(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】簡易構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20240206BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20240206BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20240206BHJP
E04D 13/064 20060101ALI20240206BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E04B1/343 U
E04H1/12 306Z
E04H6/02 A
E04H6/02 H
E04D13/064 C
E04D13/08 G
(21)【出願番号】P 2020018126
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利根川 勝
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 知朗
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127754(JP,A)
【文献】特開2003-074204(JP,A)
【文献】特開平09-100604(JP,A)
【文献】特開2019-027038(JP,A)
【文献】特開2020-159129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04B 1/343
E04H 6/02
E04D 13/064,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の桁と、複数の垂木と、柱を備え、左右の桁は、中空部から成る桁本体部と、桁本体部の内周側に形成した横樋部を有し、相対向して配置されており、複数の垂木は、左右の桁の横樋部の内周側に端部を固定し、左右の桁の長手方向に間隔をおいて配置されており、柱は、柱本体部と、柱本体部に取付ける柱カバーとを有し、桁の桁本体部と横樋部の下面に跨って当接し、柱本体部が桁本体部と横樋部を支持しており、柱カバーは、内部に竪樋部を有し、柱カバーの竪樋部と桁の横樋部が連続していることを特徴とする簡易構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樋が露出していて外観が悪かったので、樋を目立たなくしたいという要望があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】第154頁~第155頁「三協立山アルミ パブリックエクテリア 総合カタログ 2008→2009」2008年版 第5版 カタログNo.STX0240E 2008年10月発行 三協立山アルミ株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外観が良い簡易構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、左右の桁と、複数の垂木と、柱を備え、左右の桁は、中空部から成る桁本体部と、桁本体部の内周側に形成した横樋部を有し、相対向して配置されており、複数の垂木は、左右の桁の横樋部の内周側に端部を固定し、左右の桁の長手方向に間隔をおいて配置されており、柱は、柱本体部と、柱本体部に取付ける柱カバーとを有し、桁の桁本体部と横樋部の下面に跨って当接し、柱本体部が桁本体部と横樋部を支持しており、柱カバーは、内部に竪樋部を有し、柱カバーの竪樋部と桁の横樋部が連続していることを特徴とする簡易構造体である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、桁の横樋部を内周側に設けたので、横樋部の上下寸法を小さくできるし、目立たないので外観が良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる簡易構造体であって、間口に沿って切断した断面図である。
【
図2】
図1に示す簡易構造体を奥行き方向に沿って切断した断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる簡易構造体であって、
図1に示す桁と柱とを抜き出して示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す柱に各柱カバー及び柱カバー目板を取り付ける前の状態を示す分解斜視である。
【
図5】
図3に示す桁と柱の連結部分を示す図であり、(a)は間口に沿う方向で切断した断面図であり、(b)は(a)に示すA-A断面図である。
【
図7】
図1に示す簡易構造体の屋根であって、屋根パネルを取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【
図8】
図1に示す簡易構造体の屋根であって、屋根パネルにパネル押えを取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態にかかる簡易構造体1は、通路シェルターであり、左右の桁3a、3bと、複数の垂木5と、柱7とを備えている。
図1に示すように、左右の桁3a、3bは相対向して配置されている。各左右の桁3a、3bは同じ形状であるから、左の桁3aについて説明し、右の桁の説明を省略する。
桁3aは、中空部Sから成る桁本体部9と、桁本体部9の屋根枠内周側(以下、単に「内周側」という)に形成した横樋部11を有し、横樋部11の内周側に垂木取付部13が設けてある。桁3aは、押出で一体成型されている。
桁本体部9には、下面に柱7を固定するための柱固定具15(
図5参照)及び裏板16(
図5参照)を係合する固定具係合溝14が形成されている。柱固定具15及び裏板16については、後述する。固定具係合溝14は、下面が開口した溝であり柱7の無いところには、固定具係合溝14を隠す溝カバー23(
図3参照)が取り付けてある。
横樋部11は、桁3aの長手方向(前後方向)に形成された溝であり、内周側溝壁11aと外周側溝壁11bと溝底11cとを有し、内周側溝壁11aは垂木取付部13と一体に形成されており、外周側溝壁11bは、桁本体部9の内周側壁が兼ねている。
また、内周側溝壁11aと垂木取付部13との間には連結部21が設けてあり、内周側溝壁11aと連結部21とで断面が略L字形状を成している。垂木取付部13には、ねじ31で垂木5が固定されている。
垂木取付部13の下方には、桁3aの下面4から内周側に突設された段状の垂木載置部25が設けられている。
尚、
図5(a)に示すように、桁3aには、桁本体部9の内周側に垂木取付部13が位置していると共に、桁3aの下面4から垂木取付部13までの高さH2は、桁3aの下面4から桁本体部9の上端までの高さH1よりも低い。桁本体部9の内周側にある横樋部11の内周側溝壁11aに垂木取付部13を設けているので、桁本体部の上面に垂木の端部を取り付ける場合に比較して、垂木のスタート位置が低いため、垂木全体の高さを低くできるから、桁本体部9で垂木全体を隠すこともできる。
【0009】
図3及び
図4に示すように、横樋部11の溝底11cには、桁3aの長手方向の所定の位置に樋連続孔17が形成されている。樋連続孔17は、柱7に設けた竪樋部19(後述する)に連続する孔である。樋連続孔17は所定の柱7について、柱本体部7a(後述する)の前側又は後側に形成されている。樋連続孔17がいずれの位置に形成されるかは、地面の勾配等を鑑みて、水下側となる竪樋部19の位置に対応して形成されている。
【0010】
また、
図1に示すように、桁3aには、横樋部11の内周側溝壁11aと垂木載置部25との間に配線収納部33が形成されている。この配線収納部33は、内周側溝壁11aと、連結部21と垂木載置部25とで区画される空間であり、連結部21の内周側端から下方に延出する下方延出部27と垂木載置部25との間には配線装着口36が形成されており、この配線装着口36は、配線ケーブルKの脱着口となっている。配線ケーブルKは、例えば、簡易構造体に取り付けられる照明の電線である。
【0011】
図2に示すように、複数の垂木5は、左右の桁3a、3bの長手方向に間隔をおいて配置されている。
図1に示すように、各垂木5は、桁3aの横樋部11の内周側に端部5aが固定されている。垂木5の端部5aの固定は、垂木5の下面を垂木載置部25に載置した状態で垂木の上側片5bを垂木取付部13に上から止めるねじ31で固定されている(
図7参照)。
また、
図8に示すように、隣合う垂木5、5E(5)間及び桁3aの垂木取付部13には、屋根パネル37が配置されており、屋根パネル37は垂木5にねじ43で止める垂木側パネル押え39及び、桁3aにねじ45で止める桁側パネル押え41で固定されている。
図2に示すように、桁3aの前側端部及び後側端部には、それぞれ妻垂木5E(5)が設けてある。桁3aの前側端部及び後側端部は同じ構成であるから、前側端部のみについて説明する。
桁3aの端面には、桁止水板47がねじ49で止めてあり、その前側に妻破風51が妻垂木5E側から止めるねじ52で妻垂木5Eに固定されている。
【0012】
図3及び
図4に示すように、柱7は、柱本体部7aと、柱本体部7aの前側に取付ける前側柱カバー(柱カバー)7bと、柱本体部7aの後側に取付ける後側柱カバー(柱カバー)7cとを備えている。柱本体部7aには、内周側部53と外周側部55とが形成されており、内周側部53の巾寸法W1(
図4参照)を外周側部55の巾寸法W2(
図4参照)よりも小さくしてあり、全体として略T字形状を成している。
柱本体部7aは、桁3aの下面4において、桁本体部9と横樋部11に跨って当接し、柱本体部7aが桁本体部9と横樋部11を支持している。
図5(a)(b)に示すように、柱本体部7aの上端には、被固定具57が横から止めるねじ57aで固定してあり、被固定具57は桁3aに係合された裏板16にねじ58で固定された柱固定具15に、ねじ67で固定されている。
【0013】
次に、前側柱カバー7bと後側柱カバー7cについて説明するが、前側柱カバー7bと後側柱カバー7cとは、同じ構造であるから、前側柱カバー7bについて説明し、後側柱カバー7cの説明は省略する。
図6に示すように、前側柱カバー7bは内部に中空状の竪樋部19が形成されており、略四角筒形状を成している。前側柱カバー7bの前後方向の寸法W3は、柱本体部7aにおける外周側部55の巾寸法W1(
図4参照)と内周側部53の巾寸法W2(
図4参照)との差の半分の寸法であり、柱本体部7aの前側に取り付けたときに、前側柱カバー7bの外面29aが柱本体部7aの外周側部55の外面55aと面一になっている。
前側柱カバー7bの外周側には係止部59aが形成されており、内周側にはねじ止め片61aが形成されており、係止部59aは柱本体部7aの外周側部55に形成された被係止部59bに係止されており、ねじ止め片61aはねじ61bにより柱本体部7aに固定されている。
【0014】
前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cの内周側には、それぞれねじ61bを隠す柱カバー目板63が設けられている。
各柱カバー目板63は、内周側面63aと外周側面63bとで略L字形状に形成されており、前側柱カバー7bの内周側壁8aに形成された被係止部64aに係止される係止部64bと、前側柱カバー7bのねじ止め片61aに形成された被係止部65aに係止される係止部65bとが設けられている。
各柱カバー目板63内は、配線収納部として利用できるものであり、所定の柱7について柱カバー目板63内には桁3aの配線収納部33から柱7に引き出された配線ケーブルKが収納されている。
【0015】
次に、簡易構造体1の施工手順について説明する。
図5に示すように、柱本体部7aの上端に被固定具57をねじ57aで固定し、被固定具57にねじ67で柱固定具15を固定しておく、その状態で地面に立設し、柱本体部7aの上に桁3aを乗せ、固定具係合溝14に裏板16を係合し、柱固定具15を下から止めるねじ58で裏板16に固定する。尚、ねじ58は、柱本体部7aの内周側部53(
図6参照)において、その前側と後側とで固定する。この状態で、
図5(a)に示すように、ねじ58は固定具係合溝14内に収まっている。
【0016】
図4に示すように、左右の各桁3a、3bにおいて、横樋部11を柱7の竪樋部19と連通させる箇所には、横樋部11の溝底11cに樋連続孔17を形成する。樋連続孔17は、所定の柱7の竪樋部19に対応する位置に形成するが、どの位置に形成するかは、土地の勾配や、どの柱7の前側又は後側が水下になるかを決めた上で樋連続孔17の位置決めする。
また、任意の桁3a、3bの配線収納部33の底面には、配線ケーブルKを引き出す位置に配線用開口35を形成する。
尚、樋連続孔17及び配線用開口35は、桁3a、3bを柱本体部7aに取り付ける前に、予め地上で形成しておいても良い。
【0017】
次に、各柱7の柱本体部7aの前側に前側柱カバー7bを後側に後側柱カバー7cを取り付ける。
図6に示すように、これらの柱カバー7b、7cの取り付けは、柱本部体7aの前側及び後側に形成された被係止部59bに、対応する前側柱カバー7bと後側柱カバー7cの各係止部59aを係止し、各柱カバー7b、7cのねじ止め片61aを柱本体部7aにねじ61bで固定する。
その後、柱カバー目板63を取り付けるが、柱カバー目板63はその各係止部64b、65bを対応する前側柱カバー7bと後側柱カバー7の被係止部64a、65aに係止して、柱カバー目板63を取り付ける。
【0018】
次に、
図7に示すように、各垂木5を左右の桁3a、3b間に掛け渡して、垂木5の端部5aを垂木載置部25に乗せ、垂木5の上側片5bを横樋部11の内周側溝壁11aに設けた垂木取付部13にねじ31で固定する。また、左右の桁3a、3bの前側端と後側端には、それぞれ妻垂木5E(5)を垂木5と同様に固定する。
左右の桁3a、3bの前側の端面と後側の端面には、それぞれ桁止水板47をねじ止めする。
前側の桁止水板47と前側の妻垂木5E(5)の前側には、妻破風51を配置し、妻垂木5Eの内周側から止めるねじ52で妻破風51を固定する。
その後、
図8に示すように、各垂木5、5E及び左右の桁3a、3bの内周側溝壁11aの上に屋根パネル37を乗せて、垂木側パネル押え39及び桁側パネル押え41で屋根パネル37を押えて垂木側パネル押え39はねじ43で、桁側パネル押え41はねじ45で固定する。
【0019】
本発明の実施の形態にかかる簡易構造体1の作用効果について説明する。
図1に示すように、簡易構造体1によれば、横樋部11を左右の桁3a、3bの内周側に設けたので、垂木5を左右の桁3a、3bの横樋部11に掛け渡すときに、桁本体部9を上から跨いで取り付けなく済むので、横樋部11の上下寸法H2(
図5(a)参照)を小さくできるし、横樋部11が目立たないので外観が良い。
図3に示すように、各柱7では、柱本体部7aが桁3a、3bの桁本体部9と横樋部11とを支持しているので、強度が出しやすく、垂木5を固定している横樋部11では垂木5の荷重を横樋部11から柱本体部7aに逃がし易い。
前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cの中空部を、竪樋部19としているので、竪樋部19が目立たない。
【0020】
前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cのいずれを竪樋部19として排水に使用しているかわからないので外観が良い。
柱本体部7aの前後には、前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cに設けた竪樋部19が設けられるので、地面の勾配等を鑑みて、適宜水下側の柱カバー7b、7cを選んで排水用に使用できる。
前側柱カバー7bと後側柱カバー7cは、桁3a、3bの長手方向の一方側と他方側をそれぞれ前側と後側として、柱本体部7aの前側と後側に設けているので、この点でも目立ち難い。
図6に示すように、前側柱カバー7bと後側柱カバー7cの外面29aは、それぞれ柱本体部7aの外周側部55の外面55aと面一にしているので、この点についても外観が良い。
【0021】
図1に示すように、左右の桁3a、3bには配線ケーブルKを収納する配線収納部33を一体に設けているので、配線ケーブルKがむき出しにならないから外観が良いと共に利便性が良い。
配線収納部33において、配線ケーブルKを脱着する配線用開口35を桁3a、3bの下面に設けてあり、配線用開口35は柱カバー目板63で隠れるから、配線ケーブルKが下から見えないので、配線用開口35の蓋が不要にできる。また、配線用開口35の蓋が不要であるから、配線ケーブルKの脱着作業がし易い。
配線収納部33は、横樋部11の内周側溝壁11aと、垂木載置部25と、桁3a、3bの下面4で囲まれた空間としており、横樋部11と垂木載置部25を利用しているので、構成が簡易である。
左右の桁3a、3bは、横樋部11、垂木載置部25及び垂木取付部13を押出しで一体成型しているので、構成が簡易且つ外観が良い。
妻破風51は左右の桁3a、3bの端面と妻垂木5E(5)に取り付けてこれらを隠しているので外観が良い。
【0022】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、簡易構造体1は、通路シェルターに限らず、カーポートや、サイクルポート等であっても良い。
図1に示す配線収納部33を設けないで、左右の桁3a、3bの下面に形成した固定具係合溝14を配線収納部として利用しても良い。この場合、柱7が無い位置では、固定具係合溝14には下から蓋をする配線カバーを設ける。
請求項1に記載の発明では、前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cの両方を設けることに限らず、前側柱カバー7b及び後側柱カバー7cのいずれか一方の柱カバー7b(又は7c)を柱本体7aに設けてあれば良く、その柱カバー7b(又は7c)の竪樋部19が桁3a、3bの横樋部11に連続していれば良い。
【符号の説明】
【0023】
1 簡易構造体
3a 左桁
3b 右桁
5 垂木
7 柱
7a 柱本体
7b 前側柱カバー(柱カバー)
7c 後側柱カバー(柱カバー)
9 桁本体部
11 横樋部
17 樋連続孔
19 竪樋部