明るさセンサが設けられており、この明るさセンサは、自身に入射する光の量が所定量以上となった場合に第1の信号出力状態となり、自身に入射する光の量が所定量未満である場合に第2の信号出力状態となる構成であってもよい。この場合、明るさセンサが第2の信号出力状態である場合を、「自走式立体型洗車場1が所定の暗さになる場合」とすることができる。或いは、明るさセンサは、自身に入射する光の量を検知するセンサであってもよく、この場合、明るさセンサが検知する光の量が所定値未満である場合を、「自走式立体型洗車場1が所定の暗さになる場合」とすることができる。明るさセンサが設けられる所定位置は、走路70の上方であってもよく、洗車室10の内部であってもよく、天井5に覆われない位置(例えば、自走式立体型洗車場1の外壁の位置)であってもよい。
【0059】
「所定時刻が到来する」という条件は、具体的には、「夕方又は夜の所定時刻が到来し且つ解除条件が成立していない」という条件とすることができる。例えば、所定時刻が18時であり、解除条件が6時になることである場合、18時~6時の時間帯の間は、「所定時刻が到来する」という条件が満たされることになる。このような条件が第1条件である場合、18時~6時の時間帯の間は、第1条件を満たした場合に該当する。或いは、所定時刻が19時であり、解除条件が上記所定時刻から一定時間が経過することである場合、19時になってから上記一定時間が経過するまでの間が、「所定時刻が到来する」という条件が満たされることになる。このような条件が第1条件である場合、19時になってから上記一定時間が経過するまでの間は、第1条件が満たされることになる。
【0060】
洗車室10の内側又は洗車室10の外側には、排水部30が設けられる。排水部30は、洗車室10内の床を流れた水を集めて排水する流路である。図3図5のように、排水部30は、洗車室10の床の車両100の配置場所よりも前側において洗車室10の横方向(左右方向)一端側から他端側に水を流す前方溝32を有する。図3図5の例では、前方溝32は、洗車室10における仕切壁40の前端部40Aよりも前側において、前方溝32が隣接する洗車室10の横方向(左右方向)一方側から他方側に続くように構成され、当該洗車室10から前側に流れた水を集めるように構成される。前方溝32は、走路70の走路面よりも凹んだ溝構造をなし、内部に流れ込んだ水を横方向に流すように構成される。
【0061】
複数の洗車室10のうちのいずれかの一の洗車室10の前側に設けられた前方溝32の横方向(左右方向)他端側の部分は、当該一の洗車室10に隣接する他の洗車室10の前側に設けられた前方溝32の横方向(左右方向)一端側の部分と連通し、一の洗車室10の前側の前方溝32を流れた水が他の洗車室10の前側の前方溝32に入り込むように排水されるようになっている。例えば、図3の構成では、所定方向(第1方向)に並ぶ5つの洗車室10における仕切壁40の前端部40Aから距離を隔てた前側(図面では5つの洗車室10の右側)において、これら5つの洗車室10に跨るように前方溝32が配置される。5つの洗車室10に近接する前方溝32は走路溝として機能し、走路70(具体的には、洗車エリア走路部72)に配置されるとともに走路70において所定方向(第1方向)一方側から他方側に続く構成をなす。5つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)は、走路70において所定方向(第1方向)に並ぶ5つの洗車室10寄りに設けられる。具体的には、洗車エリア走路部72が上記所定方向(第1方向)に延びており、第1方向に延びる洗車エリア走路部72の幅方向中心位置よりも5つの洗車室10寄りに、5つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)が配置される。また、所定方向(第1方向)に並ぶ3つの洗車室10における仕切壁40の前端部40Aから距離を隔てた前側(図面では3つの洗車室10の左側)において、これら3つの洗車室10に跨るように前方溝32が配置される。3つの洗車室10に近接する前方溝32は走路溝として機能し、走路70(具体的には、洗車エリア走路部72)に配置されるとともに走路70において所定方向(第1方向)一方側から他方側に続く構成をなす。3つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)は、走路70において所定方向(第1方向)に並ぶ3つの洗車室10寄りに設けられる。具体的には、第1方向に延びる洗車エリア走路部72の幅方向中心位置よりも3つの洗車室10寄りに、3つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)が配置される。
【0062】
図3の例では、3つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)は、スロープ部80に形成された溝54(後述)に通じており、その前方溝32は、溝54に近づくにつれて低くなっている。そして、その前方溝32を流れた排水が溝54に流れこむようになっている。また、5つの洗車室10側の前方溝32(走路溝)は、第1方向の一端側に近づくにつれて低位置となっており、その前方溝32の端部は、管56(後述)に接続されている。そして、その前方溝32を流れが排水は、管56内に流れ込んで、下方階側へ流れるようになっている。
【0063】
図3図5のように、排水部30は、後方溝34を備える。後方溝34は、洗車室10の床の後端部側において洗車室10の横方向(左右方向)一端側から他端側に延び、洗車室10の横方向(左右方向)一端側から他端側に水を流すように構成される。図5の例では、洗車室10の床である室内床36は、少なくとも仕切壁40の前端部40Aの位置から後方溝34の位置までの前後幅において後方側となるにつれて低位置となる傾斜床とされている。後方溝34は、仕切壁40の前後方向中央位置よりも後方に配置され、室内床36の上面よりも凹んだ溝構造をなす。
【0064】
図2図3のように、複数階のうちの所定の上方階と上方階よりも下の階とに跨る構成で、上方階の排水部30を流れた水を上方階よりも下の階側へ導く誘導路50が設けられている。誘導路50は、スロープ部80を利用して水を流す第1流路51と、管56を利用して水を流す第2流路52とを備える。図2図3の例では、第1流路51及び第2流路52のいずれも、3階と2階とに跨り、3階から2階側に水を流すように構成され、更に、2階と1階とに跨り、2階から1階側に水を流すように構成される。
【0065】
図3のように、誘導路50のうちの第1流路51は、スロープ部80に形成された流路を含む溝54を有し、3つの洗車室10付近の排水部30を流れた水を溝54内に導いてスロープ部80において流すように構成される。具体的には、溝54は、図3に示される洗車室10の階とその下の階との間の走路70を構成する中間走路部74の端に隣接して設けられ、この中間走路部74の走路面から凹んだ溝構造をはす。溝54は、洗車エリア走路部72に接続される傾斜走路82に沿って傾斜して設けられ溝54Aと、水平走路88Aに沿って傾斜して設けられる溝54Bと、端部74X側の傾斜走路82に沿って傾斜して設けられる溝54Cを備え、3つの洗車室10の前側の前方溝32を流れた排水及び3つの洗車室10の後方溝34を流れた排水を溝54A、54B、54Cを介して下の階に流すように構成される。
【0066】
図2のように、誘導路50のうちの第2流路52は、上方階と上方階よりも下の階とに跨る管56を有し、排水部30を流れた水を管内に導いて管56内において流すように構成される。管56は、洗車場1の外壁の外側に配置されてもよく、外壁の内側に配置されてもよい。図2の例では、3階の排水部30及び2階の排水部30からの排水が管56に流れ込むようになっており、管56を流れた排水が1階の排水部30又は場外へと流れるようになっている。
【0067】
なお、1階(地上階)においても、図3のような洗車室10のレイアウトが採用されてもよく、図3のようなレイアウトから変更されたレイアウトが採用されてもよい。1階では、図3のようなレイアウトに加え、図1に示されるような入場口6,退場口8,ゲート装置91,92などを設けることができる。図3のような構成が地上階に採用される場合、各洗車室10を上述の第1の洗車室として構成することができる。図1のように、1階(地上階)には、第1の洗車室から洗車場1の外側に設けられた貯留槽62に第1の洗車室で流された泥水を誘導する泥水路61が設けられる。図3のような構成が地上階に採用される場合、排水部30を泥水路61として機能させることができ、この泥水路61の一部分が、図1のように貯留槽62に水を導くように構成されていればよい。
【0068】
(効果の例)
自走式立体型洗車場1は、上下に重なる複数階の床が構成され、いずれかの階には、車両100が自走して移動できる洗車室10が仕切壁40によって区画された構成で並んで設けられる。そして、この自走式立体型洗車場1は、洗車室10が設けられた階の上の階も床が設けられた利用階とされているため、当該利用階を洗車室10が設けられるエリア又は他の用途のエリアとして利用することができる。よって、この自走式立体型洗車場1によれば、所定範囲の土地をより有効に利用し得る形態で、車両100が自走可能なエリアに洗車室10が設けられる洗車場を実現し得る。
【0069】
自走式立体型洗車場1は、複数階の自走床4が設けられ、各階の自走床4に洗車室10が設けられるため、自走式の洗車エリアを上下に重ねることができ、限られた土地に自走式の洗車室10をより多く設けることができる。しかも、この自走式立体型洗車場1は、各階の自走床4が自走可能エリア(車両100が自走可能となるエリア)であるため、上下に洗車場エリアが重なって配置された構成であっても、利用者が車両100を運転してより自由に洗車室10に入ることができ、自走床4や洗車場から出るときも、より自由に車両100を出庫することができる。
【0070】
自走式立体型洗車場1は、複数階(図1の例では3階)のうちの所定の上方階(図1の例では、2階及び3階)に自走床4が設けられ、これら上方階が図3のような構成となっており、自走床4に洗車室10及び排水部30が設けられる。そして、これら上方階とこれら上方階よりも下の階(1階)とに跨る構成で、上方階の排水部30を流れた水を下の階側へ導く誘導路50が設けられている。従来、自走式の洗車エリアを上下に重ねて配置した構成のものは提供されていないが、複数の階に自走式の洗車室10が設けられるように上下に洗車場エリアを重ねて配置すると、上方階の洗車室10で大量の排水が生じることになるため、この排水の処理が問題になる。この点、自走式立体型洗車場1は、上方階の洗車室10で流れた排水を、誘導路50によって下の階側へ導くことができるため、高い位置で洗車される場合であっても、高い位置で生じた排水を適切に下方階側に誘導することができる。
【0071】
自走式立体型洗車場1は、高い階(上方階)で洗車が行われた場合の洗車に伴う排水を、車両100が自走するスロープ部80の構造を利用して下方階側へ誘導することができる。よって、この自走式立体型洗車場1は、大掛かりな排水構造の設置を抑えて、より簡易な構造で下方側に適切に排水することができる。
【0072】
自走式立体型洗車場1は、高い階(上方階)で洗車された場合の排水を、上方階と上方階よりも下の階とに跨る管56を利用して下側に適切に導くことができる。
【0073】
自走式立体型洗車場1は、所定範囲の土地において複数の洗車室10を密集させた構造(密度を高めた構造)で配置し、天井5で覆われた走路を明るくしつつ、天井5で覆われた各洗車室10内を個別に明るくして洗車作業を行いやすくすることができる。特に下の階の洗車エリアは、洗車室10や走路70が天井5で覆われた上で、相対的に低いエリアに位置する構成であるため、天井5によるメリットを享受し得るものの、特に洗車室10が暗くなりやすいが、上記自走式立体型洗車場1は、各々の洗車室10が走路70の照明部(第1照明部14A)とは異なる第2照明部14Bによって照らされるため、明るさが強調され、洗車作業が行いやすくなる。また、洗車室10のみを明るくする構成だけでは、日照が無い場合又は減った場合に洗車エリアの走路が暗くなりやすく、当該洗車場1を外側から見た場合に、走路70の暗さが印象を悪くし、利用者が走路70への侵入を躊躇する懸念があるが、洗車室10とは異なる第1照明部14Aが走路70に設けられていれば、このような問題を低減又は解消することができる。
【0074】
自走式立体型洗車場1は、ある程度の暗さになった場合や所定時刻が到来した場合に、洗車室10に車両100が入っていなくても、ある程度の明るさで洗車室10内を照らすことができ、場外から見た場合の洗車室10の雰囲気を良くすることができる。例えば、洗車室10外がある程度の明るさであっても、天井5で覆われ且つ仕切壁40で区切られた奥まった構造の洗車室10内は暗くなりやすく、利用者が入場を躊躇しやすいが、第1の明るさで洗車室10内が個別に照射されていれば、洗車室10内が暗すぎることに起因する入場への躊躇等を抑えやすくなる。但し、継続的に照明光を照射すると、消費電力が増大することが懸念されるが、自走式立体型洗車場1は、車両100が洗車室10内に入っていない場合には、明るさを抑えた状態で照明光を照射することができるため、消費電力を確実に抑制することができ、車両100が駐車していない状態で明るすぎるようなことを防ぐことができる。一方で、洗車室10に車両100が入った場合には、車両100が入っていない場合よりも明るく照らすることができるため、洗車作業を行いやすくすることができる。特に、この特徴を用いると、車両100が入っている洗車室10と入ってない洗車室10がある場合に、明るさの差ができるため、車両100が入っていない洗車室10が存在することを遠く(例えば自走式立体型洗車場の外側など)から見て把握することができ、車両100が入っていない洗車室10が存在することを知らせる上で非常に有利になる。
【0075】
自走式立体型洗車場1は、高圧供給装置22による高圧洗浄が可能な第1の洗車室と、高圧供給装置22による高圧洗浄が想定されない第2の洗車室とに分けることができる。そして、洗車場1を、高圧洗浄を行えるようにした地上階(地階ではない最も低い階)と、高圧洗浄が想定されない所定階とに分けて管理し、上記地上階には、高圧洗浄で想定される泥水を貯留槽62に誘導するように泥水路61を確保することができる。自走式立体型洗車場1は、貯留槽62が地上階又は自走式立体型洗車場1の外側に設けられる場合に適用されるものであるため、上記地上階よりも上方の階に大掛かりな機器(吸引機能を有する車両など)を移動させずに済み、貯留槽62から泥を排出する作業を大掛かりな機器等を用いて行いやすくなるが、仮に、第1の洗車室が上方の階に設けられると、高圧供給装置22によって?がし落とされた多量の泥を貯留槽62まで誘導することが困難になる。これに対し、自走式立体型洗車場1は、上記所定階において第1の洗車室を設けない構成とし、高圧洗浄を行うことを困難にしているため、高圧洗浄に起因する泥が上記地上階よりも上の階である上記所定階に蓄積することを防ぐことができ、高圧洗浄に起因する泥が上記上の階から上記地上階側に排水を移動する過程で詰まりを生じさせてしまうことを防ぐことができる。一方、上記地上階の上記第1の洗車室において高圧洗浄で生じた泥は、上記地上階に設けられた泥水路61(図1参照)によって貯留槽62に導くことができる。泥水路61は、地上階の第1の洗車室からできるだけ短く構成することができるため、高圧洗浄で生じた泥が詰まるリスクを抑えることができ、万が一詰まりが生じた場合でも地上階の付近であるため、対応しやすい。
【0076】
自走式立体型洗車場1は、図4図5のように、洗車室10において当該洗車室10内の空間と当該洗車室10の後方側の空間とを仕切るように後方壁48が設けられるため、洗車中に使用する洗浄水が後方側の空間に飛び散ることを抑えることができる。但し、このような構成とした場合、当該洗車室10の上下左右及び後方側が閉塞される構成となるため、洗車室10内の空気の状態が洗車作業に適さない状態で維持されてしまう懸念がある。これに対し、上記自走式立体型洗車場1は、空調装置16によって洗車室10内の冷却又は加熱を行ったり、或いは、図示されていない換気装置によって洗車室10内の空気を洗車室外又は場外の空気と換気したりすることができるため、洗車室10内の温度や湿度などを調整しやすい。よって、洗車室10の遮蔽性を高めつつ、洗車室10内での作業者の作業の快適性を高めやすい。
【0077】
洗車室10において、一部が仕切壁40の前端部40Aよりも前側に飛び出すように車両100が配置された状態で洗車が行われた場合、洗車の過程で仕切壁40の前端部40Aよりも前側に水が流れるような事態が生じ得る。このような事態が生じると、走路70に水が溜まってしまい、車両100が走路70を走る際に問題が生じやすい。例えば、洗車後に走路70を走行して退場しようとする車両100に水が跳ねてかかってしまったり、車両100が走路70でスリップしたりする懸念がある。特に、自走式立体型洗車場1のように自走床4が天井5で覆われるような構成のものでは、走路70の水が乾きにくく、水が滞留した場合にその滞留が継続しやすいため、このような問題が顕著になりやすい。これに対し、自走式立体型洗車場1は、洗車の過程で仕切壁40の前端部40Aよりも前側に水が流れるような事態が生じても、その水は、前端部40Aから所定距離隔てた前側の前方溝32に集められやすくなる。よって、上記問題の発生を抑えることができる。
【0078】
自走式立体型洗車場1は、洗浄作業中に洗車室10の床に流れた水を傾斜床として構成される室内床36によって洗車室10の後方側に集め、後方側に設けられた後方溝34に流し込んで排出する構造であるため、洗車室10の前側に水が流れ出しにくくなり、「洗車室10前側に水が流れ込んで走路70に滞留すること」を確実に抑えることができる。更に、この自走式立体型洗車場1は、室内床36(傾斜床)と後方溝34とによって前側への排出を抑える構造に加え、前方溝32の構造(仕切壁40の前端部40Aよりも前側に横方向一方側から他方側に続く溝を設ける構造)を併用する。よって、傾斜構造によって前側に水が流れることを確実に抑えつつ、仮に洗車室10の前側に水が流れ出してしまっても、前方溝32によって排水することができるため、洗車室10の前側に水が滞留することを、より一層確実に抑えることができる。特に、自走式立体型洗車場1のように自走床4が天井5で覆われるような構成のものでは、走路70の水が乾きにくく、水が滞留した場合にその滞留が継続しやすいという問題がある。これに対し、自走式立体型洗車場1は、室内床36(傾斜床)及び後方溝34による排出構造(後方側に積極的に水を流して排出する構造)と前方溝32による排出構造(仕切壁40の前端部よりも前側に流れ出した場合に備えた排出構造)との併用によって、上記問題の発生を格段に抑えることができる。
【0079】
自走式立体型洗車場1は、走路70において所定方向一方側から他方側に続く走路溝(前方溝32)が設けられ、この走路溝(前方溝32)が複数の洗車室10に跨るような構成で配置されるため、各洗車室10から水が斜め前側に流れ出てしまっても、走路溝(前方溝32)によって補足されやすい。そして、走路溝(前方溝32)は、走路70において洗車室10寄りに設けられているため、走路70の中央側に水が流れ出しにくくなり、走路中央側に水が滞留して乾かずに維持されてしまうような事態を抑えやすい。特に、走路70が天井5に覆われた構成のものでは、走路中央側に水が滞留してしまうと、乾くまでに時間がかかりやすく、走路70を走行する車両100によって水が跳ねてしまったり、車両100が走路70でスリップしたりする懸念が一層高まるが、上記のように走路溝(前方溝32)が設けられていれば、この問題を確実に抑えることができる。また、走路溝(前方溝32)は、所定方向に並ぶ複数の洗車室10における仕切壁40の前端部40Aから距離を隔てた前側において設けられているため、各洗車室10において、一部が仕切壁40の前端部40Aよりも前側に飛び出すように車両100が配置された状態で洗車が行われた場合であっても、前側に流れた水が走路溝(前方溝32)によって補足されやすい。よって、前側に飛び出す車両配置で洗車がなされることに起因する走路への水の流れ込みや滞留を確実に抑えることができる。
【0080】
洗車室10に車両100が進入したことを検知する検知部18を有し、放水部20は、検知部18によって車両100が検知された場合に動作する。この自走式立体型洗車場1は、洗車室10に車両100が進入していない場合に放水部20が利用されてしまうことを防ぐことができる。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0082】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、出口ゲート付近や別位置の装置において料金を精算し、料金の精算が済んでいる場合に出口ゲートを開放する方式であったが、この例に限定されない。例えば、車両のナンバーを検知し、検知されたナンバーの車両の料金の支払いが済んでいる場合にゲートを開放するように自走式立体型洗車場が構成されていてもよい。
【0083】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1が採用する清算方式とは異なる方式として、例えば、各洗車室にロック板が設けられ、駐車してから所定時間が経過した後に料金の支払いが済んでいない場合にはロック板が上がって車の出庫を禁止し、料金の支払いが済んだ場合にロック板が下りるようなロック板式の方式であってよい。
【0084】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1が採用する精算方式に加えて又は代えて、装置の使用時間毎の精算方式が採用されてもよい。例えば、放水部20や高圧供給装置22の使用時間、放水時間、放水量などに応じた料金が決定するようになっており、前払い式又は後払い式で料金を徴収してもよい。或いは、空調装置、換気装置、掃除機、扇風機、サーキュレータ、ブロアーなどが使用時間に応じて料金が決定するようになっており、前払い式又は後払い式で料金を徴収してもよい。
【0085】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、地上階(地階ではない最も低い地上階)の下に自走床を有する階が存在しないが、上記地上階の下に自走床を有する階(地階)が存在してもよい。地階が存在する場合、地下1階のみであってもよく、地下2階以上の地階が存在してもよい。この場合、地階は、第2の洗車室が設けられ且つ第1の洗車室が設けられない階とされていることが望ましい。この場合も、上述された実施形態と同様に、地上階(地階ではない最も低い地上階)に第1の洗車室が設けられていることが望ましく、更に、第1の洗車室から地上階又は自走式立体型洗車場の外側に設けられた貯留槽に第1の洗車室で流された泥水を誘導する泥水路が設けられているとよい。
【0086】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、洗車室10内の床が、後方側となるにつれて低位置となる傾斜床とされていたが、図6のように前方側となるにつれて低位置となる傾斜床とされていてもよい。この場合、図6のように、洗車室10の前側に設けられた前方溝32によって排水する構成とすればよい。図6の例でも、排水部30は、洗車室10における仕切壁40の前端部よりも前側において、当該洗車室10から前側に流れた水を集める前方溝32を有する。なお、図6の例でも、各洗車室10の配置は例えば図3のようなレイアウトで構成することができ、図3のようなレイアウトにおいて、後方溝34を省略した構成とすればよい。図3のようなレイアウトの各洗車室10に図6のような構成を適用したものでは、複数の洗車室10が所定方向(図3では第1方向)に並んでおり、自走床4において、所定方向に並ぶ複数の洗車室10の前側に隣接して車両の走路70が設けられる。そして、排水部30として機能する前方溝32は、走路70において所定方向(図3では第1方向)一方側から他方側に続く走路溝として機能し、前方溝32(走路溝)は、走路70において所定方向に並ぶ複数の洗車室10寄りに設けられる。そして、前方溝32(走路溝)は、所定方向(第1方向)に並ぶ複数の洗車室10における仕切壁40の前端部から距離を隔てた前側において設けられている。
【0087】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、ショッピングモールなどの店舗や企業などが管理する立体駐車場、或いはその他の立体駐車場として兼用されてもよい。このように自走式立体型洗車場1が立体駐車場として兼用される場合、洗車室となっていない駐車スペースが存在しない構成であってもよく、洗車室となっていない駐車スペースが存在する構成であってもよい。
【0088】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、3階建ての自走式立体型洗車場であるが、2階建てであってもよく、4階以上の建物であってもよい。
【0089】
上述された実施形態の代表例の自走式立体型洗車場1は、全ての階において自走床4が設けられるが、いずれかの階に自走床4が設けられていなくてもよい。例えば、いずれかの階が、商業施設や企業のオフィスなどの洗車室10が設けられない施設となっていてもよく、これ以外の用途であっても、人が歩くことが可能な床を有する階であればよい。或いは、いずれかの階が、洗車室10が設けられたエリアと商業施設や企業のオフィスなどのエリアとが混在する階であってもよい。
【0090】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 :自走式立体型洗車場
4 :自走床
4A :エリア
4B :エリア
4C :エリア
5 :天井
6 :入場口
8 :退場口
10 :洗車室
14 :照明部
14A :第1照明部
14B :第2照明部
16 :空調装置
18 :検知部
20 :放水部
21 :低圧放水部
22 :高圧供給装置
30 :排水部
32 :前方溝
34 :後方溝
36 :室内床
40 :仕切壁
40A :前端部
46 :室内天井部
48 :後方壁
50 :誘導路
51 :第1流路
52 :第2流路
54 :溝
54A :溝
54B :溝
54C :溝
56 :管
60 :管理装置
61 :泥水路
62 :貯留槽
70 :走路
72 :洗車エリア走路部
74 :中間走路部
74X :端部
74Y :端部
79 :走路天井部
80 :スロープ部
82 :傾斜走路
88 :水平部
88A :水平走路
91 :ゲート装置
92 :ゲート装置
100 :車両
【要約】
【課題】所定範囲の土地をより有効に利用する形態で、車両が自走可能なエリアに洗車室が設けられる洗車場を実現する。
【解決手段】自走式立体型洗車場1は、上下に重なる複数階の床を有し、少なくともいずれかの階の床は、車両100が自走可能な自走床である。更に、自走式立体型洗車場1は、自走床4へ車両100が入場する入口である入場口6と、自走床4から車両100が退場する出口である退場口と、を備え自走床4を仕切る構成で複数の洗車室10がそれぞれ設けられる。洗車室10は、車両100が自走することによって進入可能とされる。洗車室10が設けられた階の自走床4を覆う構成で天井が設けられる。洗車室10には、水を放出する放水部20と、当該洗車室10内の床を流れる水を集めて排水する排水部30と、隣接室との間を仕切る仕切壁40と、が設けられる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6