(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】樋継手
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E04D13/08 301L
(21)【出願番号】P 2020166789
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄大
(72)【発明者】
【氏名】益城 大介
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011105538(DE,A1)
【文献】特開2016-079652(JP,A)
【文献】特開2009-121198(JP,A)
【文献】特開2011-094382(JP,A)
【文献】特開2008-156948(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148922(JP,U)
【文献】米国特許第4460469(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/08
E03B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の樋と下側の樋とを繋ぐ樋継手であって、
前記上側の樋および前記下側の樋に連結された筒状体と、
前記筒状体の内部に配置され、雨水に含まれる異物を捕捉する捕捉体と、
を備え、
前記捕捉体は、
貫通孔、および、雨水が通過する複数の通過孔が形成された捕捉部と、
前記貫通孔から上方に延びた筒状の縦筒部と、
前記縦筒部から側方に延びた筒状の第1横筒部と、
を有し、
前記第1横筒部には、側方または下方に開口したオーバーフロー孔が形成され、
前記オーバーフロー孔は、前記第1横筒部および前記縦筒部を通じて前記貫通孔に連通している、樋継手。
【請求項2】
前記捕捉部は、ドーム形状に形成されている、請求項1に記載された樋継手。
【請求項3】
前記第1横筒部には、指が引っ掛けられる引っ掛け部が設けられている、請求項1または2に記載された樋継手。
【請求項4】
前記第1横筒部は、前記縦筒部の上端部に設けられている、請求項1から3までの何れか1つに記載された樋継手。
【請求項5】
前記捕捉体は、前記縦筒部から側方に延びた筒状の第2横筒部を有し、
前記第2横筒部には、前記筒状体の中心からずれた位置にて側方または下方に開口した他のオーバーフロー孔が形成され、
前記他のオーバーフロー孔は、前記第2横筒部および前記縦筒部を通じて前記貫通孔に連通している、請求項1から4までの何れか1つに記載された樋継手。
【請求項6】
前記第1横筒部と前記第2横筒部とは、一直線上に配置されている、請求項5に記載された樋継手。
【請求項7】
前記貫通孔は、平面視における前記捕捉部の中心に形成されている、請求項1から6までの何れか1つに記載された樋継手。
【請求項8】
前記筒状体の内周面には、前記捕捉体が載置される段差部が形成されている、請求項1から7までの何れか1つに記載された樋継手。
【請求項9】
前記捕捉体は、前記捕捉部の最外周の端から外方に突出した突起を有し、
前記突起が前記段差部に載置されている、請求項8に記載された樋継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、上側の竪樋と下側の竪樋とを繋ぐ樋部材が開示されている。この樋部材は、上側の竪樋に連結された上側直管と、上側直管および下側の竪樋に連結された下側直管と、下側直管の内部に設けられた捕捉部材と、を備えている。
【0003】
捕捉部材は、雨水に含まれる固形物などの異物を捕捉する。捕捉部材は、複数の通過孔が形成された板状の本体部と、本体部の中心から上方に延びた円筒部とを有している。円筒部の内部には、上下に貫通した中心孔が形成されている。また、円筒部の側部には、径方向に貫通した複数の横孔が形成されている。
【0004】
雨水が捕捉部材を通過するときに、雨水に含まれる異物は捕捉部材に捕捉され、本体部上に溜まる。異物によって通過孔が塞がれてしまうと、雨水が流れることができなくなり、樋部材の内部に雨水が溜まってしまうおそれがある。しかし、上記樋部材によれば、通過孔が塞がれた場合、雨水は、円筒部の中心孔または横孔を通り、下側の竪樋に流れる。よって、樋部材の目詰まりは生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された樋部材では、捕捉部材の円筒部に横孔が形成されており、本体部に異物がある程度堆積すると、横孔は異物によって塞がれることがあった。また、捕捉部材の円筒部に形成された中心孔は、真上に向かって開口している。そのため、上側の竪樋から流れてきた雨水に含まれる異物によって塞がれ易かった。このように、上記樋部材では、通過孔が塞がれても雨水を流すことができるが、捕捉部材の円筒部に形成された中心孔および横孔が異物によって塞がれ易いため、目詰まりを防止する観点から、改善の余地があるものであった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上側の樋と下側の樋とを繋ぐ樋継手であって、雨水に含まれる異物を捕捉可能であるとともに、目詰まりが生じ難い樋継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樋継手は、上側の樋と下側の樋とを繋ぐ樋継手である。前記樋継手は、前記上側の樋および前記下側の樋に連結された筒状体と、前記筒状体の内部に配置され、雨水に含まれる異物を捕捉する捕捉体と、を備えている。前記捕捉体は、貫通孔、および、雨水が通過する複数の通過孔が形成された捕捉部と、前記貫通孔から上方に延びた筒状の縦筒部と、前記縦筒部から側方に延びた筒状の第1横筒部と、を有する。前記第1横筒部には、側方または下方に開口したオーバーフロー孔が形成されている。前記オーバーフロー孔は、前記第1横筒部および前記縦筒部を通じて前記貫通孔に連通している。
【0009】
例えば特許文献1に開示された樋部材では、捕捉部材の本体部から円筒部が上方に延びており、本体部と円筒部とは連続している。そのため、捕捉部材の本体部で捕捉された異物は、本体部から円筒部に亘って付着されることがあり得るため、円筒部に形成された横孔が異物で塞がれることがあったと推察される。前記樋継手によれば、雨水に含まれる異物は、捕捉部で捕捉され、捕捉部上に溜まる。捕捉部の通過孔が異物で塞がれたとき、筒状体内に雨水が溜まり、第1横筒部に形成されたオーバーフロー孔から下側の樋に向かって雨水が流れる。第1横筒部に形成されたオーバーフロー孔は、側方または下方に開口しているため、上側の樋から流れる雨水に含まれる異物によって塞がり難い。また、オーバーフロー孔は、第1横筒部に形成されており、第1横筒部を介して捕捉部および縦筒部から離れた位置に形成されているため、捕捉部上に溜まった異物で塞がり難い。したがって、通過孔が異物で塞がれて、筒状体内に雨水が溜まった場合であっても、オーバーフロー孔を通じて下側の樋に雨水を流すことができる。また、捕捉部は、平面視において第1横筒部と重なる部分を有する。上側の樋から流れる雨水に含まれる異物は、第1横筒部に遮られるため、捕捉部の上記重なる部分が異物で塞がり難い。よって、捕捉部の全体が異物で塞がり難くすることができる。以上のことから、樋継手の目詰まりが生じ難い。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記捕捉部は、ドーム形状に形成されている。
【0011】
上記態様によれば、捕捉部の形状をドーム形状とすることで、捕捉部の表面積を大きくすることができる。よって、より多くの異物を捕捉部で捕捉することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1横筒部には、指が引っ掛けられる引っ掛け部が設けられている。
【0013】
上記態様によれば、第1横筒部の引っ掛け部に作業者の指を引っ掛けることで、捕捉体を筒状体から取り外し易い。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1横筒部は、前記縦筒部の上端部に設けられている。
【0015】
上記態様によれば、縦筒部の上端部に、オーバーフロー孔が形成された第1横筒部が設けられ、縦筒部の下端部に、捕捉部が設けられている。よって、オーバーフロー孔と捕捉部との距離を、縦筒部の軸方向の長さ分、確保することができる。したがって、オーバーフロー孔が、捕捉部上に溜まった異物でより塞がり難くすることができる。更に、縦筒部の上端部の高さまで、雨水をより多く溜めることができるため、上側の樋に雨水が逆流し難くすることができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記捕捉体は、前記縦筒部から側方に延びた筒状の第2横筒部を有している。前記第2横筒部には、前記筒状体の中心からずれた位置にて側方または下方に開口した他のオーバーフロー孔が形成されている。前記他のオーバーフロー孔は、前記第2横筒部および前記縦筒部を通じて前記貫通孔に連通している。
【0017】
上記態様によれば、捕捉部の通過孔が異物で塞がれた状態で、雨水が樋継手に勢いよく流れてきた場合であっても、第1横筒部と第2横筒部との両方に形成されたオーバーフロー孔および他のオーバーフロー孔を通じて、より多くの雨水を下側の樋に流すことができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1横筒部と前記第2横筒部とは、一直線上に配置されている。
【0019】
上記態様によれば、平面視において縦筒部を挟んだ両側に、オーバーフロー孔および他のオーバーフロー孔を配置することができる。よって、筒状体内に溜まった雨水を、縦筒部を挟んだ両側のオーバーフロー孔および他のオーバーフロー孔から雨水を下側の樋に流すことができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記貫通孔は、平面視における前記捕捉部の中心に形成されている。
【0021】
上記態様によれば、平面視において、貫通孔の周囲に捕捉部が配置されるため、貫通孔の周囲に通過孔を配置することができる。よって、貫通孔の周囲に配置された通過孔から雨水を下側の樋に流すことができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記筒状体の内周面には、前記捕捉体が載置される段差部が形成されている。
【0023】
上記態様によれば、段差部に捕捉体を載置するという簡単な手段で、筒状体内に捕捉体を配置することができる。また、段差部に捕捉体が載置されている状態で筒状体内に配置されているため、捕捉体を筒状体から取り出し易い。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記捕捉体は、前記捕捉部の最外周の端から外方に突出した突起を有している。前記突起が前記段差部に載置されている。
【0025】
上記態様によれば、捕捉体の突起が段差部に載置されるため、捕捉部に形成された通過孔が段差部で塞がり難くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、雨水に含まれる異物を捕捉可能であるとともに、目詰まりが生じ難い樋継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る樋継手が設けられた雨樋を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る樋継手の正面図であり、筒状体が収縮した状態を示す図である。
【
図3】実施形態に係る樋継手の正面図であり、筒状体が伸長した状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係る樋継手の正面断面図であり、筒状体が伸長した状態を示す図である。
【
図5】
図4の樋継手において、下側継手を筒状部材に対して上方にスライドした状態を示す図である。
【
図6】上側突起および下側突起を示す図であり、上側継手および下側継手の中心軸の方向から見た図である。
【
図7】
図3のVII-VIIにおける筒状部材およびストッパー部材の断面図である。
【
図10A】捕捉体の第1横筒部および第2横筒部を示す平面図である。
【
図10B】捕捉体の第1横筒部を、第1横筒部の中心軸の方向から見た図である。
【
図11】樋継手を上側樋および下側樋に連結する手順を模式的に示した正面図である。
【
図12】樋継手を上側樋および下側樋に連結する手順を模式的に示した正面図である。
【
図13】樋継手を上側樋および下側樋に連結する手順を模式的に示した正面図である。
【
図14】樋継手を上側樋および下側樋に連結する手順を模式的に示した正面図である。
【
図15】樋継手を上側樋および下側樋から取り外す際の途中の状態を模式的に示した正面図である。
【
図16】他の実施形態に係る樋継手の雨水排出部を示す正面断面図である。
【
図17】他の実施形態に係る樋継手の雨水排出部を示す平面図である。
【
図18】他の実施形態に係る樋継手の雨水排出部を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る樋継手の一実施形態について説明する。ここで説明される一実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0029】
図1は、本実施形態に係る樋継手10が設けられた雨樋1を示す正面図である。
図1に示すように、樋継手10は、雨樋1に設けられる部材である。雨樋1は、例えば建物8に設置されるものである。ここで、建物8には、例えば住宅、商業施設、工場、校舎、倉庫および駅のホームなどが含まれる。
【0030】
雨樋1は、建物8の屋根8aなどに流れる雨水を集めて、地面や地下に導くものである。雨樋1は、例えば軒樋2と、集水器3と、呼び樋4と、竪樋5とを備えている。軒樋2は、建物8の軒先に沿って横に延びたものである。集水器3は、軒樋2の途中部分に設けられている。呼び樋4は、集水器3から下方に延びた縦管4aと、縦管4aの下端から下方に向かって斜めに延びた傾斜管4bとを有する。竪樋5は、呼び樋4から地面に向かって下方に延びている。ここでは、建物8の屋根8aを流れる雨水は、軒樋2に流れ、集水器3に集められる。集水器3に集められた雨水は、呼び樋4および竪樋5を通り、地面または地下に排出される。以下の説明では、雨樋1の軒樋2側を上流側といい、竪樋5側を下流側という。
【0031】
本実施形態では、樋継手10は、竪樋5に着脱可能に設けられるものである。そのため、樋継手10は竪樋5の一部であり得る。本実施形態では、竪樋5は、上側の樋6aと、下側樋6bとを有する。以下、上側の樋6aのことを上側樋6aともいい、下側の樋6bのことを下側樋6bともいう。上側樋6aと下側樋6bは、互いに離れた位置に配置され、ここでは上下に離間している。詳しくは、上側樋6aは呼び樋4(詳しくは傾斜管4b)に接続されている。下側樋6bは、上側樋6aの下方において、平面視で上側樋6aと重なる位置に配置されている。ここでは、上側樋6aの中心軸と、下側樋6bの中心軸とは一致する。上側樋6aと下側樋6bの内径は同じであるが、異なっていてもよい。また、上側樋6aと下側樋6bの外径は同じであるが、異なっていてもよい。
【0032】
本実施形態に係る樋継手10は、竪樋5の上側樋6aと下側樋6bとの間に配置されるものであり、かつ、上側樋6aと下側樋6bとを繋ぐものである。次に、本実施形態に係る樋継手10について説明する。
図2、
図3は、樋継手10の正面図であり、それぞれ筒状体11が収縮、伸長した状態を示す図である。
図4、
図5は、それぞれ樋継手10の正面断面図である。
図4は、筒状体11が伸長した状態を示す図であり、
図5は、
図4の下側継手22を上方にスライドさせた状態を示す図である。
【0033】
図4に示すように、樋継手10は、筒状体11と、捕捉体12とを備えている。筒状体11は、竪樋5の上側樋6aおよび下側樋6bに着脱可能に連結されている。本実施形態では、
図2および
図3に示すように、筒状体11は上下に伸縮可能に構成されている。例えば、
図2に示すような収縮した状態の筒状体11を、上側樋6aと下側樋6bとの間に差し込む。その後、
図4に示すように、筒状体11を伸長させることで、樋継手10を上側樋6aおよび下側樋6bに連結させることができる。
【0034】
本実施形態では、筒状体11は、筒状部材20と、上側継手21と、下側継手22とを有している。筒状部材20は、筒状、詳しくは上下に延びた円筒形状に形成されている。筒状部材20は、上側樋6aと下側樋6bとの間に配置される。本実施形態では、筒状部材20の軸方向(ここでは上下方向)の長さL11は、上側樋6aの下端から下側樋6bの上端までの距離L12以下である。例えば筒状部材20の内径は、上側樋6a(または下側樋6b)の内径と同じであるが、異なっていてもよい。また、筒状部材20の外径は、上側樋6a(または下側樋6b)の外径と同じであるが、異なっていてもよい。
【0035】
上側継手21は、竪樋5の上側樋6aに接続されるものである。上側継手21は、筒状部材20にスライド可能に接続されつつ、上側樋6aにもスライド可能に接続されるものである。上側継手21は、筒状、詳しくは円筒形状に形成されている。本実施形態では、上側継手21は、筒状部材20に嵌め込まれる部材であるが、筒状部材20に嵌め込む部材であってもよい。また、上側継手21は、上側樋6aに嵌め込まれる部材であるが、上側樋6aに嵌め込む部材であってもよい。上側継手21は、筒状部材20に対して周方向に回転可能であり、かつ、上側樋6aに対して周方向に回転可能に構成されている。
【0036】
下側継手22は、竪樋5の下側樋6bに接続されるものである。下側継手22は、上側継手21と実質的に同様な構成を有している。ここでは、下側継手22は、筒状部材20にスライド可能に接続されつつ、下側樋6bにもスライド可能に接続される。下側継手22は、筒状、詳しくは円筒形状に形成されている。下側継手22は、下側樋6bおよび筒状部材20に対して嵌め込まれる部材であるが、下側樋6bおよび筒状部材20に対して嵌め込む部材であってもよい。下側継手22は、下側樋6bおよび筒状部材20に対して周方向に回転可能に構成されている。
【0037】
本実施形態では、上側継手21と下側継手22は、同じ形状に形成されている。そのため、上側継手21および下側継手22は、同じ金型で作製される。上側継手21は、下側継手22を上下反転させたものである。上側継手21と下側継手22とは、互いに上下対称に配置されている。
【0038】
図3に示すように、上側継手21には、上端から上方に突出した上側突起25が設けられている。下側継手22には、下端から下方に突出した下側突起26が設けられている。上側突起25および下側突起26のそれぞれの数は、3つである。しかしながら、上側突起25および下側突起26のそれぞれの数は、2つ以上であれば特に限定されない。
【0039】
図6は、上側突起25(または下側突起26)を示す図であり、上側継手21(または下側継手22)の中心軸A11、A12の方向から見た図である。本実施形態では、
図6に示すように、3つの上側突起25は、上側継手21における中心軸A11よりも上側継手21の径方向の一方側半分21a(
図6の紙面上では、上側半分)の上端に設けられている。同様に、3つの下側突起26は、下側継手22における中心軸A12よりも下側継手22の径方向の一方側半分22aの下端に設けられている。一方、上側継手21および下側継手22における中心軸A11、A12よりも径方向の他方側半分21b、22b(
図6の紙面上では、下側半分)の上端、下端には、それぞれ上側突起25および下側突起26は設けられていない。本実施形態では、筒状部材20に対して上側継手21および下側継手22を周方向に回転させることで、筒状部材20に対する上側突起25および下側突起26の位置が変更される。
【0040】
図4に示すように、上側継手21の内周面には、シール部材27a、および、位置決めシール部材27bが設けられている。詳細には、シール部材27aは、上側継手21の上流側の端部の内周面に設けられている。筒状部材20に対して上側継手21が上方にスライドして、上側樋6aに嵌め込まれたとき、シール部材27aが上側樋6aの外周面に接触する。そのため、上側継手21と上側樋6aとのシール性が向上する。
【0041】
位置決めシール部材27bは、上側継手21の下流側の端部の内周面に設けられ、シール部材27aよりも下方に配置されている。位置決めシール部材27bは、筒状部材20と上側継手21とのシール性を向上させると共に、筒状体11が伸長しているときの上側継手21の位置決めを行う。本実施形態では、筒状部材20の上流側の端部の外周面には、環状の位置決め溝31が形成されている。筒状部材20に対して上側継手21を上方にスライドさせることで、位置決め溝31に位置決めシール部材27bが嵌まる。このことで、上側継手21の移動が規制されるため、筒状体11の伸長時における、筒状部材20に対する上側継手21の位置が決定する。
【0042】
下側継手22の内周面には、シール部材28a、および、位置決めシール部材28bが設けられている。シール部材28aは、下側継手22の下流側の端部の内周面に設けられている。筒状部材20に対して下側継手22が下方にスライドして、下側樋6bに嵌め込まれたとき、シール部材28aが下側樋6bの外周面に接触する。そのため、下側継手22と下側樋6bとのシール性が向上する。
【0043】
位置決めシール部材28bは、下側継手22の上流側の端部の内周面に設けられ、シール部材28aよりも上方に配置されている。位置決めシール部材28bは、筒状部材20と下側継手22とのシール性を向上させると共に、筒状体11が伸長しているときの下側継手22の位置決めを行う。本実施形態では、
図5に示すように、筒状部材20の下流側の端部の外周面には、環状の位置決め溝32が形成されている。筒状部材20に対して下側継手22を下方にスライドさせることで、
図4に示すように、位置決め溝32に位置決めシール部材28bが嵌まる。このことで、下側継手22の移動が規制されるため、筒状体11の伸長時における、筒状部材20に対する下側継手22の位置が決定する。
【0044】
本実施形態では、シール部材27a、28aおよび位置決めシール部材27b、28bの形状は、それぞれスライド部材21、22の周方向に沿ったリング状である。ただし、シール部材27a、28aおよび位置決めシール部材27b、28bは、スライド部材21、22の周方向に対して一部が途切れている、すなわち不連続であってもよい。シール部材27a、28aおよび位置決めシール部材27b、28bを形成する材料は特に限定されないが、例えばゴムである。
【0045】
図3に示すように、樋継手10は、ストッパー部材33を備えている。ストッパー部材33は、筒状体11が伸長した状態のときに使用されるものであり、筒状部材20に着脱可能に取り付けられるものである。本実施形態では、ストッパー部材33は、上側継手21よりも下方に位置するように、筒状部材20の外周面に着脱可能に取り付けられる。ストッパー部材33は、筒状体11が収縮しているときには使用されない。なお、
図5では、ストッパー部材33は取り外されている。本実施形態では、ストッパー部材33は、上側継手21の下端に当接可能な上端33aと、下端33bとを有している。
【0046】
本実施形態では、筒状体11を竪樋5の上側樋6aと下側樋6bとの間に配置して、筒状部材20に対して上側継手21を上方にスライドさせたとき、上側継手21が自重で下方に移動することがあり得る。ここで、ストッパー部材33が筒状部材20に取り付けられることで、ストッパー部材33の上端33aに上側継手21の下端が当接する。このことで、筒状部材20に対して上側継手21が下方にスライドすることを規制する。
【0047】
ストッパー部材33の形状は特に限定されない。
図7は、
図3のVII-VII断面における筒状部材20およびストッパー部材33の断面図である。本実施形態では、
図7に示すように、ストッパー部材33は、平らな板状の部材を撓ませた形状に形成されており、筒状部材20の外周面に沿った形状を有している。筒状部材20は、上述のように円筒形状に形成されている。ストッパー部材33は、筒状部材20の外周面に沿ったC字状に形成されている。また、ストッパー部材33は、可撓性を有している。ストッパー部材33は、可撓性を有する部材、例えばPVC(硬質塩化ビニル樹脂)によって形成されている。例えばPVC製のパイプをC字状になるように切断することで、ストッパー部材33を作製することができる。
【0048】
本実施形態では、
図3に示すように、筒状部材20にストッパー部材33が取り付けられることで、上側継手21の下端が、ストッパー部材33の上端に当接する。このことで、上側継手21は、自重によって下方にスライドしようとするとき、ストッパー部材33によって移動が規制される。
【0049】
本実施形態では、筒状部材20において、軸方向(ここでは上下方向)の中心部分の外周面には、外方に向かって突出した外周突起20aが形成されている。この外周突起20aは、筒状部材20の周方向に沿った環状のものである。ただし、外周突起20aの形状は、環状に限定されず、例えば外周突起20aは、周方向に沿って不連続に形成されてもよい。ストッパー部材33が筒状部材20に取り付けられた状態において、外周突起20aは、ストッパー部材33よりも下方に配置される。そのため、ストッパー部材33は、下端33bが外周突起20aに当接することで、下方への移動が規制される。
【0050】
本実施形態では、
図4に示すように、樋継手10は、捕捉体12を支持する支持部材35を備えている。支持部材35は、筒状部材20の内部に固定され、捕捉体12を支持するものである。詳しくは後述するが、支持部材35は、捕捉体12が載置されることで、捕捉体12を支持する。ここでは、支持部材35は、筒状部材20と別体であるが、一体のものであってもよい。支持部材35は、筒状部材20に嵌め込み固定されている。捕捉体12は、捕捉体12の上端が筒状部材20の上端よりも下方に位置し、かつ、捕捉体12の下端が筒状部材20の下端よりも上方に位置するように、支持部材35に支持されている。
【0051】
図8A、
図8Bは、それぞれ支持部材35の正面図、平面図である。
図8Aおよび
図8Bに示すように、支持部材35は、支持筒部36と、フランジ37とを有している。
図4に示すように、支持筒部36は、筒状部材20に嵌め込まれるものであり、筒状部材20の内周面に沿った円筒形状に形成されている。支持筒部36が筒状部材20に嵌め込まれることで、筒状部材20の内周面には、支持筒部36によって段差部38が形成される。この段差部38に捕捉体12が載置される。
【0052】
図8Aに示すように、フランジ37は、支持筒部36の下端から外方に突出している。
図4に示すように、支持部材35を筒状部材20に取り付けたとき、フランジ37は、筒状部材20に接触した状態で、筒状部材20よりも下方に配置される。このフランジ37が筒状部材20の下端に接触することで、筒状部材20に対する支持部材35の位置が決定する。なお、支持部材35を筒状部材20に固定する方法は特に限定されない。ここでは、支持部材35の支持筒部36と筒状部材20との間に接着剤を塗布することで、支持部材35を筒状部材20に固定することができる。
【0053】
次に、捕捉体12について説明する。例えば雨水には、異物が含まれることがあり得る。ここで、異物は、水とは異なる成分のものであり、例えば固形物のことである。異物には、例えば落ち葉、砂、紙、空き缶、ビニールなどのゴミが含まれる。異物には、例えば鳥や虫などの死骸が含まれる。また、異物には、鋭利な物が含まれ得る。この鋭利な物とは、先が尖った落ち葉、ガラスの破片、刃物の欠片などがあり得る。雨水に含まれる異物は、雨水と共に竪樋5内を流れる。捕捉体12は、竪樋5を流れる雨水に含まれる異物を捕捉するものである。
【0054】
図4に示すように、捕捉体12は、筒状体11の内部に配置される。詳しくは、捕捉体12は、筒状体11の筒状部材20の内部に配置される。上述のように、筒状体11において、筒状部材20には、支持部材35が嵌め込まれている。捕捉体12は、支持部材35(詳しくは支持筒部36の上端で形成された段差部38)に載置されることで、筒状部材20の内部に配置される。
【0055】
捕捉体12は、捕捉部40と、雨水排出部50とを有している。捕捉部40は、上側樋6aから下側樋6bに流れようとする雨水に含まれる異物を捕捉するものである。捕捉部40の形状は特に限定されない。ここでは、捕捉部40は、内部に空間を有し、かつ、上方に凸となるドーム形状に形成されている。
図9は、捕捉体12の捕捉部40を示す平面図である。
図9に示すように、平面視において捕捉部40は円形状に形成されている。
【0056】
捕捉部40には、複数の通過孔41が形成されている。これら通過孔41は、雨水が通過する孔であり、雨水に含まれる異物が通過し難い孔である。通過孔41を通過しない異物は、通過孔41の周りの捕捉部40の部材によって引っ掛かる。通過孔41の大きさは特に限定されないが、雨水が通過し易く、かつ、上記異物よりも小さい大きさであるとよい。本実施形態では、通過孔41は、2種類の孔から構成されており、縦通過孔42aと、横通過孔42bとを有する。
図4に示すように、縦通過孔42aは、捕捉部40の周方向よりも上下方向に長い長孔のことである。
図9に示すように、縦通過孔42aは、捕捉部40の下端側の端部において、周方向に並ぶように複数形成されている。横通過孔42bは、捕捉部40の上下方向よりも周方向に長い長孔のことである。
図4に示すように、横通過孔42bは、捕捉部40の上端側の端部に複数形成されている。
図9に示すように、横通過孔42bは、縦通過孔42aよりも捕捉部40の中心C1側に形成されている。
【0057】
捕捉部40には、貫通孔45が形成されている。
図4に示すように、この貫通孔45は、雨水排出部50が連結する孔である。貫通孔45の位置、形状などは特に限定されない。本実施形態では、
図9に示すように、貫通孔45は、平面視における捕捉部40の中心C1に形成されている。そのため、貫通孔45の周囲に、通過孔41が形成されており、貫通孔45は、通過孔41よりも捕捉部40の中心C1側に形成されている。貫通孔45の形状は、例えば円形状である。貫通孔45は、通過孔41よりも小さい。換言すると、貫通孔45の面積は、複数の通過孔41の何れの面積よりも小さい。ただし、貫通孔45の面積は、通過孔41の面積と同じであってもよいし、通過孔41の面積よりも大きくてもよい。
【0058】
本実施形態では、上述のように、
図4に示すように、捕捉体12は、筒状体11の筒状部材20の内周面に形成された段差部38に載置されている。ここでは、捕捉部40には、捕捉部40の最外周の端から外方に突出した突起47が形成されている。ここで「捕捉部40の最外周の端」とは、ドーム形状の捕捉部40では、捕捉部40の下端のことをいう。突起47が筒状体11の段差部38に載置される。本実施形態では、
図9に示すように、突起47の数は、8つであるが、特に限定されるものではない。また、8つの突起47は、捕捉部40の周方向に沿って等間隔になるように並んで配置されている。ただし、隣り合う突起47の間隔は、異なっていてもよい。また、本実施形態では、複数の突起47の大きさおよび形状は同じであるが、一の突起47が他の突起47と大きさが異なっていてもよいし、形状が異なっていてもよい。
【0059】
図4に示すように、雨水排出部50は、雨水に含まれる異物で通過孔41が塞がれて筒状体11内に雨水が溜まったとき、雨水を下側樋6bに排出するためのものである。雨水排出部50は、捕捉部40に形成された貫通孔45と連結し、捕捉部40よりも上方に配置されている。ここでは、雨水排出部50の下部は、捕捉部40から上方に延びている。雨水排出部50は中空のものであり、内部に排出空間51を有している。排出空間51は、捕捉部40の貫通孔45と連通しており、貫通孔45を通じて下側樋6bと繋がっている。
【0060】
なお、雨水排出部50の形状は特に限定されない。本実施形態では、雨水排出部50の形状は、T字状である。雨水排出部50は、縦筒部60と、第1横筒部61と、第2横筒部62とを有している。縦筒部60は、捕捉部40の貫通孔45から上方に延びた筒状(詳しくは円筒状)に形成されている。
【0061】
第1横筒部61は、縦筒部60と連通し、縦筒部60から一の側方に延びている。第2横筒部62は、縦筒部60と連通し、縦筒部60から他の側方に延びている。ここで、「一の側方」は例えば左方であり、「他の側方」は例えば右方である。この場合、第1横筒部61は、縦筒部60から左方に延び、第2横筒部62は、縦筒部60から右方に延びている。本実施形態では、第1横筒部61および第2横筒部62は、縦筒部60の上端部から側方に延びている。
図10Aは、第1横筒部61および第2横筒部62を示す平面図である。
図10Bは、第1横筒部61を側方から見た図である。
図10Aに示すように、第1横筒部61と第2横筒部62とは、一直線上に配置されている。本実施形態では、第1横筒部61および第2横筒部62の軸方向の長さは、平面視における捕捉部40の半径よりも短いが、平面視における捕捉部40の半径よりも長くてもよいし、当該半径と同じであってもよい。また、本実施形態では、第1横筒部61および第2横筒部62の内径は、縦筒部60の内径よりも大きい。ただし、第1横筒部61および第2横筒部62の内径は、縦筒部60の内径よりも小さくてもよいし、縦筒部60の内径と同じであってもよい。また、第1横筒部61および第2横筒部62の外径は、縦筒部60の外径より大きいが、縦筒部60の外径より小さくてもよいし、縦筒部60の外径と同じであってもよい。
【0062】
図4に示すように、縦筒部60、第1横筒部61および第2横筒部62は、それぞれ筒状(詳しくは円筒状)に形成されているため、内部に空間を有している。縦筒部60、第1横筒部61および第2横筒部62のそれぞれの内部の空間は、互いに連通しており、雨水排出部50の排出空間51を構成している。
【0063】
雨水排出部50には、側方に開口したオーバーフロー孔65が形成されている。本実施形態では、オーバーフロー孔65は、第1横筒部61における縦筒部60とは反対側の端部において、側方に開口するように形成され、かつ、第2横筒部62における縦筒部60とは反対側の端部において、側方に開口するように形成されている。本実施形態では、第2横筒部62に形成されたオーバーフロー孔65が本発明の他のオーバーフロー孔の一例である。オーバーフロー孔65は、筒状体11の中心C1からずれた位置に配置されている。ここでは、第1横筒部61のオーバーフロー孔65は、当該中心C1から左方にずれており、第2横筒部62のオーバーフロー孔65は、当該中心C1から右方にずれている。第1横筒部61のオーバーフロー孔65は、第1横筒部61および縦筒部60を通じて貫通孔45に連通している。第2横筒部62のオーバーフロー孔65は、第2横筒部62および縦筒部60を通じて貫通孔45に連通している。
【0064】
ここでは、オーバーフロー孔65の数は2つであるが、特に限定されない。オーバーフロー孔65の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。オーバーフロー孔65の形状も特に限定されない。ここでは、
図10Bに示すように、オーバーフロー孔65は、円形状に形成されている。オーバーフロー孔65は、貫通孔45よりも大きい。言い換えると、オーバーフロー孔65の面積は、貫通孔45の面積よりも大きい。ただし、オーバーフロー孔65は、貫通孔45と同じ大きさであってもよいし、貫通孔45よりも小さくてもよい。オーバーフロー孔65は、上方に向かって開口していない。また、本実施形態では、オーバーフロー孔65は、縦筒部60に形成されていない。
【0065】
なお、本実施形態において、「側方に開口」とは、例えば樋継手10が水平面に置かれている状態において、オーバーフロー孔65が水平方向に開口している状態のことをいうが、当該水平方向から多少に傾いて開口した状態も含まれるものとする。本実施形態では、「側方に開口」には、オーバーフロー孔65の開口の向きに延びた開口軸と、水平方向に延びた基準軸とが成す角度が45度以下の向きの開口が含まれるものとする。オーバーフロー孔65の開口は、平面視において、異物が入り込まないように隠れているとよい。
【0066】
図4に示すように、オーバーフロー孔65は、雨水排出部50の排出空間51と連通しており、排出空間51を介して、捕捉部40の貫通孔45と連通している。よって、オーバーフロー孔65は、排出空間51および貫通孔45を通じて、下側樋6bと繋がっている。
【0067】
本実施形態では、第1横筒部61および第2横筒部62には、それぞれ作業者の指が引っ掛けられる引っ掛け部61a、62aが設けられている。引っ掛け部61a、62aは、捕捉体12を筒状体11から取り出すときに、作業者が指を引っ掛ける部位である。例えば引っ掛け部61a、62aは、それぞれ第1横筒部61および第2横筒部62の下部に設けられている。なお、引っ掛け部61a、62aは、第1横筒部61および第2横筒部62の下端から上方に凹んだ形状で形成されていてもよい。本実施形態では、引っ掛け部61a、62aによって第1横筒部61および第2横筒部62は、取っ手として機能する。
【0068】
本実施形態では、雨水排出部50は、1つの部材で形成されていてもよいし、複数の部材で形成されていてもよい。ここでは、雨水排出部50は、第1部材71と第2部材72とを有し、2つの部材から構成されている。第1部材71は、縦筒部60を構成する筒状の部材である。第2部材72は、第1横筒部61および第2横筒部62を構成するT字状の部材である。ここでは、第2部材72には、第1横筒部61と第2横筒部62が繋がる部分から下方に延びた嵌合筒部75が設けられている。嵌合筒部75に第1部材71が嵌め込まれることで、第1部材71と第2部材72とが取り付けられ、雨水排出部50となる。
【0069】
本実施形態では、捕捉体12において、捕捉部40と雨水排出部50は別体であるが、一体であってもよい。ここでは、捕捉部40の貫通孔45の周囲には、当該周囲から上方に延びた連結筒部46が設けられている。雨水排出部50の縦筒部60(言い換えると第1部材71)は、連結筒部46に嵌め込まれる。このことで、捕捉部40に雨水排出部50を取り付けることができ、貫通孔45と、雨水排出部50の排出空間51とが連通する。
【0070】
本実施形態では、捕捉体12は、収縮状態の筒状体11の内部に収まる程度の大きさであり、収縮状態の筒状体11から捕捉体12の一部が露出しない程度の大きさである。ここでは、捕捉体12の上下方向の長さL21は、筒状体11の筒状部材20の上下方向の長さL11以下である。捕捉体12の上下方向の長さL21は、上側継手21の上下方向の長さL13以上であり、かつ、下側継手22の上下方向の長さL14以上である。
【0071】
以上、本実施形態に係る樋継手10の構成について説明した。次に、樋継手10を上側樋6aおよび下側樋6bに連結させる手順について説明する。
図11~
図14は、樋継手10を上側樋6aおよび下側樋6bに連結する手順を示す模式図である。ここでは、
図11に示すように、上側樋6aおよび下側樋6bに対して樋継手10を側方に移動させることで、樋継手10を上側樋6aと下側樋6bとの間に配置する。樋継手10を上側樋6aと下側樋6bとの間に配置する際、筒状体11の筒状部材20には、ストッパー部材33が取り外されており、筒状体11は収縮した状態で使用される。このとき、
図5に示すように、筒状部材20の内部には、捕捉体12が配置されている状態である。
【0072】
ここでは、まず筒状部材20に対して、上側継手21または下側継手22を周方向に回転させて、上側突起25と下側突起26の位置を揃える。例えば筒状部材20の中心軸A10(言い換えると、上側継手21の中心軸A11、または、下側継手22の中心軸A12)よりも左方に、上側突起25および下側突起26が位置するように、上側継手21または下側継手22を回転させる。なお、
図11~
図14では、上側突起25および下側突起26は、それぞれ2つのみ図示されており、残り1つの上側突起25および下側突起26は、それぞれ右側の上側突起25および下側突起26に重なっているため、図示されていない。
【0073】
その後、筒状体11において、上側突起25および下側突起26が位置する側と反対側(例えば右側)から、
図11の矢印の向きに筒状体11を移動させて、筒状体11を上側樋6aと下側樋6bとの間に入れ込む。
図12に示すように、筒状体11を上側樋6aと下側樋6bとの間に入れ込むと、筒状部材20の中心軸A10よりも左方に位置する上側突起25の側方に上側樋6aの下端が位置し、下側突起26の側方に下側樋6bの上端が位置する。図示は省略するが、上側突起25を上側樋6aに当接させ、かつ、下側突起26を下側樋6bに当接させたとき、平面視において上側樋6aと、筒状体11と、下側樋6bとが重なった位置となる。このことによって、上側樋6aおよび下側樋6bに対する筒状体11の側方の位置決めを行うことができる。
【0074】
その後、
図13に示すように、筒状体11を伸長させるため、上側継手21を筒状部材20に対して上方にスライドし、下側継手22を筒状部材20に対して下方にスライドさせる。ここで、
図4に示すように、上側継手21を上方にスライドさせたときに、上側継手21の内周面の位置決めシール部材27bが、筒状部材20の外周面の位置決め溝31に嵌まる。このことで、伸長時の上側継手21の位置が決定される。同様に、下側継手22を下方にスライドさせたときに、下側継手22の内周面の位置決めシール部材28bが、筒状部材20の位置決め溝32に嵌まる。このことで、伸長時の下側継手22の位置が決定される。
【0075】
図13に示すように、筒状体11が伸長した状態で、次に、ストッパー部材33を筒状部材20の外周面に取り付ける。このことで、上側継手21が自重で下方に移動しようとする場合であっても、上側継手21がストッパー部材33に当接するため、上側継手21の下方の移動を規制することができる。
【0076】
その後、
図14に示すように、上側継手21の上側突起25と、下側継手22の下側突起26とが中心軸A10を挟んで互いに反対側に位置するように、上側継手21および下側継手22の何れか一方を、筒状部材20に対して周方向に回転させる。例えば筒状部材20の中心軸A10よりも右方に上側突起25が配置され、中心軸A10よりも左方に下側突起26が配置されるように、上側継手21を周方向に回転させる。
【0077】
以上のような手順で、樋継手10によって上側樋6aと下側樋6bとを繋ぐことができる。このとき、
図1に示すように、雨樋1が設置された建物8の屋根8aを流れる雨水は、軒樋2を流れて集水器3に集められる。その後、雨水は、呼び樋4および竪樋5の上側樋6aを流れ、樋継手10の筒状体11に流入する。
図4に示すように、筒状体11内において、雨水は、捕捉体12の捕捉部40に形成された通過孔41を通過して、下側樋6bへ流れ、その後、地面または地下へ排出される。
【0078】
なお、雨水に異物が含まれている場合、樋継手10の筒状体11内において、雨水が通過孔41を通過する際に、異物が捕捉部40に引っ掛かり、捕捉される。そのため、雨水に含まれる異物は、下側樋6bには流れ難く、地面または地下へ排出され難い。
【0079】
ところで、雨水に含まれる異物が多いと、捕捉部40に形成された通過孔41が異物で塞がれることがあり得る。このとき、通過孔41から雨水が流れ難くなり、筒状体11内に雨水が溜まる。なお、本実施形態では、捕捉体12の雨水排出部50に形成されたオーバーフロー孔65は、側方に開口しているため、上側樋6aから流れてきた雨水に含まれた異物によって塞がれ難く、異物がオーバーフロー孔65を通って下側樋6bに流れ難い。ここでは、通過孔41が異物で塞がれると、オーバーフロー孔65の高さまで、筒状体11内に雨水が溜まる。そして、オーバーフロー孔65の高さに到達した雨水は、オーバーフロー孔65を通じて雨水排出部50の排出空間51を流れ、捕捉部40に形成された貫通孔45を通って、下側樋6bへ流れる。このことによって、オーバーフロー孔65よりも高い位置まで、雨水が溜まり難く、上側樋6aへ雨水が逆流し難くすることができる。
【0080】
なお、捕捉部40に捕捉された異物は、樋継手10を上側樋6aと下側樋6bとの間から取り外した後で取り除くことができる。樋継手10を取り外す際、まず筒状部材20からストッパー部材33を取り外す。その後、
図15に示すように、上側継手21を筒状部材20に対して下方にスライドさせると共に、下側継手22を筒状部材20に対して上方にスライドさせることで、筒状体11を収縮させる。このとき、上側継手21の上側突起25と、下側継手22の下側突起26は、筒状部材20の中心軸A10を挟んで互いに反対側に配置されている。そのため、樋継手10が傾こうとする際、中心軸A10よりも一方側(
図15では右側)で上側突起25が上側樋6aで支持されると共に、中心軸A10よりも他方側(
図15では左側)で下側突起26が下側樋6bで支持される状態になる。そのため、樋継手10が傾こうとした場合であっても、筒状体11が上側樋6aおよび下側樋6bから取り外され難くい状態になる。
【0081】
本実施形態では、筒状体11を上側樋6aおよび下側樋6bから取り外す際には、
図12に示すように、上側突起25および下側突起26が中心軸A10よりも一方側(例えば左側)に位置するように、上側継手21または下側継手22を筒状部材20に対して周方向に回転させる。その後、樋継手10において、中心軸A10よりも一方側から、筒状体11を上側樋6aおよび下側樋6bから取り外す。このことで、竪樋5から樋継手10を取り外すことができる。
【0082】
このようにして、樋継手10を取り外した後、捕捉体12を筒状体11から取り外す。このとき、
図4に示す捕捉体12のT字状の雨水排出部50(詳しくは、第1横筒部61および第2横筒部62)は、取っ手として機能する。そのため、作業者は、例えば雨水排出部50の第1横筒部61および第2横筒部62の引っ掛け部61a、62aを手で掴んで、捕捉体12を筒状体11から引き抜く。そして、捕捉部40に捕捉された異物を取り除き、捕捉体12を清掃した後、作業者は、第1横筒部61および第2横筒部62の引っ掛け部61a、62aを手で掴んで、捕捉体12を筒状体11内に配置する。このようにして、捕捉部40に捕捉された異物を取り除くことができる。
【0083】
以上、本実施形態では、
図1に示すように、樋継手10は、上側樋6aと下側樋6bとを繋ぐものである。
図4に示すように、樋継手10は、上側樋6aおよび下側樋6bに連結された筒状体11と、筒状体11の内部に配置され、雨水に含まれる異物を捕捉する捕捉体12とを備えている。捕捉体12は、貫通孔45、および、雨水が通過する複数の通過孔41が形成された捕捉部40と、貫通孔45から上方に延びた筒状の縦筒部60と、縦筒部60から側方に延びた筒状の第1横筒部61とを有している。第1横筒部61には、側方に開口したオーバーフロー孔65が形成されている。第1横筒部61のオーバーフロー孔65は、第1横筒部61および縦筒部60を通じて貫通孔45に連通している。
【0084】
本実施形態では、雨水に含まれる異物は、捕捉部40によって捕捉され、捕捉部40上に溜まる。捕捉部40の通過孔41が異物で塞がれたとき、筒状体11内に雨水が溜まる。そして、水位が上がり、雨水がオーバーフロー孔65の高さに達したとき、オーバーフロー孔65から下側樋6bに向かって雨水が流れる。本実施形態では、第1横筒部61に形成されたオーバーフロー孔65は側方に開口しているため、上側樋6aから流れる雨水に含まれる異物によって塞がり難く、かつ、異物がオーバーフロー孔65を通って下側樋6bに流れ難い。また、異物が溜まる捕捉部40とオーバーフロー孔65との間には、縦筒部60が配置されている。そのため、捕捉部40とオーバーフロー孔65との間の距離を確保することができる。さらに、オーバーフロー孔65は、第1横筒部61に形成されており、第1横筒部61を介して捕捉部40および縦筒部60から離れた位置に形成されている。そのため、オーバーフロー孔65が、捕捉部40上に溜まった異物で塞がり難い。したがって、通過孔41が異物で塞がれて、筒状体11内に雨水が溜まった場合であっても、オーバーフロー孔65を通じて下側樋6bに雨水を流すことができる。また、捕捉部40は、平面視において第1横筒部61または第2横筒部62と重なる部分を有する。捕捉部40の当該重なる部分とは、第1横筒部61または第2横筒部62の真下に位置する部分である。上側樋6aから流れる雨水に含まれる異物は、第1横筒部61または第2横筒部62に遮られるため、捕捉部40の当該重なる部分が異物で塞がり難い。よって、捕捉部40の全体が異物で塞がり難くすることができる。以上のことから、樋継手10の目詰まりが生じ難い。
【0085】
本実施形態では、縦筒部60の上端部に、オーバーフロー孔65が形成された第1横筒部61が設けられ、縦筒部60の下端部に、捕捉部40が設けられている。よって、オーバーフロー孔65と捕捉部40と間に、縦筒部60の軸方向(ここでは上下方向)の長さ分の距離を確保することができる。したがって、オーバーフロー孔65が、捕捉部40上に溜まった異物でより塞がり難くすることができる。更に、縦筒部60の上端部の高さまで、雨水をより多く溜めることができるため、上側樋6aに雨水がより逆流し難くすることができる。
【0086】
本実施形態では、捕捉体12は、縦筒部60から側方に延びた筒状の第2横筒部62を有している。第2横筒部62には、筒状体11の中心C1からずれた位置にて側方に開口したオーバーフロー孔65が形成されている。第2横筒部62のオーバーフロー孔65は、第2横筒部62および縦筒部60を通じて貫通孔45に連通している。このことによって、捕捉部40の通過孔41が異物で塞がれた状態で、雨水が樋継手10に勢いよく流れてきた場合であっても、第1横筒部61と第2横筒部62との両方に形成されたオーバーフロー孔65を通じて、より多くの雨水を下側樋6bに一度に流すことができる。
【0087】
本実施形態では、
図10Aに示すように、第1横筒部61と第2横筒部62とは、一直線上に配置されている。このことによって、平面視において縦筒部60を挟んだ両側に、オーバーフロー孔65を配置することができる。よって、筒状体11内に溜まった雨水を、縦筒部60を挟んだ両側のオーバーフロー孔65から雨水を下側樋6bに流すことができる。
【0088】
本実施形態では、
図4に示すように、第1横筒部61および第2横筒部62には、それぞれ指が引っ掛けられる引っ掛け部61a、62aが設けられている。このことによって、引っ掛け部61a、62aに作業者の指を引っ掛けることで、捕捉体12を筒状体11から取り外し易い。
【0089】
本実施形態では、
図4に示すように、捕捉部40はドーム形状に形成されている。捕捉部40の形状をドーム形状とすることで、捕捉部40の表面積を大きくすることができる。よって、より多くの異物を捕捉部40で捕捉することができる。
【0090】
本実施形態では、
図9に示すように、貫通孔45は、平面視における捕捉部40の中心C1に形成されている。このことによって、平面視において、貫通孔45の周囲に捕捉部40が配置されるため、貫通孔45の周囲に複数の通過孔41を配置することができる。よって、貫通孔45の周囲に配置された通過孔41から雨水を下側樋6bに流すことができる。
【0091】
本実施形態では、
図4に示すように、筒状体11の内周面には、捕捉体12が載置される段差部38が形成されている。このことによって、段差部38に捕捉体12を載置するという簡単な手段で、筒状体11内に捕捉体12を配置することができる。また、段差部38に捕捉体12が載置されている状態で筒状体11内に配置されているため、捕捉体12を筒状体11から取り出し易い。
【0092】
本実施形態では、
図9に示すように、捕捉体12は、捕捉部40の最外周の端から外方に突出した突起47を有している。
図4に示すように、突起47が段差部38に載置されている。このように、捕捉体12の突起47が段差部38に載置されているため、捕捉部40に形成された通過孔41が段差部38で塞がり難くすることができる。
【0093】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態に係る樋継手について簡単に説明する。
図16は、他の実施形態に係る樋継手10Aの雨水排出部50Aを示す正面断面図である。
図16に示す樋継手10Aのように、オーバーフロー孔65Aは、下方に開口していてもよい。例えば、オーバーフロー孔65Aは、第1横筒部61および第2横筒部62の下部に形成され、下方に向かって開口している。なお、「下方に開口」とは、例えばオーバーフロー孔65Aが鉛直方向に開口している状態のことをいうが、当該鉛直方向から多少に傾いて開口した状態も含まれるものとする。本実施形態では、「下方に開口」には、オーバーフロー孔65Aの開口の向きに延びた開口軸と、鉛直方向に延びた基準軸とが成す角度が45度以下の向きの開口が含まれるものとする。
【0094】
このように、オーバーフロー孔65Aが下方に開口した場合であっても、上側樋6aから流れてきた雨水に含まれる異物によって、オーバーフロー孔65Aが塞がれ難い。よって、捕捉部40の通過孔41が異物で塞がれて、筒状体11内に雨水が溜まった場合であっても、オーバーフロー孔65Aを通じて、下側樋6bに雨水を流すことができる。
【0095】
なお、
図16に示す樋継手10Aにおいて、第1横筒部61および第2横筒部62には、上述のオーバーフロー孔65Aと共に、上記実施形態のような、側方に開口したオーバーフロー孔65が形成されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、捕捉体12の雨水排出部50の第1横筒部61と第2横筒部62とは、同じ高さの位置に配置されていた。しかしながら、第1横筒部61は第2横筒部62よりも高い位置に配置されていてもよいし、第2横筒部62よりも低い位置に配置されていてもよい。また、第1横筒部61および第2横筒部62は、縦筒部60から斜め上方、または、縦筒部60から斜め下方に延びていてもよい。
【0097】
上記実施形態では、第1横筒部61および第2横筒部62は、一直線上に並ぶように配置されていた。しかしながら、
図17に示す樋継手10Bの雨水排出部50Bのように、第1横筒部61Bと第2横筒部62Bとは、一直線上に並んでいなくてもよい。第1横筒部61Bの中心軸A21と、第2横筒部62Bの中心軸A22とは交差してもよい。例えば平面視において、中心軸A21と中心軸A22は直交しており、第1横筒部61Bと第2横筒部62BによってL字状に形成されてもよい。
【0098】
また、
図18に示す樋継手10Cのように、雨水排出部50Cは、縦筒部60Cと、第1横筒部61Cとを有し、上述のような第2横筒部62は省略されてもよい。例えば雨水排出部50Cは、正面視において縦筒部60Cと第1横筒部61CとによってL字状に形成されていてもよい。この場合、オーバーフロー孔65は、側方に開口するように第1横筒部61Cに形成されており、雨水排出部50Cに形成されたオーバーフロー孔65は例えば1つである。
【0099】
上記実施形態では、縦筒部60から側方に延びた横筒部は、第1横筒部61と第2横筒部62の2つであった。しかしながら、縦筒部60から側方に延びた横筒部の数は、3つ以上であってもよい。この場合、全ての横筒部に、側方または下方に開口したオーバーフロー孔が形成されてもよいし、一部の横筒部に、側方または下方に開口したオーバーフロー孔が形成されてもよい。
【0100】
上記実施形態では、捕捉体12の捕捉部40は、上方に凸となるドーム形状に形成されていた。しかしながら、捕捉部40は、例えば板状の部材で形成されてもよい。
【0101】
上記実施形態では、樋継手10は、竪樋5の上側樋6aと下側樋6bとを繋げるものであり、竪樋5に設けられるものであった。しかしながら、樋継手10は、雨樋1を構成する竪樋5以外の部材に設けられるものであってもよい。例えば、樋継手10は、呼び樋4に設けられるものであってもよい。この場合、例えば呼び樋4は、上側樋と、上側樋から離れた位置に配置された下側樋とを有している。樋継手10は、呼び樋4の上側樋と下側樋とを繋ぐものであってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 雨樋
5 竪樋
6a 上側の樋(上側樋)
6b 下側の樋(下側樋)
10 樋継手
11 筒状体
12 捕捉体
20 筒状部材
21 上側継手
22 下側継手
38 段差部
40 捕捉部
41 通過孔
45 貫通孔
47 突起
50 雨水排出部
60 縦筒部
61 第1横筒部
62 第2横筒部
65 オーバーフロー孔