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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】包装材料及びそれを含む容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20240206BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240206BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240206BHJP
   B65D 30/02 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
B65D75/58
B32B15/08 F
B65D65/40 D
B65D30/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020158023
(22)【出願日】2020-09-22
(62)【分割の表示】P 2016091997の分割
【原出願日】2016-04-28
(65)【公開番号】P2021001029
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】500333198
【氏名又は名称】ナチュラン・インターナショナル有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】松井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】足高 善也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 聡太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 重樹
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】西堀 宏之
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-30521(JP,A)
【文献】特開2015-6899(JP,A)
【文献】実開昭51-66578(JP,U)
【文献】実開平3-9832(JP,U)
【文献】特開2005-145490(JP,A)
【文献】特開2012-176540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/00-65/46, B65D67/00-79/02, B65D81/18-81/30, B65D30/00-33/38, B32B15/08-15/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔を含む積層体からなる包装材料であって、(1)被包装物に接触する側から第1樹脂層、第1アルミニウム箔、第2アルミニウム箔及び第2樹脂層を順に含み、(2)第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔の厚みは、互いに同一又は異なって、5~50μmであり、(3)第1アルミニウム箔の耐力が5~35.7N/mmであり、かつ、第2アルミニウム箔の耐力が5~35.7N/mmであり、(4)第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔がAl-Mn系アルミニウム箔であり、(5)被包装物が水素を含有する飲料である、
ことを特徴とする包装材料を含む容器であって、
(1)被包装物に接触する側が第1樹脂層となるように当該包装材料から構成されるパウチ、
(2)被包装物を前記パウチから吐出できるように前記パウチに設けられたスパウト
を有することを特徴とするスパウト付きパウチ。
【請求項2】
前記包装材料の第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔はともに軟質箔である、請求項1記載のスパウト付きパウチ。
【請求項3】
前記包装材料の第1樹脂層がポリエチレンであり、かつ、前記包装材料の第2樹脂層がポリエチレンテレフタレートである、請求項1又は2記載のスパウト付きパウチ。
【請求項4】
第1アルミニウム箔の耐力が5~21N/mmである、請求項1~3のいずれかに記載のスパウト付きパウチ。
【請求項5】
前記包装材料の第1樹脂層中に、アルミニウム粉末及びマグネシウム粉末の少なくとも1種が含まれている、請求項1~4のいずれかに記載のスパウト付きパウチ。
【請求項6】
被包装物が水素水である、請求項1~5のいずれかに記載のスパウト付きパウチ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のスパウト付きパウチに被包装物が充填されている製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパウチ等の袋体(収容部)として使用される包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム箔を含む包装材料で作製されたパウチは、例えば飲食品、医薬品、化粧品等の各種製品の容器として汎用されている。パウチは、ペットボトル、缶等と比較して、例えば1)持ち運びが容易である、2)老人及び子供でも握りやすい、3)半固体又はゲル状物であっても握力で容易に押し出せる、4)廃棄しやすい等の理由からその需要は高まりつつある。
【0003】
ところで、最近では、生体内における抗酸化作用を期待して、水素を含んだ飲料(以下、「水素水」という。)が開発され、商品化されている。こうした飲料も、例えばスパウト付きのパウチに封入して出荷され、消費者向けに販売されている。
【0004】
このようなパウチを構成するための包装材料としては、例えば内容物と接触する側(すなわち内面側)から、外気と触れる側(すなわち外面側)に向かって、低密度ポリエチレン(LDPE)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)の順に積層された包装材料が用いられている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、水素水を充填するためのパウチ容器を構成する外装シートとして、ポリエチレン/アルミニウム箔/PETの積層体を使用する包装材料も知られている(特許文献2)。
【0006】
上記のような水素水を収容するパウチに代表されるように、その包装材料として、特にガス透過性が低く、充填されたガスを漏れにくくするためのバリア層としてアルミ二ウム箔が必須とされている。そして、このようなパウチには、取扱い性(柔軟性)、経済性、軽量化等の観点より極めて薄いアルミニウム箔が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-189377
【文献】特開2015-30521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような薄いアルミニウム箔は、少なからず微細なピンホール(貫通孔)が存在している。一般的な飲料には、このようなピンホールが存在してもそれほど問題は生じないが、水素水等のように極めて微細なガス成分を液中に溶解させるような場合には、溶存水素(水素分子)がピンホールを通り抜けることができる結果、水素濃度の大幅な低下をもたらし、商品価値を下げてしまうという問題がある。
【0009】
しかも、アルミニウム箔を含む包装材料を用いてパウチを製作する場合、一般的には飲み口となるスパウトをパウチとの一体的な成形により設けられるが、その場合にスパウト周辺部の極めて小さな隙間から溶存水素が漏れる場合もある。
【0010】
一方、ピンホールが一切ない部分だけを用いるべく、アルミニウム箔のピンホールの有無を事前に検査し、ピンホールのない部分だけを切り出して利用する方法も考えられるが、その検査に時間・費用がかかるうえ、アルミニウム箔の歩留まりが大幅に低下するため、大量生産することができなくなる。また、前記のスパウト周辺からの漏れのないパウチを提供するために事前検査をする場合も同様の問題が起こる。
【0011】
従って、本発明の主な目的は、比較的構成しやすい層構造を有しつつ、水素ガス等の透過を効果的に抑制できる包装材料を提供することにある。また、本発明は、水素水等の収容に適した容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の積層構造を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の包装材料及びそれを含む容器に係る。
1. アルミニウム箔を含む積層体からなる包装材料であって、
(1)被包装物に接触する側から第1樹脂層、第1アルミニウム箔、第2アルミニウム箔及び第2樹脂層を順に含み、
(2)第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔の厚みは、互いに同一又は異なって、5~50μmであり、
(3)第2アルミニウム箔の耐力が5~50N/mmである、
ことを特徴とする包装材料。
2. 第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔はともに軟質箔である、前記項1記載の包装材料。
3. 第1樹脂層がポリエチレンであり、かつ、第2樹脂層がポリエチレンテレフタレートである、前記項1又は2記載の包装材料。
4. 第1アルミニウム箔と第2アルミニウム箔との間に接着剤層を有する、前記項1~3のいずれかに記載の包装材料。
5. 第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔は、互いに対向する面が1)それぞれツヤ面とケシ面、又は2)それぞれケシ面とツヤ面である、前記項1~4のいずれかに記載の包装材料。
6. 第1樹脂層中に、アルミニウム粉末及びマグネシウム粉末の少なくとも1種が含まれている、前記項1~5のいずれかに記載の包装材料。
7. 前記項1~6のいずれかに記載の包装材料を含む容器であって、
(1)被包装物に接触する側が第1樹脂層となるように当該包装材料から構成されるパウチ、
(2)被包装物を前記パウチから吐出できるように前記パウチに設けられたスパウト
を有することを特徴とするスパウト付きパウチ。
8. 被包装物が飲食品である、前記項7に記載のスパウト付きパウチ。
9. 飲食品が水素水である、前記項8に記載のスパウト付きパウチ。
10. 前記項7~9のいずれかに記載のスパウト付きパウチに被包装物が充填されている製品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的構成しやすい層構造を有しつつ、水素ガス等の透過を効果的に抑制できる包装材料を提供することができる。
【0015】
特に、特定のアルミニウム箔を2層重ねた層構造を有するため、たとえ一方のアルミニウム箔に微細なピンホールが存在していたとしても、他方のアルミニウム箔により水素ガス等の透過を抑制ないしは阻止することができる。しかも、スパウトを取り付ける場合も、スパウトの形状に効果的に追従できる結果、スパウト周辺部で起こり得る水素ガス等の漏れを抑止することができる。これにより、水素水等の密閉・収容に適した容器を提供することも可能となる。
【0016】
また、アルミニウム箔自体は、既存のアルミニウム箔を用いることができるので、比較的容易かつ確実に上記のような優れた包装材料を提供することができる。そのため、本発明の包装材料及び容器は、工業的規模での生産に適している。
【0017】
このような特徴を有する包装材料及び容器は、例えば飲食品(レトルト食品等を含む。)、医薬品、化粧品、日用品等の包装、収容、密封等に好適に用いることができる。特に、その高いバリア性等より、飲用水素水を収容するための包装材料、容器(特にスパウト付きパウチ)として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の包装材料の層構造の一例を示す。
図2】本発明の包装材料を用いて作製されたスパウト付きパウチの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.包装材料
本発明の包装材料は、アルミニウム箔を含む積層体からなる包装材料であって、
(1)被包装物に接触する側から第1樹脂層、第1アルミニウム箔、第2アルミニウム箔及び第2樹脂層を順に含み、
(2)第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔の厚みは、互いに同一又は異なって、5~50μmであり、
(3)第2アルミニウム箔の耐力が5~50N/mmである、
ことを特徴とする。
【0020】
本発明の包装材料の一例として、図1にその積層構造を示す。本発明の包装材料10は、被包装物に接触する側(内側)から順に第1樹脂層11、第1アルミニウム箔12、第2アルミニウム箔13及び第2樹脂層14が積層されている。
【0021】
本発明の包装材料では、これらの層以外の層も必要に応じて設けられていても良い。例えば、接着剤層、印刷層、オーバーコート層等が挙げられる。従って、各層間には、必要に応じて接着剤層(図示せず)が形成されていても良い。特に、第1アルミニウム箔12と、第2アルミニウム箔13との間に接着剤層が介在していることが好ましい。
【0022】
この包装材料を用いて容器(収容部)を構成する場合は、例えば第1ポリエステル系樹脂層11が内面として露出するように容器(例えば袋体)を作製すれば良い。例えば、袋体を作製する場合は、内容物の種類等に応じて例えばガゼット袋、スタンディング袋、三方袋等の各種のタイプの袋体を適宜選択することができる。
【0023】
また、本発明の包装材料を用いて容器を製造する場合、特に第1樹脂層11がヒートシール性を有する場合はそれを利用することによって容器を構成することができる。また、別途に接着剤(ヒートシール剤等)を用いることによって容器を構成することもできる。接着剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。以下においては、本発明の包装材料を構成し得る各層について説明する。
【0024】
(1)第1樹脂層
第1樹脂層を構成する樹脂としては、例えばフィルム、塗料等の形態で使用されているものであれば限定されない。例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)等のほか、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0025】
第1樹脂層は、単層又は複層から構成されている。複層から構成される場合は、2層又は3層以上が積層された構造を採用できる。複層の場合も、各層は、上記で例示した樹脂で構成されていることが好ましい。複層とする場合は、例えばa)各層を構成し得るフィルムを予め成形した後、これらを積層することにより複層を得る方法、b)樹脂成分を含む塗料から得られる塗膜を積層することにより複層を得る方法、c)前記フィルム及び塗膜とを組み合わせることによって複層を得る方法等のいずれも採用することができる。
【0026】
第1樹脂層の厚み(複層の場合は合計厚み)は限定的ではないが、通常は9~25μmの範囲内で適宜設定することが好ましい。この範囲内に設定することによって、例えば本発明の包装材料をスパウト付きパウチの袋体の材料として用いる場合等において、突き刺し強度に強く、かつ、スパウトの成形又は取り付けも容易になる。
【0027】
第1樹脂層では、少なくとも被包装物と接触する層(内壁層)に各種の添加剤が含まれていても良い。例えば、水素発生物質、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。例えば、被包装物が飲用水素水である場合は、少なくとも内壁層に水素発生物質が含まれていることが好ましい。水素発生物質を内壁層中に添加することにより、当該物質が水と反応することにより発生する水素ガスによって、被包装物(内容物)である飲用水素水の水素濃度の低下を効果的に抑制することができる。
【0028】
水素発生物質としては、水と反応することにより水素ガスを発生するものであれば限定されないが、本発明では高反応性という見地よりアルミニウム粉末及びマグネシウム粉末の少なくとも1種を好適に用いることができる。これらの粉末の平均粒径は、通常は1~30μm程度とすることが好ましい。このような粉末自体は公知又は市販のものを使用することができる。水素発生物質の含有量は、所望の水素補給量等に応じて適宜調節できるが、通常は内壁層中に1~20質量%含有させることにより水素を十分に供給することができる。
【0029】
また、内壁層中に水素発生物質が含まれている場合は、内壁層としてポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。LPDEを用いることによって、被包装物(内容物)である飲用水素水と水素発生物質が接触・反応しやすくなる結果、より効果的に水素ガスを発生させることができ、その水素ガスが飲用水素水に溶解することによって水素濃度の低下を効果的に抑制ないしは防止することが可能となる。
【0030】
内壁層に水素発生物質を含有させる方法は限定的でなく、例えば樹脂成分及び粉末状水素発生物質を含む混合物をフィルム状に成形する工程を含む方法を採用することができる。このようにして得られた水素発生物質含有フィルムを他の層と積層することによって本発明の包装材料を構成することができる。
【0031】
(2)第1アルミニウム箔
第1アルミニウム箔は、1枚の厚さが5~50μmである。アルミニウム箔の厚さが5μm未満であると内容物(例えば飲用水素水に含まれる水素)の漏れが増大してしまう。50μmを超える場合は、例えば本発明の包装材料からなる袋体にスパウトを形成した場合に第1樹脂層が破れたり、亀裂が入るおそれがある。
【0032】
第1アルミニウム箔の組成は、特に限定されないが、例えばAl-Mn系の「1N30」、「3004」のほか、高加工性、高バリア性を有するAl-Fe系の「8021」、「8079」等を好適に用いることができる。
【0033】
また、第1アルミニウム箔は、軟質に調質されている箔(軟質箔)であることが好ましい。アルミニウム箔が硬質箔であると、軟質箔を用いた場合に比べてスパウト成形時等にアルミニウム箔が割れやすくなるおそれがある。
【0034】
第1アルミニウム箔の耐力は特に制限されないが、通常は5~50N/mm程度の範囲内で適宜設定することができる。特に、後記の第2アルミニウム箔と同じアルミニウム箔も好適に使用することができる。
【0035】
第1アルミニウム箔は、これらの物性を備えていれば、公知又は市販のアルミニウム箔も使用することもできる。
【0036】
(3)第2アルミニウム箔
第2アルミニウム箔は、1枚の厚さが5~50μmである。アルミニウム箔の厚さが5μm未満であると内容物(例えば水素水に含まれる水素)の漏れが増大してしまう。50μmを超える場合は、例えば本発明の包装材料からなる袋体にスパウトを取り付けた場合に第1樹脂層が破れたり、亀裂が入るおそれがある。
【0037】
第2アルミニウム箔の組成は特に限定されないが、Al-Mn系の「1N30」、「3004」のほか、高加工性、高バリア性を有するAl-Fe系の「8021」、「8079」等を好適に用いることができる。
【0038】
また、第2アルミニウム箔は、軟質に調質されている箔(軟質箔)であることが好ましい。アルミニウム箔が硬質箔であると、軟質箔を用いた場合に比べてスパウト成形時等にアルミニウム箔が割れやすくなるおそれがある。
【0039】
第2アルミニウム箔の耐力は、5~50N/mm程度、好ましくは5~40N/mmの範囲内とする。これによって、例えばスパウト成型一体加工の際にもアルミニウム箔がスパウト形状に追従させることができる結果、被包装物(特に水素水に含まれる水素)の漏れを効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0040】
第2アルミニウム箔は、これらの物性を備えていれば、公知又は市販のアルミニウム箔も使用することもできる。
【0041】
第2アルミニウム箔と第1アルミニウム箔とを重ねて貼り合わせる。この際に、お互いの貼り合わせる面は、一方がケシ面、もう一方がツヤ面であることが好ましい。互いにツヤ面どうし又はケシ面どうしで重ね合わせると、加工適正が悪くなり、歩留まり低下の原因となることがある。
【0042】
第1アルミニウム箔と第2アルミニウム箔とを重ねる場合は、他の層を介在させることなく積層することもできるが、特に接着剤層を介して積層することが好ましい。これにより、両アルミニウム箔を強固に接合(積層)できるとともに、層間に生じ得る隙間をより確実になくすこともできる。接着剤層に用いる接着剤としては特に限定されず、例えばウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤等の合成樹脂系接着剤が挙げられる。このうち、ドライラミネート用接着剤等として使用されているものを好適に用いることができる。本発明では、特にウレタン系接着剤を好適に用いることができる。ウレタン系接着剤(特に2液硬化型ウレタン系接着剤)は、ドライラミネーションに適しているうえ、強靭な皮膜層を形成し、優れた耐久性を発揮するという点で他の接着剤よりも有利である。
【0043】
(4)第2樹脂層
第2樹脂層を構成する樹脂としては、フィルム、塗料等の形態で使用されているものであれば限定されず、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)等のほか、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0044】
第2の樹脂層は、少なくとも最外層としてPETを用いることが好ましい。最外層側にPETを用いると、耐光性、光沢性等が備わり、例えば各種製品のパッケージとしての印刷も可能となる。
【0045】
第2樹脂層は、単層又は複層から構成されている。複層から構成される場合は、2層又は3層以上が積層された構造を有する。複層の場合も、各層は、上記で例示した樹脂で構成されていることが好ましい。複層とする場合は、a)各層を構成し得るフィルムを予め成形した後、これらを積層することにより複層を得る方法、b)樹脂成分を含む塗料から得られる塗膜を積層することにより複層を得る方法、c)前記フィルム及び塗膜とを組み合わせることによって複層を得る方法等のいずれも採用することができる。
【0046】
第2樹脂層の厚み(複層の場合は合計厚み)は限定的ではないが、通常は9~25μmの範囲内で適宜設定することが好ましい。この範囲内に設定することによって、例えば本発明の包装材料をスパウト付きパウチの袋体の材料として用いる場合等において、突き刺し強度に強く、かつ、スパウトの成形もしやすくなる。
【0047】
第2樹脂層では、本発明の効果を妨げない範囲内において、各種の添加剤が含まれていても良い。例えば、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0048】
(5)その他の層
本発明では、本発明の効果を妨げない範囲内で他の層を必要に応じて設けることができる。例えば、接着剤層、オーバーコート層、印刷層等が挙げられる。
【0049】
特に、接着剤層としてはポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いて実施することができる。また、積層方法としても限定的でなく、例えばドライラミネート法、ウェットラミネート法、ヒートラミーネート法、押し出しラミネート法、グラビア印刷法、ロールコーティング法等が挙げられるが、より高い接着強度が得られるという点でドライラミネート法によることが好ましい。とりわけ、ウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法がより好ましい。
【0050】
2.包装材料の製造方法
本発明の包装材料は、各層を積層することにより製造することができる。積層方法は特に限定されず、例えばa)各層を構成し得るフィルムを予め成形し、それらを積層する方法、b)各層(第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔を除く。)を形成するための塗料を調製し、それらを第1アルミニウム箔及び/又は第2アルミニウム箔に塗布することにより得られる塗膜を積層する方法、c)前記a)及びb)を組み合わせる方法等を採用することができる。
【0051】
本発明では、前記のように、少なくとも第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔の積層は接着剤層を介した状態で実施されることが望ましい。特に、接着剤として2液硬化型ウレタン系接着剤を好適に用いることができる。
【0052】
3.容器
本発明は、上記包装材料を含む容器及びその容器に被包装物(内容物)が充填された製品(例えば、飲料、レトルト製品等)も包含する。この場合、容器の形態、種類、大きさ等は特に限定されないが、とりわけ下記のスパウト付きパウチに好適に本発明の包装材料を使用することができる。すなわち、(1)被包装物に接触する側が第1樹脂層となるように当該包装材料から構成されるパウチ、(2)被包装物を前記パウチから吐出できるように前記パウチに設けられたスパウトを有することを特徴とするスパウト付きパウチが好ましい形態の一つである。
【0053】
図2にスパウト付きパウチの一例を示す。このパウチは、本発明の包装材料を用いて作製された袋体21に対してスパウト24が固定されている。スパウト24は、ストロー部材23の上方開口部にスクリュー式キャップ22が備え付けられており、これにより開封・密閉を繰り返すことが可能となっている。袋体本体21が被包装物と接触する面は好ましくは粉末状水素発生物質を含む樹脂層(LDPE等)から構成されており、被包装物である溶媒(水等)と接触することによって水素を発生し、水素を溶媒に供給することができる。また、袋体本体はアルミニウム箔が二重になっているので、たとえ1枚のアルミニウム箔に微細なピンホールがあったとしても、もう一方のアルミニウム箔で確実に封鎖されるので、溶存水素が袋体本体を介して外部に放散されることを効果的に防ぐことができる。
【0054】
上記のようなスパウトは、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂から成形されているものを好適に用いることができる。このようなスパウトは、公知又は市販のものを使用することができる。また、スパウトは、パウチ容器(本発明の包装材料を用いて形成された袋体)に既知の接合方法により接合されて固定されていることが好ましい。
【0055】
また、その取り付け方法自体も、公知のスパウト付きパウチと同様にして実施することができる。スパウトの取り付けは、パウチ容器の具体的な形状は特に限定されず、内容物がスパウト以外からは出入りできない状態であることが好ましい。
【0056】
本発明の容器に充填できる被包装物(内容物)としては、例えば水、アルコール等の液体のほか、固体、半固体(ゲル状体、高粘性体等)のいずれも適用可能である。また、食品、医薬品、化粧品等の各種の製品にも適用することができる。特に、本発明では、その高い密閉性(バリア性)より水素水(飲用水素水)等にも好適に用いることができる。本発明における水素水は、水素を含有する飲料であれば良く、水単体に限られず、例えば果汁成分、炭酸水、乳成分のほか、甘味料等の食品添加物等が含まれているものも包含される。また、水素水の性状も限定されず、水のような液体のほか、半固体(ゲル状体、高粘性体等)等もすべて包含される。
【実施例
【0057】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0058】
実施例1
第1アルミニウム箔として厚さ6μmのアルミニウム箔(1N30材、幅1100mm、耐力2.52N/mm)1枚と、第2アルミニウム箔として厚さ6μmのアルミニウム箔(3004材、幅1100mm、耐力6.12N/mm)1枚とを用意し、2液硬化型ポリウレタン系接着剤(三洋化成工業株式会社製、製品名:ポリボンドAY)によりドライラミネーションを行い、アルミニウム箔積層体を作製した。これらのアルミニウム箔は、貼り合わせる面が、一方はケシ面、もう一方はツヤ面となるように貼り合わせた。
【0059】
次いで、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET:東洋紡績株式会社製消費名E5100)と、上述のアルミニウム箔積層体とを2液硬化型ポリウレタン系接着剤によりドライラミネーションを行い、「第1アルミニウム箔/第2アルミニウム箔/PET」からなる積層体を得た。この積層体について、ピンホール検出器(ニッカ電測株式会社:HSE525)を用いてピンホール数を調べたところ、0個/mであった。
【0060】
次いで、上述の積層体のPETとは反対側の面に、厚さ100μmのLDPE(タマポリ製)を2液硬化型ポリウレタン系接着剤によりドライラミネーションを用いて貼り合わせを行い、「LDPE/第1アルミニウム箔/第2アルミニウム箔/PET」からなるパウチ用包装材料を得た。なお、内壁層となるLDPEには、予め水素発生物質としてマグネシウム粉末(平均粒径5μm)を5質量%含有させた。
【0061】
上記のパウチ用包装材料を用いてスパウト付きスタンディングパウチを作製した。この包装材料のLDPEが内壁となるようにして縦17cm×横8.5cm×最大厚さ4.5cm(底面形状は略楕円形)のサイズとなるように常法に従ってLDPEどうしをヒートシールしながら開口部を有する筒状体を形成した。この開口部に直径15mm×長さ10cmでポリエチレン製スパウトを配置しながら開口部をヒートシールすることによって前記スパウトを固定した。このようにして容量約350ccのスパウト付きスタンディングパウチを作製した。
【0062】
上記パウチに水素水330ccを注入してスパウトのフタを閉じて密封した。パウチの作製にはティーイーディー社製充填機を用いた。当初充填直後の水素濃度は1880ppbであった。その後、85℃30分の加熱滅菌をし、これを24時間後に溶存水素濃度計(東亜ディーケーケー社製DH-35A)を用いて水素濃度を測定した。その結果、加熱殺菌後の水素濃度は1240ppbであった。本実施例及び以下の実施例及び比較例のアルミニウム箔の層構成及び水素濃度測定結果も併せて表1に示す。
【0063】
実施例2
1枚あたり厚さ5μmのアルミニウム箔(3004材、耐力5.1N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用したほかは、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、加熱殺菌後の内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は1210ppbであった。
【0064】
実施例3
1枚あたり厚さ50μmのアルミニウム箔(1N30材、耐力21N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用したほかは、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、加熱殺菌後の内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は1280ppbであった。
【0065】
実施例4
1枚あたり厚さ35μmのアルミニウム箔(3004材、耐力35.7N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用したほかは、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、加熱殺菌後の内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は1250ppbであった。
【0066】
比較例1
1枚あたり厚さ60μmのアルミニウム箔(1N30材、耐力25.2N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用したほかは、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は300ppbであった。なお、内層側のLDPEがスパウト付近で亀裂が発生していた。
【0067】
比較例2
アルミニウム箔として厚さ12μmのアルミニウム箔(純度99.9%、耐力5N/mm)を1枚のみ使用し、すなわち「PET/アルミニウム箔/LDPE」を作製して実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は720ppbであった。
【0068】
比較例3
1枚あたり厚さ4μmのアルミニウム箔(3004材、耐力4.08N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用した以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃
度は780ppbであった。
【0069】
比較例4
1枚あたり厚さ5μmのアルミニウム箔(1N30材、耐力2.1N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用した以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は780ppbであった。
【0070】
比較例5
1枚あたり厚さ50μmのアルミニウム箔(3004材、耐力51N/mm)2枚を第1アルミニウム箔及び第2アルミニウム箔として使用した以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は280ppbであった。
【0071】
比較例6
第1アルミニウム箔として厚さ5μmのアルミニウム箔(3004材、耐力5.1N/mm)1枚と、第2アルミニウム箔として厚さ60μmのアルミニウム箔(1N30材、耐力25.2N/mm2)1枚とを使用したほかは、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は920ppbであった。
【0072】
比較例7
第1アルミニウムとして厚さ5μmのアルミニウム箔(3004材、耐力5.1N/mm)1枚と、第2アルミニウムとして厚さ50μmのアルミニウム箔(3004材、耐力51N/mm)1枚とを使用した以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製して水素水を注入し、内容物の水素濃度を測定した。その結果、水素濃度は280ppbであった。
【0073】
【表1】
【0074】
以上の結果からも明らかなように、比較例では、いずれも24時間で3割以上もの水素濃度の大幅な低下が認められた。ちなみに、実際の製品では、製造から出荷及び消費者による消費まで数日~数ヶ月を要することから、さらに水素濃度に差が生じると考えられる。これに対し、実施例では、いずれも1200ppb以上という比較的高い水素濃度が維持されていることがわかる。
【0075】
このように、内壁層から順に第1樹脂層、第1アルミニウム箔、第2アルミニウム箔、第2樹脂層を含み、第1アルミニウム箔と第2アルミニウム箔は、それぞれの厚さが5μm以上50μm以下で少なくとも前記第2アルミニウム箔の耐力が5~50N/mmであるパウチ容器は、内容物に含有される水素が漏れることを十分に防ぐことができる。

図1
図2