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  • 特許-無電解めっき活性化処理 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】無電解めっき活性化処理
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/32 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C23C18/32
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019037470
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2019151926
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】62/637,238
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/286,352
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508130890
【氏名又は名称】ハッチンソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】リーマー,ダグラス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,カート エフ.
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219274(JP,A)
【文献】登録実用新案第3046635(JP,U)
【文献】特開昭61-087891(JP,A)
【文献】特表2007-525028(JP,A)
【文献】特開2012-241236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に金属をめっきする無電解方法であって、
ウェブに存在するとともに金属をめっきする基材を準備するステップと、
前記金属をめっきする前記基材を含む前記ウェブをめっき浴に導入するステップと、
電極を前記浴に接触させるとともに前記浴の外部で前記ウェブに接触するローラに接触させて配置して、前記浴内における電圧を確立するステップと、
めっきが前記基材に開始される基準電圧を測定するステップと、
前記ウェブにではなく前記基材にのみめっきを開始するのに十分なバイアス電流を前記ウェブに印加するステップとを含み、
前記浴内の前記ウェブにおける基準電圧を確立するステップをさらに含み、
前記基準電圧を確立するステップは、前記ウェブの前記浴への進入ポイント近傍で、前記ウェブを含む前記浴に基準電極を接触させて配置して、前記ウェブが前記浴に進入する前に前記ウェブと接触するローラと前記ウェブを含む前記浴との電圧差を測定することを含む、方法。
【請求項2】
めっきされる前記金属はニッケルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材は銅を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウェブはステンレス鋼を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
パラジウムを銅の前記基材に接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記金属をめっきする前記基材は複数の個別の銅トレースである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェブは連続的であるが、前記金属をめっきする前記基材は前記ウェブに存在する個別のトレースである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は銅であり、前記ウェブはステンレス鋼である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バイアス電流を印加することは、前記ウェブが前記浴に供給されると連続的にめっきを開始させる一定の基準電圧を維持するように調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイアス電流は、前記ステンレス鋼の前記ウェブの不動態化状態に対応するものである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
連続するステンレス鋼ウェブ自体ではなく該連続するステンレス鋼ウェブに存在する銅基材のみにおける無電解ニッケルめっきの方法であって、
連続するステンレス鋼ウェブを前記基材にめっきされるニッケルを含むめっき浴に導入するステップと、
前記ステンレス鋼ウェブ上に連続する基材又は複数の離間した基材を配置するステップと、
前記銅基材に前記ニッケルめっきを開始するために前記ウェブにバイアス電流を印加するステップとを含み、
前記浴内の前記ウェブにおける基準電圧を確立するステップをさらに含み、
前記基準電圧を確立するステップは、前記ウェブの前記浴への進入ポイント近傍で、前記ウェブを含む前記浴に基準電極を接触させて配置して、前記ウェブが前記浴に進入する前に前記ウェブと接触するローラと前記ウェブを含む前記浴との電圧差を測定することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年2月26日に出願の米国特許出願第16/286,352号の優先権を主張し、さらに2018年3月1日に出願の米国仮特許出願第62/637,238号の利益を享受するものであり、その全体が言及によって本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示は、銅がステンレス鋼に接触する、ステンレス鋼(「SST」)のウェブに存在する銅基材における過剰な無電解ニッケル(「E-Ni」)コーティングによる損失を低減することに関する。この開示に先立ち、E-Niめっきにおける年間の収量損失は、週に60ロールの生産速度において約50万ドルを超えている。ウェブに印加される電流制御型基準電圧を使用することで、無電解めっきの開始に必要とされるレベルに基準電圧を維持するアクティブフィードバックループにより、ウェブにおけるめっきの損失が低減される。
【背景技術】
【0003】
無電解ニッケルめっきは自己触媒プロセスであり、これは所定の基材の触媒活性により開始する。めっき開始後、堆積ニッケル層において自発的にプロセスが進行する。
【0004】
E-Niは、銅(「Cu」)トレース及びパッドにめっきすることを意図し、パラジウム(「Pd」)活性剤を任意的にCuに堆積させることができる。Pdは触媒として作用してE-Niめっきを活性化するものである。本明細書に言及によってその全体が援用される非特許文献1の科学文献から、めっきを活性化する際、所与の電圧パターンが認められると考えられる。電圧は、析出電圧を超えて負に推移し、そして安定した状態になる。Pdや鉄(「Fe」)などの一部の材料は単独でめっきする。他の大部分はそうではなく、化学活性剤が使用され、この場合はPdである。Cu、Cu+Pd、Au、及び白金(「Pt」)について、時間に対するポテンシャル、V(「ボルト」)vsSCEをプロットした図1が参照される。
【0005】
しかしながら、収量損失の増大はE-Niめっきの不均一な活性化処理により起こる。SSTはE-Niめっきの活性化処理に多大な影響を与え得る。活性化処理は、部分/パネル設計及びSST処理、すなわちSSTウェブが不動態化処理されているかどうか、に対応する。連続ウェブにおけるリールトゥーリール式めっきでは、ニッケルめっきする銅表面はステンレス鋼基材と電気的に接触して、ガルバニック結合を形成し得る。電気的接触は、銅表面とステンレス鋼表面との間の誘電層におけるビアを介して銅とステンレス鋼とを接続する製品設計から形成され得る。ウェブをめっき溶液に浸漬すると、銅とステンレス鋼との接触が低電圧を生じさせ、この電圧が無電解めっき反応のバリアとして作用する。パラジウム触媒の通常の堆積ではめっき反応を開始できないことがあり、外部電圧を必要とする。他の要因には、誘電性材料を介して露出したSSTの量又は領域と比較した銅の相対量又は相対領域を含む。CuとSSTとのそれぞれにおける、偶然又は意図的な以前の表面処理もめっきに影響を与える。問題があると、Niは分離したCuのみにめっきされる。現在のところ、活性化処理又は活性化処理の欠如により、E-Niめっきには著しい収量損失が起こっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「Initiation ofElectroless Nickel Plating on Copper, Palladium-Activated Copper, Gold andPlatinum」、J. Flis及びD.J.Duquette、J. Electrochem. Soc.:ElectrochemicalScience and Technology、1984年2月、pp.254-259
【発明の概要】
【0007】
第1の実施形態において、無電解めっきの開始に必要とされるレベルに電圧を維持するアクティブフィードバックループにより、ウェブに電流制御型基準電圧を確立する。
【0008】
他の実施形態において、浴の化学的性質変化、銅からSSTのガルバニック結合、及びSST不動態化の状態によって引き起こされるウェブ状態の変化をオフセットするために、システムが利用される。
【0009】
さらなる実施形態において、めっき浴における基準電圧状態をモニタリングし、所望の基準電圧を維持するために、ウェブにおけるバイアス電流を上下に自己調節する。
【0010】
またさらなる実施形態において、めっき開始を判定するためにバイアス電流を検知して、電解又は無電解ハイブリッドめっきしないように電流を低下させる。
【0011】
これらの実施形態及び他の実施形態は、実施形態の詳細な説明と添付の図面と併せて読むことで、より理解が深まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、科学文献(「先行技術」)において、Cu、Cu+Pd、Au、及び白金(「Pt」)について、時間に対するポテンシャルV(「ボルト」)vsSCEをプロットした図表である。
図2図2は、実施形態において電圧測定によって確実なめっき活性化処理フィードバックを得るためにセンサをめっきモジュールに追加する装置及び方法の概略図である。
図3図3は、実施形態において手動活性化処理をするまでとその後の、時間(秒)に対してプロットした起電力Eの図表である。
図4図4は、時間(秒)に対してプロットした、イオン(破線)、ウェブと基準電極との間の電圧(mV)の図表である。
図5図5は、めっき処理を制御するためにウェブからめっき浴の電圧差を測定しながら、浴を介してウェブに電流を印加するように改変されている、実施形態における無電解めっきシステムの概略図である。
図6図6は、時間(秒)に対してプロットしたE(SHE)における、公開されている電圧の傾向と比較した、実施形態による当該処理を使用して行った実験室内(ビーカースケール)実験の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(先行技術)に示すように、公開されている科学文献には、めっきを開始したとき観察される所定のパターンの電圧が示されている。図1は、めっき溶液(実線)又はNaHPOを含むがNi2+イオンを含まない担体溶液(破線)に浸漬後の、銅、パラジウム活性化銅(1g/LのPdCl+1ml/LのHClの溶液内で5秒間活性化処理)、金、及び白金の開回路電位を示す。電圧は、析出電圧を超えて負に推移し、そして安定した状態になる。PdやAuなどの一部の材料は単独でめっきする。他の大部分はそうではない。
【0014】
E-NiがCuトレース及びパッドにめっきすることを意図する場合、Cuは、めっき浴内に及びめっき浴を通って搬送されるとき、ステンレス鋼(「SST」)ウェブ10上に配置されている。図2を参照すると、システム9において、SSTウェブ10はローラ対11、12を通って搬送されて、槽15内に含まれる浴14の表面13下に導入されるということが見てとれる。絶縁ローラ16、17は、ウェブ10を浴14の表面13下に搬送する。浴及びウェブの電圧を判定するために、SSTウェブ10に接触するローラ11と浴14との電圧差を基準電極18により測定する。電圧を所望の値に操作するために、外部整流器20からの電流源19を使用することができる。図3から見てとれるように、顕著な電圧低下が起こる手動活性化処理を行うまで、起電力Eを時間(秒)に対してプロットしている。

【0015】
使用される基準電極18はカロメル電極であってもよく、これは、高温(180°F)で安定であるカロメル(HgCl)で被覆した水銀であり、使用可能な数少ない基準電極のうちの1つである。しかしながら、水銀電極は非常に高価であり、毒性物質を含有する。「偽基準電極」又は「準基準電極」は白金片から作製可能であり、非水性システムに使用されることがあるということが当業者には既知である(言及によりその全体が援用されるBard及びFaulknerの「ElectrochemicalMethods-Fundamentals and Applications」、John Wiley & Sons, Inc,、第2版、2001年、53ページ参照)。このシステムにおいてめっきに触媒活性ではない白金は白金表面として保たれ、基準電極18として良好に使用される。基準電極18は、SSTウェブ10が浴に進入するところの下流ではなく、浴に進入するところの近傍に配置される。基準電極18は、めっきが活性化される入口近傍に配置されるので、適切な厚み制御を行い、活性化電流によるIR低下を極力少なくし、測定精度を上げる。槽15自体はアノードとして使用され、ウェブ10を完全に包囲する。このシステム9により、バイメタル処理において特にCuにめっきすることができる。電圧を狭い範囲に維持することで、1つの金属(例えばCu)にめっきすることができ、その他(例えばSST)にはめっきされない。このように、ハイブリッド電解又は無電解めっきを防ぐ。
【0016】
制御範囲は0.2V(200mV)±0.05%である。システム9において基準電極18を使用しなければ、そうした狭い範囲で電圧を制御することは不可能であろう。基準電極と外部供給電流を含む開示のシステム9を使用せずに得られるのは最大で約500mVである。
【0017】
E-Niめっきの電圧プロファイルは図4の図表において見ることができる。電圧(ウェブと基準電極18との間のmV)は時間(秒)に対してプロットされている。電圧コントローラ整流器を使用して、めっき活性化処理の制御が8回の実施うちの7回、又は大部分で得られた。1つの場合においてのみ、システム9の呼称であるPROTECTOSTATを利用してもめっきは存在せず、実際には予測した方向と顕著に異なる電圧を示した。
【0018】
図5に示すように、連続又は分離Cu部分を有するウェブ51が、浴59を通ってウェブ51及びその付随する銅部分を搬送するための一連の搬送ローラ53-54、55-56、及び57-58を含むモジュール52に進入する、産業用システム50が考えられる。ポイント60とポイント61との間で基準電圧を測定する。そして、ウェブ51とその付随するCu部分はめっきモジュール64に進入する。めっきモジュール64もまた、一連の搬送ローラ65-66、67-68、及び69-70を含む。ポイント62とポイント63との間で電圧を再び測定する。Cu部分のめっきはめっきモジュール64において行われる。めっき浴71におけるポイント62とポイント63との間の電圧測定は、めっきモジュール64においてCu部分にめっきが行われているかどうかを示すものである。
【0019】
図2に示すようにめっきモジュールにセンサを追加することで、電流がセンサに流れないことから電圧測定による確実な活性化処理フィードバックを確認することができる。電流源が追加されると、電圧を所望の値に操作することができる。種々の実施形態において、ウェブ10が連続的であるとされ得るリールトゥリールシステムにおいて上述されたものが実施される。
【0020】
添付の図面に関していくつかの実施形態が開示されているものの、そうした実施形態は、この開示が対象とする当業者が、本発明を応用することなく変形及びその他の実施形態を容易に予測できるような例示のみとして考えられる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6