(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】釣情報管理システム
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20240206BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20240206BHJP
A01K 97/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A01K89/017
A01K89/015 A
A01K97/00 Z
(21)【出願番号】P 2020143239
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358483(US,A1)
【文献】特開2020-068736(JP,A)
【文献】特開2002-345380(JP,A)
【文献】特開2002-262736(JP,A)
【文献】米国特許第5511335(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0288990(US,A1)
【文献】米国特許第5524831(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
A01K 97/00 - 99/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備える釣情報管理システムであって、
該魚釣用リールと該釣竿とを含む釣具の使用時の該釣具の操作と操作環境に関する情報を検出する操作・環境情報検出部と、
該
釣具の操作に関する情報から魚の捕獲に関するヒット値を算出する演算部と、
前記操作・環境情報検出部により検出された検出値と該ヒット値
とを記憶する記憶部と、
該検出値と該ヒット値の少なくともいずれかを表示する表示部と、を備える
ものであり、
前記ヒット値は、前記釣糸に作用する張力と、前記スプールの逆回転の発生と、前記釣竿の曲がりと、前記釣竿の振動と、前記釣糸に取付けられた浮きの沈みと、前記釣糸又は該釣糸に取付けられた仕掛けの振動と、前記釣竿を立てる操作の発生と、前記魚釣用リールの巻き取りの発生に関する各検出値に基づき算出されることを特徴とする釣情報管理システム。
【請求項2】
前記釣具は、前記魚釣用リール、前記釣竿、前記釣糸、針、錘、疑似餌、浮き、天秤、又は撒餌容器を含む、請求項1に記載の釣情報管理システム。
【請求項3】
前記釣具の操作環境は、該釣具の使用開始時刻、使用終了時刻、該釣具の使用時の気象条件、又は該釣具の使用場所の少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載の釣情報管理システム。
【請求項4】
前記操作・環境情報検出部は、前記魚釣用リールの操作情報を検出するリール操作情報検出部と、前記釣竿の操作情報を検出する釣竿操作情報検出部と、を少なくとも含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項5】
前記魚釣用リールの操作情報は、リールのドラグ引出し量、リールのドラグ引出し速度、スプール回転開始点、スプール回転終了点、スプール径、スプールの最高回転数、スプールの回転速度履歴、ブレーキ設定
、バックラッシュ情報の少なくともいずれかを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項6】
前記釣竿の操作情報は、釣竿の速度、釣竿の加速度、釣竿の変形量、釣竿のモーション、釣竿投擲方法の少なくともいずれかを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項7】
前記魚の捕獲に関するヒット値は、リールのドラグ引出し量、又はリールのドラグ引出し速度の少なくともいずれかから算出される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項8】
前記魚の捕獲に関するヒット値は、釣竿のたわみ量、又は釣竿の操作量の少なくともいずれかから算出される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項9】
前記ヒット値は、機械学習を利用した評価方法により算出される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【請求項10】
前記ヒット値は、前記各検出値を加重平均して算出される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の釣情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備える釣情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、船釣り等、一般に深場の魚層を対象とした魚釣りを行う場合、魚釣用電動リール等(以下、「魚釣用リール」という)が広く使用されている。
【0003】
従来、この種の魚釣用リールには、正確な棚取りを行って釣果の向上を図るため、スプール等の回転数を基に釣糸の繰出し量や巻取り量を計測する糸長計測装置が装着されており、リール本体に設けた表示器に、斯かる糸長計測装置の計測値が表示されるようになっている。
【0004】
このような魚釣用リールとして、特許文献1には、リール本体の側板間に回転自在に支持されたスプールと、当該スプールに巻回される釣糸の巻取り操作時の巻取り速度を検出する巻取り速度検出手段と、リール本体に設けられ、当該巻取り速度検出手段の検出値を表示する表示器とを備えた魚釣用リールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の魚釣用リールでは、リール本体に設けられた表示器に巻取り速度の検出値を表示するものであり、これをリールの外部に送信するものではなかった。また、魚釣用リールの情報を表示できるとしても、魚釣にはルアー、魚釣に関する画像、魚釣の環境等様々な情報が存在し得るが、特許文献1に開示の魚釣用リールではあくまでリールの特定の情報を表示するものであり、本来釣人が欲するであろう情報から比べると極めて限定的なものとならざるを得ないという問題があった。他方で、釣人の釣への満足度を更に向上させるためには、魚釣に係る様々な情報を単に提示するだけでは必ずしも十分とは言えないという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、魚釣に関する様々な情報から算出された魚の捕獲に係る評価を算出することが可能な釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備える釣情報管理システムを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムは、釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備え、該魚釣用リールと該釣竿とを含む釣具の使用時の該釣具の操作と操作環境に関する情報を検出する操作・環境情報検出部と、該釣り具の操作に関する情報から魚の捕獲に関するヒット値を算出する演算部と、該検出値と該ヒット値を記憶する記憶部と、該検出値と該ヒット値の少なくともいずれかを表示する表示部と、を備えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記釣具は、前記魚釣用リール、前記釣竿、前記釣糸、針、錘、疑似餌、浮き、天秤、又は撒餌容器を含むように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記釣具の操作環境は、該釣具の使用開始時刻、使用終了時刻、該釣具の使用時の気象条件、又は該釣具の使用場所の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記操作・環境情報検出部は、前記魚釣用リールの操作情報を検出するリール操作情報検出部と、前記釣竿の操作情報を検出する釣竿操作情報検出部と、を少なくとも含むように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記魚釣用リールの操作情報は、リールのドラグ引出し量、リールのドラグ引出し速度、スプール回転開始点、スプール回転終了点、スプール径、スプールの最高回転数、スプールの回転速度履歴、ブレーキ設定、釣竿のモーション、バックラッシュ情報の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記釣竿の操作情報は、釣竿の速度、釣竿の加速度、釣竿の変形量、釣竿のモーション、釣竿投擲方法の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記魚の捕獲に関するヒット値は、リールのドラグ引出し量、又はリールのドラグ引出し速度の少なくともいずれかから算出されるように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおいて、前記魚の捕獲に関するヒット値は、釣竿のたわみ量、又は釣竿の操作量の少なくともいずれかから算出されるように構成される。
【発明の効果】
【0016】
上記実施形態によれば、魚釣に関する様々な情報から算出された魚の捕獲に係る評価を算出することが可能な釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備える釣情報管理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける魚釣り用リールを説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける魚釣り用リールを説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける釣竿を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける表示例を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける表示例を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100の基本構成について説明する。釣情報管理システム100は、魚釣用リール10を含み、一般的な魚釣用リールと同様、スプール11に釣糸31を巻き取り、スプール11から釣糸31が放出可能な状態にし、釣糸31に設定値以上の張力がかかった際に、スプール11が空転し(ドラグ機能)、当該張力の設定値を設定可能とし、またキャスト時のバックラッシュを防止するための制動力を調整可能に構成されている。
【0020】
また、魚釣用リール10は、上記操作の一部または全部を検出し、情報処理装置40に送信する。詳細は後述する。また、釣竿20は、一般的な釣竿と同様、魚釣用リール10を保持し、釣糸31を案内する。ユーザは、釣竿20を操作することで、釣糸31を必要に応じて操ることができる。釣竿20は、釣竿20の操作を検出し、情報処理装置40に送信する。詳細は後述する。
【0021】
次に、仕掛け30は、釣糸31の一端にとりつけられ、魚に食い付かせるための釣針を持つ。本実施例では、ルアー(疑似餌)32内に釣針をつけている。
その他、狙う魚や釣法によって各種仕掛けが用いられ、必要に応じてウキ、錘、撒餌容器、天秤などが用いられる。本実施形態では、仕掛けの一部に加速度センサなどの動作検出手段を備え、ルアー32の動作を情報処理装置40に送信する。
必要に応じて、電源、記憶手段、通信手段と共に防水処理を施し、仕掛けの一部に封入する。以降、リール10、釣竿20、仕掛け30を総称して、本タックルと呼ぶこととする。
【0022】
情報処理装置40は、本タックルを構成する各要素からの検出結果を集積し、魚の捕獲に関するヒット値を算出する。情報処理装置40は、例えば、携帯情報端末(スマートフォン)やパーソナルコンピュータ、ウェアラブルデバイス、魚群探知機等であってもよい。また、釣情報処理装置10は、魚釣用リール1若しくは釣竿21に組み込まれ、これらの一部を構成するようにしてもよい。若しくは、釣情報処理装置10の一部が、魚釣用リール1若しくは釣竿21に組み込まれるようにしてもよい。情報処理装置40の一部もしくは全部が、インターネット上のサーバ(クラウド)内にあっても良い。
【0023】
受信部41は、各タックルからの検出結果を受信可能である。通信方法は、無線通信、有線通信、超音波通信等、公知の各種方法が利用できる。この情報を利用し、演算部42によってヒット値を算出する。算出方法の詳細は後述する。算出結果は、表示部41に表示したり、記憶部44に保存したりすることで利用される。また、情報処理装置40は、情報取得部45を備えても良い。情報取得部45は、釣りをしている場所の環境を取得する。気温センサ、気圧センサなどの環境情報取得センサ、GPSなどの位置センサ、心拍センサなどの生体センサ、ユーザが画像を撮影可能なカメラ等で構成される。また、インターネットを通じて、釣りを行っている場所の気象データ(天候、気温、水深、潮回り)等の環境データを取得できるようにしても良い。
【0024】
次に、
図2及び
図3を用いてリール10の構成要素の詳細を説明する。
図2は、魚釣用リール10として両軸リールを用いた場合の基本構成を示す。スプール11は、釣糸31を巻回可能であり、操作部14によって正回転させると釣糸31を巻き取ることができる。クラッチ12は、操作部14との動力伝達の接続/解放を選択することができる。接続状態では操作部14による巻き取りが可能であり、開放状態ではスプール11を正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸31は放出可能となる。ドラグ装置13は、釣糸31に設定した張力以上の負荷がかかると、スプール11を空転させることができる。操作部14は、例えばハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ等の伝達機構によってスプール11に伝え、該スプール11を正回転することができる。なお、操作部
14は、レバー等の操作部材と、モータ等の動力源との組み合わせでもよい。また、制動装置15は、スプールに制動力を働かせることができる。これにより、キャスティング時のバックラッシュ発生を抑制する。この制動力は、制動力設定部151で設定できる。
【0025】
図3に、リール10のその他の構成を示す。リール10は、ユーザによる各種操作や、リールの状態を検出するための検出部19を有する。検出結果は演算部16に送られ、必要に応じて演算処理や、記憶部18で一時保存された後、通信部17を介して情報処理装置40に送信される。検出部19には、下記のものが挙げられる。コストや大きさなどの制限から、一部を省略してもよい。張力検出部191は、釣糸31に働く張力を検出する。釣糸31を案内するプーリーの回転軸に働く力をひずみセンサで検出するなど、従来公知の様々な技術によって実現できる。
【0026】
スプール回転検出部192は、スプール11の回転を検出する。フォトインタラプタを利用したインクリメンタル式の回転センサなど、公知の手段で実現できる。スプール11のスムーズな回転を実現するため、非接触式の回転センサが望ましい。巻き取り操作検出部193は、操作部14の回転を検出する。操作部14またはそれに連動して回転するギヤ等に回転センサを取付けることで実現できる。巻き取り操作検出部193と、スプール回転検出部192との差分をとることにより、ドラグ装置13によって空転した回転量を算出することができる。
【0027】
放出可能状態検出部194は、リール10から釣糸31が放出可能であるか否かを検出する。上述の両軸リールの例では、クラッチ12の接続状態を検出することで実現できる。クラッチの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。なお、リール10としてスピニングタイプのものを利用した場合は、釣糸をスプールに案内するラインガイドを保持するベールの開閉状態を検出すればよい。
【0028】
また、設定ドラグ力検出部195は、スプール11が空転する閾値となる設定張力を検出する。ドラグ装置内の摩擦部材に働くチャージ力を、圧力センサによって検出することなどにより実現可能である。設定制動力検出部196は、バックラッシュ抑制のための制動力の設定値を検出する。制動力設定部151にボリューム抵抗などを設けることにより実現できる。コンピュータにより制動力を設定するタイプの制動装置では、制動装置への指令値を取得することで設定制動力検出部196とすることができる。
【0029】
次に、
図4を参照して、釣竿20基本的構成要素の詳細を説明する。釣竿20は、ユーザによる各種操作や、釣竿20の状態を検出するための検出部21を有する。検出結果は演算部16に送られ、必要に応じて演算処理や、記憶部18で一時保存された後、通信部17を介して情報処理装置40に送信される。なお、この時の演算部16、通信部17、記憶部18は、有線接続などを利用することで、リール10の構成部材と共有してもよいし、釣竿20専用のものであってもよい。これらは、リール10内に配置しても良いし、釣竿20に配置してもよい。
【0030】
検出部21には、下記のものが挙げられる。コストや大きさなどの制限から、一部を省略しても良い。たわみ検出部211は、釣竿20のたわみ(曲がり)を検出する。釣竿20の各部にひずみセンサを設けることにより実現できる。また、方位検出部212は、地磁気の方向を検出することで、釣竿20の向いている方角を検出することができる。さらに、加速度検出部213は、釣竿20の並進方向の加速度を検出する。ピエゾ抵抗方式や静電容量検出方式などの、公知の加速度センサを利用することにより実現できる。また、速度検出部214は、釣竿20の角速度(回転方向の速度)を検出する。振動させた圧電素子の周波数変化を検知する方式など、公知のジャイロセンサを利用することにより実現できる。
【0031】
なお、直交する3軸それぞれの方位、加速度、角速度を検出する9軸モーションセンサと呼ばれるセンサを利用することで、方位検出部212、加速度検出部213、角速度検出部214とすることができる。以後、これらをモーションセンサと呼ぶ。これらの検出結果を演算することで、釣竿20の姿勢や動作を取得できる。なお、モーションセンサはリール10内に配置してもよい。
【0032】
ここで、本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムにおける操作・環境情報検出部22は、上述のリール内検出部19、釣竿内検出部21、仕掛けに取り付けた検出部、情報処理装置40内の情報取得部45の総称である。
【0033】
魚が釣針にかかると、本タックルには下記のような変化が発生することが多い。
(1)魚が釣針をくわえて泳ぐことにより、釣糸に張力が働く。
(2)釣糸に設定ドラグ以上の張力が働くと、ドラグ装置によってスプールが逆転する。
(3)釣竿が曲がる。
(4)釣竿が振動する。
(5)浮きが沈む(浮き釣りの場合)。
(6)仕掛け(釣糸)の少なくても一部が振動する。
【0034】
これらを、当該操作・環境情報検出部22によって検出することができる。張力検出部191が所定値以上の張力になることを検出したり、所定の周波数の振幅が所定値以上になることを検出することで、(1)を認識可能である。ドラグ装置の引き出し量や、引き出し速度が所定値以上になることを検出することで、上記(2)を認識可能である。また、たわみ検出部211によって、釣竿の曲がりが所定値以上になることを検出することで、(3)を認識可能である。また、モーションセンサやたわみ検出部211が、所定の振動数、振幅を検出することで、(4)を認識可能である。浮きに水圧センサや加速度センサを設けることで、(5)を認識可能である。仕掛け30に取り付けた加速度センサや、張力検出部191が所定の振動数、振幅を検出することで、(6)を認識可能である。
【0035】
また、魚が釣針にかかると、ユーザは下記のような操作を行うことが多い。
(7)釣竿を立てる操作を行う
(8)リールを巻き取る
(9)釣りあげたのちに写真撮影を行う
(10)心拍数や体温、発汗、血圧などの生体情報が変化する
【0036】
これらも、当該操作・環境情報検出部22によって検出することができる。モーションセンサの検出結果により、(7)を認識可能である。巻き取り操作検出部193が所定の条件になることを検出することで、(8)を認識可能である。カメラによる撮影の有無を検出することや、画像認識により撮影した画像に魚が写っているかを検出することにより、(9)を認識可能である。ユーザに取り付けた心拍センサなどの生体センサにより、(10)を認識可能である。また、リールまたは釣竿に、イベント記録用の操作ボタンを設け、ユーザが魚を釣った際に操作ボタンを押せるようにしてもよい。
【0037】
なお、これらの現象の一部は、魚を釣り上げたとき以外にも発生し得る。例えば、水中の岩などの障害物に針が掛かった(根がかりした)時や、仕掛けを投擲するときでも、上記の一部は発生する。一方、魚が掛かった際でも、その魚が小さすぎる場合などは、上記の一部は発生しないことがある。このため、それぞれの項目を個別に判定し、一覧表示することにより、ユーザは魚がかかったか否かを総合的に判定することができる。
【0038】
さらに、演算部32によって、上記(1)~(10)の項目の複数を複合的に評価し、一つの値として算出することで、指標としての有用性が高くなる。総合的に評価する一例として、操作・環境情報検出部22を構成する各検出部の種類に応じて信頼度を設定し、その信頼度に応じて重みづけをして加重平均をすることで、ヒット値を算出する方法がある。
【0039】
総合的に評価するその他の例として、事前に漁獲に関する教師データを多数用意して、ニューラルネットワークなどの機械学習によってヒット値を算出する方法がある。教師データは、漁獲をした際と漁獲をしなかった際のそれぞれにおける、各検出部の検出結果で構成される。この方法により、魚を捕獲した状態と、根がかりや投擲している状態を高い精度で区別することができる。特に、根がかりと魚信の区別は、竿操作と張力変化の相関によって判断するなど、複数の検出手段の組み合わせが有効であるため、単純な加重平均よりも高い精度での区別が可能である。一方、計算量が増大し、演算部の負荷は増える。
【0040】
なお、本実施例におけるヒット値は、魚を捕獲した判定結果の信頼性に応じた100分率表示としている。50%以上なら魚がかかったとみなし、この値を四捨五入したのちに合計することで、魚がかかった回数を推定することができる。また、単位時間(たとえば1時間)あたりに獲得したヒット値の合計を算出することにより、魚の釣れやすさの指標として利用することができる。
【0041】
上記の方法により算出したヒット値を、下記に示す表示方法により表示部34に表示することで、ユーザに有用な情報を伝えることができる。
図5(a)及び(b)に、ヒット値の経時変化を表示した例を示す。
図5(a)では、横軸の時間を秒単位でとり投擲終了からの経過時間を示す。縦軸にはヒット値をとっている。この例では、ルアーを1回投擲した際に、魚がどのタイミングで掛かったかを表示することができる。また、これに他の情報も同時に表示してもよい。例えば、放出した釣糸の長さも同時に表示しておく(図中に破線で示す)と、魚が掛かった場所(仕掛けを下に落とした場合は水深、水平方向に投擲した場合は距離)を特定する際の材料となる。
【0042】
図5(b)では、横軸の時間を1日単位や1ヶ月単位でとり、縦軸に単位時間あたりに取得したヒット値をとっている。この例では、魚が釣れる時期を把握することができる。
【0043】
図6では、ユーザの操作とヒット値の関係を表示した例を示す。
図6は、横軸にリールの巻き取り速度を、縦軸に単位使用時間あたりの獲得ヒット値を示す。一定期間内(たとえば一か月間)の使用履歴を集計することにより、このようなグラフが得られる。この例では、魚を釣るための最適な巻き取り速度を把握することができる。この例のように、使用条件ごと(たとえばルアーごと)にプロットを変えることで、各条件における巻き取り速度が把握できる。このように、ヒット値を算出し、釣具の操作と関連づけて表示することで、釣果を得るための最適な操作方法をユーザに表示することができる。
【0044】
次に、
図7では、釣りを行なった環境と、ヒット値の関係を表示した例を示す。
図7では、横軸に潮時(干潮と満潮の差を10等分表示したもの)を示し、縦軸に単位時間あたりに取得したヒット値をとっている。この例では、魚を釣るための最適な潮時を把握することができる。この例のように、釣り場ごとにプロットを変えることで、各釣り場における最適な潮時が把握できる。なお、横軸としては上記の例にとどまらず、水温、気温、風速、天候、時間帯、水深等、様々なものが考えられる。また、釣具の操作条件と、釣りを行なった環境を組み合わせ、ヒット値との関係を表示してもよい。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100について説明する。本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100は、魚釣用リール1、釣竿21、及び釣情報処理装置10を含むように構成される。
【0046】
より具体的には、本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100は、釣糸を巻回可能なスプール3を有する魚釣用リール1が取付けられた釣竿21を備え、該魚釣用リール1と該釣竿21とを含む釣具の使用時の該釣具の操作と操作環境に関する情報を検出する操作・環境情報検出部22と、該釣り具の操作に関する情報から魚の捕獲に関するヒット値を算出する演算部32と、該検出値と該ヒット値を記憶する記憶部33と、該検出値と該ヒット値の少なくともいずれかを表示する表示部34と、を備えるように構成される。
【0047】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100により、魚釣に関する様々な情報から算出された魚の捕獲に係る評価を算出することが可能な釣糸を巻回可能なスプールを有する魚釣用リールが取付けられた釣竿を備える釣情報管理システムを提供することが可能となる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該釣具は、前記魚釣用リール、前記釣竿、前記釣糸、針、錘、疑似餌、浮き、天秤、又は撒餌容器を含むように構成される。
【0049】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該釣具の操作環境は、該釣具の使用開始時刻、使用終了時刻、該釣具の使用時の気象条件、又は該釣具の使用場所の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0050】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該操作・環境情報検出部22は、該魚釣用リール1の操作情報を検出するリール操作情報検出部23と、該釣竿21の操作情報を検出する釣竿操作情報検出部24と、を少なくとも含むように構成される。
【0051】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該魚釣用リール1の操作情報は、リールのドラグ引出し量、リールのドラグ引出し速度、スプール回転開始点、スプール回転終了点、スプール径、スプールの最高回転数、スプールの回転速度履歴、ブレーキ設定、釣竿のモーション、バックラッシュ情報の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0052】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該釣竿21の操作情報は、釣竿の速度、釣竿の加速度、釣竿の変形量、釣竿のモーション、釣竿投擲方法の少なくともいずれかを含むように構成される。
【0053】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該魚の捕獲に関するヒット値は、リールのドラグ引出し量、又はリールのドラグ引出し速度の少なくともいずれかから算出されるように構成される。このようにして、適切な検出値に基づき、魚の捕獲に係る評価を算出することが可能となる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システム100において、当該魚の捕獲に関するヒット値は、釣竿のたわみ量、又は釣竿の操作量の少なくともいずれかから算出されるように構成される。このようにして、適切な検出値に基づき、魚の捕獲に係る評価を算出することが可能となる。
【0055】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10 魚釣用リール
11 スプール
12 クラッチ
13 ドラグ装置
14 操作部
15 制動装置
16 演算部
17 通信部
18 記憶部
19 検出部
20 釣竿
21 検出部
22 操作・環境情報検出部
23 リール操作情報検出部
24 釣竿操作情報検出部
25 送信部(送受信部)
30 仕掛け
31 釣糸
32 ルアー(疑似餌)
33 記憶部
34 表示部
40 情報処理装置
100 釣情報管理システム