(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】バイメタル誘導加熱ブランケット
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H05B6/10 381
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019095976
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ハル
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.マトセン
(72)【発明者】
【氏名】ランドン ケー.ヘンソン
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0145703(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246815(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00-6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束場を生成するように構成された電磁束場源と、
前記電磁束場源に隣接して配置されるとともに、各々が、レベリング温度及びキュリー温度を有する複数のサセプタ素子と、
複数の導体素子と、を含み、前記複数の導体素子の各々は、前記複数のサセプタ素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続して
おり、
前記複数のサセプタ素子は、それぞれ、前記複数の導体素子におけるそれぞれの導体素子と対をなして、複数のサセプタタブを形成しており、
前記複数のサセプタタブは、複数の行に配置されており、
前記複数行のサセプタタブは、その行間が隙間によって相互に離間しており、
各行における複数のサセプタタブは、同一行内において、隙間又は開口部によって相互に分離されている、
スマートサセプタアセンブリ。
【請求項2】
前記スマートサセプタアセンブリは、各サセプタ素子の温度がキュリー温度に到達する前に、各サセプタ素子から前記導体素子のうちの1つに電流を流すように構成されている、請求項1に記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項3】
前記複数のサセプタ素子の各々は、他のサセプタ素子とは物理的に離間して、物理的に分離している、
前記複数の導体素子の各々は、他の導体素子とは物理的に離間して、物理的に分離している、請求項1又は2に記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のサセプタタブは、複数の行及び複数の列に配置されており、
前記行のうちの1つの行におけるサセプタタブは、一対のサセプタタブ連結部によって前記1つの行内の少なくとも1つの他のサセプタタブと物理的且つ電気的に結合されており、
前記複数の行は、隙間によって1つ以上の隣接する行と物理的且つ電気的に分離又は離間されている、請求項1~3のいずれかに記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項5】
各サセプタタブは、前記複数のサセプタタブのうちの他の全てのサセプタタブと電気的に結合している、請求項
4に記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項6】
各サセプタタブのサセプタ素子は、これと対をなす導体素子と同一の広がりを有する、請求項1~5のいずれかに記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項7】
各サセプタタブは、所与の長さ及び所与の幅を有し、
各サセプタタブの長さは、1mm~200mmであり、
各サセプタタブの幅は、1mm~100mmである、請求項6に記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項8】
各サセプタ素子は、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、及び/又は、強磁性鉄ニッケルコバルト合金のうちの少なくとも1つを含み、
各導体素子は、銅、銀、金、青銅、及び/又は、非磁性の銅ニッケルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれかに記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項9】
前記電磁束場源は、前記複数のサセプタ素子の上に配置された導線によって少なくとも部分的に供給され、
前記スマートサセプタアセンブリは、さらに、前記導線に電気的に結合された交流電源を含む、請求項1~8のいずれかに記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のサセプタ素子の各々は、前記複数の導体素子のうちの1つの導体素子と同一の広がりを有することによりサセプタタブを形成し、
前記導線は、各サセプタタブに物理的に取り付けられている、請求項9に記載のスマートサセプタアセンブリ。
【請求項11】
複数のサセプタ素子と複数の導体素子とを含む複数のサセプタタブを形成し、その際、各サセプタ素子は、前記複数の導体素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続し、且つ、レベリング温度及びキュリー温度を有し、
前記複数のサセプタタブに隣接して電磁束場源を配置する、スマートサセプタアセンブリを製造するための方法
であって、
前記複数のサセプタ素子は、それぞれ、前記複数の導体素子におけるそれぞれの導体素子と対をなして、複数のサセプタタブを形成しており、
前記複数のサセプタタブは、複数の行に配置されており、
前記複数行のサセプタタブは、その行間が隙間によって相互に離間しており、
各行における複数のサセプタタブは、同一行内において、隙間又は開口部によって相互に分離されている、方法。
【請求項12】
前記複数のサセプタタブの形成に際して、
前記複数のサセプタ素子を他のサセプタ素子とは物理的に隙間を空けて配置し、
前記複数の導体素子を他の導体素子とは物理的に隙間を空けて配置する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
一対のサセプタタブ連結部を用いて、前記行におけるサセプタタブを、前記行における少なくとも1つの他のサセプタタブと物理的且つ電気的に結合し、
前記サセプタタブの行と、当該行に隣接する1つ以上の行とを、隙間によって物理的且つ電気的に分離する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のサセプタタブにおける各サセプタタブと、他の全てのサセプタタブとを電気的に結合する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、各サセプタ素子の形成は、当該サセプタ素子が、前記複数の導体素子のうちの1つの導体素子の上に配置され、且つ、当該導体素子と同一の広がりを持つように行われる、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
さらに、各サセプタタブの形成は、長さが1mm~200mm、且つ、幅が1mm~100mmになるように行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記複数のサセプタタブに隣接して前記電磁束場源を配置する際に、前記複数のサセプタタブの各々に対して、導線を取り付けることを含み、前記導線は、前記複数のサセプタタブを横切って蛇行している、請求項11~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記導線を交流電源に電気的に結合することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
物品を加熱するための方法であって、
前記物品をスマートサセプタアセンブリに隣接して配置し、その際に前記スマートサセプタアセンブリは、
磁束場を生成するように構成された電磁束場源と、
前記電磁束場源に隣接して配置されるとともに、各々が、レベリング温度及びキュリー温度を有する複数のサセプタ素子と、
各々が、前記複数のサセプタ素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続している複数の導体素子と、を含み、
前記電磁束場源から電磁束場を生成し、
前記電磁束場を用いて、前記複数のサセプタ素子を誘導加熱し、
前記複数のサセプタ素子からの熱により前記物品を加熱する
ものであり、
前記複数のサセプタ素子は、それぞれ、前記複数の導体素子におけるそれぞれの導体素子と対をなして、複数のサセプタタブを形成しており、
前記複数のサセプタタブは、複数の行に配置されており、
前記複数行のサセプタタブは、その行間が隙間によって相互に離間しており、
各行における複数のサセプタタブは、同一行内において、隙間又は開口部によって相互に分離されている、方法。
【請求項20】
さらに、各サセプタ素子がキュリー温度に到達する前に、各サセプタ素子から前記導体素子のうちの1つに電流を流すことを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱処理にて1つ以上の材料を加熱することに関し、より具体的には、加熱処理に際して材料を加熱するために使用可能なスマートサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
サセプタは、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換する材料であり、例えば、製造処理中に様々な材料を加熱するのに使用することができる。「スマート」サセプタは、温度を自己調節するサセプタアセンブリである。典型的には、スマートサセプタは、インダクタにより生成される電磁束場に配設される。サセプタの材料には様々な強磁性材料が含まれており、一例としては、コバール(Kovar:登録商標)などの強磁性ニッケル-コバルト合金や、鉄、ニッケル、及び、コバルトを用いた他の合金などが挙げられる。
【0003】
比較的低い温度では、サセプタは、電磁束場に対する透過性が高く、また、電子が当該サセプタを流れる断面領域(すなわち、表皮深さ(skin depth))は浅い。したがって、これらの比較的低い温度では、サセプタの電気抵抗は高い。サセプタは、例えば、スマートサセプタアセンブリの一部である誘導コイルによって生成された電磁束場に置かれると、初期段階の浅い表皮深さ、及び、高い透磁率により、誘導加熱を開始する。サセプタが加熱されると、サセプタの熱プロファイル(thermal profile)は、当該サセプタが熱平衡を維持するレベリング温度(leveling temperature)に漸近的に近づく。レベリング温度は、典型的には、スマートサセプタが非磁性になる当該スマートサセプタの設計「キュリー」温度、すなわち「TC」よりも、数度低い(例えば、2°F以内、10°F以内、50°F以内、又は、100°以内)温度である。サセプタがレベリング温度に近づくにつれて、サセプタの透磁率が低くなり、表皮深さが深くなる。また、これによって、サセプタの電気抵抗が弱まり、加熱効果が低減する。透磁率が低下すると、レベリング温度又はこれに近い温度において、これらのサセプタ部分における発熱が制限される。ある時点における透磁率は、局所領域における局所温度によって、サセプタの異なる領域毎に異なりうる。サセプタの各局所領域がレベリング温度に近づくと、当該局所領域は、定常状態(すなわち、熱平衡)に達して当該局所領域におけるサセプタの加熱が終了するまで、磁性が弱くなっていく。キュリー温度(Curie temperature)に達するサセプタの領域は、キュリー温度以上で非磁性となる。サセプタが冷え始めると、透磁率が高くなり、表皮深さが浅くなり、電気抵抗が増大して、加熱処理が再開される。
【0004】
スマートサセプタは、温度を自己調節する特性を有するため、製造や他の用途に役立つツールである。スマートサセプタの従来型の設計には、リッツ線(litz wire)の周りに巻かれたサセプタ材料を含むものもある。リッツ線は、例えば、銅製ストランド(copper strands)などの複数の導電性ストランドを有するコアを含みうる。リッツ線に交流電流を流すと、リッツ線は磁束場を生成する。サセプタは、リッツ線によって生成された電磁エネルギーを吸収して、当該エネルギーを熱に変換する。サセプタが巻き付けられたリッツ線をシリコーン層に埋め込んでヒートブランケットを形成し、当該ヒートブランケットを、例えば、未硬化樹脂に予備含浸された炭素繊維を加熱するために使用することができる。
【0005】
ヒートブランケットの温度の均一性を向上させて、所与のサセプタ材料に対して利用可能なレベリング温度の範囲を拡げることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態についての基本的な理解を目的として、本開示の概要を以下に記載する。この概要は、本開示の包括的な概説ではなく、また、本開示の主要な要素、又は、重要な要素を特定するものでもなく、本開示の範囲を規定するものでもない。むしろ、その主な目的は、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化した形で提示することである。
【0007】
一実施態様においては、スマートサセプタアセンブリは、磁束場を生成するように構成された電磁束場源と、前記電磁束場源に隣接して配置されるとともに、各々が、レベリング温度及びキュリー温度を有する複数のサセプタ素子と、複数の導体素子と、を含み、前記複数の導体素子の各々は、前記複数のサセプタ素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続している。
【0008】
前記スマートサセプタアセンブリは、各サセプタ素子の温度がキュリー温度に到達する前に、各サセプタ素子から前記導体素子のうちの1つに電流を流すように構成することができる。任意ではあるが、前記複数のサセプタ素子の各々は、他のサセプタ素子とは物理的に離間して、物理的に分離していてもよい。また、前記複数の導体素子の各々は、他の導体素子とは物理的に離間して、物理的に分離していてもよい。
【0009】
一実施態様においては、前記スマートサセプタアセンブリは、複数のサセプタタブを含んでもよく、前記サセプタ素子のうちの1つは、前記導体素子のうちの1つと対をなして、前記複数のサセプタタブのうちの1つを形成していてもよい。前記複数のサセプタタブは、複数の行及び複数の列に配置されてもよく、前記行のうちの1つの行におけるサセプタタブは、一対のサセプタタブ連結部によって前記1つの行内の少なくとも1つの他のサセプタタブと物理的且つ電気的に結合されてもよく、前記複数の行は、隙間によって1つ以上の隣接する行と物理的且つ電気的に分離又は離間されてもよい。
【0010】
他の実施態様においては、前記スマートサセプタアセンブリは、複数のサセプタタブを含んでもよく、各サセプタタブは、前記複数のサセプタ素子のうちの1つと前記導体素子のうちの1つとが対をなすことによって形成されてもよい。また、前記複数のサセプタタブは、複数の行及び複数の列に配置されてもよく、各行は、隙間によって1つ以上の隣接する行と物理的に離間していてもよく、各サセプタタブは、一対のサセプタタブ連結部によって少なくとも1つの隣接するサセプタタブと電気的に結合されていてもよく、各サセプタタブは、前記複数のサセプタタブのうちの他の全てのサセプタタブと電気的に結合していてもよい。
【0011】
任意ではあるが、前記スマートサセプタアセンブリは、複数のサセプタタブを含んでもよく、各サセプタタブは、前記複数のサセプタ素子のうちの1つと前記導体素子のうちの1つとが対をなすことによって形成することができ、各サセプタタブのサセプタ素子は、これと対をなす導体素子と同一の広がりを有してもよい。さらに、各サセプタタブは、所与の長さ及び所与の幅を有してもよく、各サセプタタブの長さは、1mm~200mmであってもよく、各サセプタタブの幅は、1mm~100mmであってもよい。
【0012】
任意の実施態様においては、各サセプタ素子は、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、及び/又は、強磁性鉄ニッケルコバルト合金のうちの少なくとも1つを含んでもよく、各導体素子は、銅、銀、金、青銅、及び/又は、非磁性の銅ニッケルのうちの少なくとも1つを含んでもよい。前記電磁束場源は、前記複数のサセプタ素子の上に配置された導線によって少なくとも部分的に供給されてもよく、前記スマートサセプタアセンブリは、さらに、前記導線に電気的に結合された交流電源を含んでもよい。さらに、前記複数のサセプタ素子の各々は、前記複数の導体素子のうちの1つの導体素子と同一の広がりを有することによりサセプタタブを形成することができ、前記導線は、各サセプタタブに物理的に取り付けられていてもよい。
【0013】
他の実施態様において、スマートサセプタアセンブリを製造するための方法は、複数のサセプタ素子と複数の導体素子とを含む複数のサセプタタブを形成することを含み、各サセプタ素子は、前記複数の導体素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続し、且つ、レベリング温度及びキュリー温度を有する。上記方法は、さらに、前記複数のサセプタタブに隣接して電磁束場源を配置することを含む。
【0014】
任意ではあるが、前記複数のサセプタタブの形成に際して、前記複数のサセプタ素子を他のサセプタ素子とは物理的に離間配置してもよく、前記複数の導体素子を他の導体素子とは物理的に離間配置してもよい。上記方法は、さらに、前記複数のサセプタタブを、複数の行及び複数の列に配置することと、一対のサセプタタブ連結部を用いて、前記行におけるサセプタタブを、前記行における少なくとも1つの他のサセプタタブと物理的且つ電気的に結合することと、前記サセプタタブの行と、当該行に隣接する1つ以上の行とを、隙間によって物理的且つ電気的に分離することと、を含みうる。これに加えて、上記方法は、さらに、前記複数のサセプタタブを、複数の行及び複数の列に配置することと、各行を、隙間によって1つ以上の隣接する行と物理的に離間させることと、一対のサセプタタブ連結部を用いて、各サセプタタブと、少なくとも1つの隣接するサセプタタブとを電気的に結合することと、前記複数のサセプタタブにおける各サセプタタブと、他の全てのサセプタタブとを電気的に結合することと、を含みうる。各サセプタ素子の形成は、当該サセプタ素子が、前記複数の導体素子のうちの1つの導体素子の上に配置され、且つ、当該導体素子と同一の広がりを持つように行われてもよい。さらに、各サセプタタブの形成は、長さが1mm~200mm、且つ、幅が1mm~100mmになるように行われてもよい。上記方法は、さらに、前記複数のサセプタタブに隣接して前記電磁束場源を配置する際に、前記複数のサセプタタブの各々に対して、導線を取り付けることを含んでもよく、前記導線は、前記複数のサセプタタブを横切って蛇行しており、上記方法は、前記導線を交流電源に電気的に結合することをさらに含む。
【0015】
他の実施態様において、物品を加熱するための方法は、前記物品をスマートサセプタアセンブリに隣接して配置することを含み、その際に前記スマートサセプタアセンブリは、磁束場を生成するように構成された電磁束場源と、前記電磁束場源に隣接して配置されるとともに、各々が、レベリング温度及びキュリー温度を有する複数のサセプタ素子と、各々が、前記複数のサセプタ素子のうちの1つに電気接続するとともに伝熱接続している複数の導体素子と、を含む。上記方法は、さらに、前記電磁束場源から電磁束場を生成することと、前記電磁束場を用いて、前記複数のサセプタ素子を誘導加熱することと、前記複数のサセプタ素子からの熱により前記物品を加熱することと、を含む。任意ではあるが、上記方法は、さらに、各サセプタ素子がキュリー温度に到達する前に、各サセプタ素子から前記導体素子のうちの1つに電流を流すことを含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本明細書の記載と併せて本開示の実施形態を説明するものであり、本開示の原理を説明することを目的とするものである。
【0017】
【
図1】本開示の実施形態による、スマートサセプタアセンブリの一部を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す構造体の2-2に沿った断面図である。
【
図3】
図1に示す構造体の3-3に沿った断面図である。
【
図4】
図1に示す構造体に追加の要素及び特異部を含めたものを示す図である。
【
図5】本開示の他の実施形態による、複数のサセプタタブを示す平面図である。
【
図8】本開示の他の実施形態による、複数のサセプタタブを示す平面図である。
【
図9】関連する導体素子を有さないサセプタ素子の動作特性と、関連する導体素子を有するサセプタ素子の動作特性とを比較するグラフである。
【
図10】幅及び厚みが同じであるが、長さの異なる複数のサセプタタブの動作特性を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面においては、構造的精度、詳細、及び、縮尺を厳密に維持するのではなく、一部詳細を簡略化したり、本開示を理解し易くするように描いたりしているものもある。
【0019】
本開示の例示的な実施態様について、添付図面に示す実施例を参照して、以下に詳細に説明する。概して、都合に応じて、図面全体に亘って同一又は類似した部分には同じ参照符号を利用している。
【0020】
本明細書においては、特に明記しない限り、「バイメタル」なる用語は、少なくとも2つの別個の金属層を有する構造体を指す。一態様においては、前記少なくとも2つの別個の金属層は、バイメタル構造体を直接又は間接的に支持する基板の面などの、主要な面に対して平行に設けることができる。2つの金属層は、物理的な相互接触により、或いは、ろう付け処理やはんだ付け処理により1つ以上の他の金属層を用いて、互いに電気接続される。さらに、本明細書においては、特に明記しない限り、「金属」なる用語は、金属又は合金を指す。
【0021】
上述したサセプタが巻かれたリッツ線を有するサセプタヒートブランケット全体の温度は、他の種類の加熱装置と比較してより均一にすることができるが、サセプタヒートブランケット全体の温度がさらに均一になるように正確に制御を行うことが望ましい。さらに、上述したサセプタが巻かれたリッツワイヤを有するサセプタヒートブランケットは、導体の複数の平行路を含む複数の隣接するワイヤ構造体の近くに配置されることに依存している。このため、隣接する平行な導電性構造体間で誘導結合が起こり、複数の異なる平行回路を流れる電流が不均一になる可能性があり、結果として、ヒートブランケットの加熱均一性が低下しうる。本開示の実施態様は、従来設計と比較して、隣接する平行な導電性構造体をより離間させて形成することが可能な、より効率的な動作特性を有しており、これにより、いくつかの従来設計と比較して、隣接する構造体間の誘導結合を抑制するとともに、全体の温度が均一になるように正確に制御されたスマートサセプタアセンブリを提供することができる。
【0022】
さらに、サセプタ材料のキュリー温度及びレベリング温度は、その化学的性質に依存してるが、利用可能なレベリング温度の範囲を拡げるためのサセプタの新たな化学的性質の開発は、研究及び製造の両方の観点から見て高価である。サセプタ材料の化学的性質の各々においては、リッツ線に供給される電流によって、可能なレベリング温度の範囲が限られている。ヒートブランケットに対する電力を増やしたり、励起周波数を変更したりしてレベリング温度を調節する能力は、利用可能な電力供給により制限される場合が多い。さらに、サセプタの螺旋巻きの間隔を変えることによって面積当たりの加熱を調節する能力も、制限される。本開示の実施態様は、少なくとも部分的には、スマートサセプタアセンブリの熱的動作、及び、電気的動作を変更する導体素子を提供して、利用可能なレベリング温度の範囲を拡げることにより、所与のサセプタ材料について利用可能なレベリング温度の範囲を拡げることができる。
【0023】
本開示の実施態様は、本明細書に記載、及び/又は、図示する要素、コンポーネント、及び/又は、特異部のうちの1つ又は複数を含みうる。完成した、或いは、製造中のスマートサセプタアセンブリは、簡易化のために本明細書では説明又は図示を省いた様々な要素及び/又は特異部を含みうる。また、本明細書で説明又は図示されている様々なコンポーネントを省いたり変形したりすることも可能である。
【0024】
図1は平面図であり、
図2は、
図1の2-2に沿った断面図であり、
図3は、3-3に沿った断面図であり、それぞれが、本開示の一実施形態による、加熱対象の構造体又は物品102(仮想線で示す)上に設けられたスマートサセプタアセンブリ100の一部を示している。本実施形態のスマートサセプタアセンブリ100は、複数の物理的に別個のバイメタルサセプタアセンブリ、すなわちサセプタ「タブ」104を含む。各サセプタタブ104のバイメタル構造体は、サセプタ素子200と、導体素子202とを含む。サセプタタブ104は、例えば、シリコーン層(例えば、第1シリコーン層)などの電気絶縁板(例えば、第1電気絶縁板)106上に配置される。
図1は、一様なサセプタタブ104の6×9アレイ(すなわち、6行×9列のアレイ)を有するスマートサセプタアセンブリ100を示しているが、例えば、加熱対象の物品102の大きさ、サセプタタブ104の寸法、又は、他の設計上の考慮事項によって、他のアレイサイズも考えられる。さらに、サセプタタブ104は、特定の形態に一致するように異なる形状、及び/又は、サイズを有していてもよい。
【0025】
図2及び
図3に示すように、サセプタ素子200及び導体素子202の各々は、深さ又は長さ「L」と、幅「W」とを有し、各サセプタタブ104において、各サセプタ素子200の長さ及び幅は、各導体素子202の長さ及び幅と同じになるように設定されており、これにより、各構造体の側壁が垂直方向に整列するようにしている。すなわち、各サセプタタブ104のサセプタ素子200及び導体素子202は、横方向において互いに同一の広がりを有するように目標設定されている。さらに、
図3に示すように、各サセプタ素子200は、第1厚み「T
1」を有し、各導体素子202は、第2厚み「T
2」を有する。
【0026】
サセプタ素子200は、例えば、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、及び、鉄ニッケルコバルト合金のうちの1つ又は複数からなる強磁性サセプタ材料、又は、他の適切な材料を含みうる。導体素子202は、非磁性又は常磁性の導電体を含むことができ、好ましくは、良好な熱伝導体である。適切な材料は、銅、銀、金、青銅、及び/又は、非磁性の銅ニッケル、又は、他の適切な材料を含む。簡略化のために、以下の様々な実施形態の説明においては、サセプタ素子200として鉄合金サセプタ材料を使用し、導体素子202として銅を使用するが、他の材料を適切に使用することもできる。
【0027】
各サセプタタブ104は、約1mmから約200mmの範囲、例えば、約10mmから約50mmの長さ「L」を有することができる。さらに、各サセプタタブ104は、約1mmから約100mmの範囲、例えば、約5mmから20mmの幅「W」を有することができる。形成するサセプタタブ104の長さ及び/又は幅が大きすぎる場合、この長さを横切る1つの導電体では、サセプタタブ104の縁部まで十分な温度まで加熱することが困難になる(或いは、妨げられる)。また、形成するサセプタタブの長さ及び/又は幅が小さすぎる場合、導電体同士が誘導結合するのを防止することが困難になる。
【0028】
図1~3に示すスマートサセプタアセンブリ100の一部は、任意の適切な処理により形成することができる。例えば、導体素子材料のブランケット層(例えば、銅層)と、サセプタ素子材料のブランケット層(例えば、鉄合金層)とを含む積層バイメタルシートを、絶縁板106上に載置又は形成する。バイメタルシートの2つの層は、導体素子材料がサセプタ素子材料に電気接続するとともに伝熱接続するように、互いに物理的に接触していてもよい。一つの形成方法においては、焼結処理によりバイメタルシートを形成する。予め形成されたサセプタ材料の条片をリールから繰り出して、ストレートナ(straightener)で平らにする。洗浄処理により、予め形成された条片から汚染物及び粒子を除去する。予め形成された条片は、テクスチャ加工面を形成するため、及び、当該条片を所望の厚みになるまで薄くするために研磨される。その後、当該テクスチャ加工面に対して、例えば、銅金属粉末又は銅合金粉末などの金属粉末を堆積させる。次に、予め形成されるとともに、その上に金属粉末が堆積された状態のサセプタ材料の条片を、例えば、スリーブ型の連続焼結炉において、金属粉末を焼結するのに適した雰囲気及び温度で加熱する。その後、バイメタル条片を冷却して、圧延機で圧縮し、接合粒子間の孔を除去することにより、焼結金属粉末を高密度化する。そして、バイメタル条片を、金属粉末の粒子の溶着に適した温度及び雰囲気で再焼結して圧密化により空隙を閉じてから、冷却する。例えば、
図5~8を参照して以下で説明する構造体の準備として、バイメタル条片を強化及び歪み硬化(strain-harden)させるために当該バイメタル条片を圧延し(rolled)、パンチ加工によりパターニングする。その後、保存、輸送、及び/又は、使用する準備のために、バイメタル条片をリールに巻き付ける。他の適切な形成方法としては、熱間圧延、プラズマ溶射、電気めっき、ろう付け、はんだ付け、及び、溶接が挙げられる。パターニングされたマスク層(簡易化のため図示略)を、サセプタ素子材料の層上に形成する。その後、1回以上の適切なウェットエッチング又はドライエッチングにより、サセプタ素子材料と導体素子材料を、パターニングされたマスク層のパターンに近似させるようにエッチング及びパターニングを行い、絶縁板106で当該パターニングを止める。その後、パターニングされたマスクを除去して、
図1~3に示すスマートサセプタアセンブリ100を形成する。他の処理においては、マスキング及びエッチングに代えて、例えば、ダイシングソウを用いて、サセプタ素子材料及び導体素子材料それぞれのブランケット層を含む積層シートを機械的にエッチングしてもよい。以上の他に、絶縁板106から離れた位置でサセプタタブ104を形成し、その後、ピックアンドプレース装置(pick and place equipment)などを用いて、当該サセプタタブを絶縁板106に配置してもよい。なお、絶縁板106と複数のサセプタタブ104とを含む特大寸法のアセンブリを形成してから、所望の寸法に切断することも可能である。絶縁板106に、接着剤(簡易化のために個別に図示していない)をロール塗布(rolled)、噴霧、又は、その他の方法で付着することにより、サセプタタブ104の位置を永久的に固定することができる。
【0029】
図1~3に示すスマートサセプタアセンブリ100の一部を形成した後、
図4に示すサセプタタブ104の各々の上に、磁束場を生成するインダクタとして機能するように構成された導電ワイヤ(すなわち、導線)400などの電磁束場源を配置する。図示のように、導線400は、絶縁板106の表面、及び、サセプタタブ104のアレイを横切って蛇行している。導線400の幅は、典型的には、サセプタタブ104の幅「W」よりも狭い。一実施形態においては、導線400は、例えば、ヒートブランケットとして用いられる場合に、スマートサセプタアセンブリ100の動作周波数におけるジュール熱損失が低くなるように設定された、銅製リッツワイヤ束であってもよい。導線400は、サセプタタブ104とは電気的に絶縁されているが、例えば、接着剤(簡易化のために個別に図示していない)を用いて、当該サセプタタブ104のうちの1つ又は複数、例えば、サセプタ素子200のうちの1つ又は複数に物理的に取り付けられてもよい。
【0030】
スマートサセプタアセンブリ100は、さらに、導線400及びサセプタタブ104を覆うシリコーン層(例えば、第2シリコーン層)などの、電気絶縁板(例えば、第2絶縁板)402を含みうる。第2シリコーン層402は、
図4においては、その下に設けられている導線400及びサセプタタブ104が見えるように切り欠いて示されているが、一般には、第1シリコーン層106と同一の広がりを有しうる。したがって、サセプタタブ104、及び、導線400の少なくとも一部は、第1電気絶縁板106と第2電気絶縁板402との間に少なくとも部分的に挟まれている。導線400の第1端及び第2端は、例えば、電気コネクタ及び/又はケーブル(簡易化のため図示省略)を用いて、所望の周波数を有する交流(AC)電源404に電気接続される。電源404の動作仕様は、導線400とサセプタタブ104とを含むサセプタアセンブリの要件に合わせられる。1つ又は複数の接着剤(簡易化のために個別に図示していない)を使用して、導線400がサセプタタブ104に固定されるとともに、導線400及びサセプタタブ104上に第2電気絶縁板402を固定される。
【0031】
一態様においては、
図4に示すスマートサセプタアセンブリ100は、例えば、製造処理中にヒートブランケット100として使用することができる。さらに、2つ以上のヒートブランケット100を隣り合うように配置して、より大きいヒートブランケットアレイを形成することもできる。なお、
図4は、矩形のヒートブランケット100を示しているが、他の形状も考えられる。
【0032】
電源404によって導線400に交流が供給されると、導線400は、インダクタとして機能して磁束場を生成する。導線400によって生成される磁場は、導線400の真下において最も大きく、導線400に隣接して配置されるサセプタ素子200は、この位置において、導線400から横方向により離れた位置にサセプタ素子200が配置された場合と比較して、加熱される程度が大きい。サセプタ素子200が、導線400によって生成された磁場に曝されて加熱されると、サセプタ素子200から導体素子202へと熱が伝わる。その後、熱は、サセプタタブ104の導体素子202から、電気絶縁板106を通って物品102へと供給される。
【0033】
一実施形態においては、導体素子202は、以下に説明するように、従来のスマートサセプタと比較すると、スマートサセプタアセンブリ100の熱性能及び電気的動作の両方を変化させることができる。
【0034】
熱性能に関して、導体素子202は、サセプタ素子200から電気絶縁板106、及び、加熱対象の物品102に熱エネルギーを分散させるための受動熱交換器として機能することができる。この能力において、導体素子202は、サセプタ素子200の外面及び内面の両方において、サセプタ素子200の表面全体の温度を受動的に調節することができる。これにより、サセプタ素子200の表面全体の温度範囲を小さくして、スマートサセプタアセンブリ100全体の加熱をより正確に制御することができる。
【0035】
電気的動作に関して、導体素子202は、特定のサセプタ素子200の1つ以上の領域又は部分が、キュリー温度に近づいた後、及び/又は、レベリング温度に達した後に透磁率が低くなると、電流経路を提供することができる。上述したように、比較的低い温度においては、サセプタ素子200は、電磁束場に対する透過性が高く、表皮深さも浅い。これらの比較的低い温度においては、サセプタ素子200の電気抵抗は高い。導線400から生成される電磁束場内にサセプタ素子200が置かれると、当該サセプタ素子の誘導加熱が始まり、サセプタ素子200の表皮深さが深くなり、透磁率が低くなる。これによって、サセプタ素子200の電気抵抗が弱まり、加熱効果が低くなる。サセプタ素子200がより非磁性に近づいた時点で、フロー電流が、導体素子202に移行する。これによって、当該フロー電流は、サセプタ素子200がキュリー温度に到達する前に、サセプタ素子200ではなく導体素子202に流れ始める。サセプタ素子200が冷え始めると、表皮深さが浅くなり、透磁率が高くなって、導線400からの電流がサセプタ素子200に流れ始める。サセプタ素子200は発熱し始めて、レベリング温度に達するまで発熱を続ける。
【0036】
したがって、
図4に示す実施形態は、バイメタルシートで形成可能な複数のサセプタタブ104(のアレイ)を含む。各タブ104は、サセプタ素子200と導体素子202とを含み、各サセプタタブ104によって、サセプタ素子200は、導体素子202に対して物理的、電気的、且つ、熱的に、接触及び/又は結合している。各サセプタタブ104は、アレイ内の複数のサセプタタブ104のうちの他の全てのサセプタタブ104とは物理的に分離している。また、各サセプタタブ104は、アレイにおける他のサセプタタブ104の各々から離間配置されている。さらに、各サセプタ素子200は、アレイ内の複数のサセプタ素子200のうちの他の全てのサセプタ素子200とは物理的に分離され、且つ、物理的に離間配置されている。また、各導体素子202は、アレイ内の複数の導体素子202のうちの他の全ての導体素子202とは物理的に分離され、且つ、物理的に離間配置されている。
【0037】
サセプタアセンブリ100は、さらに、各サセプタタブ104上に設けられた導線400により供給されうるインダクタを含む。サセプタアセンブリ100は、さらに、下側第1絶縁板106と、上側第2絶縁板402とを含んでもよく、複数のサセプタタブ104、及び、導線400の一部は、これら2つの絶縁板の間に直接設けられていてもよい。導線400は、AC電源404によって電力が供給されると、磁束場を生成する。
【0038】
図1~4は、概して、導線400と導体素子202との間に垂直方向に挟まれれたサセプタ素子200を示す。この実施形態においては、各サセプタタブ104のサセプタ素子200は、導体素子202よりも導線400に近い。さらに、本実施形態においては、導体素子202は、サセプタ素子200よりも第1電気絶縁板106及び加熱対象の物品102に対して物理的に近い位置に配置されている。なお、サセプタ素子200と導体素子202との位置を逆にして、導体素子202が、導線400とサセプタ素子200との間に垂直方向に挟まれるとともに、導体素子202が、サセプタ素子200よりも導線400に近くなるようにしてもよい。しかしながら、一般に、導線400は、サセプタ素子200に隣接して設けられた場合、当該サセプタ素子200に与える影響が最も大きい。また、導体素子202から加熱対象の物品102に伝達される熱は、当該導体素子202が、第1電気絶縁板106及び物品102に隣接して設けられる場合に最大となる。
【0039】
図5は、平面図であり、
図6は、
図5の6-6に従った断面であり、
図7は、
図5の7-7に沿った断面図であり、これらの図には、本開示の別の実施形態が示されている。
図5~7は、2つのサセプタタブ条片500を示しており、各条片は、複数のサセプタタブ502を含む。
図5~7は、サセプタタブ502の2×6アレイ(すなわち、2行×6列のアレイ)を示しているが、例えば、加熱する物品の大きさ、サセプタタブ502の寸法、又は、他の設計上の考慮事項によって、他のアレイサイズも考えられる。
【0040】
この実施形態においては、
図5に示すように、サセプタタブ条片500を形成する複数のサセプタタブ502の行における各サセプタタブ502は、一対のサセプタタブ連結部504によって、当該条片において少なくとも1つの他のサセプタタブ502と物理的且つ電気的に結合している。したがって、サセプタタブ502の各行は、例えば、矩形開口部などの複数の開口部506を有する矩形のバイメタルサセプタタブ条片500によって実現することができる。各対のサセプタタブ連結部504は、複数の開口部506のうちの1つの開口部の両端に形成される。
図5にも示されているように、サセプタタブ502の各行は、隙間508によって、1つ以上の隣接する行とは物理的且つ電気的に分離又は離間されている。
【0041】
なお、
図5に示すサセプタタブ502を、
図4に示すサセプタタブ104の代わりに用いて、完成したスマートサセプタアセンブリが、サセプタタブ502と、導線400と、第1電気絶縁板106と、第2電気絶縁板402と、電源404とを含むようにしてもよい。
【0042】
図5に示す実施形態は、
図4に示す実施形態と比較して、スマートサセプタアセンブリの構成を単純化することができる。
図4に示す実施形態においては、各サセプタタブ104は、アレイ内の他の全てのサセプタタブ104と物理的且つ電気的に分離されており、製造方法によっては、別々に配置されるか、或いは、別々に取り扱われなければならない。
図5の実施形態においては、各行のサセプタタブ502は互いに物理的に接続され、これにより、物理的且つ電気的に接続されたサセプタタブ502からなる長状サセプタタブ条片500が形成されている。この条片は、複数のサセプタタブ502のバイメタル条片として一緒に配置、或いは、一緒に取り扱うことができる。
【0043】
図5~7に示す実施形態においては、隣り合うサセプタタブ104は、サセプタタブ条片500の側縁において、サセプタタブ連結部504によって互いに接続されている。これらのサセプタタブ連結部504は、スマートサセプタアセンブリ100の使用中、僅かではあるが、電流に悪影響を及ぼしうるが、サセプタタブ502のアレイに対して機械的な一体性を付与するという利点があり、これによって、ヒートブランケットを容易に製造することができる。この構造体は、例えば、金属パンチを使用して、隣接するサセプタタブ502間に開口部506を打ち抜き形成(punching)することにより、固体バイメタル条片から製造することができる。
【0044】
図8は、本開示の別の実施形態を示しており、この形態においては、複数のサセプタタブ802(例えば、当該タブのアレイ)を含む単一の長状サセプタタブ条片800を折り曲げて、サセプタタブ802のアレイ全体を形成している。図示のように、複数のサセプタタブ802は、複数の行及び複数の列に配置されている。各行の各サセプタタブ802は、矩形開口部や他の形状の開口部などの開口部804によって、当該行における少なくとも1つの他のサセプタタブ802と分離されている。さらに、各行は、隙間によって少なくとも1つの隣接する行とは物理的に分離されており、各サセプタタブ802は、複数のサセプタタブ802における他の全てのサセプタタブ802と電気的に結合している。
【0045】
図5~7に関して先に説明したように、サセプタタブ条片800は、パンチを使用して、バイメタル条片に複数の開口部804を打ち抜くことにより形成することができる。その後、
図8に示すように、バイメタル条片を90°、又は、他の所望角度に折り曲げることにより、サセプタタブ802のアレイを形成することができる。なお、
図8に示す長状サセプタタブ条片800を、
図4に示すサセプタタブ104の代わりに用いて、完成したスマートサセプタアセンブリが、長状サセプタタブ条片800と、導線400と、第1電気絶縁板106と、第2電気絶縁板402と、電源404とを含むようにしてもよい。バイメタルサセプタタブ802の単一の条片を提供することにより、スマートサセプタアセンブリ100の構成を単純化することができる。
【0046】
図9は、それぞれが幅30mm、長さ120mm、厚さ6mmである2つの異なるサンプル用サセプタタブについて例示的な計算を行って得られた演算結果を示すグラフである。サンプル1のサセプタタブは、1つの金属要素、すなわち厚さ6mmのサセプタ材料(コバール)のみを含み、導体要素を含んでいない。サンプル2のサセプタタブは、厚さ3mmの(
図3に示すT
1)サセプタ素子(コバール)と、厚さ3mmの(
図3に示すT
2)導体素子(銅)とを有するバイメタルサセプタタブを含む。各サンプルに供給される励起電流及び周波数は、何れの場合においても同じであり(2キロヘルツ)、加熱速度は、サセプタ材料の比透磁率(relative permeability)が100である場合の加熱速度に正規化されている。レベリング温度は、比透磁率が1に近い領域で生じ、この領域においては、曲線が急である程、達成可能なレベリング温度付近の温度範囲が狭くなる。
図9に示すように、この領域における勾配は、サンプル1とサンプル2とでほぼ同じである。100の比透磁率では、サンプル2の加熱速度は8.12Wであり、純粋なサセプタ材料の加熱速度は、6.75Wであった。最大加熱速度であっても、サンプル1の加熱速度は、9.52Wであるのに対して、サンプル2の加熱速度は、9.92Wである。これは、サンプル2のバイメタル構成により、サンプル1よりも少ない電流励起で同等の加熱を行うことができるため、供給する電力を少なくしても同じ時間でレベリング温度に到達させることができることを示している。言い換えると、サンプル2は、同じ電力を供給した場合には、サンプル1よりも早くレベリング温度に到達することができる。
【0047】
サンプル2における銅層の厚みを3.0mmから1.5mmに減らした場合、100の比透磁率での加熱速度は8.01Wであり、この値は、銅の厚さが3mmであるサンプル2のバイメタルサセプタタブの場合の8.12Wと比較すると若干低減している。しかしながら、1の比透磁率での加熱は、2.02Wであった。また、一方で、サンプル2の厚さ3mmの銅の場合、加熱は、2.58Wであった。したがって、サセプタタブの銅層の厚みを利用して、レベリング温度で利用可能な加熱量を制御し、厚みが薄いほど加熱量が少なくなるようにすることができ、その際、サセプタタブ材料の質量が小さくなるため、より早くレベリング温度に到達することができる。ただし、銅層が薄い場合、導線が設けられたサセプタタブの中心から、当該サセプタタブの末端への伝導性熱伝達が低下する。
【0048】
図10に示すように、本開示によるバイメタルサセプタタブの加熱は、幅「W」(
図2)に対する深さ又は長さ「L」(
図3)を変更することにより、比透磁率が低い場合においても影響を受ける。
図10は、4つの異なるサンプルの加熱を示す。これらのサンプルの各々は、厚さ3mmのコバールサセプタ素子と厚さ3mmの銅導体素子とを有するバイメタルサセプタタブを含み、幅「W」が30mmであるが、長さ「L」は、それぞれ異なる。上述した影響は、長さが幅よりも短くなった場合に顕著となる。サンプル4の場合、高い比透磁率において、サンプル5~7と比較して加熱速度が大きく、比透磁率1において、他の場合と比較して加熱速度が小さい。幅以上の長さを有するサンプル5~7の場合、高い比透磁率における加熱は、本質的に同じであるが、低い比透磁率における加熱は、ばらつきが顕著である。
図9に示す加熱を約2.5Wで調べると、深さを120mmから10mmに変更することにより、関連する比透磁率を1から3に変更することができ、これは、多くのサセプタ材料においては、数度の温度と同等であるため、各サセプタ材料について利用可能なレベリング温度の範囲を拡げることができる。
【0049】
図4、5、及び、8に示す構造体は、実質的に全ての種類の製造品の形成中において、加熱処理を実行する際に使用することができる。いくつかの例には、限定するものではないが、航空宇宙用ビークル、軍用、商用、又は、私用の飛行機、再利用可能な宇宙船、及び、再突入システムが含まれる。本明細書において、「航空機」は、大気、部分真空、及び/又は、真空内で飛行可能な任意のビークルを指す。再度
図4を参照すると、物品102は、未硬化樹脂が予備含浸された複数の複合材プライ又は複合材シート(すなわち、プリプレグ)を含む複合材部品であってもよい。図示のように、スマートサセプタアセンブリ100、具体的には、サセプタ素子200と導体素子202とを含むサセプタタブ104のアレイは、物品102に隣接して配置されている。電源404によって導線400に電流が供給されると、複数のサセプタタブ104を誘導加熱する磁束場が生成される。サセプタタブ104のレベリング温度は、例えば、サセプタ素子200の質量及び/又は組成、導体素子202の質量及び/又は組成、及び、電源404によってサセプタタブ104に供給される電流などの、上述した要素に基づいて、所望温度に目標設定される。物品102がプリプレグである場合、レベリング温度は、プリプレグの未硬化樹脂を硬化させるように目標設定することもできるし、プリプレグの樹脂を硬化させない程度に加熱するように目標設定することもできる。サセプタタブ104からの熱は、加熱される物品102、及び、特定処理の所望の最終結果に応じて、所望の期間に亘って物品102に供給される。
【0050】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算であるが、具体例における数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も、これらの試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、これらに包含される全ての部分範囲を含むと理解されるべきである。例えば、「10未満」の範囲は、最小値0と最大値10との間(及び、これらを含む)の全ての部分範囲、すなわち、1~5の範囲など、0以上の最小値及び10以下の最大値を含む全ての部分範囲を含みうる。場合によっては、パラメータとして記載した数値は負の値をとることもある。その場合、「10未満」と記載した範囲の例示的な値として、-1、-2、-3、-10、-20、-30などの負の値を想定することができる。
【0051】
本開示は1つ以上の実施形態を用いて説明されているが、添付の請求の範囲の思想及び範囲から逸脱することなく、説明された例に対して変更及び/又は修正を加えることができる。例えば、処理は、一連の行為又は事象として説明されているが、本開示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されない。いくつかの行為は、異なる順序で起こる場合、及び/又は、本明細書に記載されたものとは異なる他の行為又は事象と同時に起こる場合がある。また、本開示の1つ以上の態様や実施形態に従って方法を実施するのに、全ての処理工程が必要でない場合もある。なお、構成要素及び/又は処理工程を追加したり、既存の構成要素及び/又は処理工程を排除又は変更したりしてもよい。さらに、本明細書で説明する行為のうちの1つ又は複数は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行することができる。さらに、詳細な説明及び請求の範囲において、「含み」、「含む」、「有し」、「有する」、「備える」等、種々の表現が用いられているが、これらは、他の要素が排除されず、包括的に具備されることを意図したものである。「少なくとも1つ」なる表現は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択されうることを意味する。本明細書において、「のうちの1つ又は複数」なる表現が、例えばA及びBからなる項目のリストについて用いられる場合、当該表現は、Aのみ、Bのみ、或いは、A及びBであることを意味する。さらに、本明細書の記載及び請求の範囲において、一方が他方の上にある2つの材料について「上に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、材料間の少なくとも一部の接触を意味しており、「上方に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、これらの材料が互いに近接して配置されてはいるが、必ずしも接触するとは限らず、間に介在する1つ以上の追加の材料が配置されている可能性があることを意味する。本明細書においては、「上」及び「上方」の何れも方向性を示すものではない。「コンフォーマル(conformal)」なる用語は、下方に設けられた材料の角度を維持することができるコーティング材料を表す。「約」なる用語は、列挙された値が、説明した実施形態の処理や構造体に適合する範囲で変更可能であることを示している。最後に、「例示的な」とは、その説明が理想的であることを意味するのではなく、単なる一例として用いられていることを示している。本明細書及び本開示の実施に鑑みれば、本開示の他の実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例の記載は、あくまでも例示であり、本開示の真の範囲及び思想は、添付の請求の範囲に示される。
【0052】
本願で用いられる相対位置の用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面(conventional plane)又は作業面に平行な平面に基づいて規定される。本願で用いられる「水平」又は「横方向」なる用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面又は作業面に平行な平面として規定される。「垂直」なる用語は、水平方向に対して直交する方向を指す。「上」、「側(例えば、「側壁」)」、「高」、「低」、「上方」、「頂」、及び、「下側」などの用語は、ワークピースの配向に関わらず、ワークピースの標準面又は作業面をワークピースの頂面として、当該頂面に対して規定される。