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特許7431109車両用シートとそのシートクッションサイドたれ部
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  • 特許-車両用シートとそのシートクッションサイドたれ部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車両用シートとそのシートクッションサイドたれ部
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20240206BHJP
   B60N 2/10 20060101ALI20240206BHJP
   A47C 1/024 20060101ALN20240206BHJP
   B60N 2/36 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/10
A47C1/024
B60N2/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020096240
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021187365
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓弥
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031665(JP,A)
【文献】特開2019-209785(JP,A)
【文献】実開平04-062228(JP,U)
【文献】国際公開第2015/097832(WO,A1)
【文献】独国実用新案第20009327(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A47C 1/00- 1/037
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションの側部下方に設けられて前記シートクッション下部の隙間を隠すとともに、前記シートクッションの動きに追従して折れ曲がるシートクッションサイドたれ部であって、
当該シートクッションサイドたれ部を構成するカバー部材よりも硬い材質からなる被取付け部材を備え、
該被取付け部材が、前記シートクッションの動作時に相対変位する部材に取付け具によって取り付けられる構造であり、
前記被取付け部材に前記取付け具を通す透孔が設けられていて、
前記透孔は、前記シートクッションが動く際に前記カバー部材の折れ曲がりを少なくする方向に延びる長孔である、シートクッションサイドたれ部。
【請求項2】
車両用シートのシートクッションの側部下方に設けられて前記シートクッション下部の隙間を隠すとともに、前記シートクッションの動きに追従して折れ曲がるシートクッションサイドたれ部であって、
当該シートクッションサイドたれ部を構成するカバー部材よりも硬い材質からなる被取付け部材を備え、
該被取付け部材が、前記シートクッションの動作時に相対変位する部材に取付け具によって取り付けられる構造であり、
前記被取付け部材に前記取付け具を通す透孔が設けられていて、
前記被取付け部材は、少なくとも前記透孔が、前記カバー部材よりも前記車両用シートの中央側に位置するように設けられてい、シートクッションサイドたれ部。
【請求項3】
前記透孔は、前記シートクッションが動く際に前記カバー部材の折れ曲がりを少なくする方向に延びる長孔である、請求項2に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項4】
前記被取付け部材は、少なくとも前記透孔が、前記カバー部材よりも前記車両用シートの中央側に位置するように設けられている、請求項に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項5】
前記被取付け部材が樹脂片で構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項6】
前記取付け具が差し込み型のクリップである、請求項1からのいずれか一項に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項7】
車両用シートのシートクッションの側部下方に設けられて前記シートクッション下部の隙間を隠すとともに、前記シートクッションの動きに追従して折れ曲がるシートクッションサイドたれ部であって、
当該シートクッションサイドたれ部を構成するカバー部材よりも硬い材質からなる被取付け部材を備え、
該被取付け部材が、前記シートクッションの動作時に相対変位する部材に取付け具によって取り付けられる構造であり、
前記カバー部材に、前記シートクッションが動く際に当該カバー部材が折れ曲がるときの折れ曲がりの向きを安定させる癖づけ部が形成されている、シートクッションサイドたれ部。
【請求項8】
前記癖づけ部は前記カバー部材の一部を折り返し縫製して形成されている、請求項7に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項9】
前記癖づけ部は、前記カバー部材が前記車両用シートの中央側に折れ曲がった際、当該車両用シートのフレーム、および前記シートクッションの動作時に相対変位する部材を回避する位置に形成されている、請求項8に記載のシートクッションサイドたれ部。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のシートクッションサイドたれ部を備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートとそのシートクッションサイドたれ部に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのシートクッションの側部下方に、シートクッション下部の隙間を隠すように覆う表皮(「タレ」とも呼ばれるもので、本明細書ではこれをシートクッションサイドたれ部という)が設けられる場合がある(例えば特許文献1参照)。このようなシートクッションサイドたれ部としては、リクライニング時などにおけるシートクッションの動きに追従して折れ曲がりやすく、尚かつ安価である例えばニードルパンチのような生地が使われることが多い(図11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6154916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のごとき従来のシートクッションサイドたれ部には、繰り返し折れ曲がるうち、ツリークリップなどで取り付けるために設けられている生地の孔の部分が広がってしまい(図12参照)、これが続くと場合によっては外れてしまうなど、実際の使用の際に起こりえる課題が含まれることがあり、その構造にはまだなお改良の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、繰り返し折れ曲がるうち孔が広がってしまうといった実際の使用の際に起こりえる課題を解決しうる構造の車両用シートとそのシートクッションサイドたれ部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両用シートのシートクッションの側部下方に設けられてシートクッション下部の隙間を隠すとともに、シートクッションの動きに追従して折れ曲がるシートクッションサイドたれ部であって、
当該シートクッションサイドたれ部を構成するカバー部材よりも硬い材質からなる被取付け部材を備え、
該被取付け部材が、シートクッションの動作時に相対変位する部材に取付け具によって取り付けられる構造のシートクッションサイドたれ部である。
【0007】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部においては、カバー部材よりも硬い材質からなり当該カバー部材に比して強度に優る被取付け部材を採用し、この被取付け部材を取り付ける構造としたことから、繰り返し折れ曲がるうち孔が広がってしまうといった事象を抑制することが可能となる。
【0008】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、被取付け部材に取付け具を通す透孔が設けられていてもよい。
【0009】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部における透孔は、シートクッションが動く際にカバー部材の折れ曲がりを少なくする方向に延びる長孔であってもよい。
【0010】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部における被取付け部材は、少なくとも透孔が、カバー部材よりも車両用シートの中央側に位置するように設けられていてもよい。
【0011】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、被取付け部材が樹脂片で構成されていてもよい。
【0012】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、取付け具が差し込み型のクリップであってもよい。
【0013】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、カバー部材に、シートクッションが動く際に当該カバー部材が折れ曲がるときの折れ曲がりの向きを安定させる癖づけ部が形成されていてもよい。
【0014】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、癖づけ部はカバー部材の一部を折り返し縫製して形成されていてもよい。
【0015】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部において、癖づけ部は、カバー部材が車両用シートの中央側に折れ曲がった際、当該車両用シートのフレーム、およびシートクッションの動作時に相対変位する部材を回避する位置に形成されていてもよい。
【0016】
本発明の一態様である車両用シートは、上記のごときシートクッションサイドたれ部を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、繰り返し折れ曲がるうち孔が広がってしまうといった実際の使用の際に起こりえる課題を解決しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用シートの構造の一例を、内部のフレーム等のみで表す斜視図である。
図2図1に示した車両用シートの左側面の構造を示す図である。
図3】「基準位置」にある車両用シートを示す側面図である。
図4】「基準位置」から「最前傾」の状態に変わる途中の車両用シートを示す側面図である。
図5】「最前傾」の状態にある車両用シートを示す側面図である。
図6】シートクッションサイドたれ部の構成例を示す車両用シートのシートクッション周辺の側面図である。
図7図6中のVII-VII線における断面の構造を示す図である。
図8図7に示したシートクッションサイドたれ部がシートクッションの動きに伴い折れ曲がった後の状態を示す図である。
図9】カバー部材に癖づけ部が形成されたシートクッションサイドたれ部の一例を示す画像である。
図10図9に示したカバー部材がシートクッションの動きに伴い折れ曲がった後の状態を示す、図9中のX方向からみた斜視画像(VIEW X)である。
図11】車両用シートのシートクッションの側部下方に設けられるシートクッションサイドたれ部の一例を示す参考図である。
図12図11のXII-XII線におけるシートクッションサイドたれ部の断面構造を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下では、自動車の前席における車両用シート1に設けられるシートクッションサイドたれ部50に本発明を適用した例を示す(図1図10参照)。なお、図中において、車両(自動車)の前方(進行方向)を符号Fで表す。
【0020】
車両用シート1は、車両のフロアパネル上に配置されるシートクッション(座)2と、シートクッション2に対してリクライニング可能なシートバック(背もたれ)3とを備える。シートクッション2およびシートバック3は、それぞれ、車両用シート1を構成するシート部材であり、例えば発泡体からなるクッション材を備えている。本実施形態の車両用シート1は、メインフレーム10、ベースフレーム90などを備える。
【0021】
車両用シート1のメインフレーム10は、クッションフレーム20、バックフレーム30などを含む。クッションフレーム20は車両用シート1のシートクッション2のフレームであり、バックフレーム30は車両用シート1のシートバック3のフレームである。
【0022】
ベースフレーム90は、車室の床部に取り付けられ、その上にメインフレーム10が取り付けられるフレームである(図2等参照)。本実施形態のベースフレーム90は、ライザー91、連結部材92,93などを備えている。
【0023】
ライザー91は、ベースフレーム90の両側のフレームを構成する左右一対の部材からなる。この一対のライザー91の後方連結点にはメインフレーム10(の一部を構成するクッションフレーム20)が長孔(図示省略)を介して前後方向へスライド可能に連結され、当該一対のライザー91の前方連結点にはフロントリンク40がピン結合されている。フロントリンク40の上端は、クッションフレーム20とピン結合されている(図2等参照)。
【0024】
これらライザー91、クッションフレーム20、フロントリンク40、長孔は四節スライダー機構を構成しており、例えば車両用シート1の折り畳み動作に伴い以下のように連動する(図3図5参照)。すなわち、車両用シート1の通常の使用時の状態である「基準位置」(図3参照)から、シートバック3を前方に折り畳んだ状態である「最前傾」(図5参照)までの間、フロントリンク40は後方に向け回動し、クッションフレーム20は前側の高さを下げながら後方に退避してほぼ水平な状態になる。
【0025】
上記のごとき構成の本実施形態の車両用シート1にはシートクッションサイドたれ部50が設けられている。以下、このシートクッションサイドたれ部50について説明する(図2図6等参照)。
【0026】
シートクッションサイドたれ部50は、シートクッション下部の隙間(図6図7において符号Sで示す)を隠すようにシートクッション2の側部下方に設けられる部材からなる。シートクッションサイドたれ部50の上端部はシートクッション2の例えばクッション材(図示省略)やクッションフレーム20などに取り付けられている。また、シートクッションサイドたれ部50の下端部は、シートクッション2の動作(例えば、上記のごとくシートバック3を前方に折り畳み、あるいは折り畳んだシートバック3を元の基準位置に戻す際のシートクッション2の動作)に相対変位する部材、例えば本実施形態であればベースフレーム90に取り付けられている(図7等参照)。
【0027】
本実施形態のシートクッションサイドたれ部50は、カバー部材60と樹脂片70とで構成されている(図7等参照)。カバー部材60は、シートクッション2の動きに追従して折れ曲がりやすく、より好ましくは尚かつ安価な材質で形成されている。一例として、本実施形態では、ニードルパンチで形成される不織布で形成されたカバー部材60を採用している。また、カバー部材60は、車両用シート1が「基準位置」(図3参照)にある状態で撚(よ)れや歪みが少なくなる形状、たとえば前方のほうが徐々に幅広となるような略台形の形状となっている(図6参照)。
【0028】
樹脂片70は、カバー部材60の下部に配置されている部材(被取付け部材)で、取付け具80で当該樹脂片70をベースフレーム90側に取り付けることができるように構成されている(図7等参照)。かかる樹脂片(被取付け部材)70は、少なくとも、カバー部材60よりも硬い材質で構成されているもので、本実施形態であれば樹脂(一例として、ハッポート(登録商標))で構成されているがその他の材質で構成されたものを被取付け部材として用いてもよい。
【0029】
樹脂片70には、取付け具80を通すための透孔として長孔72が設けられている(図6等参照)。長孔72は、シートクッション2がベースフレーム90に対して相対的に動く際、カバー部材60の折れ曲がりを少なくする方向に延びるように構成されていることが好ましい。一例として、本実施形態では、カバー部材60の下縁に沿って傾斜して延びる長孔72を採用している(図6参照)。シートクッション2がベースフレーム90に対して相対的に動く際、クッションフレーム20が後方に退避してほぼ水平な状態になることから両者間には前後方向のずれが生じるが、上記のごとき長孔72によれば、カバー部材60の下縁が追従して前後方向に動くことを許容するから、ずれに起因して当該カバー部材60に撚(よ)れや歪みが生じて折れ曲がる度合いを少なくすることができる。
【0030】
樹脂片70は、カバー部材60とベースフレーム90の間に位置するように取り付けられている(図7等参照)。こうした場合、樹脂片70がカバー部材60よりも車両用シート1の中央側に位置することになり、当該樹脂片70さらには取付け具80が外側から見えなくなって意匠性が向上する(図6参照)。本実施形態では、樹脂片70の下縁をカバー部材60の下縁に縫い付け、当該樹脂片70のすべてがカバー部材60の下縁から内側に折り返されて完全に隠れる状態としている(図7参照)。ただしこれは好適な一例にすぎず、この他、樹脂片70の一部がカバー部材60の下縁から露出して見える状態となっていても特段の問題はない。このような場合であっても、少なくとも長孔72がカバー部材60の裏側にある(別言すれば、少なくとも長孔72がカバー部材60よりも車両用シート1の中央側に位置する)ようになっていれば、当該長孔72や取付け具80はカバー部材60によって隠れた状態となる。
【0031】
取付け具80は、シートクッションサイドたれ部50の樹脂片70をベースフレーム90に取り付ける際に用いられる。本実施形態では、ベースフレーム90の取付け用孔94に差し込むタイプのクリップ(いわゆるツリークリップ)のような留め具を取付け具80として用いている。このような取付け具80は、その頭部がカバー部材60の裏側に隠れた状態であってもカバー部材60の表面側から押し込んで取り付けることができ、取付け作業が簡便である(図6図7参照)。
【0032】
上記のごとき態様のシートクッションサイドたれ部50においては、カバー部材60よりも硬い材質からなり当該カバー部材60に比して強度に優る樹脂片(被取付け部材)70を採用し、この樹脂片70をベースフレーム90に取り付ける構造としたことから、当該シートクッションサイドたれ部50が繰り返し折れ曲がるうち孔が広がってしまうといった事象が抑制される。
【0033】
又、本実施形態では、シートクッションサイドたれ部50の表皮(カバー部材60)と板金物であるベースフレーム90の取付け用孔94がばらついた際、テンションが掛かる方向に樹脂片70を追加する事で表皮(カバー部材60)を受ける面を増やす事(現状は表皮-ツリークリップ外周が接して表皮留めをしているが、ハッポートなどの樹脂片70を追加する事で、テンションの受け面を外周から樹脂片70の面部にすることができる。従って外周面積よりも大きな面積でテンションを持つ事になり)安定的に表皮(カバー部材60)の引きを担保する事ができる為、しわになりにくい。このことは、外観性向上、品質面、量産面での良化をもたらす。
【0034】
また、シートクッションサイドたれ部50においては、カバー部材60に癖づけ部62が形成されていてもよい。以下、この癖づけ部62について説明する(図8等参照)。
【0035】
一般に、癖づけがされていないプレーンな状態のシートクッションサイドたれ部においては、シートクッションの動きに伴って折れ曲がる際、車両の内側に向けて折れ曲がることがあれば外側に向けて折れ曲がることもあり、折れ曲がりの向きが安定しないことがある。この点を鑑み、本実施形態では、カバー部材60が折れ曲がるときの折れ曲がりの向きを安定させるべく、当該カバー部材60に癖づけ部62を形成している(図6等参照)。
【0036】
このような癖づけ部62の具体的な構成は特に限定されないが、一例として本実施形態では、カバー部材60の一部を折り返し、縫い代を残して当該部分を直線的に縫製(つまみ縫い)してハギ(接ぎ)を形成している(図7図9参照)。このような癖づけ部62は形成しやすく、作業に要する手間が比較的少なくて済む。縫い代が内側を向くように方向づける癖づけ部62が形成されたカバー部材60は、車両用シート1の内側に折れ曲がり(FOLD DOWN)やすく、そうなった場合の見栄えがよい(図8図10参照)。
【0037】
また、本実施形態では、図7中の符号63Aと63Bで示す2箇所のハギを持つ3枚表皮の袋(3枚ハギの袋)構造としており、ハギ63A,63Bを2つ挟む事で屈曲点(表皮が折れ曲がる点)ができあがり、当該ハギ部分を支点として屈曲させやすいトリム構造にして、剛性が低い(折れやすい)表皮を使用せずとも、同一表皮を用いて安定的に外側へ膨らます構造としている(逆を言うと、癖づけ部62の点で説明をするとカバー部材60のトリムピースを裏表面を逆にして縫製すると内側へ屈曲しやすくなる)。つまり、上のハギ(外観から見えない端末合わせのハギ)63Aと下のハギ(外から見えるハギ部分)63Bを組み合わせて安定的に屈曲できる構造体としている。別の表現をすると、ハギ63Bが支点となり、ハギ63Aの向きを変える事で外側、内側への屈曲を指示できる構造を持つ3枚ハギである。この構造によれば、屈曲させる為に表皮材を変更せずに意匠面を同一表皮で縫合できる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のごとき癖づけ部62を、カバー部材60が車両用シート1の中央側に折れ曲がった際、クッションフレーム20やベースフレーム90などを回避するような位置に形成している(図6図8参照)。こうした場合、カバー部材60は車両用シート1のさらに中央側に折れ曲がるようになり、外側に膨らみにくい(図8図10参照)。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、癖づけ部62を構成するための縫製(つまみ縫い)として示した具体例(図7図9参照)はあくまで一例にすぎず、カバー部材60の形状や大きさ、クッションフレーム20やベースフレーム90との位置関係などに応じてその配置などは種々変わりうる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、のシートクッションの側部下方に設けられてシートクッション下部の隙間を隠すとともに、シートクッションの動きに追従して折れ曲がるシートクッションサイドたれ部に適用して好適である。
【符号の説明】
【0041】
1…車両用シート、2…シートクッション(座)、3…シートバック(背もたれ)、10…メインフレーム、20…クッションフレーム、30…バックフレーム、40…フロントリンク、50…シートクッションサイドたれ部、60…カバー部材、62…癖づけ部、63A,63B…ハギ、70…樹脂片(被取付け部材)、72…長孔(透孔)、80…クリップ(取付け具)、90…ベースフレーム(シートクッションの動作時に相対変位する部材)、91…ライザー、92,93…連結部材、94…取付け用孔、S…シートクッション下部の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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