(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ハンドルカバー
(51)【国際特許分類】
E05B 1/00 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E05B1/00 311N
E05B1/00 311R
(21)【出願番号】P 2020180906
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
(72)【発明者】
【氏名】小石 恵
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3029225(EP,A1)
【文献】特開2018-201473(JP,A)
【文献】特表2008-506872(JP,A)
【文献】特開2008-127841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルの表面に対して突出するように設けられる取付部と、前記取付部の突出端部から前記ドアパネルの表面に対向するように延在した操作部とを有したドアハンドルに装着されるハンドルカバーであって、
前記操作部の周面に対向して配設されるベース体と、
前記ベース体から前記操作部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第1係止部と、
前記ベース体から前記取付部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第2係止部と、
前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方に対応して設けられる当接体と、
前記ドアパネルの表面に対向する方向に沿って延在した係合面を有する操作係合部と
を有し、前記当接体に対応した前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方は、弾性的に変形して前記当接体との間の隙間を拡開した場合に互いの間に前記ドアハンドルが配置可能となり、前記当接体との間おいて前記ドアハンドルに対する離隔移動が制限されるように構成されていることを特徴とするハンドルカバー。
【請求項2】
前記当接体は、前記第1係止部に対応した第1当接体及び前記第2係止部に対応した第2当接体を含むことを特徴とする請求項1に記載のハンドルカバー。
【請求項3】
前記操作係合部は、前記ドアパネルとの間に前腕部の挿入が可能となる隙間を確保した状態で前記ベース体から突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のハンドルカバー。
【請求項4】
前記ベース体、前記第1当接体及び前記第2当接体は、それぞれ平板状を成し、互いに直角に延在するように設けられたものであり、
前記第2当接体は、前記ベース体が前記操作部の周面に当接された状態において前記操作部の端面に当接するように設けられ、
前記第1係止部は、弾性変形可能となるように構成され、かつ前記操作部において前記ベース体との接点となる位置から180°未満の範囲を覆うように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のハンドルカバー。
【請求項5】
前記ベース体は、前記操作部の周面を覆う操作カバー部と、前記操作カバー部から屈曲するように延在し、前記取付部の周面を覆う取付カバー部とを有したものであり、
前記操作カバー部に前記第1係止部、前記第2当接体及び前記操作係合部が設けられ、
前記取付カバー部に前記第2係止部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のハンドルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドルの引き操作が可能となるハンドルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
衛生上の問題から、あるいは両手に荷物を持っている状況であってもドアパネルを開くことができるようにするため、ドアハンドルにハンドルカバーを装着するようにしたものがある。例えば、水平方向に延在する操作部を下方に回転させることによってラッチを解除すように構成されたドアハンドルに対しては、操作部を覆うように設けられるベース体と、ベース体から上方に突出する操作係合部とを有したハンドルカバーが提供されている。このハンドルカバーによれば、操作係合部とドアパネルとの間に前腕部を挿入し、そのまま操作部を下方に押圧することでドアハンドルを回転させることが可能となる。この状態から前腕部を手前に引けば、前腕部が操作係合部に係合することでドアハンドルの操作部を引き操作することができ、手指でドアハンドルを握ることなくドアパネルを開くことが可能となる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】“Klinkenaufsatz fur den Unterarm”、[online]、FSB (Franz Schneider Brakel GmbH + Co KG)、[令和2年9月10日検索]、インターネット、<URL:https://www.fsb.de/de/loesungen/health-care/klinkenaufsatz/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のハンドルカバーは、略U字状に形成されたベース体の間に操作部を配置し、この状態からベース体にネジ部材を螺合することによってドアハンドルを挟み込むように取り付けられている。このハンドルカバーによれば、ネジ部材が弛緩しない限りドアハンドルから脱落する事態を招来するおそれはない。しかしながら、ハンドルカバーのメンテナンス性を考慮した場合には、必ずしも好ましいとはいえない。すなわち、ドアハンドルへの取り付けに際しては、ネジ部材を螺合するための工具が必要となる。また、ハンドルカバーを洗浄・消毒する目的でドアハンドルから取り外す場合には、ネジ部材を取り外す必要があるばかりでなく、洗浄・消毒が終了した後には再びドアハンドルに装着してネジ部材を螺合する必要があり、メンテナンス作業が煩雑化するのは否めない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、ドアハンドルへの取り付け作業やメンテナンス作業を容易化することのできるハンドルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るハンドルカバーは、ドアパネルの表面に対して突出するように設けられる取付部と、前記取付部の突出端部から前記ドアパネルの表面に対向するように延在した操作部とを有したドアハンドルに装着されるハンドルカバーであって、前記操作部の周面に対向して配設されるベース体と、前記ベース体から前記操作部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第1係止部と、前記ベース体から前記取付部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第2係止部と、前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方に対応して設けられる当接体と、前記ドアパネルの表面に対向する方向に沿って延在した係合面を有する操作係合部とを有し、前記当接体に対応した前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方は、弾性的に変形して前記当接体との間の隙間を拡開した場合に互いの間に前記ドアハンドルが配置可能となり、前記当接体との間おいて前記ドアハンドルに対する離隔移動が制限されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば第1係止部が弾性変形可能に設けられている場合、先に第2係合片に取付部を配置する。この状態から第1係止部と当接部との隙間を拡開しながら互いの間に操作部を配置するとともに、ベース体を操作部の周面に当接させれば、ドアハンドルに対してハンドルカバーを装着することができる。一方、逆の操作を行えば、ドアハンドルからハンドルカバーを取り外すことができる。従って、ハンドルカバーを取り付ける際、さらには洗浄・消毒等のメンテナンスによってドアハンドルから着脱する際に工具が不要であり、これらの作業を容易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態であるハンドルカバー及びドアハンドルを示すもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の斜視図、(b)はドアハンドルの斜視図、(c)はハンドルカバーの斜視図である。
【
図2】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルとドアパネルとの関係を示すもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付ける以前の状態を示す要部斜視図、(b)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の要部斜視図、(c)はハンドルカバーを介してドアハンドルを操作している例を示す要部斜視図である。
【
図3】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルを下方から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の斜視図、(b)はハンドルカバーの斜視図である。
【
図4】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルを操作部の延在端面側から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の側面図、(b)はハンドルカバーの側面図である。
【
図5】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルをドアパネル側から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の背面図、(b)はハンドルカバーの背面図である。
【
図6】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルを下方から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の底面図、(b)はハンドルカバーの底面図である。
【
図7】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルを操作部の基端面側から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の側面図、(b)はハンドルカバーの側面図である。
【
図8】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルをドアパネル側から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付る直前の状態を示す背面図、(b)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の背面図である。
【
図9】
図1に示したハンドルカバー及びドアハンドルを操作部の延在端面側から見たもので、(a)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付る直前の状態を示す側面図、(b)はドアハンドルにハンドルカバーを取り付けた状態の背面図である。
【
図10】本発明の変形例1であるハンドルカバー及びドアハンドルを示すもので、(a)は操作部の基端面側から見た斜視図、(b)は操作部の延在端面側から見た斜視図である。
【
図11】本発明の変形例2であるハンドルカバー及びドアハンドルを示すもので、(a)は操作部の基端面側から見た斜視図、(b)は操作部の延在端面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るハンドルカバーの好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるハンドルカバーを示したものである。ここで例示するハンドルカバー10は、
図2及び
図3に示すように、ドアパネル1の表面1aに対してほぼ直角に突出するように設けられる取付部21と、取付部21の突出端部からドアパネル1の表面1aに対向するように延在した操作部22とを有したドアハンドル20に装着されるものである。ドアハンドル20の取付部21及び操作部22は、それぞれ断面が円形の柱状を成し、取付部21に比べて操作部22の軸方向に沿った寸法が長く形成してある。本実施の形態では特に、取付部21及び操作部22が同一の外径を有し、取付部21が操作部22の周面に連結されたドアハンドル20を例示している。ドアパネル1は、図には明示していないが、一方の側縁部がヒンジによって枠体に支持してあり、上下に沿った軸心を中心として回転することにより、枠体に対して開いた状態と閉じた状態とに移動することが可能である。
図2からも明らかなように、ドアハンドル20が通常状態にある場合には、操作部22がほぼ水平となるように延在している。この状態から取付部21を中心として操作部22の延在端部が下方に移動するようにドアハンドル20を回転させた場合には、
図2(c)に示すように、ドアパネル1の戸先部分に設けられたラッチ2が解除状態(ドアパネルの戸先面から突出しない状態)となり、図示せぬ枠体に対してドアパネル1を開くことが可能となる。ドアハンドル20から操作力を除去すると、再び操作部22がほぼ水平となった状態に復帰する。
【0010】
上述のドアハンドル20に装着されるハンドルカバー10は、ABS樹脂等の樹脂によって一体に成形したもので、
図4~
図7に示すように、ベース体11、第1当接体12、第2当接体13、第1係止部14、第2係止部15、操作係合部16を有している。なお、以下においては便宜上、通常状態に配置されたドアハンドル20に装着した際の姿勢でハンドルカバー10の構成要素について説明を行うこととする。
【0011】
ベース体11は、平板状を成すもので、操作カバー部11a及び取付カバー部11bを有している。操作カバー部11aは、ドアハンドル20の操作部22に対してその上部周面を覆うように配設されるものである。本実施の形態では、操作部22の外径よりも幅が広く、操作部22の軸心に沿った寸法よりも長さの大きな長方形状を成すように操作カバー部11aが構成してある。取付カバー部11bは、通常状態に配置されたドアハンドル20の取付部21に対してその上部周面を覆うように配設されるもので、操作カバー部11aの側面から突出するように設けてある。この取付カバー部11bは、取付部21の外径よりも幅が広く、取付部21の軸心に沿った寸法よりも長さの小さい長方形状を成すように構成してある。図からも明らかなように、ベース体11は、平面視が略L字状を成している。
【0012】
第1当接体12は、長方形の平板状を成すもので、ベース体11の操作カバー部11aにおいてドアパネル1から離隔した出隅側の縁部から下方に向けてほぼ直角となる方向に延在している。第1当接体12においてベース体11の下面からの突出寸法は、操作部22の外径とほぼ等しくなるように設定してある。第1当接体12において操作部22の軸心に沿った寸法は、操作カバー部11aと同一である。第1当接体12と操作カバー部11aとの入隅部分には、操作部22の周面に沿った円柱状の湾曲凹面が構成してある。
【0013】
第2当接体13は、長方形の平板状を成すもので、第1当接体12と操作カバー部11aとの連結部分において操作部22の延在端面22aに当接可能となるように入隅部分から突出して設けてある。本実施の形態では、操作カバー部11aから操作部22の外径に対してほぼ1/4となる寸法だけ突出し、かつ第1当接体12から操作部22の外径に対してほぼ1/2となる寸法だけ突出するように第2当接体13が構成してある。
【0014】
第1係止部14は、操作カバー部11aにおいてドアパネル1に近接した入隅側の縁部から下方に向けてほぼ直角に突出した後、下方に向かうに従って漸次ドアパネル1から離隔するように湾曲したものである。図示した第1係止部14は、操作部22の軸方向に沿った寸法が操作部22の外径とほぼ等しく構成してあり、操作カバー部11aにおいて操作部22の延在端部に対応した位置に設けてある。第1係止部14の延在縁部は、
図4(a)に示すように、操作部22の周面を操作カバー部11a及び第1当接体12にそれぞれ当接させた場合に、操作部22において操作カバー部11aとの接点となる位置から180°未満の範囲Caを覆うように構成してある。本実施の形態では、操作カバー部11aとの接点となる位置からほぼ145°の範囲を覆うことにより、操作部22に対して操作カバー部11aから離隔する方向の移動及び第1当接体12から離隔する方向の移動をそれぞれ制限するように第1係止部14が構成してある。この第1係止部14は、ベース体11よりも板厚が小さく構成してあり、弾性変形させることによって第1当接体12との隙間を拡開することが可能である。第1当接体12と第1係止部14との間の隙間は、通常状態においては操作部22の通過を阻止し、かつ拡開させた場合にのみ操作部22の通過が可能となるように設定してある。
【0015】
第2係止部15は、取付カバー部11bにおいて出隅側の縁部から下方に向けてほぼ直角に突出した後、下方に向かうに従って漸次操作部22の延在縁部に向かうように湾曲したものである。第2係止部15と第1当接体12との間には、操作部22を挿通させることのできる寸法の隙間が確保してある。第2係止部15の延在縁部は、
図5(a)に示すように、取付部21の周面を取付カバー部11bに当接させるとともに操作部22の端面を第2当接体13に当接させた場合に、取付部21において取付カバー部11bとの接点となる位置から180°をわずかに超える範囲Cbを覆うように構成してある。但し、180°を超えた部分については、取付カバー部11bと平行となるように延在している。つまり、取付カバー部11bと第2係止部15との間においては、第2係止部15を変形させることなくドアハンドル20の取付部21を挿入して配置することが可能である。図からも明らかなように、第2係止部15は、第1係止部14よりも板厚が大きく、第1係止部14に比べて弾性的に変形し難くなるように構成してある。
【0016】
操作係合部16は、操作カバー部11aの出隅側となる縁部において操作部22の延在端部に対応する部分から上方に向けて突出したものである。本実施の形態では、操作カバー部11aから上方に向かうに従って漸次ドアパネル1の表面1aから離隔するように湾曲した操作係合部16を設けるようにしている。図からも明らかなように、操作係合部16の上端部は、ドアパネル1の表面1aに対向するように延在しており、引き操作する際の係合面16aを構成している。操作係合部16とドアパネル1の表面1aとの間には、前腕部を挿入することのできる隙間が確保してある。
【0017】
上記のように構成したハンドルカバー10をドアハンドル20に取り付けるには、
図8(a)に示すように、まず、取付カバー部11bと第2係止部15との間にドアハンドル20の取付部21を挿入する。このとき、操作部22に対して操作カバー部11aを傾斜させた状態に維持し、第1当接体12、第1係止部14及び第2当接体13をそれぞれ操作部22よりも上方に配置しておけば、これら第1当接体12、第1係止部14及び第2当接体13が取付部21の挿入を妨げるおそれはない。しかも、取付カバー部11bと第2係止部15との間には、取付部21を挿入することのできる隙間が確保してあるため、取付部21を挿入する際に第2係止部15に変形を来すおそれはない。これらの結果、上述の作業を容易に実施することが可能である。
【0018】
この状態から操作カバー部11aを下方に押圧し、取付部21を中心としてハンドルカバー10を回転させると、
図9(a)に示すように、操作部22の周面が第1当接体12と第1係止部14との隙間においてこれら第1当接体12及び第1係止部14に押圧されることになる。従って、第1係止部14が弾性的に変形することで第1当接体12と第1係止部14との隙間が拡開し、
図8(b)及び
図9(b)に示すように、やがて相互間に操作部22が挿入して配置された状態となる。操作部22が第1当接体12と第1係止部14との間に挿入されると、第1係止部14が弾性復元力によって元の形状に復帰するため、操作部22が操作カバー部11a、第1当接体12及び第1係止部14に当接した状態となる。従って、ハンドルカバー10は、操作部22の周面に対する操作カバー部11aの離隔移動が制限されるとともに、操作部22の周面に対する第1係止部14の離隔移動が制限された状態となる。さらに、この状態においては、第2当接体13が操作部22の端面に当接するため、取付部21の周面に対する第2係止部15の離隔移動が制限された状態となる。つまり、上述した取付作業を行えば、工具を用いることなくハンドルカバー10をドアハンドル20に容易に取り付けることが可能となる。
【0019】
上記のようにしてドアハンドル20にハンドルカバー10が取り付けられた状態では、ハンドルカバー10に加えた操作力がそのままドアハンドル20に伝達されることになる。これにより、
図2(c)に示すように、ドアパネル1の表面1aと操作係合部16との隙間に前腕部を挿入し、そのまま操作部22を下方に押圧すれば、取付部21を中心としてドアハンドル20の操作部22が下方に回転し、ドアパネル1に設けたラッチ2を解除することができる。この状態から前腕部を手前に引けば、前腕部が操作係合部16に係合することでドアハンドル20の操作部22を引き操作することが可能となる。従って、手指でドアハンドル20を握ることなくドアパネル1を開くことが可能となり、衛生上の問題を解決することができるばかりでなく、両手に荷物を持っている状況であってもドアパネル1を開くことができる等、利便性を向上させることができる。
【0020】
ハンドルカバー10に洗浄や消毒等のメンテンサンスを施す場合には、上述した取付作業を逆順に実施すれば、工具を用いることなくドアハンドル20からハンドルカバー10を容易に取り外すことが可能である。すなわち、例えば操作係合部16を把持して操作カバー部11aを上方に引き上げれば、操作部22が当接することによって第1係止部14が弾性変形し、第1当接体12との隙間が拡開することになるため、これら第1係止部14と第1当接体12の隙間から操作部22を逸脱させることができる。この状態からハンドルカバー10を操作部22の軸方向にスライドさせれば、取付カバー部11bと第2係止部15との間から取付部21が逸脱されることになり、ドアハンドル20からハンドルカバー10を取り外すことができる。メンテサンス作業が終了した後においては、再び、取付作業を実施すれば良い。
【0021】
なお、上述した実施の形態では、操作係合部16としてベース体11に唯一設けるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示す変形例1のハンドルカバー110では、ベース体11における操作カバー部11aの上面に操作部22の延在方向に沿って複数の操作係合部116を並設するようにしている。操作係合部116の操作部22に沿った寸法は、手指1本で操作可能となる幅に形成してある。それぞれの操作係合部116は、ドアパネルの表面に対向する部分に凹部を有しており、凹部の上縁部に手指を引掛けてドアハンドル20を手前に引き操作することが可能な係合面116aを構成している。なお、変形例1において実施の形態と同様の構成について同一の符号が付してある。
【0022】
この変形例1のハンドルカバー110においても、ドアハンドル20に対する着脱作業は実施の形態と同様である。すなわち、ドアハンドル20との相対移動を制限するベース体11、第1当接体12、第2当接体13、第1係止部14及び第2係止部15については、実施の形態と同様に構成してあるため、実施の形態で示したドアハンドル20への取付方法及びドアハンドル20からの取り外し方法を行うことができ、これらの作業を容易化することができる。さらに、操作係合部116が複数設けてあるため、例えば操作係合部116に対してそれぞれの操作者を予め設定しておけば、手指で直接操作することになるものの衛生上の問題を防止することが可能である。
【0023】
また、実施の形態及び変形例1では、ベース体11に対して操作係合部16,116を突出するように設けているが、必ずしも操作係合部がベース体から突出した構成である必要はない。例えば、
図11に示す変形例2のハンドルカバー210では、第1当接体212を厚板状に構成し、この第1当接体212において出隅側となる縁部の上面に凹部を設けることで、係合面216aを有した操作係合部216を構成するようにしている。この変形例2では、変形例1と同様、操作部22の延在方向に沿って複数の操作係合部216を並設するようにしている。なお、変形例2においても実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0024】
この変形例2のハンドルカバー210においても、ドアハンドル20に対する着脱作業は実施の形態及び変形例1と同様に容易に実施可能である。また、変形例1と同様、操作係合部216が複数設けてあるため、衛生上の問題を防止することが可能である。
【0025】
なお、上述した実施の形態、変形例1及び変形例2では、取付部21及び操作部22がそれぞれ断面円形の柱状を成すドアハンドル20を対象としたハンドルカバー10,110,210を例示しているが、ドアハンドルの取付部及び操作部としては必ずしも円柱状である必要はなく、正角柱であっても同様に適用することが可能である。また取付部21及び操作部22が同一の外径となるように構成されたドアハンドル20を例示しているが、取付部及び操作部の外径は互いに異なるものであっても構わない。さらに、取付部21の軸心回りに回転操作するドアハンドル20を例示しているが、必ずしもドアハンドルが回転操作するものである必要はなく、操作部の両端部が取付部を介してドアパネルの表面に取り付けられたドアハンドルにも適用可能である。
【0026】
また、上述した実施の形態、変形例1及び変形例2では、板厚を小さくすることで第1係止部14のみが容易に弾性変形可能となるように構成しているが、第2係止部15のみが容易に弾性変形可能となるように構成しても良いし、第1係止部14及び第2係止部15の双方が容易に弾性変形可能となるように構成しても構わない。さらに、第1当接体及び第2当接体の双方を備えたハンドルカバーを例示しているが、第1当接体及び第2当接体の少なくとも一方があれば良い。なお、第2当接体13として操作部の端面に当接するものを例示しているが、第2当接体は取付部の周面に当接するものであっても良い。
【0027】
以上のように、本発明に係るハンドルカバーは、ドアパネルの表面に対して突出するように設けられる取付部と、前記取付部の突出端部から前記ドアパネルの表面に対向するように延在した操作部とを有したドアハンドルに装着されるハンドルカバーであって、前記操作部の周面に対向して配設されるベース体と、前記ベース体から前記操作部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第1係止部と、前記ベース体から前記取付部の周面の一部を覆うように設けられ、前記操作部の周面に対する前記ベース体の離隔移動を制限する第2係止部と、前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方に対応して設けられる当接体と、前記ドアパネルの表面に対向する方向に沿って延在した係合面を有する操作係合部とを有し、前記当接体に対応した前記第1係止部及び前記第2係止部の少なくとも一方は、弾性的に変形して前記当接体との間の隙間を拡開した場合に互いの間に前記ドアハンドルが配置可能となり、前記当接体との間おいて前記ドアハンドルに対する離隔移動が制限されるように構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、例えば第1係止部が弾性変形可能に設けられている場合、先に第2係合片に取付部を配置する。この状態から第1係止部と当接体との隙間を拡開しながら互いの間に操作部を配置するとともに、ベース体を操作部の周面に当接させれば、ドアハンドルに対してハンドルカバーを装着することができる。一方、逆の操作を行えば、ドアハンドルからハンドルカバーを取り外すことができる。従って、ハンドルカバーを取り付ける際、さらには洗浄・消毒等のメンテナンスによってドアハンドルから着脱する際に工具が不要であり、これらの作業を容易化することが可能となる。なお、第2係止部が弾性変形可能に設けられている場合には、先に第1係合片に操作部を配置し、その後に第2係止部と当接体との間に取付部を配置すれば良い。
【0028】
また本発明は、上述したハンドルカバーにおいて、前記当接体は、前記第1係止部に対応した第1当接体及び前記第2係止部に対応した第2当接体を含むことを特徴としている。
この発明によれば、ドアハンドルに対するハンドルカバーのすべての方向の相対移動を制限することができるようになる。
【0029】
また本発明は、上述したハンドルカバーにおいて、前記操作係合部は、前記ドアパネルとの間に前腕部の挿入が可能となる隙間を確保した状態で前記ベース体から突出して設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、前腕部を操作係合部に係合させることにより手指でドアハンドルを握ることなくドアパネルを開くことができるため、衛生上の問題を解決することができるばかりでなく、両手に荷物を持っている状況であってもドアパネルを開くことができる等、利便性を向上させることができる。
【0030】
また本発明は、上述したハンドルカバーにおいて、前記ベース体、前記第1当接体及び前記第2当接体は、それぞれ平板状を成し、互いに直角に延在するように設けられたものであり、前記第2当接体は、前記ベース体が前記操作部の周面に当接された状態において前記操作部の端面に当接するように設けられ、前記第1係止部は、弾性変形可能となるように構成され、かつ前記操作部において前記ベース体との接点となる位置から180°未満の範囲を覆うように構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、第1係止部が180°未満の範囲を覆うように構成してあるため、ドアハンドルに取り付ける場合の第1係止部の弾性変形量を小さくすることができ、作業をより容易に実施することが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述したハンドルカバーにおいて、前記ベース体は、前記操作部の周面を覆う操作カバー部と、前記操作カバー部から屈曲するように延在し、前記取付部の周面を覆う取付カバー部とを有したものであり、前記操作カバー部に前記第1係止部、前記第2当接体及び前記操作係合部が設けられ、前記取付カバー部に前記第2係止部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、第2係止部と第2当接体との離隔距離を大きく確保することができるため、ドアハンドルへの取り付け作業をより容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 ドアパネル、1a ドアパネルの表面、10,110,210 ハンドルカバー、11 ベース体、11a 操作カバー部、11b 取付カバー部、12,212 第1当接体、13 第2当接体、14 第1係止部、15 第2係止部、16,116,216 操作係合部、16a,116a,216a 係合面、20 ドアハンドル、21 取付部、22 操作部