(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】アクセルポジションセンサ
(51)【国際特許分類】
F02D 11/02 20060101AFI20240206BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F02D11/02 R
H01F7/02 Z
(21)【出願番号】P 2020122235
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】岸 昇示
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖哉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 貴之
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007995(JP,A)
【文献】実開昭58-193883(JP,U)
【文献】特開2012-110187(JP,A)
【文献】特開2018-117429(JP,A)
【文献】特開2016-022555(JP,A)
【文献】特開2013-205141(JP,A)
【文献】特開2013-204450(JP,A)
【文献】特開2010-280304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/02
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって回動操作される車両のスロットルグリップの内部に収容され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の
回転軸方向の端部に形成された端面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石を内部に収容し、前記磁石の前記
端面とは異なる
外面であり、当該磁石の回転軸周りの回転方向に沿って形成された側面に対向して配置された磁性体と、を備え、
前記磁石の前記
端面と、前記磁性体に囲まれた前記磁石の前記側面と、のそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
アクセルポジションセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石が連動して回転する前記スロットルグリップは、前記車両である自動二輪車のハンドルバーに対して回転可能なよう取り付けられており、
前記磁性体は、前記ハンドルバーに固定装備されており、前記運転者によって回動操作された前記スロットルグリップに連動した前記磁石の回転を阻止する磁力を発生させるよう構成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石の前記端面に、当該磁石の回転軸から前記側面方向に向かって区切られて複数の磁極が着磁しており、
前記磁石の前記側面に、当該磁石の回転軸に沿って区切られて、前記端面に形成された磁極とは異なる数の複数の磁極が着磁している、
アクセルポジションセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面に着磁されている磁極の少なくとも1つの区切り箇所に、前記側面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁気検出部は、前記側面に着磁されている磁極の前記区切り箇所に対応して位置する前記端面に着磁されている対となる磁極の磁束を検出するよう配置されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項6】
請求項4に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面又は前記側面に着磁されている磁極の全ての区切り箇所のそれぞれに、前記側面又は前記端面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項7】
請求項6に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面に着磁されている磁極の全ての区切り箇所のそれぞれに、前記側面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記
端面に着磁されている磁極の数よりも、前記
側面に着磁されている磁極の数の方が多く形成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、位置決め部を有する、
アクセルポジションセンサ。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記磁気検出部が対向する前記
端面とは異なる当該磁石の回転軸方向の端部に形成された
他の端面に、位置決め部を有する、
アクセルポジションセンサ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石の前記位置決め部は、前記
他の端面に形成された切り欠きにて形成されている、
アクセルポジションセンサ。
【請求項12】
車両のスロットルグリップの内部に収容されて装備され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の
回転軸方向の端部に形成された端面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石を内部に収容し、前記磁石の前記
端面とは異なる
外面であり、当該磁石の回転軸周りの回転方向に沿って形成された側面に対向して配置された磁性体と、
を備えたアクセルポジションセンサに装備される前記磁石であって、
前記磁石の前記
端面と、前記磁性体に囲まれた前記磁石の前記側面と、のそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスロットルグリップに装備されるアクセルポジションセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では、運転者がスロットルグリップを回転させることで、アクセル開度を調整してアクセル操作を行う。そして、アクセル開度の検出は、スロットルグリップの回転角度を検出することで行われるが、近年では、スロットルグリップと共に回転する磁石から生じる磁束を磁気センサによって検出することで行われることが多々ある。
【0003】
ここで、特許文献1には、磁気センサを用いてアクセル開度を検出するアクセルポジションセンサの一例が開示されている。具体的に、特許文献1に開示のアクセルポジションセンサは、ハンドルバーの内部に収容されて装備されるものであり、ハンドルバーの中心軸に沿って延在する磁石と、磁石を収容する磁性材からなる筒状部材と、磁石の端部に対向して配置される磁気センサと、を備えている。そして、上記磁石は、中心軸回りの回転方向に沿って複数の磁極が着磁されており、スロットルグリップと連動して回転するよう装備されている。これにより、特許文献1のアクセルポジションセンサでは、磁石の端部側で磁気センサにて回転角度を検出し、磁石の側面側で磁性材からなる筒状部材に生じた抵抗力にて運転者への操作荷重を発生させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した磁石では、磁石の端部と側面とにおける磁極の着磁状態が同一であるため、スロットルグリップの全開角度と、運転者への操作荷重と、を個別に変更することができない。例えば、スロットルグリップの全開角度を大きくした場合には、操作荷重が小さくなり、逆に、操作荷重を大きくした場合には、スロットルグリップの全開角度が小さくなる。その結果、アクセルポジションセンサにおける検出角度と操作荷重に対する設計の自由度が低い、という問題が生じる。
【0006】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、スロットルグリップに装備されるアクセルポジションセンサにおける検出角度と操作荷重に対する設計の自由度が低い、ということを解決すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態であるアクセルポジションセンサは、
運転者によって回動操作される車両のスロットルグリップの内部に収容され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の所定の面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石の前記所定の面とは異なる他の面に対向して配置された磁性体と、を備え、
前記磁石の前記所定の面と前記他の面とのそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
という構成をとる。
【0008】
また、本発明の一形態である磁石は、
車両のスロットルグリップの内部に収容されて装備され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の所定の面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石の前記所定の面とは異なる他の面に対向して配置された磁性体と、
を備えたアクセルポジションセンサに装備される前記磁石であって、
前記磁石の前記所定の面と前記他の面とのそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されることにより、スロットルグリップに装備されるアクセルポジションセンサにおける検出角度と操作荷重に対する設計の自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるアクセルポジションセンサを搭載したスロットル装置の構成の概略を示す図である。
【
図2】
図1に開示したアクセルポジションセンサの構成を示す図である。
【
図3】
図1に開示したアクセルポジションセンサの構成を示す図である。
【
図4】
図1に開示したアクセルポジションセンサを構成する磁石の構成を示す図である。
【
図5】
図1に開示したアクセルポジションセンサを構成する磁石の構成を示す図である。
【
図6】
図1に開示したアクセルポジションセンサを構成する磁石と磁気センサとの配置の一例を示す図である。
【
図7】
図1に開示したアクセルポジションセンサを構成する磁石と磁気センサとの配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1は、スロットル装置の構成を説明するための図であり、
図2乃至
図7は、アクセルポジションセンサの構成を説明するための図である。
【0012】
[構成]
本実施形態におけるアクセルポジションセンサ14は、回転体の回転度合い、つまり回転体の回転方向の回転位置(ポジション)を検出するための装置である。特に、本実施形態におけるアクセルポジションセンサ14は、
図1に示すような自動二輪車のアクセル操作を行うためのスロットル装置10に搭載され、スロットルグリップ12の回転角度を検出するためのものである。そして、本実施形態におけるアクセルポジションセンサ14は、さらに、運転者によるスロットルグリップ12の回転操作に対する抵抗力による操作感を生じさせるためのものである。但し、本発明におけるアクセルポジションセンサ14は、必ずしも自動二輪車のスロットル装置10に搭載されることに限定されず、いかなる車両に装備されるスロットル装置に搭載されてもよい。
【0013】
図1は、本実施形態におけるスロットル装置10の構成の概略を示している。スロットル装置10は、自動二輪車の略円筒形状のハンドルバー11に取り付けられる略円筒形状のスロットルグリップ12を備えている。スロットルグリップ12は、ハンドルバー11に対して、略円筒形状の長手方向に沿った中心軸を中心として、特定の回転方向に回転可能な回転体を構成している。例えば、スロットルグリップ12は、運転者である操作者が回動操作しない状態では、予め設定された初期位置で停止した状態であり、操作者が把持して特定の回転方向に回動操作した状態では、回動操作状況に応じた回転位置まで回転される。
【0014】
ここで、
図2に、スロットルグリップ12の内部、より具体的には、スロットルグリップ12の内部に位置するハンドルバー11の内部の構成を示す。この図に示すように、スロットル装置10は、ハンドルバー11の内部に、スロットルグリップ12の回転位置を検出するアクセルポジションセンサ14と、操作者による回動操作の終了後にスロットルグリップ12を初期位置へ戻すように回転力を付勢するリターンスプリング13と、を搭載している。
【0015】
アクセルポジションセンサ14は、
図2に示すように、ハンドルバー11つまりスロットルグリップ12の回転軸に沿って延在する略円柱形状の磁石からなるインナーロータ15と、インナーロータ15を内部に収容する略円筒形状の磁性体からなるアウターケース16と、インナーロータ15の一端面に対向して配置された磁気センサ17と、を備えている。なお、インナーロータ15は、スロットルグリップ12の回転軸と同軸に取り付けられるため、スロットルグリップ12の回転軸を中心とした回転に連動して、スロットルグリップ12の回転角度と同一の回転角度で回転されることとなる。一方で、アウターケース16と磁気センサ17とは、ハンドルバー11側に固定的に装備されていて、スロットルグリップ12に連動して回転しないよう配置されている。
【0016】
上記インナーロータ15は、上述したように、所定の長さを有する略円柱形状に形成されており、
図2乃至
図4に示すように、回転軸方向の両端部に回転軸と略直交する平面に沿った円形の端面(一方の端面15aと他方の端面15b)がそれぞれ形成されている。なお、インナーロータ15の両端面の中心には、両端面間を貫通する貫通穴が形成されている。そして、インナーロータ15のスロットルグリップ12の端部側と反対側に位置する一方の端面15aには、回転方向に沿って複数の磁極が着磁している。また、インナーロータ15の回転軸周り回転方向に沿って形成された側面15cにも、回転方向に沿って複数の磁極が着磁している。なお、インナーロータ15における磁極の着磁状況については後述する。
【0017】
上記磁気センサ17(磁気検出部)は、
図2乃至
図3に示すように、磁極が形成されているインナーロータ15の一方の端面15aに対向して配置されている。そして、磁気センサ17は、回転方向に沿った磁束の向きに応じた検出値を検出するよう構成されている。このため、磁気センサ17の検出値に基づいてインナーロータ15の回転角度を検出することで、インナーロータ15と連動して回転するスロットルグリップ12の回転角度、つまり、スロットル開度を検出することができる。磁気センサ17は、例えば、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、超電導量子干渉素子、にて構成されるが、かかる素子は一例であり、いかなる素子で構成されてもよい。なお、磁気センサ17によるインナーロータ15の回転角度の検出範囲については後述する。
【0018】
上記アウターケース16は、上述したように、回転軸に沿った方向に所定の長さを有する略円筒形状であり、例えば、軟質磁性材や半硬質磁性材で構成されている。そして、アウターケース16は、内部にインナーロータ15を収容して、当該インナーロータ15と同軸に配置される。そして、アウターケース16の内径はインナーロータ15よりもやや大きく形成されているため、インナーロータ15の外面とわずかな隙間を有している。つまり、アウターケース16は、インナーロータ15の回転軸周りの回転方向に沿って形成された側面の周囲を囲った状態で配置されている。なお、アウターケース16の全長は、インナーロータ15の全長とほぼ等しく形成されており、インナーロータ15の大部分はアウターケース16に収容された状態となる。このとき、インナーロータ15は、
図3(1)に示すように、磁気センサ17と対向する一方の端面15aが、対応するアウターケース16の端部から長さt1だけ突出して位置している。逆に、インナーロータ15は、
図3(2)に示すように、スロットルグリップ12側の他方の端面15bが、対応するアウターケース16の端部よりも長さt2だけ内部側に位置している。但し、インナーロータ15とアウターケース16とは、
図3に示す位置関係で配置されることに限定されず、インナーロータ15の側面15cの少なくとも一部が、アウターケース16で囲われた位置関係で配置されていればよい。
【0019】
そして、アウターケース16は、ハンドルバー11に固定的に装備されている。このため、スロットルグリップ12の回転に連動してインナーロータ15が回転したときには、アウターケース16は、対向するインナーロータ15の側面15cに形成された磁極と反対の磁極に磁化される。その結果、磁化されたアウターケース16は、インナーロータ15の回転を阻止するようなに磁力を発生させるため、かかる磁力が抵抗力としてインナーロータ15を介してスロットルグリップ12へ伝達され、スロットルグリップ12を操作する操作者へ操作感を付与することとなる。なお、アウターケース16とインナーロータ15の磁極との関係についてはさらに後述する。
【0020】
次に、上述したインナーロータ15の構成について、さらに
図4乃至
図7を参照して説明する。
図4に示すように、インナーロータ15は、磁気センサ17に対向する一方の端面15aと、アウターケース16に囲まれた側面15cと、のそれぞれに、複数の磁極が着磁されて形成されている。特に、本実施形態におけるインナーロータ15は、一方の端面15aと側面15cとに着磁される磁極の数が異なる。
【0021】
具体的に、インナーロータ15の一方の端面15aは、
図4に示すように、回転軸から側面方向に向かって放射状に8個に区切られており、当該一方の端面15aに、円周方向つまり回転方向に順番にN極とS極とが交互に形成されている。このため、インナーロータ15の一方の端面15aでは、相互に隣り合うN極とS極とが対となる磁極を形成しており、後述するように
図7の矢印19a~19cに示すように、それぞれ対となる磁極においてN極からS極に向かう磁束が生じている。
【0022】
これに対して、インナーロータ15の側面15cは、
図4に示すように、回転軸に沿って16個に区切られており、当該側面15cに、インナーロータ15の周方向つまり回転軸周りの回転方向に順番にN極とS極とが交互に形成されている。このため、インナーロータ15の側面15cでは、相互に隣り合うN極とS極とが対となる磁極を形成しており、それぞれ対となる磁極においてN極からS極に向かう磁束が生じている。
【0023】
また、
図4に示すように、インナーロータ15は、一方の端面15aと側面15cとの境界において、一方の端面15aに形成された磁極の全ての区切り箇所15aaに、側面15cに形成された磁極の区切り箇所15caが対応して位置して構成されている。具体的に、
図4の例では、一方の端面15aに形成された1個の磁極(N極又はS極)に対応して、側面15cには2個の磁極(N極及びS極)を形成することで、一方の端面15aの磁極の区切り箇所15aaに、側面15cの2個の磁極毎の区切り箇所15caが、対応して位置することとなる。このように、インナーロータ15の一方の端面15aと側面との境界において、異なる磁極の組み合わせを形成することにより磁気の乱れを抑制することができる。
【0024】
ここで、
図5(1)にインナーロータ15の磁気センサ17が対向する一方の端面15aとは反対側に位置する他方の端面15bから見た図を示し、
図5(2)にインナーロータの
図5(1)におけるA-A線断面図を示す。この図に示すように、インナーロータ15の他方の端面15bには、位置決め部として切り欠き15baが形成されている。一例として、切り欠き15baは、インナーロータ15の他方の端面15bの中心に形成された貫通穴の外周付近に位置し、一方の端面15a側に向かって凹状に切除された部位にて形成されている。そして、かかる切り欠き15baは、インナーロータ15に磁極を着磁する際の位置決めを行うために利用されたり、インナーロータ15をアクセルポジションセンサ14として組み付ける際に位置決めを行うために利用される。例えば、インナーロータ15を製造する際に、金型を用いて焼結と同時に側面15cに磁極を側面15c外周方向から着磁し、その後、金型から外して、切り欠き15baを用いて位置決めして、上述したように一方の端面15aと側面15cとの境において、磁極の区切り箇所15aa,15caが相互に対応するよう、一方の端面15aに磁極を端面15a方向から着磁する。このように、インナーロータ15に対して、磁気センサ17とアウターケース16とのそれぞれに対向する方向から着磁をすることにより、磁気センサ17とアウターケース16とのそれぞれに向かう方向の磁束を確保することができる。
【0025】
但し、上述した位置決め部は、必ずしも切り欠き15baで形成されていることに限定されず、目印となるものであればよい。例えば、位置決め部は、インナーロータ15の他方の端面15bの表面に形成された溝や傷であってもよく、さらには、インクなどで描かれた印であってもよい。また、位置決め部は、必ずしもインナーロータ15の他方の端面15bに形成されていることに限定されず、インナーロータ15の一方の端面15aや側面15cに形成されていてもよい。
【0026】
ここで、上記では、インナーロータ15の一方の端面15aを8個に区切って磁極を形成する場合を例示したが、この場合、1つの区切り箇所15aaに位置する一対の磁極である隣り合うN極とS極とは、回転軸中心から90度の角度の範囲に位置する。このため、上記構成のインナーロータ15は、スロットルグリップ12の回転角度の検出必要角度αが90度程度である場合に好適である。ここで、
図6及び
図7を参照して、スロットルグリップ12の回転角度の検出必要角度αが90度程度、具体的には80度である場合を例示して説明する。
【0027】
まず、
図6に示すように、アクセルポジションセンサ14では、インナーロータ15の一方の端面15aの中心から距離を空けて外周側に、磁気センサ17が対向されて配置されている。これにより、磁気センサ17による隣り合う磁極間で発生する磁束の検知精度の低下を抑制することができる。そして、
図7(1),(2)では、説明の都合上、インナーロータ15の一方の端面15aの外周の外側に、磁極により発生する磁束と磁気センサ17とを図示して説明する。また、
図7(1),(2)では、検出必要角度αを80度として一点鎖線で示している。この場合、磁気センサ17は、以下に説明するように、主に1つの区切り箇所15aaに位置する対となる磁極(N極18bとS極18c)にて発生する磁束を検出することで、80度の範囲でスロットルグリップ12の回転角度を検出することができる。
【0028】
具体的に、まず、
図7(1)に示すように、初期状態では、磁気センサ17が2つの磁極18a,18bの境界に対向し、磁気センサ17は磁極18bで発生する磁束、つまり磁極18b(N極)と磁極18a(S極)との間に発生する磁束19aを検出することとなる。その後、操作者のスロットルグリップ12の操作によって、
図7(1)に示す初期位置から、
図7(2)に示す検出必要角度αまで、インナーロータ15を図中時計周りに回転させた場合には、磁気センサ17は、磁極18b(N極)と磁極18a(S極)との間の磁束19a,磁極18b(N極)と磁極18c(S極)との間の磁束19b及び磁極18c(S極)と磁極18d(N極)との間の磁束19cを順次検出することができる。そして、この検出必要角度αの間では、磁気センサ17は一対の磁極(N極とS極)によって生じる磁束を検出しているため、常に異なる磁束の向きを検出することとなり、つまり、磁気センサ17は常に異なる電気信号を検出することとなる。その結果、スロットルグリップ12の回転角度の誤検出を防止することができる。
【0029】
なお、本実施形態におけるインナーロータ15は、一方の端面15aに8個の磁極が形成されているが、その数は8個であることに限定されず、いくつであってもよい。つまり、インナーロータ15の一方の端面15aは、いかなる角度に区切られて、いかなる数の磁極が形成されていてもよい。また、上記では、インナーロータ15の一方の端面15aが放射状に均等に区切られて各磁極が形成されているが、必ずしも均等に区切られていなくてもよい。例えば、インナーロータ15の一方の端面15aにおいて、上述したようにスロットルグリップ12の回転角度の検出に利用された
図7(1),(2)の符号18b,18cに示す一対の磁極(N極とS極)は、図示の通り45度ずつの角度で区切られて形成され、その他の箇所は異なる角度で区切られて磁極が形成されていてもよい。
【0030】
そして、上述した
図4に示すように、インナーロータ15の側面15cには16個の磁極が形成されており、その周りに、磁性体であるアウターケース16が配置されている。このように、インナーロータ15の側面15cには、一方の端面15aに形成された磁極の数に制限されずに多数の磁極が形成されている。このため、インナーロータ15が回転したときに、磁化されているアウターケース16によってインナーロータ15の回転を阻止するようなに磁力を発生させることとなるが、磁極の数に応じた磁力による抵抗力を発生させることができる。その結果、スロットルグリップ12を操作する操作者に対して、所望の操作感を付与することができ、操作荷重における設計の自由度の向上を図ることができる。
【0031】
なお、本実施形態におけるインナーロータ15は、側面15cに16個の磁極が形成されているが、その数は16個であることに限定されず、いくつであってもよい。つまり、インナーロータ15の側面15cは、いかなる幅に区切られて、いかなる数の磁極が形成されていてもよい。例えば、側面15cの磁極の数は、一方の端面15aの磁極の数よりも多くても少なくてもよい。また、上記では、インナーロータ15の側面15cが均等の幅に区切られて各磁極が形成されているが、必ずしも均等の幅に区切られていなくてもよい。また、上記では、インナーロータ15の一方の端面15aと側面15cとの境界において、一方の端面15aに形成された磁極の全ての区切り箇所15aaに、側面15cに形成された磁極の区切り箇所15caが対応して位置するよう形成しているが、これらの区切り箇所15aa,15caを必ずしも相互に対応させる必要はない。例えば、一方の端面15aに形成された磁極のうち1つを含む一部のみの区切り箇所15aaに、側面15cに形成された磁極の区切り箇所15caを対応させてもよく、区切り箇所15aa,15ca同士が一つも対応していなくてもよい。
【0032】
また、インナーロータ15の側面15cの磁極は、側面全体に形成されているが、側面15cの一部のみに形成されていてもよい。また、インナーロータ15の側面15cの磁極は、上述したようにスロットルグリップ12の操作感を生じさせるためのものであるが、かかる磁極に相当する磁極を、インナーロータ15の他方の端面15bに設けてもよい。この場合、インナーロータ15の他方の端面15bに、一方の端面15aと同様に放射状に区切って回転方向に順番にN極とS極の磁極を交互に形成し、さらに、他方の端面15bに近接かつ対向して、アウターケース16の代わりとなる磁性体からなる板部材をハンドルバー11に固定して設けてもよい。これにより、インナーロータ15が回転したときに、他方の端面15bに形成された磁極によって磁化されている板部材により、インナーロータ15の回転を阻止するようなに磁力を発生させることとなり、磁極の数に応じた磁力による抵抗力を発生させることができる。このため、他方の端面15bに形成する磁極の数を、スロットルグリップ12を操作する操作者に対して付与する操作感が所望の操作感となるように設定するとよい。つまり、他方の端面15bに形成する磁極の数は、磁気センサ17にて回転角度が検出されるインナーロータ15の一方の端面15aに形成された磁極の数とは異なり、任意の数であってよい。
【0033】
なお、上述したようにスロットルグリップ12の操作感を生じさせるための磁極は、インナーロータ15の側面15cや他方の端面15bに形成することに限定されず、一方の端面15aに設けてもよい。この場合、アウターケース16の代わりとなる磁性体からなる板部材を、一方の端面15aに対向させてハンドルバー11に固定して設けてる。さらにこの場合、インナーロータ15の回転角度を検出するための磁極は、インナーロータ15の側面15cや他方の端面15bに設けてもよく、かかる磁極に対向させて磁気センサ17を設ける。このように、本実施形態のインナーロータ15では、スロットルグリップ12の回転角度を検出するために用いる磁極と、スロットルグリップ12の操作感を生じさせるための磁極とを、それぞれ異なる面に、それぞれ異なる数を設けてもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態では、インナーロータ15の一方の端面15aにスロットルグリップ12の回転角度を検出するための磁極を形成し、側面15cにスロットルグリップ12の操作者への操作荷重を発生させるための磁極を形成しており、一方の端面15aと側面15cとで、それぞれ磁極の数を異ならせている。このため、インナーロータ15の一方の端面15aと側面15cとにおけるそれぞれの磁極の数を設定することで、スロットルグリップ12の回転角度を検出可能な検出必要角度と、運転者への操作荷重と、を個別に変更することができる。その結果、アクセルポジションセンサ14における検出角度と操作荷重に対する設計の自由度の向上を図ることができる。特に、インナーロータ15の一方の端面15aよりも側面15cに多くの磁極を形成することで、一方の端面15aにて所望の角度の必要検出角度を設定しつつ、側面15cに一方の端面15aと同じ数の磁極を形成した場合よりも大きい所望の操作荷重を生じさせることができる。
【0035】
また、インナーロータ15の一方の端面15aと側面15cとにおける磁極の数が異なるものの、一方の端面15aと側面15cとの境界において、一部の磁極の区切り箇所を一致させている。これにより、インナーロータ15の一方の端面15aと側面との境界において、磁気の乱れを抑制することができる。なお、磁気センサ17が磁束の検知に使用する一方の端面15aにおける磁極の区切り箇所を、側面15cにおける磁極の区切り箇所と一致させることで、検知精度の低下を抑制することができる。
【0036】
また、インナーロータ15の他方の端面15bに、切り欠き15baといった位置決め部を形成しているため、インナーロータ15への磁極の着磁をより正確な位置に行うことができると共に、また、インナーロータ15を正確に組み付けることができる。
【0037】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明におけるアクセルポジションセンサ及び磁石の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0038】
(付記1)
運転者によって回動操作される車両のスロットルグリップの内部に収容され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の所定の面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石の前記所定の面とは異なる他の面に対向して配置された磁性体と、を備え、
前記磁石の前記所定の面と前記他の面とのそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
アクセルポジションセンサ。
(付記2)
付記1に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石の前記所定の面は、当該磁石の回転軸方向の端部に形成された端面であり、
前記磁石の前記他の面は、当該磁石の回転軸周りの回転方向に沿って形成された側面である、
アクセルポジションセンサ。
(付記3)
付記2に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石の前記端面に、当該磁石の回転軸から側面方向に向かって区切られて複数の磁極が着磁しており、
前記磁石の前記側面に、当該磁石の回転軸に沿って区切られて、前記端面に形成された磁極とは異なる数の複数の磁極が着磁している、
アクセルポジションセンサ。
(付記4)
付記3に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面に着磁されている磁極の少なくとも1つの区切り箇所に、前記側面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記5)
付記4に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁気検出部は、前記側面に着磁されている磁極の前記区切り箇所に対応して位置する前記端面に着磁されている対となる磁極の磁束を検出するよう配置されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記6)
付記4に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面又は前記側面に着磁されている磁極の全ての区切り箇所のそれぞれに、前記側面又は前記端面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記7)
付記6に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記端面と前記側面との境界において、前記端面に着磁されている磁極の全ての区切り箇所のそれぞれに、前記側面に着磁されている磁極の区切り箇所が対応して位置するよう形成されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記所定の面に着磁されている磁極の数よりも、前記他の面に着磁されている磁極の数の方が多く形成されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記9)
付記1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、位置決め部を有する、
アクセルポジションセンサ。
(付記10)
付記1乃至7のいずれかに記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石は、前記磁気検出部が対向する前記所定の面とは異なる当該磁石の回転軸方向の端部に形成された端面に、位置決め部を有する、
アクセルポジションセンサ。
(付記11)
付記10に記載のアクセルポジションセンサであって、
前記磁石の前記位置決め部は、前記端面に形成された切り欠きにて形成されている、
アクセルポジションセンサ。
(付記12)
車両のスロットルグリップの内部に収容されて装備され、
前記スロットルグリップの回転軸に沿って延在し、当該スロットルグリップに連動して回転する磁石と、
前記磁石の所定の面に対向して配置された磁気検出部と、
前記磁石の前記所定の面とは異なる他の面に対向して配置された磁性体と、
を備えたアクセルポジションセンサに装備される前記磁石であって、
前記磁石の前記所定の面と前記他の面とのそれぞれには、前記磁石の回転方向に沿って、相互に異なる数の磁極が着磁している、
磁石。
【0039】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 スロットル装置
11 ハンドルバー
12 スロットルグリップ
13 リターンスプリング
14 アクセルポジションセンサ
15 インナーロータ
15a 一方の端面
15aa 区切り箇所
15b 他方の端面
15ba 切り欠き
15c 側面
15ca 区切り箇所
16 アウターケース
17 磁気センサ