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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E04B1/58 503G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020119917
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016920
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】十川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】玉野 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082027(JP,A)
【文献】特開昭61-191753(JP,A)
【文献】特公昭51-000372(JP,B1)
【文献】実公昭40-003154(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形鋼の端部同士を接続した継手構造であって、
筒状のカプラが、接続する両形鋼の端部を囲うように配置され、
前記カプラ内に充填材が充填され、
前記カプラが、前記形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、
前記形鋼が、前記形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有することを特徴とする継手構造。
【請求項2】
形鋼の端部同士を接続した継手構造であって、
一方の形鋼の端部に設けられた筒状のカプラが、他方の形鋼の端部を囲うように配置され、
前記カプラ内に充填材が充填され、
前記カプラが、前記他方の形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、
前記他方の形鋼が、当該形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有することを特徴とする継手構造。
【請求項3】
前記カプラの、前記カプラに挿入される形鋼の端部を囲う部分が、角錐台状であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の継手構造。
【請求項4】
前記カプラが前記テーパ面を有し、
前記テーパ面に、前記充填材との付着性を向上させるための凹凸が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の継手構造。
【請求項5】
前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される形鋼に設けた閉塞板で閉塞され
前記閉塞板は前記カプラの端部に当接するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の継手構造。
【請求項6】
鋼材の端部同士を接続した継手構造であって、
筒状のカプラが、接続する両鋼材の端部を囲うように配置され、
前記カプラ内に充填材が充填され、
前記カプラが、前記鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、
前記鋼材が、前記鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有し、
前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される鋼材に設けた閉塞板で閉塞され、
前記閉塞板は、前記カプラに挿入される鋼材の位置決めに用いる突出部を有することを特徴とする継手構造。
【請求項7】
鋼材の端部同士を接続した継手構造であって、
一方の鋼材の端部に設けられた筒状のカプラが、他方の鋼材の端部を囲うように配置され、
前記カプラ内に充填材が充填され、
前記カプラが、前記他方の鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、
前記他方の鋼材が、当該鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有し、
前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される鋼材に設けた閉塞板で閉塞され、
前記閉塞板は、前記カプラに挿入される鋼材の位置決めに用いる突出部を有することを特徴とする継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材同士の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨コンクリート造(SC造)における鋼材同士の継手構造として、鋼材同士の突合せ部を溶接する溶接継手が知られている。また、鋼材同士の突合せ部を跨ぐように継手板を配置し、この継手板と両鋼材とを高力ボルトなどで接合する摩擦接合継手も一般的である。
【0003】
さらに特許文献1には、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の鉄骨同士の継手構造として、表面に突起を形成した鉄骨材の端部を、内面に突起を形成した筒状体の内部に挿入してコンクリート等を充填するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4727091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶接継手では熟練工による精度の高い溶接作業が要求され、摩擦接合接手では現場におけるボルト接合作業等が必要となり、現場作業にかかる手間が大きい。
【0006】
特許文献1の継手構造は、これらと比較して施工性が良いが、鉄骨材の引抜に対する抵抗性について考慮されておらず、比較的小さな力で鉄骨材が筒状体から抜け出す恐れがあった。
【0007】
この他、継手構造としては、継手長をできるだけ短くするような工夫なども求められる。
【0008】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、現場作業を省力化でき、鋼材の引抜に対する抵抗性も高い継手構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための第1の発明は、形鋼の端部同士を接続した継手構造であって、筒状のカプラが、接続する両形鋼の端部を囲うように配置され、前記カプラ内に充填材が充填され、前記カプラが、前記形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、前記形鋼が、前記形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有することを特徴とする継手構造である。
第2の発明は、形鋼の端部同士を接続した継手構造であって、一方の形鋼の端部に設けられた筒状のカプラが、他方の形鋼の端部を囲うように配置され、前記カプラ内に充填材が充填され、前記カプラが、前記他方の形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、前記他方の形鋼が、当該形鋼の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有することを特徴とする継手構造である。
前記カプラの、前記カプラに挿入される形鋼の端部を囲う部分が、角錐台状であることが望ましい。
【0010】
本発明では、筒状のカプラの内部に鋼材を配置して充填材を充填することにより、カプラを介して相互の鋼材の応力を伝達する継手構造を形成する。係る継手構造により、施工時の現場作業を省力化でき、狭隘な箇所でも鋼材同士を接続できる。また本発明では、カプラのテーパ面や鋼材のテーパ部により、鋼材の引抜力に対して鋼材とカプラの間で充填材を介した応力伝達がしやすくなり、鋼材の引抜に対する抵抗力が向上する。結果、テーパの無い場合に比べて継手長も短くすることができる。
【0011】
前記継手構造において、前記テーパ面と前記テーパ部の双方が設けられることが望ましい。
これにより、鋼材に引抜力が作用した際に、鋼材のテーパ部から充填材を介してカプラのテーパ面へと確実に応力を伝達でき、鋼材がカプラから抜け出しにくくなる。
【0012】
前記カプラが前記テーパ面を有し、前記テーパ面に、前記充填材との付着性を向上させるための凹凸が形成されることも望ましい。
これにより、充填材の付着性を向上させて継手長を短くすることができる。
【0013】
前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される形鋼に設けた閉塞板で閉塞され、前記閉塞板は前記カプラの端部に当接するように配置されることも望ましい。
第3の発明は、鋼材の端部同士を接続した継手構造であって、筒状のカプラが、接続する両鋼材の端部を囲うように配置され、前記カプラ内に充填材が充填され、前記カプラが、前記鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、前記鋼材が、前記鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有し、前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される鋼材に設けた閉塞板で閉塞され、前記閉塞板は、前記カプラに挿入される鋼材の位置決めに用いる突出部を有することを特徴とする継手構造である
第4の発明は、鋼材の端部同士を接続した継手構造であって、一方の鋼材の端部に設けられた筒状のカプラが、他方の鋼材の端部を囲うように配置され、前記カプラ内に充填材が充填され、前記カプラが、前記他方の鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ面を内面に有するか、または、前記他方の鋼材が、当該鋼材の先端に近付くに連れて拡幅するテーパ部を端部に有し、前記カプラの開口端が、前記カプラに挿入される鋼材に設けた閉塞板で閉塞され、前記閉塞板は、前記カプラに挿入される鋼材の位置決めに用いる突出部を有することを特徴とする継手構造である。
閉塞板により、カプラからの充填材の漏れ出しを防止でき、且つ鋼材のカプラへの挿入長の管理も容易になる。また閉塞板に位置決め用の突出部を設けることで、カプラに挿入する鋼材の位置を容易に決定することができ、鋼材の位置ずれが防止される。
【0014】
前記カプラの側面に、鋼材を前記カプラに挿入するための開口部が設けられることも望ましい。
これにより、鋼材の端部をカプラの側方からカプラ内に挿入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現場作業を省力化でき、鋼材の引抜に対する抵抗性も高い継手構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】継手構造10を示す図。
図2】鋼材1の端部同士の接続方法を示す図。
図3】突起14’、スタッド15、および孔あき鋼板16を示す図。
図4】継手構造10a、10a’を示す図。
図5】継手構造10b、10b’、10b”を示す図。
図6】継手構造10cを示す図。
図7】継手構造10dを示す図。
図8】継手構造10eを示す図。
図9】鋼材1の端部同士の接続方法を示す図。
図10】継手構造10e’を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る継手構造10を示す図である。この継手構造10は、鉄骨コンクリート造(SC造)の構造物において、鋼材1の端部同士をカプラ2により接続するものである。ただし構造形式が鉄骨コンクリート造に限られることはない。
【0019】
本実施形態の鋼材1は、ウェブ12の両側にフランジ11を設けたH形鋼である。図1(a)は継手構造10についてウェブ12に平行な断面を示した図、図1(b)はフランジ11およびウェブ12に直交する断面を示した図、図1(c)は継手構造10の側面図である。図1(a)は図1(b)の線B-Bによる断面であり、図1(b)は図1(a)の線A-Aによる断面である。また図1(c)は図1(b)の矢印Cに示す方向から継手構造10を見た図である。
【0020】
両鋼材1の端部では、フランジ11にテーパ部13が設けられる。テーパ部13は、鋼材1の先端に近付くに連れて直線状に拡幅する。テーパ部13は鋼板などを用いて形成されるが、テーパ部13の材料、構成等が特に限定されることはない。
【0021】
テーパ部13の外面には、突起14が設けられる。突起14は、ウェブ12と直交する方向(図1(a)の紙面法線方向、図1(b)の上下方向に対応する)に延伸する。突起14は鉄筋や鋼材等を用いて形成しても良く、テーパ部13の外面を加工することで形成しても良い。これによりテーパ部13の外面に凹凸が形成される。
【0022】
カプラ2は、両鋼材1の端部を囲うように配置される。カプラ2は、一対の角錐台状の鋼管21を、面積の大きい方の端面同士で接合して筒状に形成される。各鋼管21の面積の小さい方の端面は、鋼材1を挿入するカプラ2の開口端となる。
【0023】
カプラ2を構成する一方の鋼管21は、接続される一方の鋼材1の端部の周囲に配置され、他方の鋼管21は、他方の鋼材1の端部の周囲に配置される。各鋼管21はテーパ面を内面に有し、テーパ面は鋼材1の先端に近付くに連れて拡幅する。各鋼管21のテーパ面の傾斜は、各鋼管21内に位置する鋼材1のテーパ部13の傾斜と平行となるように定められる。テーパ面やテーパ部13の傾斜角は特に限定されない。
【0024】
各鋼管21のテーパ面にも、テーパ部13と同様に突起23が設けられ、これにより凹凸が形成される。突起23は、テーパ部13の突起14と平行な方向に延伸する。突起23は鉄筋や鋼材等を用いて形成しても良いし、鋼管21の内面を加工することで形成しても良い。
【0025】
カプラ2内には充填材3が充填される。充填材3には、セメント系材料や樹脂系材料などの硬化材が用いられる。硬化材はカプラ2内への充填性と硬化後の強度等を考慮して定められ、例えばセメント系材料の場合、通常のコンクリート、モルタル、グラウト材等の他、継手長を低減するために高強度コンクリートや膨張コンクリート、繊維補強コンクリートを使用してもよい。充填材3として可塑性を有する材料を用いることで、現場での充填作業時におけるダレや漏れ対策の処置を省力化することもできる。
【0026】
鋼材1の端部同士の接続時には、図2に示すように、一方の鋼材1(図2の下側の鋼材1)の端部をカプラ2に挿入して一方の鋼管21内に配置した状態で、矢印aに示すように他方の鋼材1の端部をカプラ2に挿入して他方の鋼管21内に配置する。そして、図1(a)に示すように両鋼材1の先端同士を突合せ、充填材3をカプラ2内に充填することで継手構造10が形成される。一方の鋼材1に事前にカプラ2を取付けておくことで、その後の作業が他方の鋼材1の挿入と充填材3の充填のみとなり、継手構造10を容易に形成できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、筒状のカプラ2の内部に鋼材1を配置して充填材3を充填することにより、カプラ2を介して相互の鋼材1の応力を伝達する継手構造10を形成する。係る継手構造10により、溶接作業などの煩雑な作業無しに鋼材1の端部同士が一体化されるので、継手構造10を施工する際の現場作業を省力化でき、狭隘な箇所でも鋼材1の端部同士を接続できる。
【0028】
また、カプラ2のテーパ面と鋼材1の端部のテーパ部13により、鋼材1の引抜力に対して鋼材1とカプラ2の間で充填材3を介した応力伝達がしやすくなり、鋼材1の引抜に対する抵抗力が向上する。結果、テーパの無い場合に比べて継手長も短くすることができる。特に本実施形態では、カプラ2のテーパ面と鋼材1の端部のテーパ部13が平行に傾斜するので、鋼材1に引抜力が作用した時に、鋼材1のテーパ部13から充填材3を介してカプラ2のテーパ面へと確実に応力を伝達でき、鋼材1がカプラ2から抜け出しにくくなる。なお、カプラ2のテーパ面と鋼材1の端部のテーパ部13の傾斜が若干異なっており、平行状態から多少ずれていても、同様の効果を得ることはできる。
【0029】
さらに本実施形態では、鋼材1のテーパ部13とカプラ2のテーパ面に突起14、23による凹凸を形成することにより、鋼材1およびカプラ2と充填材3との付着性を向上させて継手長を短くすることができる。
【0030】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば図3(a)に示すように、鋼材1のテーパ部13の外面に、突出高さの異なる複数の突起14’を、突出端が鋼材1の軸方向に沿った波状となるように設けることで、凹凸を形成することも可能である。これにより充填材3との付着性を向上させて継手長を短くすることができる。
【0031】
またテーパ部13への凹凸の形成方法も、突起14、14’によるものに限らない。例えば図3(b)に示すように、テーパ部13の外面に複数のスタッド15を固定することによって凹凸を形成してもよい。さらに、図3(c)に示すように、テーパ部13の外面に孔あき鋼板16を固定して充填材3との付着性を高めることも可能である。このように、凹凸を形成する方法は特に限定されない。
【0032】
これはカプラ2のテーパ面でも同様である。例えば図3の各構成はカプラ2のテーパ面においても適用でき、これらの方法によって鋼材1やカプラ2と充填材3との付着性を高めることができる。ただし、鋼材1のテーパ部13の外面とカプラ2のテーパ面の一方あるいは双方を平らとしてもよい。
【0033】
また本実施形態では、カプラ2を構成する鋼管21を角錐台状とし、対向する2組の内面がテーパ面となっているが、対向する2組の内面のうち、鋼材1のフランジ11側に位置する1組の内面のみをテーパ面としてもよい。
【0034】
さらに、カプラ2を構成する鋼管21は角錐台状に限らず、例えば鋼管21を円錐台状としてもよい。加えて、カプラを構成する鋼管21を鋼材1の軸方向に沿った円筒状のものとしてテーパ面を省略してもよい。あるいは鋼材1のテーパ部13を省略することも考えられ、カプラ2のテーパ面と鋼材1のテーパ部13のいずれか一方のみ設けることが可能である。
【0035】
また、継手構造10は、鉛直方向に配置された鋼材1の端部同士の接続に限らず、水平方向あるいは斜め方向に配置された鋼材1の端部同士の接続に適用してもよく、接続する鋼材1の向きが異なっていてもよい。
【0036】
以下、本発明の別の例を第2~第6の実施形態として説明する。第2~第6の実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0037】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では鋼材1としてH形鋼を用いたが、鋼材1はH形鋼に限らず、平鋼、山形鋼、溝形鋼などその他の形鋼でもよい。図4(a)は、このうち鋼材1aを平鋼とした第2の実施形態の継手構造10aについて、図1(a)と同様の断面を示したものである。
【0038】
第2の実施形態の継手構造10aでも、接続される両鋼材1aの端部が、角錐台状の鋼管21aからなるカプラ2a内に配置される。
【0039】
テーパ部13は鋼材1aの表裏両面に設けられる。鋼管21aは第1の実施形態の鋼管21よりも細幅となっているが、各鋼材1aのテーパ部13の外面、各鋼管21aのテーパ面の双方に第1の実施形態と同様の突起14、23が設けられる。
【0040】
この第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様、現場作業を省力化でき、鋼材1aの引抜に対する抵抗性も高い継手構造10aを提供することができる。なお、図4(b)の継手構造10a’に示すように、両鋼材1aの先端を間隔を空けて配置し、各鋼材1aの先端にエンドプレート17(定着板)を設けてもよい。これにより、鋼材1aの端部をカプラ2a内の充填材3に好適に定着することができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図5(a)は、第3の実施形態に係る継手構造10bについて、図1(a)と同様の断面を示したものである。第3の実施形態は、カプラ2の開口端に当たる位置で、鋼材1に閉塞板4が設けられる点で第1の実施形態と異なる。
【0042】
閉塞板4は例えば鋼板である。閉塞板4と鋼材1との接合部は、必要に応じてリブ41等により補強される。
【0043】
各鋼材1の端部は、閉塞板4がカプラ2の開口端に接触するまでカプラ2内に挿入され、これにより両鋼材1の先端同士がカプラ2内で突き合わせられるとともに、閉塞板4によってカプラ2の開口端が閉塞される。
【0044】
カプラ2には図示しない充填孔および空気抜き孔が設けられる。充填材3は充填孔からカプラ2内に充填され、この時カプラ2内の空気が空気抜き孔から排出される。
【0045】
この第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様、現場作業を省力化でき、鋼材1の引抜に対する抵抗性も高い継手構造10bを提供することができる。また第3の実施形態では、閉塞板4によりカプラ2からの充填材3の漏れ出しを防止でき、且つ鋼材1のカプラ2への挿入長の管理も容易になる。
【0046】
なお、図5(b)の継手構造10b’に示すように、閉塞板4にカプラ2内に突出する突出部42を設けてもよい。突出部42はカプラ2の開口縁に内接する位置に設けられており、鋼材1をカプラ2内に挿入する際の位置決めに用いられる。すなわち、突出部42がカプラ2の開口縁に内接するように鋼材1を挿入することで、カプラ2に対する鋼材1の平面位置を容易に決定し、鋼材1の位置ずれを防止することができる。
【0047】
また、図5(c)に継手構造10b”の側面を示すように、一方の鋼材1の閉塞板4に突出部43を設け、当該鋼材1の閉塞板4をカプラ2bの開口端に接触させて鋼材1の端部をカプラ2b内に挿入した時に、突出部43がカプラ2bの鋼管21bに形成された孔22に挿入されるようにしてもよい。孔22は鋼管21bの4つの側面に設けられ、閉塞板4の突出部43も各孔22に対応して4つ設けられる。これによっても、鋼材1をカプラ2b内に挿入する際に、カプラ2bに対する鋼材1の平面位置を容易に決定し、鋼材1の位置ずれを防止できる。
【0048】
また、上記の突出部43をネジ等とし、突出部43を上記の鋼管21bだけで無くもう一方の鋼管21の孔(不図示)にも通してその先端を他方の鋼材1の閉塞板4に締結する、といった構成も可能であり、これにより両鋼材1を固定することができる。
【0049】
なお、第3の実施形態では閉塞板4として鋼板を予め鋼材1に固定したが、閉塞板4は充填材3の漏れを防止できるものであればよく、材質や設置方法はこれに限らない。例えば、ゴムや樹脂によるパッキンのような閉塞板を鋼材1に設けてもよい。また鋼材1をカプラ2内に挿入した後で、カプラ2の開口端を塞ぐように閉塞板4を設けることも可能である。
【0050】
[第4の実施形態]
図6(a)は、第4の実施形態に係る継手構造10cを図1(a)と同様の断面で示す図である。第4の実施形態の継手構造10cは、接続する一方の鋼材1a(図6(a)の下側の鋼材1a)の端部に接合板5が設けられ、当該接合板5に、角錐台状の鋼管21の面積の大きい方の端面が固定される点で第2の実施形態と主に異なる。
【0051】
本実施形態では、上記の鋼管21により筒状のカプラ2cが構成され、当該カプラ2cが他方の鋼材1aの端部を囲うように配置される。
【0052】
接合板5は例えば鋼板である。接合板5と鋼材1との接合部は、必要に応じてリブ51等により補強される。
【0053】
鋼材1aの端部同士の接続時には、図6(b)に示すように、予め一方の鋼材1aの端部に接合板5を介して取り付けたカプラ2cに、他方の鋼材1aの端部を矢印aに示すように挿入し、カプラ2c内に充填材3を充填する。これにより、図6(a)に示す継手構造10cが形成される。
【0054】
この第4の実施形態でも、第1の実施形態と同様、現場作業を省力化でき、鋼材1aの引抜に対する抵抗性も高い継手構造10cを提供することができる。また第4の実施形態では簡単な作業で鋼材1a同士の接続作業を終えることができる。
【0055】
[第5の実施形態]
図7は、第5の実施形態に係る継手構造10dを図1(a)と同様の断面で示す図である。継手構造10dは、接続する両鋼材1aの端部が、カプラ2d内で重なるように配置される点で第2の実施形態と主に異なる。
【0056】
カプラ2dは、一対の角錐台状の鋼管21を、面積の小さい方の端面同士で接合して筒状に形成される。各鋼管21の面積の大きい方の端面は、鋼材1aを挿入するカプラ2dの開口端となる。
【0057】
継手構造10dでは、一方の鋼管21側から挿入された一方の鋼材1aのテーパ部13が、他方の鋼管21内に配置され、他方の鋼管21側から挿入された他方の鋼材1aのテーパ部13が、一方の鋼管21内に配置される。こうして2つの鋼材1aの端部同士がカプラ2d内で重なるように配置される。
【0058】
この第5の実施形態でも、第1の実施形態と同様、現場作業を省力化でき、鋼材1aの引抜に対する抵抗性も高い継手構造10dを提供することができる。また第5の実施形態では、カプラ2d内に鋼材1aの重なり部分を設けることによって継手長を短くすることができる。なお、第5の実施形態では、テーパ部13だけでなく、鋼材1aのカプラ2d内に挿入される部分にも、テーパ部13と同様の突起14を設けることができる。
【0059】
[第6の実施形態]
図8は、第6の実施形態に係る継手構造10eを示す図である。継手構造10eは、鋼材1の端部同士をカプラ2eにより接続するものである。
【0060】
図8(a)は継手構造10eについて鋼材1のウェブ12に平行な断面を示した図、図8(b)は鋼材1のフランジ11に平行な断面を示した図、図8(c)は継手構造10eの側面図である。図8(a)は図8(b)の線E-Eによる断面であり、図8(b)は図8(a)の線D-Dによる断面である。また図8(c)は図8(a)の矢印Fに示す方向から継手構造10eを見た図である。
【0061】
第6の実施形態の継手構造10eは、カプラ2eを構成する鋼管21eの1つの側面が開口部211となっている点で第1の実施形態と異なる。当該側面は、突起23が設けられない面である。
【0062】
鋼材1の端部同士の接続時には、図9の矢印bに示すように、鋼材1の端部をカプラ2eの側方から移動させ、開口部211よりカプラ2eに挿入して鋼管21e内に配置することができ、カプラ2eに充填材3を充填することで図8に示す継手構造10eを形成できる。
【0063】
この第6の実施形態でも、第1の実施形態と同様、現場作業を省力化でき、鋼材1の引抜に対する抵抗性も高い継手構造10eを提供することができる。第6の実施形態では、カプラ2eの側面に開口部211を設けることにより、鋼材1をカプラ2eの側方から移動させてカプラ2e内に配置することができ、施工時の自由度が高まる。
【0064】
なお、図10(a)に側面を示す継手構造10e’のように、カプラ2の外側にスパイラル鉄筋6を配置してもよい。これにより、継手構造10e’の周囲に打設されるコンクリート(不図示)の拘束力が増加し、カプラ2eを介した鋼材1同士の応力伝達を効率化できる。
【0065】
スパイラル鉄筋6は、図10(b)に示すように一方の鋼材1に予め通しておき、当該鋼材1の端部を矢印bに示すように開口部211(図9参照)からカプラ2e内に挿入した後、スパイラル鉄筋6を矢印cに示すように鋼材1の軸方向にスライドさせる。これにより、スパイラル鉄筋6をカプラ2eの周囲に容易に配置することができる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1、1a:鋼材
2、2a、2b、2c、2d、2e:カプラ
3:充填材
4:閉塞板
5:接合板
6:スパイラル鉄筋
10、10a、10a’、10b、10b’、10b”、10c、10d、10e、10e’:継手構造
11:フランジ
12:ウェブ
13:テーパ部
14、14’、23:突起
15:スタッド
16:孔あき鋼板
17:エンドプレート
21、21a、21b、21e:鋼管
22:孔
41、51:リブ
42、43:突出部
211:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10