(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】エンコーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20240206BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01D5/244 E
G01D5/245 W
(21)【出願番号】P 2019139596
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】大友 佑太
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014799(JP,A)
【文献】特開2016-124094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と連動して移動する磁界発生部と、
電源から電力が供給されている期間中、前記移動体が移動した際に変化する前記磁界発生部の第1磁界に基づいて、前記移動体の一定間隔毎の移動回数の累積数である累積移動回数をカウントするカウント部と、前記移動体の角度位置を算出する角度位置演算部と、を備える第1エンコーダと、
前記電源からの電力の供給が停止した際の前記累積移動回数を記憶しておくメモリと、
前記移動体が移動した際に前記磁界発生部の第2磁界の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子、前記パルス信号から駆動電圧を生成する電源回路、および前記駆動電圧と前記パルス信号とを利用して、前記移動体の前記移動回数をカウントするとともに、カウント結果に基づいて、前記電源からの電力の供給が停止している期間中、前記メモリに記憶されている前記累積移動回数を更新するカウント処理部を備えた第2エンコーダと、
を有し、
前記電源からの電力の供給が停止する際、前記第1エンコーダに駆動電圧が供給される所定の時間のバックアップ時間が設定されており、
前記第1エンコーダは、前記電源からの電力の供給が停止した後の前記バックアップ時間において、
前記メモリが記憶している前記累積移動回数を、前記カウント部で算出した前記累積移動回数に書き換えることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンコーダ装置において、
前記移動体は、回転部材であり、
前記第1エンコーダおよび前記第2エンコーダはロータリエンコーダであり、
前記一定間隔毎の移動回数は、前記回転部材の回転数であり、
前記累積移動回数は、前記回転部材の累積回転数であることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンコーダ装置において、
前記磁気素子は、ウィーガンドワイヤであることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記第1エンコーダは、前記電源から電力が供給されている期間中、前記メモリに記憶
されている前記累積移動回数を更新することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記電源から電力が供給されている期間中、前記第2エンコーダによる前記メモリの前記累積移動回数の更新を停止させ、前記電源からの電力の供給が停止している期間中、前記第2エンコーダによる前記メモリの前記累積移動回数の更新を行わせる切替部を有することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記磁界発生部は、前記第1磁界を発生させる第1磁石と、前記第2磁界を発生させる第2磁石と、を有することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記磁界発生部は、前記第1磁界および前記第2磁界を発生させる共通の磁石を有することを特徴とするエンコーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動を検出するエンコーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット等には、移動体の移動に伴って変動する磁石の磁界に基づいて移動体の移動回数をカウントするエンコーダが設けられている。例えば、エンコーダは、ロボット等に搭載されている駆動用のモータの回転軸(回転部材)と一体に回転する磁石の磁界を検出して、回転軸の累積回転数と絶対角度位置とを検出する(特許文献1参照)。かかるエンコーダは、電源からの電力の供給が停止している期間中、回転軸の回転の検出が不能であるため、電源からの電力の供給が停止した時点での回転軸の累積回転数をメモリに記憶させておく一方、バックアップ用のバッテリによって駆動される磁気素子によって、電源からの電力の供給が停止している期間中に回転軸が外力によって回転した際の回転数をカウントし、メモリに記憶されている累積回転数を更新する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バックアップ用のバッテリを利用した場合、バッテリが消耗していると、電源からの電力の供給が停止している期間中の回転軸の回転数を監視できず、電源からの電力の供給が再開された後、多回転絶対位置等を検出することができないという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、バックアップ用のバッテリを利用しなくても、電源からの電力の供給が停止している期間中の移動体の移動回数を検出することのできるエンコーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明を適用したエンコーダ装置は、移動体と連動して移動する磁界発生部と、電源から電力が供給されている期間中、前記移動体が移動した際に変化する前記磁界発生部の第1磁界に基づいて、前記移動体の一定間隔毎の移動回数の累積数である累積移動回数をカウントするカウント部と、前記移動体の角度位置を算出する角度位置演算部と、を備える第1エンコーダと、前記電源からの電力の供給が停止した際の前記累積移動回数を記憶しておくメモリと、前記移動体が移動した際に前記磁界発生部の第2磁界の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子、前記パルス信号から駆動電
圧を生成する電源回路、および前記駆動電圧と前記パルス信号とを利用して、前記移動体の前記移動回数をカウントするとともに、カウント結果に基づいて、前記電源からの電力の供給が停止している期間中、前記メモリに記憶されている前記累積移動回数を更新するカウント処理部を備えた第2エンコーダと、を有し、前記電源からの電力の供給が停止する際、前記第1エンコーダに駆動電圧が供給される所定の時間のバックアップ時間が設定されており、前記第1エンコーダは、前記電源からの電力の供給が停止した後の前記バックアップ時間において、前記メモリが記憶している前記累積移動回数を、前記カウント部で算出した前記累積移動回数に書き換えることを特徴とする。
【0007】
本発明において、第1エンコーダは、電源から電力が供給されている期間中、移動体の累積移動回数をカウントする。また、移動体の移動に対応するパルス信号を出力する磁気素子と、パルス信号から駆動電圧を生成する電源回路とを備えた第2エンコーダが設けられているため、バックアップ用のバッテリを設けなくても、磁気素子から出力されるパルス信号、および電源回路で生成された駆動電圧によって、移動体の移動回数をカウント処理部でカウントでき、メモリに記憶されている累積移動回数を更新することができる。
【0008】
本発明において、前記移動体は、回転部材であり、前記第1エンコーダおよび前記第2エンコーダはロータリエンコーダであり、前記一定間隔毎の移動回数は、前記回転部材の回転数であり、前記累積移動回数は、前記回転部材の累積回転数である態様を採用することができる。
【0009】
本発明において、前記磁気素子は、ウィーガンドワイヤである態様を採用することができる。かかる態様によれば、効率よく発電を行うことができるとともに、移動体の移動に伴うパルス信号を出力するのに適している。
【0010】
本発明において、前記第1エンコーダは、前記電源から電力が供給されている期間中、前記メモリに記憶されている前記累積移動回数を更新する態様を採用することができる。かかる態様によれば、電源からの電力の供給が停止した際の累積移動回数をメモリに確実に記憶させることができる。
【0011】
本発明において、前記電源から電力が供給されている期間中、前記第2エンコーダによる前記メモリの前記累積移動回数の更新を停止させ、前記電源からの電力の供給が停止している期間中、前記第2エンコーダによる前記メモリの前記累積移動回数の更新を行わせる切替部を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、電源から電力が供給されている期間中、磁気素子から出力されるパルス信号に基づいて移動体の移動回数をカウントした結果によるメモリの累積移動回数の更新が行われない。このため、メモリに書き換え回数の上限が設定されている場合でも、書き換え回数が上限に到達しにくい。
【0012】
本発明において、前記磁界発生部は、前記第1磁界を発生させる第1磁石と、前記第2磁界を発生させる第2磁石と、を有する態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記磁界発生部は、前記第1磁界および前記第2磁界を発生させる共通の磁石を有する態様を採用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、第1エンコーダは、電源から電力が供給されている期間中、移動体の累積移動回数をカウントする。また、移動体の移動に対応するパルス信号を出力する磁気素子と、パルス信号から駆動電圧を生成する電源回路とを備えた第2エンコーダが設けられているため、バックアップ用のバッテリを設けなくても、磁気素子から出力されるパルス信号、および電源回路で生成された駆動電圧によって、移動体の移動回数をカウント処理部でカウントでき、メモリに記憶されている累積移動回数を更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係るエンコーダ装置の磁界発生部等の構成を模式的に示す説明図。
【
図2】本発明の実施形態1に係るエンコーダ装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】
図1に示す磁気素子から出力されるパルス信号の説明図。
【
図4】本発明の実施形態2に係るエンコーダ装置の説明図。
【
図5】本発明の実施形態3に係るエンコーダ装置の説明図。
【
図6】本発明の実施形態4に係るエンコーダ装置の説明図。
【
図7】本発明の実施形態5に係るエンコーダ装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明を適用したエンコーダ装置を説明する。
【0017】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るエンコーダ装置の磁界発生部等の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、本発明の実施形態1に係るエンコーダ装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3は、
図1に示す磁気素子60から出力されるパルス信号の説明図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、本形態のエンコーダ装置1は、電源30から電力が供給されている期間中、移動体10の一定間隔毎の移動回数、および前記間隔内における位置からなる絶対位置を検出する第1エンコーダ40と、電源30からの電力の供給の有無にかかわらず、移動体10の一定間隔毎の移動回数を累積した累積数である累積移動回数をカウントして、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等の不揮発性メモリからなるメモリ85に記憶しておく第2エンコーダ50とを有している。
【0019】
本形態において、移動体10は、モータ11の回転軸等の回転部材15であり、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50はロータリエンコーダ41、51である。従って、移動体10の一定間隔毎の移動回数は、回転部材15の回転数であり、間隔内における位置は、回転部材15の角度位置であり、移動体10の累積移動回数は、回転部材15の累積回転数であり、移動体10の絶対位置は、回転部材15の回転数および角度位置から算出された多回転絶対角度位置である。
【0020】
本形態において、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50は磁気式のロータリエンコーダである。従って、第1エンコーダ40は第1磁気回路部401を有し、第2エンコーダ50は第2磁気回路部501を有している。より具体的には、エンコーダ装置1は、回転部材15と一体に回転する磁界発生部20を有しており、磁界発生部20は、第1エンコーダ40において回転部材15の回転数をカウントするための第1磁界を発生させる第1磁石26と、第2エンコーダ50において回転部材15の回転数をカウントするための第2磁界を発生させる第2磁石27とを備えており、第1磁石26および第2磁石27はいずれも、回転部材15に同軸状に保持されている。従って、磁界発生部20(第1磁石26および第2磁石27)は、回転部材15とともに軸線L周りに一体に回転する。第1磁石26は、例えば、軸線L周りにS極とN極が1極ずつ設けられた円板状磁石である。第2磁石27は、例えば、軸線Lの延在方向に軸線を向けた円柱状磁石であり、軸線Lの延在方向の一方側部分271および軸線Lの延在方向の他方側部分272には、軸線L周りにS極とN極が2極ずつ設けられている。但し、軸線Lの延在方向の一方側部分271と軸線Lの延在方向の他方側部分272とでは、軸線Lの延在方向で隣り合う部分が異なる極に着磁されている。
【0021】
第1エンコーダ40は、電源30から電力が供給されている期間中、回転部材15が回転した際に変化する第1磁石26の磁界(第1磁界)の変化を検出する磁気センサ46と、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の回転等を検出するデータ処理部42とを有している。本形態において、磁気センサ46は、磁気抵抗パターン460を備えた磁気抵抗素子からなる。データ処理部42は、予めメモリ等に格納されたプログラムによって動作するCPU等を備えており、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の回転数をカウントするカウント部47と、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の角度位置を算出する角度位置演算部48とを有している。また、データ処理部42は、上位の制御装置(図示せず)からの要求に基づいて、回転部材15の累積回転数、および回転部材15の角度位置を出力する。従って、上位の制御装置では、多回転絶対位置を算出することができる。
【0022】
第2エンコーダ50は、回転部材15が回転した際に第2磁石27の磁界(第2磁界)の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子60と、磁気素子60から出力されたパ
ルス信号から駆動電圧Vddを生成する電源回路70と、電源回路70によって生成された駆動電圧Vdd、および磁気素子60から出力されたパルス信号を利用して、回転部材15の累積回転数をカウントするとともに、カウント値をメモリ85に記憶されるカウント処理部80とを有している。従って、第2エンコーダ50は、電源30からの電力の有無にかかわらず、回転部材15の累積回転数をカウントすることができる。カウント処理部80は、予めメモリ等に格納されたプログラムによって動作するCPU等を備える。
【0023】
電源回路70は、磁気素子60から出力されるパルス信号を整流する整流回路71と、平滑用のコンデンサ72とを有している。カウント処理部80は、磁気素子60から出力されるパルス信号から回転部材15の回転に対応するパルスを判定する判定回路81と、判定回路81で判定されたパルス数(回転数)をカウントしてメモリ85に記憶されている累積移動回数を更新する計数回路82とを有するとともに、メモリ85を含んで構成されている。
【0024】
ここで、磁気素子60は、第2磁石27の近傍において周方向で、電気角で90°離間する位置に配置された2つのウィーガンドワイヤ61、62からなり、大バルクハウゼン効果を発揮する。ウィーガンドワイヤ61、62は、強磁性ワイヤ66にコイル67が巻かれた素子であり、例えば、コイル67で直流磁界(バイアス磁界)を与えておき、外部から反対向きの磁界を与えると磁束が反転してコイル67にパルス電圧が発生する。従って、電源回路70において、コイル67からの出力を整流回路71によって整流するとともに、コンデンサ72で平滑すると、直流の駆動電圧Vddを生成して、カウント処理部80に供給することができる。それ故、第2エンコーダ50ではバックアップ用のバッテリを必要としない。
【0025】
また、2つのウィーガンドワイヤ61、62は各々、
図3に示すように、出力するパルスの位置が、回転部材15の角度位置と同期する2箇所に配置されている。従って、電源回路70は、直流の駆動電圧Vddをカウント処理部80に安定して供給することができるとともに、ウィーガンドワイヤ61、62から出力するパルスを判定回路81で判定すれば、回転部材15の回転数を検出することができる。
【0026】
本形態において、メモリ85は、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50において共通のメモリとして用いられる。従って、第1エンコーダ40は、シリアル通信によって、カウント部47が回転部材15の回転数をカウントした結果をカウント処理部80の計数回路82を介してメモリ85に出力する。それ故、メモリ85では、電源30から電力が供給されている期間中、第1エンコーダ40のカウント部47によるカウント結果に基づいて回転部材15の累積回転数が更新される。また、電源30からの電力の供給の有無にかかわらず、第2エンコーダ50のカウント処理部80では回転部材15の回転数がカウントされるので、電源30からの電力の供給が停止した場合であっても、メモリ85には回転部材15の累積回転数が記憶されることになる。また、第1エンコーダ40は、電源30からの電力の供給が再開した際、メモリ85から累積カウント数を読み出す。
【0027】
ここで、磁気素子60は、第2磁石27の近傍において周方向で、電気角で90°離間する位置に配置された2つのウィーガンドワイヤ61、62からなり、大バルクハウゼン効果を発揮する。ウィーガンドワイヤ61、62は、強磁性ワイヤ66にコイル67が巻かれた素子であり、例えば、コイル67で直流磁界(バイアス磁界)を与えておき、外部から反対向きの磁界を与えると磁束が反転してコイル67にパルス電圧が発生する。従って、電源回路70において、コイル67からの出力を整流回路71によって整流するとともに、コンデンサ72で平滑すると、直流の駆動電圧Vddを生成して、カウント処理部80に供給することができる。
【0028】
また、2つのウィーガンドワイヤ61、62は各々、
図3に示すように、出力するパルスの位置が、回転部材15の角度位置と同期する2箇所に配置されている。従って、電源回路70は、直流の駆動電圧Vddをカウント処理部80に安定して供給することができるとともに、ウィーガンドワイヤ61、62から出力するパルスを判定回路81で判定すれば、回転部材15の回転数を検出することができる。
【0029】
(動作)
本形態のエンコーダ装置1において、電源30からの電力の供給が停止している期間中、第2エンコーダ50は、回転部材15の回転を監視し、累積回転数のカウント値をメモリ85に記憶させる。従って、電源30からの電力の供給が停止している期間中、外力によって回転部材15が回転した場合には、かかる回転も考慮した実際の累積回転数のカウント値がメモリ85に記憶される。
【0030】
次に、電源30からモータ11および第1エンコーダ40に対して電力の供給が開始されると、回転部材15は、基準となる角度位置に戻されてから駆動される。また、電源30からの電力の供給が開始されると、第1エンコーダ40のデータ処理部42は、シリアル通信によって、メモリ85から累積回転数のカウント値を読み出す。
【0031】
そして、電源30からの電力の供給が開始された以降、モータ11が作動して回転部材15が回転すると、第1エンコーダ40において、カウント部47は、メモリ85から読み出された累積回転数のカウント値と、現時点までに磁気センサ46によってカウントされた回転部材15の回転数のカウント値とを加算した累積回転数を算出する。また、角度位置演算部48は、回転部材15の角度位置を算出する。従って、データ処理部42は、現時点における回転部材15の多回転絶対角度位置に関する情報を上位の制御装置に出力することができる。
【0032】
一方、第2エンコーダ50において、カウント処理部80は、磁気素子60から出力されたパルス信号に基づいて、回転部材15の累積回転数のカウントを継続する。本形態においては、電源30からの電力の供給が開始された以降、予め設定されたタイミングで、メモリ85に対して、第2エンコーダ50でのカウント値が更新される。
【0033】
その後、電源30からの電力の供給が停止したとする。本形態では、電源30からの電力の供給が停止する際、所定の時間、第1エンコーダ40に駆動電圧が供給されるバックアップ時間が設定されている。従って、データ処理部42は、電源30からの電力の供給が停止した後のバックアップ時間において、メモリ85が記憶している累積回転数を、カウント部47で算出した累積回転数に書き換えることができる。また、バックアップ時間が設定されていない場合でも、メモリ85には、第2エンコーダ50でカウントした累積回転数が記憶されている。
【0034】
(本形態の主な効果)
本形態のエンコーダ装置1において、第1エンコーダ40は、電源30から電力が供給されている期間中、回転部材15が回転した際に変化する磁界発生部20の第1磁界に基づいて回転部材15の累積回転数をカウントする。また、本形態では、回転部材15が回転した際に磁界発生部20の第2磁界の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子60と、パルス信号から駆動電圧Vddを生成する電源回路70とが設けられているため、磁気素子60から出力されるパルス信号、および電源回路70で生成された駆動電圧Vddによって、カウント処理部80を作動させることができる。従って、第1エンコーダ40、および第2エンコーダ50でカウントされた回転部材15の累積回転数をメモリ85に記憶させておくことができるとともに、メモリ85に記憶されている累積回転数を更新することができる。
【0035】
また、電源30からの電力の供給が停止した際、メモリ85には、電源30からの電力の供給が停止した時点での累積回転数が記憶されることになる。また、磁気素子60から出力されるパルス信号、および電源回路70で生成された駆動電圧Vddによって、カウント処理部80を作動させることができるため、電源30からの電力の供給が停止している期間中であっても、カウント処理部80を作動させることができる。従って、電源30からの電力の供給が停止している期間中、外力によって回転部材15が回転した場合でも、回転部材15の回転がカウント処理部80で検出され、メモリ85に記憶されている累積回転数が更新される。それ故、電源30からの電力の供給が再開された際、第1エンコーダ40がメモリ85に記憶されている累積回転数を読み出せば、電源30からの電力の供給が再開した時点での累積回転数を得ることができる。また、電源30からの電力の供給が再開した際、回転部材15は、基準となる角度位置に戻されてから駆動される。従って、電源30からの電力の供給が再開した以降、回転部材15の多回転絶対角度位置を出力することができる。
【0036】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2に係るエンコーダ装置1の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本形態のエンコーダ装置1には、電源30から電力が供給されている期間中、第2エンコーダ50の磁気素子60から出力されるパルス信号に基づいて回転部材15の回転数をカウントした結果によるメモリ85の累積回転数の更新を停止させる切替部90が設けられている。但し、切替部90は、電源30から電力が供給されている期間中、第2エンコーダ50がカウントした結果によるメモリ85の累積回転数の更新、および第1エンコーダ40がカウントした結果によるメモリ85の累積回転数の更新を行わせる。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0038】
かかる態様によれば、電源30から電力が供給されている期間中、磁気素子60から出力されるパルス信号に基づいて回転部材15の回転数をカウントした結果によるメモリ85の累積回転数の更新が行われない。このため、メモリ85に書き換え回数の上限が設定されている場合でも、メモリ85の書き換え回数が上限に到達しにくい。従って、メモリ85を長期間にわたって利用することができる。
【0039】
[実施形態3]
図5は、本発明の実施形態3に係るエンコーダ装置1の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、本形態のエンコーダ装置1では、磁界発生部20には1つの磁石28のみが設けられており、共通の磁石28が、磁気センサ46が検出する第1磁界と、磁気素子60が検出する第2磁界とを発生させる。より具体的には、磁石28は、軸線L周りにS極とN極が1極ずつ設けられた円板状磁石であり、磁気センサ46および磁気素子60は、磁石28に対して軸線Lの延在方向で対向している。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0041】
かかる態様によれば、1つの磁石28で磁界発生部20を構成することができるので、構成の簡素化や磁界発生部20が占有する空間を狭くすることができる。
【0042】
[実施形態4]
図6は、本発明の実施形態4に係るエンコーダ装置1の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。実施形態1では、第2磁石27に径方向外側で対向するように、磁気素子60が配置されていたが、
図6に示すように、第2磁石27に軸線L方向で対向するように、磁気素子60を配置してもよい。
【0043】
[実施形態5]
図7は、本発明の実施形態5に係るエンコーダ装置1の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。また、第2磁石27に軸線L方向で対向するように、磁気素子60を配置した構成において、第2磁石27の径方向内側部分276および径方向外側部分277を各々、例えば、周方向でS極とN極とを交互に配置し、径方向内側部分276と径方向外側部分277とにおいて径方向で異なる極が隣接した態様を採用してもよい。
【0044】
[実施形態6]
上記実施形態では、電源30から電力が供給されている期間中に第1エンコーダ40でカウントされた回転部材15の累積回転数の更新をメモリ85に対して行う態様であったが、電源30から電力が供給されている期間中は、第1エンコーダ40でカウントされた回転部材15の累積回転数の更新をメモリ85で行わない態様であってもよい。すなわち、メモリ85に対しては、電源30からの電力の供給が停止している期間中に第2エンコーダ50でカウントされた回転部材15の累積回転数の更新、および電源30からの電力の供給が停止した際に第1エンコーダ40でカウントされていた回転部材15の累積回転数の更新が行われ、電源30から電力が供給されている期間中に第1エンコーダ40でカウントされた回転部材15の累積回転数の更新を行わない態様であってもよい。かかる態様であっても、電源30からの電力の供給が再開された際、メモリ85から累積回転数を読み出すことができるので、第1エンコーダ40において多回転角度位置に関する情報を得ることができる。
【0045】
[他の実施形態]
上記実施形態では、第1エンコーダ40の磁気センサ46として磁気抵抗素子を用いたが、磁気センサ46として、1対のホール素子を用いた態様や、一対のホール素子と磁気抵抗素子とを用いた態様であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50が各々、ロータリエンコーダ41、51であったが、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50が各々、リニアエンコーダに本発明を適用してもよい。この場合、ロータリエンコーダ41の場合における「回転部材15の累積回転数」等は、「移動体10の累積移動回数」等に置き換えられる。
【符号の説明】
【0047】
1…エンコーダ装置、10…移動体、15…回転部材、20…磁界発生部、26…第1磁石、27…第2磁石、28…磁石、30…電源、40…第1エンコーダ、41…ロータリエンコーダ、42…データ処理部、46…磁気センサ、47…カウント部、48…角度位置演算部、50…第2エンコーダ、60…磁気素子、61、62…ウィーガンドワイヤ、66…強磁性ワイヤ、67…コイル、70…電源回路、71…整流回路、72…コンデンサ、80…カウント処理部、81…判定回路、85…メモリ、90…切替部、401…第1磁気回路部、501…第2磁気回路部、460…磁気抵抗パターン