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特許7431124車両拘束装置およびシャシーダイナモメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車両拘束装置およびシャシーダイナモメータ
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240206BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01M17/007 C
G01M17/007 A
B60S5/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141871
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037638
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】及川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 恒太朗
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-067244(JP,U)
【文献】特開2009-133750(JP,A)
【文献】特開平02-238341(JP,A)
【文献】特開2010-169485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045601(US,A1)
【文献】特開2019-007786(JP,A)
【文献】特開2018-205075(JP,A)
【文献】特開2018-179641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
B60S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板に設けられた開口に頂部が露出したローラ上に車輪が載せ置かれた車両を拘束する、シャシーダイナモメータの車両拘束装置であって、
前記車輪のホイールハブに着脱自在に連結される固定部と、前記固定部を回転可能に支持する軸支部とを備えたハブ連結部と、
前記ハブ連結部を支持する支持部と、
前記支持部を上下方向に昇降する昇降装置とを備え、
前記ローラの回転軸方向を左右方向とし前記ローラの回転軸と垂直かつ水平な方向を前後方向として、当該車両拘束装置は、前記ハブ連結部の前記固定部の回転軸の方向が左右方向となる向きで、当該固定部の回転軸の前後方向の位置が前記ローラの回転軸の前後方向の位置と一致する位置に、左右方向の位置を可変に設置されていることを特徴とする車両拘束装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両拘束装置であって、
前記支持部は、ダンパーを用いて前記ハブ連結部を左右方向に所定範囲内において移動可能に支持していることを特徴とする車両拘束装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両拘束装置であって、
前記昇降装置は、上下に移動する可動部を有し、
前記支持部は、前記可動部に対する上下方向の所定範囲内の移動が許容されるように前記可動部に支持されていることを特徴とする車両拘束装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両拘束装置であって、
前記昇降装置は、前記支持部から前記可動部に加えられる荷重を検出する荷重検出装置を備えていることを特徴とする車両拘束装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両拘束装置であって、
前記昇降装置は、前記支持部に上下方向の荷重を加える荷重装置を備えていることを特徴とする車両拘束装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の車両拘束装置を備えた前記シャシーダイナモメータであって、
前記ローラ上に車輪が載せ置かれた車両から前記左右方向に離れる方向を外側方向として、前記開口を覆う位置から、当該開口を覆わない前記開口の外側方向の位置まで前記床板の上を移動可能なローラカバーを備え、
当該車両拘束装置は、前記ローラカバー上に設置されていることを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項7】
請求項6記載のシャシーダイナモメータであって、
前記ローラカバー上の、当該ローラカバーの上に設置された、前記外側方向に対して前記車両拘束装置と前記ローラ上に載せ置かれた車輪を遮蔽する、少なくとも一部が開閉式の安全柵を備えていることを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の自動車をシャシーダイナモメータに対して拘束する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪をローラ上で回転し自動車の各種特性の測定を行うシャシーダイナモメータでは、車輪が正しくローラ上に位置し続けるように自動車を拘束して測定を行う必要がある。
【0003】
このような自動車の拘束を行う技術としては、自動車のホイールハブに着脱可能に固定した部材を回動可能に支持する軸受と、床に固設したレールとを、複数の棒状部材で連結する技術(たとえば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-102712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術によれば、自動車の拘束のために比較的広いスペースが必要となる。また、自動車の拘束を行う際に、棒状部材を保管場所とシャシーダイナモメータとの間で移動したり、棒状部材を前記レールと試験対象の自動車に対して適切な位置に連結したりする必要があり、作業の負担が大きい。
【0006】
そこで、本発明は、より簡易な作業で自動車の拘束を行える車両拘束装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、床板に設けられた開口に頂部が露出したローラ上に車輪が載せ置かれた車両を拘束する、シャシーダイナモメータの車両拘束装置に、前記車輪のホイールハブに着脱自在に連結される固定部と、前記固定部を回転可能に支持する軸支部とを備えたハブ連結部と、前記ハブ連結部を支持する支持部と、前記支持部を上下方向に昇降する昇降装置とを設けたものである。ただし、前記ローラの回転軸方向を左右方向とし前記ローラの回転軸と垂直かつ水平な方向を前後方向として、当該車両拘束装置は、前記ハブ連結部の前記固定部の回転軸の方向が左右方向となる向きで、当該固定部の回転軸の前後方向の位置が前記ローラの回転軸の前後方向の位置と一致する位置に、左右方向の位置を可変に設置されている。
【0008】
このような車両拘束装置によれば、試験対象の車両に合わせて、車両拘束装置の左右方向の位置を調整すると共に、昇降装置を用いてハブ連結部の高さを調整し、固定部を車輪に固定するだけの簡易な作業で自動車の拘束を行うことができる。
【0009】
この車両拘束装置は、前記支持部によって、ダンパーを用いて前記ハブ連結部を左右方向に所定範囲内において移動可能に支持するように構成してもよい。
また、以上の車両拘束装置は、前記昇降装置が備え得る上下に移動する可動部によって、前記支持部を、当該移動部に対する上下方向の所定範囲内の移動が許容されるように支持してもよい。
【0010】
また、この場合、前記昇降装置に、前記支持部から前記可動部に加えられる荷重を検出する荷重検出装置を備えてよい。
また、前記昇降装置に、前記支持部に上下方向の荷重を加える荷重装置を備えてよい。
また、本発明は、以上のような車両拘束装置を備えたシャシーダイナモメータとして、前記ローラ上に車輪が載せ置かれた車両から前記左右方向に離れる方向を外側方向として、前記開口を覆う位置から、当該開口を覆わない前記開口の外側方向の位置まで前記床板の上を移動可能なローラカバーを備えたシャシーダイナモメータを提供する。ここで、前記車両拘束装置は、前記ローラカバー上に設置されている。
【0011】
このように車両拘束装置を左右方向に前記床板の上を移動可能なローラカバーの上に設置することにより、ローラカバーの移動によって、試験対象の自動車のトレッド幅に合わせた車両拘束装置の左右方向の位置調整を行うことができる。また、常時、ローラカバー上に車両拘束装置が設置されていても各種作業の妨げとはならないので、保管場所と設置場所の間で車両拘束装置を移動する作業が不要となる。
【0012】
また、このシャシーダイナモメータには、前記ローラカバー上の、当該ローラカバーの上に設置された前記車両拘束装置よりも外側方向の位置に設置された、少なくとも一部が開閉式の安全柵を備えてよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、より簡易な作業で自動車の拘束を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両拘束装置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両拘束装置の細部を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両拘束装置の細部を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両拘束装置で自動車を拘束したようすを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る安全柵を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両拘束装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
ここで、図1aはシャシーダイナモメータの上面を、図1bはシャシーダイナモメータの側面を示している。
図1a中に示すように前後左右方向を定めるものとして、シャシーダイナモメータは、上面が試験対象の自動車にとっての床板となる構造体1、床板の下に配置された前後左右の4つのローラ2を備え、各ローラ2は、その頂部が床板に設けられた前後左右の4つの開口部3のそれぞれから露出するように配置されている。
【0016】
また、シャシーダイナモメータは、4つの開口部3に各々対応する4つのローラカバー4を備えており、各ローラカバー4は、床板に設けたレール5に沿って、図1a、cに示すように、対応する開口部3より左右方向について外側となる位置と、ローラカバー4で対応する開口部3を覆う位置との間で左右に移動することができる。
【0017】
また、左前のローラ2は自動車の左前輪用のローラ2であり、右前のローラ2は自動車の右前輪用のローラ2であり、左後のローラ2は自動車の左後輪用のローラ2であり、右後のローラ2は自動車の右後輪用のローラ2であり、図1b、dに示すように、後輪用の2つのローラ2はその上の床板、開口部3、ローラカバー4と共に前後方向に移動可能であり、試験対象の自動車のホイールベースに合わせて、後輪用の2つのローラ2を後方に移動して、前輪用のローラ2と後輪用のローラ2との間の前後方向の間隔を調整することができる。ただし、後輪用の2つのローラ2に代えて、前輪用の2つのローラ2を前後方向に移動可能としても良いし、後輪用の2つのローラ2と前輪用の2つのローラ2の双方を前後方向に移動可能としても良い。
【0018】
そして、4つのローラカバー4のそれぞれの上には、車両拘束装置6が固定されている。
左前のローラカバー4の上の車両拘束装置6は自動車の左前輪の拘束に用いる左前輪用の車両拘束装置6であり、右前のローラカバー4の上の車両拘束装置6は自動車の右前輪の拘束に用いる右前輪用の車両拘束装置6であり、左後のローラカバー4の上の車両拘束装置6は自動車の左後輪の拘束に用いる左後輪用の車両拘束装置6であり、右後のローラカバー4の上の車両拘束装置6は自動車の右後輪の拘束に用いる右後輪用の車両拘束装置6であり、それぞれ、ローラカバー4と共に移動する。
【0019】
なお、図示を省略したが、各ローラカバー4の上には安全柵も設置されている。この安全柵については後述する。
ここで、左前輪用の車両拘束装置6と右前輪用の車両拘束装置6とは左右に対称な構成を備え、左前輪用の車両拘束装置6と左後輪用の車両拘束装置6とは前後に対称な構成を備え、右前輪用の車両拘束装置6と右後輪用の車両拘束装置6とは前後に対称な構成を備えている。
【0020】
以下、左前輪用の車両拘束装置6を代表例にとり車両拘束装置6について説明する。
図2a、b、cに、左前輪用の車両拘束装置6の構成を示す。
図2aは車両拘束装置6の左側面を、図2bは車両拘束装置6の後面を、図2cは車両拘束装置6の上面を表している。
図2a、b、cに示すように、車両拘束装置6は、右方に突出したハブ連結ブロック61、支持ブロック62、支持ブロック62を上下に昇降する昇降装置63を備えている。そして、支持ブロック62には、ハブ連結ブロック61を支持する球面軸受621が設けられている。
【0021】
ハブ連結ブロック61は、図2dに示すように、固定部611と、固定部611をベアリングを用いて回転可能に支持する軸支部612と、左端側が球面軸受621で支持ブロック62に支持される連結部613とを備えており、連結部613の右端は軸支部612に連結されている。自動車のホイールハブのハブボルトに螺合した延長ボルトを用いて、固定部611をホイールハブに固定することにより、車両拘束装置6は、ハブ連結ブロック61を介して自動車の車輪を回転可能に拘束することができる。
【0022】
ここで、ハブ連結ブロック61の固定部611の回転軸が左右方向となり、ハブ連結ブロック61の固定部611の回転中心の前後方向の位置が、左前輪用のローラ2の回転中心の前後方向の位置に一致するように左前輪用の車両拘束装置6はローラカバー4の上に配置されている。左前輪用の車両拘束装置6以外の車両拘束装置6も同様であり、ハブ連結ブロック61の固定部611の回転軸が左右方向となり、ハブ連結ブロック61の固定部611の回転中心の前後方向の位置が、その車両拘束装置6が対応する車輪用のローラ2の回転中心の前後方向の位置に一致するように配置されている。
【0023】
次に、図3に、支持ブロック62の構成を示す。
図3aは支持ブロック62の上面を、図3bは支持ブロック62の下面を、図3cは支持ブロック62の後面を、図3dは支持ブロック62の左面を、図3eは支持ブロック62を斜め上方から見たようすを、図3fは支持ブロック62を斜め下方から見たようすを、図3gは図3cのA-A線による断面端部を、図3hは図3dのB-B線による断面端部を表している。
【0024】
図示するように、支持ブロック62は、上述した球面軸受621、ベース622、ガイド部材623、可動プレート624、調整プレート625、4つの直動軸受626、減衰力を調整可能なダンパー627を備えている。
【0025】
ベース622の図3dのX1で示す前方の範囲を被支持部分と呼び、ベース622の図3dのX2で示す後方の範囲をステージ部分と呼ぶこととして、被支持部分には上下にベース622を貫通する孔である2つのガイド用貫通孔628と、上下にベース622を貫通する孔である一つの被支持用貫通孔629が設けられている。また、4つの直動軸受626は、ガイド用貫通孔628を通る直動軸に沿ったベース622の直動を案内するように2つのガイド用貫通孔628の上下に設けられている。
【0026】
また、ベース622のステージ部分は、被支持部分に連結する前面、上面、左面、右面で囲まれた下方と後方に開いた空洞を上面の下に有すると共に、上面には開口6221が設けられている。
【0027】
可動プレート624は、中央部分に下方に突出した舌辺部6241を備えており、ベース622のステージ部分の上面の開口6221に通した舌辺部6241をベース622のステージ部分の空洞中まで伸ばした形態で、ベース622のステージ部分の上面上に載置されている。
【0028】
ベース622のステージ部分の空洞内には、ダンパー627がベース622と舌辺部6241を左右方向に連結するように設けられている。また、ベース622のステージ部分の上面の開口6221の左右方向の大きさは、舌辺部6241の左右方向の大きさより大きく、可動プレート624は、ベース622に対して左右方向に所定範囲内でダンパー627の力を受けながら移動することができる。
【0029】
次に、ガイド部材623は、可動プレート624の前後に可動プレート624の左右方向の移動を案内するように、ベース622のステージ部分の上面の上に固定されている。
そして、可動プレート624の上面上に、調整プレート625が、調整プレート625に設けた4つの長孔を通したボルトで固定されている。また、この調整プレート625は支持ブロック62の他部よりも右方に突出した部分を有し、この突出した部分に、ハブ連結ブロック61を連結する球面軸受621が設けられている。
【0030】
したがって、球面軸受621で支持されたハブ連結ブロック61が自動車の車輪に連結された状態において、ハブ連結ブロック61と車輪は、ベース622に対して左右方向に所定範囲内でダンパー627で減衰されながら移動することができる。
【0031】
以上、支持ブロック62の構成について説明した。
図2に戻り、図2aに示すように、支持ブロック62のベース622の前方の被支持部分は昇降装置63の内部に挿入されている。
昇降装置63の筐体の内部には、上下方向に延びた2本のガイドポール631と、上下方向に延びたボールネジ軸632が設けられている。図2cの上方より見た配置で示すように、2本のガイドポール631は、ボールネジ軸632の後方において、ボールネジ軸632の左右に位置するように配置されている。
【0032】
また、昇降装置63の内部には、ボールネジ軸632を回転するモータ633と、支持ブロック62のベース622の被支持部分を支持すると共にボールネジ軸632の回転に伴って昇降する昇降ブロック634が設けられている。
【0033】
図4aの左方から見たようす、図4bの斜め上方から見たようすで示すように、2本のガイドポール631は、ベース622の2つのガイド用貫通孔628を貫通しており、ガイド用貫通孔628の上下に設けた4つの直動軸受626によって、ベース622の2本のガイドポール631に沿った上下の移動が案内される。
【0034】
昇降ブロック634は、ボールネジ軸632と共にボールネジを構成するボールネジ用ナット6341と、ボールネジナットの下部に連結された昇降台6342と、ゴムやバネや樹脂などで形成した緩衝部材6343とを備えている。
【0035】
昇降台6342は、図4aに示すように上部63421と、下部63422と、上部63421と下部63422とを上下に連結する前部63423を備えた、左右方向に見て右方に開いたコの字の形状の部材であり、ボールネジ軸632は、上部63421と下部63422とに設けた孔を上下に貫通している。なお、昇降台6342の上部63421と下部63422とに設けた孔はボールネジ軸632の径より大きく、昇降台6342とボールネジ軸632とは接触していない。
【0036】
昇降台6342の下部63422の上には、緩衝部材6343が配置され、ボールネジ軸632は、緩衝部材6343に設けた孔を上下に貫通している。なお、緩衝部材6343に設けた孔はボールネジ軸632の径より大きく、緩衝部材6343とボールネジ軸632とは接触していない。
そして、緩衝部材6343と昇降台6342の上部63421の間で、ボールネジ軸632はベース622の被支持用貫通孔629を貫通しており、ベース622は、緩衝部材6343の上に載せ置かれた形態で、緩衝部材6343を介して昇降台6342によって支持されている。また、ベース622と、昇降台6342の上部63421の間には上下方向の隙間があり、この隙間の範囲においてベース622は昇降台6342に対して上下に移動することができる。なお、ベース622の被支持用貫通孔629はボールネジ軸632の径より大きく、ベース622とボールネジ軸632とは接触していない。
【0037】
このような構成において、図4c、dに示すように、ボールネジ軸632を回転するとボールネジ用ナット6341に連結された昇降台6342が昇降し、これに伴い昇降台6342の緩衝部材6343上にベース622が支持されている支持ブロック62が昇降し、支持ブロック62の球面軸受621で支持されているハブ連結ブロック61が昇降する。
【0038】
また、上述した隙間の範囲においてベース622は昇降台6342に対して移動することができるので、ハブ連結ブロック61が自動車の車輪に連結された状態において、ハブ連結ブロック61と車輪は上下方向に所定範囲内で、緩衝部材6343による緩衝の作用を受けながら移動することができる。
【0039】
以上、車両拘束装置6の構成について説明した。
図5a、b、cに、車両拘束装置6を用いて試験対象の自動車を拘束したようすを示す。
自動車の試験を行う際には、試験対象の自動車のホイールベースに合わせて前後のローラ2間の間隔を調整し、ローラカバー4を開いてローラ2を露出させ、所定のセンタリング装置を用いるなどして、自動車の車輪の回転軸の前後方向の位置と、その車輪用のローラ2の回転軸の前後方向の位置とが一致するように、各ローラ2上に自動車の各車輪を位置決めする。
【0040】
そして、ハブ連結ブロック61の固定部611がホイールハブに連結できる位置に配置されるように、試験対象の自動車に合わせてハブ連結ブロック61の位置を調整し、ハブ連結ブロック61の固定部611をホイールハブに固定し自動車の拘束を行う。
【0041】
ハブ連結ブロック61の固定部611の上下方向の位置の調整は、昇降装置63で支持ブロック62を昇降することにより行う。また、ハブ連結ブロック61の固定部611の左右方向の位置の調整は、車両拘束装置6が設置されているローラカバー4の位置を左右方向に移動して調整することと、調整プレート625の可動プレート624への左右方向の固定位置を、調整プレート625の4つの長孔を用いて調整することにより行う。
【0042】
ここで、各車両拘束装置6は、ハブ連結ブロック61の固定部611の回転中心の前後方向の位置が、車両拘束装置6が対応する車輪用のローラ2の回転中心の前後方向の位置に一致するように配置されているので、ハブ連結ブロック61の固定部611の前後方向の調整は必要がない。
【0043】
また、このように各車両拘束装置6で試験対象の自動車を拘束してシャシーダイナモメータを運転して試験を行う場合、上述のようにハブ連結ブロック61は球面軸受621で支持されており、また、ハブ連結ブロック61は所定範囲内において左右にダンパー627で減衰されながら移動することができると共に所定範囲内において上下方向に緩衝部材6343による緩衝の作用を受けながら移動することができるので、加減速等に伴う自動車の本来の運動を大きく妨げることなく、自動車の各車輪の位置を各ローラ2の上の適正な位置に維持することができる。
【0044】
また、本シャシーダイナモメータによれば、前輪用のローラ2と後輪用のローラ2との間の前後方向の距離を可変とすると共に、車両拘束装置6のハブ連結ブロック61を上下に昇降可能に構成しているので、ホイールベースや車輪の大きさが異なる各種の自動車について、自動車の拘束および試験を行うことができる。
【0045】
次に、上述した各ローラカバー4の上に設置される安全柵について説明する。
図6は、左前のローラカバー4に設置される安全柵を示したものであり、ローラカバー4上には固定式の安全柵701と開閉式の安全柵702が設置されている。
【0046】
図6a1、a2は、安全柵702を閉じた状態の上面と左側面を表し、図6b1、b2は後方の安全柵702を回転させて開いた状態の上面と左側面を表している。
このような開閉式の安全柵702を設けることにより、シャシーダイナモメータを運転するときには、図6a1、a2に示すように、安全柵702を閉じて、車両拘束装置6や自動車の車輪やローラ2を、車両外側方向に対して遮蔽して作業者等の安全を確保しつつ、シャシーダイナモメータを停止した状態で車両拘束装置6を用いて車両の拘束を行う際には、図6b1、b2に示すように安全柵702を開いて、作業を安全柵702に妨げられずに行えるようにできる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態で示した車両拘束装置6の昇降装置63の昇降ブロック634の緩衝部材6343には、図7aに示すように荷重検出器801を設けるようにしてもよい。このようにすることにより車両拘束装置6と自動車の間で作用する負荷の荷重を検出することができる。
また、図7bに示すように、荷重検出器801を設けた緩衝部材6343を、ベース622の上下に設けると共に、油圧シリンダやエアシリンダ等の、ベース622に上下方向の所望の荷重を加えることのできる可変荷重装置802を昇降ブロック634に設け、荷重検出器801で自動車の間で作用する負荷の荷重を検出しながら、所望の荷重となるように、荷重を車輪に加えたり減じたりしてよい。
【0048】
ここで、以上の実施形態では、自動車の4つの車輪の全てを車両拘束装置6を用いて拘束した場合について示したが、試験対象の自動車が前輪駆動車や後輪駆動車などの駆動輪と従輪とを備えた自動車である場合には、駆動輪のみを車両拘束装置6を用いて拘束し、従輪については車輪にかけ回したベルトで車輪を拘束する拘束装置などを用いて拘束するようにしてもよい。
また、以上の実施形態において、車両拘束装置6に、車両拘束装置6自身やハブ連結ブロック61を前後方向に移動する移動機構を設けるようにしてもよい。
このような移動機構を設けることにより、シャシーダイナモメータにローラ2上に自動車の各車輪を位置決めするセンタリング装置が備えられていない場合などに、自動車の車輪の回転軸とローラ2の回転軸の前後方向の位置が多少ずれている状態でハブ連結ブロック61を車輪のホイールハブに固定して自動車を拘束した上で、ローラ2を前後に移動して、自動車の車輪の回転軸とローラ2の回転軸の前後方向の位置を一致させること等ができるようになる。
【0049】
また、以上の実施形態では、昇降台6342の昇降にボールネジによる機構を用いたが、昇降台6342の昇降は、送りネジやらせん軸を用いた平行移動機構や、リンクを用いた平行移動機構などの他の機構によって行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…構造体、2…ローラ、3…開口部、4…ローラカバー、5…レール、6…車両拘束装置、61…ハブ連結ブロック、62…支持ブロック、63…昇降装置、611…固定部、612…軸支部、613…連結部、621…球面軸受、622…ベース、623…ガイド部材、624…可動プレート、625…調整プレート、626…直動軸受、627…ダンパー、628…ガイド用貫通孔、629…被支持用貫通孔、631…ガイドポール、632…ボールネジ軸、633…モータ、634…昇降ブロック、701…安全柵、702…開閉式の安全柵、801…荷重検出器、802…可変荷重装置、6221…開口、6241…舌辺部、6341…ボールネジ用ナット、6342…昇降台、6343…緩衝部材、63421…上部、63422…下部、63423…前部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7