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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】トンネル防災設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/00 20060101AFI20240206BHJP
   A62C 35/62 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A62C3/00 J
A62C35/62
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020030982
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021132828
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 治靖
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-093537(JP,A)
【文献】特開平02-228976(JP,A)
【文献】特開昭62-057568(JP,A)
【文献】特開平05-277781(JP,A)
【文献】特開2000-135586(JP,A)
【文献】特開2020-026913(JP,A)
【文献】特表2009-540996(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101244323(CN,A)
【文献】韓国登録特許第0741032(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給するポンプと、
前記ポンプに水供給管を介して接続された水噴霧ヘッドと、
前記水供給管の途中に設けられた自動弁と、を備えたトンネル防災設備において、
気体を送出する気体供給源と、前記気体を送る気体供給管とを設け、
通常時である水を噴霧しない時に、前記気体供給源から前記気体供給管を介して前記水噴霧ヘッドに前記気体を供給し、前記水噴霧ヘッドから前記気体を放出することを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項2】
前記気体供給源はエアコンプレッサであり、
前記気体供給管は、トンネルに沿って前記気体を送る気体本管を含むことを特徴とする請求項1に記載されたトンネル防災設備。
【請求項3】
トンネル内に複数の区画設備を設け、
前記区画設備の各々は、前記気体供給源と、複数の前記水噴霧ヘッドを備えたことを特徴とする請求項1に記載されたトンネル防災設備。
【請求項4】
前記水供給管は、前記水噴霧ヘッドが接続された枝管を含み、
前記枝管は、水噴霧時に水を前記水噴霧ヘッドに供給し、
前記気体供給管は、前記水噴霧ヘッドが接続された気体枝管を含み、
前記気体枝管は、水が噴霧されていない非水噴霧時に、前記枝管を介さずに前記気体を前記水噴霧ヘッドに供給することを特徴とする請求項2又は3に記載されたトンネル防災設備。
【請求項5】
前記水供給管は、トンネルに沿って水を送る本管を含み、
水が噴霧されていない非水噴霧時に、前記気体供給源から前記本管を介して前記水噴霧ヘッドに前記気体を供給することを特徴とする請求項1に記載されたトンネル防災設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌が通過するトンネル等に設置される、水噴霧ヘッドを備えたトンネル防災設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模なトンネルには水噴霧設備が、トンネル防災設備として設けられている。水噴霧設備は、トンネル内で発生した火災に対し水噴霧ヘッドから霧状の水を吹き付け、冷却することで火勢を抑制し、延焼を防ぐ。トンネル防災設備における水噴霧設備は、配管が充水されない乾式であり、水噴霧ヘッドは火災が発生していない通常時にも開放されている開放型である。そのため、水噴霧ヘッドの水噴霧口から虫や塵埃が入る可能性があった。水噴霧口からの虫や塵埃の流入防止に効果がある対策として、噴霧口に防塵キャップを装着するようにしたものがある。
【0003】
防塵キャップは、水噴霧ヘッドの噴霧口に取り付けられ、噴霧時に水の圧力によって自動的に外れる。しかし、水噴霧設備が作動して噴霧が行われた後に防塵キャップを元に戻すためには、人手による取り付け作業が必要である。水噴霧ヘッドはトンネル内に多数設けられるため、取り付け作業には多大な労力と時間を要する。噴霧は火災時だけでなく、点検時にも行われる。点検時の水噴霧ヘッドの取り付け作業の際には、車の通行止めや、通行規制を要する場合もある。通行止めや通行規制は早期に終了させる必要がある。また、水噴霧設備の設置時にも点検が行われ、この際にも防塵キャップの人手による取り付け作業が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-267764号公報
【文献】特開2015-006578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、防塵キャップを備えた水噴霧ヘッドが記載されている。また、特許文献2には、放水時に水圧により防塵キャップを移動して噴霧口を開放し、放水停止時にはコイルバネの付勢により自動的に防塵キャップを戻して噴霧口を閉鎖する噴霧ノズルが記載されている。しかし、何れの技術においても、噴霧ノズルの各々に防塵キャップを設ける必要があり、多数ある噴霧キャップの封止状況を点検する必要もあった。特に、特許文献2の技術では、コイルバネを含めた複雑な構造を各々の噴霧口に設ける必要があり、製造や点検のために高コストを要する。
【0006】
本発明は上記の防塵キャップの問題を解決しつつ、水噴霧ヘッドの噴霧口から虫や塵埃、排気ガスが入らないトンネル防災設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、水を供給するポンプと、前記ポンプに水供給管を介して接続された水噴霧ヘッドと、前記水供給管の途中に設けられた自動弁と、を備えたトンネル防災設備において、気体を送出する気体供給源と、前記気体を送る気体供給管とを設け、水を噴霧しない時に、前記気体供給源から前記気体供給管を介して前記水噴霧ヘッドに前記気体を供給し、前記水噴霧ヘッドから前記気体を放出することを特徴とするトンネル防災設備である。
【0008】
(2)また、本発明は、前記気体供給管は、トンネルに沿って前記気体を送る気体本管を含むことを特徴とする(1)のトンネル防災設備である。
【0009】
(3)また、本発明は、トンネル内に複数の区画設備を設け、前記区画設備の各々は、前記気体供給源と、複数の前記水噴霧ヘッドを備えたことを特徴とする(1)のトンネル防災設備である。
【0010】
(4)また、本発明は、前記水供給管は、前記水噴霧ヘッドが接続された枝管を含み、前記枝管は、水噴霧時に水を前記水噴霧ヘッドに供給し、前記気体供給管は、前記水噴霧ヘッドが接続された気体枝管を含み、前記気体枝管は、非水噴霧時に、前記枝管を介さずに前記気体を前記水噴霧ヘッドに供給することを特徴とする(1)または(3)のトンネル防災設備である。
【0011】
(5)また、本発明は、前記水供給管は、トンネルに沿って水を送る本管を含み、非水噴霧時に、前記気体供給源から前記本管を介して前記水噴霧ヘッドに前記気体を供給することを特徴とする(1)のトンネル防災設備である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、防塵キャップを用いることなく、水噴霧ヘッドの噴霧口から虫や塵埃、排気ガスが入らないトンネル防災設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トンネル1に設置した実施例1のトンネル防災設備。
図2】トンネル1に設置した実施例2のトンネル防災設備。
図3】実施例2における水噴霧ヘッド22近傍の拡大図。
図4】トンネル1に設置した実施例3のトンネル防災設備。
図5】トンネル1に設置した実施例4のトンネル防災設備。
図6】実施例4において一区画を拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1は、トンネル1に設置した実施例1のトンネル防災設備である。以下、( )は、構成が入り組んでいるために図面には記載していない番号である。トンネル防災設備は、水噴霧設備(2)、消火設備3、通報設備4、火災感知器5、防災受信盤6を備える。また、水噴霧設備(2)は水供給部(21)、水噴霧ヘッド22、気体供給部(23)、制御盤24を備え、水供給部(21)はポンプ211、水供給管(212)、自動弁213を備える。そして、水供給管(212)は本管2121、第1配管2122、第2配管2123、枝管2124を有する。水噴霧ヘッド22は、実施例2で詳述するように第1噴霧口221と第2噴霧口222の2つの噴霧口を備える。第1噴霧口221からは水噴霧ヘッド22の近くへの噴霧を、第2噴霧口222からは遠くへの噴霧を行う。気体供給部(23)は、エアコンプレッサ231、気体供給管(232)、逆止弁233を備える。エアコンプレッサ231は気体供給源である。そして、気体供給管(232)は、気体本管2321、気体配管2322、気体枝管2323を有している。図1において、水供給部(21)の構成と区別するため、気体供給部(23)の構成は、点線で示す。
【0015】
トンネル1には複数の区画が設けられ、区画毎に区画設備7として水噴霧ヘッド22、第1配管2122、自動弁213、第2配管2123、枝管2124、気体配管2322、逆止弁233、消火設備3、通報設備4、火災感知器5が設けられる。また、防災受信盤6、制御盤24、ポンプ211、エアコンプレッサ231はトンネル1外の建屋8の中に設置されている。
【0016】
ポンプ211は、水供給管(212)を介して水噴霧ヘッド22に水を供給する。ポンプ211は建屋8に設置され、トンネル1に沿って設置された本管2121に接続している。そして、本管2121は区画設備7毎に設けられた複数の第1配管2122に接続している。第1配管2122は自動弁213を介して第2配管2123に接続し、さらにトンネル1の上部に設けられた枝管2124に接続している。枝管2124はトンネル1に沿って設けられて設けられ、5mおきに設けられた10台の水噴霧ヘッド22に接続している。自動弁213は建屋8内に設けられた制御盤24に電気的に接続しており、制御盤24の操作員により開閉制御の操作が行われると、制御盤24からの信号により自動弁213の開閉制御が行われ、水噴霧ヘッド22からの水噴霧を制御する。
【0017】
図1において点線枠で示すエアコンプレッサ231は、点線で示す気体供給管(232)を介し、気体として空気を送る。エアコンプレッサ231は建屋8に設置され、トンネル1に沿って設置された気体本管2321に接続している。そして、気体本管2321は、区画設備7毎に設けられた複数の気体配管2322に接続している。気体配管2322は、逆止弁233を介して水供給管(212)における第2配管2123に接続する。
【0018】
区画設備7の消火設備3は消火栓とホースを備え、消火の際にホースを引き出して放水を行うことができる。また、通報設備4は押しボタンとなっており、ボタンを押すことにより、火災の発生が防災受信盤6に伝わる。火災感知器5も火災を感知して防災受信盤6に伝える。防災受信盤6は制御盤24に信号を送り、制御盤24は、ポンプ211、エアコンプレッサ231と、区画設備7毎に備えた自動弁213の制御を行う。
【0019】
次に、実施例1のトンネル防災設備における作用を説明する。
通常時には、水噴霧ヘッド22から水が噴霧されず、水供給管(212)の枝管2124には水がない。そして、水が噴霧されていない非水噴霧時には、全ての水噴霧ヘッド22から気体である空気を放出する。これにより、水噴霧ヘッド22の噴霧口から虫や塵埃、車の排気ガス等が侵入しない。この時、制御盤24は気体供給源であるエアコンプレッサ231を作動させている。エアコンプレッサ231から送出された空気は、トンネル1に沿って設けられた気体本管2321を通って区画設備7毎に設けられた気体配管2322に送られる。非水噴霧時には、全ての自動弁213は、制御盤24からの信号により閉じており、空気は逆止弁233を通過して第2配管2123に入る。そして、枝管2124から水噴霧ヘッド22に供給される。水噴霧ヘッド22に供給された時には空気は微小圧力となっており、噴霧口から外部へ放出される。空気の供給は連続的に行われ、トンネル1内の全ての水噴霧ヘッド22の噴霧口からは、虫や塵埃、自動車の排気ガスが入らない程度の強さで連続的に空気を放出し続ける。
【0020】
火災による水噴霧時には、空気は供給されない。トンネル1内で火災が発生すると火災感知器5が感知し、防災受信盤6に信号が送信されて火災の判定が行われる。防災受信盤6は、火災と判定すると制御盤24に信号を送信し、制御盤24はエアコンプレッサ231を停止し、ポンプ211を作動する。また、制御盤24からの開放信号により、火災を感知した火災感知器5に近い隣接する2つの区画設備7において、自動弁213を開放させる。ポンプ211から送出された水は、本管2121を進む。そして、自動弁213が開放している区画設備7の第1配管2122、自動弁213、第2配管2123を通り、枝管2124を通って複数の水噴霧ヘッド22から噴霧される。この時、気体配管2322の先端に設けられた逆止弁233により、第2配管2123の水は気体配管2322へは侵入しない。第1配管2122は消火設備3の消火栓にも接続されており、水噴霧時に消火栓を開けば全ての区画設備7において消火設備3のホースにより消火活動を行うことができる。消火設備3における上記作用は、後述の実施例2~4においても同様である。
【0021】
制御盤24において噴霧の停止操作が行われると、ポンプ211が停止する。そして、制御盤24において復旧操作が行われると、火災によって開放制御された自動弁213が閉じ、エアコンプレッサ231が作動して全ての水噴霧ヘッド22からの空気が放出する通常状態に戻る。
【0022】
火災が拡大し、拡大した他の領域で通報設備4の押しボタンが押された場合には、火災発生が確認された後、押しボタンが押された通報設備4の近傍でも噴霧が行われる。この場合、押しボタンが押された通報設備4の区画設備7と、その両隣の3つの区画設備7において、水噴霧ヘッド22からの噴霧が行われる。
【0023】
トンネル防災設備の点検時においても同様である。点検時には、制御盤24によりエアコンプレッサ231が停止し、ポンプ211が作動すると共に、各区画設備7の自動弁213に所定時間ずつ順次に開放信号を送信する。これにより、自動弁213が順次に開放し、区画設備7毎に順に水噴霧ヘッド22から水の噴霧が行われる。点検が終了すると、制御盤24から噴霧の停止操作が行われ、水供給管(212)の水抜きの後に通常状態に戻る。なお、この点は後述の実施例2~4においても同様である。
【実施例2】
【0024】
図2は、トンネル1に設置した実施例2のトンネル防災設備である。実施例1と異なり、気体本管2321から分岐した気体配管2322は、気体枝管2323に接続されている。気体枝管2323は枝管2124に沿って設置され、複数の水噴霧ヘッド22に接続している。他の構成は実施例1と同様である。
【0025】
図3は、実施例2における水噴霧ヘッド22近傍の拡大図である。水噴霧ヘッド22は、図2のようにトンネル側部上方に設けられている。水噴霧ヘッド22にはトンネル1の中央部方向に向けて第1噴霧口221と第2噴霧口222の2つの噴霧口が設けられ、それぞれが水噴霧ヘッド22の近くと遠くに水を噴霧する。また、水噴霧ヘッド22には水管逆止弁214を介して枝管2124が接続しており、気管逆止弁234を介して気体枝管2323が接続している。図3では、気体枝管2323は水管逆止弁214の裏側を通過して隣の水噴霧ヘッド22に延びている。
【0026】
なお、気管逆止弁234は、気体枝管2323から水噴霧ヘッド22側にのみ気体を通すための逆止弁であり、水管逆止弁214は、枝管2124から水噴霧ヘッド22側にのみ水を通すための逆止弁である。気体枝管2323を流れる流量は、枝管2124を流れる水量に比べて少ないので、気体枝管2323は、枝管2124よりも非常に細い配管またはチューブを使用することができる。なお、他の実施例に記載されている気体を通す配管と水を流す配管との大きさの関係も同様である。
【0027】
次に、実施例2のトンネル防災設備における作用を説明する。
通常時である水が噴霧されていない非水噴霧時には、実施例1と同様に全ての水噴霧ヘッド22から空気を放出する。これにより、水噴霧ヘッド22の噴霧口から虫や塵埃、車の排気ガス等が侵入することがない。この時、制御盤24は気体供給源であるエアコンプレッサ231を作動させている。エアコンプレッサ231から送出された空気は、気体本管2321を通って区画設備7毎に設けられた気体配管2322に送られる。その後、空気は気体枝管2323から気管逆止弁234を介して水噴霧ヘッド22に供給される。この時、水管逆止弁214は閉じており、空気が枝管2124へ侵入して空気圧力が低下することを防止する。
【0028】
水噴霧ヘッド22に供給された時には空気は微小圧力となっており、第1噴霧口221及び第2噴霧口222から外部へ放出される。第1噴霧口221及び第2噴霧口222からは、虫や塵埃、自動車の排気ガスが入らない程度の強さで、連続的に空気を放出し続ける。
【0029】
火災や点検による水噴霧時には、空気は供給されない。火災や点検時における制御盤24による制御は実施例1と同様であり、エアコンプレッサ231が停止し、ポンプ211が作動する。ポンプ211から送出された水は、本管2121を通って区画設備7ごとに設けられた第1配管2122に達し、自動弁213が開放している区画設備7の第1配管2122へ進む。そして、自動弁213から第2配管2123を通り、枝管2124を通って複数の水噴霧ヘッド22の第1噴霧口221と第2噴霧口222から水を噴霧する。この時、気体枝管2323と水噴霧ヘッド22の間に設けられた気管逆止弁234により、水は気体枝管2323へ侵入しない。
【0030】
実施例2では、気体枝管2323を細くすることができるため、供給する気体の量を少なくすることができる。また、気体枝管2323について、気体配管2322から離れるにしたがい徐々に細い内径の形状としたり、各水噴霧ヘッド22と気体枝管2323の間に開口径の異なるオリフィスによる絞りを用いたりすることにより、各水噴霧ヘッド22での空気の微小圧力が均等になるように調節することができる。
【実施例3】
【0031】
図4は、トンネル1に設置した実施例3のトンネル防災設備である。実施例1,2と異なり、実施例3では空気の供給に用いる気体供給管(232)がなく、水供給管(212)を用いて水噴霧ヘッド22に空気を供給する。エアコンプレッサ231は、逆止弁235を介して本管2121に接続されている。
【0032】
次に、実施例3のトンネル防災設備における作用を説明する。
通常時である水が噴霧されていない非水噴霧時には、実施例1,2と同様に全ての水噴霧ヘッド22から空気を放出する。これにより、水噴霧ヘッド22の噴霧口から虫や塵埃、車の排気ガス等が侵入することがない。この時、制御盤24は気体供給源であるエアコンプレッサ231を作動させている。エアコンプレッサ231から送出された気体は、逆止弁235を通過した後、本管2121を通って区画設備7毎に設けられた第1配管2122に送られる。通常時において、各区画設備7の自動弁213は、制御盤24からの信号により全て開放している。そのため、全ての区画設備7において、自動弁213から第2配管2123、枝管2124を介して、空気が各水噴霧ヘッド22に供給され、第1噴霧口221、第2噴霧口222から放出される。第1噴霧口221、第2噴霧口222からは虫や塵埃、自動車の排気ガスが入らない程度の強さで、連続的に気体を放出し続ける。
【0033】
火災や点検による水噴霧時には、空気は供給されない。火災や点検時における制御盤24による制御は実施例1,2と同様であり、エアコンプレッサ231が停止し、ポンプ211が作動する。ポンプ211から送出された水は、本管2121を通って区画設備7ごとに設けられた第1配管2122に送られる。この時、逆止弁235により、水はエアコンプレッサ231に侵入しない。そして、自動弁213が開放している区画設備7の第1配管2122へ進み、第2配管2123から枝管2124を通って水噴霧ヘッド22から噴霧する。この時の自動弁213は、通常時の全開放と異なって特定の区画設備7においてのみ開放される。そのため、水圧を維持した水の噴霧が行われる。
【0034】
実施例3では、水供給管(212)で空気を水噴霧ヘッド22に供給するため、気体本管2321等の気体供給管(232)なしで空気の供給を行うことができる。
この実施例3は、区画数が少ない、全長の短いトンネルに適したシステムである。
【実施例4】
【0035】
図5は、トンネル1に設置した実施例4のトンネル防災設備であり、図6は、実施例4において一区画を拡大した図である。図6には、区画設備7の要部と下方の本管2121が記載されている。実施例2(図2図3)と同様に気体枝管2323を備えているが、トンネル1に沿って敷設する気体本管2321が存在しない。それに代えて、区画設備7の各々には、窒素ガスを放出する複数本の窒素ガスボンベ236が気体供給源として設けられている。図6では、窒素ガスボンベ236の設置部に設ける蓋と自動弁213等の設置部に設ける蓋は省略して記載している。窒素ガスボンベ236からの窒素ガスは、気体配管2322から気体枝管2323、複数の気管逆止弁234を介して水噴霧ヘッド22に接続されている。
【0036】
次に、実施例4のトンネル防災設備における作用を説明する。
通常時である水が噴霧されていない非水噴霧時には、制御盤24からの信号により、全ての窒素ガスボンベ236につながる電動ガス弁237が開放する。そして、気体配管2322から気体枝管2323、気管逆止弁234を介して水噴霧ヘッド22に窒素ガスを供給し、第1噴霧口221、第2噴霧口222から窒素ガスを放出する。これにより、第1噴霧口221、第2噴霧口222から虫や塵埃、排気ガスが入らない。
【0037】
火災や点検による水噴霧時には、制御盤24からの信号により、電動ガス弁237が閉じて窒素ガスの供給を停止する。そして、実施例2と同様にポンプ211が作動し、本管2121から噴霧を行う区画設備7における第1配管2122、自動弁213、第2配管2123、枝管2124、水管逆止弁214を介して水噴霧ヘッド22に水が供給され、第1噴霧口221、第2噴霧口222から水を噴霧する。実施例4においては窒素ガスボンベ236の残量を検出するために、窒素ガスボンベ236に圧力計等の測定手段を設け、制御盤24の側でその測定手段の数値を自動で計測できるようにしてもよい。または窒素ガスボンベ236の残量が少なくなったときに、消火設備3などに設けた表示部に通常とは異なる表示を行うようにしてもよい。トンネル1の監視員が、トンネル1を車両で通行して、この表示部を確認することで、窒素ガスボンベ236の残量が減ったことを知ることができる。なお、消火設備3などの機器に通信部を設けて、トンネル1の外にある制御盤24に、窒素ガスボンベ236の残量が低下したときに、低下信号を送るようにしてもよい。
【0038】
<変形例>
実施例1~3では、通常時である水が噴霧されていない非水噴霧時に噴霧口から放出する気体として空気を用いたが、実施例4のように窒素を用いてもよい。窒素を用いる場合には、実施例4を含めて、気体供給源として窒素生成装置を用いることができる。特に、実施例3では、ポンプ211により水を供給する最初の時期において、本管2121等に溜まった気体が水噴霧ヘッド22から放出される。そのため、酸素を含まない窒素を通常放出する気体として用いることが好ましい。また水噴霧ヘッド22から放出する気体として、特別な気体を用いるようにしてもよい。特別な気体の例としては、殺虫効果のある気体や虫が寄り付かないような香料が添加された気体などである。このような気体を使用すると、水噴霧ヘッド22に虫が入るのを防止できる共に、トンネル1の全体の防虫効果が向上する。
【0039】
また、実施例1~4では、気体を連続的に供給したが、一定時間おきに間欠的に供給しても良い。その場合、エアコンプレッサ231を間欠的に動作させても良いが、気体配管2322に気体弁を設け、区画毎に順次に気体を供給してもよい。区画毎に気体を供給すると、一時的にではあるが高い圧力を水噴霧ヘッド22に供給できるため、水噴霧ヘッド22の内部に虫や塵が入っても吹き飛ばすことができる。さらには、連続供給と、間欠供給を交互に行うこともできる。また、気体の連続供給であっても、高圧と低圧の気体供給を交互に行っても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 トンネル、(2)水噴霧設備、(21)水供給部、211 ポンプ、(212)水供給管、2121 本管、2122 第1配管、2123 第2配管、2124 枝管、213 自動弁、214 水管逆止弁、22 水噴霧ヘッド、221 第1噴霧口、222 第2噴霧口、(23)気体供給部、231 エアコンプレッサ、(232)気体供給管、2321 気体本管、2322 気体配管、2323 気体枝管、233 逆止弁、234 気管逆止弁、235 逆止弁、236 窒素ガスボンベ、237 電動ガス弁、24 制御盤、3 消火設備、4 通報設備、5 火災感知器、6 防災受信盤、7 区画設備、8 建屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6