(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ベルト駆動システム
(51)【国際特許分類】
F16H 7/02 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
F16H7/02 Z
F16H7/02 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019191629
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2021-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-05
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ベルベリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ツィーグラー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ツエルク
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム、モータ(40)に接続される駆動軸(13)、制御装置(30)、従動軸(14)、前記従動軸(14)および前記駆動軸(13)のそれぞれに接続される2つのプーリ(12)、ならびにベルト(10)を備える、ベルト(10)を駆動するためのベルト駆動システムであって、
前記フレームは、前記ベルト(10)が前記プーリ(12)に取り付けられるように、前記駆動軸(13)および前記従動軸(14)を支持し、
1つの信号素子(16)が、前記ベルト(10)と共に駆動するように、前記ベルト(10)に取り付けられ、
少なくとも2つの検出素子(18、20)が、前記信号素子(16)が、通過することにより信号を生成するために、前記検出素子(18、20)を通過するように、前記フレームに取り付けられ、
前記検出素子(18、20)は、前記制御装置(30)に接続され、
前記制御装置(30)は、前記ベルト駆動システムの開始動作において、信号素子が、パーク位置に対応する、前記ベルトの動作の空間的基準点を決定する空間的ゼロ点を固定するために、前記少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子(18)にて信号を生成するまで、前記ベルト(10)が移動するように前記モータ(40)を制御するように構成され、
前記制御装置(30)は、通常動作中に前記ベルト駆動システムの前記空間的ゼロ点を確認するために、第2検出素子(20)の前記信号を受信し使用するように構成され、
前記制御装置(30)は、前記第2検出素子(20)の前記信号が予測される空間的ゼロ点に対し差異を示す場合、前記空間的ゼロ点を自動的に修正するように構成されている、ベルト駆動システム。
【請求項2】
前記制御装置(30)は、前記空間的ゼロ点の逸脱の回数をカウントし、前記回数が閾値を超えると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、請求項1記載のベルト駆動システム。
【請求項3】
前記制御装置(30)は、逸脱した絶対距離を判定し、前記絶対距離を別個に合計し、逸脱の合計が特定の閾値を超えたときに、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、請求項1または2記載のベルト駆動システム。
【請求項4】
前記制御装置(30)は、逸脱の回数と、逸脱の距離と、逸脱の発生間の時間とを判定し、特定の距離を有する逸脱の発生間の時間が閾値を下回ると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のベルト駆動システム。
【請求項5】
前記ベルト駆動システムがデータベースを備え、
前記データベースは、逸脱の発生の回数、前記逸脱の発生間の時間および前記逸脱の距離を記憶するために前記制御装置(30)に接続され、
前記ベルト駆動システムは、前記ベルト駆動システムのパラメータを前記データベースに追加するように構成されるインターフェースをさらに備え、
前記制御装置(30)は、前記データベースに記憶されたデータを考慮して最適なメンテナンス時点を計算するように構成されている、請求項4記載のベルト駆動システム。
【請求項6】
前記ベルト駆動システムのパラメータは、軸受け、軸、フレーム要素、および/または、前記プーリから外され、摩耗、弾性、破断伸び、引張強度からなるリストのパラメータのなかの1つまたは複数に関して調査された後の使用済みベルトのパラメータである、請求項5記載のベルト駆動システム。
【請求項7】
前記制御装置(30)は、前記ベルト(10)の特定の損傷を、前記逸脱の発生、前記逸脱の発生間の時間および前記逸脱の距離の特定の値に割り当て、ヒューマンインターフェース装置に、いずれの損傷が予期されるかのメッセージを送信するように構成されている、請求項5または6に記載のベルト駆動システム。
【請求項8】
前記ベルト(10)は、歯付きベルトであり、前記プーリ(12)は、歯車である、請求項1~7のいずれか1項に記載のベルト駆動システム。
【請求項9】
前記信号素子(16)は、光学素子、磁気素子、誘導性素子、容量素子または機械要素であり、前記少なくとも2つの検出素子(18、20)は、それぞれ光学検出器、磁気検出器、誘導検出器、容量検出器、またはメカニカル検出器である、請求項1~8のいずれか1項に記載のベルト駆動システム。
【請求項10】
前記信号素子(16)は、光学的に不透明なシートであり、前記検出素子は、光電バリアであり、前記信号素子(16)および前記検出素子は、通過する際に、前記シートが前記光電バリアの光線を遮断するように互いに対し配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載のベルト駆動システム。
【請求項11】
前記光学的に不透明なシートは凹部を備え、前記信号素子(16)が前記検出素子(18、20)を通過する際に、前記光電バリアの光バリアは、前記凹部を通過し得る、請求項10記載のベルト駆動システム(1)。
【請求項12】
前記第2検出素子(20)は、前記信号素子が、前記ベルト(10)の開始から停止までの、予測されるすべての移動の少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%の間に、前記第2検出素子を通過するように、前記信号素子に対し配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載のベルト駆動システム(1)。
【請求項13】
ベルト駆動システム(1)を監視する方法であって、前記ベルト駆動システム(1)は、フレーム、モータに接続される駆動軸、制御装置、従動軸、前記従動軸および前記駆動軸のそれぞれに接続される2つのプーリ、ならびにベルトを備え、
前記フレームは、前記ベルトが前記プーリに取り付けられるように、前記駆動軸および前記従動軸を支持し、
1つの信号素子が、前記ベルトと共に駆動するように、前記ベルトに取り付けられ、
少なくとも2つの検出素子が、前記信号素子が、通過することにより信号を生成するために、前記検出素子を通過するように、前記フレームに取り付けられ、
前記検出素子は、前記制御装置に接続され、
前記制御装置は、前記ベルト駆動システム(1)の開始動作において、信号素子が、パーク位置に対応する、前記ベルトの動作の空間的基準点を決定する空間的ゼロ点を固定するために、前記少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子(18)にて信号を生成するまで、前記ベルト(10)が移動するように前記モータ(40)を制御し、
前記
少なくとも2つの検出素子のうちの第2検出素子の前記信号は、通常動作中に前記ベルト駆動システムの前記空間的ゼロ点を確認するために使用され、
前記制御装置は、前記第2検出素子の前記信号が、予測される前記空間的ゼロ点に対し差異を示す場合、前記空間的ゼロ点を自動的に修正し、
通常動作中、前記信号素子は、前記第1検出素子を通過しない、
方法。
【請求項14】
前記制御装置は、逸脱の回数と、逸脱の距離と、逸脱の発生間の時間とを判定し、特定の距離を有する逸脱の発生間の時間が閾値を下回ると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、請求項13記載の方法。
【請求項15】
フレーム、モータ(40)に接続される駆動軸(13)、制御装置(30)、従動軸(14)、前記従動軸(14)および前記駆動軸(13)のそれぞれに接続される2つのプーリ(12)、ならびにベルト(10)を備える、ベルト(10)を駆動するためのベルト駆動システムであって、
前記フレームは、前記ベルト(10)が前記プーリ(12)に取り付けられるように、前記駆動軸(13)および前記従動軸(14)を支持し、
1つの信号素子(16)が、前記ベルト(10)と共に駆動するように、前記ベルト(10)に取り付けられ、
少なくとも2つの検出素子(18、20)が、前記信号素子(16)が、通過することにより信号を生成するために、前記検出素子(18、20)を通過するように、前記フレームに取り付けられ、
前記検出素子(18、20)は、前記制御装置(30)に接続され、
前記制御装置(30)は、前記ベルト駆動システムの開始動作において、信号素子が、パーク位置に対応する、前記ベルトの動作の空間的基準点を決定する空間的ゼロ点を固定するために、前記少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子(18)にて信号を生成するまで、前記ベルト(10)が移動するように前記モータ(40)を制御するように構成され、
前記制御装置(30)は、通常動作中に前記ベルト駆動システムの前記空間的ゼロ点を確認するために、第2検出素子(20)の前記信号を受信し使用するように構成され、
前記制御装置(30)は、前記空間的ゼロ点の逸脱の回数をカウントし、前記回数が閾値を超えると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、ベルト駆動システム。
【請求項16】
フレーム、モータ(40)に接続される駆動軸(13)、制御装置(30)、従動軸(14)、前記従動軸(14)および前記駆動軸(13)のそれぞれに接続される2つのプーリ(12)、ならびにベルト(10)を備える、ベルト(10)を駆動するためのベルト駆動システムであって、
前記フレームは、前記ベルト(10)が前記プーリ(12)に取り付けられるように、前記駆動軸(13)および前記従動軸(14)を支持し、
1つの信号素子(16)が、前記ベルト(10)と共に駆動するように、前記ベルト(10)に取り付けられ、
少なくとも2つの検出素子(18、20)が、前記信号素子(16)が、通過することにより信号を生成するために、前記検出素子(18、20)を通過するように、前記フレームに取り付けられ、
前記検出素子(18、20)は、前記制御装置(30)に接続され、
前記制御装置(30)は、前記ベルト駆動システムの開始動作において、信号素子が、パーク位置に対応する、前記ベルトの動作の空間的基準点を決定する空間的ゼロ点を固定するために、前記少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子(18)にて信号を生成するまで、前記ベルト(10)が移動するように前記モータ(40)を制御するように構成され、
前記制御装置(30)は、通常動作中に前記ベルト駆動システムの前記空間的ゼロ点を確認するために、第2検出素子(20)の前記信号を受信し使用するように構成され、
前記制御装置(30)は、逸脱の回数と、逸脱の距離と、逸脱の発生間の時間とを判定し、特定の距離を有する逸脱の発生間の時間が閾値を下回ると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成されている、ベルト駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ベルト駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
装置を、または装置もしくはツールのための保持部をベルト上で搬送するため、またはマニピュレータの軸を駆動するためのベルト駆動システムが、当業界で周知である。
【0003】
特許文献1は、それぞれマークが備えられたベルトおよびプーリを備えるベルトドライブを開示している。ベルトおよびプーリは、ベルトがプーリの周りを回転するときに、プーリとベルトのマークがトリガ位置にて正反対となるように、互いに対し位置決めされる。トリガ位置は、監視装置により検出される。マークがトリガ位置にある場合、監視装置は、信号を発する。特定の最近の期間中にトリガされた信号の数が検出される。最近の期間中にベルトまたはプーリがさらされる負荷は、ベルトの回転数に対応し、関連する影響変数を考慮した、トリガされた信号の数に基いて判定される。
【0004】
特許文献2は、ベルトドライブマシン内、特に農業機械のベルトドライブ内の駆動ベルトを監視する方法を開示しており、機械に関連する記録装置に1つまたは複数のセンサ、試験装置またはピックアップ装置が設けられ、それによって、機械、ベルトドライブの動作状態および/またはベルトドライブ内部の駆動ベルトの動作状態、もしくは物理的、幾何学的状態を表す、測定データが収集される。
【0005】
特許文献3は、物品のコンベヤのための監視システムを開示している。物品のコンベヤは、静止部分および少なくとも1つのそれぞれの無端搬送チェーンを備える。システムは、搬送チェーン上に位置する参照要素、静止部分と一体化される第1センサおよび静止部分と一体化される第2センサを含む。システムは、第1および第2センサの信号に基づいて、静止部分に対する搬送チェーン移動速度、およびチェーンの長さを判定するように構成される計算手段をさらに備える。
【0006】
特許文献4は、駆動システムと、駆動システムに接続された駆動プーリと、フリーホイールプーリと、プーリに取り付けられるベルトとを有する可動体のための直線運動装置を開示している。ベルトは、測定要素を含む。可動体は、ベルトに接続されている。少なくとも1つの測定装置が、可動体の位置を監視するために、測定要素を記録する。
【0007】
特許文献5は、ベルトドライブのための監視装置を開示している。ベルトドライブは、無端ベルトを用いてモータのトルクを従動軸へと伝動する。ベルトは、その長手方向に沿って、互いに対し等距離である走査可能マークを備える。2つの走査装置が、走査可能マークを走査する。信号評価システムが、ベルトの速度、および2つの走査装置の距離に応じて、ベルトの伸びを判定するために、2つの走査装置の信号の時間関係を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/177883号
【文献】国際公開第2018/059755号
【文献】国際公開第2013/113764号
【文献】独国特許出願公開第102004041411号明細書
【文献】独国特許出願公開第3904017号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、使いやすく、信頼できるより高度なベルト駆動システムを提供することである。これは、請求項1記載のシステム、および請求項13に記載の方法により実現される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、フレーム、モータに接続される駆動軸、制御装置、従動軸、従動軸および駆動軸にそれぞれ接続される2つのプーリ、ならびにベルトを備える、ベルトを駆動するためのベルト駆動システムに関する。フレームは、ベルトがプーリに取り付けられるように駆動軸および従動軸を支持する。1つの信号素子が、ベルトとともに駆動するようにベルトに取り付けられる。少なくとも2つの検出素子は、信号素子が、ベルトが移動するときに通過することにより信号を生成するために、検出素子を通過し得るようにフレームに取り付けられる。検出素子は、制御装置に接続される。制御装置は、ベルト駆動システムの開始動作にて、信号素子が、ベルトの動作の空間的ゼロ点を固定するために、少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子にて信号を生成するまで、ベルトが移動するようにモータを制御するように構成される。制御装置は、ベルトドライブの通常動作中に空間的ゼロ点を確認するために、第2検出素子の信号を受信および使用するように構成される。
【0011】
ベルトは、Vベルト、多溝ベルト、リブドベルト、たとえば、歯付き、ノッチ、嵌め歯または同期ベルトなどのタイミングベルト、またはチェーンであってもよい。ベルトは、通常、ゴムまたはポリマーから作製される。必要であれば、綿、ポリアミド、金属またはアラミドなどのいくつかの補強用ファイバーが、ゴムまたはポリマーに埋め込まれてもよい。
【0012】
使用されるプーリは、ベルトのトルクを最適化された、または望ましい方法で伝動するために、選択されたベルトに対しそれぞれ選択される。
【0013】
モータは、任意の種類のギヤモータ、または直接接続されるモータ、特に非同期、同期またはステップモータなどの電気モータとなり得る。
【0014】
フレームは、通常、ベルトドライブが使用される機械のある種の支持部またはハウジングである。一般的に、金属製のシートまたはロッドが、適切な作業領域を設計および画定するために使用される。例えば、把持装置の場合、通常、任意の種類の装置を把持および解放するためのある種のソート領域または受け渡し領域には、グリッパが到達する必要がある。
【0015】
制御装置は、モータ制御装置として直接実現されてもよいし、または別個の部分として実現されてもよい。制御装置は、また、ベルト駆動システムの適用に応じて、より高度な機械または処理制御装置の一部またはその内部に実現されてもよい。制御装置としては、要求されるタスクを実現することが可能である、マイクロ制御装置、FPGA、産業またはパーソナルコンピュータ、もしくは無線接続される装置を用いるクラウドアプリケーションとして実現されるものなどの任意の電子装置、もしくは電子装置の一部が可能である。本明細書にて説明する制御装置の機能は、複数の電子装置または副制御装置に亘り分散されることも可能である。制御装置の一部は、ある種のロータリエンコーダ、特に、モータの回転を制御することによってベルトの長手方向移動/変位を制御するためのアブソリュートエンコーダである。ロータリエンコーダとともに制御装置により制御される回転移動は、ベルト移動の長手方向移動へと変換される必要がある。そうするために、ベルト駆動システムは、信号素子が通過したときに第1検出素子により検出される、空間的ゼロ点を使用する。これは、オン切替え後のベルト駆動システムの初期化中の場合である。ベルト駆動システムの幾何学的形状は周知であるため、空間における単一の点で十分である。
【0016】
ベルト駆動システムは、ある種の動作のためのハンドリング装置、特に、機械内で物体を移動させるための装置または昇降機または固定ハンドラを把持するためのグリッパに接続され得る。第1の検出素子により検出される空間的ゼロ点は、ベルトの長手方向移動のための空間的基準点を提供する。それによって、制御装置は、モータの回転移動を、ベルトの長手方向移動に変換し得る。この位置は、ハンドリング装置のパーク位置に対応し得る。通常動作中、このパーク位置には到達しない。第2検出素子は、信号素子がベルトの通常動作中に通過し、空間的ゼロ点を確認するために信号を制御装置に提供するように、ベルト駆動システム中に設置される。
【0017】
制御装置と接続される装置、特にモータと第1および第2検出素子との間の接続として、フィールドバス、WIFI、3G、4Gもしくは5Gのような無線接続などの任意の種類のデータ伝送システムが可能である、または単純に金属ワイヤが仕様され得る。
【0018】
さらなる実施形態では、制御装置は、ベルトの運動を修正するために、受信した検出信号を、または直接的に空間的ゼロ点を制御装置へと送信し得る。
【0019】
本発明の別の態様は、ベルト駆動システムであり、制御装置またはさらなる制御装置は、第2検出器の信号が予想される空間的ゼロ点に対する差異を示す場合、空間的ゼロ点を自動的に修正するように構成される。制御装置は、空間的ゼロ点を、ベルトの長手方向移動が、モータの回転エンコーダによって制御装置に知られる回転移動を、長手方向距離へと変換するための基準点として記憶するように構成される。制御装置は、第1または第2検出素子により検出される空間的ゼロ点を受信するように構成される。制御装置は、受信した空間的ゼロ点を制御装置の記憶装置内の記憶された空間的ゼロ点と比較し、記憶され、受信した空間的ゼロ点の逸脱が制御装置により検出される場合、現在受信した空間的ゼロ点を基準点として記憶するように構成される。
【0020】
本発明のベルト駆動システムのさらなる態様では、制御装置は、ゼロ点の逸脱の回数をカウントし、回数が閾値を超える場合は、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成される。
【0021】
本発明の別の態様は、ベルト駆動システムであり、制御装置は、逸脱の距離を判定し、この絶対距離を、特に移動の方向に応じて別個に合計し、逸脱の合計が特定の閾値を超えると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成される。
【0022】
本発明のベルト駆動システムの別の実施形態では、制御装置は、逸脱の回数と、逸脱の距離と、逸脱の発生間の時間とを判定し、特定の距離を有する逸脱の発生間の時間が閾値を下回ると、ヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信するように構成される。
【0023】
ベルト駆動システムの別の態様は、データベースであり、データベースは、制御装置に接続され、逸脱の発生の回数、逸脱の発生間の時間および逸脱の距離を記憶するように構成される。ベルト駆動システムは、駆動システムのパラメータ、特に軸受け、軸、フレーム要素、および/または、プーリから外された後の使用済みベルトのパラメータをデータベースに追加するように構成されるインターフェースをさらに備える。ベルトは、摩耗、弾性、破断伸び、引張強度からなるリストのパラメータのなかの1つまたは複数に関して調査される。制御装置は、データベースに記憶されたデータを考慮して最適なメンテナンス時点を計算するようにさらに構成される。
【0024】
データベースおよびまたは制御装置は、実験室自動化システムの一部となり得る。追加的または代替的に、データベースは、クラウドアプリケーションまたはベルト駆動システムの製造業者に設置されるデータベースとして実現され得る。また、データを保存するために、簡単なテキストファイルが使用され得る。
【0025】
本発明の別の態様は、ベルト駆動システム内に実現され、制御装置は、軸受け、軸、フレーム要素および/またはベルトの特定の損傷を、逸脱の発生、逸脱の発生間の時間および逸脱の距離の特定の値に割り当て、ヒューマンインターフェース装置に、いずれの損傷が予期されるかのメッセージを送信するように構成される。
【0026】
これは、特に、機械学習、特に自己学習型アルゴリズムにより実現される。
【0027】
本発明の別の態様は、ベルトは、歯付きベルトでありプーリは、歯車である、ベルト駆動システムである。
【0028】
本発明の別の実施形態では、信号素子は、光学素子、磁気素子、誘導性素子、容量素子または機械要素であり、少なくとも2つの検出素子は、それぞれ光学検出器、磁気検出器、誘導検出器、容量検出器、またはメカニカル検出器である。
【0029】
本発明の別の態様は、信号素子は、光学的に不透明なシートであり、検出素子は、光電バリアであるベルト駆動システムである。信号素子および検出器は、通過する際に、シートが光電バリアの光線を遮断するように互いに対し配置される。
【0030】
本発明の別の実施形態では、光学的に不透明なシートは、凹部を備え、信号素子が検出素子を通過する際に、光電バリアの光バリアは、凹部を通過し得る。これには、ベルト移動の方向と無関係に、ベルトの位置が判定され得るという利点がある。
【0031】
本発明の別の態様は、第2検出素子は、信号素子に対し、信号素子が、ベルトの開始から停止までの、予測されるすべての移動の少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%の間に、第2検出素子を通過するように配置される、ベルト駆動システムである。これは、第1検出素子の専用のゼロ位置が、安全位置としても使用される場合、特に有利である。安全位置は、ベルト駆動システムが仕様される機械が、ユーザインタラクションのために、またはエラーの発生の場合に、安全状態となる必要があるときに、自動的に命令される。
【0032】
本発明の追加の態様は、ベルト駆動システムを監視する方法である。ベルト駆動システムは、フレーム、モータに接続される駆動軸、制御装置、従動軸、従動軸および駆動軸のそれぞれに接続される2つのプーリ、ならびにベルトを備える。フレームは、ベルトがプーリに取り付けられるように、駆動軸および従動軸を支持する。1つの信号素子が、信号素子がベルトと共に駆動するように、ベルトに取り付けられる。少なくとも2つの検出素子が、信号素子が、通過することにより信号を生成するために、検出素子を通過するように、フレームに取り付けられる。検出素子は、制御装置に接続され、制御装置は、ベルト駆動システムの開始動作において、信号素子が、特に、パーク位置に対応する、ベルトの動作の空間的ゼロ点を固定するために、少なくとも2つの検出素子のうちの第1検出素子にて信号を生成するまで、ベルトが移動するようにモータを制御する。第2検出素子の信号は、ベルトドライブの通常動作中、空間的ゼロ点を確認するために使用される。通常動作中、信号素子は、第1検出素子を通過しない。
【0033】
本発明の方法の別の態様は、第2検出器の信号が予測されるゼロ点に対し差異を示す場合、ゼロ点を自動的に修正する。
【0034】
本発明の方法の追加の態様は、逸脱の回数、逸脱の距離、逸脱の時間間隔からなるリストのなかの1つまたは複数のパラメータに関して第2検出器の信号から逸脱し、制御装置は、これらのパラメータを使用して、逸脱の程度を判定する。
【0035】
しかし、本明細書において開示する特徴の組合せに関する他の実施形態も実施可能である。
【0036】
本発明の、さらなる任意の特徴実施形態を、以下に続く好ましい実施形態の説明において、好ましくは、従属請求項と併せて詳細に開示する。その点において、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、単独で、および任意の実施可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって制限されない。実施形態は、図面にて、概略的に描写される。その点において、これら図中の同一参照番号は、同一、または機能的に同等の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施形態の概略側面図である。
【
図3】
図2に示す実施形態の信号素子の上面図である。
【
図4】
図1に示されたベルト駆動システムを備えた、さらなる実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態を概略的に示す。ベルト10は、2つのプーリ12に取り付けられる。一方のプーリ12は、駆動軸13により駆動される。他方は、従動軸14によって保持される。これらの軸を支持するフレームは、示されていない。モータ40は、駆動軸に接続される。制御装置30は、モータに接続される、または特に、モータバス32を介してモータのモータ制御装置に接続される。モータバスは、モータ40を駆動し、それによって、所望の位置にベルト10を駆動するために、命令信号または修正信号をモータ制御装置に送信することを可能にする。
【0039】
ベルト10は、Vベルト、多溝ベルト、リブドベルト、たとえば、歯付き、ノッチ、嵌め歯または同期ベルトなどのタイミングベルト、またはチェーンであってもよい。ベルト10は、通常、ゴムまたはポリマーから作製される。必要であれば、綿、ポリアミド、金属またはアラミドなどのいくつかの補強用ファイバーが、ゴムまたはポリマーに埋め込まれてもよい。選択されたベルトをつるした状態に維持するための、周知のそれぞれの装置は、
図1には示されない。
【0040】
ベルト10には、ベルト10と共に移動し得る信号素子16が取り付けられる。信号素子16は、モールディング、接着、またはベルト10の凹部内に形状嵌めもしくは圧入することによって、ベルト10内に含まれ得る。
【0041】
ベルト10から所定の距離を置いて、ベルト10の伸長に沿って、第1検出素子18および第2検出素子20が設置されている。ベルトと、第1および第2検出素子18、20との間の距離は、信号素子16が、通過する際に、第1および第2検出素子において信号を生成するように選択される。信号素子と検出素子とのこれらの組み合わせは、永久磁石およびホールセンサ、金属シートおよびキャパシタまたは誘導コイル、不透明要素および光バリア、または通過の際に機械的スイッチを作動させ得る機械製剛性要素など、磁気、電気、光学、または機械的効果に基づき得る。
【0042】
第1および第2検出素子18、20は、センサバス34により制御装置30に接続されている。センサバス34およびモータバス32は、たとえばINTERBUS、PROFIBUS、TCNet、EtherCATなどの標準のフィールドバスとして実現され得る、または無線信号接続として実現され得る。それらは、単一の通信ネットワークとしても実現され得る。
【0043】
図1に示す実施形態では、第1検出素子18は、ベルトを、信号素子16が第1検出素子18を通過するまでベルトを移動させることによって、ベルトの動作の空間的ゼロ点を判定し、信号バス34により制御装置30に送信される信号を生成するために使用される。これは、駆動ベルトシステムがオンに切り替えられ、制御装置30にベルトの動作の空間的ゼロ点を提供し、そしてその後にこの点からのベルトのすべての望ましい移動を計算するときに必ず行われる。空間的ゼロ点は、ベルト駆動システム1自体に、またはその関連する環境にエラーが生じた場合に、安全位置としても使用され得る。
【0044】
ベルト駆動システム1の通常使用の間、システムの切り替えまたは再起動の前に、信号素子16が第1検出素子18を二度と通過しない可能性がある。したがって、第2検出素子20は、信号素子16が、その特定の目的のために、ベルト駆動システム1の通常動作中に、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または常に、第2検出素子20を通過することが予期される位置に設置される。
【0045】
第1および第2検出素子18、20の間の距離は、固定され、制御装置30により知られる。したがって、ベルト移動を監視するために使用される、ベルトの動作の空間的第2点は、固定される。第2検出素子20の信号が予想されるベルトの動作に合わない場合、制御装置30は、ミスアライメントイベントを検出し、モータ40に修正されたそれぞれの信号を送信し、修正された、ベルトの動作の空間的ゼロ点に関連する、空間的実際の地点に、ベルト10の動作を修正する。
【0046】
さらに、制御装置30は、これらのミスアライメントイベントを記憶するためのデータベースを含んでいてもよいし、またはこのデータベースに接続されていてもよい。データベースには、発生時間、ミスアライメントの距離、およびこれらのイベントの発生頻度が記憶される。これらのイベントに基づき、制御装置30は、たとえば、ミスアライメントの最大距離、2つのイベントが発生する間の最小時間、またはイベントの発生の最大頻度など、所定の閾値に応じて、制御装置30と信号接続しているヒューマンインターフェース装置にメッセージを送信し得る。たとえば、ミスアライメントの距離を用いた重み付けにより、これらのパラメータのさらなる組み合わせが可能である。
【0047】
ヒューマンインターフェース装置へのメッセージが開始されると、サービス技術者が、イベントの原因を特定するためにベルト駆動システム1を調査する。ベルト10の伸縮性の損失、ベルト10の懸架状態を維持するための懸架装置の懸架の喪失またはミスアライメントもしくは故障部品によるその動作不良、ベアリングの欠陥または、フレーム要素もしくは軸13、14の動作不良または屈曲が原因となり得る。イベントの原因が特定されると、技術者は、入力装置によりこの原因をデータベースに入力し得る。そしてこの原因は、特定のイベントに関連するミスアライメント履歴に関連付けられる。これは、未来のイベント用に、特定のイベント履歴を、この過去の履歴に関する原因に直接関連付けるために使用される。
【0048】
さらなるステップでは、制御装置30は、データベース内のミスアライメントイベント履歴を制御および確認し、これらの履歴を、生じた現在進行中のミスアライメントイベントと比較して、現在生じているミスアライメントイベントを特定の原因に関連付け、望ましくない時間帯のマシンダウンタイムを回避する、および/または突然のマシンダウンタイムを防止するために、ヒューマンインターフェース装置に事前にメッセージを送信する。さらに、メンテナンス時間が、要求される場合、および固定のタイムスケジュールでない場合、維持され得る。
【0049】
図2は、グリッパ54用の三軸把持装置に使用されるベルト駆動システム1の概略的な正面図を示す。示されるベルト駆動システム1は、図面の平面に対して入ったり出たりする軸方向の移動を提供する。第2軸駆動システム50が、第2軸方向のグリッパ54の移動を提供し、第3軸駆動システム52が、第3軸方向のグリッパ54の移動を提供する
【0050】
グリッパ54は、たとえばパッケージ、電子回路素子または診断実験室において生物学的液体を充填された管など、任意の種類の装置を把持するための2つまたは3つ以上のフィンガを備える。グリッパ54の別の適用も可能である。
【0051】
グリッパ54のための駆動システムは、また、
図2に示されない装置を把持および設置するために、ある種の作業領域の上方の適切なフレーム内に配置される。
【0052】
把持装置がオフに切り替えられると、グリッパは、パーク位置に置かれ、このパーク位置は、通常は、グリッパ54が駆動軸または従動軸の近傍に配置された位置である。把持装置がオンに切り替えられると、モータ40の回転動作は、グリッパ54の動作に同期される必要がある。したがって、第1検出素子18は、グリッパ54がパーク位置を出て作業領域内へと移動させられるときに、信号素子16が1検出素子を通過するように、または、第1検出素子18の横の位置にあるように配置され、グリッパ54がパーク位置にあるときに、信号素子16が、第1検出素子18にて信号を生成する。モータ40は、ロータリエンコーダなどの回転制御システムを備える。把持装置がオンに切り替えられると、第1検出素子の信号は、ロータリエンコーダの信号が、ベルト10の、つまりグリッパ54のこの軸に沿った空間的位置に対応するように、モータ40の回転移動を、ベルト10を備えるグリッパの長手方向移動と同期させるために使用される。したがって、第1検出素子および信号素子が、ベルトの移動、つまりそれぞれの軸に沿ったグリッパ54の移動のための空間におけるゼロ点を決定する。
【0053】
通常動作中、オン切替え後、通常、グリッパ54は、それ以上パーク位置に到達しないように移動する。したがって、把持装置は、前述の通常動作中に信号素子16が第2検出素子20を通過するように、把持装置内に設置される第2検出素子20を備える。第1検出素子の信号は、オンに切替え後に空間的ゼロ点を判定するため、およびグリッパ54をパーク位置へと駆動するために、把持装置の初期化のために使用される。第2検出装置20の信号は、グリッパ54の通常動作中に、空間的ゼロ点を確認し、必要であれば、モータ40の信号エンコーダ信号を再較正するために使用される。
【0054】
信号素子16は、たとえば金属シートなど、不透明要素であり、第1および第2検出素子18、20は、光バリアとして実現される。信号素子は、ベルト10に固定される。第2検出素子は、この
図2においては、第1検出素子18の背後に隠れている。制御装置30は、
図1の実施形態の場合と同じ機能を提供する。
【0055】
制御装置は、信号バス34により検出素子に接続され、モータバス32によりモータに接続される。制御装置30は、モータ40の一部となり得る、またはその機能は、モータ40のモータ制御装置により直接的に実現され得る。
【0056】
図3は、
図2に示される実施形態の信号素子16の上面図を示す。ここでは、信号素子16は、L字状シートである。L字状シートの一方のアームは、ベルト10に固定され、他方のアームは、光バリアのための遮断要素として機能する。遮断要素は、凹部17を備える。これにより、ベルトの移動方向と無関係に、ベルトドライブのより精密な配置が可能になる。これは、上で説明したミスアライメントイベントの検出、特にミスアライメント距離の判定に有利である。
【0057】
図4は、
図1に示されるベルト駆動システム1を備えた、さらなる実施形態を示す。この実施形態では、ハンドリング装置42は、ベルトに固定される。ハンドリング装置42は、ハンドリング領域44内のハンドル要素を取り扱うために使用される。たとえば、ハンドリング装置42は、
図2に示すグリッパ54であってもよい。そして、グリッパ54は、たとえばハンドリング領域にある診断実験室管ソート装置にて生物学的液体で充填される管をソートするなど、取り扱うために使用され得る。
【0058】
ベルト駆動システム1がオフに切り替えられる、または非常事態もしくはエラーが生じると、ハンドリング装置42は、信号素子が第1検出素子18を通過する位置に対応するパーク位置46に置かれる。ベルトの、つまりハンドリング装置の長手方向移動の、空間的ゼロ点が検出されるように、信号が生成され、制御装置30に送信される。制御装置30は、その回転エンコーダを用いて、ベルトを、つまりハンドリング装置を必要とされる長手方向位置へと駆動させるために、モータ40を制御し得る。ハンドル領域44内で動作するハンドリング装置42の通常動作中、ベルト10の長手方向移動、つまりハンドリング装置42の長手方向移動は、長手方向領域48に限定される。ハンドリング装置が、その目的を履行する通常動作中に、この長手方向領域48内で移動すると、信号素子が、第1検出素子18を通過することはない。第2検出素子20は、信号素子16が、ベルト10およびハンドリング装置42の移動のための空間的ゼロ点を固定および確認するために、信号を第2検出素子20内で生成するように設置される。
【符号の説明】
【0059】
1 ベルト駆動システム
10 ベルト
12 プーリ
13 駆動軸
14 従動軸
16 信号素子
17 凹部
18 第1検出素子
20 第2検出素子
30 制御装置
32 モータバス
34 センサバス
40 モータ
42 ハンドリング装置
44 ハンドル領域
46 パーク位置
48 長手方向領域
50 第2軸駆動システム
52 第3軸駆動システム
54 グリッパ