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特許7431033アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C12G3/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019235488
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021101688
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】二関 倫太郎
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-36319(JP,A)
【文献】特開2017-86059(JP,A)
【文献】 「サッポロチューハイ99.99(フォーナイン)」新発売~純度99.99%の高純度ウォッカを使用した本格チューハイが新登場~,サッポロビール株式会社 ニュースリリース,2018年07月18日,pp.1-2,retrieved on 2023.12.22, retrieved from the internet,<https://www.sapporobeer.jp/news_release/items/0000021976/pdf/201807189999.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/00-3/08
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるアルコール飲料であって、
リモネンとα-テルピネンとを含有し、
前記リモネンの含有量が0.4~1.5ppmであるアルコール飲料。
【請求項2】
前記α-テルピネンの含有量が0.15ppm以下である請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
アルコール度数が8v/v%以上である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
ペットボトルに詰められているとともに、チューハイテイスト飲料である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるアルコール飲料の製造方法であって、
リモネンとα-テルピネンとを含有させ、前記リモネンの含有量を0.4~1.5ppmとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるとともにリモネンを含有するアルコール飲料の後味のえぐみとアルコール臭とを低減させる香味向上方法であって、
前記アルコール飲料にα-テルピネンを含有させ、前記リモネンの含有量を0.4~1.5ppmとするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、飲料を封入する容器として、様々な種類の容器が市場に流通している。そして、容器の中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるペットボトルは、軽量であって、割れ難く、低コストで製造できるなどの利点を有する。
【0003】
しかしながら、ペットボトルは透明容器であることから、容器内に光を透過させてしまう。そのため、容器内の飲料は光による影響を受け易く、飲料の品質の中でも、特に、飲料の色(外観)に大きな変化をもたらしてしまう。
ここで、ペットボトルに封入される飲料が、そもそも色が薄ければ、当然、色の変化の度合いも抑制することができる。
【0004】
色の薄い飲料について、例えば、特許文献1には、容器詰飲料であって、クロロゲン酸の含有量が0.2~100ppmであり、クエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計が0~18.0g/Lであり、そして波長500nmにおける吸光度が0.2以下である飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-169542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1に係る発明のように色の薄い飲料(いわゆる透明の飲料)について、レモン感を付与するためにリモネンを含有させるとともにアルコールを含有させて、このアルコール飲料の香味に関する詳細な検討を実施した。
その結果、透明のアルコール飲料にリモネンを含有させると、リモネンに由来する後味のえぐみが強く感じられるとともに、アルコール臭も感じやすいことが確認できた。
【0007】
そこで、本発明は、後味のえぐみとアルコール臭とが低減されたアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるアルコール飲料であって、リモネンとα-テルピネンとを含有し、前記リモネンの含有量が0.4~1.5ppmであるアルコール飲料。
(2)前記α-テルピネンの含有量が0.15ppm以下である前記1に記載のアルコール飲料。
(3)アルコール度数が8v/v%以上である前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
(4)ペットボトルに詰められているとともに、チューハイテイスト飲料である前記1から前記3のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(5)波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるアルコール飲料の製造方法であって、リモネンとα-テルピネンとを含有させ、前記リモネンの含有量を0.4~1.5ppmとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
(6)波長500nmにおける吸光度が0.010以下であるとともにリモネンを含有するアルコール飲料の後味のえぐみとアルコール臭とを低減させる香味向上方法であって、前記アルコール飲料にα-テルピネンを含有させ、前記リモネンの含有量を0.4~1.5ppmとするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルコール飲料は、後味のえぐみとアルコール臭とが低減している。
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、後味のえぐみとアルコール臭とが低減しているアルコール飲料を製造することができる。
本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、波長500nmにおける吸光度が0.010以下であってリモネンを含有するアルコール飲料の後味のえぐみとアルコール臭とを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、波長500nmにおける吸光度が0.010以下であって、リモネンとα-テルピネンとを含有する飲料である。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
そして、本実施形態に係るアルコール飲料は、リモネンを含有することから、レモン感を感じられるレモンチューハイテイスト飲料に適用するのが好ましい。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料を構成する各要素について説明する。
【0012】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有している。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0013】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、3v/v%以上であるのが好ましく、4v/v%以上、5v/v%以上、6v/v%以上、7v/v%以上、8v/v%以上であるのがより好ましい。アルコール度数が所定値以上であることによって、前記した課題(特に、アルコール臭)がより明確化する。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数の上限は特に限定されないものの、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、13v/v%以下、11v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下である。
【0014】
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定することができる。
【0015】
(吸光度)
本実施形態に係るアルコール飲料は、波長500nmにおける吸光度が0.010以下が好ましく、0.008以下、0.007以下、0.006以下、0.005以下、0.003以下がより好ましい。波長500nmにおける吸光度が所定値以下であることによって、アルコール飲料をペットボトルに封入した場合であっても、光による品質劣化(特に、色の変化)を抑制することができる。
なお、本実施形態に係るアルコール飲料の吸光度は、飲料に含有させる物質、及び、物質の含有量で調製することができる。
【0016】
本実施形態に係るアルコール飲料の波長500nmにおける吸光度は、市販の吸光光度計(例えば、HITACHI社製分光光度計U3010)を用いて測定することができる。
【0017】
(リモネン)
リモネン(limonene)は、化学式ではC1016で表される単環式モノテルペンの一種である。
そして、リモネンは、飲料にレモン感を付与することができる物質であるが、本発明者は、この物質を波長500nmの吸光度が低いアルコール飲料に含有させたところ、後味において残るようなえぐみを発生させてしまうことを確認した。
【0018】
リモネンの含有量は、0.4ppm以上が好ましく、0.5ppm以上、0.6ppm以上、0.7ppm以上、0.8ppm以上、0.9ppm以上、1.0ppm以上がより好ましい。リモネンの含有量が所定値以上であることによって、レモン感を増強させるだけでなく、本発明の課題(特に、後味のえぐみ)が明確になる。
リモネンの含有量は、1.5ppm以下が好ましく、1.4ppm以下、1.3ppm以下、1.2ppm以下、1.1ppm以下がより好ましい。リモネンの含有量が所定値以下であることによって、後記するα-テルピネンに基づく効果をしっかりと発揮させることができる。
なお、本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義である。
【0019】
(α-テルピネン)
α-テルピネン(α-terpinene)とは、化学式ではC1016で表されるモノテルペン炭化水素の一つであり、p-メンタ-1,3-ジエンとも呼ばれる。
そして、本発明者は、波長500nmの吸光度が低いとともにリモネンを含有するアルコール飲料に、このα-テルピネンを含有させることによって、リモネンに由来する後味のえぐみを低減できるとともに、アルコール臭も低減できることを見出した。
【0020】
α-テルピネンの含有量は、0.005ppm以上が好ましく、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上がより好ましい。α-テルピネンの含有量が所定値以上であることによって、後味のえぐみとアルコール臭とを確実に低減させることができる。
α-テルピネンの含有量は、0.2ppm以下が好ましく、0.15ppm以下、0.1ppm以下、0.08ppm以下、0.07ppm以下、0.06ppm以下、0.05ppm以下がより好ましい。α-テルピネンの含有量が所定値以下であることによって、後味のえぐみとアルコール臭とを低減させつつ、しっかりとしたレモン感を発揮させることができる。
【0021】
なお、リモネンの含有量、及び、α-テルピネンの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で既知の方法により測定することができる。
【0022】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧(全圧)が0.5kg/cm以上であることをいい、1.0kg/cm以上が好ましく、1.5kg/cm以上、2.0kg/cm以上、3.0kg/cm以上、3.5kg/cm以上がより好ましい。
【0023】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
【0024】
本実施形態に係るアルコール飲料は、チューハイテイスト飲料とする場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の効果(後味のえぐみの低減、アルコール臭の低減)は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けず、少なくとも、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
【0025】
(容器詰めアルコール飲料)
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
そして、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
ただし、本実施形態に係るアルコール飲料は、波長500nmの吸光度が所定値以下であることから、容器の中でも、外観を確認できる透明な容器、例えばペットボトルに入れて、ペットボトル(容器)詰めアルコール飲料とするのが好ましい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、後味のえぐみとアルコール臭とが低減している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、レモン感が増強しているとともに、味の厚みも増強しており、さらに、香味の総合評価にも優れている。
【0027】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0028】
混合工程では、混合タンクに、水、リモネン、α-テルピネン、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、リモネンの含有量やα-テルピネンの含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0029】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0030】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、後味のえぐみとアルコール臭とが低減しているアルコール飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、レモン感が増強しているとともに、味の厚みも増強しており、さらに、香味の総合評価にも優れているアルコール飲料を製造することができる。
【0032】
[アルコール飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、波長500nmの吸光度が所定値以下であるとともにリモネンを含有するアルコール飲料の後味のえぐみとアルコール臭とを低減させる香味向上方法であって、前記アルコール飲料にα-テルピネンを含有させ、リモネンの含有量を所定範囲内とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、波長500nmにおける吸光度が0.010以下であってリモネンを含有するアルコール飲料の後味のえぐみとアルコール臭とを低減させることができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、波長500nmにおける吸光度が0.010以下であってリモネンを含有するアルコール飲料について、レモン感と味の厚みとを増強させるとともに、さらに、香味の総合評価を優れたものとすることができる。
【実施例
【0034】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0035】
[サンプルの準備]
表に示す量となるように、ウォッカ、リモネン、α-テルピネン、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸水、純水を適宜配合してサンプルを準備した。
なお、表の各サンプルについて、表に記載していない成分の含有量は、サンプル間で略統一していた。
そして、各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は2.20kg/cmとし、各サンプルのアルコール度数は8.98v/v%とした。
【0036】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル7名が下記評価基準に則って「レモン感」、「後味のえぐみ」、「厚み」、「アルコール臭」、「総合評価」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0037】
(レモン感:評価基準)
レモン感の評価は、サンプル1-1を基準とし、「レモン感を全く感じない(サンプル1-1と同程度である)」場合を1点、「レモン感を非常に強く感じる」場合を5点と評価した。そして、レモン感については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「レモン感」とは、味と香りとの両面におけるレモン感であり、レモン感が強いとは、レモン様の味と香り(レモン風味)が強い様子を示している。
【0038】
(後味のえぐみ:評価基準)
後味のえぐみの評価は、サンプル1-1を基準とし、「後味のえぐみを全く感じない(サンプル1-1と同程度である)」場合を1点、「後味のえぐみを非常に強く感じる」場合を5点と評価した。そして、後味のえぐみについては、点数が低いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「後味のえぐみ」とは、リモネンに由来するえぐみであって、後味において口腔内に残るえぐみ(不快な収れん味)である。
【0039】
(厚み:評価基準)
厚みの評価は、サンプル1-1を基準とし、「味の厚みが全くない(サンプル1-1と同程度である)」場合を1点、「味が非常に厚いと感じる」場合を5点と評価した。そして、厚みについては、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「厚み」とは、サンプルを飲んでいる最中に感じる味の厚み(ボリューム)である。
【0040】
(アルコール臭:評価基準)
アルコール臭の評価は、サンプル1-1を基準とし、「アルコール臭を全く感じない」場合を1点、「アルコール臭を非常に強く感じる(サンプル1-1と同程度である)」場合を5点と評価した。そして、アルコール臭については、点数が低いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「アルコール臭」は、立ち香(飲む前に感じる香り)で感じるアルコール臭と、サンプルを飲んでいる最中に感じるアルコール臭との両方で評価した。
【0041】
(総合評価:評価基準)
総合評価については、「アルコール飲料の香味として悪いと感じる」場合を1点、「アルコール飲料の香味として良いと感じる」場合を5点と評価した。
【0042】
[吸光度]
サンプルの波長500nmにおける吸光度は、HITACHI社製分光光度計U3010を用いて測定した。
その結果、サンプル1-5の波長500nmにおける吸光度の測定値は0.005であり、サンプル2-6の波長500nmにおける吸光度の測定値は0.006であった。
【0043】
なお、サンプル1-1~1-4は、サンプル1-5と比較して、リモネンの含有量が低いだけで、その他の成分の含有量やアルコール度数等の構成が全て同じである。よって、サンプル1-1~1-4の波長500nmにおける吸光度は、サンプル1-5の測定値よりも低い値(0.005以下)であると推察される。
また、サンプル2-1~2-5は、サンプル2-6と比較して、α-テルピネンの含有量が低いだけで、その他の成分の含有量やアルコール度数等の構成が全て同じである。よって、サンプル2-1~2-5の波長500nmにおける吸光度は、サンプル2-6の測定値よりも低い値(0.006以下)であると推察される。
【0044】
表に、各サンプルの配合量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値は、最終製品における含有量である。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(結果の検討)
表1の結果から、アルコール飲料のリモネンの含有量が増加すると、レモン感が増強する一方、後味のえぐみも増強してしまうことが確認できた。
言い換えると、表1の結果から、アルコール飲料のリモネンの含有量が所定値以上となると、解消すべき後味のえぐみが明確となることが確認できた。そして、サンプル1-3~1-5のリモネンの含有量の範囲において、解消すべき後味のえぐみが明確となるとともに、総合評価の点数も好ましい状態となることが確認できた。
なお、表1の結果から、アルコール飲料のリモネンの含有量が増加すると、アルコール臭が低減するものの、さらに低減させる余地はあることが確認できた。
【0048】
表2の結果から、リモネンを含有するアルコール飲料のα-テルピネンの含有量が増加すると、後味のえぐみが低減できるとともに、アルコール臭も低減できることが確認できた。
また、表2の結果から、リモネンを含有するアルコール飲料のα-テルピネンの含有量が所定範囲内となると、レモン感が増強し、厚みも増強し、さらに、総合評価の点数も上昇することが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル2-1~2-6の中でも、サンプル2-2~2-5(特に、サンプル2-3~2-5)について非常に好ましい結果が得られた。