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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020108613
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006407
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健郎
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-067315(JP,A)
【文献】特開2007-026943(JP,A)
【文献】特開2003-100376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動可能に組み付けられた第2ハウジング部材と、
前記第2ハウジング部材から組み付け方向に延出する可撓壁と、
前記可撓壁に設けられた第1係合部と、
前記第1係合部より前記可撓壁の基部側で前記可撓壁に設けられた第2係合部と、
前記仮係止位置における前記第2係合部を係止して前記第2ハウジング部材が前記本係止位置へ移動するのを規制する第1係止面と、前記仮係止位置の前記第1係合部又は前記本係止位置の前記第2係合部をそれぞれ係止して前記第2ハウジング部材が前記第1ハウジング部材から離脱する方向に移動するのを規制する第2係止面とを有し、前記第1ハウジング部材に設けられた第1係止突起と、
前記仮係止位置における前記第1係合部を係止して前記第2ハウジング部材が前記本係止位置に移動するのを規制する第3係止面を有し、前記第1ハウジング部材に設けられた第2係止突起と、
を備え
突起部である前記第1係合部と、突起部である前記第2係合部とは、前記組み付け方向に沿って互いに離間するように、前記可撓壁に設けられ、
前記第1係止突起と、前記第2係止突起とは、前記組み付け方向に沿って互いに離間するように、前記第1ハウジング部材に設けられたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
一対の前記可撓壁が前記第2ハウジング部材の両側面に沿って延出され、
前記第1係止突起及び前記第2係止突起が前記第1ハウジング部材の両側面にそれぞれ設けられた、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1ハウジング部材が、端子収容室を有するハウジング本体であり、
前記第2ハウジング部材が、前記端子収容室に収容された端子を二重係止するためのフロントホルダである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1係合部及び前記第2係合部が、前記第1係止突起及び前記第2係止突起と対向する側に突出する突起部である、
ことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタには、フロントホルダやリテーナ等の第2ハウジング部材が、ハウジング本体等の第1ハウジング部材に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動可能に組み付けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
図11の(a),(b)に示すこの種のコネクタ510は、コネクタハウジング520(第1ハウジング部材)と、コネクタハウジング520の前部に組付けられるフロントホルダ530(第2ハウジング部材)と、コネクタハウジング520に保持される端子540とを備える。
【0003】
コネクタハウジング520には、端子収容室521が前後方向に貫通して設けられている。また、側壁面の前寄りの部分には、前後方向に離間して前側から順に、第1係止突起525と第2係止突起526とが設けられている。
【0004】
フロントホルダ530は、開口部532を備えた前壁531と、前壁531の左右端から後方へ延出する一対の側部アーム536と、を有している。開口部532は、端子540の接点部542aを前方に臨ませるための開口であり、端子540に対応した数だけ対応した位置に設けられている。
【0005】
各側部アーム536には、長方形の係止孔537が設けられている。この係止孔537は、コネクタハウジング520の第1係止突起525や第2係止突起526と係合する開口部であり、係止孔537の後端側(コネクタハウジング520側)には、係止壁537aが形成されている。
【0006】
そして、フロントホルダ530がコネクタハウジング520に対して前側位置(仮係止位置)に保持されているとき、図11の(a)に示すように、端子540の接点部542aが、フロントホルダ530の内方に収容されて保護される。ここで、フロントホルダ530は、コネクタハウジング520側の第1係止突起525及び第2係止突起526の間に、フロントホルダ530側の係止壁537aが挟まれることにより、フロントホルダ530が仮係止位置に保持される。
更に、フロントホルダ530がコネクタハウジング520に対して後側位置(本係止位置)に保持されているとき、図11の(b)に示すように、端子540の接点部542aが、フロントホルダ530から前方に突出する。突出した接点部542aが図示しない基板側ユニットの回路基板上の電極に押圧接触することで、コネクタ510と基板側ユニットを電気的に接続することができる。ここで、フロントホルダ530は、コネクタハウジング520側の第1係止突起525及び第2係止突起526が、フロントホルダ530側の係止孔537に係合することにより、フロントホルダ530が本係止位置に保持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-103160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したコネクタ510は、側部アーム536の自由端側に設けられた係止壁537aがコネクタハウジング520の側壁面に設けられた第2係止突起526と係合する箇所だけで、フロントホルダ530が仮係止位置と本係止位置との間を不用意に移動することを規制している。そこで、係止壁537aが第1係止突起525及び第2係止突起526を乗り越えるために必要な係止力が低く、仮係止位置に保持されたフロントホルダ530が輸送時に後側位置に移動してしまったり、本係止位置に保持されたフロントホルダ530が使用時に仮係止位置に移動してしまったりする可能性がある。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、第1ハウジング部材に対する第2ハウジング部材の仮係止時の保持力と本係止時の保持力とを向上させることができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動可能に組み付けられた第2ハウジング部材と、
前記第2ハウジング部材から組み付け方向に延出する可撓壁と、
前記可撓壁に設けられた第1係合部と、
前記第1係合部より前記可撓壁の基部側で前記可撓壁に設けられた第2係合部と、
前記仮係止位置における前記第2係合部を係止して前記第2ハウジング部材が前記本係止位置へ移動するのを規制する第1係止面と、前記仮係止位置の前記第1係合部又は前記本係止位置の前記第2係合部をそれぞれ係止して前記第2ハウジング部材が前記第1ハウジング部材から離脱する方向に移動するのを規制する第2係止面とを有し、前記第1ハウジング部材に設けられた第1係止突起と、
前記仮係止位置における前記第1係合部を係止して前記第2ハウジング部材が前記本係止位置に移動するのを規制する第3係止面を有し、前記第1ハウジング部材に設けられた第2係止突起と、
を備え
突起部である前記第1係合部と、突起部である前記第2係合部とは、前記組み付け方向に沿って互いに離間するように、前記可撓壁に設けられ、
前記第1係止突起と、前記第2係止突起とは、前記組み付け方向に沿って互いに離間するように、前記第1ハウジング部材に設けられた、ことを特徴とするコネクタ。
【0011】
上記(1)の構成のコネクタによれば、第2ハウジング部材は、仮係止位置の第1係合部又は本係止位置の第2係合部がそれぞれ第1係止突起の第2係止面に係止されることで、第1ハウジング部材から離脱する方向に移動するのが規制される。また、仮係止位置に仮係止された第2ハウジング部材は、第1係合部が第2係止突起の第3係止面に係止されると同時に、第2係合部が第1係止突起の第1係止面に係止されることで、第1ハウジング部材に対して本係止位置へ移動するのが規制される。そこで、第3係止面と第1係止面の2箇所で第1係合部及び第2係合部が係止された第2ハウジング部材は、本係止位置へ移動するのを規制する係止力が1箇所で係止される場合よりも向上する。従って、仮係止位置の第2ハウジング部材が、外力によって不用意に本係止位置へ移動されるのを防止できる。
更に、可撓壁を撓ませて第1係合部が第2係止突起を乗り越えると共に第2係合部が第1係止突起を乗り越えることで、第2ハウジング部材は第1ハウジング部材に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動することができる。この際、第2係合部は、可撓壁の自由端側に設けられた第1係合部より基部側に設けられているので、第1係止突起を乗り越えるために必要な係止力が、第2係止突起を乗り越えるために必要な第1係合部の係止力よりも大きくなる。そこで、第2ハウジング部材を本係止位置に係止する係止力を向上させることができる。従って、本係止位置の第2ハウジング部材が、外力によって不用意に第2ハウジング部材から離脱するのを防止できる。
【0012】
(2) 一対の前記可撓壁が前記第2ハウジング部材の両側面に沿って延出され、
前記第1係止突起及び前記第2係止突起が前記第1ハウジング部材の両側面にそれぞれ設けられた、
ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0013】
上記(2)の構成のコネクタによれば、一対の可撓壁にそれぞれ設けられた第1係合部及び第2係合部が、第1ハウジング部材の両側面にそれぞれ設けられた第1係止突起及び第2係止突起に係止される。そこで、第2ハウジング部材が、第1ハウジング部材に対して強固に組み付けられる。
【0014】
(3) 前記第1ハウジング部材が、端子収容室を有するハウジング本体であり、
前記第2ハウジング部材が、前記端子収容室に収容された端子を二重係止するためのフロントホルダである、
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタ。
【0015】
上記(3)の構成のコネクタによれば、仮係止位置のフロントホルダが、外力によって不用意に本係止位置へ移動して、端子収容室に端子を収容する作業を妨げることを防止できる。また、本係止位置のフロントホルダが、外力によって不用意にハウジング本体から離脱するのを防止できる。
【0016】
(4) 前記第1係合部及び前記第2係合部が、前記第1係止突起及び前記第2係止突起と対向する側に突出する突起部である、
ことを特徴とする上記(3)に記載のコネクタ。
【0017】
上記(4)の構成のコネクタによれば、第1係合部及び前記第2係合部が、フロントホルダの可撓壁に突起部として形成されることにより、可撓壁には開口が形成されない。そこで、ハウジング本体の端子収容室に塵埃等の異物が侵入するのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコネクタによれば、第1ハウジング部材に対する第2ハウジング部材の仮係止時の保持力と本係止時の保持力とを向上させることができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図2図1に示したコネクタを別の角度から視た分解斜視図である。
図3図2のA―Aにおける断面矢視図である。
図4図1に示したフロントホルダを仮係止位置に装着したコネクタの斜視図である。
図5図4に示したコネクタに端子を挿入する手順を説明する背面斜視図である。
図6図4に示したフロントホルダを本係止位置に装着したコネクタの斜視図である。
図7】(a)は図5に示したコネクタの縦断面図、(b)は図6に示したコネクタの縦断面図である。
図8図7に示したコネクタの正面図である。
図9図7の(a)に示したコネクタの図8のB-Bにおける断面矢視図及び一部拡大図である。
図10図7の(b)に示したコネクタの図8のC-Cにおける断面矢視図及び一部拡大図である。
図11】(a)はフロントホルダを仮係止位置に装着した従来のコネクタの水平断面図であり、(b)はフロントホルダを本係止位置に装着した従来のコネクタの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るコネクタを詳細に説明する。
本実施形態係るコネクタ1は、図1図7に示すように、第1ハウジング部材であるハウジング本体10と、ハウジング本体10に対して進退移動可能に組み付けられる第2ハウジング部材であるフロントホルダ30と、フロントホルダ30から組み付け方向に延出する可撓壁35と、可撓壁35に設けられた第1及び第2係合部である第1係合突起31及び第2係合突起33と、ハウジング本体10に設けられた第1係止突起21及び第2係止突起23とを主要な構成として有する。なお、可撓壁35に設けられる本発明の第1係合部及び第2係合部は、第1係合突起31及び第2係合突起33のような突起部に限らず、可撓壁にそれぞれ設けた開口部とすることもできる。
【0022】
ハウジング本体10は、図1図3に示すように、合成樹脂材により略直方体の外形状を有して一体成形される。ハウジング本体10は、長手方向の一方の面が、相手コネクタのハウジング(図示略)と嵌合する側の前面となり、その反対側の他方の面が、図5に示すように、電線60の端末に接続された端子51を挿入する側の後面となる。ハウジング本体10は、長手方向に直交する一方が、相手ハウジングとの嵌合を固定するロック突起17を備えた上面13となり、長手方向に直交する他方が、底面14となる。
【0023】
ハウジング本体10には、図7に示すように、一対の端子収容室11が上下に並設されて前後方向に貫通して設けられている。端子収容室11の上壁には、後方から端子収容室11に挿入された端子51を後方へ抜け止めする可撓係止片(ランス)16が設けられている。
また、ハウジング本体10は、図1及び図2に示したように、長手方向及び上下方向に直交し、かつハウジング本体10から前方を向いたときの左右側面における後方半部が側壁15となり、前方半分が開放された側面となっている。側面が開放されたハウジング本体10は、本係止位置(図6に示す位置)に組み付けられたフロントホルダ30の可撓壁35に覆われることで端子収容室11が画成される。
【0024】
ハウジング本体10の開放された前半分の両側面には、前後方向に離間して前側から順に、第1係止突起21と第2係止突起23とが上下二段にそれぞれ設けられている。本実施形態において、上下二段にそれぞれ設けられた第1係止突起21及び第2係止突起23は、それぞれ上下方向の高さは異なるが、水平方向の断面形状は同じとなるように形成された突起である。
【0025】
図3に示すように、第1係止突起21は、仮係止位置(図4に示す位置)におけるフロントホルダ30の第1係合突起31を係止してフロントホルダ30が本係止位置へ移動するのを規制する前方側の第1係止面21aと、仮係止位置の第1係合突起31又は本係止位置の第2係合突起33をそれぞれ係止してフロントホルダ30がハウジング本体10から離脱する方向に移動するのを規制する後方側の第2係止面21bとを有する。
また、第2係止突起23は、仮係止位置における第1係合突起31を係止してフロントホルダ30が本係止位置に移動するのを規制する前方側の第3係止面23aを有する。
【0026】
フロントホルダ30は、図1図3に示すように、合成樹脂材により略直方体の外形状を有して一体成形される。フロントホルダ30は、長手方向の一方の面が、相手コネクタのハウジング(図示略)と対向する側の前面となり、その反対側の他方の面が、ハウジング本体10に装着される後面となる。
【0027】
フロントホルダ30は、図1及び図7に示すように、開口部38を備えた前壁37と、前壁37の左右端からフロントホルダ30の両側面に沿って組み付け方向(後方)に延出する一対の可撓壁35と、前壁37の上下中間部及び上端から組み付け方向に延出する一対のランス接触板36とを有している。
前壁37に形成された開口部38は、ハウジング本体10の端子収容室11をコネク前方に表出させるための開口であり、図示しない相手コネクタの端子が挿入される。
【0028】
フロントホルダ30がハウジング本体10に対して本係止位置に組み付けられた際(図6及び図7の(b)参照)、ハウジング本体10の開放された側面を覆って端子収容室11を画成する一対の可撓壁35の内側面には、図2に示すように、前後方向に離間して後側から順に、第1係合突起(第1係合部)31と第2係合突起(第2係合部)33とが上下二段にそれぞれ設けられている。即ち、フロントホルダ30の第1係合突起31及び第2係合突起33は、ハウジング本体10の第1係止突起21及び第2係止突起23と対向する側に突出する突起部である。
【0029】
そして、第2係合突起33は、図3に示すように、第1係合突起31より可撓壁35の基部39側(図3中、上側)に設けられている。本実施形態において、上下二段にそれぞれ設けられた第1係合突起31及び第2係合突起33は、それぞれ上下方向の高さは異なるが、水平方向の断面形状は同じとなるように形成された突起である。
【0030】
フロントホルダ30は、仮係止位置(図4及び図5に示す位置)の第1係合突起31又は本係止位置の第2係合突起33がそれぞれハウジング本体10における第1係止突起21の第2係止面21bに係止されることで、ハウジング本体10から離脱する方向に移動するのが規制される。
【0031】
また、仮係止位置に仮係止されたフロントホルダ30は、第1係合突起31がハウジング本体10における第2係止突起23の前方側の第3係止面23aに係止されると同時に、第2係合突起33が第1係止突起21の第1係止面21aに係止されることで、ハウジング本体10に対して本係止位置へ移動するのが規制される。
【0032】
フロントホルダ30の可撓壁35は、僅かであるが弾性変形可能とされている。すなわち、フロントホルダ30がハウジング本体10に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動され、可撓壁35の内側面に設けられた第1係合突起31又は第2係合突起33が、ハウジング本体10の第1係止突起21又は第2係止突起23に乗り上げると、その押圧力によって可撓壁35は外側方に撓み、係止が解除されるようになっている。
【0033】
一対のランス接触板36は、図7の(b)に示すように、フロントホルダ30がハウジング本体10の前面に挿入されると、端子51に正規に係止して配置された可撓係止片16により形成される退避空間18にそれぞれ挿入する。可撓係止片16は、端子収容室11に挿入された端子51に不完全係止のとき、一部が退避空間18に突出する。そうすると、前面に挿入されたフロントホルダ30は、ランス接触板36が可撓係止片16に干渉して装着が不能となる。これにより、フロントホルダ30は、装着不能となることをもって、端子51が不完全係止であることを検知することができる。
【0034】
また、フロントホルダ30は、全ての可撓係止片16が端子51を完全に係止していると、ハウジング本体10の前面への装着が完了する。ハウジング本体10の前面に装着されたフロントホルダ30は、ランス接触板36が退避空間18に嵌入することにより、可撓係止片16の係止解除方向の移動を規制して、端子収容室11に収容された端子51を二重係止することができる。
【0035】
そこで、本実施形態のコネクタ1は、フロントホルダ30がハウジング本体10の前面に組み付けられて仮係止状態とされた後、図5に示すように、電線60の端末に接続された端子51がハウジング本体10の後面から端子収容室11に挿入される。そして、図6に示すように、フロントホルダ30が本係止位置へ移動されると、端子収容室11に収容された端子51は、二重係止されて端子収容室11に確実に保持される。
【0036】
次に、上記構成を有するコネクタ1の作用を説明する。
本実施形態のコネクタ1によれば、図9に示すように、フロントホルダ30は、仮係止位置の第1係合突起31が第1係止突起21の第2係止面21bに係止されることで、ハウジング本体10から離脱する方向に移動するのが規制される。また、仮係止位置に仮係止されたフロントホルダ30は、第1係合突起31が第2係止突起23の第3係止面23aに係止されると同時に、第2係合突起33が第1係止突起21の第1係止面21aに係止されることで、ハウジング本体10に対して本係止位置へ移動するのが規制される。
【0037】
そこで、第3係止面23aと第1係止面21aの2箇所で第1係合突起31及び第2係合突起33が係止されたフロントホルダ30は、本係止位置へ移動するのを規制する係止力が1箇所で係止される場合よりも向上する。従って、仮係止位置のフロントホルダ30が、外力によって不用意に本係止位置へ移動されるのを防止できる。
【0038】
更に、可撓壁35を撓ませて第1係合突起31が第2係止突起23を乗り越えると共に第2係合突起33が第1係止突起21を乗り越えることで、フロントホルダ30はハウジング本体10に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動することができる。この際、第2係合突起33は、図10に示すように、可撓壁35の自由端側に設けられた第1係合突起31より基部39側に設けられているので、第1係止突起21を乗り越えるために必要な係止力が、第2係止突起23を乗り越えるために必要な第1係合突起31の係止力よりも大きくなる。
【0039】
即ち、可撓壁35の内側面に設けられた第1係合突起31又は第2係合突起33が、ハウジング本体10の第1係止突起21又は第2係止突起23に乗り上げ、その押圧力によって可撓壁35が外側方に撓む時、片持ち梁状の可撓壁35は、図10に示すように、基部39を支点として曲げられる。そこで、支点から近い第2係合突起33の係止力は、支点から遠い第1係合突起31の係止力よりも高くなる。その結果、フロントホルダ30を本係止位置に係止する係止力を向上させることができる。従って、本係止位置のフロントホルダ30が、外力によって不用意にハウジング本体10から離脱するのを防止できる。
【0040】
また、本実施形態のコネクタ1によれば、一対の可撓壁35にそれぞれ設けられた第1係合突起31及び第2係合突起33が、ハウジング本体10の両側面にそれぞれ設けられた第1係止突起21及び第2係止突起23に係止される。そこで、フロントホルダ30が、ハウジング本体10に対して強固に組み付けられる。
【0041】
また、本実施形態のコネクタ1によれば、第1係合突起31及び第2係合突起33が、フロントホルダ30の可撓壁35に突起部として形成されることにより、可撓壁35には開口が形成されない。そこで、ハウジング本体10の端子収容室11に塵埃等の異物が侵入するのを防止できる。
【0042】
従って、本実施形態に係るコネクタ1によれば、ハウジング本体10に対するフロントホルダ30の仮係止時の保持力と本係止時の保持力とを向上させることができる。
【0043】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
ここで、上述した本発明に係るジョイントコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1ハウジング部材(ハウジング本体10)と、
前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)に対して仮係止位置と本係止位置との間を進退移動可能に組み付けられた第2ハウジング部材(フロントホルダ30)と、
前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)から組み付け方向に延出する可撓壁(35)と、
前記可撓壁(35)に設けられた第1係合部(第1係合突起31)と、
前記第1係合部(第1係合突起31)より前記可撓壁(35)の基部側で前記可撓壁(35)に設けられた第2係合部(第2係合突起33)と、
前記仮係止位置における前記第2係合部(第2係合突起33)を係止して前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)が前記本係止位置へ移動するのを規制する第1係止面(21a)と、前記仮係止位置の前記第1係合部(第1係合突起31)又は前記本係止位置の前記第2係合部(第2係合突起33)をそれぞれ係止して前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)が前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)から離脱する方向に移動するのを規制する第2係止面(21b)とを有し、前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)に設けられた第1係止突起(21)と、
前記仮係止位置における前記第1係合部(第1係合突起31)を係止して前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)が前記本係止位置に移動するのを規制する第3係止面(23a)を有し、前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)に設けられた第2係止突起(23)と、
を備えることを特徴とするコネクタ(1)。
[2] 一対の前記可撓壁(35)が前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)の両側面に沿って延出され、
前記第1係止突起(21)及び前記第2係止突起(23)が前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)の両側面にそれぞれ設けられた、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ(1)。
[3] 前記第1ハウジング部材(ハウジング本体10)が、端子収容室(11)を有するハウジング本体(10)であり、
前記第2ハウジング部材(フロントホルダ30)が、前記端子収容室(11)に収容された端子(51)を二重係止するためのフロントホルダ(30)である、
ことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のコネクタ(1)。
[4] 前記第1係合部(第1係合突起31)及び前記第2係合部(第2係合突起33)が、前記第1係止突起(21)及び前記第2係止突起(23)と対向する側に突出する突起部である、
ことを特徴とする上記[3]に記載のコネクタ(1)。
【符号の説明】
【0045】
1…コネクタ
10…ハウジング本体(第1ハウジング部材)
21…第1係止突起
21a…第1係止面
21b…第2係止面
23…第2係止突起
23a…第3係止面
30…フロントホルダ(第2ハウジング部材)
31…第1係合突起(第1係合部)
33…第2係合突起(第2係合部)
35…可撓壁
図1
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