(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】シース剥ぎ装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20240206BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20240206BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02G1/12 053
B26D3/00 603Z
B26D7/02 E
(21)【出願番号】P 2020104571
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 澄雄
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-10953(JP,A)
【文献】特開平8-222049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
B26D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材と、前記線材を覆うシースと、を有する電線であって両端末近傍において前記シースにそれぞれ切込が入れられた電線の中央部分を把持する中央把持部と、
前記切込の位置よりも前記両端末側において前記シースの先端部をそれぞれ把持する二つの端末把持部と、を備え、
前記二つの端末把持部は、前記シースの先端部をそれぞれ把持した状態で前記両端末側へスライドする
シース剥ぎ装置。
【請求項2】
前記中央把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部を有し、
前記二枚の板部の間に前記中央部分を挟んで把持し、
少なくとも一枚の前記板部が、一方の前記切込の近傍から他方の前記切込の近傍にわたって延伸する
請求項1に記載のシース剥ぎ装置。
【請求項3】
前記端末把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部を有し、
前記二枚の板部の間に前記先端部を挟んで把持する
請求項1又は2に記載のシース剥ぎ装置。
【請求項4】
前記両端末側において前記シースの先端部が除去された前記電線を収容する電線収容部を、前記中央把持部の下方に備える
請求項1~3のいずれか一項に記載のシース剥ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シース剥ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの製造工程において、線材(芯線)がシースで覆われた電線端末においてシースの先端部をインラインで除去することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に示す皮剥き装置は、電線を挟んで両側からカッタで絶縁被覆(シース)に切込みを入れ、カッタを端末側にスライドして、被覆除去を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シース直下の部材の材質や除去すべきシースの先端部の長さ等によっては、カッタをスライドさせてシースを剥ぎ取ることが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シースの先端部を確実に除去できるシース剥ぎ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシース剥ぎ装置は、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1) 線材と、前記線材を覆うシースと、を有する電線であって両端末近傍において前記シースにそれぞれ切込が入れられた電線の中央部分を把持する中央把持部と、
前記切込の位置よりも前記両端末側において前記シースの先端部をそれぞれ把持する二つの端末把持部と、を備え、
前記二つの端末把持部は、前記シースの先端部をそれぞれ把持した状態で前記両端末側へスライドする
シース剥ぎ装置。
(2) 前記中央把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部を有し、
前記二枚の板部の間に前記中央部分を挟んで把持し、
少なくとも一枚の前記板部が、一方の前記切込の近傍から他方の前記切込の近傍にわたって延伸する
上記(1)に記載のシース剥ぎ装置。
(3) 前記端末把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部を有し、
前記二枚の板部の間に前記先端部を挟んで把持する
上記(1)又は(2)に記載のシース剥ぎ装置。
(4) 前記両端末側において前記シースの先端部が除去された前記電線を収容する電線収容部を、前記中央把持部の下方に備える
上記(1)~(3)のいずれか一に記載のシース剥ぎ装置。
【0007】
上記(1)の構成のシース剥ぎ装置によれば、切込の位置よりも端末側のシースを把持してスライドすることにより、電線の両端において、シースの先端部を確実に剥ぎ取ることができる。したがって、除去すべきシースの先端部が長尺である等、シースに切込みを入れたカッタをスライドさせることでは除去できない場合にも対応できる。
【0008】
上記(2)の構成のシース剥ぎ装置によれば、二箇所の切込の間に延在する中央部分を二枚の板部で挟んで把持することにより、電線を確実に保持できる。
【0009】
上記(3)の構成のシース剥ぎ装置によれば、シースの先端部を二枚の板部で挟んで把持してスライドすることにより、シースの先端部が長尺であっても確実に除去できる。
【0010】
上記(4)の構成のシース剥ぎ装置によれば、シースの先端部が除去された電線を確実に回収できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シースの先端部を確実に除去できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態のシース剥ぎ装置を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のシース剥ぎ装置において、端末チャックが端末側へスライドした様子を示す図である。
【
図3】
図3は、シース切込装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。以下の説明において、上下、左右、前後の各方向は、図中に記載の方向を示す。
【0015】
図1は、実施形態のシース剥ぎ装置10を示す図であり、
図2は、
図1のシース剥ぎ装置10において、端末チャック12が端末側へスライドした様子を示す図である。シース剥ぎ装置10は、二本の通信線を撚り合わせたツイスト線(線材)と、ツイスト線を覆う金属箔と、金属箔を覆うシースと、を有する所定長の電線Wの両端末において、シースを剥いで除去する。
【0016】
シース剥ぎ装置10は、
図1に示すように、中央チャック11と、左右の端末チャック12と、側板13と、底板14と、レール15と、左右のエアシリンダー16と、電線収容部17と、左右のシース収容部18と、を備える。
【0017】
中央チャック11は、左右両端末近傍においてシースにそれぞれ切込が入れられた電線Wの中央部分、すなわち、二箇所の切込の間に延在する部分を把持する。中央チャック11は、電線Wの延在方向(左右方向)及び上下方向に延びる二枚の板部11A、11Bを有し、二枚の板部11A、11Bの間に電線Wの中央部分を挟んで把持する。後方側に位置する板部11Aは、左側の切込の近傍から右側の切込の近傍にわたって延伸する。前方側に位置する板部11Bの左右方向における幅は、板部11Aの左右方向における幅よりも狭くされている。板部11A、11Bの互いに対向する面は、好ましくはゴム等の弾性材料で構成される。
【0018】
中央チャック11は、エアシリンダー11C、及びエアシリンダー11Cが固定される取付部11Dを有する。エアシリンダー11Cは、前後方向に移動可能な端部11Caが、板部11Bの略中央に固定される。取付部11Dは、左右方向に延在するレール15に取り付けられる。中央チャック11は、エアシリンダー11Cの端部11Caが前方に位置した状態で板部11A、11Bが開いた状態とされ、端部11Caが後方に位置した状態で板部11A、11Bが開いた状態とされる。
【0019】
左右の端末チャック12は、電線Wの、切込の位置よりも左右端末側において、シースの先端部をそれぞれ把持する。端末チャック12は、電線Wの延在方向及び上下方向に延びる二枚の板部12A、12Bを有し、二枚の板部12A,12Bの間にシースの先端部を挟んで把持する。前方側に位置する板部12Bの左右方向における幅は、後方側に位置する板部12Aの左右方向における幅よりも狭くされている。板部12A、12Bの互いに対向する面は、好ましくはゴム等の弾性材料で構成される。
【0020】
端末チャック12は、エアシリンダー12C、及びエアシリンダー12Cが固定されるスライダー12Dを有する。エアシリンダー12Cは、前後方向に移動可能な端部12Caが、板部12Bの略中央に固定される。スライダー12Dはレール15に取り付けられる。スライダー12Dは、エアシリンダー16によって左右方向に移動される。端末チャック12は、エアシリンダー12Cの端部12Caが前方に位置した状態で板部11A、11Bが開いた状態とされ、端部12Caが後方に位置した状態で板部11A、11Bが開いた状態とされる。
【0021】
側板13は、左右方向及び上下方向に延在する平板であり、中央チャック11の板部11Aと板部11Bとの間において、板部11Aに対向するように配置される。側板13は、中央に矩形の開口部13aを有する。
【0022】
側板13の下方には、左右方向及び前後方向に延びる底板14が設けられる。底板14は、左右方向に平行な状態(閉じた状態)から、後端の一辺を軸に前端の一辺が下方に移動して上下方向に平行な状態(開いた状態)となるように構成される。
【0023】
電線収容部17は、中央チャック11の下方に設けられ、両端末側においてシースの先端部が除去された電線Wを収容する。シース収容部18は、端末チャック12の下方に設けられ、電線Wから除去されたシースの先端部を収容する。
【0024】
上記のように構成されたシース剥ぎ装置10の動作を説明する。
図1に示す初期状態において、中央チャック11は、板部11A、11Bが開いた状態とされる。左右の端末チャック12は、板部12A,12Bが開いた状態とされ、それぞれ、側板13の左右に隣接して配置される。また、底板14は閉じた状態とされている。
【0025】
両端末近傍に切込が入れられた所定長の電線Wが、上方から板部11Aと側板13との間に供給されると、板部11Bが開口部13a内に(後方に)移動される。そして、板部11Aと板部11Bとの間に、電線Wの中央部分を挟んで、中央チャック11(板部11A、11B)が閉じた状態とされる(
図2参照)。
【0026】
一方、電線Wの両端末側において、同時に、板部12Bが後方に移動されて、板部12Aと板部12Bとの間にシースの先端部(シースの先端と切込との間の部分)を挟んで、端末チャック12(板部12A、12B)が閉じた状態とされる(
図1参照)。端末チャック12がシースの先端部を把持した状態(閉じた状態)で、
図2に示すように、左側の端末チャック12が左方向へ、右側の端末チャック12が右方向へ、レール15に沿って同時に移動(スライド)する。端末チャック12が閉じた状態でスライドすることにより、電線Wの両端末において、同時にシースの先端部が除去される。
【0027】
板部11Bが前方に移動されて中央チャック11が開き、底板14が開いた状態とされると、両端末側においてシースの先端部が除去された電線Wは、
図2に示す矢印の方向に落下し、電線収容部17に収容される。電線Wの両端末側において、板部12Bが前方に移動されて端末チャック12が開くと、電線Wの両端末から除去されたシースの先端部は、落下してシース収容部18に収容される。
【0028】
図3を参照して、シース剥ぎ装置10の前段に設けられるシース切込装置30について説明する。
図3は、シース切込装置30を模式的に示す図である。シース切込装置30は、長尺の電線Wを引き出しながら所定長に切断し、かつ、電線Wの左右両端末近傍におけるシースの所定位置(電線Wの先端から所定距離離間した位置)に切込を入れる。
【0029】
シース切込装置30は、
図3に示すように、中央保持部31と、端末保持部32、33と、一対のローラー34と、一対のローラー35と、一対の刃36と、一対の刃37と、を備える。
【0030】
中央保持部31は、内部に電線Wを挿通可能な中空円筒形状を有する。端末保持部32、33は、内部に電線Wを挿通可能な中空円筒形状を有し、中央保持部31の左右側に、中央保持部31と離間して、それぞれ配置される。端末保持部32、中央保持部31、及び端末保持部33は、この順に配置され、内部に電線Wが挿通される。
【0031】
一対のローラー34は、端末保持部32の左側において、電線Wの上下にそれぞれ配置される。ローラー34は、外周面が樹脂等で形成され、一対のローラー34の回転により、電線Wを左方向へ送出する。
【0032】
一対のローラー35は、端末保持部33の右側において、電線Wの上下にそれぞれ配置される。ローラー35は、外周面が樹脂等で形成され、一対のローラー35の回転により、電線Wを左方向へ送出する。
【0033】
一対の刃36は、例えばV刃、丸刃等であり、端末保持部32と中央保持部31との間において電線Wの上下にそれぞれ設けられる。一対の刃36は、電線Wの左側端末近傍におけるシースの所定位置(電線Wの左側先端から所定距離離間した位置)に切込を入れる。
【0034】
一対の刃37は、例えばV刃、丸刃等であり、中央保持部31と端末保持部33との間において電線Wの上下にそれぞれ設けられる。一対の刃37は、電線Wの右側端末近傍におけるシースの所定位置(電線Wの右側先端から所定距離離間した位置)に切込を入れる。
【0035】
シース切込装置30の右側から長尺の電線Wが供給されると、長尺の電線Wは、一対のローラー35によって左側へ送出され、端末保持部33、中央保持部31、端末保持部32に案内されて、一対のローラー34によって所定位置まで送られる。長尺の電線Wは、一対のローラー34及び一対のローラー35によって、左側端末近傍と右側端末となるべき位置の近傍とがそれぞれ挟持された状態で、一対の刃36及び一対の刃37によって、シースの所定位置に切込が入れられる。所定位置に切込が入れられた長尺の電線Wは、ローラー34、35によってさらに左側へ送られ、ローラー34の左側に設けられた、図示しない切断手段によって、所定長に切断される。シース切込装置30によって切込が入れられ所定長に切断された電線Wは、後段のシース剥ぎ装置10に供給される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のシース剥ぎ装置10によれば、切込が入ったシースの左右側端末を端末チャック12が把持してスライドする。これにより、除去すべきシースの先端部が長尺であっても、電線Wの両端において、シースの先端部を確実に剥ぎ取ることができる。また、中央チャック11が、中央部分を二枚の板部で挟んで把持することにより、電線Wを確実に保持できる。さらに、シース剥ぎ装置10が中央チャック11の下方に電線収容部17を備えることにより、シースが除去された電線Wを確実に回収できる。
【0037】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、前述した実施形態では、シース剥ぎ装置10の処理対象が、二本の通信線を互いに撚り合わせたツイスト線であったが、二本の通信線が撚り合わされない線材を処理対象としてもよい。また、電線の本数は二本に限定されず、例えば四本等でもよい。また、線材とシースとの間に、編組、PET箔等が設けられたシールド電線や、編組付きの同軸電線等も処理対象とすることができる。
【0038】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るシース剥ぎ装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 線材と、前記線材を覆うシースと、を有する電線(W)であって両端末近傍において前記シースにそれぞれ切込が入れられた電線の中央部分を把持する中央把持部(中央チャック11)と、
前記切込の位置よりも前記両端末側において前記シースの先端部をそれぞれ把持する二つの端末把持部(端末チャック12)と、を備え、
前記二つの端末把持部は、前記シースの先端部をそれぞれ把持した状態で前記両端末側へスライドする
シース剥ぎ装置(10)。
[2] 前記中央把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部(11A、11B)を有し、
前記二枚の板部の間に前記中央部分を挟んで把持し、
少なくとも一枚の前記板部が、一方の前記切込の近傍から他方の前記切込の近傍にわたって延伸する
上記[2]に記載のシース剥ぎ装置。
[3] 前記端末把持部は、
前記電線の延在方向に延びる二枚の板部(12A、12B)を有し、
前記二枚の板部の間に前記先端部を挟んで把持する
上記[1]又は[2]に記載のシース剥ぎ装置。
[4] 前記両端末側において前記シースの先端部が除去された前記電線を収容する電線収容部(17)を、前記中央把持部の下方に備える
上記[1]~[3]のいずれか一に記載のシース剥ぎ装置。
【符号の説明】
【0039】
10 シース剥ぎ装置
11 中央チャック
11A、11B、12A、12B 板部
11C、12C、16 エアシリンダー
11Ca、12Ca 端部
12 端末チャック
13 側板
14 底板
15 レール
17 電線収容部
18 シース収容部
30 シース切込装置
W 電線