(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20240206BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02K15/04 B
H02K21/14 M
(21)【出願番号】P 2020052779
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】塩田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】早田 聖基
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-223858(JP,A)
【文献】国際公開第2014/124828(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線装置によって、ティースにコイル
が巻回
されたモータであって、
前記巻線装置は、前記コイルを繰り出すノズルを備え、
前記ノズルは、
前記コイルが繰り出されるノズル孔と、
前記ノズル孔の前記コイルが繰り出される側の開口縁に形成された内径丸面取り部と、
前記コイルが繰り出される側の端部における外周縁に形成された外径丸面取り部と、
を有し、
前記コイルの線径をΦcとし、
前記ノズル孔の内径をΦinとし、
前記内径丸面取り部の曲率半径をRinとし、
前記外径丸面取り部の曲率半径をRoutとしたとき、
各径Φc,Φin,Rin,Routは、
1.2Φc≦Φin≦1.4Φc
0.5Φc≦Rin≦Φc
0.25Φc≦Rout≦0.5Φc
を満た
し、
筒状のコア部、及び前記コア部の内周面から径方向内側に向かって突出され前記コイルが巻回される前記ティースを有するステータと、
前記ステータの径方向内側に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、を備え、
前記ロータは、
前記回転軸線回りに回転するシャフトと、
前記シャフトに支持されるとともに、前記回転軸線を径方向中心として回転するロータコアと、
前記ロータコアの外周面に配置された磁石と、
前記ロータコアにおける前記外周面の周方向で隣り合う前記磁石の間で径方向外側に向かって突出する突起と、
を有し、
前記コア部は、前記回転軸線方向からみて多角形状に形成されており、
前記コア部の内周面は、前記コア部の外周面と平行に設けられ、
前記コア部の一辺の肉厚が均一になるように平坦に形成されている
ことを特徴とする
モータ。
【請求項2】
前記線径Φcは、
0.3mm≦Φc≦1.5mm
を満たす
ことを特徴とする請求項
1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ティースは、
前記コア部の内周面から径方向内側に向かって突出されたティース本体と、
前記ティース本体の径方向内側端から周方向に沿って延びる鍔部と、
を有し、
周方向で隣り合う前記鍔部の間のティース開口部における周方向の幅をWtとしたとき、
幅Wt及び前記線径Φcは、
3.83≦Wt/Φc≦6.73
を満たす
ことを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの中には、コイルが巻回される複数のティースを有するステータと、ステータに対して回転自在に設けられたロータとを備えたものがある。ティースにコイルを巻回する巻線装置は、コイルが繰出されるノズルを有するフライヤと、ステータを支持する基台と、を備えている。そして、ティースにコイルを巻回する際、基台を回転させたり上下動させたりするとともに、フライヤを移動させる。これにより、ステータとフライヤとの相対位置が変化する。すなわち、隣り合うティースの間のスロットからノズルが進入され、このノズルがティースの周囲を、コイルを繰り出しながら移動する。これにより、ティースにコイルが巻回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ティースにコイルを巻回する際、ノズルから繰り出されたコイルはノズルの端部を支点として大きく折り曲げられる。この際、コイルを引っ張る力が大きいとコイルに無理な曲げ応力がかかりコイルが損傷してしまう可能性があった。
曲げ応力を抑制するためにはノズルを大型化してコイルにかかる曲げ応力を小さくすることが考えられる。しかしながら、このように単純にノズルを大型化すると、例えばティース間のスロット幅を大きくする必要があるなど、モータが大型化したりモータ特性が悪化したりする可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、巻回作業時のコイルの損傷を防止し、かつ大型化やモータ特性の低下を防止できるモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、巻線装置によって、ティースにコイルが巻回されたモータであって、前記巻線装置は、前記コイルを繰り出すノズルを備え、前記ノズルは、前記コイルが繰り出されるノズル孔と、前記ノズル孔の前記コイルが繰り出される側の開口縁に形成された内径丸面取り部と、前記コイルが繰り出される側の端部における外周縁に形成された外径丸面取り部と、を有し、前記コイルの線径をΦcとし、前記ノズル孔の内径をΦinとし、前記内径丸面取り部の曲率半径をRinとし、前記外径丸面取り部の曲率半径をRoutとしたとき、各径Φc,Φin,Rin,Routは、
1.2Φc≦Φin≦1.4Φc
0.5Φc≦Rin≦Φc
0.25Φc≦Rout≦0.5Φc
を満たし、筒状のコア部、及び前記コア部の内周面から径方向内側に向かって突出され前記コイルが巻回される前記ティースを有するステータと、前記ステータの径方向内側に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、を備え、前記ロータは、前記回転軸線回りに回転するシャフトと、前記シャフトに支持されるとともに、前記回転軸線を径方向中心として回転するロータコアと、前記ロータコアの外周面に配置された磁石と、前記ロータコアにおける前記外周面の周方向で隣り合う前記磁石の間で径方向外側に向かって突出する突起と、を有し、前記コア部は、前記回転軸線方向からみて多角形状に形成されており、前記コア部の内周面は、前記コア部の外周面と平行に設けられ、前記コア部の一辺の肉厚が均一になるように平坦に形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記線径Φcは、0.3mm≦Φc≦1.5mmを満たしてもよい。
【0010】
上記構成において、前記ティースは、前記コア部の内周面から径方向内側に向かって突出されたティース本体と、前記ティース本体の径方向内側端から周方向に沿って延びる鍔部と、を有し、周方向で隣り合う前記鍔部の間のティース開口部における周方向の幅をWtとしたとき、幅Wt及び前記線径Φcは、3.83≦Wt/Φc≦6.73を満たしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルから繰り出されるコイルの曲げ応力を低減できるので、巻回作業時のコイルの損傷を防止できる。また、無駄にノズルを大きくする必要がないのでモータの大型化やモータ特性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態におけるブラシレスモータの斜視図。
【
図3】本発明の実施形態におけるステータ及びロータを軸方向からみた平面図。
【
図4】本発明の実施形態における巻線装置を用いたステータコアへのコイルの巻回方法を示す説明図。
【
図6】本発明の実施形態におけるコイルへの応力比の変化を示すグラフ。
【
図7】本発明の実施形態におけるティース開口幅/コイルの線径の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<ブラシレスモータ>
図1は、ブラシレスモータ1の斜視図である。
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図である。
ブラシレスモータ1は、例えば車両に搭載されるサンルーフの駆動源である。
図1、
図2に示すように、ブラシレスモータ1は、モータ部(モータ)2と、モータ部2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備える。
【0015】
<モータ部>
モータ部2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されているステータ8と、ステータ8の径方向内側に設けられ、ステータ8に対して回転自在に設けられたロータ9と、を備える。モータ部2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
なお、以下の説明において、ロータ9の回転軸線C1方向を単に軸方向と称し、ロータ9の回転方向を周方向と称し、軸方向及び周方向に直交する径方向を単に径方向と称する。
【0016】
<モータケース>
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料から形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、を備える。第1モータケース6及び第2モータケース7の外形は、それぞれ有底筒状に形成されている。
【0017】
第1モータケース6の外形は、例えば、第2モータケース7側が開口された有底角筒状に形成されている。第1モータケース6は、減速部3側の端部10が減速部3のギアケース40と接合されるように、このギアケース40と一体成形されている。端部10の径方向略中央には、ロータ9のシャフト31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。また、第1モータケース6における第2モータケース7側の開口部6aに、第2モータケース7の接合用の縁部16が形成されている。
【0018】
第2モータケース7の外形は、例えば、軸方向からみて角丸正六角形に形成されている。つまり、第2モータケース7の周壁は、各6つの角部7A及び平坦部7Bを有する。第2モータケース7は、第1モータケース6側が開口された有底筒状に形成されている。第2モータケース7における第1モータケース6側の開口部7aに、径方向の外側に向かって張り出す外フランジ部17が形成されている。
【0019】
モータケース5は、第1モータケース6の縁部16と第2モータケース7の外フランジ部17とを突き合わせることで内部空間を有する。モータケース5の内部空間には、後述するコイル24の一部が第1モータケース6の内側に収容されるとともに、後述するステータコア20が第2モータケース7の内側に嵌め合わされるようにして、ステータ8が配置されている。
【0020】
<ステータ>
図3は、ステータ8及びロータ9を軸方向からみた平面図である。
図2、
図3に示すように、ステータ8は、筒状のコア部21と、コア部21の内周面21aから径方向内側に向かって突出する複数(例えば、本第実施形態では6つ)のティース22と、が一体成形されたステータコア20を有している。
ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層して形成される場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。
【0021】
コア部21は、第2モータケース7の内側に嵌め合わされるように、軸方向からみて角丸正六角形の筒状に形成されている。つまり、コア部21は、各6つの角部20A及び平坦部20Bを有する。平坦部20Bは、内周面21aと外周面21bとが平行となるように肉厚が均一に形成されている。平坦部20Bは、請求項における一辺に相当している。
複数のティース22は、コア部21の各平坦部20Bの周方向中央から径方向内側に向かって突設されている。
【0022】
ティース22は、一体成形されたティース本体22a及び一対の鍔部22bを備える。ティース本体22aは、コア部21の内周面から径方向に沿って径方向内側に向かって突出する。鍔部22bは、ティース本体22aの径方向内側端から周方向に沿って延びる。鍔部22bは、ティース本体22aから周方向外側に延びるように形成されている。そして、周方向で隣り合うティース22の間に、スロット19が形成される。なお、以下の説明では、スロット19のうち、周方向で隣り合う鍔部22bの間をティース開口部19aと称し、ティース開口部19aの周方向の幅、つまり、周方向で隣り合う鍔部22bの間の幅をティース開口幅Wtと称する。
【0023】
また、コア部21の内周面及びティース22は、樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。このインシュレータ23の表面上から各ティース22に巻き付けられるようにコイル24が装着されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界を発生させる。
【0024】
<ロータ>
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に設けられている。ロータ9は、シャフト31と、ロータコア32と、4つの永久磁石33と、を備える。このように、モータ部2において、例えば、永久磁石33の磁極数とスロット19(ティース22)の数との比は、4:6である。
シャフト31の軸心は、ロータ9の回転軸線C1と一致している。シャフト31が回転軸線C1回りに回転する。シャフト31は、減速部3を構成するウォーム軸44(
図2参照)と一体成形されている。
ロータコア32は、シャフト31の外側に嵌め合わされるように固定されている。ロータコア32の外形は、シャフト31を回転軸線C1とする円柱状に形成されている。
【0025】
ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層して形成される場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。
また、ロータコア32の径方向中央には、軸方向に貫通する貫通孔32aが形成されている。シャフト31は貫通孔32aに圧入されている。なお、ロータコア32がシャフト31の外側に嵌め合わされるように、相対的にシャフト31が貫通孔32aに挿入され、接着剤等によってシャフト31とロータコア32とが固定されてもよい。
ロータコア32において、径方向内側の内周面(つまり貫通孔32aの内周面)の円弧中心及び径方向外側の外周面32bの円弧中心は、シャフト31の回転軸線C1の位置と一致している。
【0026】
さらに、ロータコア32の外周面32bには、4つの突起35が周方向に等間隔で設けられている。突起35は、径方向の外方に突出するとともにロータコア32の軸方向全体に亘って延びるように形成されている。
また、突起35は、周方向で対向する2つの側面35aが突出方向に平行となるように形成されている。つまり、突起35は、周方向の幅寸法が突出方向で均一になるように形成されている。
【0027】
さらに、突起35の突出方向外側における周方向両側の角部には、丸面取り部35bが形成されている。
このように形成されたロータコア32の外周面32bにおいて、周方向で隣り合う2つの突起35の間は、それぞれ磁石収納部36として構成されている。
【0028】
すなわち、ロータ9は、界磁用の永久磁石33をロータコア32の外周面32bに有する表面磁石(SPM:Surface Permanent Magnet)型のロータであるとともに、周方向に並ぶ永久磁石33間においてロータコア32の径方向の外方に突出する突起35を備えるインセット型のロータである。
4つの永久磁石33は、ロータコア32の外周面32bに設けられる4つ磁石収納部36に配置されている。各永久磁石33は、磁石収納部36において、例えば接着剤等によりロータコア32に固定されている。
永久磁石33は、例えば、フェライト磁石、ネオジムボンド磁石又はネオジム焼結磁石などである。
【0029】
永久磁石33は、着磁(磁界)の配向が厚み方向に沿ってパラレル配向となるように着磁されている。つまり、永久磁石33の配向は、磁化容易方向が永久磁石33の中央部における径方向と平行な方向となるパラレル配向である。
そして、周方向で隣り合う永久磁石33は、相互の磁化方向が反対方向となるように配置されている。4つの永久磁石33は、周方向に磁極が互い違いになるように配置されている。つまり、外周側がN極とされた永久磁石33と外周側がS極とされた永久磁石33とは周方向で隣り合うように配置されている。これにより、周方向で隣り合う永久磁石33の間に配置されるロータコア32の突起35は、磁極の境界(極境界)に位置している。
【0030】
<減速部>
図1、
図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギアケース40と、ギアケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備える。
ギアケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギアケース40の外形は、例えば箱状に形成されている。ギアケース40は、内部にウォーム減速機構41を収容するギア収容部42を有する。また、ギアケース40におけるモータ部2側の端部40aには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、この第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42とを通じさせる開口部43が形成されている。
【0031】
また、ギアケース40の端部40aと直交する側面40bには、ガイドプレート49が設けられている。ガイドプレート49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するために設けられている。
【0032】
ギア収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛み合わされるウォームホイール45と、により構成されている。
ウォーム軸44は、モータ部2のシャフト31と同軸上(回転軸線C1上)に配置されている。ウォーム軸44は、両端がギアケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44のモータ部2側の端部は、軸受46を介してギアケース40の開口部43に至るまで突出している。この突出したウォーム軸44の端部とモータ部2のシャフト31との端部が接合され、ウォーム軸44とシャフト31とが一体化されている。なお、ウォーム軸44とシャフト31は、1つの母材からウォーム軸部分と回転軸部分とを成形することにより一体として形成されてもよい。
【0033】
ウォームホイール45には、このウォームホイール45の径方向中央に出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール45の回転軸方向と同軸上に配置されている。出力軸48は、ギアケース40のガイドプレート49を介してギアケース40の外部に突出するギアユニット50に接続されている。ギアユニット50は、図示しない電装品と接続される。
【0034】
また、ウォーム軸44には、ウォーム軸44の回転位置を検出する回転位置検出部60が設けられている。回転位置検出部60は、コントローラ部4に接続されている。
【0035】
<コントローラ部>
モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子などが実装されたコントローラ基板62を有している。そして、コントローラ基板62は、第1モータケース6の貫通孔10aに配置されている。
【0036】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に複数の図示しない導電性のパターンが形成されたものである。コントローラ基板62には、モータ部2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されているとともに、ギアケース40に設けられたターミナル11が電気的に接続されている。また、コントローラ基板62には、磁気検出素子の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなる図示しないパワーモジュールが実装されている。さらに、コントローラ基板62には、このコントローラ基板62に印加される電圧の平滑化を行う図示しないコンデンサ等が実装されている。
【0037】
ターミナル11は、図示しない外部電源から延びるコネクタと嵌着可能に形成されている。そして、ターミナル11に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0038】
<ブラシレスモータの動作>
次に、ブラシレスモータ1の動作について説明する。
ブラシレスモータ1において、ターミナル11を介してコントローラ基板62に供給された電力は、不図示のパワーモジュールを介してモータ部2の各コイル24に選択的に供給される。
【0039】
すると、各コイル24に流れる電流は、ステータ8(ティース22)に所定の鎖交磁束を形成する。この鎖交磁束は、ロータ9の永久磁石33により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力又は反発力(磁石トルク)を発生させる。
また、ロータコア32の突起35は、突出方向をステータ8(ティース22)からの鎖交磁束が流れやすい方向とするとともに、鎖交磁束の磁路の磁気抵抗(リラクタンス)を小さくするように、ロータコア32を回転させるリラクタンストルクを発生させる。
【0040】
これらの磁石トルク及びリラクタンストルクは、ロータ9を継続的に回転させる。ロータ9の回転は、シャフト31と一体化されているウォーム軸44に伝達され、さらにウォーム軸44に噛み合わされているウォームホイール45に伝達される。そして、ウォームホイール45の回転は、ウォームホイール45に連結されている出力軸48に伝達され、出力軸48は、所望の電装品を駆動させる。
【0041】
また、コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子及び回転位置検出部60によって検出されたウォームホイール45の回転位置の検出信号は、不図示の外部機器に出力される。不図示の外部機器は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Contorol Unit)である。
【0042】
また、図示しない外部機器の少なくとも一部は、LSI(Large Ccale Integration)などの集積回路であってもよい。図示しない外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、図示しないパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングを制御し、モータ部2の駆動制御を行う。なお、パワーモジュールの駆動信号の出力及びモータ部2の駆動制御は、図示しない外部機器の代わりにコントローラ部4によって実行されてもよい。
【0043】
<巻線装置>
次に、
図4から
図7に基づいて、巻線装置70と巻線装置70を用いたステータコア20へのコイル24の巻回方法について説明する。
図4は、巻線装置70を用いたステータコア20へのコイル24の巻回方法を示す説明図である。
図4に示すように、巻線装置70は、コイル24を繰り出すノズル71を有している。ノズル71は、円筒状に形成されている。このノズル71のコイル24を繰り出す側の先端71aをスロット19に向け、ティース開口部19aを介してスロット19内にノズル71が挿入される。そして、ティース22の周囲をノズル71が移動しながらこのノズル71からコイル24が繰り出され、ティース22にコイル24が巻回されていく。
【0044】
また、ノズル71は径方向に沿って往復移動を繰り返し、ティース22上にコイル24を径方向に沿って並べるように巻回していく。より具体的には、スロット19からノズル71を引き抜く方向(
図4における矢印Y1参照)に移動しながらコイル24を巻回している際、ティース本体22aの外周面においてコア部21側の根本から鍔部22bに向けてコイル24が順次巻回されていく。一方、スロット19に向けてノズル71を挿入する方向(
図4における矢印Y2参照)に移動しながらコイル24を巻回している際、ティース本体22aの外周面において鍔部22bからコア部21側の根本に向けてコイル24が順次巻回されていく。このようにティース22上にコイル24を巻回していくことにより、コイル24は俵上に積み重ねられ、コイル24の巻回作業が完了する。
【0045】
ここで、ステータコア20のコア部21は、軸方向からみて角丸正六角形の筒状に形成されており、各6つの角部20A及び平坦部20Bを有している。平坦部20Bは、内周面21aと外周面21bとが平行となるように肉厚が均一に形成されている。このため、
図3に示すように、コア部21が円筒状に形成されている場合(
図3における二点鎖線の符号21e参照)と比較してスロット19内のスペースを大きくすることができる(
図3におけるハッチ部Hb参照)。この分、コイル24の占積率を低減することができ、スロット19内にノズル71を進入しやすくできる。
【0046】
次に、
図5に基づいて、ノズル71の詳細について説明する。
図5は、ノズル71の概略図である。
図5に示すように、ノズル71は、コイル24が繰り出されるノズル孔72と、ノズル孔72の先端71a側の開口縁に形成された内径丸面取り部73と、ノズル孔72の先端71a側の外周縁に形成された外径丸面取り部74と、を有する。各丸面取り部73,74は、ノズル71の軸方向に沿う断面形状が円弧状に形成されている。
【0047】
ここで、コイル24の線径をΦcとし、ノズル孔72の内径をΦinとし、内径丸面取り部73の曲率半径をRinとし、外径丸面取り部74の曲率半径をRoutとしたとき、各径Φc,Φin,Rin,Routは、
1.2Φc≦Φin≦1.4Φc ・・・(1)
0.5Φc≦Rin≦Φc ・・・(2)
0.25Φc≦Rout≦0.5Φc ・・・(3)
を満たす。なお、コイル24の線径Φcは、コイル24の絶縁被覆の被膜厚さを除いた値である。
【0048】
式(1)について、ノズル孔72の内径Φinは、コイル24の線径Φcに対して十分な広さを確保する必要があるからである。
【0049】
式(2)について説明する。
まず、
図6について、コイル24の曲げ強さについて説明する。
図6は、縦軸をコイル24への応力比[1/X]とし、横軸をコイル24の曲げ曲率/線径Φcの比率とした場合のコイル24への応力比の変化を示すグラフである。
図6に示すように、コイル24の線径Φcに対する曲げ曲率が大きいほどコイル24への応力比が小さくなることが確認できる。一方で、内径丸面取り部73の曲率半径Rinを大きくし過ぎてしまうとノズル71が大型化してティース開口幅Wtを大きくしなければならなくなる。このため、上記比率の「1」近傍が望ましく、内径丸面取り部73の曲率半径Rinは上記式(2)を満たすこととした。
【0050】
式(3)について説明する。
ここで、ノズル71は径方向に沿って往復移動を繰り返し、ティース22上にコイル24を径方向に沿って並べるように巻回していくので、
図4に示すように、ノズル71の内径丸面取り部73には常にコイル24が摺接されるが、ノズル71の外径丸面取り部74には、スロット19に向けてノズル71を挿入する方向(
図4における矢印Y2参照)に移動する場合のみにコイル24が摺接される。つまり、外径丸面取り部74にコイル24が摺接される頻度は、内径丸面取り部73にコイル24が摺接される頻度と比較して1/2となる。このため、式(3)に示すように、外径丸面取り部74の曲率半径Routを内径丸面取り部73の曲率半径Rinの1/2とした。
【0051】
この他、ティース開口幅Wtは、ノズル71とティース開口部19aとの間の隙間Sは、
0.1mm≦S≦0.2mm ・・・(4)
を満たすことが望ましい。このようにすることで、ティース22とノズル71との接触を回避できるからである。
【0052】
図7は、縦軸をティース開口幅Wt/コイル24の線径Φcとし、横軸をコイル24の線径Φcとしたときのティース開口幅Wt/コイル24の線径Φcの変化を示すグラフである。
図7に示すように、上記式(1)~(4)の下限値から上限値の範囲において、コイル24の線径Φcを
0.3mm≦Φc≦1.5mm ・・・(5)
を満たすようにすることが望ましいことが確認できる。コイル24の線径Φcが0.3mmよりも小さくなると、ティース開口幅Wt/コイル24の線径Φcの値が急激に大きくなる。また、コイル24の線径Φcが1.5mmよりも大きくなると現実的にコイル24を曲げるのが困難になる。このため、上記式(5)とした。
【0053】
また、
図7に示すグラフより、ティース開口幅Wt/コイル24の線径Φcは、
3.83≦Wt/Φc≦6.73 ・・・(6)
を満たすようにすることが望ましい。上記式(6)を満たすことにより、ティース開口幅Wtを十分に確保できるため、コイル24の傷や損傷を防止できる。
【0054】
このように上述の巻線装置70におけるノズル71は、上記式(1)~(3)を満たすように形成されている。このため、ノズル71から繰り出されるコイル24の曲げ応力を極力低減できるので、コイル24の巻回作業時の損傷を防止できる。また、無駄にノズル71が大型化してしまうことを防止できるので、モータ部2の大型化やモータ特性の低下を防止できる。
【0055】
また、モータ部2は、突起35を有するロータコア32を備える。このため、ロータ9を回転させるにあたり、リラクタンストルクと永久磁石33の磁力(磁石トルク)との双方を利用することができ、モータ部2のトルクを効果的に大きくできる。この分、コイル24の占積率を低減できるので、コイル24の巻回作業工数を低減でき、コイル24の損傷を抑制できる。
【0056】
また、ステータコア20のコア部21は、軸方向からみて角丸正六角形の筒状に形成されており、各6つの角部20A及び平坦部20Bを有している。平坦部20Bは、内周面21aと外周面21bとが平行となるように肉厚が均一に形成されている。このため、
図3に示すように、コア部21が円筒状に形成されている場合(
図3における二点鎖線参照)と比較してスロット19内のスペースを大きくすることができる(
図3におけるハッチ部参照)。この分、コイル24の占積率を低減することができ、スロット19内にノズル71を進入しやすくできる。よって、コイル24の巻回作業を容易化できる。
【0057】
また、コイル24の線径Φcは、上記式(4)を満たすことが望ましい。このように構成することで、ノズル71の形状(寸法)、ティース開口幅Wtを適正なものにでき、モータ部2の大型化やモータ特性の低下を確実に防止できる。
また、ティース開口幅Wt/コイル24の線径Φcは、上記式(6)を満たすことが望ましい。このように構成することで、ティース開口幅Wtを十分に確保できるため、コイル24の傷や損傷を防止できる。
【0058】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ブラシレスモータ1は、車両に搭載されるサンルーフの駆動源であるとした。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、ブラシレスモータ1は、車両に搭載される各種の電装品(例えば、パワーウインドウ、電動シート及びワイパー等)の駆動源又は車両以外の各種機器に搭載される駆動源であってもよい。
【0059】
上述の実施形態では、モータ部2において、例えば、永久磁石33の磁極数とスロット19(ティース22)の数との比は、4:6である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、永久磁石33の磁極数とスロット19(ティース22)の数との比は、任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…ブラシレスモータ、2…モータ部(モータ)、8…ステータ、9…ロータ、20…ステータコア、20A…角部、20B…平坦部、22…ティース、22a…ティース本体、22b…鍔部、24…コイル、70…巻線装置、71…ノズル、72…ノズル孔、73…内径丸面取り部、74…外径丸面取り部、C1…回転軸線