(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】成膜装置及びこれに用いられる材料供給装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C23C14/24 D
(21)【出願番号】P 2023553073
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2023018609
【審査請求日】2023-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390007216
【氏名又は名称】株式会社シンクロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】門脇 亘成
(72)【発明者】
【氏名】庄司 善紀
(72)【発明者】
【氏名】青山 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】宮内 充祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061481(WO,A1)
【文献】特開2011-105966(JP,A)
【文献】特開平04-333906(JP,A)
【文献】特開2015-124429(JP,A)
【文献】特開2022-078588(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033713(WO,A1)
【文献】特開2013-127086(JP,A)
【文献】特開2003-321768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成膜材料と被成膜物が設けられ、所定の成膜雰囲気に設定可能な成膜チャンバと、
前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記成膜材料を収容するハースライナと、
前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記ハースライナに収容された前記成膜材料を加熱する加熱源と、
前記ハースライナに前記成膜材料を供給する材料供給器と、
前記ハースライナに収容された前記成膜材料の溶融面の高さを測定する高さ測定器と、
前記高さ測定器により測定された溶融面の高さに基づいて供給すべき前記成膜材料の質量を演算し、当該演算された質量の前記成膜材料を前記ハースライナに供給するよう前記材料供給器を制御する制御器と、を備え、
前記材料供給器は、前記成膜材料を収容するホッパと、前記ホッパに収容された前記成膜材料を前記ハースライナに搬送する搬送機構と、搬送途中の前記成膜材料の質量を測定するロードセルとを含み、
前記制御器は、前記ロードセルにより測定された質量が前記演算された質量に達したか否かを判断し、前記ロードセルにより測定された質量が前記演算された質量に達したときに前記成膜材料を前記ハースライナに供給する成膜装置。
【請求項2】
少なくとも成膜材料と被成膜物が設けられ、所定の成膜雰囲気に設定可能な成膜チャンバと、
前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記成膜材料を収容するハースライナと、
前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記ハースライナに収容された前記成膜材料を加熱する加熱源と、
前記ハースライナに前記成膜材料を供給する材料供給器と、
前記ハースライナに収容された前記成膜材料の溶融面の高さを測定する高さ測定器と、
前記高さ測定器により測定された溶融面の高さに基づいて供給すべき前記成膜材料の質量を演算し、当該演算された質量の前記成膜材料を前記ハースライナに供給するよう前記材料供給器を制御する制御器と、を備え、
前記材料供給器は、顆粒状の前記成膜材料に振動を印加して搬送するボウルフィーダと、前記ボウルフィーダから
前記ハースライナへ搬送される
途中の前記成膜材料の質量を逐次測定するロードセルと、を含み、
前記制御器は、前記ロードセルにより測定された質量が前記演算された質量に達するまで、前記ボウルフィーダを制御して顆粒状の前記成膜材料に振動を印加する成膜装置。
【請求項3】
前記材料供給器及び/又は前記高さ測定器は、前記成膜チャンバの内部に設けられている請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜チャンバの内部において回転可能に設けられ、複数の前記ハースライナを同心円上に支持するハースホルダを備え、
複数の前記ハースライナのうち蒸発位置にある前記ハースライナに対し、前記加熱源により前記成膜材料を加熱し、
複数の前記ハースライナのうち前記蒸発位置とは異なる測定位置にある前記ハースライナに対し、前記高さ測定器により前記成膜材料の溶融面の高さを測定し、
複数の前記ハースライナのうち前記蒸発位置及び前記測定位置とは異なる給材位置にある前記ハースライナに対し、前記材料供給器により前記成膜材料を供給する請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記材料供給器は、前記成膜材料を前記ハースライナに案内するノズルを含み、
前記ノズルは、鉛直方向に延在する円筒状のノズル本体と、当該ノズル本体の内部に設けられ、前記ノズル本体の上方から自然落下してきた顆粒状の前記成膜材料を分散させる分散部材と、を含む請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項6】
成膜装置に用いられる材料供給装置において、
成膜材料を収容するホッパと、
前記ホッパに収容された前記成膜材料を前記成膜装置のハースライナに搬送する搬送機構と、
搬送途中の前記成膜材料の質量を測定するロードセルと、
制御器と、を含み、
前記制御器は、前記ロードセルにより測定された質量が所定の質量に達したか否かを判断し、前記ロードセルにより測定された質量が前記所定の質量に達したときに前記成膜材料を前記ハースライナに供給する材料供給装置。
【請求項7】
顆粒状の前記成膜材料に振動を印加して搬送するボウルフィーダを含み、
前記ロードセルは、前記ボウルフィーダから搬送される前記成膜材料の質量を逐次測定し、
前記制御器は、前記ロードセルにより測定された質量が前記所定の質量に達するまで、前記ボウルフィーダを制御して顆粒状の前記成膜材料に振動を印加する請求項6に記載の材料供給装置。
【請求項8】
前記成膜材料を前記ハースライナに案内するノズルを含み、
前記ノズルは、
鉛直方向に延在する円筒状のノズル本体と、
当該ノズル本体の内部に設けられ、前記ノズル本体の上方から自然落下してきた顆粒状の前記成膜材料を分散させる分散部材と、を含む請求項6又は7に記載の材料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及びこれに用いられる材料供給装置に関し、特に真空蒸着方法を適用して好ましい成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の成膜装置として、所定の成膜雰囲気に設定可能な成膜チャンバと、成膜材料を収容するハースライナと、このハースライナに収容された成膜材料を加熱する加熱源と、ハースライナに供給するための成膜材料が充填される材料充填部を有し、仕切バルブを有する連通路を介して成膜チャンバに接続され、所定の圧力雰囲気に設定可能な材料供給チャンバと、ハースライナに供給する成膜材料の重量を計測する重量計測器と、を備えた成膜装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術によれば、重量計測器によって、ハースライナに供給した成膜材料の重量を計測することができる。しかしながら、ハースライナに供給した成膜材料の重量がわかったとしても、その供給量が適切な量でない可能性もある。たとえば、供給時におけるハースライナの収容容積に対し、供給量が少な過ぎると成膜途中で材料が不足し、加熱源である電子ビームがハースライナを過熱し、これがパーティクル発生の要因となるおそれがある。また、供給量が多過ぎると材料がハースライナから溢れるおそれがあり、材料がハースライナから溢れてしまうと廃棄されるため、材料費が高くなるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ハースライナの収容容積に対し適切な量の材料を供給できる成膜装置及びこれに用いられる材料供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハースライナに収容された成膜材料の溶融面の高さを測定し、当該測定された溶融面の高さに基づいて供給すべき成膜材料の質量を演算し、当該演算された質量の成膜材料をハースライナに供給するよう材料供給器を制御することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハースライナに収容された成膜材料の溶融面の高さを測定することで、ハースライナの容積に対する成膜材料の不足容積を求め、当該不足容積と成膜材料の比重とから成膜材料の不足質量が求められる。この求められた不足質量の成膜材料がハースライナに供給されるように材料供給器を制御することで、ハースライナの収容体積に対し適切な量の材料を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る成膜装置を示す主要部の縦断面図を含むブロック図である。
【
図3A】
図1の材料供給器の第1例を示す概略図である。
【
図3B】
図1の材料供給器の第2例を示す概略図である。
【
図3C】
図1の材料供給器の第3例を示す概略図である。
【
図4A】
図1のノズルに設けた分散部材を示す正面図である。
【
図6】
図1の制御器にて実行される主要な処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のステップS4のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る成膜装置1を示す主要部の縦断面図を含むブロック図、
図2は、同じく平面図である。本発明の成膜装置は、典型的には真空蒸着装置として具現化することができるので、以下においては、真空蒸着法を用いた成膜装置1を本発明の一実施の形態として説明する。ただし、本発明の成膜装置は、真空蒸着法を用いた真空蒸着装置にのみ限定される趣旨ではなく、真空蒸着装置以外の成膜装置を含めた広い意味での成膜装置である。
【0010】
《成膜装置1全体の構成》
本実施形態の成膜装置1は、少なくとも成膜材料Mと被成膜物Sが設けられ、所定の成膜雰囲気に設定可能な成膜チャンバ2を備える。成膜チャンバ2には、仕切バルブ21aを介して排気装置21が設けられ、仕切バルブ21aを開いて成膜チャンバ2の内部の気体を排気することで、成膜チャンバ2の内部を、たとえば蒸着処理に適した真空雰囲気に設定することができる。成膜チャンバ2の内部の圧力が低くなると、成膜材料Mの平均自由行程が大きくなり、また成膜材料の蒸発温度も下がるので、蒸着処理が促進される。なお、排気装置21及び仕切バルブ21aは、制御器6からの指令信号により制御される。
【0011】
成膜チャンバ2の天井には、半導体ウェーハ、ガラス基板、プラスチック基板などの被成膜物Sを支持する被成膜物ホルダ28が垂下して設けられている。特に限定する趣旨ではないが、本実施形態の被成膜物ホルダ28は、成膜材料Mが蒸発するハースライナ23と、それぞれの被成膜物Sとの距離がなるべく均等になるように、凹状の球面を有する板状部材で構成されている。また、同じく特に限定する趣旨ではないが、本実施形態の被成膜物ホルダ28は、モータなどで構成されたホルダ駆動部29により回転可能とされ、これによっても、それぞれの被成膜物Sに形成される膜の厚さがほぼ均等になる。なお、ホルダ駆動部29は、制御器6からの指令信号により制御される。
【0012】
なお、成膜チャンバ2には、仕切バルブ71を介してロードロックチャンバ(真空予備チャンバ)7が接続されている。このロードロックチャンバ7の内部も、ロードロックチャンバ7に設けられた排気装置(不図示)により、成膜チャンバ2と同じ真空雰囲気に設定することができる。また、ロードロックチャンバ7には、扉(不図示)が設けられ、大気圧雰囲気である成膜装置1の外部とのアクセスは、当該扉を介して行うことができる。
【0013】
被成膜物ホルダ28は、ホルダ駆動部29の回転軸29aなどに対して着脱可能とされている。そして、成膜処理を行う場合には、成膜前の複数の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、図示しないロボットなどを用いて把持し、ロードロックチャンバ7から成膜チャンバ2に搬入し、ホルダ駆動部29の回転軸29aに装着する。また、成膜処理を終了したら、ロードロックチャンバ7を成膜チャンバ2と同じ真空雰囲気に設定したのち、仕切バルブ71を開き、成膜後の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、図示しないロボットなどを用いて把持し、成膜チャンバ2からロードロックチャンバ7へ搬出する。このように、ロードロックチャンバ7を設けることにより、成膜チャンバ2の真空雰囲気を維持したまま、被成膜物Sを成膜チャンバ2に搬入したり、成膜チャンバ2から搬出したりすることができる。なお、本発明の成膜装置は、成膜処理を終了するたびに成膜チャンバ2を大気圧に戻し、複数の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を交換する、いわゆるバッチ式成膜装置にも適用することができる。
【0014】
成膜チャンバ2の内部の床面には、ハースホルダ22が、軸27を中心に回転自在に支持されている。このハースホルダ22は、モータなどで構成されたハースホルダ駆動部26と、図示しないロータリエンコーダにより、軸27を中心に所定の回転角度でステッピング回転が可能とされている。
【0015】
ハースホルダ22は、特に限定する趣旨ではないが、
図1及び
図2に示すように、8つのハースライナ23を同心円上に支持する。同じく特に限定する趣旨ではないが、8つのハースライナ23は、軸27に対し、円周方向に等配角度で設けられている。
【0016】
ハースライナ23は、成膜材料Mを投入して加熱溶融する、いわゆる溶解炉の坩堝であり、ハースブロックとか、単にハースとも称される。本実施形態のハースライナ23は、特に限定する趣旨ではないが、たとえば銅、モリブデン、タングステンにより構成することができる。加熱源24である電子銃からの電子ビームを、ハースライナ23に収容した成膜材料Mの表面に照射して電子を入れると、ハースライナ23に電流が流れ、ハースライナ23が赤熱し、収容した成膜材料Mが蒸発可能な温度になる。なお、ハースホルダ22は、特に限定する趣旨ではないが、銅製とされている。
【0017】
加熱源24は、成膜チャンバ2の内部に設けられ、ハースライナ23に収容された成膜材料Mを加熱して蒸発させる。加熱源24としては、電子銃を用いた電子ビーム加熱のほか、抵抗加熱、高周波誘導加熱、レーザービーム加熱を用いることができる。
図1に示す実施形態の成膜装置1の加熱源24は、電子銃を用いた電子ビーム加熱であり、最も近接した位置にある1つのハースライナ23(
図2にハッチングで示す。以下、蒸発位置P1ともいう。)に対して、電子ビームが照射される。
【0018】
なお、本実施形態の成膜材料Mは、顆粒の形態でハースライナ23に投入され、これが加熱源24によりハースライナ23内で溶解する。8つのハースライナ23に投入する成膜材料Mの種類を全て同じ種類の成膜材料Mとしてもよく、全て異なる種類の成膜材料Mを投入してもよい。あるいは、8種類未満の成膜材料Mを8つのハースライナ23に振り分けてもよい。
【0019】
本実施形態の成膜装置1は、成膜チャンバ2の内部に、ハースライナ23に成膜材料Mを供給する材料供給器3と、ハースライナ23に収容された成膜材料Mの溶融面の高さh(
図5参照)を測定する高さ測定器4と、を備える。また、高さ測定器4により測定された溶融面の高さhに基づいて供給すべき成膜材料Mの質量を演算し、当該演算された質量の成膜材料Mをハースライナ23に供給するように材料供給器3を制御する制御器6を備える。なお、本実施形態では、成膜装置1を制御する制御器6と材料供給器3を制御する制御器6とを一つの制御器で構成したが、別の制御器で構成し、互いに信号を送受信するようにしてもよい。
【0020】
《材料供給器3の構成》
図3Aは、本実施形態の材料供給器3の第1例を示す図、
図3Bは、本実施形態の材料供給器3の第2例を示す図、
図3Cは、本実施形態の材料供給器3の第3例を示す図である。また、
図4Aは、ノズルに設けた分散部材を示す正面図、
図4Bは
図4AのIVB矢視図、
図4Cは
図4AのIVC矢視図である。
【0021】
本実施形態の材料供給器3は、
図2に示す平面図において、蒸発位置P1とは異なる位置P3(以下、給材位置P3ともいう。)にある1つのハースライナ23に成膜材料Mを供給するように設置されている。また、
図2に矢印で示すように、ハースホルダ22が反時計回りに回転する場合に、本実施形態の高さ測定器4は、蒸発位置P1とは異なる位置であって給材位置P3より回転方向の上流側の位置P2(以下、測定位置P2ともいう。)にある1つのハースライナ23に対し、その成膜材料Mの溶融面の高さhを測定するように設置されている。
【0022】
なお、高さ測定器4による溶融面の測定位置P2と材料供給器3による給材位置P3との位置関係について、ハースホルダ22の回転方向に対して測定位置P2が給材位置P3の上流側の近くにある方が、溶融面の高さhを測定してから成膜材料Mを給材するまでのハースホルダ22の回転距離が少なくなるという利点がある。ただし、これに限定する趣旨ではなく、蒸発位置P1以外の位置であれば測定位置P2と給材位置P3を任意に設定することができる。
【0023】
本実施形態の第1例に係る材料供給器3は、
図3Aに示すように、ホッパ31と、ボウルフィーダ32と、計測供給機構33と、ノズル34とを備える。ホッパ31は、顆粒状とされた成膜材料Mが収容されるタンクであり、下部の開口部にシャッター(不図示)が設けられ、このシャッターを開くことで顆粒状の成膜材料Mがボウルフィーダ32に自重落下する。成膜処理を開始する前の準備工程では成膜チャンバ2が大気雰囲気とされているので、この準備工程において、十分な量の顆粒状の成膜材料Mをホッパ31に投入しておく。
【0024】
ボウルフィーダ32は、ホッパ31からボウル321の内部へ投入された顆粒状の成膜材料Mを振動させることで、当該顆粒状の成膜材料Mを、ボウル321の内部に形成された螺旋状の案内路(不図示)を移動させながらシュート322へ向かって搬送する装置である。本実施形態のボウルフィーダ32は圧電素子などの振動体を含み、振動体をONしている間は顆粒状の成膜材料Mがシュートへ向かって搬送され、振動体をOFFすると顆粒状の成膜材料Mの搬送が停止する。この振動体のON/OFFは、制御器6により行われる。
【0025】
本実施形態の計測供給機構33は、基台331に設けられたロードセル332と、シュート322から供給される顆粒状の成膜材料Mを一時的に保持する受け皿333と、この受け皿333から顆粒状の成膜材料Mが零れるのを防止するために成膜装置1側に固定された仕切板334と、を備える。本実施形態の計測供給機構33は、ボウルフィーダ32から供給される顆粒状の成膜材料Mを受け皿333で受けながらロードセル332で質量を計測し、所定の質量になったときにボウルフィーダ32からの供給を停止する信号を出力する機能を有する。
【0026】
ロードセル332は、受け皿333と、当該受け皿333に供給された顆粒状の成膜材料Mの質量を検知し、これを電気信号として制御器6へ出力する、質量センサとして機能する。ロードセル332と受け皿333は、図示しないダンプ機構により二点鎖線の矢印で示す方向に回動し、受け皿333に供給された顆粒状の成膜材料Mをノズル34の開口壁341の内部へ落下させる。
【0027】
なお、受け皿333は、底面と、連続する3つの側面とを有する「ちり取り」形状とされ、1つの側面が開口しているので、
図3Aに示す原位置で顆粒状の成膜材料Mが投入されると、開口した側面から成膜材料Mが零れるおそれがある。そのため、受け皿333が原位置にある場合に、開口した側面を覆って成膜材料Mが零れるのを防止する仕切板334が、成膜装置1側に固定されている。そして、ロードセル332と受け皿333が二点鎖線の矢印で示す方向に回動すると、位置が固定された仕切板334と、受け皿333との隙間から、成膜材料Mがノズル34に向かって落下する。
【0028】
ノズル34は、給材位置P3の直上に位置するように成膜装置1側に固定されている。本実施形態のノズル34は、筒状本体の上端に、筒状本体の内部より大きい開口面積を有する開口壁341が形成され、これにより受け皿333から落下する顆粒状の成膜材料Mがノズル34の上端の周囲に零れるのを防止する。
【0029】
また、本実施形態のノズル34には、分散部材342が設けられている。
図4Aは、ノズルに設けた分散部材を示す正面図、
図4Bは
図4AのIVB矢視図、
図4Cは
図4AのIVC矢視図である。本実施形態の分散部材342は、一対の側板342A,342Aと、これらに連続する背板342Bと、一対の側板342A,342Aに形成され、ノズル34に固定するための切欠き342Cと、一対の側板342A,342Aの下端に設けられ、上方に向かう円錐面を有する分散体342Dとを備える。
【0030】
本実施形態の分散部材342は、
図4BのIVB矢視図(平面図)に示すように、分散体342Dがノズル34の略中心に位置するようにノズル34に装着されている。受け皿333から落下してきた顆粒状の成膜材料Mは、ノズル34の筒状本体を通過して下端の開口部からハースライナ23へ落下するが、この際に、顆粒状の成膜材料Mができる限りハースライナ23の開口部に満遍なく分散させる必要がある。本実施形態の分散部材342をノズル34に設けることで、
図3Aの正面図に示すように、上方から落下してきた顆粒状の成膜材料Mは、分散体342Dの円錐面に当たることでその廻りの360度方向に分散するので、ハースライナ23の開口部に満遍なく供給することができる。
【0031】
図3Bは、本実施形態の材料供給器3の第2例を示す図であり、
図3Aに示す第1例に係る材料供給器3のボウルフィーダ32に代えて、受け皿335とダンプ機構336を設けた形態である。すなわち、本実施形態の第2例に係る材料供給器3は、
図3Bに示すように、ホッパ31と、受け皿335と、当該受け皿335を回動させるダンプ機構336と、計測供給機構33と、ノズル34とを備える。本例のホッパ31は、上述した第1例と同様、顆粒状とされた成膜材料Mが収容されるタンクであり、下部の開口部にシャッター(不図示)が設けられ、このシャッターを開くことで顆粒状の成膜材料Mがボウルフィーダ32に自重落下する。成膜処理を開始する前の準備工程では成膜チャンバ2が大気雰囲気とされているので、この準備工程において、十分な量の顆粒状の成膜材料Mをホッパ31に投入しておく。
【0032】
本例の受け皿335は、ホッパ31に投入された顆粒状の成膜材料Mを受容し、所定のタイミングで、ダンプ機構336により二点鎖線の矢印で示す方向に回動し、受け皿335に供給された顆粒状の成膜材料Mを下段の受け皿333へ落下させる。
【0033】
本例の計測供給機構33は、基台331に設けられたロードセル332と、シュート322から供給される顆粒状の成膜材料Mを一時的に保持する受け皿333と、この受け皿333から顆粒状の成膜材料Mが零れるのを防止するために成膜装置1側に固定された仕切板334と、を備える。本例の計測供給機構33は、ボウルフィーダ32から供給される顆粒状の成膜材料Mを受け皿333で受けながらロードセル332で質量を計測し、所定の質量になったときにボウルフィーダ32からの供給を停止する信号を出力する機能を有する。本例の計測供給機構33は、上述した第1例と同様であるため、同一の構成に同一の符号を付し、その説明をここに援用する。
【0034】
本例のノズル34は、給材位置P3の直上に位置するように成膜装置1側に固定されている。本例のノズル34は、筒状本体の上端に、筒状本体の内部より大きい開口面積を有する開口壁341が形成され、これにより受け皿333から落下する顆粒状の成膜材料Mがノズル34の上端の周囲に零れるのを防止する。また、本例のノズル34にも、上述した分散部材342が設けられている。本例のノズル34は、上述した第1例と同様であるため、同一の構成に同一の符号を付し、その説明をここに援用する。
【0035】
図3Cは、本実施形態の材料供給器3の第3例を示す図であり、
図3Aに示す第1例に係る材料供給器3のシュート322に代えてボウルフィーダノズル323を設け、受け皿333及びそのダンプ機構に代えて、リニアフィーダ337とリニアフィーダノズル338を設けた形態である。すなわち、本実施形態の第3例に係る材料供給器3は、
図3Cに示すように、ホッパ31と、ボウルフィーダ32と、計測供給機構33と、ノズル34とを備える。本例のホッパ31は、上述した第1例と同様、顆粒状とされた成膜材料Mが収容されるタンクであり、下部の開口部にシャッター(不図示)が設けられ、このシャッターを開くことで顆粒状の成膜材料Mがボウルフィーダ32に自重落下する。成膜処理を開始する前の準備工程では成膜チャンバ2が大気雰囲気とされているので、この準備工程において、十分な量の顆粒状の成膜材料Mをホッパ31に投入しておく。
【0036】
ボウルフィーダ32は、ホッパ31からボウル321の内部へ投入された顆粒状の成膜材料Mを振動させることで、当該顆粒状の成膜材料Mを、ボウル321の内部に形成された螺旋状の案内路(不図示)を移動させながらボウルフィーダノズル323へ向かって搬送する装置である。本実施形態のボウルフィーダ32は圧電素子などの振動体を含み、振動体をONしている間は顆粒状の成膜材料Mがボウルフィーダノズル323へ向かって搬送され、振動体をOFFすると顆粒状の成膜材料Mの搬送が停止する。この振動体のON/OFFは、制御器6により行われる。
【0037】
本例の計測供給機構33は、リニアフィーダ337に設けられたロードセル332と、ボウルフィーダノズル323から供給される顆粒状の成膜材料Mを一時的に保持するリニアフィーダノズル338と、を備える。本例の計測供給機構33は、ボウルフィーダ32から供給される顆粒状の成膜材料Mをリニアフィーダノズル338で受けながらロードセル332で質量を計測し、所定の質量になったときにボウルフィーダ32からの供給を停止する信号を出力する機能を有する。
【0038】
ロードセル332は、リニアフィーダノズル338と、当該リニアフィーダノズル338に供給された顆粒状の成膜材料Mの質量を検知し、これを電気信号として制御器6へ出力する、質量センサとして機能する。リニアフィーダ337を作動させてリニアフィーダノズル338を振動させることにより、リニアフィーダノズル338に供給された顆粒状の成膜材料Mをノズル34の開口壁341の内部へ落下させる。
【0039】
《高さ測定器4の構成》
図5は、本実施形態の高さ測定器4を示す縦断面図である。本実施形態の高さ測定器4は、
図5に示すように、カメラを内蔵したレーザ変位センサ41と、配線管43とともにレーザ変位センサ41を気密に取り囲むケーシング42と、を備える。ケーシング42の底面には、レーザ光が透過するとともにカメラの視界を確保する開口部421が形成され、ここに気密状態を保持するガラス板422が設けられている。そして、レーザ変位センサ41の配線44は、配線管43を介して成膜チャンバ2の外部へ導出されるので、成膜チャンバ2の内部を真空状態にしても、レーザ変位センサ41及びその配線44は、大気圧雰囲気で使用することができる。
【0040】
カメラを内蔵したレーザ変位センサ41は、測定位置P2にあるハースライナ23の開口部に向かってレーザ光を照射し、その反射光を受光することでハースライナ23の溶融面の高さhを測定する。ここでいう溶融面の高さhとは、ハースライナ23の底面から溶融面までの距離をいうものとする。すなわち、測定位置P2におけるハースライナ23の底面の位置とレーザ変位センサ41の高さ位置とは既知であるため、レーザ変位センサ41の測定値から溶融面の高さhを算出することができる。
【0041】
なお、本発明の高さ測定器には、
図5に示すレーザ変位センサ41を用いたもの以外にも、他の光学的手段を用いて溶融面の高さhを測定するもの、カメラなどを用いて取得した画像データから溶融面の高さhを測定するもの、接触子が溶融面に接触することで溶融面の高さhを測定する接触式変位センサなどが含まれる。
【0042】
《制御器6の構成及び動作フロー》
制御器6は、高さ測定器4により測定された溶融面の高さhに基づいて供給すべき成膜材料の質量を演算し、当該演算された質量の成膜材料Mをハースライナ23に供給するよう材料供給器3を制御する。すなわち、レーザ変位センサ41により測定位置P2にあるハースライナ23の溶融面の高さhが算出されるので、そのハースライナ23に残った成膜材料Mの容積が算出できる。たとえば、ハースライナ23が一様な円筒形状の容器である場合は、溶融面の高さhと容積は比例するので、この関係を用いて溶融面の高さhから残った成膜材料Mの容積を算出することができる。また、たとえば、ハースライナ23が一様な形状の容器ではない場合には、予め溶融面の高さhに対する容積の関係を求めておき、この関係を用いて溶融面の高さhから残った成膜材料Mの容積を算出すればよい。そして、残りの成膜材料Mが少なくなった場合には、不足する材料の容積と材料の比重とから不足する材料の質量を求め、材料供給器3を制御することで、不足する重量の顆粒状の成膜材料Mをそのハースライナ23に供給する。
【0043】
次に、本実施形態の成膜装置1を用いた成膜処理の概要を説明する。
図6は、本実施形態の成膜装置1の制御器6にて実行される主要な処理を示すフローチャートである。まず、成膜処理を開始する場合には、ステップS1において、成膜チャンバ2の仕切バルブ21aを開いて排気装置21により排気することで、成膜チャンバ2の内部を所定の真空雰囲気とする。
【0044】
次いで、ステップS2において、成膜前の複数の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、図示しないロボットなどを用いて把持し、ロードロックチャンバ7に搬入したのち、当該ロードロックチャンバ7の内部を成膜チャンバ2と同じ真空雰囲気にする。そして、仕切バルブ71を開き、成膜前の複数の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、ロボットなどを用いてロードロックチャンバ7から成膜チャンバ2に搬入し、ホルダ駆動部29の回転軸29aに装着したのち、ロードロックチャンバ7の仕切バルブ71を閉じる。なお、成膜開始時のステップS1とS2の順序を逆にしてもよい。
【0045】
次いで、ステップS3において、ハースホルダ駆動部26を駆動し、蒸着すべき成膜材料Mが収容されたハースライナ23を蒸着位置P1に移動する。そして、ホルダ駆動部29を駆動して被成膜物ホルダ28を所定の定速で回転させながら、加熱源24を駆動し、蒸発位置P1にあるハースライナ23を加熱し、成膜材料Mを蒸発させる。これにより、蒸発した成膜材料Mが、被成膜物Sに蒸着して膜を形成することになる。
【0046】
続くステップS4にて、成膜材料Mの供給(補給)が必要か否かを判定する。成膜チャンバ2の真空状態を維持したまま成膜処理を連続して行ったり、成膜材料Mの種類を交換したりする場合には、成膜材料の供給が必要となるため、
図7を参照して説明する材料供給を行ったのち、ステップS5へ進む。
【0047】
図7は、
図6のステップS4の材料供給のサブルーチンを示すフローチャートである。まず、ステップS401において、ハースホルダ駆動部26を駆動して給材すべきハースライナ23を測定位置P2に移動する。続くステップS402において、レーザ変位センサ41からそのハースライナ23の溶融面にレーザ光を照射し、反射光を受光することで、溶融面の高さhに相当する測定値を高さ測定器4から入力する。
【0048】
本実施形態の成膜装置1においては、各ハースライナ23における適切な溶融面の高さhが予め設定されており、たとえば下限値を有する基準値が設定されている。ステップS403において、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値が、予め設定された基準値内にあるか否か(下限値以上か否か)を判定し、溶融面の高さhの測定値が基準値内にある場合はステップS404へ進み、正常処理とするとともに材料供給の必要はないので、材料供給の処理を終了する。
【0049】
これに対し、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値が基準値内にない場合は、そのハースライナ23には成膜材料Mが残っていないか又は僅かな量しか残っていないことになるので、ステップS405へ進み、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値から、供給すべき成膜材料Mの給材量を算出する。たとえば、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値から、供給すべき成膜材料Mの容積を求め、供給すべき成膜材料Mの容積と成膜材料Mの比重から、供給すべき成膜材料Mの質量を算出することができる。
【0050】
続くステップS406において、ハースホルダ駆動部26を駆動して給材すべきハースライナ23を給材位置P3に移動し、ステップS407において材料供給器3を作動させる。次のステップS408では、材料供給器3により顆粒状の成膜材料Mを供給しながらその重量をロードセル332により計測し、ステップS405にて算出した重量(給材量)に達したら、ステップS409へ進み、計量して所定の給材量であることが確認された成膜材料Mをハースライナ23へ供給する。これとともに材料供給器3を停止させる。このステップS408において、何らかの原因によりロードセル332の計測値がステップS405にて算出した給材量に達しなかった場合には、ステップS413へ進み、異常処理を実行したのち材料供給の処理を終了する。
【0051】
ステップS410では、ハースホルダ駆動部26を駆動し、ステップS409にて給材したハースライナ23を再び測定位置P2に移動し、続くステップS411において、レーザ変位センサ41からそのハースライナ23の溶融面にレーザ光を照射し、反射光を受光することで、溶融面の高さhに相当する測定値を高さ測定器4から入力する。そして、ステップS412において、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値が、予め設定された基準値内にあるか否か(下限値以上か否か)を判定し、溶融面の高さhの測定値が基準値内にある場合は、材料供給の処理を終了する。これに対し、ステップS412において、高さ測定器4から入力した溶融面の高さhの測定値が、予め設定された基準値内にない場合はステップS406へ戻り、ステップS406~S411の処理を再度実行する。
【0052】
図6に戻り、ステップS5において、成膜処理が終了したか否かを判定し、継続する場合はステップS3へ戻り、被成膜物ホルダ28に装着された複数の被成膜物Sに所定膜厚の蒸着膜が形成されるまで成膜処理を継続する。ステップS5において、成膜処理が終了したと判定したらステップS6へ進み、ロードロックチャンバ7を成膜チャンバ2と同じ真空雰囲気に設定したのち、仕切バルブ71を開き、成膜処理を終了した複数の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、ロボットなどを用いて把持し、成膜チャンバ2からロードロックチャンバ7へ搬出する。その後、仕切バルブ71を閉じたのち、ロードロックチャンバ7を大気圧雰囲気に戻し、成膜後の被成膜物Sが装着された被成膜物ホルダ28を、図示しない扉を介して外部へ搬出する。これにより成膜処理が終了する。
【符号の説明】
【0053】
1…成膜装置
2…成膜チャンバ
21…排気装置
21a…仕切バルブ
22…ハースホルダ(hearth holder)
23…ハースライナ(hearth liner)
24…加熱源
26…ハースホルダ駆動部
27…軸
28…被成膜物ホルダ
29…ホルダ駆動部
3…材料供給器
31…ホッパ
32…ボウルフィーダ
321…ボウル
322…シュート
323…ボウルフィーダノズル
33…計測供給機構
331…基台
332…ロードセル
333…受け皿
334…仕切板
335…受け皿
336…ダンプ機構
337…リニアフィーダ
338…リニアフィーダノズル
34…ノズル
341…開口壁
342…分散部材
342A…側板
342B…背板
342C…切欠き
342D…分散体
4…高さ測定器
41…レーザ変位センサ
42…ケーシング
421…開口部
422…ガラス板
43…配線管
44…配線
6…制御器
7…ロードロックチャンバ(load lock chamber)
71…仕切バルブ
M…成膜材料
S…被成膜物
P1…蒸発位置
P2…測定位置
P3…給材位置
【要約】
ハースライナの収容体積に対し適切な量の材料を供給するため、少なくとも成膜材料(M)と被成膜物(S)が設けられ、所定の成膜雰囲気に設定可能な成膜チャンバ(2)と、前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記成膜材料を収容するハースライナ(23)と、前記成膜チャンバの内部に設けられ、前記ハースライナに収容された成膜材料を加熱する加熱源(24)と、前記ハースライナに前記成膜材料を供給する材料供給器(3)と、前記ハースライナに収容された成膜材料の溶融面の高さを測定する高さ測定器(4)と、前記高さ測定器により測定された溶融面の高さに基づいて供給すべき成膜材料の質量を演算し、当該演算された質量の成膜材料を前記ハースライナに供給するよう前記材料供給器を制御する制御器(6)と、を備える。