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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびダンパーユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20240206BHJP
   H02K 7/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02K33/16 A
H02K7/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062078
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021164225
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】日向 章二
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030263(WO,A1)
【文献】特開平06-123321(JP,A)
【文献】実開昭61-097847(JP,U)
【文献】特開2001-193777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
H02K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ダンパー部材および第2ダンパー部材を備えたダンパーユニットであって、
前記第1ダンパー部材と前記第2ダンパー部材のそれぞれは、
筒状のゲル状部材と、前記ゲル状部材の内周部に接続される第1部材と、前記第1部材の外周側を囲んでおり前記ゲル状部材の外周部に接続される第2部材と、を備え、
前記第1ダンパー部材と前記第2ダンパー部材は、前記ゲル状部材の軸線方向に並んでおり、
前記ゲル状部材は、第1端面、および、前記第1端面とは逆方向を向く第2端面を備え、前記第1端面と前記第2端面は、断面形状が異なり、
前記第1ダンパー部材は、前記第1端面が前記軸線方向の一方側を向いており、前記第2端面が前記軸線方向の他方側を向いており、
前記第2ダンパー部材は、前記第2端面が前記軸線方向の一方側を向いており、前記第1端面が前記軸線方向の他方側を向いていることを特徴とするダンパーユニット。
【請求項2】
前記第1端面と前記第2端面の一方は、平坦面であり、
前記第1端面と前記第2端面の他方は、凹面であることを特徴とする請求項に記載のダンパーユニット。
【請求項3】
前記第1部材の前記第2端面側の端部は、前記第2部材の前記第2端面側の端部よりも突出していることを特徴とする請求項またはに記載のダンパーユニット。
【請求項4】
前記ゲル状部材は、円筒形状であることを特徴とする請求項からの何れか一項に記載のダンパーユニット。
【請求項5】
可動体および固定体と、
前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、
請求項1から4の何れか一項に記載のダンパーユニットと、を有するアクチュエータであって、
前記ダンパーユニットは、
前記可動体の振動方向と前記軸線方向とが一致しており、前記可動体の振動方向の一端側および他端側の2箇所に配置されて、前記2箇所において前記可動体と前記固定体とを
接続することを特徴とするアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を固定体に対して振動させるアクチュエータ、および可動体と固定体とを接続するダンパーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、固定体および可動体と、固定体に対して可動体を振動させる磁気駆動機構を備えるとともに、可動体と固定体とをダンパー部材によって接続したものがある。特許文献1では、可動体は、磁石が固定されたヨークを備えており、固定体(支持体)は、可動体を収容するカバーと、コイルを保持するホルダを備える。ダンパー部材(ゲル状ダンパー部材)は、厚さ方向の一方の面がヨークに接着され、他方の面がカバー部材に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ダンパー部材は、シート状ゲルを矩形に切断したゲル状部材(ゲル状ダンパー部材)であり、ヨークとカバーとの間に挟まれている。特許文献1では、切断したゲル状部材を単体で部品として取り扱うため、取り扱いが難しい。また、特許文献1の構造では、ゲル状部材は振動方向と直交する方向にも変形可能な状態に組み立てられている。従って、可動体が意図しない方向へ動きやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、枠状の第1部材と第2部材(内枠と外枠)との隙間に筒状のゲル状部材を配置し、筒状のゲル状部材によって第1部材と第2部材とを接続した構造のダンパー部材を提案している。第1部材(内枠)を可動体側の部品であるシャフトに固定し、第2部材(外枠)を固定体側の部品であるケースに固定する構造のアクチュエータは、可動体が振動方向(軸線方向)と直交する方向に動きにくい。
【0006】
上記のような構造のダンパー部材の製造方法は、第1部材と第2部材との間にゲル材料を充填して固化させる方法(注型)がある。しかしながら、注型により製造すると、ゲル状部材は、一方の端面は型によって平坦な形状に成形されるものの、他方の面は表面張力によって凹んだ形状になる。従って、ゲル状部材の端面が振動方向の一方側と他方側で異なる断面形状になるので、可動体が振動方向の一方側に移動するときと他方側に移動するときでゲル状部材の特性を同一にすることができない。従って、可動体が振動方向の一方側に移動するときと他方側に移動するときでアクチュエータの特性が異なる。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、枠状の第1部材と第2部材を筒状のゲル状部材によって接続した構造のダンパー部材を備えたアクチュエータおよびダンパーユニットにおいて、可動体が振動方向の一方側に移動するときと他方側に移動するときのダンパー部材の特性差を低減もしくは解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、可動体および固定体と、前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、前記可動体と前記固定体とを接続する第1ダンパー部材および第2ダンパー部材と、を有し、前記第1ダンパー部材と前
記第2ダンパー部材のそれぞれは、筒状のゲル状部材と、前記ゲル状部材の内周部に接続される第1部材と、前記第1部材の外周側を囲んでおり前記ゲル状部材の外周部に接続される第2部材と、を備え、前記第1部材と前記第2部材の一方は、前記可動体に接続され、前記第1部材と前記第2部材の他方は、前記固定体に接続され、前記第1ダンパー部材と前記第2ダンパー部材は、前記ゲル状部材の軸線方向と前記可動体の振動方向とが一致しており、前記ゲル状部材は、第1端面、および、前記第1端面とは逆方向を向く第2端面を備え、前記第1端面と前記第2端面は、断面形状が異なり、前記第1ダンパー部材は、前記第1端面が前記振動方向の一方側を向いており、前記第2端面が前記振動方向の他方側を向いており、前記第2ダンパー部材は、前記第2端面が前記振動方向の一方側を向いており、前記第1端面が前記振動方向の他方側を向いていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、可動体と固定体を接続する第1ダンパー部材および第2ダンパー部材は、それぞれ、筒状のゲル状部材を備えており、可動体が振動する際、ゲル状部材は、軸線方向にせん断変形するように組み立てられている。第1ダンパー部材と第2ダンパー部材は、それぞれ、ゲル状部材の軸線方向の一方側の端面(第1端面)と軸線方向の他方側の端面(第2端面)の断面形状が異なっているが、第1ダンパー部材と第2ダンパー部材は、第1端面と第2端面の向きが逆向きになるように配置されている。このように、2つのダンパー部材を逆向きにすることによって、可動体の移動方向による、各ダンパー部材の特性差が相殺される。従って、各ダンパー部材が単体では可動体の移動方向による特性差があっても、アクチュエータ全体としては、可動体が移動する方向の違いによる特性差を低減もしくは解消することができる。
【0010】
本発明において、前記第1ダンパー部材は、前記可動体の振動方向の一端側で前記可動体と前記固定体を接続し、前記第2ダンパー部材は、前記可動体の振動方向の他端側で前記可動体と前記固定体を接続することが好ましい。このようにすると、可動体の振動方向の両端がゲル状部材を備えたダンパー部材によって支持される。従って、可動体を安定して支持でき、可動体が意図しない方向へ動くことを抑制できる。
【0011】
次に、本発明は、第1ダンパー部材および第2ダンパー部材を備えたダンパーユニットであって、前記第1ダンパー部材と前記第2ダンパー部材のそれぞれは、筒状のゲル状部材と、前記ゲル状部材の内周部に接続される第1部材と、前記第1部材の外周側を囲んでおり前記ゲル状部材の外周部に接続される第2部材と、を備え、前記第1ダンパー部材と前記第2ダンパー部材は、前記ゲル状部材の軸線方向に並んでおり、前記ゲル状部材は、第1端面、および、前記第1端面とは逆方向を向く第2端面を備え、前記第1端面と前記第2端面は、断面形状が異なり、前記第1ダンパー部材は、前記第1端面が前記軸線方向の一方側を向いており、前記第2端面が前記軸線方向の他方側を向いており、前記第2ダンパー部材は、前記第2端面が前記軸線方向の一方側を向いており、前記第1端面が前記軸線方向の他方側を向いていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、2つのダンパー部材(第1ダンパー部材および第2ダンパー部材)を逆向きにして組み合わせた構造であるため、各ダンパー部材は、第1部材と第2部材とが相対移動する方向の違いによる特性差が相殺される。従って、各ダンパー部材が単体では第1部材と第2部材とが相対移動する方向の違いによる特性差があっても、ダンパーユニット全体としては、特性差を低減もしくは解消することができる。
【0013】
本発明において、前記第1端面と前記第2端面の一方は、平坦面であり、前記第1端面と前記第2端面の他方は、凹面である。このような端面形状は、第1ダンパー部材および第2ダンパー部材を注型により製造した場合に得られるものである。注型により製造することにより、第1ダンパー部材および第2ダンパー部材を容易に製造することができる。
【0014】
本発明において、前記第1部材の前記第2端面側の端部は、前記第2部材の前記第2端
面側の端部よりも突出していることが好ましい。このようにすると、ダンパー部材(第1ダンパー部材および第2ダンパー部材)は、第1部材と第2部材の端部の位置が揃っていない側が一目でわかる。従って、ダンパー部材の裏表が一目でわかり、ゲル状部材の裏表が一目でわかる。従って、アクチュエータ1を組み立てる際に、同一のダンパー部材10の表裏を逆向きにして組み立てる作業を容易に、且つ、間違いなく行うことができる。
【0015】
本発明において、前記ゲル状部材は、円筒形状であることが好ましい。このようにすると、第1部材と第2部材の一方に接続される可動体を軸線方向に振動させる場合に、可動体が振動方向とは異なる方向(径方向)に移動する際のばね定数が大きくなる。従って、可動体が振動方向とは異なる方向に移動することを抑制できる。また、ゲル状部材が全周で均等に配置される。従って、ゲル状部材のばね定数を全周で均等にすることができるので、可動体を軸線方向に振動させる場合に、可動体が特定の方向へ動きやすくなることがない。よって、可動体を安定して支持できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2つのダンパー部材(第1ダンパー部材および第2ダンパー部材)を逆向きにして組み合わせた構造であるため、各ダンパー部材は、第1部材と第2部材とが相対移動する方向(すなわち、可動体が移動する方向)の違いによる特性差が相殺される。従って、各ダンパー部材が単体では第1部材と第2部材とが相対移動する方向(可動体が移動する方向)の違いによる特性差があっても、全体としては、ダンパー部材の特性差を低減もしくは解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図2図1のアクチュエータを軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図3図1のアクチュエータを軸線方向の他方側から見た分解斜視図である。
図4】ダンパー部材の製造方法の説明図である。
図5】第1ダンパー部材と第2ダンパー部材の配置を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態に係るダンパーユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、軸線Lとは可動体3の中心軸線である。また、軸線Lが延在する方向(軸線L方向)の一方側をL1とし、軸線L方向の他方側をL2とする。本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3が固定体2に対して軸線L方向に振動する。
【0019】
以下に説明する実施形態では、可動体3は、固定体2の内周側に配置されるが、本発明では、可動体3が固定体2の外周側に配置される態様を採用してもよい。また、以下に説明する実施形態では、可動体3を固定体2に対して振動させる磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、固定体2に配置されるコイル62とを備えているが、本発明では、磁石61とコイル62の配置を逆にした構成を採用してもよい。すなわち、磁気駆動機構6は、可動体3に配置されるコイル62と、固定体2に配置される磁石61とを備える態様を採用してもよい。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の断面図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1を軸線方向の一方側L1から見た分解斜視図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1を軸線方向の他方側L2から見た分解斜視図である。アクチュエータ1は、固定体2および可動体3と、固定体2と可動体3とを接続するダンパー部材10と、可動体3を固定体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。磁気駆動機
構6は、可動体3に配置される磁石61と、固定体2に配置されるコイル62とを備えており、固定体2に対して可動体3を軸線L方向に相対移動させる。
【0021】
(ダンパー部材)
可動体3は、軸線L方向の一方側L1の端部、および軸線L方向の他方側L2の端部の各位置において、ダンパー部材10を介して固定体2に接続される。以下、軸線L方向の一方側L1に配置されるダンパー部材10を第1ダンパー部材10Aとし、軸線L方向の他方側L2に配置されるダンパー部材10を第2ダンパー部材10Bとする。
【0022】
ダンパー部材10は、第1部材11と、第1部材11の外周側を囲む第2部材12と、第1部材11と第2部材12の間に配置されるゲル状部材14を備える。本形態では、第1部材11および第2部材12は円筒状であり、同軸に配置される。ゲル状部材14は、径方向の厚さが一定の円筒形状である。ゲル状部材14の内周部は、第1部材11の外周面に接続され、ゲル状部材14の外周部は、第2部材12の内周面に接続される。ゲル状部材14は、第1部材11と第2部材12の間に隙間なく充填されており、全周に連続して配置される。
【0023】
第1部材11は、大径部15と、大径部15よりも小径の小径部16を備える。図1に示すように、第1部材11の中心には軸穴17が形成されており、軸穴17に可動体3のシャフト31が配置される。第1部材11の大径部15は第2部材12の内周側に配置され、小径部16は、大径部15から軸線L方向の一方側L1もしくは他方側L2に延びている。ゲル状部材14の内周部は、大径部15の外周面に接続される。
【0024】
ダンパー部材10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。本形態では、第1部材11および第2部材12はいずれも金属製であり、ゲル状部材14は粘弾性体である。例えば、ゲル状部材14は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。なお、第1部材11および第2部材12は、金属製に限定されるものではなく、他の素材で形成されていてもよい。
【0025】
本形態では、第1部材11は可動体3に固定される。第1部材11は可動体3と一体になって軸線L方向に振動する。従って、第1部材11は、可動体3の質量を調節するための錘として用いることができる。第2部材12は固定体2に固定される。ゲル状部材14は、第1部材11および第2部材12を介して固定体2と可動体3を接続する。可動体3が軸線L方向に振動する際、ゲル状部材14は、せん断方向に変形する。
【0026】
第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bは同一部材であり、軸線L方向で逆向きに配置される。第1ダンパー部材10Aでは、小径部16は大径部15から軸線L方向の他方側L2に延びており、第2ダンパー部材10Bでは、小径部16は大径部15から軸線L方向の一方側L1に延びている。
【0027】
ゲル状部材14は、軸線L方向を向く第1端面141と、第1端面141とは逆方向を向く第2端面142を備える。図1に示すように、第1端面141と第2端面142は、軸線Lを含む平面で切断した断面形状が異なる。第1ダンパー部材10Aでは、第1端面141が軸線L方向の一方側L1を向いており、第2端面142が軸線L方向の他方側L2を向いている。第2ダンパー部材10Bでは、第1端面141が軸線L方向の他方側L2を向いており、第2端面142が軸線L方向の一方側L1を向いている。
【0028】
ダンパー部材10は、後述するように、第1部材11と第2部材12の間にゲル材料G(図4参照)を充填して固化させる方法(注型)によって製造されている。ゲル状部材14の第1端面141は、製造用の型部材に接する面であるため、第1部材11の大径部1
5の端面および第2部材12の端面と同一面上に位置しており、平坦面である。一方、ゲル状部材14の第2端面142は、充填されたゲル材料Gの表面(液面)であるため、表面張力によって凹面になっている。
【0029】
(固定体)
固定体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線L方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線L方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を備える。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。
【0030】
図2図3に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3箇所に爪部27を備えている。爪部27は径方向内側に弾性変形可能であり、ケース20の内周側に押し込まれる。爪部27の先端がケース20の縁に設けられた係止部28に係止されることにより、第1蓋部材21および第2蓋部材22がケース20から外れることが規制される。
【0031】
コイルホルダ4は、ホルダ環状部41と、ホルダ環状部41から軸線L方向の他方側L2へ突出する胴部42を備える。ホルダ環状部41がケース20の内側に圧入されることにより、コイルホルダ4はケース20に固定される。ホルダ環状部41には、L1側から第1蓋部材21が固定される。ホルダ環状部41は円形の開口部44を備えており、開口部44に第1ダンパー部材10Aが固定される。本形態では、開口部44に第1ダンパー部材10Aの第2部材12が圧入されている。
【0032】
コイルホルダ4の胴部42にはコイル62が固定される。コイル62から引き出されたコイル線(図示省略)の端部は、ホルダ環状部41から径方向外側へ突出する端子ピンに絡げられている。コイル線は、端子ピンを介して基板63に接続される。図2に示すように、基板63は、ケース20の外周面に設けられた凹部24に固定される。
【0033】
図1に示すように、ケース20は、第2蓋部材22のL1側の位置から内周側へ突出するケース環状部25を備える。第2蓋部材22は、ケース環状部25にL2側から固定される。また、ケース環状部25は円形の開口部26を備えており、開口部26に第2ダンパー部材10Bが固定される。本形態では、開口部26に第2ダンパー部材10Bの第2部材12が圧入されている。
【0034】
(可動体)
可動体3は、固定体2の径方向の中心において軸線L方向に延びるシャフト31と、シャフト31の軸線L方向の略中央に固定される磁石61と、磁石61にL1側で重なる第1ヨーク32と、磁石61にL2側で重なる第2ヨーク33を備える。
【0035】
磁石61は円筒状であり、軸線L方向においてN極とS極とに分極するように着磁されている。シャフト31は、固定体2の径方向の中心において軸線L方向に延びている。磁石61の外周側には、コイルホルダ4の胴部42が磁石61と同軸に配置される。従って、磁石61とコイル62は同軸に配置される。
【0036】
第1ヨーク32は、外径寸法が磁石61の外径寸法よりわずかに大きい磁性板である。第1ヨーク32の外周面は、磁石61の外周面より径方向外側に張り出している。第1ヨーク32は、磁石61のL1側の面に接着等の方法で固定される。
【0037】
第2ヨーク33は、2枚の磁性板(第1磁性板34、第2磁性板35)によって構成さ
れる。第1磁性板34は、磁石61のL2側の面に接着等の方法で固定される端板部341と、端板部341の外縁からL1側に延在する円筒状の側板部342とを備える。側板部342は、コイルホルダ4の胴部42の外周側に配置される。第2磁性板35は、第1磁性板34の端板部341よりわずかに小さな円板状である。第2磁性板35は、第1磁性板34の端板部341にL1側で積層され、端板部341に溶接されている。第2磁性板35は、磁石61のL2側の面に接着等の方法で固定される。
【0038】
シャフト31は、第1ヨーク32からL1側に突出する第1端部311と、第2ヨーク33からL2側に突出する第2端部312を備える。第1端部311には、第1ダンパー部材10Aの第1部材11が固定される。また、第2端部312には、第2ダンパー部材10Bの第1部材11が固定される。シャフト31の両端に固定される2個の第1部材11は、可動体3と一体になって移動する。
【0039】
(ダンパー部材の製造方法)
図4は、ダンパー部材10の製造方法の説明図である。ダンパー部材10の製造に用いる製造用治具90は、円形凹部91と、円形凹部91の底面中央から突出するピン92を備える。ダンパー部材10の製造方法は、製造用治具90に対して第1部材11および第2部材12を組み付ける第1工程と、第1部材11と第2部材12の隙間Sにゲル材料を充填する第2工程と、ゲル材料を加熱硬化させる第3工程と、製造用治具90からダンパー部材10を取り外す第4工程と、を含む。
【0040】
第1工程では、製造用治具90に対して第1部材11および第2部材12を当接させて位置決めすることによって、第1部材11と第2部材12の間に径方向の隙間Sを形成する。図4に示すように、第1工程では、円形凹部91の中央から突出するピン92を第1部材11の軸穴17に挿入し、第1部材11の大径部15の端面を円形凹部91の底面94にL1側から当接させる。また、円形凹部91の内周面に第2部材12を内接させるとともに、第2部材12の端面を円形凹部91の底面94の外周領域に当接させる。これにより、第1部材11と第2部材12が軸線L方向および径方向に位置決めされ、第1部材11の大径部15と第2部材12の間には、環状の隙間Sが形成される。環状の隙間Sは全周にわたって形成され、径方向の幅が全周で一定である。
【0041】
本形態では、第2工程で隙間Sにゲル材料を入れる前に、ゲル状部材14と接する面にプライマー13を塗布しておく。具体的には、第1部材11における大径部15の外周面、および第2部材12の内周面にプライマー13を塗布する。なお、プライマー13を塗布する作業は、製造用治具90に対して第1部材11および第2部材12を組み付ける前に行ってもよいし、組み付けた後に行ってもよい。
【0042】
第2工程では、第1部材11と第2部材12との隙間Sに硬化前のゲル材料Gを充填する。図4に示すように、第2工程では、ディスペンサー93からゲル材料Gを吐出して、隙間Sに充填する。ゲル材料Gの表面(液面)は、表面張力が働くことによって外周縁が巻き上がった形状になるので、全体として凹面になる。
【0043】
第3工程では、ゲル材料Gを製造用治具90ごと加熱し、規定の温度で規定の時間維持することにより硬化させる。これにより、隙間Sにはゲル状部材14が形成される。ゲル材料Gは、加熱硬化する際に、プライマー13に接する部分がプライマー13と反応して、第1部材11の外周面および第2部材12の内周面に固定される。従って、硬化後のゲル状部材14は、接着剤を用いることなく、ゲル状部材14自体の接着力によって第1部材11および第2部材12に固定される。
【0044】
第4工程では、完成したダンパー部材10を製造用治具90から取り外す。例えば、製
造用治具90の第1部材11が当接する面および第2部材12が当接する面に突き出しピンを配置するための貫通孔(図示せず)を設けておき、突き出しピンを用いてダンパー部材10を製造用治具90から取り外す。完成したダンパー部材10は、円形凹部91の底面94に接していた第1端面141が平坦面であり、液面であった第2端面142は凹面になっている。また、第1部材11の小径部16(すなわち、第1部材11の第2端面142側の端部)は、第2部材12の第2端面142側の端部よりも突出している。
【0045】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、コイル62に通電することにより、磁気駆動機構6が、可動体3を軸線L方向に駆動する駆動力を発生させる。コイル62への通電を切ると、可動体3は、ゲル状部材14の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62への通電を断続的に行うことにより、可動体3は、軸線L方向で振動する。
【0046】
可動体3が固定体2に対して軸線L方向に振動する際、ダンパー部材10(第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10B)は、ゲル状部材14の内周部に固定された第1部材11とゲル状部材14の外周部に固定された第2部材12とが軸線L方向に相対移動する。従って、ゲル状部材14は、可動体3の振動に追従してせん断方向に変形する。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態に係るアクチュエータ1は、可動体3と固定体2を接続する第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bは、それぞれ、筒状のゲル状部材14を備えており、可動体3が振動する際、ゲル状部材14は、軸線方向にせん断変形するように組み立てられている。
【0048】
すなわち、本形態のアクチュエータは、可動体3および固定体2と、可動体3を固定体2に対して振動させる磁気駆動機構6と、可動体3と固定体2とを接続する第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bとを有する。第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bのそれぞれは、筒状のゲル状部材14と、ゲル状部材14の内周部に接続される第1部材11と、第1部材11の外周側を囲んでおりゲル状部材14の外周部に接続される第2部材12とを備える。第1部材11と第2部材12の一方は、可動体3に接続され、第1部材11と第2部材12の他方は、固定体2に接続される。第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bは、ゲル状部材14の軸線方向と可動体3の振動方向(軸線L方向)とが一致している。
【0049】
また、本形態では、可動体3と固定体2を接続する第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bは、軸線L方向で逆向きに配置されており、断面形状が異なる第1端面141と第2端面142の向きが逆向きになるように配置される。
【0050】
すなわち、本形態では、ゲル状部材14は、軸線方向を向く第1端面141、および、第1端面141とは逆方向を向く第2端面142を備えており、第1端面141と第2端面142は、断面形状が異なっている。そして、第1ダンパー部材10Aは、ゲル状部材14の第1端面141が振動方向(軸線L方向)の一方側L1を向いており、ゲル状部材14の第2端面142が振動方向(軸線L方向)の他方側L2を向いている。一方、第2ダンパー部材10Bは、ゲル状部材14の第2端面142が振動方向(軸線L方向)の一方側L1を向いており、ゲル状部材14の第1端面141が振動方向(軸線L方向)の他方側L2を向いている。
【0051】
このように、2つのダンパー部材10を逆向きに配置することによって、可動体3が振動方向(軸線L方向)の一方側に移動するときと他方側に移動するときの、第1ダンパー
部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bの特性の違いが相殺される。従って、各ダンパー部材が単体では第1部材11と第2部材12が相対移動する方向の違いによる特性差があっても、アクチュエータ1全体としては、可動体3が移動する方向の違いによる特性差を低減もしくは解消することができる。
【0052】
本形態において、第1端面141と第2端面142の一方は、平坦面であり、第1端面141と第2端面142の他方は、凹面である。このような端面形状は、第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bを注型により製造した場合に得られる。本形態では、ゲル状部材14として熱硬化性ゲルを用いるので、硬化に要する時間が長い。従って、注型により製造することで、第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bを容易に製造することができる。
【0053】
本形態のゲル状部材14は円筒形状であり、第1部材11の全周を連続して囲んでいる。ダンパー部材10(第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10B)は、可動体3が径方向に移動する場合には、ゲル状部材14が潰れる方向に変形する。ゲル状部材14が潰れる方向に変形する場合のバネ定数は、ゲル状部材14がせん断方向に変形する場合のバネ定数の3倍程度になる。従って、可動体3が振動方向(軸線L方向)とは異なる方向に移動することが抑制される。また、ゲル状部材14は円筒形状であり、全周で均等に配置される。従って、ゲル状部材14のばね定数を全周で均等にすることができるので、可動体3を軸線方向に振動させる場合に、可動体3が特定の方向へ動きやすくなることがない。よって、可動体3を安定して支持できる。
【0054】
本形態において、第1ダンパー部材10Aは、可動体3の振動方向(軸線L方向)の一端側で可動体3と固定体2を接続し、第2ダンパー部材10Bは、可動体3の振動方向(軸線L方向)の他端側で可動体3と固定体2を接続する。従って、可動体3の振動方向(軸線L方向)の両端がゲル状部材14を備えたダンパー部材10によって支持されるため、可動体3を安定して支持できる。よって、可動体3が意図しない方向へ動くことを抑制できる。
【0055】
本形態のダンパー部材10は、第1部材11の第2端面142側の端部(すなわち、小径部16)が、第2部材12の第2端面142側の端部よりも突出している。従って、第1部材11と第2部材12の端部の位置が揃っていない側が一目でわかるので、ダンパー部材10の裏表が一目でわかり、ゲル状部材14の裏表が一目でわかる。よって、アクチュエータ1を組み立てる際に、同一のダンパー部材10の表裏を逆向きにして組み立てる作業を容易に、且つ、間違いなく行うことができる。
【0056】
(変形例)
図5は、第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bの配置を示す説明図である。図5(a)は上記形態の配置を示しており、図5(b)は変形例の配置を示している。図1図5(a)に示すように、上記形態では、ゲル状部材14の第2端面142同士を対向させるように第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bを配置しているが、図5(b)に示すように、上記形態とは逆の向きに配置してもよい。
【0057】
図5(b)に示す配置では、第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bは、ゲル状部材14の第1端面141同士を対向させるように配置されている。この配置でも、可動体3が振動方向(軸線L方向)の一方側に移動するときと他方側に移動するときの、第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bの特性の違いが相殺される。従って、各ダンパー部材が単体では第1部材11と第2部材12が相対移動する方向の違いによる特性差があっても、アクチュエータ1全体としては、可動体3が移動する方向の違いによる特性差を低減もしくは解消することができる。
【0058】
(ダンパーユニット)
図6は、本発明の実施形態に係るダンパーユニット110の説明図である。図6に示すダンパーユニット110は、2個のダンパー部材10を備える。各ダンパー部材10は、上記形態と同一の構成であり、軸線L方向で逆向きに配置される。従って、ダンパーユニット110は、全体として、軸線L方向に対して垂直な面を基準として対称な形状になっている。
【0059】
すなわち、本形態は、第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bを備えたダンパーユニット110であって、第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bのそれぞれは、筒状のゲル状部材14と、ゲル状部材14の内周部に接続される第1部材11と、第1部材11の外周側を囲んでおりゲル状部材14の外周部に接続される第2部材12と、を備える。第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bは、ゲル状部材14の軸線L方向に並んでおり、ゲル状部材14は、第1端面141、および、第1端面141とは逆方向を向く第2端面142を備え、第1端面141と第2端面142は、断面形状が異なる。第1ダンパー部材10Aは、第1端面141が軸線方向の一方側L1を向いており、第2端面142が軸線方向の他方側L2を向いており、第2ダンパー部材10Bは、第2端面142が軸線方向の一方側L1を向いており、第1端面141が軸線方向の他方側L2を向いている。
【0060】
ダンパーユニット110は、2つのダンパー部材10(第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10B)を逆向きにして組み合わせた構造であるため、各ダンパー部材の第1部材11と第2部材12が相対移動する方向の違いによる特性差が相殺される。従って、ダンパーユニット110単体で、第1部材11と第2部材12が相対移動する方向の違いによる特性差を低減もしくは解消することができる。
【0061】
ダンパーユニット110を用いて可動体3と固定体2を接続する場合には、図6に示すように、ダンパーユニット110をシャフト31の一端および他端に接続することにより、可動体3の軸線L方向の一端側および他端側の2か所において、ダンパーユニット110によって可動体3と固定体2とを接続することができる。あるいは、ダンパーユニット110を用いて、1か所で可動体3と固定体2を接続してもよいし、3個所以上で可動体3と固定体2を接続してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…アクチュエータ、2…固定体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、10…ダンパー部材、10A…第1ダンパー部材、10B…第2ダンパー部材、11…第1部材、12…第2部材、13…プライマー、14…ゲル状部材、15…大径部、16…小径部、17…軸穴、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…凹部、25…ケース環状部、26…開口部、27…爪部、28…係止部、31…シャフト、32…第2ヨーク、33…第2ヨーク、34…第1磁性板、35…第2磁性板、41…ホルダ環状部、42…胴部、44…開口部、61…磁石、62…コイル、63…基板、90…製造用治具、91…円形凹部、92…ピン、93…ディスペンサー、94…底面、110…ダンパーユニット、141…第1端面、142…第2端面、311…第1端部、312…第2端部、341…端板部、342…側板部、G…ゲル材料、L…軸線、L1…一方側、L2…他方側、S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6