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特許7431121車両用サイレンサー、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車両用サイレンサー、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/08 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
B60R13/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020127196
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024543
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】田島 新
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 融治
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044963(JP,A)
【文献】特開平09-011383(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125872(WO,A1)
【文献】特開2017-039453(JP,A)
【文献】特開昭57-212057(JP,A)
【文献】特表2008-537526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
G10K 11/16 - 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された車両用サイレンサーであって、
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、バインダーを含む繊維層と、
前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、
前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含み、
前記車両用サイレンサーは、周縁よりも内側に一般部を有し、前記周縁において前記一般部よりも薄い潰し部を有し、
前記繊維層は、前記一般部において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し密度0.03g/cm3以下である拡張部を含み、
前記第一通気抵抗層の厚さが0.5~1.0mmであり、
前記第二通気抵抗層の厚さが0.5~1.0mmであり、
前記潰し部の厚さTcが4.0~8.0mmであり、
前記拡張部を含む前記一般部の厚さが前記厚さTcよりも大きく、且つ、40.0mm以下である、車両用サイレンサー。
【請求項2】
前記第一通気抵抗層と一体化された表皮層をさらに含み、
前記潰し部は、前記繊維層、前記第一通気抵抗層、前記第二通気抵抗層、及び、前記表皮層を含む、請求項1に記載の車両用サイレンサー。
【請求項3】
成形された車両用サイレンサーであって、
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、バインダーを含む繊維層と、
前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、
前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含み、
前記車両用サイレンサーは、周縁よりも内側に一般部を有し、
前記繊維層は、前記一般部において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し差圧成形により厚くされた拡張部を含む、車両用サイレンサー。
【請求項4】
第一の面及び該第一の面とは反対側の第二の面を有しバインダーを含む繊維層と、前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含む車両用サイレンサーの製造方法であって、
前記車両用サイレンサーにおいて前記第一の面に沿う第一の外面に合わせられた第一型面、及び、前記車両用サイレンサーにおいて前記第二の面に沿う第二の外面に合わせられた第二型面を有する差圧成形型に、前記第一通気抵抗層となる第一通気抵抗材料、前記繊維層となる繊維材料、及び、前記第二通気抵抗層となる第二通気抵抗材料を順に含む積層材料の周縁を固定する固定工程と、
前記第一型面及び前記第二型面に向けて前記積層材料を拡張させる差圧成形を前記積層材料に行うことにより、前記周縁よりも内側において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し前記繊維材料よりも厚い拡張部を前記繊維層に形成する差圧成形工程と、を含む、車両用サイレンサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された車両用サイレンサー、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に設置されるサイレンサーとして、例えば、自動車のホイールハウスに取り付けられるフェンダーライナーが知られている。走行中の自動車では、タイヤと路面との間で走行音が発生したり、タイヤが跳ね上げる小石、砂、水、等がフェンダーライナーに当たって打撃音が発生したりする。これらの走行音や打撃音等の騒音を低減するため、繊維系のフェンダーライナーをホイールハウスに取り付けることが行われている。
【0003】
特許文献1に開示されたフェンダーライナーの製造には、目付量が75~300g/m2であり、且つ厚さが0.1~1.5mmである第1不織布と、目付量が350~900g/m2であり、且つ厚さが2.0~5.0mmである第2不織布とが用いられている。これら第1不織布と第2不織布はニードルパンチ法により絡合一体化され、得られる複合不織布が厚さ方向に押圧されながら第1不織布の側から加熱される。加熱された複合不織布であるライナー用不織布積層体は、成形型内に載置され、加圧されることにより成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-274711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェンダーライナーには、所要の厚さが求められる。不織布積層体が加圧されることにより成形される場合、フェンダーライナーを所要の厚さにするためには、不織布積層体を最終的なフェンダーライナーよりも厚くする必要がある。その結果、フェンダーライナーの重量が増えてしまう。
尚、上記のような問題は、フェンダーライナーに限らず、サイドトリムといった内装材等、種々の車両用サイレンサーについて存在する。
【0006】
本発明は、軽量で厚みのある車両用サイレンサー、及び、その製造方法を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用サイレンサーは、成形された車両用サイレンサーであって、
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、バインダーを含む繊維層と、
前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、
前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含み、
前記車両用サイレンサーは、周縁よりも内側に一般部を有し、前記周縁において前記一般部よりも薄い潰し部を有し、
前記繊維層は、前記一般部において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し密度0.03g/cm3以下である拡張部を含み、
前記第一通気抵抗層の厚さが0.5~1.0mmであり、
前記第二通気抵抗層の厚さが0.5~1.0mmであり、
前記潰し部の厚さTcが4.0~8.0mmであり、
前記拡張部を含む前記一般部の厚さが前記厚さTcよりも大きく、且つ、40.0mm以下である、態様を有する。
【0008】
また、本発明の車両用サイレンサーは、成形された車両用サイレンサーであって、
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、バインダーを含む繊維層と、
前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、
前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含み、
前記車両用サイレンサーは、周縁よりも内側に一般部を有し、
前記繊維層は、前記一般部において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し差圧成形により厚くされた拡張部を含む、態様を有する。
【0009】
さらに、本発明の車両用サイレンサーの製造方法は、第一の面及び該第一の面とは反対側の第二の面を有しバインダーを含む繊維層と、前記第一の面に接合された第一通気抵抗層と、前記第二の面に接合された第二通気抵抗層と、を含む車両用サイレンサーの製造方法であって、
前記車両用サイレンサーにおいて前記第一の面に沿う第一の外面に合わせられた第一型面、及び、前記車両用サイレンサーにおいて前記第二の面に沿う第二の外面に合わせられた第二型面を有する差圧成形型に、前記第一通気抵抗層となる第一通気抵抗材料、前記繊維層となる繊維材料、及び、前記第二通気抵抗層となる第二通気抵抗材料を順に含む積層材料の周縁を固定する固定工程と、
前記第一型面及び前記第二型面に向けて前記積層材料を拡張させる差圧成形を前記積層材料に行うことにより、前記周縁よりも内側において前記第一通気抵抗層及び前記第二通気抵抗層よりも高い通気度を有し前記繊維材料よりも厚い拡張部を前記繊維層に形成する差圧成形工程と、を含む、態様を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量で厚みのある車両用サイレンサー、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サイレンサーを備える自動車の例を模式的に示す側面図。
図2】フェンダーライナーの例を模式的に示す側面図。
図3】フェンダーライナーを図2のA1-A1に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示す図。
図4】フェンダーライナーの例を模式的に示す平面図。
図5】サイレンサー製造装置と積層材料の例を模式的に示す図。
図6】車両用サイレンサーの製造方法例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0013】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~6に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0014】
[態様1]
本技術の一態様に係る成形された車両用サイレンサー1は、繊維層10、第一通気抵抗層21、及び、第二通気抵抗層22を含んでいる。前記繊維層10は、第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有し、バインダー14を含んでいる。前記第一通気抵抗層21は、前記第一の面11に接合されている。前記第二通気抵抗層22は、前記第二の面12に接合されている。本車両用サイレンサー1は、周縁30よりも内側に一般部31を有し、前記周縁30において前記一般部31よりも薄い潰し部32を有している。前記繊維層10は、前記一般部31において前記第一通気抵抗層21及び前記第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し密度0.03g/cm3以下である拡張部15を含んでいる。
【0015】
上記態様は、バインダー14を含む繊維層10の両面に通気抵抗層21,22が接合され、サイレンサー1の周縁30に潰し部32があり、且つ、周縁30よりも内側に通気抵抗層21,22よりも高い通気性を有する低密度の拡張部15があるので、軽量で厚みのある車両用サイレンサーを提供することができる。
【0016】
ここで、本技術のサイレンサーを設置可能な場所は、フェンダー部、車室フロア部、車室側壁部、車室天井部、デッキフロア部、ダッシュボード部、エンジンフード部、等が含まれ、外装部分でもよいし、内装部分でもよい。
第一通気抵抗層は、通気度0の非通気層でもよいし、若干の通気性を有する低通気層でもよい。第二通気抵抗層も、通気度0の非通気層でもよいし、若干の通気性を有する低通気層でもよい。
第一通気抵抗層は、表面に現れた層でもよいし、表皮材の裏面層等、表面に現れていない層でもよい。第二通気抵抗層も、表面に現れた層でもよいし、表皮材の裏面層等、表面に現れていない層でもよい。
本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0017】
[態様2]
ところで、前記第一通気抵抗層21の厚さT1(図3参照)は、0.5~1.0mmでもよい。前記第二通気抵抗層22の厚さT2(図3参照)は、0.5~1.0mmでもよい。前記潰し部32の厚さTc(図3参照)は、4.0~8.0mmでもよい。前記拡張部15を含む前記一般部31の厚さTg(図3参照)は、前記厚さTcよりも大きく、且つ、40.0mm以下でもよい。本態様は、通気抵抗層が薄く、拡張部15を含む一般部31が潰し部32よりも厚いので、良好な精度の凹凸形状を有する車両用サイレンサーを提供することができる。
【0018】
[態様3]
図3に例示するように、本車両用サイレンサー1は、前記第一通気抵抗層21と一体化された表皮層23をさらに含んでいてもよい。前記潰し部32は、前記繊維層10、前記第一通気抵抗層21、前記第二通気抵抗層22、及び、前記表皮層23を含んでいてもよい。本態様は、表皮層23が第一通気抵抗層21と一体化され、サイレンサー1の周縁30にある潰し部32に表皮層23が含まれ、且つ、周縁30よりも内側に通気抵抗層よりも高い通気性を有する低密度の拡張部15があるので、軽量で厚みのある表皮付きサイレンサーを提供することができる。
【0019】
[態様4]
ところで、本技術の別の態様に係る成形された車両用サイレンサー1は、繊維層10、第一通気抵抗層21、及び、第二通気抵抗層22を含んでいる。前記繊維層10は、第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有し、バインダー14を含んでいる。前記第一通気抵抗層21は、前記第一の面11に接合されている。前記第二通気抵抗層22は、前記第二の面12に接合されている。本車両用サイレンサー1は、周縁30よりも内側に一般部31を有している。前記繊維層10は、前記一般部31において前記第一通気抵抗層21及び前記第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し差圧成形により厚くされた拡張部15を含んでいる。
【0020】
上記繊維層10の拡張部15は、一般部31において第一通気抵抗層21及び第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し、差圧成形により差圧成形前よりも厚くされることにより密度が低下している。上記態様は、バインダー14を含む繊維層10の両面に通気抵抗層21,22が接合され、且つ、周縁30よりも内側に通気抵抗層21,22よりも高い通気性を有する低密度の拡張部15があるので、軽量で厚みのある車両用サイレンサーを提供することができる。
【0021】
[態様5]
また、本技術の一態様に係る車両用サイレンサー1の製造方法は、以下の工程(a),(b)を含む。
(a)前記車両用サイレンサー1において前記第一の面11に沿う第一の外面41に合わせられた第一型面221、及び、前記車両用サイレンサー1において前記第二の面12に沿う第二の外面42に合わせられた第二型面222を有する差圧成形型210に、前記第一通気抵抗層21となる第一通気抵抗材料61、前記繊維層10となる繊維材料60、及び、前記第二通気抵抗層22となる第二通気抵抗材料62を順に含む積層材料50の周縁30を固定する固定工程ST1。
(b)前記第一型面221及び前記第二型面222に向けて前記積層材料50を拡張させる差圧成形を前記積層材料50に行うことにより、前記周縁30よりも内側において前記第一通気抵抗層21及び前記第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し前記繊維材料60よりも厚い拡張部15を前記繊維層10に形成する差圧成形工程ST2。
【0022】
上記積層材料50に差圧成形を行うことにより、周縁30よりも内側において第一通気抵抗層21及び第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し元の繊維材料60よりも厚い拡張部15が繊維層10に形成される。これにより、拡張部15は元の繊維材料60よりも低密度となる。従って、上記態様は、軽量で厚みのある車両用サイレンサーの製造方法を提供することができる。
【0023】
(2)車両用サイレンサーの具体例:
図1は、車両用サイレンサー1を備える自動車100を模式的に例示する側面図である。図2は、フェンダーライナー110を模式的に例示している。図3は、フェンダーライナー110を図2のA1-A1に相当する位置で切断したときの垂直端面を模式的に例示している。図4は、フェンダーライナー110を模式的に例示する平面図である。これらの図中、FRONT、REAR、UP、DOWN、LEFT、RIGHTは、それぞれ、前、後、上、下、左、右を示す。また、符号D1は自動車100の前後方向を示し、符号D2は自動車100の上下方向を示し、符号D3は自動車100の車幅方向を示し、符号D4は車両用サイレンサー1の厚さ方向を示す。
【0024】
図1に示す自動車100は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車であり、例えば、鋼板製といった金属製の車体パネルが車室SP1及び荷室SP2を囲んで車体を形成している。また、図1に示す自動車100は、後部の荷室SP2が車室SP1と繋がり、2列の座席101(前席と後席)を備えるワゴンタイプの乗用自動車とされている。むろん、本技術を適用可能な自動車には、3列シートタイプといった2列シートタイプ以外の自動車も含まれ、いわゆるステーションワゴンやワンボックスカー等の他、セダンタイプ等の自動車も含まれる。
【0025】
自動車100には、前部の左右と後部の左右とにタイヤ103が配置され、これらのタイヤ103の上方をそれぞれ覆う金属製ホイールハウス102が配置されている。ホイールハウス102は、ホイールハウスパネルやホイールハウジングとも呼ばれ、車体の一部を構成する。各ホイールハウス102においてタイヤ103に向いている面は自動車100の外面であり、この外面を覆うように外装部品であるフェンダーライナー110がホイールハウス102に取り付けられている。フェンダーライナー110は、自動車100の走行中にタイヤ103が路面R1から跳ね上げる小石や泥水等によって車体パネルが傷つけられることを防止し、タイヤ103と路面R1とによって発生するロードノイズ等の騒音を低減させる。フェンダーライナー110は、繊維層と第一通気抵抗層と第二通気抵抗層を含む成形された車両用サイレンサー1の例である。
【0026】
自動車100の車体パネルには、室内(SP1,SP2)側において種々の内装材(111~115)が設置されている。これらの内装材(111~115)も車両用サイレンサー1となり得る。また、内装材(111~115)の裏面に別体の車両用サイレンサー1が設置されてもよい。
車室SP1及び荷室SP2から上方にあるルーフパネル(車体パネルの例)には、室内(SP1,SP2)側においてルーフトリム111が設置されている。車室SP1から側方にあるドアパネル(車体パネルの例)には、車室SP1側においてドアトリム112が設置されている。荷室SP2から側方にあるデッキサイドパネル(車体パネルの例)には、荷室SP2側においてデッキサイドトリム113が設置されている。車室SP1から下方にあるフロアパネル(車体パネルの例)には、車室SP1側においてフロアカーペット114が設置されている。荷室SP2から後方にあるバックドア(Tailgate)105には、荷室SP2側においてバックドア用トリム115が設置されている。
【0027】
むろん、車両用サイレンサー1は、上述した全箇所(110~115)に設置される必要はない。また、アンダーカバー等といった外装部分に車両用サイレンサーが設置されてもよいし、ダッシュボード等といった内装部分に車両用サイレンサーが設置されてもよい。
以下、車両用サイレンサー1の例として、図2~4に示すフェンダーライナー110を説明する。
【0028】
図3に示すように、フェンダーライナー110は、路面R1(図1参照)に向いた第一の外面41からホイールハウス102に向いた第二の外面42に向かう厚さ方向D4の順に、表皮層23、第一通気抵抗層21、繊維層10、及び、第二通気抵抗層22を含んでいる。表皮層23は、第一通気抵抗層21と一体化された基材層24、及び、該基材層24と一体化された耐着氷層25を含んでいる。第一の外面41は、耐着氷層25にある。繊維層10は、繊維13とバインダー14を含み、路面R1に向いた第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有している。第一通気抵抗層21は、第一の面11に接合されている。第二通気抵抗層22は、第二の面12に接合されている。第二の外面42は、第二通気抵抗層22にある。第一の外面41は第一の面11に沿っており、第二の外面42は第二の面12に沿っている。
【0029】
フェンダーライナー110は、周縁30よりも内側に一般部31を有し、周縁30において一般部31よりも薄い潰し部32を有している。ここで、周縁30は、フェンダーライナー110の一部を意味し、フェンダーライナー110の平面視(図4参照)において一周する部分である。詳しくは図5,6を参照して後述するが、フェンダーライナー110の一般部31は差圧成形により厚さ方向D4において厚くされることにより形成され、フェンダーライナー110の潰し部32は差圧成形型210で保持されることにより形成される。繊維層10は、一般部31において差圧成形により厚くされた拡張部15を含んでいる。拡張部15は、第一通気抵抗層21及び第二通気抵抗層22よりも高い通気度を有し、密度0.03g/cm3以下と低密度である。繊維層10となる繊維材料60(図5参照)には、フェルト等といった、繊維同士が絡み合った通気性材料であって、密度0.03g/cm3以下となるまで厚さ方向へ拡がる材料が用いられている。従って、繊維材料60は、拡張部15よりも高密度である。繊維材料60は、組織全体が厚さ方向へ拡がることにより厚さ方向の全体にわたって密度が下がる材料が好ましい。図3に示すように、拡張部15を含む一般部31は、厚さ方向D4の順に、表皮層23、表皮層23と一体化された第一通気抵抗層21、該第一通気抵抗層21と一体化された拡張部15、及び、該拡張部15と一体化された第二通気抵抗層22を含んでいる。潰し部32は、厚さ方向D4の順に、表皮層23、表皮層23と一体化された第一通気抵抗層21、該第一通気抵抗層21と一体化された繊維層10、及び、該繊維層10と一体化された第二通気抵抗層22を含んでいる。
【0030】
繊維層10の繊維13には、熱可塑性樹脂繊維といった合成樹脂繊維、セルロース系繊維、無機繊維、動物繊維といった天然繊維、衣料反毛繊維といった反毛繊維、等を用いることができる。繊維13には、着色剤等の添加剤が含まれてもよい。合成樹脂繊維には、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維といったポリエステル繊維、ポリアミド(PA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維といったポリオレフィン繊維、アクリル(PMMA)繊維、等が含まれる。合成樹脂繊維には、エラストマーの繊維が含まれる。セルロース系繊維には、木綿や麻といった植物繊維、レーヨンといった合成繊維、等が含まれる。植物繊維は、天然繊維でもある。無機繊維には、ガラス繊維等が含まれる。動物繊維には、ウール、絹、等が含まれる。尚、衣料反毛繊維には、ポリエステル繊維やPA繊維といった融点220℃以上である高融点の熱可塑性繊維が混入することがある。
【0031】
繊維13の繊度は、特に限定されないが、例えば2.2~16dtex程度とすることができる。繊維13の長さは、特に限定されないが、例えば27~76mm程度とすることができる。繊維13の断面形状は、特に限定されず、真円を含む楕円、三角形、扁平形状、中空形状、等とすることができる。繊維13には、複数の種類の繊維が組み合わされてもよい。
【0032】
繊維層10のバインダー14には、熱可塑性バインダーや熱硬化性バインダー等を用いることができる。熱可塑性バインダーには、低融点のPET樹脂といったポリエステル樹脂、PP樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、等を用いることができる。熱可塑性バインダーには、エラストマーが含まれる。バインダー14には、着色剤等の添加剤が含まれてもよい。
また、バインダー14は、熱可塑性樹脂繊維のように繊維状の熱可塑性バインダーでもよい。この場合、繊維13は、バインダー14よりも高融点の熱可塑性繊維と非溶融成分を含む繊維の少なくとも一方が好ましい。バインダー14よりも高融点の熱可塑性繊維には、高融点のPET繊維といったポリエステル繊維、PA繊維、等が挙げられる。非溶融成分を含む繊維には、セルロース系繊維、無機繊維、天然繊維、反毛繊維、等が挙げられる。
【0033】
繊維層10における繊維13の含有比率は、例えば、60~99重量%とすることができる。繊維層10におけるバインダー14の含有比率は、例えば、1~40重量%とすることができる。
【0034】
さらに、繊維13自体がバインダー14を含んでいてもよい。例えば、繊維13が芯鞘構造やサイドバイサイド構造といったコンジュゲート構造の繊維である場合、これらの構造の表面に現れている部分(例えば鞘部)にバインダー14が存在していてもよい。この場合の繊維層10におけるバインダー14の含有比率も、例えば、1~40重量%とすることができる。
【0035】
通気抵抗層21,22は、一般部31において繊維層10の拡張部15よりも通気度が低い層である。通気度は、JIS(日本産業規格)L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)に規定されたA法(フラジール形法)に従うものとする。第一通気抵抗層21の通気度は、例えば、30cc/cm2/sec以下、より好ましくは10cc/cm2/sec以下、さらに好ましくは5cc/cm2/sec以下、特に好ましくは3cc/cm2/sec以下、とすることができる。第二通気抵抗層22の通気度も、例えば、30cc/cm2/sec以下、より好ましくは10cc/cm2/sec以下、さらに好ましくは5cc/cm2/sec以下、特に好ましくは3cc/cm2/sec以下、とすることができる。通気抵抗層21,22となる通気抵抗材料61,62には、熱可塑性樹脂フィルムといった合成樹脂フィルム等を用いることができる。前述の熱可塑性樹脂フィルムには、PET樹脂といったポリエステル樹脂、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂、等のフィルムが含まれる。前述の合成樹脂フィルムには、エラストマーのフィルムが含まれる。合成樹脂フィルムは、2層以上の樹脂材料層を含む積層フィルムでもよい。通気抵抗材料61,62は、差圧成形により塑性変形する材料であり、差圧成形によっても密度0.03g/cm3以下とならない材料が好ましい。
【0036】
第一通気抵抗層21と一体化された表皮層23の基材層24には、不織布、織物、編物、合成樹脂(エラストマーを含む)、ゴム、等を用いることができる。不織布、織物、及び、編物は、厚さ方向へ拡がることを抑止する構造を有する。基材層24は、差圧成形によっても密度0.03g/cm3以下とならない材料が好ましい。基材層24が繊維製である場合、基材層24の繊維には、熱可塑性樹脂繊維といった合成樹脂繊維、セルロース系繊維、無機繊維、等を用いることができる。合成樹脂繊維には、PET繊維といったポリエステル繊維、PA繊維、PP繊維といったポリオレフィン繊維、PMMA繊維、等が含まれる。基材層24は、熱可塑性バインダーや熱硬化性バインダーといったバインダーを含んでいてもよい。熱可塑性バインダーには、低融点のPET樹脂といったポリエステル樹脂、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂、等を用いることができる。熱可塑性バインダーは、熱可塑性樹脂繊維のように繊維状でもよい。
表皮層23の耐着氷層25には、不織布、熱可塑性樹脂といった合成樹脂(エラストマーを含む)、等を用いることができる。不織布の繊維には、熱可塑性樹脂繊維といった合成樹脂繊維、無機繊維、セルロース系繊維、等を用いることができる。合成樹脂繊維には、PET繊維といったポリエステル繊維、PA繊維、PP繊維といったポリオレフィン繊維、PMMA繊維、等が含まれる。また、耐着氷層25は、合成樹脂フィルムで形成されてもよく、2層以上の構造でもよい。耐着氷層25は、差圧成形により塑性変形する材料であり、差圧成形によっても密度0.03g/cm3以下とならない材料が好ましい。
【0037】
繊維層10の拡張部15の通気度は、第一通気抵抗層21の通気度よりも高く、第二通気抵抗層22の通気度よりも高い。拡張部15の通気度は、第一通気抵抗層21の通気度よりも高く第二通気抵抗層22の通気度よりも高い範囲で、例えば、30~150cc/cm2/secとすることができる。
【0038】
拡張部15は、繊維層10において差圧成形により密度0.03g/cm3以下となるように厚くされた部分である。拡張部15の密度は、フェンダーライナー110に良好な保形性を付与する点で、0.003g/cm3以上が好ましく、0.005g/cm3以上がより好ましく、0.01g/cm3以上がさらに好ましい。拡張部15の密度は、繊維層10となる繊維材料60の密度よりも小さくなり、繊維材料60の密度の1/2以下でもよいし、繊維材料60の密度の1/3以下でもよいし、繊維材料60の密度の1/4以下でもよいし、繊維材料60の密度の1/5以下でもよい。
本具体例のフェンダーライナー110は、拡張部15を備えていることにより、図3に示すように、第二の外面42が断面凸形状であるにも関わらず第一の外面41が断面凹形状である必要がない。図3に示す第一の外面41は断面直線状であるが、第一の外面41を断面凸形状とすることも可能である。従って、本具体例のフェンダーライナー110は、形状の自由度が高い。また、拡張部15を有するフェンダーライナー110は、拡張部15の繊維構造により形状の復元性を有しているので、厚さ方向へ圧縮した状態で輸送した後、元の厚さまで復元させて車両に設置することが可能である。
【0039】
第一通気抵抗層21の厚さT1は、フェンダーライナー110に良好な保形性を付与する点で0.5mm以上が好ましく、フェンダーライナー110を容易に成形する点で1.0mm以下が好ましい。第二通気抵抗層22の厚さT2も、フェンダーライナー110に良好な保形性を付与する点で0.5mm以上が好ましく、フェンダーライナー110を容易に成形する点で1.0mm以下が好ましい。通気抵抗層21,22が薄いので、フェンダーライナー110は、良好な精度の凹凸形状を有する。
【0040】
表皮層23の厚さT3は、例えば、2.0~4.0mmとすることができる。表皮層23の基材層24の厚さは、例えば、1.5~3.0mmとすることができる。表皮層23の耐着氷層25の厚さは、例えば、0.5~1.0mmとすることができる。
【0041】
フェンダーライナー110の潰し部32の厚さTcは、例えば、4.0~8.0mmとすることができる。フェンダーライナー110において拡張部15を含む一般部31の厚さTgは、潰し部32の厚さTcよりも大きく、例えば、5.0mm以上とすることができる。拡張部15を含む一般部31が潰し部32よりも厚いので、フェンダーライナー110は良好な精度の凹凸形状を有する。拡張部15を含む一般部31の厚さTgは、フェンダーライナー110に良好な保形性を付与する点で、40.0mm以下が好ましい。
【0042】
第一通気抵抗層21の目付は、例えば、150~300g/m2とすることができる。第二通気抵抗層22の目付も、例えば、150~300g/m2とすることができる。繊維層10の目付は、例えば、200~800g/m2とすることができる。表皮層23の基材層24の目付は、例えば、600~1200g/m2とすることができる。尚、フェンダーライナー110に含まれる各層の目付は、フェンダーライナー110の厚さ方向D4と直交する仮想の平面における単位面積当たりの重量とする。
【0043】
(3)車両用サイレンサーの製造方法の具体例:
図5は、車両用サイレンサー1の例であるフェンダーライナー110を製造するためのサイレンサー製造装置200、及び、フェンダーライナー110となる積層材料50を模式的に例示している。
【0044】
図5に示す製造装置200は、差圧成形型210、該差圧成形型210の中にある貫通路223p,224pを含む差圧経路223,224、該差圧経路223,224に作用させる圧力を切り替え可能な圧力切替部225,226、及び、該圧力切替部225,226の動作を制御する制御部230を含んでいる。差圧成形型210は、フェンダーライナー110の第一の外面41に合わせられた第一型面221を有する第一の型211(例えば金型)、及び、フェンダーライナー110の第二の外面42に合わせられた第二型面222を有する第二の型212(例えば金型)を含んでいる。第一の型211の内部には貫通路223pがあり、第一型面221には貫通路223pの開口223oがある。第二の型212の内部には貫通路224pがあり、第二型面221には貫通路224pの開口224oがある。型211,212は、互いに近接及び離隔可能に設けられている。型211,212の少なくとも一方は、積層材料50を加熱する加熱部を備えていてもよい。
【0045】
圧力切替部225は、例えば、出力部に差圧経路223が接続された電磁弁、真空ポンプ、該真空ポンプから電磁弁の第一入力部に繋がる減圧経路、電磁弁の第二入力部に繋がる大気導入経路を備える。真空ポンプは、減圧経路から空気を吸い出し、減圧経路を減圧する。圧力切替部225は、制御部230の制御に従って、差圧経路223に減圧経路と大気導入経路のいずれを接続するかを切り替える。差圧経路223に減圧経路が接続されると、差圧経路223から空気が吸い出され、差圧経路223が減圧される。差圧経路223に大気導入経路が接続されると、大気導入経路から差圧経路223に空気が導入され、差圧経路223が大気圧に近付く。
【0046】
圧力切替部226は、例えば、出力部に差圧経路224が接続された電磁弁、真空ポンプ、該真空ポンプから電磁弁の第一入力部に繋がる減圧経路、電磁弁の第二入力部に繋がる大気導入経路を備える。真空ポンプは両圧力切替部225,226に共用されてもよいし、減圧経路も両圧力切替部225,226に共用されてもよい。真空ポンプは、減圧経路から空気を吸い出し、減圧経路を減圧する。圧力切替部226は、制御部230の制御に従って、差圧経路224に減圧経路と大気導入経路のいずれを接続するかを切り替える。差圧経路224に減圧経路が接続されると、差圧経路224から空気が吸い出され、差圧経路224が減圧される。差圧経路224に大気導入経路が接続されると、大気導入経路から差圧経路224に空気が導入され、差圧経路224が大気圧に近付く。
【0047】
制御部230は、所定のシーケンスに従って、圧力切替部225,226の電磁弁の入力側を減圧経路に制御するか大気導入経路に制御するかを示す制御信号を当該電磁弁に出力する。制御部230は、積層材料50を拡張させるタイミングにおいて、圧力切替部225,226の電磁弁の入力側を減圧経路に制御することにより、型締め状態(型211,212が互いに最も近接した状態)の差圧成形型210内のキャビティーCA1を減圧させる。また、制御部230は、キャビティーCA1の減圧を解除するタイミングにおいて、圧力切替部225,226の電磁弁の入力側を大気導入経路に制御することにより、キャビティーCA1を大気圧に戻す。
以上より、図5に示す製造装置200は、積層材料50に対して差圧成形である真空成形を行うことによりフェンダーライナー110を製造する。
【0048】
型211,212の間には、フェンダーライナー110を形成するための積層材料50がセットされる。図5に示す積層材料50は、表皮層23となる表皮材料63、第一通気抵抗層21となる第一通気抵抗材料61、繊維層10となる繊維材料60、及び、第二通気抵抗層22となる第二通気抵抗材料62をこの順に含んでいる。図5に示す表皮材料63は、基材層24と耐着氷層25を含んでいる。繊維材料60には、上述した繊維13及びバインダー14を含む材料であってフェルト等、繊維同士が絡み合った通気性材料であって、厚さ方向へ広がる材料を用いることができる。バインダー14は、繊維状の材料が好ましい。これにより、繊維材料60の組織全体が厚さ方向へ拡がることにより繊維材料60の密度が厚さ方向の全体にわたって低くなり易い。積層材料50が熱可塑性の材料を含む場合、積層材料50は赤外線ヒーターといった予備加熱部で熱可塑性の材料の融点よりも少し高い温度まで予備加熱されてもよい。
【0049】
次に、図5,6を参照して、各層(60~63)に熱可塑性の材料を含む積層材料50から車両用サイレンサー1を製造する方法例を説明する。図6は、フェンダーライナー110の製造方法を模式的に例示している。本具体例の製造方法は、積層材料形成工程、積層材料予備加熱工程、固定工程ST1、差圧成形工程ST2、及び、サイレンサー取出工程を含んでいるものとする。
【0050】
最初の積層材料形成工程では、表皮材料63、第一通気抵抗材料61、繊維材料60、及び、第二通気抵抗材料62をこの順に重ねることにより積層材料50を形成する処理が行われる。次の積層材料予備加熱工程では、積層材料50を熱可塑性の材料の融点よりも少し高い温度まで予備加熱する処理が行われる。熱可塑性の材料の少なくとも一部が溶融することにより、表皮材料63と第一通気抵抗材料61とが接合し、第一通気抵抗材料61と繊維材料60とが接合し、繊維材料60と第二通気抵抗材料62とが接合する。
【0051】
予備加熱後の固定工程ST1では、互いに離隔した型211,212の一方に高温の積層材料50をセットし、図6の上部に示すように型211,212を互いに近接させることにより積層材料50の周縁30を固定する処理が行われる。型211,212が互いに近付くと、積層材料50の周縁30は、型面221,222に挟まれ、潰し部32が形成される。尚、差圧成形型210が型締め状態である時において型面221,222のうち潰し部32を形成する部分の間隔は、積層材料50の周縁30を固定するため、積層材料50の厚さよりも狭くされている。
【0052】
型締め後の差圧成形工程ST2では、第一型面221及び第二型面222に向けて積層材料50を拡張させる差圧成形を積層材料50に行うことにより、周縁30よりも内側において繊維材料60を拡張させる処理が行われる。図5に示す制御部230は、圧力切替部225,226の電磁弁の入力側を減圧経路に制御することにより、型締め状態の差圧成形型210内のキャビティーCA1を減圧させる。図6の上部において差圧経路223,224に沿って付された矢印は、差圧経路223,224に減圧経路に接続された直後における差圧経路223,224内の空気の流れを示している。図6の上部に示す例において、積層材料50の表皮材料63は、差圧経路223から圧力切替部225の方へ空気が吸い出されることにより第一型面221に密接した状態となる。表皮材料63に接合された第一通気抵抗材料61は、第一型面221に沿った状態となる。また、積層材料50の第二通気抵抗材料62は、キャビティーCA1の空気が開口224oから差圧経路224を介して圧力切替部226の方へ吸い出されることにより、第二型面222に近付いていく。積層材料50の周縁30を除いて第一通気抵抗材料61と第二通気抵抗材料62とが離隔することにより、両通気抵抗材料61,62に接合された繊維材料60は、厚くなるように拡がっていき、通気度が高くなる。この時、繊維材料60の組織が全体的に厚さ方向へ引き延ばされるので、繊維材料60の密度が全体的に低くなる。やがて、第二通気抵抗材料62が第二型面222に密接した状態となり、積層材料50において周縁30よりも内側の繊維材料60に密度0.03g/cm3以下の拡張部15が形成される。図6の下部には、第一の外面41を有する表皮層23が表皮材料63から形成され、拡張部15を含む繊維層10が繊維材料60から形成され、繊維層10の第一の面11に接合された第一通気抵抗層21が第一通気抵抗材料61から形成され、繊維層10の第二の面12に接合された第二通気抵抗層22が第二通気抵抗材料62から形成されたことが示されている。
【0053】
以上のようにして、第一型面221及び第二型面222に向けて積層材料50を拡張させる真空成形が積層材料50に行われ、縁30よりも内側において通気抵抗層21,22よりも高い通気度を有し繊維材料60よりも厚い拡張部15が繊維層10に形成される。これにより、第一型面221に沿う第一の面11及び第二型面222に沿う第二の面12を有する繊維層10を含むフェンダーライナー110が形成される。フェンダーライナー110が冷えてフェンダーライナー110に含まれる熱可塑性の材料が固化すると、フェンダーライナー110の形状が保持される。成形後のフェンダーライナー110の冷却を促進するため、サイレンサー製造装置200は型211,212の少なくとも一方を冷却する冷却部を備えていてもよい。
制御部230は、フェンダーライナー110に含まれる熱可塑性の材料が固化する設計タイミングの後、圧力切替部225,226の電磁弁の入力側を大気導入経路に制御することにより、型締め状態の差圧成形型210内のキャビティーCA1を大気圧に戻す。
【0054】
差圧成形の後のサイレンサー取出工程では、型211,212を互いに離隔させフェンダーライナー110を取り出す処理が行われる。取り出されたフェンダーライナー110は、図2~4に示すように、周縁30よりも内側に一般部31を有し、周縁30において一般部31よりも薄い潰し部32を有し、繊維層10が一般部31において通気抵抗層21,22よりも高い通気度を有し差圧成形により厚くされた拡張部15を含んでいる。拡張部15は、密度0.03g/cm3以下と低密度である。
以上説明したように、バインダー14を含む繊維層10の両面に通気抵抗層21,22が接合され、フェンダーライナー110の周縁30に潰し部32があり、且つ、周縁30よりも内側に通気抵抗層21,22よりも高い通気性を有する低密度の拡張部15があるので、軽量で厚みのあるフェンダーライナー110が得られる。また、フェンダーライナー110は、繊維層10があることにより良好な吸音性能を発揮し、該繊維層10の両側に通気抵抗層21,22があるので良好な遮音機能を発揮する。さらに、フェンダーライナー110は、拡張部15の繊維構造により形状の復元性を有しているので、厚さ方向へ圧縮した状態で輸送した後、元の厚さまで復元させて車両に設置することが可能である。従って、フェンダーライナー110の輸送コストを低減させることが可能である。
【0055】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
本発明を適用可能な車両用サイレンサーは、フェンダーライナー110に限定されず、上述したように、アンダーカバー等といった外装部分、内装材(111~115)やダッシュボード等といった内装部分、等でもよい。車両用サイレンサーは、車両用サイレンサーの設置箇所に応じて様々な形状にすることができる。図3に示す車両用サイレンサー1のように、第二の外面42が断面凸形状であるにも関わらず第一の外面41が断面凹形状である必要がない。従って、第一の外面41が断面凸形状である等、車両用サイレンサーは形状の自由度が高い。
表皮層23の構造は、2層構造に限定されず、基材層のみの単層構造でもよいし、耐着氷層のみの単層構造でもよいし、3層以上の構造でもよい。また、第一通気抵抗層21は、表皮層23と一体化されたバッキングでもよい。さらに、車両用サイレンサーに表皮層がなく、第一の外面41に第一通気抵抗層21が現れていてもよい。
【0056】
車両用サイレンサーを製造するための差圧成形は、真空成形に限定されず、積層材料の繊維材料に圧空を供給する圧空成形でもよいし、該圧空成形と真空成形を併用する圧空真空成形でもよい。
また、車両用サイレンサーは、積層材料の差圧成形後に差圧成形体の一部を切除することにより製造されてもよい。例えば、車両用サイレンサーは、積層材料の差圧成形体における潰し部の一部を切除することにより製造されてもよいし、積層材料の差圧成形体における一般部の一部を切除することにより製造されてもよいし、積層材料の差圧成形体における潰し部の一部及び一般部の一部を切除することにより製造されてもよい。
【0057】
(5)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0058】
繊維材料60には、繊維13としてPET繊維を70重量%含有しバインダー14として低融点PET繊維を30重量%含有する材料を用いた。繊維材料60の目付は400g/m2であり、繊維材料60の厚さは約7mmであり、繊維材料60の密度は約0.06g/cm3であった。第一通気抵抗材料61には、PE層とPA層とPE層をこの順に含む3層フィルムを用いた。第二通気抵抗材料62にも、PE層とPA層とPE層をこの順に含む3層フィルムを用いた。第一通気抵抗材料61の目付は250g/m2であり、第二通気抵抗材料の目付も250g/m2であった。表皮材料63の基材層24には、60重量%のPET繊維と15重量%の低融点PET繊維と25重量%のPP繊維を含有する不織布を用いた。表皮材料63の耐着氷層25には、60重量%のPET繊維と15重量%の低融点PET繊維と25重量%のPP繊維を含有する不織布を用いた。基材層24の目付は800g/m2であり、耐着氷層25の目付は250g/m2であった。
【0059】
耐着氷層25を外側に向けた表皮材料63、第一通気抵抗材料61、繊維材料60、及び、第二通気抵抗材料62をこの順に重ねた積層材料50を予備加熱し、図5,6に示すような差圧成形型210に高温の積層材料50をセットして、積層材料50に対して真空成形を行った。得られたフェンダーライナーサンプルは、図2~4に示すように、周縁30よりも内側に一般部31を有し、周縁30において一般部31よりも薄い潰し部32を有していた。潰し部32の最小厚さは4.0mmであり、一般部31の最大厚さは40.0mmであった。繊維層10は、一般部31において通気抵抗層21,22よりも高い通気度を有し密度0.03g/cm3以下である拡張部15を含んでいた。
以上より、軽量で厚みのある車両用サイレンサーが得られることが確認された。
【0060】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、軽量で厚みのある車両用サイレンサー及びその製造方法等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…サイレンサー、
10…繊維層、11…第一の面、12…第二の面、13…繊維、14…バインダー、
15…拡張部、
21…第一通気抵抗層、22…第二通気抵抗層、23…表皮層、
30…周縁、31…一般部、32…潰し部、
41…第一の外面、42…第二の外面、
50…積層材料、
60…繊維材料、61…第一通気抵抗材料、62…第二通気抵抗材料、63…表皮材料、
100…自動車、102…ホイールハウス、103…タイヤ、
110…フェンダーライナー、
200…製造装置、210…差圧成形型、211,212…型、
221…第一型面、222…第二型面、
223,224…差圧経路、223p,224p…貫通路、
225,226…圧力切替部、230…制御部、
CA1…キャビティー、
D1…前後方向、D2…上下方向、D3…車幅方向、D4…厚さ方向、
ST1…固定工程、ST2…差圧成形工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6