(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】シリコン材料、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及びシリコン材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20240206BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240206BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240206BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20240206BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20240206BHJP
【FI】
C01B33/02 E
H01M4/38 Z
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/50
(21)【出願番号】P 2020002165
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 良文
(72)【発明者】
【氏名】野崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】早稲田 哲也
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111709(WO,A1)
【文献】特開2000-311856(JP,A)
【文献】特開2011-003432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C30B 1/00-35/00
H01M 4/00-4/62
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極活物質に用いられるシリコン材料であって、
Williamson-Hall法を用いてX線回折パターンの解析で求められる結晶のひずみパラメータが2.0×10
-4以上2.0×10
-3以下の範囲内のポリシリコンである、シリコン材料。
【請求項2】
前記ひずみパラメータが6.0×10
-4以下である、請求項1に記載のシリコン材料。
【請求項3】
前記ひずみパラメータが4.0×10
-4以上である、請求項1又は2に記載のシリコン材料。
【請求項4】
電子スピン共鳴測定で求められる欠陥濃度が5.0×10
17(スピン/g)以上5.0×10
19(スピン/g)以下の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコン材料。
【請求項5】
前記欠陥濃度が2.0×10
18(スピン/g)以下である、請求項4に記載のシリコン材料。
【請求項6】
前記欠陥濃度が7.5×10
17(スピン/g)以上である、請求項4又は5に記載のシリコン材料。
【請求項7】
電子スピン共鳴測定で求められる3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲に含まれるピークの線幅が5.5ガウス以上15ガウス以下の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリコン材料。
【請求項8】
前記線幅が6.0ガウス以上7.0ガウス以下の範囲である、請求項7に記載のシリコン材料。
【請求項9】
電子スピン共鳴測定で3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲にシグナルが2以上含まれる、請求項1~8のいずれか1項に記載のシリコン材料。
【請求項10】
アルカリ金属イオンをキャリアとする蓄電デバイスに用いられる電極であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載のシリコン材料を電極活物質として備えた、
蓄電デバイス用電極。
【請求項11】
アルカリ金属イオンをキャリアとする蓄電デバイスであって、
請求項10に記載の蓄電デバイス用電極を備えた、
蓄電デバイス。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のシリコン材料の製造方法であって、
ポリシリコンに対して物理的な応力を加える応力付与工程、
を含む、シリコン材料の製造方法。
【請求項13】
前記応力付与工程では、ポリシリコンに対してボールミル処理を行う、請求項12に記載のシリコン材料の製造方法。
【請求項14】
前記応力付与工程では、平均粒径が1μm以上150μm以下の範囲のポリシリコンに対して200rpm以上400rpm以下、且つ1時間以上3時間以下の範囲でボールミル処理を行う、請求項12又は13に記載のシリコン材料の製造方法。
【請求項15】
前記応力付与工程では、ポリシリコンに対して400℃以上700℃以下の加熱処理ののち50℃/分以上の降温速度で冷却処理する加熱冷却処理を行う、請求項12に記載のシリコン材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、シリコン材料、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及びシリコン材料の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、負極活物質としては、理論容量が4500mAh/gとエネルギー密度の高いポリシリコンを用いることが考えられている。しかしながら、ポリシリコンは、充放電に伴い、不均一な膨張、収縮が起きることがあり、活物質の割れなどに伴う充放電特性の悪化などが課題とされていた。これを克服するため、例えば、ポリシリコンを150nm以下のナノ粒子化し、粉砕平衡に近い状態で使用することにより、割れ強度を増加させたシリコン材料が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、シリコン材料の表面に炭素材料をコートする方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Electrochem. Solid-State Lett. 6, A194-197, 2003
【文献】J. Phys. Chem., C111, 11131,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1では、ポリシリコン粒子を粉砕平衡まで小さくする必要があり、粒子の界面の生成エンタルピーに相応する莫大なエネルギーを必要とするなど、まだ十分な手法ではなかった。また、上述の非特許文献2では、このような複合化技術を用いると製造工程が複雑化し、まだ十分な手法ではなかった。このように、蓄電デバイスの充放電時の体積変化をより低減することができる新規なシリコン材料およびその製造方法が求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、充放電時の体積変化をより低減することができる新規なシリコン材料、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及びシリコン材料の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、ポリシリコンに物理的な応力を加えて結晶ひずみ及び/又は欠陥を導入すると、充放電時の体積変化をより低減することができることを見いだし、本開示のシリコン材料及びその製造方法を完成するに至った。
【0007】
即ち、本開示のシリコン材料は、
X線回折パターンの解析で求められる結晶のひずみパラメータが2.0×10-4以上2.0×10-3以下の範囲内であるものである。
【0008】
あるいは、本開示のシリコン材料は、
電子スピン共鳴測定で求められる欠陥濃度が5.0×1017スピン/g以上5.0×1019以下の範囲であるものである。
【0009】
また、本開示の電極は、アルカリ金属イオンをキャリアとする蓄電デバイスに用いられる電極であって、上述したいずれかのシリコン材料を電極活物質として備えたものである。また、本開示の蓄電デバイスは、アルカリ金属イオンをキャリアとする蓄電デバイスであって、上述の蓄電デバイス用電極を備えたものである。
【0010】
本開示のシリコン材料の製造方法は、
上述したいずれかに記載のシリコン材料の製造方法であって、
ポリシリコンに対して物理的な応力を加える応力付与工程、
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、Siを含む材料において、充放電時の体積変化をより低減することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。従来、ポリシリコンは充填率の低いダイヤモンド構造の強固な結晶体である。これに対し電極での充電反応、ポリシリコンへのリチウム挿入反応を行うと、充電によって生じるリチウム層が結晶構造を破壊しながら、縞状に成長する。この要因は二つあり、1つはシリコンの結晶構造が強固なため、少ない脆弱な部分、たとえば双晶界面や欠陥、および結晶構造のひずみに反応が集中するからである。もう1つは1度リチウム挿入反応が生じた部分は界面のエンタルピーを小さくするためにさらにその部分、つまりリチウムとシリコンとが反応した部分に反応が集中し、近隣の結晶構造の弱い部分へと拡大していく。その結果、リチウムの充放電に伴い充電ムラが生じ、体積膨張の原因となる。通常、電極に圧力等を加えない場合には、均一な方向に膨張するが、ポリシリコンを電極に塗工し、プレス、電池容器による拘束により一方向に圧力を加えた場合、それによる歪や欠陥が特定の方向に生じるので、特定の方向に膨張する傾向がある。ここで、本開示のシリコン材料のように、結晶構造にひずみや欠陥を導入すると、結晶界面に脆弱な部分が増加することから、それにより界面の広範囲な部分にリチウム挿入反応が分散されるので、不均一な膨張が緩和される。また、欠陥やひずみの部分は界面のエンタルピーが高いので、リチウム挿入反応がすでに生じたリチウム挿入反応部分との競争に対して有利になるので、反応が分散される。このように、本開示では、ひずみや欠陥を形成することによって、上記2つの要因をより緩和することができ、シリコン材料の体積膨張を緩和することができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】蓄電デバイス10の構造の一例を示す説明図。
【
図4】実験例1、4~6のスピン濃度と線幅の関係図。
【
図6】ひずみパラメータと拘束圧増加量との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(シリコン材料)
本開示のシリコン材料は、ポリシリコン粒子の結晶にひずみ及び/又は欠陥が導入されたものである。シリコン材料は、X線回折パターンの解析で求められる結晶のひずみパラメータが2.0×10-4以上2.0×10-3以下の範囲内であることが好ましい。このひずみパラメータがこの範囲にあると、シリコン材料の充放電時の体積変化をより低減することができる。このひずみパラメータは、4.0×10-4以上であることが好ましい。また、ひずみパラメータは、6.0×10-4以下であることが好ましい。なお、ひずみパラメータは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、その測定結果を用いて、Williamson-Hall法により求めるものとする。
【0014】
本開示のシリコン材料は、電子スピン共鳴(ESR)測定で求められる欠陥濃度が5.0×1017(スピン/g)以上5.0×1019(スピン/g)以下の範囲であることが好ましい。この欠陥濃度がこの範囲にあると、シリコン材料の充放電時の体積変化をより低減することができる。この欠陥濃度は、7.5×1017(スピン/g)以上であることがより好ましく、8.0×1017(スピン/g)以上であることが更に好ましい。欠陥濃度が7.5×1017(スピン/g)以上では、シリコン材料の粒径を5μmとし、電流密度1mA/cm3としたときに、十分対応することができる。また、この欠陥濃度は、2.0×1018(スピン/g)以下であることがより好ましく、1.2×1018(スピン/g)以下であることが更に好ましい。欠陥濃度がこの範囲にあると、シリコン材料の充放電時の体積変化をより低減することができる。この欠陥濃度は、電子スピン共鳴(ESR)測定を行い、その測定結果を用いて、試料のスペクトルと濃度標準との二重積分値の比較により求めるものとする。
【0015】
シリコン材料は、Xバンド電子スピン共鳴測定で求められる3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲に含まれるピークの線幅が5.5ガウス以上15ガウス以下の範囲であることが好ましい。この範囲では、シリコン材料の充放電時の体積変化をより低減することができる。この線幅は、6.0ガウス以上7.0ガウス以下の範囲であることが好ましい。また、シリコン材料は、電子スピン共鳴測定で3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲にシグナルが2以上含まれることが好ましい。シグナルが2以上含まれると、複数の構造が含まれる、即ち、ひずみや欠陥を有している。シグナルは、明確なピークのほか、ショルダーも含まれる。
【0016】
シリコン材料は、Siの含有量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが更に好ましい。シリコン材料は、Siの含有量が多いことが好ましいが、副成分を含むものとしてもよい。副成分としては、例えば、酸素や、窒素、アルミニウム、ホウ素などが挙げられる。
【0017】
シリコン材料は、結晶質であることが好ましい。シリコン材料は、波長1.5418Å(あるいはCuKα)のX線を用いたとき、X線回折パターンにおいて、結晶構造が2θ=28.4°、47.3°、56.1°、69.1°、76.4°、88.0°、94.5°、106.7°、114.0°、125.7°および136.9°の近傍にピークを有するものとしてもよい。なお、各ピーク値は、±0.5°の範囲内でシフトしてもよい。
【0018】
シリコン材料は、粒子状であることが好ましく、この平均粒径は、0.1μm以上150μm以下の範囲であるものとしてもよい。この範囲の粒径では、ひずみや欠陥を付与するのに良好である。シリコン材料の平均粒径は、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましく、10μm以上としてもよい。また、シリコン材料の平均粒径は、120μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましく、50μm以下としてもよい。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)でシリコン材料を観察し、画像領域に含まれる粒子の長径と短径とを求め、この長径をその粒子の粒径として各粒子の値を積算し、粒子数で除算することで平均値したものとする。
【0019】
(シリコン材料の製造方法)
本開示のシリコン材料の製造方法は、上述したシリコン材料の製造方法であって、ポリシリコンに対して物理的な応力を加える応力付与工程、を含むものとしてもよい。この応力付与工程では、シリコンの多結晶体に対しボールミル処理や加熱冷却処理を施し、ひずみや欠陥を蓄積させることができる。この処理で蓄積させるひずみや欠陥は、上述したシリコン材料で説明した範囲とする。
【0020】
応力付与工程で、ポリシリコンに対してボールミル処理を行う場合、例えば、平均粒径が1μm以上200μm以下の範囲のポリシリコンを用いることが好ましく、10μm以上150μm以下の範囲のポリシリコンを用いることがより好ましい。平均粒径が1μm以上では入手しやすく、200μm以下では粉砕されにくく好ましい。ボールミル処理では、例えば、ポリシリコンに対して200rpm以上400rpm以下の範囲の回転数で、且つ1時間以上3時間以下の範囲でボールミル処理を行うことが好ましい。この範囲では、粒子の粉砕をより抑制し、十分なひずみ、欠陥を付与することができる。ボールミル処理では、容積やメディアとしてのボールなどの条件は、特に限定されず、所望の特性を得られる範囲で適宜選択すればよい。また、ボールミル処理は、湿式でも効果を付与することができるが、乾燥処理などの手間や、溶媒によりSi結晶へ影響がある場合があることに鑑み、乾式の方が好ましい。
【0021】
応力付与工程では、ポリシリコンに対して400℃以上700℃以下の加熱処理ののち50℃/分以上の降温速度で冷却処理する加熱冷却処理を行うものとしてもよい。この降温速度は、例えば、75℃/分以上がより好ましく、100℃/分以上としてもよい。また、製造工程の簡素化から、この降温速度は、200℃/分以下としてもよい。加熱処理では、500℃以上とすることが好ましく、550℃以上としてもよい。また、加熱処理では、650℃以下とすることが好ましく、600℃以下としてもよい。加熱温度が高いと残留ひずみや欠陥が多くなることから、加熱処理は、500℃~650℃の範囲が好ましい。加熱処理において、その加熱温度での保持時間は、30分以上12時間以下の範囲が好ましい。この保持時間は、1時間以上4時間以下の範囲とすることができる。冷却処理では、加熱後に常温の大気中に高速散布して急冷させるものとしてもよい。また、冷却処理では、降温速度が大きいほど残留ひずみや欠陥が多くなることから、降温速度は、100℃/分以上が好ましく、200℃/分以上がより好ましい。
【0022】
応力付与工程では、ボールミル処理及び加熱冷却処理を適宜組み合わせて行うものとしてもよい。上述した応力付与工程を経て、本開示のシリコン材料を作製することができる。
【0023】
(蓄電デバイス用電極)
本開示の蓄電デバイス用電極は、アルカリ金属イオンをキャリアとする蓄電デバイスに用いられる電極であって、上述のシリコン材料を電極活物質として備えたものである。この電極は、対極の活物質の電位に基づいて正極又は負極のいずれかとなるが、負極であるものとしてもよい。この電極は、集電体上に上述したシリコン材料を形成し、集電体上に固着したものとしてもよい。この蓄電デバイス用電極は、上述したシリコン材料を必要に応じて導電材や結着材と溶媒に混合しペースト状にした電極合材を集電体上に塗布するか、結着材と混合した電極合材を集電体に圧着したものとしてもよい。また、電極合材は、固体電解質を含むものとしてもよい。固体電解質としては、無機固体電解質や有機固体電解質などが挙げられる。無機固体電解質としては、例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、xLi3PO4-(1-x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4-Li2S-SiS2、硫化リン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリホスファゼン、ポリエチレンスルフィド、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0024】
この電極において、シリコン材料の含有量は、より多いことが好ましく、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましい。導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。溶媒としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体は、活物質の電位などに応じて適宜選択すればよいが、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、銅、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。活物質複合体の形成量は、蓄電デバイスに求められる所望の性能に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、上述したシリコン材料を有する電極を備えたものである。この蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極及び負極の間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものとしてもよい。この蓄電デバイスは、アルカリ金属イオンをキャリアとするものとしてもよい。このキャリアは、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどが挙げられ、リチウムがより好ましい。説明の便宜のため、以下、リチウムをキャリアとする蓄電デバイスを主として説明する。シリコン材料は、負極活物質として用いることができる。この蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ハイブリッドキャパシタ、空気電池などのうちいずれかであるものとしてもよい。正極において、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。あるいは、正極活物質は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている炭素質材料としてもよい。炭素質材料としては、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素質材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。正極に用いられる導電材や結着材、溶媒、集電体などは、上述した電極で例示したものを適宜利用することができる。
【0026】
イオン伝導媒体としては、キャリアであるアルカリ金属イオンを伝導する固体電解質が挙げられる。固体電解質を用いた全固体型蓄電デバイスとすると、より安定的に用いることができ好ましい。固体電解質は、上記蓄電デバイス用電極で説明したものを適宜使用することができる。また、イオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
【0027】
また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、固体のイオン伝導性ポリマーをイオン伝導媒体として用いることもできる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、フッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
【0028】
蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0029】
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
図1は、蓄電デバイス10の構造の一例を示す説明図である。この蓄電デバイス10は、正極12と、負極15と、イオン伝導媒体18とを有する。正極12は、正極活物質13と、集電体14とを有する。負極15は、負極活物質16と、集電体17とを有する。負極活物質16は、上述したシリコン材料であり、構造体を形成するシリコン21と、ひずみ23とを有する。なお、シリコン材料は、ひずみ23に加えて又はこれに代えて欠陥を有するものとしてもよい。
【0030】
以上詳述したように、実施形態のシリコン材料、その製造方法、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスで、Siを含む材料において、充放電時の体積変化をより低減することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。従来、ポリシリコンは充填率の低いダイヤモンド構造の強固な結晶体である。これに対し電極での充電反応、ポリシリコンへのリチウム挿入反応を行うと、充電によって生じるリチウム層が結晶構造を破壊しながら、縞状に成長する。この要因は二つあり、1つはシリコンの結晶構造が強固なため、少ない脆弱な部分、たとえば双晶界面や欠陥、および結晶構造のひずみに反応が集中するからである。もう1つは1度リチウム挿入反応が生じた部分は界面のエンタルピーを小さくするためにさらにその部分、つまりリチウムとシリコンとが反応した部分に反応が集中し、近隣の結晶構造の弱い部分へと拡大していく。その結果、リチウムの充放電に伴い充電ムラが生じ、体積膨張の原因となる。通常、電極に圧力等を加えない場合には、均一な方向に膨張するが、ポリシリコンを電極に塗工し、プレス、電池容器による拘束により一方向に圧力を加えた場合、それによる歪や欠陥が特定の方向に生じるので、特定の方向に膨張する傾向がある。ここで、本開示のシリコン材料のように、結晶構造にひずみや欠陥を導入すると、結晶界面に脆弱な部分が増加することから、それにより界面の広範囲な部分にリチウム挿入反応が分散されるので、不均一な膨張が緩和される。また、欠陥やひずみの部分は界面のエンタルピーが高いので、リチウム挿入反応がすでに生じたリチウム挿入反応部分との競争に対して有利になるので、反応が分散される。このように、本開示では、ひずみや欠陥を形成することによって、上記2つの要因をより緩和することができ、シリコン材料の体積膨張を緩和することができるものと推察される。
【0031】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0032】
以下には、本開示のシリコン材料および蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。実験例2~6が本開示の実施例であり、実験例1が比較例である。
【0033】
[シリコン材料の作製(実験例1~3)]
市販のポリシリコン(平均粒径10μm)を実験例1のシリコン材料とした。また、このポリシリコンを真空雰囲気下で650℃、又は500℃で1時間加熱し、常温の大気中に高速散布して急冷させ、粒子内にひずみを加えたものをそれぞれ実験例2、3とした。急冷の降温速度は、75℃/分であった。実験例1~3のシリコン材料の平均粒径は、処理前と変わらず、それぞれ10μmであった。
【0034】
(実験例4~6)
市販のポリシリコン(平均粒径10μm)を2g秤量し、容積0.2Lのジルコニア製ポットに入れ、直径5mmのジルコニアボールを30g入れて密栓し、フィリッチュジャパン製遊星型のボールミル装置を用いて、25℃、200rpm、300rpm、400rpmの回転数で2時間、ボールミル処理を行い、粒子内にひずみを加えたものをそれぞれ実験例4~6のシリコン材料とした。実験例4~6のシリコン材料の平均粒径は、それぞれ、9μm、9μm、9μmであった。
【0035】
(X線回折測定)
得られた実験例1~6の粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定は、粉末X線解析装置(リガク社製RINT-TTR)を用い、測定条件を管電圧50kV、管電流300mA、発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
図2は、実験例1~6のX線回折プロファイルである。
図2に示すように、測定結果であるX線回折パターンは、結晶構造が2θ=28.4°、47.3°、56.1°、69.1°、76.4°、88.0°、94.5°、106.7°、114.0°、125.7°および136.9°にピークを有するものであった。この測定結果を用い、Williamson-Hall法により、ひずみパラメータを算出した。このひずみパラメータは、加熱急速冷却とボールミル処理とで同等であるため、比較的簡便且つ低コストであるボールミル処理によって、好適なひずみを与えることができることがわかった(後述の表2参照)。
【0036】
(ESR測定)
得られた実験例1~6のESR測定を行った。ESR測定は、XバンドESR測定装置(ブルカー社製E500)を用い、表1に示す条件で測定した。測定温度は、室温(20℃)とした。得られたスペクトルについて、ジフェニルピクリルヒドラジル(アルドリッチ製)の濃度標準を予め測定し、濃度標準のスペクトルと各試料のスペクトルとの、3470~3530ガウスの間の二重積分値を比較することにより、スピン濃度を算出した。
【0037】
【0038】
[蓄電デバイス(試験用セル)の作製]
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を70質量部、固体電解質としてLi2S-P2S5を含むガラスセラミックスを10質量部、導電材として気相成長炭素繊維(VGCF)を10質量部、および結着材としてポリビニリデンフルオライド(PVdF)を10質量部秤量し、混合したものを正極合材とした。この正極合材を厚さ15μmのアルミニウム箔に塗工し、1cm×1cmに切断したものを正極とした。正極合材層の厚さは50μmとした。
【0039】
負極活物質として実験例1~6のシリコン材料を70質量部、上記ガラスセラミックスを10質量部、上記VGCFを10質量部、上記PVdFを10質量部秤量し、混合したものを負極合材とした。この負極合材を厚さ35μmの銅箔に塗工し、1.2cm×1.2cmに切断したもの負極とした。負極合材層の厚さは30μmとした。
【0040】
固体電解質は以下のように作製した。まず、LiI-LiBr-Li2S-P2S5を含むガラスセラミックスを95質量部、結着材としてブチルゴム系のバインダー5質量部、ヘプタン95質量部を加えスラリーとした。このスラリーをアルミニウム箔にキャスティングし、ヘプタンを乾燥させたものを電解質膜(固体電解質)とした。この電解質膜は、厚さを15μmとした。
【0041】
上記得られた固体電解質層と正極合材とが完全に接触するように両者を積層して1cm2あたり1トンの圧力でプレスした。その後、固体電解質側のアルミニウム箔をはがし正極-固体電解質の2層体を得た。この2層体の固体電解質側と負極合材とが完全に接触するように両者を積層して1cm2あたり6トンの圧力でプレスした。以上のようにして得られた電池体を所定の拘束治具を用いて5MPaの圧力で拘束し、試験用セルとした。
【0042】
(充放電試験)
得られた試験用セルを用い、以下の過程の充放電を行った。まず、3時間率(3時間で満充電に至る電流量)で4.55Vまで充電を行った。次に、定電流-定電圧で2.5Vまで放電した。次に、定電流-定電圧4.35Vまで充電した。続いて、定電流-定電圧で3.00Vまで放電した。そして、1時間率で4.17V-3.17V間での充放電を300サイクル行った。
【0043】
(拘束圧の測定)
上記充放電サイクルを行った試験用セルに対して、拘束圧を測定した。測定は、試験用セルの拘束治具の間に測定センサを挿入し、測定器(株式会社共和電業製ロードセル)を用いて行った。測定結果は、実験例1の測定値を100として、他の実験例の測定結果を規格化した。
【0044】
(結果と考察)
実験例1~6のひずみパラメータ、ESRの線幅(ガウス)、スピン濃度(/g)及び拘束圧増加量(-)を表2にまとめた。
図3は、実験例1~3のESRスペクトルである。
図4は、実験例1、4~6のスピン濃度と線幅の関係図である。
図5は、実験例1、4~6のESRスペクトルである。
図6は、ひずみパラメータと拘束圧増加量との関係図である。
図7は、スピン濃度と拘束圧増加量との関係図である。表2に示すように、実験例2、3は、未処理の実験例1に比してひずみパラメータが大きく、欠陥量も大きいことがわかった。この結果、実験例2,3は、実験例1に比して拘束圧の増加量が小さくなり、体積変化がより抑制されていることが明らかとなった。
図3に示すように、ESRスペクトルにおいて、実験例1では、線幅が5.1ガウスのシグナルが唯一確認できるのに対して。実験例2,3では、3510ガウス付近にショルダーが確認されることから2種類のシグナルが存在することがわかった。このため、実験例2,3は、結晶構造の異なる領域、即ちひずみや欠陥を含む構造を有するものと推察された。
【0045】
また、実験例4、5は、実験例1に比してひずみパラメータが大きく、欠陥量も大きいことがわかった。更に、拘束圧増加量については、実験例4,5は、実験例1に比してより小さい値を示した。また、実験例6では、ひずみパラメータおよび線幅は実験例5に比して大きくなるが、スピン濃度および拘束圧増加量は実験例5とほぼ同等の値を示し、ひずみや欠陥から得られる体積膨張抑制効果が飽和状態に近くなることが示唆された。また、加熱急冷によるひずみや欠陥の形成に比して、物理的な応力を加える処理の方が、より大きなひずみや欠陥をシリコン材料に形成することができるものと推察された。
【0046】
これらの結果より、シリコン材料は、X線回折パターンの解析で求められる結晶のひずみパラメータが2.0×10-4以上2.0×10-3以下の範囲内とし、更に、このひずみパラメータが6.0×10-4以下、4.0×10-4以上であることが好ましいものと推察された。また、このシリコン材料は、電子スピン共鳴測定で求められる欠陥濃度が5.0×1017スピン(スピン/g)以上5.0×1019以下の範囲であることが好ましく、1.0×1018以上1.0×1018以下であることがより好ましいものと推察された。更に、電子スピン共鳴測定で求められる3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲に含まれるピークの線幅が5.5ガウス以上15ガウス以下の範囲であることが好ましく、6.0ガウス以上7.0ガウス以下の範囲がより好ましいものと推察された。更にまた、電子スピン共鳴測定で3490ガウス以上3530ガウス以下の範囲に欠陥のシグナルが2以上含まれることが好ましいと推察された。このようなシリコン材料では、ポリシリコンの充電に伴う体積膨張が抑制され、大容量でかつ、安全・長寿命の蓄電デバイスを提供することができることがわかった。
【0047】
【0048】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、二次電池などの蓄電デバイスの技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 蓄電デバイス、12 正極、13 正極活物質、14 集電体、15 負極、16 負極活物質、17 集電体、18 イオン伝導媒体、21 シリコン、23 ひずみ。