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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】読取システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20240206BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240206BHJP
【FI】
G06K7/10 264
G06K7/10 164
H04B5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020108401
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006254
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】大西 誠人
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012211(JP,A)
【文献】特開2018-060497(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119909(WO,A1)
【文献】特開2009-080588(JP,A)
【文献】特開2002-320762(JP,A)
【文献】特開2000-292534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグが貼付される複数の物品を含む測定対象を開口部から内部に載置可能であり、前記開口部が扉部材によって開閉可能に構成される検査室と、
前記検査室に設けられ、前記測定対象を載置した状態で少なくとも水平方向に移動可能に構成される載置台と、
前記検査室の内部に設けられ、前記載置台に載置されて前記載置台の移動によって少なくとも水平方向に移動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取る読取部と、
前記検査室の床面に水平方向の一方向に沿って設けられるレールと、
前記載置台の底面に設けられ、前記レールに篏合されるローラと、
前記載置台に連結されて前記検査室の外部に延在して設けられ、外力を入力可能なハンドルと、
を備え、
前記ハンドルを介して入力された外力に応じて、前記ローラが回転して前記レールに沿って移動することによって、前記載置台が往復移動する、
読取システム。
【請求項2】
無線タグが貼付される複数の物品を含む測定対象を開口部から内部に載置可能であり、前記開口部が扉部材によって開閉可能に構成される検査室と、
前記検査室に設けられ、前記測定対象を載置した状態で少なくとも水平方向に移動可能に構成される載置台と、
前記検査室の内部に設けられ、前記載置台に載置されて前記載置台の移動によって少なくとも水平方向に移動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取る読取部と、
前記載置台に連結されて前記検査室の外部に延在して設けられ、外力を入力可能なハンドルを備え、
前記載置台は、前記検査室の床面との間に配置される複数の球状体によって支持され、前記ハンドルを介して入力された外力に応じて、前記球状体が回転することによって、水平方向の一方向または複数方向に移動可能である、
読取システム。
【請求項3】
前記載置台が移動して前記検査室の内壁に突き当たる際に前記載置台と前記内壁との間に介在するよう設けられるストッパを備える、
請求項1または2に記載の読取システム。
【請求項4】
前記ストッパは弾性部材である、
請求項3に記載の読取システム。
【請求項5】
前記読取部の動作を制御し、前記読取部により読み取られた複数の前記無線タグの情報を集約する制御装置を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の読取システム。
【請求項6】
前記載置台に前記測定対象が載置されたことを検知する検知部を備え、
前記制御装置は、前記検知部により前記測定対象の載置が検知されたとき、前記読取部による前記無線タグの読み取り動作を所定時間ごとに実行させ、前記検知部により前記測定対象が前記載置台から取り出されたことが検知されたとき、前記読取部による前記読み取り動作を終了する、
請求項に記載の読取システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記情報に基づき、前記測定対象に所望の物品がすべて含まれているか否かを判定し、
前記測定対象に所望の物品の少なくとも一部が含まれていないと判定した場合、前記載置台を再度往復運動させるよう促し、前記読取部により、前記再度往復運動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取らせる、
請求項5または6に記載の読取システム。
【請求項8】
前記情報を表示する表示装置を備え、
前記制御装置は、
前記測定対象に所望の物品の少なくとも一部が含まれていないと判定した場合、情報欠損状態であることを前記表示装置に表示させ、
前記情報欠損状態の表示後に、前記再度往復運動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取らせることで、前記読み取った情報を追加情報として前記表示装置に表示させ、
前記追加情報をもとに前記測定対象に所望の物品の全てが含まれていると判定した場合、情報充足状態であることを前記表示装置に表示させる、
請求項に記載の読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグなどの無線タグを用いて物品の管理を行う技術が知られている。典型的な無線タグを用いた管理システムは、例えば管理対象の物品に無線タグを貼付し、アンテナによってその無線タグに非接触でアクセスし、タグから取得した情報に基づき物品の有無の検知や追跡を行う(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-248778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無線タグを用いた物品の管理システムでは、複数の物品に貼付されたタグから纏めて情報を読み取ろうとすると、アンテナとタグとの相対的な位置関係や、タグの周囲の他物品との密接度合い、物品同士の重なり具合などにより、一部のタグから情報を読み取れない場合が考えられる。
【0005】
本開示は、無線タグの読み取り精度を向上できる読取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る読取システムは、無線タグが貼付される複数の物品を含む測定対象を開口部から内部に載置可能であり、前記開口部が扉部材によって開閉可能に構成される検査室と、前記検査室に設けられ、前記測定対象を載置した状態で少なくとも水平方向に移動可能に構成される載置台と、前記検査室の内部に設けられ、前記載置台に載置されて前記載置台の移動によって少なくとも水平方向に移動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取る読取部と、前記検査室の床面に水平方向の一方向に沿って設けられるレールと、前記載置台の底面に設けられ、前記レールに篏合されるローラと、前記載置台に連結されて前記検査室の外部に延在して設けられ、外力を入力可能なハンドルと、を備え、前記ハンドルを介して入力された外力に応じて、前記ローラが回転して前記レールに沿って移動することによって、前記載置台が往復移動する。
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る読取システムは、無線タグが貼付される複数の物品を含む測定対象を開口部から内部に載置可能であり、前記開口部が扉部材によって開閉可能に構成される検査室と、前記検査室に設けられ、前記測定対象を載置した状態で少なくとも水平方向に移動可能に構成される載置台と、前記検査室の内部に設けられ、前記載置台に載置されて前記載置台の移動によって少なくとも水平方向に移動された前記複数の物品に貼付されている前記無線タグから情報を読み取る読取部と、前記載置台に連結されて前記検査室の外部に延在して設けられ、外力を入力可能なハンドルを備え、前記載置台は、前記検査室の床面との間に配置される複数の球状体によって支持され、前記ハンドルを介して入力された外力に応じて、前記球状体が回転することによって、水平方向の一方向または複数方向に移動可能である。

【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無線タグの読み取り精度を向上できる読取システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る読取システムの概略構成を示す断面図
図2図1中の載置台及び駆動部の概略構成を示す平面図
図3】測定対象を揺動させる効果を説明する模式図
図4】表示装置の表示内容の一例を示す図
図5】複数方向の運動が可能な載置台の概略構成の一例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は、読取システム1の前後方向であり、y方向は、読取システム1の幅方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る読取システム1の概略構成を示す断面図である。図2は、図1中の載置台3及び駆動部5の概略構成を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の読取システム1は、複数の物品11を含む測定対象10から各物品11の情報を読み取るための装置である。各物品11にはRFIDタグ12(無線タグ)が貼付されており、読取システム1はRFIDタグ12に記憶されている情報を読み取ることで各物品11の情報を取得することができる。
【0013】
測定対象10の具体例としては、例えば病院の薬品棚から持ち出されてトレイ13に乗せられた複数の医療用医薬品11が挙げられる。
【0014】
読取システム1は、検査室2と、載置台3と、RFIDアンテナ4(読取部)と、駆動部5と、制御装置6とを備える。
【0015】
検査室2は、測定対象10から情報を読み取るために利用される空間である。検査室2は、例えば六面体形状であり、その表面に外部から測定対象10を内部に搬入して載置可能な開口部21が設けられる。開口部21は例えば図1に示すように検査室2のx正方向側の前面2Aに設けられる。また、開口部21には扉部材22が回動可能に取り付けられ、開口部21は扉部材22によって開閉可能に構成される。図1図2に示すように、検査室2には、z負方向側の略矩形状の底板2Bの四つの角部から下方に脚部23が延在して設けられており、これにより底板2Bの下方に空間が形成されている。
【0016】
載置台3は、検査室2の内部に設けられ、測定対象10を載置可能な板状部材である。載置台3は、駆動部5によって、水平方向の一方向(図1の例ではx方向)に往復移動可能に構成される。
【0017】
駆動部5は、例えば図1図2に示す構成をとり、レール51と、ローラ52と、ハンドル53とを有する。レール51は、検査室2の底板2Bの上面(床面)に、載置台3の移動方向に沿って設けられる。レール51は例えば図2に示すように載置台3の幅方向に2本並設される。
【0018】
ローラ52は、載置台3の底面3Aに設けられ、レール51に篏合されてレール51に沿ってx方向に回転移動可能に設けられる。ローラ52は例えば図2に示すように、1本のレール51ごとに載置台3の前後方向(x方向)に沿って2個設けられ、合計4個設けられる。各ローラ52は、例えばベアリングを介して軸支されており、これにより載置台3が前後方向に外力を受けたときに円滑に回転してレール51上を移動できるよう構成される。
【0019】
ハンドル53は、載置台3に前後方向の外力を入力可能な部材である。ハンドル53は、載置台3に連結されて検査室2の外部に延在して設けられる。検査室2の底板2Bには載置台3の直下(例えば図2に示すように二本のレール51の間)に、x方向に延在するよう開口部54が設けられる。ハンドル53は、棒状部材であってその一方の端部53Aが載置台3の底面3Aに接続されている。ハンドル53は底面3Aから真下に延びて開口部54を通過して底板2Bの下方に進出した後に、x正方向側に屈曲して水平に延びて検査室2の前側に進出する。ハンドル53の他方の端部53Bには操作者が把持するグリップ56が連結される。ハンドル53を介して入力された外力に応じて、ローラ52が回転してレール51に沿って移動することによって、載置台3がx方向に往復移動する。
【0020】
上述のように脚部23を設けて検査室2の下方に空間を形成することによって、この空間に駆動部5のハンドル53を配置することが可能となるので、RFIDアンテナ4による測定対象10の読み取りに影響が出にくいように駆動部5を配置することができる。また、この配置の場合、ハンドル53を検査室2から外部へ引き出すための開口部54は、載置台3によってRFIDアンテナ4から遮蔽される。このため、RFIDアンテナ4による読み取り動作時に電波が開口部54から漏れることを防止できる。
【0021】
また、検査室2において、載置台3が一の方向(x負方向)に移動したときに突き当たる位置にストッパ55Aが設けられる。また、載置台3の移動方向(x方向)の両側の端面にもストッパ55Bが設けられる。駆動部5によって載置台3が往復運動する際に、載置台3のx負方向側の端面がストッパ55Aと突き当たって反力を受けることができ、また、載置台3のx正方向側及びx負方向側の端面にそれぞれ設けられるストッパ55Bが検査室の内壁と突き当たって反力を受けることができるので、載置台3の往復運動の反転をスムーズにできる。また、載置台3が検査室2の内壁に衝突するのを回避できるので、載置台3の破損などの消耗を抑制でき、また、衝撃によって載置台3上の物品11が載置台3の外へ飛び出すのを抑制できる。
【0022】
なお、ストッパ55A、55Bは、ゴムやばねなどの弾性部材であるのが好ましい。ストッパ55A、55Bが弾性部材であると、載置台3が突き当たる際に弾性収縮することで衝撃を吸収できるので載置台3の消耗をさらに抑制できる。また、弾性復帰することで載置台3に移動反転方向に力を付与できるので、載置台3の往復運動の判定をよりスムーズにできる。また、ストッパ55A、55Bの配置は図1図2の構成に限られず、載置台3が検査室2の内壁と突き当たる際に両者の間に介在できれば他の配置でもよい。例えば、載置台3のx方向両側の端面のみにストッパを配置する構成でもよいし、検査室2の内壁の載置台3が突き当たる位置のみにストッパを配置する構成でもよい。
【0023】
RFIDアンテナ4は、検査室2の内部に設けられ、載置台3に載置されて往復運動された複数の物品11に貼付されているRFIDタグ12から情報を読み取る。RFIDアンテナ4は、読み取った情報を制御装置6に送信することができる。RFIDアンテナ4は、例えば検査室2の天板2Cに設置されて、受信領域Rが載置台3の上面に向くように配置されている。
【0024】
なお、RFIDタグ12とRFIDアンテナ4との間の通信は、通信距離を考慮すると短距離通信に適するHF帯を用いるのが好ましいが、タグのICチップの小型化に有利なUHF帯を用いてもよい。また、RFIDタグ12は、RFIDアンテナ4から放射された電波により駆動するパッシブタグでもよいし、内部電源により駆動して通信するアクティブタグでもよい。
【0025】
また、RFIDアンテナ4の読取精度を向上させるため、検査室2の内壁の表面を、電波を吸収するような性状としてもよい。これにより、例えば、載置台3上の単一の物品11のRFIDタグ12から発せられた電波が検査室2の内壁に反射して、RFIDアンテナ4が複数の方向から電波を受信することになり、この結果、RFIDアンテナ4が複数のRFIDタグ12から電波を受信したと誤って認識するようなケースを回避できる。また、例えば検査室2の内部に載置された物品11のものではなく、検査室2の外部にある別のRFIDタグ12から発せられた電波をRFIDアンテナ4が誤って読み取ることも防止できる。
【0026】
制御装置6は、RFIDアンテナ4など読取システム1の構成要素の動作を制御する。また、制御装置6は、RFIDアンテナ4により取得された物品11に係る情報を集約して記憶したり、情報に基づき計数や在庫管理などの処理を実行する構成であってもよい。
【0027】
制御装置6は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。上述した制御装置6の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウェアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0028】
本実施形態の読取システム1による測定対象10の情報読取手順を説明する。まず作業者は、読取システム1の外部で、RFIDタグ12が貼付された複数の物品11をトレイ13に投入して測定対象10を用意する。次に作業者は扉部材22を開けて、開口部21から検査室2の内部の載置台3に測定対象10を載置する。その後、作業者が扉部材22を閉じて検査室2が閉じられる。
【0029】
なお、載置台3とトレイ13との間には、載置台3の往復運動によりトレイ13が載置台3から外れないように、固定(保持)手段を設けるのが好ましい。また載置台3とトレイ13とを一体的に構成して、物品11を開口部21から、または図示しない検査室2の上部の開口部(投入口)からトレイ13に収納してもよい。載置台3とトレイ13とを別体とする場合は、投入される物品11の種類に適合した大きさや形状を有するトレイ13を用意しておくことで、対象物品を広げることができる。
【0030】
制御装置6は、例えば作業者によるスイッチ押下などの指令に応じて、RFIDアンテナ4を作動させて、RFIDアンテナ4によって載置台3上の測定対象10の各タグから情報の読み取りを行う。RFIDアンテナ4は、読み取った各タグの情報を制御装置6に出力する。
【0031】
次に作業員がハンドル53を操作して載置台3を前後方向(x方向)に往復運動させる。これにより、トレイ13上の各物品11が揺動して、各物品11の配置状態が変化する。なお、本実施形態では、「揺動」とは、載置台3の水平方向の往復運動に起因する外力が付加されることによって、測定対象10の各物品11の位置が水平方向または垂直方向またはこれらの合成方向に不規則に変動することをいう。
【0032】
その後に、制御装置6は、例えば作業者によるスイッチ押下などの指令に応じて、RFIDアンテナ4を作動させて、RFIDアンテナ4によって載置台3上の測定対象10の各タグから情報の読み取りを再度行い、RFIDアンテナ4は読み出した情報を制御装置6に出力する。
【0033】
作業者は、必要に応じて上記の物品11の揺動とRFIDタグ12の読み出しの工程を繰り返す。
【0034】
図3は、測定対象10を揺動させる効果を説明する模式図である。図3の(A)は揺動前における測定対象10の複数の物品11の配置状況の一例を示し、(B)は揺動後の配置状況の一例を示す。図3の例では、測定対象10として5つの物品11A、11B、11C、11D、11Eを含む構成が例示され、各物品にはそれぞれRFIDタグ12A、12B、12C、12D、12Eが貼付されている。
【0035】
図3(A)に示すように、5つの物品11A、11B、11C、11D、11Eの配置状況によっては、測定対象10が受信領域Rにあっても少なくとも一部のRFIDタグの読み取りができない場合がある。例えば、このような状況は、例えばRFIDアンテナ4とRFIDタグ12との相対的な位置関係(例えばRFIDタグ12がヌルポイントにある場合)や、RFIDタグ12の周囲の他物品との密接度合い、物品同士の重なり具合などによって生じ得る。図3(A)の例では、物品11AのRFIDタグ12Aが、隣接する物品11Bとの距離が近すぎてRFIDアンテナ4と通信できない状況となっている。また、物品11C、11EのRFIDタグ12C、12Eは、物品11とRFIDアンテナ4との間に別の物品11Dが介在しているため、RFIDアンテナ4と通信できない状況となっている。
【0036】
これに対して本実施形態では、駆動部5によって載置台3に水平方向の一方向(x方向)に往復運動をさせることによって、載置台3上の測定対象10を揺動させることができる。これにより、測定対象10の複数の物品11A~11Eの相対的な位置関係を変化させることができ、RFIDタグ12A~12EとRFIDアンテナ4との相対的な位置関係を変更して、RFIDアンテナ4が読み出すことができるRFIDタグ12A~12Eの数を増やすことができる。図3(B)の例では、揺動によって物品11Aと物品11Bとの間の隙間Aが広がって、RFIDタグ12AがRFIDアンテナ4と通信可能となる。また、揺動によって物品11Dが矢印Bの方向に回動して物品11Cと物品11Eとの間に進入して、物品11C~11Eが並列の状態となり、RFIDタグ12C、12EがRFIDアンテナ4と通信可能となる。
【0037】
このように、本実施形態の読取システム1によれば、検査室2内の載置台3を水平方向に往復運動可能に構成することで、載置台3上の測定対象10を揺動させて、複数の物品11の相対的な位置関係を変化させることができる。これにより、測定対象10の各物品11のRFIDタグ12がRFIDアンテナ4によって読み取りにくい配置の場合であっても、これらの配置を解消してRFIDタグ12を読み取りやすい配置に遷移させることができる。この結果、本実施形態の読取システム1は、測定対象10のRFIDタグ12の読み取り精度を向上できる。
【0038】
なお、本実施形態の読取システム1の上記の効果を検証する実験を行った。測定対象10の複数の物品11として100個のポケットティッシュを採用した。個々のポケットティッシュに貼付したRFIDタグ12の読み取りを行ったところ、揺動前に認識できた数が88個だったのに対して、揺動後に認識できた数は100個に増加し、RFIDタグ12の読み取り精度を向上できていることが確認された。
【0039】
このように本実施形態の読取システム1によれば、簡単な構成かつ簡単な操作で、読み取り精度を向上させることができる装置を安価に提供できる。
【0040】
また、読取システム1は、載置台3に測定対象10が載置されたことを検知する検知部を備える構成でもよい。この場合、制御装置6は、検知部により測定対象10の載置が検知されたとき、RFIDアンテナ4によるRFIDタグ12の読み取り動作を所定時間ごとに実行させ、検知部により測定対象10が載置台3から取り出されたことが検知されたとき、RFIDアンテナ4による読み取り動作を終了する。
【0041】
これにより、操作者が測定対象10を検査室2に入れるだけで自動的に読み取り動作を実施できるので、作業者の指示忘れなどによる読み取りの失敗を回避でき、より確実にRFIDタグ12の読み取りを行うことができる。
【0042】
また、読取システム1は、図1に示すようにさらに表示装置7を備え、制御装置6によって集約されたRFIDアンテナ4の読取結果を表示する構成としてもよい。
【0043】
制御装置6は、RFIDアンテナ4による読み出した情報に基づき、測定対象10に所望の物品がすべて含まれているか否かを判定することもできる。この場合、測定対象10に所望の物品の少なくとも一部が含まれていないと判定した場合、例えば表示装置7にその旨を表示して、作業員に載置台3を再度往復運動させるよう促し、RFIDアンテナ4により、再度往復運動された複数の物品11に貼付されているRFIDタグ12から情報を読み取らせる構成としてもよい。
【0044】
図4は、表示装置7の表示内容の一例を示す図である。図4の(A)は、揺動前の表示例を示し、(B)は揺動後の再計測後の表示例を示す。図4に示すように、表示装置7には、RFIDタグ12の読取結果を表示する読取結果表示領域71と、読取結果に応じた操作者への提供情報を表示する報知領域72とを含めることができる。
【0045】
例えば図4(A)に示すように、揺動前には5つの物品のうち2つの物品(商品B、商品D)のみが検出された場合、読取結果表示領域71には、検出された2つの商品B,Dのみが表示される。報知領域72には、例えば「一部の商品を検出できません。ハンドルで揺らしてください」などのメッセージを表示して、作業者に載置台3の揺動を促す。
【0046】
例えば図4(B)に示すように、揺動後には5つの物品のすべて(商品A~E)が検出された場合には、読取結果表示領域71には、検出されたすべての商品A~Eが表示される。このとき報知領域72には、例えば「全ての商品を検出できました」などのメッセージを表示して、作業者に情報読み出しが成功したことを報知する。
【0047】
また、制御装置6は、測定対象10に所望の物品の少なくとも一部が含まれていないと判定した場合、「情報欠損状態」であることを表示装置7に表示させて、作業員に報知する構成でもよい。この場合、作業員はこの表示に応じて載置台3を再度往復運動させる。制御装置6は、「情報欠損状態」の表示後に、再度往復運動された複数の物品11に貼付されているRFIDタグ12から情報を読み取らせることで、読み取った情報を追加情報として表示装置7に表示させる。そして、制御装置6は、これらの追加情報をもとに測定対象10に所望の物品の全てが含まれていると判定した場合、「情報充足状態」であることを表示装置7に表示させて、作業員に報知する。これにより、作業員に適切に読取状況を報知することができ、RFIDタグ12からの情報の読み取りをより確実に行うことができる。
【0048】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0049】
上記実施形態では、載置台3を往復運動させる外力を付加する駆動部5は、ハンドル53を介して操作者の手動により駆動される構成を例示したが、例えばアクチュエータ等を用いて駆動部5が自動で駆動する構成でもよい。この場合、駆動部5の動作は例えば制御装置6により制御される。
【0050】
また、上記実施形態では、載置台3の往復運動の方向がx方向の一方向である構成を例示したが、往復運動の方向は水平方向であればy方向など他の方向でもよい。また、往復運動の方向は一方向に限られず、例えばx方向かつy方向のように複数方向としてもよい。
【0051】
図5は、複数方向の運動が可能な載置台3の概略構成の一例を示す平面図である。例えば図5に示すように、複数方向に運動させる場合は、載置台3は、底板2B上の複数の、自由に回転運動可能な金属製乃至樹脂製のボール(球状体)57を介して配置してもよい。この構成により、載置台3は球状体57により支持されるので、載置台3は直線運動だけでなく、ハンドル53を水平面内で回動させることで底板2Bに対して回転運動も可能となる。載置台3を回転運動させる場合には、載置台3に載置される複数の物品11を単に往復運動させるだけでなく周期的な運動を行わせることも可能になる。図5に例示した構成以外でも、例えば、底板2Bにボール57を部分的に収容する、(フッ素樹脂製コーティング等で)ボール57との摩擦係数が小さい凹状受け部を形成してボールを保持し、載置台3をボール57の上に載せていろいろな方向に移動可能にする構成でもよい。なお、水平方向とは、鉛直方向(重力の方向)と直交する方向だけでなく、若干の傾斜を有する場合も含まれる。
【0052】
また、上記実施形態では載置台3や物品11を往復運動や周期的な運動などの規則的な運動を行わせたときにRFIDアンテナ4が物品11に貼付されたRFIDタグ12から情報を読み取る構成を例示したが、載置台3や物品11は少なくとも水平歩行に移動可能であればよく、不規則な運動を行わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 読取システム
2 検査室
21 開口部
22 扉部材
3 載置台
4 RFIDアンテナ(読取部)
5 駆動部
51 レール
52 ローラ
53 ハンドル
55A、55B ストッパ
6 制御装置
7 表示装置
10 測定対象
11 物品
12 RFIDタグ(無線タグ)
図1
図2
図3
図4
図5