(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04302 20160101AFI20240206BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240206BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M8/04302
H01M8/12 101
H01M8/0612
H01M8/0438
C01B3/38
(21)【出願番号】P 2020015406
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/015673(WO,A1)
【文献】特開2018-198116(JP,A)
【文献】特開2011-238527(JP,A)
【文献】特開2005-268190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0104487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの
燃料電池反応によって発電を行うセルスタックと、前記
酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための
酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、を備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記
酸化剤ガス供給手段からの前記
酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収され、水蒸気が除去された燃料オフガスが前記燃焼器に送給されて前記セルスタックの前記酸素極側からの空気オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給手段からの燃料ガスを前記改質器に送給する燃料ガス供給流路に、前記燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスの一部を前記燃焼器に送給する燃料ガス分岐送給流路が設けられ、前記燃料ガス分岐送給流路に流路開閉弁が設けられており、
起動時に前記流路開閉弁が
開状態になると、前記燃料ガス供給流路を通して前記改質器に流れる燃料ガスの一部が前記燃料ガス分岐送給流路を通して前記燃焼器に
送給され、また前記セルスタックの温度が上昇して前記流路開閉弁が閉状態となると、前記燃焼器への燃料ガスの送給が停止し、前記燃料ガス供給手段は、前記流路開閉弁が起動後閉状態になったときに前記改質器に供給する燃料ガスの供給流量を一時的に少なくするように制御されることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された燃料オフガスを前記燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路に、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すリサイクル流路が設けられ、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガス供給手段と前記改質器との間に、前記燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去するための脱硫器が設けられ、前記燃料ガス分岐送給流路は前記脱硫器の配設部位の上流側又は下流側に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料ガス分岐送給流路の流路圧力損失は、前記流路開閉弁の開状態における前記改質器への燃料ガスの供給流量が前記流路開閉弁の閉状態における前記改質器への燃料ガスの供給流量の1/2未満となるように設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの
燃料電池反応によって発電を行うセルスタックと、前記
酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための
酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、前記水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された燃料オフガスを前記燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路と、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すリサイクル流路とを備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記
酸化剤ガス供給手段からの前記
酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収され、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が前記燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されて前記セルスタックからの空気オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記セルスタックからの燃料オフガスを前記水蒸気凝縮部に排出する燃料オフガス排出流路と前記燃料オフガス送給流路とを接続するバイパス流路が設けられ、前記バイパス流路に流路開閉弁が設けられており、
起動時に前記流路開閉弁が開状態となり、前記燃料オフガス排出流路を通して前記水蒸気凝縮部に流れる燃料オフガスの一部が前記バイパス流路及び前記燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを改質した改質燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池反応によって発電を行うセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質を用いた固体酸化物形のセルスタックを収納容器内に収納した固体酸化物形燃料電池システムが知られている。この固体酸化物形燃料電池システムにおいては、セルスタックは複数の燃料電池セルを積層して構成され、各燃料電池セルにおける固体電解質の片面側に燃料ガスを酸化するための燃料極が設けられ、その他面側に空気(酸化剤ガス)中の酸素を還元するための酸素極が設けられている。この固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池セルの作動温度は約700~900℃と高く、このような高温下において、燃料ガス(改質燃料ガス)中の水素や一酸化炭素、炭化水素と空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって発電が行われる。
【0003】
このような固体酸化物形燃料電池システムとして、燃料ガス(原燃料ガス)を水蒸気改質するための改質器と、改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池反応によって発電を行うセルスタックと、セルスタックの酸素極(空気極)側に酸化剤ガスとしての空気を供給するための空気供給手段と、改質器に燃料ガス(原燃料ガス)を供給するための燃料ガス供給手段とを備え、セルスタック及び改質器が高温状態に保たれる高温空間に収容されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックの上側に燃焼域が設けられ、この燃焼域の上方に改質器が配設されている。そして、改質器からの改質燃料ガスがセルスタックの燃料極側に送給され、空気供給手段からの空気がセルスタックの空気極側に送給され、このセルスタックにおける電気化学反応により発電が行われる。セルスタックの燃料極側からの燃料オフガス(即ち、アノードオフガス)及び空気極側からの空気オフガス(即ち、カソードオフガス)は燃焼域に送給されて燃焼され、この燃焼熱を利用して高温空間が高温状態に保たれるとともに、改質器などが加熱される。
【0005】
固体酸化物形燃料電池システムとして、セルスタックの上側に燃焼域を設けることに代えて、専用の燃焼器を備えたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックの燃料極側からの燃料オフガス(アノードオフガス)が燃料オフガス送給流路を通して燃焼器に送給され、またセルスタックの空気極側からの空気オフガス(カソードオフガス)が空気オフガス送給流路を通して燃焼器に送給され、この燃焼器において燃料オフガスが空気オフガスにより燃焼され、この燃焼熱を利用して高温空間が高温状態に保たれるとともに、改質器などが加熱される。
【0006】
近年、このような固体酸化物形燃料電池システムにおいて、発電効率を高めるようにしたものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックからの燃料オフガス(アノードオフガス)が高温空間から導出されて排熱回収用熱交換器に送給され、この排熱回収用熱交換器にて貯湯装置からの水との熱交換により冷却され、この冷却により燃料オフガスに含まれている水分が凝縮され、凝縮水は気液分離器で分離される。そして、水分が除去された燃料オフガス(アノードオフガス)の一部(4~10%程度)が燃料ガス供給ポンプの上流側の減圧領域(燃料ガス供給系)に戻され、この戻された燃料オフガスが燃料ガス供給源からの燃料ガス(例えば、都市ガス)に混合されて改質器に供給される。一方、残りの燃料オフガス(燃料ガス供給系に戻されないもの)は、高温空間内の燃焼器に送給され、この燃焼器にて空気オフガス(カソードオフガス)により燃焼される。
【0007】
このように燃料オフガスの一部を燃料ガス供給系に戻すことにより、燃料電池システムの発電効率を高めることができる。一般的にセルスタックの燃料利用率が通常82~83%程度であるのが、燃料オフガスを戻すことにより、この燃料利用率を87~90%程度まで高めることができ、5~7ポイント程度の改善をすることが可能になり、これにより、発電効率の嵩上げをすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-285340号公報
【文献】特開2008-21596号公報
【文献】特開2018-198116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような固体酸化物形燃料電池システムを室温から起動する場合、燃焼器にて燃料ガスを燃焼させて高温空間内の温度を高めていくことになる。しかし、従来の固体酸化物燃料電池システム(特許文献3)では、燃料オフガス(アノードオフガス)をこの高温空間から抜き出して一旦冷却する構成であるために、室温から作動温度に上げていく際に、セルスタック及びセルスタック周辺の気化器、燃焼器、改質器などに与えられるべき熱量が減ずることになる。そのため、起動時間が長くなるとともに、起動のために必要なエネルギーが大きくなる(換言すると、起動の際の燃料ガスの消費量が多くなる)問題がある。
【0010】
例えば、燃料オフガス(アノードオフガス)を高温空間から抜き出して冷却した後昇温させたときに、起動時間が長くなる影響を数字で具体的に示すことは難しいが、冷起動するのに約3時間程度かかっていたものが、その約1.5倍の4.5時間を超えるような時間となる。
【0011】
本発明の目的は、起動に必要な時間を短縮するとともに、起動に要するエネルギーを少なくすることができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池反応によって発電を行うセルスタックと、前記酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、を備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記酸化剤ガス供給手段からの前記酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収され、水蒸気が除去された燃料オフガスが前記燃焼器に送給されて前記セルスタックの前記酸素極側からの空気オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給手段からの燃料ガスを前記改質器に送給する燃料ガス供給流路に、前記燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスの一部を前記燃焼器に送給する燃料ガス分岐送給流路が設けられ、前記燃料ガス分岐送給流路に流路開閉弁が設けられており、
起動時に前記流路開閉弁が開状態になると、前記燃料ガス供給流路を通して前記改質器に流れる燃料ガスの一部が前記燃料ガス分岐送給流路を通して前記燃焼器に送給され、また前記セルスタックの温度が上昇して前記流路開閉弁が閉状態となると、前記燃焼器への燃料ガスの送給が停止し、前記燃料ガス供給手段は、前記流路開閉弁が起動後閉状態になったときに前記改質器に供給する燃料ガスの供給流量を一時的に少なくするように制御されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された燃料オフガスを前記燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路に、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すリサイクル流路が設けられ、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記燃料ガス供給手段と前記改質器との間に、前記燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去するための脱硫器が設けられ、前記燃料ガス分岐送給流路は前記脱硫器の配設部位の上流側又は下流側に接続されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記燃料ガス分岐送給流路の流路圧力損失は、前記流路開閉弁の開状態における前記改質器への燃料ガスの供給流量が前記流路開閉弁の閉状態における前記改質器への燃料ガスの供給流量の1/2未満となるように設定されていることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの燃料電池反応によって発電を行うセルスタックと、前記酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、前記水蒸気凝縮部にて水蒸気が除去された燃料オフガスを前記燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路と、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すリサイクル流路とを備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記酸化剤ガス供給手段からの前記酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮水として回収され、前記燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻されるとともに、その残部が前記燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されて前記セルスタックからの空気オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記セルスタックからの燃料オフガスを前記水蒸気凝縮部に排出する燃料オフガス排出流路と前記燃料オフガス送給流路とを接続するバイパス流路が設けられ、前記バイパス流路に流路開閉弁が設けられており、
起動時に前記流路開閉弁が開状態となり、前記燃料オフガス排出流路を通して前記水蒸気凝縮部に流れる燃料オフガスの一部が前記バイパス流路及び前記燃料オフガス送給流路を通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料ガスを改質する改質器、発電を行うセルスタック、燃料オフガスを燃焼させる燃焼器及び燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部を備え、燃料ガス供給流路に燃料ガスの一部を燃焼器に送給する燃料ガス分岐送給流路が設けられ、この燃料ガス分岐送給流路に流路開閉弁が設けられているので、起動時に流路開閉弁が開状態となると、改質器に流れる燃料ガスの一部が燃料ガス分岐送給流路を通して燃焼器に送給され、これによって、燃料ガスの一部が燃焼器で直接的に流れて燃焼され、かくして、水蒸気凝縮に相当する冷却分を減らしてシステムの起動時間を短くすることができ、また起動時間の短縮化により起動の際に必要なエネルギーを少なくすることができる。また、この起動時、燃料ガスの残りは改質器を通してセルスタックに流れるので、昇温中もセルスタックの燃料極側に還元性ガスを流し続けることができ、これにより、セルスタックの燃料極の酸化劣化を防ぐことができる。
また、セルスタックの温度が上昇すると、流路開閉弁が閉状態となって燃焼器への燃料ガスの送給が停止され、この閉状態になったときに改質器に供給する燃料ガスの供給流量が一時的に少なくなるように制御されるので、改質器に送給される燃料ガスが一時的に大きく増えることがなく、これによって、改質器の大きな温度変動を防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料オフガスを燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路にリサイクル流路が設けられ、燃料オフガス送給流路を流れる燃料オフガス(水蒸気凝縮部にて水蒸気が凝縮されて除去された後の燃料オフガス)の一部がリサイクル流路を通して燃料ガス供給手段の上流側に戻されるので、この燃料オフガスは燃料ガスに混合されて改質器にて改質された後にセルスタックに送給され、このように燃料オフガスの一部をリサイクルすることによって、セルスタックの発電効率を高めることができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料ガス供給手段と改質器との間に脱硫器が設けられ、燃料ガス分岐送給流路がこの脱硫器の配設部位の上流側に接続されるようにすると、流路開閉弁の配置部位を高温空間から遠ざけることが可能となり、高温空間から流路開閉弁への熱の影響を少なくすることができる。また、燃料ガス分岐送給流路が脱硫器の配設部位の下流側に接続するようにすると、脱硫器にて硫黄成分が除去された後の燃料ガスが燃焼器に送給され、硫黄成分の影響をなくすことができる。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、流路開閉弁の開状態における改質器への燃料ガスの供給流量が流路開閉弁の閉状態における改質器への燃料ガスの供給流量の1/2未満となるように構成されているので、起動時に流路開閉弁が開状態になると、燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスの半分以上が燃焼器に流れ、これによって、水蒸気凝縮に相当する冷却分をより多く減らすことができ、システムの起動時間をより短くすることができる。
【0023】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料ガスを改質する改質器、発電を行うセルスタック、燃料オフガスを燃焼させる燃焼器、燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部、燃料オフガスを燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路及び燃料オフガスの一部を燃料ガス供給手段の上流側に戻すリサイクル流路を備え、更にセルスタックからの燃料オフガスを水蒸気凝縮部に排出する燃料オフガス排出流路と燃料オフガス送給流路とを接続するバイパス流路が設けられ、このバイパス流路に流路開閉弁が設けられているので、起動時に流路開閉弁が開状態になると、燃料オフガス排出流路を流れる燃料オフガスの一部がバイパス流路及び燃料オフガス送給流路を通して燃焼器に送給され、これによって、燃焼器に流れる燃料オフガスの送給量を多くすることができるとともに、この燃料オフガスの温度も高く維持することができ、このようにしてもシステムの起動時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態を簡略的に示す全体図。
【
図2】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態を簡略的に示す全体図。
【
図3】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態を簡略的に示す全体図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明する。
【0026】
〈第1の実施形態〉
まず、
図1を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器4と、この改質器4にて改質された改質燃料ガス及び
酸化剤ガスとしての空気の
燃料電池反応によって発電を行う固体酸化物形のセルスタック6と、を備えている。
【0027】
セルスタック6は、燃料電池反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の片側に設けられた燃料極と、固体電解質の他側に設けられた空気極(酸素極)とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0028】
このセルスタック6の燃料極側8は、改質燃料ガス送給流路10介して改質器4に接続され、この形態では、改質器4は、改質用水を気化するための気化器12と一体的にユニットとして構成されている。尚、気化器12は、改質器4と別体に構成し、気化器12にて気化された水蒸気を水蒸気送給流路(図示せず)を介して改質器4に送給するようにしてもよい。
【0029】
気化器12は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源(図示せず)(例えば、埋設管や貯蔵タンクなどから構成される)に接続され、燃料ガス供給源からの燃料ガスが燃料ガス供給流路14を通して気化器12に供給される。尚、この燃料ガス供給流路14を改質器4に接続し、燃料ガス供給源からの燃料ガスを改質器4に直接的に供給するようにしてもよい。
【0030】
また、この気化器12は、水供給流路18を介して水供給源(図示せず)(例えば、水タンクや水回収タンクなどから構成される)に接続され、水供給源からの改質用水が水供給流路18を通して気化器12に供給される。改質器4には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスが気化器12にて気化された水蒸気でもって水蒸気改質される。
【0031】
この燃料ガス供給流路14には、気化器12から上流側に向けて順に脱硫器20、第1絞り部材22、燃料ガス供給ポンプ24(燃料ガス供給手段を構成する)、第2絞り部材26、圧力調整部材としてのゼロガバナ28、燃料流量センサ30及び遮断弁32が配設されている。脱硫器20は、燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、燃料ガス供給ポンプ24は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスを昇圧して気化器12に供給し、この燃料ガス供給ポンプ24の回転数を制御することによって燃料ガスの供給流量が調整され、燃料ガス供給ポンプ24の回転数を大きくする(又は小さくする)と、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
【0032】
また、ゼロガバナ28は、燃料ガス供給源(図示せず)から燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスを所定圧力(即ち、大気圧)に調整し、燃料ガス流量センサ30は、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの流量を測定し、遮断弁32は、閉状態になると燃料ガス供給流路14を遮断して燃料ガスの供給を停止する。また、燃料ガスポンプ24の両側(即ち、下流側及び上流側)に位置する第1及び第2絞り部材22,26は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの流量を安定させるために設けられ、第1絞り部材22は例えばキャピラリー管から構成され、第2絞り部材26は、例えば小さいオリフィスを有する絞り部材から構成される。また、燃料ガス流量センサ30は、例えば熱式流量センサから構成することができる。尚、原燃料ガスを安定的して供給することができるときには、第1絞り部材22を省略するようにしてもよく、また第2絞り部材26に代えて例えばバッファ-タンクを用いるようにしてもよい。
【0033】
水供給流路18には水供給ポンプ34が配設され、この水供給ポンプ34によって、水供給源(図示せず)からの改質用水が水供給流路18を通して気化器12に供給される。この水供給ポンプ34の回転数を制御することによって改質用水の供給流量が調整され、水供給ポンプ34の回転数を大きくする(又は小さくする)と、水供給流路18を通して供給される改質用水の供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
【0034】
このセルスタック6の空気極側36は、空気供給流路38を介して空気供給手段としての空気ブロア40に接続されている。空気ブロア40は、空気(酸化材ガス)を空気供給流路38を通してセルスタック6の空気極側36(酸素極側)に供給する。この空気ブロア40の回転数を制御することによって空気の供給流量が調整され、空気ブロア40の回転数を大きくする(又は小さくする)と、空気供給流路38を通して供給される空気(酸化材ガス)の供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
【0035】
セルスタック6の燃料極側8から排出される燃料オフガス(即ち、アノードオフガス)は、燃料オフガス導出流路44を通して水蒸気凝縮部46に送給され、この水蒸気凝縮部46にて燃料オフガスに含まれている水蒸気が凝縮されて除去され、水蒸気が除去された燃料オフガスは、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。また、セルスタック6の空気極側36から排出される空気オフガス(即ち、カソードオフガス)は、空気オフガス送給流路52を通して燃焼器50に送給され、この燃焼器50において、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガス(燃料ガスを含んでいる)と空気極側36(酸素極側)からの空気オフガス(酸素を含んでいる)とが燃焼される。気化器12及び改質器4は、この燃焼器50に接触乃至近接して配置されており、この燃料オフガスの燃焼熱を利用して気化器12及び改質器4などが加熱される。燃焼器50からの燃焼排気ガスは排気ガス排出流路54を通して大気に排出される。
【0036】
更に、燃料オフガス送給路48から分岐してリサイクル流路56が設けられ、このリサイクル流路56は、燃料ガス供給流路14、具体的には燃料ガス供給ポンプ24の配設部位と第2絞り部材26の配設部位との間の部位に接続されている。このようにリサイクル流路56が設けられているので、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガス(アノードオフガス)の一部はリサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14における燃料ガス供給ポンプ24の配設部位の上流側に戻され、その残部は、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。尚、燃料ガス供給ポンプ24を通る燃料ガスが結露をすると、この燃料ガス供給ポンプ24の動作が不安定となるおそれがあるために、水蒸気凝縮部46は燃料ガスの供給時に常に作動して燃料オフガスに含まれる水蒸気を除去する。
【0037】
この実施形態では、燃料オフガス送給流路48に関連して第1熱交換器58が配設され、この第1熱交換器58は、セルスタック6から燃料オフガス導出流路44を通して水蒸気凝縮部46に流れる燃料オフガス(アノードオフガス)と燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスとの間で熱交換を行い、この熱交換により加温された燃料オフガスが燃焼器50に送給される。
【0038】
また、空気供給流路38に関連して第2熱交換器60が配設され、この第2熱交換器60は、空気供給流路38を流れる空気(酸化材ガス)と排気ガス排出流路54を通して排出される燃焼排気ガスとの間で熱交を行い、この熱交換により加温された空気がセルスタック6の空気極側36に送給される。
【0039】
この実施形態では、改質器ユニット(改質器4及び気化器12)、セルスタック6、燃焼器50、第1熱交換器58及び第2熱交換器60が高温ハウジング62に収容されている。高温ハウジング62は、金属製(例えば、ステンレス鋼製)であり、その内面は断熱部材(図示せず)で覆われており、その内側に高温空間64を規定し、改質器ユニット(改質器4および気化器12)、セルスタック6、燃焼器50、第1熱交換器58及び第2熱交換器60がこの高温空間64内で高温状態に保たれる。
【0040】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、更に、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガスを一次的に冷却するために、燃料オフガス導出流路44の一部が高温ハウジング54(高温空間64)外に導出されて水蒸気凝縮部46に接続され、また水蒸気凝縮部46からの燃料オフガス送給流路48の一部が高温ハウジング54(高温空間64)外からその内側に導入されて第1熱交換器58を経て燃焼器50に接続されている。
【0041】
水蒸気凝縮部46は、第3熱交換器66及びドレンセパレータ68から構成され、燃料オフガス導出流路44が第3熱交換器66に流れ、ドレンセパレータ68からの燃料オフガスが燃料オフガス送給流路48に流れる。第3熱交換器66は、例えば、燃料オフガスの熱を温水として貯湯するためのコ-ジェネレーションシステム用の貯湯装置(図示せず)の循環流路70と組み合わせて用いられ、燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスと貯湯装置(図示せず)からの水との間で熱交換が行われ、この熱交換により燃料オフガスが冷却されてそれに含まれた水蒸気が凝縮され、このように作用するので、第3熱交換器66は、燃料オフガスを冷却凝縮するための冷却凝縮器として機能する。
【0042】
また、第3熱交換器66の下流側に配設されるドレンセパレータ68は、第3熱交換器66にて凝縮された凝縮水と燃料オフガスとを分離し、分離された凝縮水は外部に排水され、水分が除去された燃料オフガスが燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給され、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスの一部は高温ハウジング62(高温空間64)の外側にてリサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14(具体的には、燃料ガス供給ポンプ24の上流側)に戻される。尚、この凝縮水は、外部に排出することに代えて、水回収タンク(図示せず)に回収して改質用水として利用するようにしてもよい。
【0043】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、更に、燃料ガス供給流路14(具体的には、脱硫器20の下流側部位であって、高温ハウジング62の外側部位)から分岐して燃料ガス分岐送給流路72が設けられ、この燃料ガス分岐送給流路72に流路開閉弁74が配設されている。流路開閉弁74は、この燃料ガス分岐送給流路72を開閉し、開状態のときに燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの一部をこの燃料ガス分岐送給流路72を通して燃焼器50に導く。
【0044】
次に、この固体酸化物形燃料電池システム2の起動運転について説明する。起動時には、燃料ガス供給ポンプ24及び空気ブロア40が作動され、燃料ガス供給源(図示せず)からの燃料ガスが、燃料ガス供給流路14を通して供給され、また空気(酸化剤ガス)が空気供給流路38を通して供給される。このとき、流路開閉弁74は開状態に保たれ、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの一部は燃料ガス分岐送給流路72を通して燃焼器50に送給され、この燃料ガスの残部は、気化器12、改質器4を通してセルスタック6の燃料極側8に送給される。
【0045】
起動時にはセルスタック6の温度は低く、セルスタック6で発電が行われず、セルスタック6の燃料極側8を流れた燃料ガスは、燃料ガス導出流路44及び水蒸気凝縮部46を通して燃料オフガス送給流路48に流れる。燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスの一部はリサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14に戻され、燃料ガス供給源(図示せず)からの燃料ガスに混合されて下流側に送給され、その残部は燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。また、空気供給流路38を流れる空気は、セルスタック6の空気極側36(酸素極側)を流れて空気オフガス送給流路52を通して燃焼器50に送給される。
【0046】
起動時にこのように流れるので、燃焼器50には、燃料オフガス送給流路48からの燃料オフガス、燃料ガス分岐送給流路72からの燃料ガス及び空気オフガス送給流路52からの空気オフガスが送給され、これらがこの燃焼器50で燃焼され、これらの燃焼熱でもって気化器12及び改質器4とともに高温ハウジング62(高温空間64)内が加熱される。
【0047】
燃焼器50への燃料ガスの送給流量については、流路開閉弁72が開状態における気化器12(即ち、改質器4)への燃料ガスの供給流量(Qb)が、流路開閉弁74が閉状態における気化器12(改質器4)への燃料ガスの供給流量(Qa)の1/2未満(Qb<Qa/2)となるようにするのが好ましく、このように構成することにより、流路開閉弁72が開状態になると燃料ガス供給流路14を流れる燃焼ガスの半分以上が燃焼器50に直接的に送給されるようになり、これによって、燃料オフガスの水蒸気凝縮に伴う冷却分が少なくなって燃焼器50の温度が従来よりも短時間で上昇し、かくして、起動に必要なエネルギーを少なくすることができる(起動に必要な燃料ガスの消費量が少なくなる)。その結果、高温空間64内の温度上昇を早くし、起動時間の短縮を図ることができる。尚、燃焼器50への燃料ガスの供給流量の調整は、燃料ガス分岐送給流路72の流路圧力損失を適切に設定することにより行うことができる。
【0048】
燃焼器50での燃焼による燃焼熱により高温ハウジング62内の温度がある程度上昇すると、水供給ポンプ34が作動され、改質用水が水供給流路18を通して気化器12に供給される。このように改質用水が供給されると、気化器12にて改質用水が気化されて水蒸気となり、改質器4にてこの水蒸気を用いて燃料ガスが水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスがセルスタック6の燃料極側8に送給されるようになる。
【0049】
そして、高温ハウジング62内が高温となり、セルスタック6の温度が例えば作動温度(例えば、700~900℃)まで上昇する(又はセルスタック6の周囲温度が約650℃前後まで上昇する)と、流路開閉弁74が閉状態となって燃料ガス分岐送給流路72を通しての燃料ガスの送給が終了し、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの全てが気化器12に供給され、改質器4にて水蒸気改質された後にセルスタック6の燃料極側8に送給される。また、セルスタック6の発電が開始され、セルスタック6の燃料極側8を流れる改質燃料ガス及びその空気極側36を流れる空気(酸化剤ガス)の燃料電池反応により発電が行われる。
【0050】
セルスタック6での発電後の燃料オフガスは、上述したように、燃料オフガス導出流路44を通して水蒸気凝縮部46に送給され、この水蒸気凝縮部46にて水蒸気が凝縮除去された後の燃料オフガスは燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給されるとともに、その燃料オフガスの一部は、リサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14に戻される。
【0051】
流路開閉弁74が閉状態になったときには、燃料ガス分岐送給流路72を流れていた燃料ガスが燃料ガス供給流路14を通して気化器12に流れるようになるために、燃料ガス供給流路14を通して気化器12に供給される燃料ガスの供給流量が急激に上昇し、これによって、気化器12及び改質器4の温度が急に大きく変動するおそれが生じる。そのために、流路開閉弁74を閉状態にするときには、燃料ガス供給ポンプ24を制御してその供給流量が一時的に少なくなるようにするのが好ましく、このように制御することによって、気化器12及び改質器4における急激な温度変動を抑えることができる。
【0052】
この場合、燃料ガス供給ポンプ24の回転数を一時的に低下させて燃料ガスの供給流量を約半分程度まで絞り、その後燃料ガス供給ポンプ24の回転数を徐々に上昇させて燃料ガスの供給流量を漸増させて所望の供給流量(発電電力に応じた供給流量)となるように制御するのが好ましい。
【0053】
〈第2の実施形態〉
次に、
図2を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一の部材については同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図2において、この第2の実施形態では、燃料ガス供給流路14(具体的には、脱硫器20の上流側部位)から分岐して燃料ガス分岐送給流路72Aが設けられ、この燃料ガス分岐送給流路72Aが燃焼器50に接続されている。また、この燃料ガス分岐送給流路72Aには、流路開閉弁74及び脱硫器82が下流側に向けてこの順に配設されている。この第2の実施形態のその他の構成は、上述の第1の実施形態と実質上同一である。
【0055】
この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aでは、第1の実施形態と同様に、起動時に流路開閉弁74が開状態となり、燃料ガス供給源(図示せず)から燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの一部は、燃料ガス分岐送給流路72Aに流れ、脱硫器82にて燃料ガス中に含まれる硫黄成分が除去された後に燃焼器50に送給される。
【0056】
従って、この第2の実施形態においても、燃焼器50には、燃料オフガス送給流路48からの燃料オフガス、燃料ガス分岐送給流路72Aからの燃料ガス及び空気オフガス送給流路52からの空気オフガスが送給され、これらがこの燃焼器50で燃焼され、これらの燃焼熱でもって気化器12及び改質器4とともに高温ハウジング62(高温空間64)内が所要の通りに加熱される。尚、この燃料ガス分岐送給流路72Aの脱硫器82については、省略することもできる。
【0057】
燃焼器50による燃焼によって高温ハウジング62(高温空間64)内が高温となり、セルスタック6の温度が例えば作動温度まで上昇すると、流路開閉弁74が閉状態となって燃料ガス分岐送給流路72Aを通しての燃料ガスの送給が終了し、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの全てが気化器12に供給され、改質器4にて水蒸気改質された後にセルスタック6の燃料極側8に送給され、このときの燃料ガスの供給流量の制御(即ち、燃料ガス供給ポンプ24の制御)は、第1の実施形態と同様に行うのが好ましい。
【0058】
この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aにおいても、起動時に燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの一部が燃料ガス分岐送給流路72Aを通して燃焼器50に直接的に送給されるので、燃料オフガスの水蒸気凝縮に伴う冷却分が少なくなって燃焼器50の温度が従来よりも短時間で上昇し、これによって、起動に必要なエネルギーを少なくすることができ、その結果、上述したと同様に高温空間64内の温度上昇を早くし、起動時間の短縮を図ることができる。加えて、燃料ガス分岐送給流路72Aが燃料ガス供給流路14における脱硫器20の配設部位よりも上流部位から分岐されているので、流路開閉弁74を高温ハウジング62から離れた部位に配設することができ、高温ハウジング62から流路開閉弁74への熱の影響を少なくすることができる。
【0059】
〈第3の実施形態〉
次に、
図3を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態では、燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスの一部を燃焼器に送給することに代えて、燃料オフガス導出流路を流れる燃料オフガスの一部を水蒸気凝縮部を経ることなく燃料オフガス送給流路に送給するようにしている。
【0060】
図3において、この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Bでは、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガスが流れる燃料オフガス導出流路44(具体的には、高温ハウジング62の外側の部位)と水蒸気凝縮部46にて水蒸気が除去された後の燃料オフガスが流れる燃料オフガス送給流路48(具体的には、高温ハウジング62内であって、第1熱交換器58の配設部位よりも上流側部位)との間を接続するようにバイパス流路92が設けられ、このバイパス流路92に流路開閉弁94が配設されている。この流路開閉弁94は、高温ハウジング62の外側に配置され、このように配置することにより、高温ハウジング62(高温空間64)内の熱の影響を少なくすることができる。この第3の実施形態のその他の構成は、燃料ガス分岐送給流路及びこれに関連する構成が省略されている点を除いて、上述の第1の実施形態と実質上同一である。
【0061】
この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Bでは、起動時に流路開閉弁94が開状態となり、セルスタック6の燃料極側8から燃料ガス導出流路44を流れる燃料オフガスの一部は、バイパス流路92を通して燃料オフガス送給流路48に流れ、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガス(水蒸気凝縮部46にて水蒸気が除去された燃料オフガス)とともに第1熱交換器58を通して燃焼器50に送給される。
【0062】
従って、この第3の実施形態においては、この燃焼器50には、燃料オフガス送給流路48からの燃料オフガス(即ち、バイパス流路92を通して燃料オフガス送給流路48に送給された燃料オフガス及び水蒸気凝縮46にて水蒸気が凝縮除去された後に燃料オフガス送給流路48に送給された燃料オフガス)及び空気オフガス送給流路52からの空気オフガスが送給され、これらがこの燃焼器50で燃焼され、これらの燃焼熱でもって気化器12及び改質器4とともに高温ハウジング62(高温空間64)内が所要の通りに加熱される。尚、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスの一部は、リサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14に戻される。
【0063】
燃焼器50による燃焼によって高温ハウジング62(高温空間64)内が高温となり、セルスタック6の温度が例えば作動温度まで上昇すると、流路開閉弁94が閉状態となってバイパス流路92を通しての燃料オフガスの送給が終了し、燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスの全てが水蒸気凝縮部46に送給され、水蒸気凝縮部46にて水蒸気が除去された後の燃料オフガスが燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給され、燃焼器50に送給される燃料オフガスの一部がリサイクル流路56を通して燃料ガス供給流路14に戻される。
【0064】
この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Bにおいては、起動時に燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスの一部がバイパス流路92及び燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給されるので、燃焼器50に流れる燃料オフガスの送給量を多くすることができるとともに、この燃料オフガスの温度も高く維持することができ、これによって、高温空間64内の温度が従来よりも短時間で上昇するようになり、かくして、起動時間の短縮化を図ることができ、また起動時に必要なエネルギーを少なくすることができる。
【0065】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0066】
2,2A,2B 固体酸化物形燃料電池システム
4 改質器
6 セルスタック
12 気化器
14 燃料ガス供給流路
24 燃料ガス供給ポンプ
38 空気供給流路
44 燃料オフガス導出流路
46 水蒸気凝縮部
48 燃料オフガス送給流路
50 燃焼器
52 空気オフガス送給流路
56 リサイクル流路
62 高温ハウジング
64 高温空間
72,72A 燃料ガス分岐送給流路
74,94 流路開閉弁
92 バイパス流路