(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電子機器ケース
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240206BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240206BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20240206BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H05K9/00 E
H05K5/03 B
H05K5/04
H05K9/00 R
H05K7/14 B
(21)【出願番号】P 2020033953
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電子機器ケース(この電子機器ケースが適用された機種の異なる4種類の製品)のサンプルを、令和1年10月4日及び令和1年12月17日の2回、株式会社ジュピターテレコムに提供
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】板倉 和寿
(72)【発明者】
【氏名】太田 明典
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149484(JP,A)
【文献】特開2013-038243(JP,A)
【文献】特開平10-335870(JP,A)
【文献】特開平11-017384(JP,A)
【文献】特開平02-250396(JP,A)
【文献】特開昭63-158898(JP,A)
【文献】特開平08-008550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
H05K 7/14
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のケース蓋体と、
前記ケース蓋体が圧入され、該ケース蓋体によって閉塞される開口部を有し、ダイカスト成形されるケース本体と、
を備え、
前記ケース本体は、
前記ケース本体及び前記ケース蓋体によって形成され回路基板が収納される収納空間を仕切るシールド壁と、
前記開口部を閉塞した前記ケース蓋体と当該ケース本体との接触を強める方向に締め付けるためのネジを螺合させるネジ孔が形成された1つ以上のボスと、
を有し、
前記開口部を閉塞する前記ケース蓋体が当接する前記ケース本体上の部位である蓋当接部位に、前記ケース蓋体の閉塞時に該ケース蓋体を変形させて該ケース蓋体にくい込む突起である複数の対蓋凸部が形成され、
前記1つ以上のボスの前記開口部側端が、
前記対蓋凸部より凹んで位置するように形成された
電子機器ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器ケースであって、
前記蓋当接部位には、前記ケース本体の開口縁部及び前記シールド壁の前記開口部側端のうち少なくとも一方が含まれる
電子機器ケース。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電子機器ケースであって、
前記収納空間に収納される前記回路基板は、前記シールド壁が当接する部位にグランドパターンを有し、
前記シールド壁は、前記回路基板との当接面に、前記ケース本体に組み付けられるときに、前記グランドパターンに当接する突起である複数の対基板凸部を備える
電子機器ケース。
【請求項4】
請求項1から
請求項3までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、
前記回路基板の基板面から前記開口部に向けて突設される高周波同軸コネクタを挿通させるコネクタ孔を有し、前記回路基板の基板面と平行に形成された底壁と、
前記底壁の周囲に立設され、前記開口部を塞ぐ前記ケース蓋体に到る高さを有した周壁と、
を更に備え、
前記ケース蓋体には、前記高周波同軸コネクタの先端部分を外部に露出させる孔が形成された
電子機器ケース。
【請求項5】
請求項1から
請求項3までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、前記回路基板の基板面から前記開口部に向けて突設され、高周波同軸コネクタの外部導体を形成する一つ以上の内部筒状突起を更に備え、
前記ケース蓋体には、前記内部筒状突起の先端部分を外部に露出させる孔が形成された
電子機器ケース。
【請求項6】
請求項1から
請求項5までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、
前記ケース本体の外壁面に突設された、高周波同軸コネクタの外部導体を形成する一つ以上の外部筒状突起を更に備えた
電子機器ケース。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、
該ケース本体の内壁面にて前記外部筒状突起の形成部位を挟んだ両側に設けられた、前記回路基板の基板面に直交する方向に沿って延びる突条である複数のリブを更に備える
電子機器ケース。
【請求項8】
請求項1から
請求項6までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、
該ケース本体の内壁面に設けられ、前記回路基板の基板面に直交する方向に沿って延びる突条であり、前記回路基板の位置決めをする複数のリブを更に備える
電子機器ケース。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の電子機器ケースであって、
前記リブは、前記回路基板と当接する部位に、前記回路基板に形成された接地電位を有するビアであるグランドビアに挿入される突起であるリブ突起を有する
電子機器ケース。
【請求項10】
請求項1から
請求項9までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記対蓋凸部は、稜状の先端に傾斜を有した突条である
電子機器ケース。
【請求項11】
請求項1から
請求項10までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ボスは、前記ケース蓋体との対向面に形成された前記ネジ孔の周囲に、先端の高さが前記対蓋凸部の先端より低く形成された突起を有する
電子機器ケース。
【請求項12】
請求項1から
請求項11までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース本体は、前記シールド壁同士、又は前記シールド壁と前記ケース本体とを連結し、前記ケース本体の開口形状が変形することを抑制する梁状の部位である橋部を更に備える
電子機器ケース。
【請求項13】
請求項1から
請求項12までのいずれか1項に記載の電子機器ケースであって、
前記ケース蓋体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を素材として形成され、
前記ケース本体は、アルミニウム合金、亜鉛合金、及びマグネシウム合金のいずれかを素材として形成された
電子機器ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波信号を扱う電子機器ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高周波信号を扱う電子機器ケースにおいて、ダイカスト成形されたケース本体の開口部に、ケース蓋体を圧入し、更に、ネジによって、ケース本体とケース蓋体との接触を強める方向に締め付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ネジで締め付けても、ネジから離れるほどケース本体とケース蓋体との接触が甘くなるため、十分なシールド性を得ることができない場合があるという課題があった。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一つの局面では、高周波信号を扱う電子機器ケースにおいて、シールド性をより向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電子機器ケースである。ケース蓋体と、ケース本体と、を備える。ケース蓋体は、金属製である。ケース本体は、ケース蓋体によって閉塞される開口部を有し、ダイカスト成形される。また、ケース本体は、シールド壁と、1つ以上のボスと、を有する。シールド壁は、ケース本体及びケース蓋体によって形成され回路基板が収納される収納空間を仕切る。ボスは、開口部を閉塞したケース蓋体とケース本体との接触を強める方向に締め付けるためのネジを螺合させるネジ孔が形成される。1つ以上のボスの開口部側端が、前記開口部を閉塞する前記ケース蓋体が当接するケース本体上の部位である蓋体当接部位より凹んで位置するように形成される。
【0007】
このような構成によれば、ボスの開口部側端が蓋体当接部位と同一面に形成されている場合と比較して、ネジの締め付けによって蓋体当接部位をケース蓋体により強固に接触させることができ、シールド性を向上させることができる。
【0008】
また、ダイカスト成形された熱容量が大きくハンダ付けを行うことが困難なケース本体に対して、ハンダ付け等によってシールド壁を後付けする必要がないため、製造工程を簡略化できる。
【0009】
本開示の一態様では、蓋当接部位に、複数の対蓋凸部が形成されてもよい。対蓋凸部は、ケース蓋体の閉塞時に該ケース蓋体を変形させて該ケース蓋体にくい込む突起である。
【0010】
このような構成によれば、蓋体当接部位でのケース本体とケース蓋体との接触をより強固にすることができる。
本開示の一態様では、蓋当接部位には、ケース本体の開口縁部及びシールド壁の開口部側端のうち少なくとも一方が含まれてもよい。
【0011】
本開示の一態様では、収納空間に収納される回路基板は、シールド壁が当接する部位にグランドパターンを有してもよい。シールド壁は、回路基板との当接面に、ケース本体に組み付けられるときに、グランドパターンに当接する突起である複数の対基板凸部を備えてもよい。
【0012】
このような構成によれば、熱容量の大きいケース本体に対して、ハンダ付けを行うことなく、ケース本体と回路基板との間の導通を、良好な状態に保持できる。
本開示の一態様では、ケース本体は、底壁と、周壁とを更に備えてもよい。底壁は、回路基板の基板面から第1開口部に向けて突設される高周波同軸コネクタを挿通させるコネクタ孔を有し、回路基板の基板面と平行に形成される。周壁は、底壁の周囲に立設され、第1開口部を塞ぐケース蓋体に到る高さを有する。更に、ケース蓋体には、前記高周波同軸コネクタの先端部分を外部に露出させる孔が形成されてもよい。
【0013】
このような構成によれば、基板に実装された高周波同軸コネクタの外部導体が、底壁によって接地されると共に、底壁と周壁に囲まれた外部と連通する空間に露出する外部導体の長さも底壁によって制限される。その結果、高周波同軸コネクタの外部導体がアンテナとして作用することによるEMCの劣化を抑制できる。
【0014】
本開示の一態様は、ケース本体は、回路基板の基板面から開口部に向けて突設され、高周波同軸コネクタの外部導体を形成する一つ以上の内部筒状突起を更に備えてもよい。ケース蓋体には、内部筒状突起の先端部分を外部に露出させる孔が形成されてもよい。
【0015】
このような構成によれば、別部品として構成された高周波同軸コネクタを後付けする場合と比較して、部品点数が減り、工数を削減できるだけでなく、高周波同軸コネクタに加わる回転に対する強度を向上させることができる。
【0016】
本開示の一態様では、ケース本体には、ケース本体の外壁面に突設された、高周波同軸コネクタの外部導体を形成する一つ以上の外部筒状突起が一体成形されてもよい。
このような構成によれば、上述した内部筒状突起を設ける場合と同様の効果を得ることができる。また、ケース本体の外壁面と外部導体との間に隙間がないため、高周波同軸コネクタを設けることによるEMCの劣化を抑制できる。
【0017】
本開示の一態様では、ケース本体は、ケース本体の内壁面にて外部筒状突起の形成部位を挟んだ両側に設けられた、回路基板の基板面に直交する方向に沿って延びる突条である複数のリブを更に備えてもよい。
【0018】
このような構成によれば、外部筒状突起が設けられた部位の強度を向上させることができる。
本開示の一態様では、ケース本体は、ケース本体の内壁面に設けられ、回路基板の基板面に直交する方向に沿って延びる突条であり、回路基板の位置決めをする複数のリブを更に備えてもよい。
【0019】
このような構成によれば、ケース本体の強度を高めると共に、ケース本体内での回路基板の位置決めを簡単に行うことができる。
本開示の一態様では、リブは、回路基板と当接する部位に、回路基板に形成された接地電位を有するビアであるグランドビアに挿入される突起であるリブ突起を有してもよい。
【0020】
このような構成によれば、リブ突起を介してケース本体と回路基板との間の導通を、より良好な状態に保持できる。
本開示の一態様では、対蓋凸部は、先端に傾斜を有した突条であってもよい。
【0021】
このような構成によれば、ケース蓋体によってケース本体の開口が閉塞されるときに、対蓋凸部がケース蓋体を押す力が最も先端に位置する1点に集中するため、より対蓋凸部をケース蓋体に食い込ませることができる。
【0022】
本開示の一態様では、ボスは、ケース蓋体との対向面に形成されたネジ孔の周囲に、先端の高さが対蓋凸部の先端より低く形成された突起を有してもよい。
このような構成によれば、ボスに形成されたネジ孔の周囲とケース蓋体との接触を良好に保つことができ、ボスのネジ孔に螺合させるネジを挿通させるためにケース蓋体に形成された孔によって、シールド性が劣化することを抑制できる。
【0023】
本開示の一態様は、ケース本体は、シールド壁同士、又はシールド壁とケース本体とを連結し、ケース本体の開口形状が変形することを抑制する梁状の部位である橋部を更に備えてもよい。
【0024】
このような構成によれば、ケース本体の開口形状が変形することで、ケース蓋体との接触状態が変化し、シールド性が劣化することを抑制できる。
本開示の一態様では、ケース蓋体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を素材として形成されてもよい。ケース本体は、アルミニウム合金、亜鉛合金、及びマグネシウム合金のいずれかを素材として形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】電子機器ケースを上面側から見た斜視図である。
【
図2】電子機器ケースを下面側から見た斜視図である。
【
図3】ケース蓋体を除去した電子機器ケースの斜視図である。
【
図7】
図3における符号VIIで示した部位付近の断面図である。
【
図9】ケース蓋体及び回路基板を除去した電子機器ケースの斜視図である。
【
図10】取付金具及び貫通コンデンサの斜視図である。
【
図11】取付金具がネジ止めされた取出孔を電源収納部側から見た状態を示す説明図である。
【
図12】取付金具の取り付け状態を示す説明図である。
【
図14】ボスの上端面に形成される突起を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.全体構成]
本実施形態の電子機器ケース1は、
図1及び
図2に示すように、機器部2と、シャーシ8とを備える。
【0027】
機器部2は、直方体状の外形を有し、一つの面(以下、正面)2aに突設された複数の正面端子21と、正面とは異なる面(以下、上面)2bに、機器部2内に位置するように設けられた一つの上面端子22とを備える。複数の正面端子21及び上面端子22は、いずれも高周波同軸コネクタ(例えば、F型コネクタ)のレセプタクルとしての構造を有する。
【0028】
機器部2は、複数の正面端子21のうち、ある正面端子21を介して入力される高周波信号を処理し、処理された信号を別の正面端子21を介して出力する機能を有する。入力される高周波信号は、例えば、UHFアンテナ、CS/BSアンテナ、及びCATVシステム等から提供されるテレビ信号であってもよい。機器部2が有する機能としては、増幅、減衰、合波、分波、電力分配、及び周波数変換のうち、少なくとも一つが含まれてもよい。
【0029】
機器部2は、上面端子22を介して、例えば、処理の途中で得られる信号を出力する。つまり、上面端子22は、テストポイント(以下、TP)端子として使用される。
シャーシ8は、直方体状の外形を有し、機器部2を組み付ける土台となるアルミニウム製の構造物である。シャーシ8は、電源収納部81と、放熱フィン82とを備える。
【0030】
電源収納部81には、電源ケーブル83を介して供給されるAC100Vを、例えばDC5V等に変換して機器部2への給電を行う電源装置100(
図4参照)が収納される。電源収納部81による収納空間は、メッシュ状の板金で構成された電源カバー84をネジ止めすることで塞がれる。
【0031】
放熱フィン82は、電源収納部81に収納される電源装置100、及び機器部2にて発生した熱を放熱する。
[2.機器部]
図3及び
図4に示すように、機器部2は、回路基板3を収納するシールドケース4を有する。なお、回路基板3には、機器部2の機能を実現する高周波回路の他、該高周波回路の動作に関わる種々のスイッチ等が実装される。
【0032】
シールドケース4は、ケース本体5と、ケース蓋体6とを備える。
図5及び
図6に示すように、ケース本体5は、直方体の外形を有する箱体の対向する二つの面を取り除いた形状を有した枠体51を備える。枠体51によって形成される二つの開口のうち、一方が位置する側を上面側、他方が位置する側を下面側という。ここでは
図5が、ケース本体5を上面側からみた斜視図であり、
図6が、ケース本体5を下面側からみた斜視図である。枠体51の上面側の開口は、ケース蓋体6によって塞がれ、枠体51の下面側の開口は、シャーシ8によって塞がれる。
【0033】
枠体51を形成する4つの側壁のうち、機器部2の正面2aに位置する一つの側壁を、正面壁5a、正面壁5aと対向する側壁を背面壁5bという。正面壁5aには、高周波同軸コネクタである正面端子21の外部導体を形成する複数の筒状突起52が突設される。筒状突起52は、その内部に挿入された円筒状の絶縁体によって保持される中心導体と共に、同軸コネクタとして機能する。
【0034】
枠体51における上面側の開口縁部には、ケース蓋体6が圧入される部位である圧入部511が形成される。圧入部511は、枠体51を形成する4つの側壁における上面側端の内壁側を凹ませて、壁厚を他の部分より薄くすることで形成される。これにより、枠体51の側壁において壁厚が変化する部分に段差が形成される。以下では、圧入部511において、ケース蓋体6が圧入されたときに、ケース蓋体6の厚みを形成する側面が当接する壁厚の薄い部分を圧入側面511aとよび、ケース蓋体6の板面の周縁部が当接する段差部分を圧入下面511bという。
【0035】
ケース本体5は、ケース本体5内における回路基板3の位置を定めると共に、位置決めされた回路基板3と、圧入部511に圧入されたケース蓋体6との間に形成される空間を区分けする一つ以上のケース側シールド壁53を備える。これらのケース側シールド壁53は、回路基板3に実装された高周波回路が、相互に干渉することを抑制する。なお、ケ
ース側シールド壁53の上端面は、いずれも、圧入下面511bと同一面を形成するように構成される。また、ケース側シールド壁53の下端面の少なくとも一部は、回路基板3が所定位置に配置されたときに、回路基板3の基板面に当接するように構成される。
【0036】
ケース本体5は、上面端子22の外部導体を形成する筒状突起54を備える。筒状突起54は、筒状突起52と同様に、その内部に挿入される円筒状の絶縁体によって保持された中心導体と共に、同軸コネクタとして機能する。
【0037】
筒状突起54は、上述のケース側シールド壁53と、枠体51を形成する側壁のうち、正面壁5aと対向する側壁である背面壁5bとして、背面壁5bと上述のケース側シールド壁53とによって仕切られた端子用スペースに配置される。端子用スペースを形成する背面壁5b及びケース側シールド壁53を周壁512ともいう。端子用スペースの下端には、底壁55が形成され、筒状突起54は、この底壁55の上面側に突設される。底壁55には、筒状突起54内に配置される中心導体の一端を取り出すための孔55aが形成される。底壁55は、位置決めされた回路基板3との間に隙間ができるように構成される。但し、底壁55は、回路基板3と当接するように構成されてもよい。
【0038】
ケース本体5において、圧入側面511a、圧入下面511b、及びケース側シールド壁53の上端面、すなわち、枠体51の上面側の開口に圧入されたケース蓋体6と当接する面には、一定間隔で多数の凸部(以下、対蓋凸部)56が設けられる。また、ケース側シールド壁53の下端面のうち、回路基板3と当接する部分にも、同様に一定間隔で多数の凸部(以下、対基板凸部)57が設けられる。これら対蓋凸部56及び対基板凸部57の配置間隔は、いずれも、回路基板3に実装された高周波回路の使用可能な周波数帯における最大周波数を有した信号の波長の1/20以下に設定される。対蓋凸部56及び対基板凸部57は、圧入されるケース蓋体6、又は回路基板3上に盛られたハンダへの食い込みが容易となるように断面が三角形状を有する。具体的には、対蓋凸部56及び対基板凸部57の高さは、例えば0.2mm程度であり、配置間隔は、例えば1.2mm程度である。但し、圧入側面511a及び圧入下面511bに設けられる対蓋凸部56は、一体化されL字状に形成されてもよい。
【0039】
また、圧入下面511bに設けられる対蓋凸部56は、
図13に示すように、収納空間側ほど高く、側壁に近づくほど低くなるよう対蓋凸部56の上端に傾斜を付けてもよい。つまり、ケース蓋体6との接地面積を小さくすることで、圧入時にケース蓋体6に対蓋凸部56からの押力がより伝わるような形状としてもよい。なお、
図13に記載の対蓋凸部56は、圧入側面511a及び圧入下面511Bのそれぞれに形成される対蓋凸部56を連結した構造を有する。
【0040】
ケース本体5は、ネジ孔が形成された複数のケース側ボス58を備える。ケース側ボス58は、枠体51の4隅を含む枠体51の内壁に沿った複数個所、及び、ケース側シールド壁53同士又はケース側シールド壁53と枠体51とが交差する地点を含むケース側シールド壁53に沿った複数個所のそれぞれに形成される。
【0041】
ケース側ボス58の上端面は、圧入下面511b及びケース側シールド壁53の上端面(以下、凸部形成面)に形成される対蓋凸部56の先端から予め決められた所定長さ(例えば、0.2mm)以上凹んだ高さとなるように形成される。所定長さは、ケース本体5及びケース蓋体6の材質、対蓋凸部56の形状及び配置間隔等に応じて実験的に決定される。ケース側ボス58の上端面は、対蓋凸部56の高さや材質に応じて、凸部形成面と同一面となるように形成されてもよいし、凸部形成面とは異なる高さに形成されてもよい。
【0042】
また、
図14に示すように、ケース側ボス58の上端面には、ネジ孔の周囲に突起58
1が形成されてもよい。但し、突起581は、その先端が対蓋凸部56の先端より凹んで位置する。つまり、ケース本体5の開口に圧入されるケース蓋体6は、対蓋凸部56に当接した後に、突起581に当接するように構成される。
【0043】
ケース側ボス58の下端面は、対基板凸部57が形成されたケース側シールド壁53の下端面と同一面となるように構成される。なお、ケース側ボス58のネジ孔は、上端面及び下端面のいずれにも形成される。但し、EMC対策のため、上端面側のネジ孔と下端面側のネジ孔は、内部で連通しないように独立したネジ孔として形成される。
【0044】
枠体51の内壁及びケース側シールド壁53において、ケース側ボス58が形成されていない部位には、ケース本体5の上面及び下面を貫く上下方向に沿って延びる突条である複数のリブ59が設けられる。特に、正面端子21となる筒状突起52が形成された正面壁5aの内壁側では、リブ59は、
図12に示すように、筒状突起52の形成部位を挟んだ両側に設けられる。リブ59は、上端面が凸部形成面と同一面を形成し、下端面がケース側ボス58の下端面と同一面を形成するように構成される。つまり、リブ59の下端面は、所定位置に配置された回路基板3と接するように構成される。更に、リブ59の下端面には、回路基板3に形成されたグランドビアに挿入される突起であるリブ突起591が突設される。リブ突起591により、上下方向に対して直交する水平面内での回路基板3の位置が決定されると共に、回路基板3のグランドとケース本体5との間の導通が良好に保持される。
【0045】
ケース本体5は、更に、橋部90を備えてもよい。橋部90は、ケース本体5の上面側の開口にケース蓋体6が圧入されたときに、ケース蓋体6の押圧力によって、ケース蓋体6の上面側の開口が広がる方向に変形することを抑制するために設けられる。橋部90は、ケース側シールド壁53同士、又はケース側シールド壁53と枠体51とを連結する梁状の部位である。橋部90は、上端面が凸部形成面と同一面を形成するように形成された場合、その上端面に対蓋凸部56が設けられてもよい。
【0046】
なお、ケース本体5を構成する各部、即ち、枠体51、筒状突起52,54、ケース側シールド壁53、底壁55、対蓋凸部56、対基板凸部57、ケース側ボス58、及びリブ59、リブ突起591、及び橋部90は、亜鉛ダイカストによって一体成形される。なお、ケース本体5の成形には、亜鉛ダイカストに限らず、アルミダイカスト、又はマグネシウムダイカスト等を用いてもよい。
【0047】
ケース蓋体6は、ケース本体5の圧入部511に圧入されたときに、対蓋凸部56が当接することで変形し、対蓋凸部56を食い込ませることができる性質をもつ金属板である。ケース蓋体6の材質は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。
【0048】
図4に示すように、ケース蓋体6は、圧入部511に圧入された状態で、上面端子22と対向する部分に、該上面端子22を外部に露出させる孔61を有する。また、回路基板3に実装されたスイッチ等の操作部と対向する部分のそれぞれに、該操作部を外部に露出させる孔62を有する。更に、ケース側ボス58の上端面に形成されたネジ孔と対向する部分のそれぞれに、ネジを挿通させる孔63を有する。
【0049】
[3.シャーシ]
図8に示すように、シャーシ8は、機器部2(すなわち、枠体51)の下面側の開口面と、略同じ大きさに形成され、機器部2が固定されることで、機器部2の下面側開口を塞ぐ取付面8aを有する。電源収納部81及び放熱フィン82は、いずれも取付面8aの下部に設けられる。
【0050】
取付面8aには、その周縁部に、枠体51の側壁の下端部を嵌合させる溝(以下、保持溝)85が設けられる。保持溝85は、溝構造を形成する二つの側壁のうち、外周側の側壁より内周側の側壁の方が高くなるように構成される。また、保持溝85の内部には導電性ガスケット7(
図4参照)が配置される。
【0051】
取付面8aには、更に、放熱ブロック86と、シャーシ側シールド壁87と、シャーシ側ボス88とが設けられる。
放熱ブロック86は、回路基板3において、半導体等の発熱が多い部品である発熱部品が実装された部位と対向する位置に設けられる金属の固まりである。放熱ブロック86は、シールドケース4に保持される回路基板3の下面側の基板面に接する高さに形成される。放熱ブロック86は、発熱部品で発生した熱を、効率よくシャーシ8に伝達するために設けられる。放熱ブロック86と回路基板3との間には、空気より熱伝導率が高い材料で形成されたシート状又はゲル状の伝熱材が挿入されてもよい。
【0052】
図8及び
図9に示すように、シャーシ側シールド壁87は、回路基板3と取付面8aとの間に形成される収納空間を仕切るために設けられる。シャーシ側シールド壁87は、基本的には、ケース本体5が有するケース側シールド壁53と対向する位置、すなわち、ケース側シールド壁53と共に回路基板3を両側から挟持する位置に配置される。対基板凸部89は、シャーシ側シールド壁87の上端面に一定間隔で形成された多数の突起である。対基板凸部89の配置間隔、断面形状、高さは、ケース本体5が有する対基板凸部57と同様に形成される。対基板凸部89を有するシャーシ側シールド壁87は、対基板凸部89の先端が回路基板3に接する高さに形成される。
【0053】
なお、本実施例ではシャーシ側シールド壁87は、連続して設けていないがこれは電源ラインや信号線を各回路ブロック間で相互に伝達するために設けた開口部である。EMCの観点から、この開口部は必要最小限にするのが望ましいが、製品に必要な性能と製造のしやすさで適宜選択されるものである。
【0054】
シャーシ側ボス88は、基本的には、ケース本体5がシャーシ8に取り付けられたときに、ケース側ボス58と対向する位置の少なくとも一部に設けられる。シャーシ側ボス88の一部は、シャーシ側シールド壁87と一体化されてもよい。シャーシ側ボス88に形成されるネジ孔は、取付面8aの裏側に貫通しており、ネジは、取付面8aの裏側からシャーシ側ボス88に挿入され、シャーシ側ボス88を貫通したネジの先端が、ケース側ボス58の下端面に形成されたネジ孔にネジ止めされる。
【0055】
図8に示すように、取付面8aには、電源収納部81に連通する取出孔91が形成される。取出孔91は、電源収納部81に収納された電源装置100からの給電線を、シャーシ8に固定されたシールドケース4の内部に取り出して、回路基板3に実装された回路への給電を行うための孔である。
【0056】
また、取付面8aは、取出孔91を挟むように形成された二つのネジ孔を備える。このネジ孔には、
図10に示す固定金具92がネジ止めされる。
固定金具92は、板金を加工することで製造され、略長方形の板状部921と、板状部921における短手方向の両側に延びる二つの部位を、いずれも同一方向に折り曲げることで形成される二つの腕部922とを備える。板状部921には、貫通コンデンサ93がハンダにて固定される取付孔921aと、取付孔921aを挟むように配置される二つのネジ孔921bとが形成される。板状部921の取付孔921aに固定された貫通コンデンサ93は、第1の端子が板状部921を挟んで一方の側に突出し、第2の端子が板状部921を挟んで第1の端子とは反対側に突出する。
【0057】
図12に示すように、腕部922は、その先端が回路基板3に形成されたスリットに挿入されることで、回路基板3に対する固定金具92の位置、ひいては貫通コンデンサ93の位置を決める。
【0058】
固定金具92は、取付面8aにネジ止めされることによって、取付面8aと回路基板3との間に配置される。このとき、固定金具92に取り付けられた貫通コンデンサ93の第1の端子は、
図11に示すように、取出孔91を介して電源収納部81内に突出する。また、貫通コンデンサ93の第2の端子は、
図12に示すように、回路基板3に形成された貫通用の孔を介して、回路基板3の上面側の基板面に突出する。このように固定金具92を用いてシャーシ8に固定された貫通コンデンサ93を介して、電源装置100から回路基板3への給電が可能となる。
【0059】
なお、シャーシ8は、取付面8aに形成される放熱ブロック86、シャーシ側シールド壁87、シャーシ側ボス88、及び対基板凸部89を含めてアルミダイカストによって一体成形される。
【0060】
[4.組み立て]
電子機器ケース1の組み立てについて説明する。
なお、シールドケース4に収納される回路基板3には、シールドケース4内に保持された状態で、ケース側ボス58の下端面に形成されたネジ孔と対向する部分のそれぞれに、ネジを挿通させる孔が形成されている。また、回路基板3には、リブ突起591と対向する部分のそれぞれには、リブ突起591を挿通させるビスであって接地電位を有するグランドビスが設けられている。更に、回路基板3には、ケース側シールド壁53の下端面、及びシャーシ側シールド壁87の上端面と当接する部分のそれぞれに、グランドパターンが形成され、そのグランドパターンには、一様の厚さでハンダが盛られている。
【0061】
まず、回路基板3をケース本体5に組み付ける。具体的には、リブ突起591のそれぞれを、回路基板3に形成されたグランドビアに挿通させ、回路基板3の基板面を、ケース側シールド壁53、ケース側ボス58、及びリブ59の下端面に当接させることで、回路基板3の位置を決める。このように、回路基板3の位置決めがなされた状態で、ケース側ボス58の下端面に形成されたネジ孔を用いて回路基板3をケース本体5にネジ止めする。ネジが締め付けられると、ケース側シールド壁53の下端面に形成された対基板凸部57が、回路基板3のグランドパターンに盛られたハンダにくい込むことによって、ケース側シールド壁53と回路基板3とが密着し、両者間の導通が良好な状態に保持される。
【0062】
次に、固定金具92をシャーシ8にネジ止めすることで、貫通コンデンサ93をシャーシ8に組み付ける。
次に、回路基板3が組み付けられたケース本体5を、シャーシ8に組み付ける。具体的には、保持溝85に導電性ガスケット7を配置し、ケース本体5を形成する枠体51の下端部を、保持溝85に挿入する。このとき、固定金具92の腕部922の先端、及び貫通コンデンサ93の第2の端子が、回路基板3に形成されたスリット及び孔を貫通するように取り付ける。この状態で、シャーシ側ボス88に形成されたネジ孔を用い、シャーシ側ボス88の下端面側から上端面側に挿通させ、更に、回路基板3の孔を挿通させたネジの先端を、ケース側ボス58の下端面に形成されたネジ孔に固定する。ネジが締め付けられると、保持溝85に挿入された導電性ガスケット7が圧縮変形し、シャーシ8とケース本体5との密着度が向上する。また、シャーシ側シールド壁87の上面側端に形成された対基板凸部89は、回路基板3に盛られたハンダを変形させて、ハンダに食い込むことでハンダと密着する。このとき、シャーシ側シールド壁87とケース側シールド壁53とは、回路基板3を両側から挟み込む形になるため、より密着度を高めることができる。これにより、シャーシ8と回路基板3のグランドとの間の導通が良好な状態に保持される。
【0063】
最後に、ケース蓋体6をケース本体5に取り付ける。具体的には、ケース蓋体6をケース本体5の圧入部511に圧入し、更に、ケース側ボス58の上端面に形成されたネジ孔を利用してケース蓋体6をケース本体5にネジ止めする。ネジが締め付けられると、ケース蓋体6に、凸部形成面に形成された対蓋凸部56が食い込むことで、ケース本体5とケース蓋体6との繋ぎ目、及びケース蓋体6とケース側シールド壁53との当接部が密着し、両者間の導通が良好な状態に保持される。
図7に示すように、ケース蓋体6の固定に用いるネジ孔が形成されたケース側ボス58の上端面は、対蓋凸部56の先端より低い位置にある。このため、ネジが締め付けられると、ケース蓋体6がより対蓋凸部56に押し付けられ、対蓋凸部56の食い込みは、より強固なものとなる。
【0064】
このとき、ボス58のネジ孔の周囲に形成された突起881も、ケース蓋体6にくい込むことにより、ボス58に形成されたネジ孔の周囲とケース蓋体6との間の導通も良好な状態に保持される。つまり、ボス58のネジ孔に螺合させるネジを挿通させるためにケース蓋体6に形成された孔を介して、外部の電磁波がシールドケース4内に侵入したり、シールドケース4内で発生した電磁波が外部に漏洩したりすること、すなわち、EMCの低下が抑制される。
【0065】
[4.効果]
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(4a)本実施形態では、回路基板3と取付面8aとの間に形成されるシールドケース4内の収納空間を仕切るシャーシ側シールド壁87がシャーシ8の他の部位とダイカストによって一体成形されている。また、回路基板3とケース蓋体6との間に形成されるシールドケース4内の収納空間を仕切るケース側シールド壁53がケース本体5の他の部位とダイカストによって一体成形されている。このため、シャーシ8やシールドケース4に対してハンダ付けを行うことなく、シールドケース4内の収納空間にシールド壁53,87を設けることができる。
【0066】
(4b)本実施形態では、シャーシ側シールド壁87の上端面に対基板凸部89が設けられ、このシャーシ側シールド壁87が当接する回路基板3側の部位にハンダが盛られたグランドパターンが設けられている。同様に、ケース側シールド壁53の下端面に対基板凸部57が設けられ、このケース側シールド壁53が当接する回路基板3側の部位にハンダが盛られたグランドパターンが設けられている。このため、シャーシ8に機器部2を組み付けてネジで締め付けると、対基板凸部57,89がグランドパターンに盛られたハンダを変形させて、ハンダにくい込む。これにより、シャーシ8及びシールドケース4と回路基板3のグランドパターンとの間の導通を良好な状態に保つことができる。その結果、シールド壁53,87により仕切られた区画間におけるシールド効果を向上させることができる。
【0067】
つまり、シャーシ側シールド壁87はシャーシ8とダイカスト成形により一体成形され、また、ケース側シールド壁86はケース本体5の他の部分とダイカスト成形により一体成形されており、いずれも大きな熱容量を有する。このため、シャーシ側シールド壁87やケース側シールド壁86に対するハンダ付けは困難であるが、上述の手法により、ハンダ付けと同等の効果を実現することができる。
【0068】
(4c)本実施形態では、電源収納部81から回路基板3への給電線を取り出すために取付面8aに設けられた取出孔91の近傍に、貫通コンデンサ93がハンダ付けされた取付金具をネジ止めされている。つまり、熱容量の大きいシャーシ8に形成された取出孔91の周辺に対するハンダ付けは困難であるが、上述の手法によって、貫通コンデンサ93を所望の位置に取り付けることができる。
【0069】
(4d)本実施形態では、発熱部品が実装された回路基板3の部位と対向するシャーシ8上の部位に、回路基板3と直接又は伝熱材を介して接触する放熱ブロック86が設けられている。このため、発熱部品にて発生した熱をシャーシ8へ、ひいては放熱フィン82へ効率よく伝達することができ、その結果、回路基板3に実装された回路の動作環境を良好に保つことができる。
【0070】
(4e)本実施形態では、正面端子21及び上面端子22の外部導体を形成する筒状突起52,54が、ダイカスト成形によりケース本体5の他の部位と一体成形される。このため、正面端子21と枠体51との間に電磁的な隙間が形成されることがなく、枠体51に形成された孔に、ケース本体5とは別体に形成された同軸コネクタを組み付ける場合と比較してEMC性能を向上させることができる。
【0071】
(4f)本実施形態では、ケース本体5に設けられたリブ59の下端に、回路基板3に形成されたグランドビアに挿入されるリブ突起591が設けられている。このため、ケース本体5内において、回路基板3を所望の位置に保持できる。更に、リブ突起591を介して、ケース本体5と回路基板3のグランドパターンとの導通を図ることができる。
【0072】
なお、リブ突起591と、回路基板3のグランドパターンを半田付けにより電気的・機械的に接合することが望ましい。
特に、リブ59が、正面端子21が形成される位置を挟む両側に位置するように形成されているため、正面端子21の外部導体を回路基板3のグランドレベルと精度よく一致させることができる。その結果、正面端子21を介して入出力される信号の品質を向上させることができる。
【0073】
(4g)本実施形態では、ケース本体5には、圧入されたケース蓋体6が当接する部位に、圧入時にケース蓋体6に食い込んで密着性を向上させる対蓋凸部56が設けられている。しかも、対蓋凸部56の配置間隔が、当該回路基板3に実装された高周波回路の使用可能な周波数帯における最大周波数に対応する波長より十分に短く設定されているため、シールドケース4のEMC性能をより向上させることができる。
【0074】
(4h)本実施形態では、シールドケース4は、ケース蓋体6をケース本体5に圧入した後、枠体51を構成する側壁やケース側シールド壁に沿って形成された複数のケース側ボス58を用いてネジ止めされる。従って、本実施形態によれば、シールドケース4のサイズが大きく、圧入時にケース本体5やケース蓋体6が撓むようなことがあっても、ケース蓋体6とケース本体5との密着性を保つことができる。
【0075】
(4i)本実施形態では、ケース側シールド壁53とシャーシ側シールド壁87とは、その少なくとも一部が、回路基板3を挟んで対向する位置に配置されている。従って、本実施形態によれば、シールド壁53,87を介して回路基板3に加わる応力がキャンセルされるため、回路基板3に反りが発生することを抑制でき、ひいては、回路基板3に実装された高周波回路の特性を安定させることができる。
【0076】
[5.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0077】
(5a)上記実施形態では、正面端子21及び上面端子22としてF型コネクタを用いたが、これに限定されるものではなく、同軸ケーブルの接続に使用されるコネクタであればよい。
【0078】
(5b)上記実施形態では、ケース本体5側に対蓋凸部56を形成したが、これに限定されるものではない。例えば、逆に、ケース蓋体6側に、ケース本体5にくい込ませる凸部を形成してもよい。
【0079】
(5c)上記実施形態では、対蓋凸部56及び対基板凸部57,89の断面形状が三角形である例を示したが、これに限定されるものではない。これら凸部56,57,89の断面形状は、根本部分から先端部分まで同じ幅であってもよいし、根本部分と先端部分との中間部分が膨らんでいてもよい。また、凸部56,57,89の先端部分は、丸みのある形状であってもよい。また、凸部の高さは、ダイカストによる製造時の湯流れを阻害することなく製造可能な必要最小限の大きさに形成されてもよい。
【0080】
(5d)上記実施形態では、シールド壁53,87は、回路基板3の基板面と接するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、シールド壁53,87は、ケース本体5、ケース蓋体6、及びシャーシ8によって形成される収納空間を仕切るように構成されていればよい。具体的には、シールド壁53,87は、例えば、回路基板3が存在しない空間を仕切るように構成されてもよいし、回路基板3に形成されたスリットを貫通するように構成されてもよい。
【0081】
(5e)上記実施形態では、上面端子22の外部導体を形成する筒状突起54が、ケース本体5と一体成形されているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、底壁55に形成された孔55aを、高周波同軸ケーブルの外部導体が挿通する大きさに形成して、回路基板3に実装した高周波同軸ケーブルを孔55aに挿通させることで、上面端子22を形成してもよい。この場合の孔55aがコネクタ孔に相当する。なお、底壁55は、端子用スペースに突出する外部端子の長さが、コネクタ接続において必要最小限の長さとなるような位置に形成される。
【0082】
このような構成によれば、回路基板3に実装され上面端子22として機能する高周波同軸コネクタの外部導体が、底壁55によって接地されると共に、底壁55と周壁512に囲まれた外部と連通する端子用スペースに露出する外部導体の長さも底壁55によって制限される。その結果、上面端子22の外部導体がアンテナとして作用することによるEMCの劣化を抑制できる。
【0083】
(5f)上記実施形態では、対基板凸部57,89が当接する回路基板3上の部位に形成されたグランドパターンにハンダを盛っているが、ハンダを省略して、対基板凸部57,89をグランドパターンに直接接触させるように構成されてもよい。
【0084】
(5g)上記実施形態では、導電性ガスケット7を保持する保持溝85をシャーシ8側に設けたが、ケース本体5側に保持溝を設けてもよい。
(5h)上記実施形態では、ケース本体5の全体が一体成形されているが、必ずしも全体が一体成形されている必要はなく、一部が別体に形成され、組み立てによって一体化される構造を有してもよい。
【0085】
(5i)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0086】
(5j)上述した電子機器ケースの他、当該電子機器ケースを構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…電子機器ケース、2…機器部、2a…正面、2b…上面、3…回路基板、4…シールドケース、5…ケース本体、5a…正面壁、5b…背面壁、6…ケース蓋体、7…導電性ガスケット、8…シャーシ、8a…取付面、21…正面端子、22…上面端子、51…枠体、52,54…筒状突起、53…ケース側シールド壁、55…底壁、55a…孔(コネクタ孔)、56…対蓋凸部、57,89…対基板凸部、58…ケース側ボス、59…リブ、81…電源収納部、82…放熱フィン、83…電源ケーブル、84…電源カバー、85…保持溝、86…放熱ブロック、87…シャーシ側シールド壁、88…シャーシ側ボス、90…橋部、91…取出孔、92…固定金具、93…貫通コンデンサ、100…電源装置、511…圧入部、511a…圧入側面、511b…圧入下面、512…周壁、591…リブ突起、921…板状部、921a…取付孔、921b…ネジ孔、922…腕部。