(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車載レーダー装置用レドーム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240206BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240206BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20240206BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
H01Q1/42
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2019202229
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】古林 宏之
(72)【発明者】
【氏名】池増 竜帆
(72)【発明者】
【氏名】山本 真平
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】特開2019-168265(JP,A)
【文献】特開2012-112660(JP,A)
【文献】特開2019-166888(JP,A)
【文献】実開昭49-076331(JP,U)
【文献】特開2007-113023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/42
H05B 3/00- 3/86
B60R 13/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明で電磁波透過性の前基材と、前記前基材の後側に配置される電磁波透過性のヒーター基材を備え、
前記ヒーター基材の前面に線状の第1のヒーターエレメントが配線され、
前記ヒーター基材の背面に線状の第2のヒーターエレメントが配線され、
電磁波透過領域に設けられている前記ヒーター基材の前面の前記第1のヒーターエレメン
トと前記ヒーター基材の背面の前記第2のヒーターエレメン
トとが正面視で
重なるように配置されていると共に、
前記前基材の背面に固着されている加装層に前記第1のヒーターエレメントの前面が接触して設けられることを特徴とする車載レーダー装置用レドーム。
【請求項2】
正面視で
重なるように位置に配置されている前記第1のヒーターエレメン
トと前記第2のヒーターエレメン
トとに流れる電流の方向が
、前記第1のヒーターエレメントから放射される電磁波と前記第2のヒーターエレメントから放射される電磁波とが逆位相となる方向であることを特徴とする請求項1記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項3】
前記ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている前記第1のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が
、それぞれの前記第1のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波が逆位相となる方向であると共に、
前記ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている前記第2のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が
、それぞれの前記第2のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波が逆位相となる方向であることを特徴とする請求項1又は2記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項4】
前記第1のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の前面の配線溝に埋め込まれて配線され且つ前記第2のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の背面の配線溝に埋め込まれて配線されていることを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載の車載レーダー装置用レドーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載レーダー装置の前側に設けられる車載レーダー装置用レドームに係り、特に融雪機能を有する車載レーダー装置用レドームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載レーダー装置の前側に設けられ、融雪機能を有する車載レーダー装置用レドームとして、車載レーダー装置の電磁波照射方向と略直交するように設置される基材の表面に、電磁波の透過性能低下を抑制するようにヒーターエレメントが配置されるレドームがある(特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1、2には、樹脂シートに線状のヒーターエレメントが設けられた加熱シートが前透明部材と後透明部材の間に設けられ、その後側に配置される基材の加飾層の前方に前透明部材、ヒーターエレメント、後透明部材が配置される構造が開示されている。更に、特許文献1には、透明部材と基材との間に加飾層が設けられ、基材の背面側に樹脂シートに線状のヒーターエレメントが設けられた加熱シートが配置される構造が開示されている。また、特許文献3、4には、透明部材と前基材との間に加飾層が設けられ、前基材の背面側に線状のヒーターエレメントが配置される構造が開示されている。
【0004】
尚、特許文献5には、樹脂成形体の表面に電気回路の配線パターンを形成する回路成形部品(MID:Molded Interconnect Device)の製造方法の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-215242号公報
【文献】特開2017-215243号公報
【文献】特開2018-66705号公報
【文献】特開2018-66706号公報
【文献】特開2017-226890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、透明部材、加飾層、基材、ヒーターエレメントが前側から順に配置される特許文献1、3、4に開示のレドーム構造は、加飾層の視認性に優れるものの、雪が付着する透明部材の外表面に対する加熱性能に劣る。他方において、前透明部材、ヒーターエレメントを有する加熱シート、後透明部材、加飾層、基材が前側から順に配置される特許文献1、2に開示のレドーム構造は、雪が付着する前透明部材の外表面に対する加熱性能には優れるものの、ヒーターエレメントを有する加熱シートが加飾層の前方に配置されるため、加飾層の視認性に劣る。そのため、加飾層の良好な視認性を確保できると共に、雪が付着する外表面に対する加熱性能を高めることができる車載レーダー装置用レドームが求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、加飾層の良好な視認性を確保できると共に、雪や氷が付着するレドームの外表面に対する加熱性能を格段に高めることができる車載レーダー装置用レドームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、透明で電磁波透過性の前基材と、前記前基材の後側に配置される電磁波透過性のヒーター基材を備え、前記ヒーター基材の前面に線状の第1のヒーターエレメントが配線され、前記ヒーター基材の背面に線状の第2のヒーターエレメントが配線され、前記第1のヒーターエレメントの前側に加飾層が設けられることを特徴とする。
これによれば、ヒーター基材の前面の第1のヒーターエレメントの前側に加飾層を設けることにより、前基材の前側から視認されるレドームの加飾層の良好な視認性を確保することができる。また、ヒーター基材の前面の第1のヒーターエレメントと、ヒーター基材の背面の第2のヒーターエレメントの双方で加熱することが可能となり、雪や氷が付着するレドームの外表面或いは前基材やその保護層の外表面に対する加熱性能を格段に高めることができ、融雪に必要な加熱を確実に行うことができる。
【0009】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記前基材の背面に加飾層が固着されていることを特徴とする。
これによれば、前基材の背面に加飾層を固着することにより、ヒーター基材の前面の第1のヒーターエレメントの前側に加飾層を設置する特段の付加工程を要さずに、レドームの前基材とヒーター基材の固着工程で加飾層を第1のヒーターエレメントの前側に配置することができ、レドームの製造工程を効率化することができる。また、前基材に加飾層を形成する前基材の加工工程と、ヒーター基材の前面及び背面にヒーターエレメントを形成する後基材の加工工程を並行して行うことが可能となり、レドームの製造時間を短縮することができる。
【0010】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター基材の前面の前記第1のヒーターエレメントの主要部と、前記ヒーター基材の背面の前記第2のヒーターエレメントの主要部が正面視で略対応する位置に配置されていることを特徴とする。また、本発明の車載レーダー装置用レドームは、透明で電磁波透過性の前基材と、前記前基材の後側に配置される電磁波透過性のヒーター基材を備え、前記ヒーター基材の前面に線状の第1のヒーターエレメントが配線され、前記ヒーター基材の背面に線状の第2のヒーターエレメントが配線され、電磁波透過領域に設けられている前記ヒーター基材の前面の前記第1のヒーターエレメントと前記ヒーター基材の背面の前記第2のヒーターエレメントとが正面視で重なるように配置されていると共に、前記前基材の背面に固着されている加装層に前記第1のヒーターエレメントの前面が接触して設けられることを特徴とする。
これによれば、前基材の前側から正面視でレドームが視認された際に、ヒーターエレメントの主要部が正面視で重なるように配置されることで、例えば僅かに透けて視認されるヒーターエレメントの正面視における占有領域を小さくすることができ、レドームの美観を高めることができる。また、第1、第2のヒーターエレメントの主要部を正面視で略対応する位置に配置することにより、車載レーダー装置の電磁波を前基材やヒーター基材に略直交するように照射した際に、車載レーダー装置の電磁波に対するヒーターエレメントの電磁放射による影響を極力小さくすることができ、良好な電磁波透過性を確保することができる。
【0011】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、正面視で略対応する位置に配置されている前記第1のヒーターエレメントの主要部と前記第2のヒーターエレメントの主要部に流れる電流の方向が略反平行であることを特徴とする。また、本発明の車載レーダー装置用レドームは、正面視で重なるように位置に配置されている前記第1のヒーターエレメントと前記第2のヒーターエレメントとに流れる電流の方向が、前記第1のヒーターエレメントから放射される電磁波と前記第2のヒーターエレメントから放射される電磁波とが逆位相となる方向であることを特徴とする。
これによれば、正面視で略対応する位置に配置されている第1のヒーターエレメントの主要部と第2のヒーターエレメントの主要部に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、第1、第2のヒーターエレメントの主要部から放射される電磁波を逆位相とし、第1のヒーターエレメントの主要部と第2のヒーターエレメントの主要部からの電磁放射を打ち消すことができる。従って、非常に高い加熱性能を得つつ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。
【0012】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている前記第1のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が略反平行であると共に、前記ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている前記第2のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が略反平行であることを特徴とする。また、本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている前記第1のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が、それぞれの前記第1のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波が逆位相となる方向であると共に、前記ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている前記第2のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が、それぞれの前記第2のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波が逆位相となる方向であることを特徴とする。
これによれば、ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波を逆位相とし、電磁放射を打ち消すことができる。加えて、ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメントの部分から放射される電磁波を逆位相とし、電磁放射を打ち消すことができる。従って、非常に高い加熱性能を得つつ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。
【0013】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の前面の配線溝に埋め込まれて配線され且つ前後方向に高低差を有するように配線されていることを特徴とする。
これによれば、第1のヒーターエレメントをヒーター基材の前面の配線溝に埋め込んで配線することにより、第1のヒーターエレメントをヒーター基材に高い強度で固着することができると共に、第1のヒーターエレメントのヒーター基材の前面からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触による第1のヒーターエレメントの損傷や剥離を防止することができる。また、第1のヒーターエレメントを前後方向に高低差を有するように配線することにより、例えばエンブレムのレドームの刻銘形状に倣う凹凸に合わせて、必要な加熱性能が得られる状態で第1のヒーターエレメントを配線することができる。
【0014】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第2のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の背面の配線溝に埋め込まれて配線され且つ前後方向に高低差を有するように配線されていることを特徴とする。
これによれば、第2のヒーターエレメントをヒーター基材の背面の配線溝に埋め込んで配線することにより、第2のヒーターエレメントをヒーター基材に高い強度で固着することができると共に、第2のヒーターエレメントのヒーター基材の背面からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触による第2のヒーターエレメントの損傷や剥離を防止することができる。また、第2のヒーターエレメントを前後方向に高低差を有するように配線することにより、例えばエンブレムのレドームの刻銘形状に倣う凹凸に合わせて、必要な加熱性能が得られる状態で第2のヒーターエレメントを配線することができる。
【0015】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の前面の配線溝に埋め込まれて配線され且つ前記第2のヒーターエレメントが前記ヒーター基材の背面の配線溝に埋め込まれて配線されていることを特徴とする。
これによれば、第1のヒーターエレメントをヒーター基材の前面の配線溝に埋め込んで配線することにより、第1のヒーターエレメントをヒーター基材に高い強度で固着することができると共に、第1のヒーターエレメントのヒーター基材の前面からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触によるヒーターエレメントの損傷や剥離を防止することができる。また、第2のヒーターエレメントをヒーター基材の背面の配線溝に埋め込んで配線することにより、第2のヒーターエレメントをヒーター基材に高い強度で固着することができると共に、第2のヒーターエレメントのヒーター基材の背面からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触による第2のヒーターエレメントの損傷や剥離を防止することができる。
【0016】
本発明の車載レーダー装置用レドームの製造方法は、本発明の車載レーダー装置用レドームを製造する方法であって、前記ヒーター基材の前面と背面に配線溝をそれぞれ形成する第1工程と、前記ヒーター基材に無電解めっき処理を施して、前記ヒーター基材の前面の配線溝に前記第1のヒーターエレメントを埋め込んで形成すると共に、前記ヒーター基材の背面の配線溝に前記第2のヒーターエレメントを埋め込んで形成する第2工程を備えることを特徴とする。
これによれば、(MID:Molded Interconnect Device)技術の製法を用い、ヒーター基材の前面の配線溝に第1のヒーターエレメントを埋め込んで形成し、ヒーター基材の背面の配線溝に第2のヒーターエレメントを埋め込んで形成するヒーターエレメント配線成形部品やレドームを容易に製造することができる。また、多様なヒーター基材の形状に適応してヒーターエレメント配線成形部品を製造することができ、立体的に複雑なヒーター基材の形状にも適応して第1、第2のヒーターエレメントを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車載レーダー装置用レドームの加飾層の良好な視認性を確保できると共に、雪や氷が付着するレドームの外表面に対する加熱性能を格段に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による実施形態の車載レーダー装置用レドームの正面図。
【
図2】実施形態の車載レーダー装置用レドームの背面図。
【
図8】(a)~(e)は実施形態の車載レーダー装置用レドームの製造工程を説明する工程説明図。
【
図9】(a)~(d)は実施形態の車載レーダー装置用レドームの製造工程におけるヒーター基材にヒーターエレメントを形成する工程を説明する模式工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態の車載レーダー装置用レドームの製造方法〕
本発明による実施形態の車載レーダー装置用レドーム1では、
図1~
図7に示すように、透明で電磁波透過性の前基材2と、前基材2の後側に配置される電磁波透過性のヒーター基材3を備える。更に、本実施形態のレドーム1では、ヒーター基材3の後側に後基材7が配置され、ヒーター基材3に固着して設けられている。図示例の前基材2、ヒーター基材3、後基材7は正面視で楕円形であり、透明の前基材2を介して、前基材2の表面側から意匠部を構成するマーク記号部10を視認可能になっている。
図1及び
図2中のRは電磁波透過領域である。尚、前基材2、ヒーター基材3、後基材7やレドーム1の正面視の形状は楕円形以外にも適用可能な範囲で任意であり、例えば、正方形、長方形、台形、真円形、三角形といった形状でもよい.
【0020】
透明な前基材2と、ヒーター基材3と、後基材7は絶縁性で電磁波透過性を有する。前基材2と、ヒーター基材3と、後基材7には、例えば同一材料で形成する等、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接するものを用いると電磁波の透過性能向上の観点から好適である。前基材2とヒーター基材3、ヒーター基材3と後基材7、前基材2と後基材7の近接する屈折率nの数値範囲としては、前基材2とヒーター基材3の屈折率の相違、ヒーター基材3と後基材7の屈折率の相違、前基材2と後基材7の屈折率の相違をそれぞれ0~10%の範囲内とすると良好である。
【0021】
ここでの屈折率nは比誘電率実数部εr'と比誘電率虚数部εr"から数式1として定義される量である。 透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさは0.1以下とすると好適である。また比誘電率実部の大きさは3以下とすると好適である。誘電正接と非誘電率実部の大きさをこれらの数値以下とすることにより、レドームに必要とされる反射率と内部損失の低減を確実にすることが可能となる。
【0022】
【0023】
【0024】
前基材2と、ヒーター基材3と、後基材7には、合成樹脂、ガラス、セラミックス等の本発明の趣旨の範囲内で適宜の材料を用いることが可能であるが、好適には絶縁性の合成樹脂とするとよい。透明の前基材2は、良好な視認性を確保するため可視光線透過率50%以上の無色材料又は有色材料とすることが好ましい。
【0025】
前基材2を絶縁性の透明合成樹脂とする場合の材料は、適用可能な範囲で適宜であり、例えばポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、又、添加剤を含有させてもよい。
【0026】
ヒーター基材3を絶縁性の合成樹脂とする場合の材料は、適用可能な範囲で適宜であり、例えばアクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、又、添加剤を含有させてもよい。
【0027】
後基材7を絶縁性の合成樹脂とする場合の材料は、適用可能な範囲で適宜であり、例えばアクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、又、添加剤を含有させてもよい。
【0028】
前基材2の背面21には、加飾層4が固着して設けられている。本実施形態の加飾層4は、電磁波透過性金属部41と有色部42とから構成されているが、加飾層4の構成は、本発明の趣旨の範囲内で適宜である。例えば電磁波透過性金属部41と有色部42で構成される加飾層4以外にも、例えば電磁波透過性金属部だけで構成される加飾層、或いは有色部だけで構成される加飾層、或いは合成樹脂に設けられた電磁波透過性の不連続金属層で金属光沢を示す電磁波透過性で加飾性の絶縁フィルム、積層合成樹脂で可視光を干渉反射して金属光沢を示す電磁波透過性で加飾性の絶縁フィルムなど電磁波透過性で加飾性の絶縁フィルムで構成される加飾層、或いはこれらを適宜組み合わせて構成される加飾層等とすることが可能である。
【0029】
加飾層4の電磁波透過性金属部41は、電磁波透過性で金属光沢を有する不連続金属層で構成され、光輝性で一体的な視認性を有し、例えば前基材2の背面21に無電解めっき、蒸着又はスパッタ等で形成される。電磁波透過性金属部41を光輝性で一体的な視認性を有する不連続金属層とする場合、例えばニッケル若しくはニッケル合金、クロム若しくはクロム合金、コバルト若しくはコバルト合金、錫若しくは錫合金、銅若しくは銅合金、銀若しくは銀合金、パラジウム若しくはパラジウム合金、白金若しくは白金合金、ロジウム若しくはロジウム合金、金若しくは金合金等から構成することが可能である。
【0030】
尚、電磁波透過性金属部41は、電磁波透過性で金属光沢と一体的な視認性を有する不連続金属層以外にも、本発明の趣旨の範囲内で適宜の電磁波透過性金属部とすることが可能であり、例えば蒸着又はスパッタ等で形成されたシリコンやゲルマニウム等の半導体層、或いはこの半導体と可視光反射率が50%以上の金属(例えば金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、鉄、ニッケル、クロム)等の光輝金属との合金層等とすることが可能である。また、前基材2の背面21と電磁波透過性金属部41との間には、例えば無電解めっき層を形成しやすくする改質表面を形成するための下地層など、必要に応じて透明下地層等の下地層を加飾層の一部として設けることも可能である。
【0031】
有色部42は、電磁波透過性を有し、例えば印刷、又は塗装マスクを用いた塗装等で前基材2の背面21に形成されている。本実施形態の加飾層4では、有色部42が電磁波透過性金属部41の表面側の一部に積層されるようにして前基材2の背面21に密着して設けられており、前基材2の背面21が露出している領域と、有色部42が設けられている領域の全体に亘って電磁波透過性金属部41が層状に形成され、電磁波透過性金属部41が前基材2の露出した背面21と有色部42に密着して設けられている。
【0032】
そして、前基材2の背面21には、マーク記号部10に対応する位置に凹部211が形成されており、加飾層3は、凹部211に倣うように断面視で表面側に部分突出して曲がって形成されている。図示例では、加飾層4の電磁波透過性金属部41が凹部211に倣うように部分突出して形成され、凹部211には有色部42は設けられず、電磁波透過性金属部41だけが入り込んで設けられている。また、図示例の有色部42は、前基材2の凹部211以外の背面21に沿うように密着して設けられている。
【0033】
また、ヒーター基材3の前面31には線状の第1のヒーターエレメント51が配線されていると共に、ヒーター基材3の背面32には線状の第2のヒーターエレメント52が配線されている。そして、第1のヒーターエレメント51が配線されたヒーター基材3の前面31は、前基材2の背面21に固着された加飾層4に、或いは加飾層4と前基材2の背面21とに、接着等で固着されて積層され、一体化されており、第1のヒーターエレメント51の前側に加飾層4が設けられている。
【0034】
本実施形態では、第1のヒーターエレメント51はヒーター基材3の前面31の配線溝311に埋め込まれて配線され、第2のヒーターエレメント52はヒーター基材3の背面32の配線溝321に埋め込まれて配線されている。また、第1のヒーターエレメント51は、例えば前基材2の背面21の凹部211或いは凹部211に形成される加飾層4の凹部43に係合される凸部312に配線される等、ヒーター基材3の前面31の凹凸による高低差に倣って前後方向に高低差を有するように配線されている。更に、本実施形態では、第2のヒーターエレメント52は、例えば後基材7の前面71の凸部711が係合される、凸部312に対応する位置に形成された凹部322に配線される等、ヒーター基材3の背面32の凹凸による高低差に倣って前後方向に高低差を有するように配線されている。
【0035】
ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の主要部と、ヒーター基材3の背面32の第2のヒーターエレメント52の主要部は、それぞれレドーム1の正面視で別の位置に配置する配線形状とすることも可能であるが、本実施形態では、レドーム1の正面視で互いに略対応する位置に配置する配線形状になっている。この略対応する位置に配置する配線形状により、車載レーダー装置100の電磁波に対するヒーターエレメント51、52の電磁放射による影響を極力小さくすることが可能である。
【0036】
第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52は、それぞれ、例えば銅、ニクロム線、鉄クロム、銀、カーボン繊維、ITO膜のような透明導電膜等の適用可能な適宜の導電性材料とすることが可能である。尚、例えばヒーターエレメント51、52を40℃~50℃まで昇温した場合、加飾層4の耐熱温度は例えば100℃程度、PC等の前基材2の耐熱温度は例えば80℃程度、AES等のヒーター基材3、後基材7の耐熱温度は例えば80℃程度であることから、車載レーダー装置用レドーム1はヒーターエレメント51、52の昇温に対して良好な耐熱性のある構造になっている。
【0037】
第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52は、その両端がそれぞれコネクタ6に電気的に接続され且つ機械的に固定されており、コネクタ6を介してヒーターエレメント51、52に電力が供給され、ヒーターエレメント51、52が発熱するようになっている。
【0038】
コネクタ6から延びる第1のヒーターエレメント51は、ヒーター基材3の前面31の面方向に蛇行して折り返すように配線されて一連で延びて形成され、ヒーター基材3の前面31で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメント51・51の部分に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定されており、前面31で隣り合う第1のヒーターエレメント51・51から放射される電磁波が相互に逆位相になっている。
【0039】
また、コネクタ6から延びる第2のヒーターエレメント52は、ヒーター基材3の背面32の面方向に蛇行して折り返すように配線されて一連で延びて形成され、ヒーター基材3の背面32で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメント52・52の部分に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定されており、背面32で隣り合う第2のヒーターエレメント52・52から放射される電磁波が相互に逆位相になっている。
【0040】
更に、正面視で略対応する位置に配置されている第1のヒーターエレメント51の主要部と第2のヒーターエレメント52の主要部に流れる電流の方向が略反平行或いは反平行となるように設定されており、ヒーター基材3を挟んで隣り合う第1のヒーターエレメント51と第2のヒーターエレメント52から放射される電磁波が相互に逆位相になっている。
【0041】
そして、車載レーダー装置用レドーム1は、例えば車載レーダー装置100の前方に配置されて車両に取り付けられる。尚、図示例の車載レーダー装置用レドーム1はエンブレム形状のレドームとしたが、本発明の車載レーダー装置用レドームは、バンパー等の適宜の車両実装部品で構成することが可能である。
【0042】
本実施形態の車載レーダー装置用レドーム1を製造する際には、例えば
図8(a)~(c)に示すように、所定形状に形成した電磁波透過性の前基材2の背面21の凹部211に倣うようにして表面側に部分突出する加飾層4を形成し、前基材2の背面21に加飾層4を固着して設ける。加飾層4の形成工程では、例えば有色部42を、印刷、又は塗装マスクを用いた塗装等により、前基材2の背面21の所定領域に形成した後、無電解めっき、蒸着又はスパッタ等により、前基材2の背面21の凹部211内を含む全体に亘って電磁波透過性金属部41を形成する。
【0043】
次いで、別途の工程で形成されたヒーターエレメント51、52が配線されているヒーター基材3を用い、加飾層4の凹部43に前面31の凸部312を嵌め込むように位置合わせし、ヒーター基材3の前面31を前基材2の加飾層4、換言すれば前基材2の背面21に接着等で固着し、前基材2の後側にヒーター基材3を配設する(
図8(d)参照)。ここで固着されるヒーター基材3には、予め前面31に線状の第1のヒーターエレメント51が配線され、背面32に線状の第2のヒーターエレメントが配線されており、このヒーター基材3を前基材2の後側に配設することにより、ヒーター基材3の第1のヒーターエレメント51の前側に加飾層4が設けられる。
【0044】
本例で固着されるヒーター基材3は、第1のヒーターエレメント51がヒーター基材3の前面31の配線溝311に埋め込まれて配線され且つ前後方向に高低差を有するように配線され、第2のヒーターエレメント52がヒーター基材3の背面32の配線溝321に埋め込まれて配線され且つ前後方向に高低差を有するように配線されていると共に、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の主要部と、ヒーター基材3の背面32の第2のヒーターエレメント52の主要部が正面視で略対応する位置に配置されている。
【0045】
ここで用いられるヒーターエレメント51、52が配線されたヒーター基材3には、適宜の製法で製造された部品を用いることが可能であるが、MID製法により製造された回路成形部品或いは立体回路成形部品を用いると好適である。ヒーター基材3をMID製法で製造する際のMID製法は適宜であり、例えば特許文献5に記載のMID製法を用いて
図9に示す工程順で製造することが可能である。
【0046】
即ち、無電解めっき触媒となり得る金属イオンを吸着し易い、アミン基、アミド基及びカルボキシル基から選択される1つ官能基を有するポリマーを水やアルコール等の溶媒に溶解したポリマー溶液を調製し、調製したポリマー溶液を後基材3に塗布或いは浸漬等で接触させることにより、所定形状に形成したヒーター基材3の表面に触媒失活層Pを形成する(
図9(a)、(b)参照)。金属イオンを吸着し易いポリマーの例として、アミン基を有するポリマーであるアミノクリルポリマー、ポリエチレンイミン等、アミド基を有するポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミドイミド(PAI)、水溶性ポリアミド(水溶性ナイロン)等、カルボキシル基を有するポリマーであるポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。
【0047】
その後、触媒失活層Pを形成したヒーター基材3の第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52の配線予定領域に加熱処理又は光照射処理を施し、触媒失活層P及びヒーター基材3の表面近傍の双方を分解して溶かし、配線溝311、321を形成する(
図9(c)参照)。触媒失活層P中のポリマーの分解物は、ヒーター基材3の配線溝311、321の表面近傍に取り込まれるか、又は表面に強固に吸着し、配線溝311、321に触媒失活層Pのポリマー由来のアミン基、アミド基、又はカルボキシル基が残存する状態となる。尚、前述の加熱処理、光照射処理には、微細な配線パターンの形成が容易なこと、表面粗面化が可能なことから、CO2レーザー、YVO4レーザー、YAGレーザー等のレーザー光を照射するレーザー描画処理を用いると好適である。
【0048】
その後、配線溝311、312が形成されたヒーター基材3の表面の触媒失活層Pを水、又は、水と水溶性アルコールとの混合溶媒等の触媒失活層Pを溶解する洗浄液を用いて洗浄し、加熱処理又は光照射処理を施した領域以外の触媒失活層Pを除去する(
図9(c)、(d)参照)。更に、洗浄したヒーター基材3を無電解めっき触媒液に浸漬等で接触させ、触媒失活層P中のポリマーの分解物が取り込まれ又は強固に吸着した配線溝311、312に無電解めっき触媒液が含有する金属塩由来の金属イオンを吸着させる。使用する無電解めっき触媒液の含有する金属塩としては、例えばPd、Pt、Cu、Ni等の塩が挙げられ、又、金属塩を溶解させる無電解めっき触媒液の溶媒としては、例えば、水、エタノール等の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0049】
その後、無電解めっき触媒液に接触させた配線溝311、312を有するヒーター基材3に無電解銅めっき液等の無電解めっき液を接触させ、無電解触媒能を有する金属塩由来の金属イオンが吸着した配線溝311、312に無電解めっき膜を形成し、無電解めっき膜による第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52を形成する(
図9(d)参照)。
【0050】
ヒーター基材3を固着して前基材2の後側にヒーター基材3を配設した後には、ヒーター基材3の背面32及び第2のヒーターエレメント52を覆うようにして後基材7を固着して設ける(
図8(e)参照)。後基材7を設ける際には、例えば前基材2とヒーター基材3を固着した構造体を金型内に配置し、ヒーター基材3の背面32の凹部322に凸部711が係合されるようにして、電磁波透過性の後基材7を射出成形で形成して熱溶着すると好適である。或いは、この工程に代えて、所定形状に形成された後基材7をヒーター基材3の背面32の凹部322に凸部711を係合するようにしてヒーター基材3の背面32に接着剤で接着しても好適である。
【0051】
更に、ヒーター基材3の下部に設けられたコネクタ配置用凹部にコネクタ6を設置し、第1のヒーターエレメント51と第2のヒーターエレメント52にコネクタ6を電気的に接続して、車載レーダー装置用レドーム1を得る。この際、正面視で略対応する位置に配置されている第1のヒーターエレメント51の主要部と第2のヒーターエレメント52の主要部に流れる電流の方向が略反平行になる構成、又は、ヒーター基材3の前面31で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメント51の部分に流れる電流の方向が略反平行であると共に、ヒーター基材3の背面32で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメント52の部分に流れる電流の方向が略反平行である構成、又はこれらの双方の構成が可能となるように、第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52とコネクタ6の電気的接続を行うことが好ましい。
【0052】
本実施形態によれば、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の前側に加飾層4を設けることにより、前基材2の前側から視認されるレドーム1の加飾層4の良好な視認性を確保することができる。また、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51と、ヒーター基材3の背面32の第2のヒーターエレメント52の双方で加熱することが可能となり、雪や氷が付着するレドーム1の外表面或いは前基材2やその保護層の外表面に対する加熱性能を格段に高めることができ、融雪に必要な加熱を確実に行うことができる。
【0053】
また、前基材2の背面21に加飾層4を固着することにより、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の前側に加飾層4を設置する特段の付加工程を要さずに、レドーム1の前基材2とヒーター基材3の固着工程で加飾層4を第1のヒーターエレメント51の前側に配置することができ、レドーム1の製造工程を効率化することができる。また、前基材2に加飾層4を形成する前基材2の加工工程と、ヒーター基材3の前面31及び背面32にヒーターエレメント51、52を形成するヒーター基材3の加工工程を並行して行うことが可能となり、レドーム1の製造時間を短縮することができる。
【0054】
また、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の主要部と、ヒーター基材3の背面32の第2のヒーターエレメント52の主要部を正面視で略対応する位置に配置することにより、前基材2の前側から正面視でレドーム1が視認された際に、ヒーターエレメント51、52の主要部が正面視で重なり、例えば僅かに透けて視認されるヒーターエレメント51、52の正面視における占有領域を小さくすることができ、レドーム1の美観を高めることができる。また、第1のヒーターエレメント51、第2のヒーターエレメント52の主要部を正面視で略対応する位置に配置することにより、車載レーダー装置100の電磁波を前基材2やヒーター基材3に略直交するように照射した際に、車載レーダー装置100の電磁波に対するヒーターエレメント51、52の電磁放射による影響を極力小さくすることができ、良好な電磁波透過性を確保することができる。
【0055】
また、正面視で略対応する位置に配置されている第1のヒーターエレメント51の主要部と第2のヒーターエレメント52の主要部に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、第1のヒーターエレメント51と第2のヒーターエレメント52の主要部から放射される電磁波を逆位相とし、電磁放射を打ち消すことができる。従って、非常に高い加熱性能を得つつ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。
【0056】
また、ヒーター基材3の前面31で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメント51の部分に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、ヒーター基材3の前面31で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメント51の部分から放射される電磁波を逆位相とし、電磁放射を打ち消すことができる。また、ヒーター基材3の背面32で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメント52の部分に流れる電流の方向を略反平行或いは反平行とすることにより、ヒーター基材3の背面32で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメント52の部分から放射される電磁波を逆位相とし、電磁放射を打ち消すことができる。従って、非常に高い加熱性能を得つつ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。
【0057】
また、第1のヒーターエレメント51をヒーター基材3の前面31の配線溝311に埋め込んで配線することにより、第1のヒーターエレメント51をヒーター基材3に高い強度で固着することができると共に、第1のヒーターエレメント51のヒーター基材3の前面31からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触による第1のヒーターエレメント51の損傷や剥離を防止することができる。また、第1のヒーターエレメント51を前後方向に高低差を有するように配線することにより、例えばエンブレムのレドーム1の刻銘形状に倣う凹凸に合わせて、必要な加熱性能が得られる状態で第1のヒーターエレメント51を配線することができる。
【0058】
また、第2のヒーターエレメント52をヒーター基材3の背面32の配線溝321に埋め込んで配線することにより、第2のヒーターエレメント52をヒーター基材3に高い強度で固着することができると共に、第2のヒーターエレメント52のヒーター基材3の背面32からの突出部分を無くす或いは極力小さくすることができ、加工工程、搬送工程等における接触による第2のヒーターエレメント52の損傷や剥離を防止することができる。また、第2のヒーターエレメント52を前後方向に高低差を有するように配線することにより、例えばエンブレムのレドーム1の刻銘形状に倣う凹凸に合わせて、必要な加熱性能が得られる状態で第2のヒーターエレメント52を配線することができる。
【0059】
また、ヒーター基材3を製造する際に、MID製法を用い、ヒーター基材3の前面31と背面32に配線溝311、321をそれぞれ形成した後、ヒーター基材3に無電解めっき処理を施して、ヒーター基材3の前面31の配線溝311に第1のヒーターエレメント51を埋め込んで形成すると共に、ヒーター基材3の背面32の配線溝321に第2のヒーターエレメント52を埋め込んで形成することにより、ヒーター基材3の前面31の配線溝311に第1のヒーターエレメント51を埋め込んで形成し、ヒーター基材3の背面32の配線溝321に第2のヒーターエレメント52を埋め込んで形成するヒーターエレメント配線成形部品やレドーム1を容易に製造することができる。また、多様なヒーター基材の形状に適応してヒーターエレメント配線成形部品を製造することができ、立体的に複雑なヒーター基材3の形状にも適応してヒーターエレメント51、52を形成することができる。
【0060】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0061】
例えば上記実施形態の車載レーダー装置用レドーム1では、ヒーター基材3の背面32に後基材7を固着して設ける構成としたが、ヒーター基材3の背面32に保護フィルム等の保護膜を固着して設ける構成、或いはヒーター基材3の背面32側に別部材を設けない構成とすることも可能である。また、本発明の車載レーダー装置用レドームにおける第1のヒーターエレメントの前側に加飾層が設けられる構成は、上記実施形態の前基材2の背面21に加飾層4を固着する構成に限定されず、例えばヒーター基材の前面側に加飾層を形成して固着し、加飾層が固着されたヒーター基材を前基材に固着する構成とすることも可能である。また、ヒーター基材3の前面31の第1のヒーターエレメント51の主要部と、ヒーター基材3の背面32の第2のヒーターエレメント52の主要部が正面視で略対応する位置に配置されない構成も本発明に含まれる。
【0062】
また、本発明における車載レーダー装置用レドームには、正面視で略対応する位置に配置されている第1のヒーターエレメントの主要部と第2のヒーターエレメントの主要部に流れる電流の方向が略反平行でない構成、又は、ヒーター基材の前面で隣り合って配線されている第1のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が略反平行でない構成、又は、ヒーター基材の背面で隣り合って配線されている第2のヒーターエレメントの部分に流れる電流の方向が略反平行でない構成、又はこれらの適宜の組み合わせの構成が含まれる。また、本発明におけるヒーターエレメントの配線パターン、配線構成は、図示例のヒーターエレメント51、52の蛇行形状の配線構成に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば同心円状、同心楕円状にヒーターエレメントを配線する構成や、中心から略放射状に延びるようにヒーターエレメントを配線する構成等としてもよい。
【0063】
また、本発明における車載レーダー装置用レドームが対象とするレーダーの電磁波は適用可能な範囲で適宜であり、車載レーダーとして実用化されている24/26GHz帯、76/77GHz帯、77/81GHz帯等に加え、これら以外のレーダー用の電磁波の場合にも本発明を適用することが可能である。更に、より短波長のレーダーが実用化された際にも同様に本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車載レーダー装置用レドームを製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…車載レーダー装置用レドーム 2…前基材 21…背面 211…凹部 3…ヒーター基材 31…前面 311…配線溝 312…凸部 32…背面 321…配線溝 322…凹部 4…加飾層 41…電磁波透過性金属部 42…有色部 43…凹部 51…第1のヒーターエレメント 52…第2のヒーターエレメント 6…コネクタ 7…後基材 71…前面 711…凸部 10…マーク記号部 100…車載レーダー装置 R…電磁波透過領域 P…触媒失活層