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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】移動体システム
(51)【国際特許分類】
   A63H 11/00 20060101AFI20240206BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240206BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240206BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240206BHJP
【FI】
A63H11/00 Z
B25J13/00 Z
G06Q50/10
G05D1/02 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020209127
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096175
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 睦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 知明
(72)【発明者】
【氏名】則武 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西川 信広
(72)【発明者】
【氏名】来間 政人
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳行
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大策
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135502(WO,A1)
【文献】特開2003-339796(JP,A)
【文献】特開2017-226044(JP,A)
【文献】特開2019-217122(JP,A)
【文献】特開2014-144514(JP,A)
【文献】特開2003-001578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0009739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
B25J 1/00-21/02
G06Q 50/10
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内において移動する移動体を管理する移動体システムであって、
1以上のゲストで構成されるゲストグループに対応付けられた移動体と、
前記移動体の体形の変化を管理する管理装置と、
を備え、前記管理装置は、
前記所定のエリア内における前記ゲストの行動を示す行動情報を収集する行動収集部と、
前記行動収集部で収集された前記行動情報に基づいて、前記移動体の前記体形を変化させる外観管理部と、
を備え
前記移動体は、前記体形の変化に応じて、前記ゲストに提供する機能を増減する、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体システムであって、
前記外観管理部は、前記ゲストの前記移動体に対するサポート動作の量で前記ゲストを評価し、当該評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させる、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動体システムであって、
前記外観管理部は、前記行動情報に基づいて、前記ゲストの行動を道徳的観点から評価し、その評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させる、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
前記外観管理部は、前記行動情報に基づいて、前記ゲストの行動を消費活動の多寡で評価し、その評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させる、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
前記移動体は、構成要素の少なくとも一部を、伸縮または膨縮または格納/展開することで、前記体形が変化可能である、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
さらに、現実の像に、仮想的なオブジェクト画像を重畳して表示する拡張現実表示装置を備え、
前記拡張現実表示装置は、前記移動体の外観を示す複数の画像を前記オブジェクト画像として記憶しており、
前記外観管理部は、前記行動収集部で収集された前記行動情報に基づいて、前記現実の像と重畳する前記オブジェクト画像を変更させることで、前記ゲストから見た前記移動体の前記体形を変更させる、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の移動体システムであって、さらに、
前記行動収集部は、前記ゲストを撮像した画像データ、前記ゲストの発話を録音した録音データ、および、前記ゲストの決済履歴を示す決済データ、および、前記移動体のサポートリクエストに対する前記ゲストの反応を示すサポートデータ、の少なくとも一つを前記行動情報として収集する、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
前記所定のエリアは、遊園地またはテーマパークであるパークであり、
前記ゲストは、前記パークへの来場者であり、
前記移動体は、前記ゲストグループに貸与され、前記ゲストと連携して自律的に移動し、前記ゲストの行動をサポートする、
ことを特徴とする移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、所定のエリア内において移動する移動体を管理する移動体システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な施設において、人に替わって特定の作業を行うために、ロボット等の移動体を利用することが提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザの持つ発信器に追従して、荷物を保持しながら自律的に移動する荷物運搬ロボットが開示されている。こうした移動体を、非日常的な世界観を持つ所定のエリア、例えば、遊園地やテーマパーク等のパークでも利用することが一部で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-123854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現状の移動体は、人の代わりに特定の作業を行う道具として機能しているに過ぎなかった。この場合、移動体は、所定のエリアの来訪者(以下「ゲスト」と呼ぶ)にとって便利なものではあるものの、ゲストが、移動体に対して、特段の愛着を持つことはなかった。その結果、従来、移動体は、ゲストが所定のエリアに来ることの動機付けとならなかった。
【0005】
そこで、本明細書では、ゲストが愛着を持ちやすく、所定のエリアに来ることの動機付けとなり得る移動体を備えた移動体システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する移動体システムは、所定のエリア内において移動する移動体を管理する移動体システムであって、1以上のゲストで構成されるゲストグループに対応付けられた移動体と、前記移動体の外観の変化を管理する管理装置と、を備え、前記管理装置は、前記所定のエリア内における前記ゲストの行動を示す行動情報を収集する行動収集部と、前記行動収集部で収集された前記行動情報に基づいて、前記移動体の前記体形を変化させる外観管理部と、を備え、前記移動体は、前記体形の変化に応じて、前記ゲストに提供する機能を増減する、ことを特徴とする。
【0007】
ゲストの行動に応じて移動体のゲストから見た外観を変化させることで、ゲストは、移動体を「育成」しているような印象を持つ。その結果、ゲストの移動体への愛着、ひいては、所定のエリアへの思い入れが向上する。また、外観の変化に応じて、提供機能を増減させることで、移動体の外観だけでなく、中身も成長したような印象をゲストに与えることができる。これにより、移動体が成長する「生き物」のような印象を、より強くゲストに与えることができ、ゲストの移動体に対する愛着をより向上できる。
【0008】
この場合、前記外観管理部は、前記ゲストの前記移動体に対するサポート動作の量で前記ゲストを評価し、当該評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させてもよい。
【0009】
かかる構成とすることで、ゲストが移動体のサポートを積極的に行うため、移動体システムをより円滑に運営できる。
【0010】
また、前記外観管理部は、前記行動情報に基づいて、前記ゲストの行動を道徳的観点から評価し、その評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させてもよい。
【0011】
かかる構成とすることで、各ゲストが、道徳的に望ましい行動を積極的にとる。その結果、ゲストは、所定のエリア内で気持ちよく過ごすことができる。
【0012】
また、前記外観管理部は、前記行動情報に基づいて、前記ゲストの行動を消費活動の多寡で評価し、その評価が高いほど、前記移動体を、成長量の多い外観または希少性の高い外観に変化させてもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、ゲストが、消費活動を積極的に行うようになり、所定のエリアの収益性が向上する。
【0014】
また、前記移動体は、構成要素の少なくとも一部を、伸縮または膨縮または格納/展開することで、前記体形が変化可能であってもよい。
【0015】
かかる構成とした場合、ゲストは、拡張現実グラス(以下「ARグラス」という)等を用いなくても、移動体の外観変化を見ることができる。その結果、ゲストは、ARグラス等を装着する煩わしさがなく、所定のエリア内でより快適にすごすことができる。
【0016】
また、さらに、現実の像に、仮想的なオブジェクト画像を重畳して表示する拡張現実表示装置を備え、前記拡張現実表示装置は、前記移動体の外観を示す複数の画像を前記オブジェクト画像として記憶しており、前記外観管理部は、前記行動収集部で収集された前記行動情報に基づいて、前記現実の像と重畳する前記オブジェクト画像を変更させることで、前記ゲストから見た前記移動体の前記体形を変更させてもよい。
【0017】
かかる構成とした場合、重畳するオブジェクト画像を変更することで、ゲストから見た移動体の外観を変更できるため、移動体の外観の変化の自由度を、より向上できる。
【0018】
また、前記行動収集部は、前記ゲストを撮像した画像データ、前記ゲストの発話を録音した録音データ、および、前記ゲストの決済履歴を示す決済データ、および、前記移動体のサポートリクエストに対する前記ゲストの反応を示すサポートデータ、の少なくとも一つを前記行動情報として収集してもよい。
【0019】
また、前記所定のエリアは、遊園地またはテーマパークであるパークであり、前記ゲストは、前記パークへの来場者であり、前記移動体は、前記ゲストグループに貸与され、前記ゲストと連携して自律的に移動し、前記ゲストの行動をサポートしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示する移動体システムによれば、ゲストの移動体に対する愛着が向上し、当該移動体が、所定のエリアに来ることの動機付けとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】移動体システムの構成を示すイメージ図である。
図2】管理装置の構成を示すブロック図である。
図3】移動体の外観の変化の一例を示す図である。
図4】管理装置の機能ブロック図である。
図5】管理リストの一例を示す図である。
図6】外観変化の管理のために管理装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図7】移動体システムの他の例を示す図である。
図8】ARグラスによって移動体の外観を変化させる様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して移動体システム10の構成について説明する。図1は、移動体システム10の構成を示す図である。移動体システム10は、非日常的な世界観を持つ所定のエリアである特定のパーク(例えば遊園地やテーマパーク等)において、当該パークの来園者(以下「ゲスト100」と呼ぶ)の行動をサポートするとともに、ゲスト100を楽しませるためのシステムである。かかる移動体システム10は、移動体12と、当該移動体12を管理する管理装置14と、を有している。
【0024】
移動体12は、1以上のゲスト100で構成されるゲストグループ102に貸与される。ゲストグループ102は、行動をともにするゲスト100の集合体である。家族あるいは友人同士でパークに来た場合、この家族あるいは友人同士が一つのゲストグループ102を構成する。また、一人のゲスト100が、単身でパークに来た場合、当該一人のゲスト100で一つのゲストグループ102が構成される。図1では、一人のゲスト100で一つのゲストグループ102が構成されている。
【0025】
移動体12は、当該移動体12を借り受けたゲスト100と連携して自律的に移動し、ゲスト100の行動をサポートする。ここで、「連携」とは、連携相手と通信して情報または指示を取得し、取得した情報または指示に応じて自身の行動の少なくとも一部を決定することを意味する。本例において、移動体12は、ゲスト100の所有する携帯端末104と通信して、情報または指示を取得し、取得した情報または指示に応じて、自身の行動を決定する。また、ゲスト100の行動をサポートするために、移動体12は、ゲスト100からのリクエストに応じて、ルート案内や荷物の運搬、ゲスト100の輸送、電子決済処理、等を行う。
【0026】
さらに、本例の移動体12は、後に詳説するように、ゲスト100の行動に応じて、ゲスト100から見た外観を変化させる。ここで、「外観を変化させる」とは、生物における「成長」を連想させる変化であり、例えば、移動体12の体形の変化を含む。こうした外観の変化は、のちに詳説するが、例えば、移動体12の一部を伸縮、膨縮、格納、展開することで実現できる。こうした外観の変化は、初期外観から始まり、当該初期外観よりも成長量の多い、または、希少性の高い外観である最終外観へと進んでいく。
【0027】
また、こうした外観の変化に連動して、移動体12がゲスト100に提供する機能を増減させてもよい。例えば、初期外観において移動体12は、荷物の運搬を行わないが、外観が「成長」し、最終外観に近づけば、荷物の運搬を行うようにしてもよい。
【0028】
こうした移動体12の外観の変化は、一種のショーとして機能し、ゲスト100をより楽しませることができる。また、ゲスト100の行動に応じて、移動体12の外観、さらには、機能が変化することで、ゲスト100は、移動体12を「育成」しているような印象を受ける。そして、移動体12を「育成」することで、ゲスト100の移動体12への愛着が増加する。そして、これにより、移動体12が、ゲスト100がパークに来ることの動機付けとなる。つまり、本例の移動体12は、単なる道具として機能するだけでなく、ゲスト100を楽しませ、パークへの思い入れを高めるための演出としても機能する。
【0029】
管理装置14は、移動体12の外観変化を管理する。具体的には、管理装置14は、各移動体12がいずれのゲストグループ102に貸与されたかを管理する。また、管理装置14は、後に詳説するように、パーク内におけるゲスト100の行動を示す行動情報を収集する。管理装置14は、ゲスト100の行動情報を収集するために、様々な機器と通信する。具体的には、管理装置14は、ゲスト100が所持する携帯端末104や、移動体12、パーク内に設置された監視カメラ、アトラクションの管理サーバ、パークのスタッフが所持する端末等と通信する。管理装置14は、これらの機器から送信される各種データを解析し、ゲスト100の行動を認識する。
【0030】
管理装置14は、この収集された行動情報に基づいて、各移動体12の外観を決定する。具体的には、管理装置14は、ゲスト100が、パークの運営者にとって望ましい行動をより多く行った場合に、移動体12の形態を最終外観に近づける。また、管理装置14は、ゲスト100が、運営者にとって望ましくない行動をとった場合には、移動体12の外観を初期外観に近づくように変化させてもよい。例えば、管理装置14は、ゲスト100のパーク内での消費活動が活発であるほど、移動体12の外観を、最終外観に近づくように、変化させてもよい。また、管理装置14は、ゲスト100が道徳的に評価できない行動を多くとった場合には、移動体12の外観を、初期形態に近づくように変化させてもよい。いずれにしても、管理装置14は、ゲスト100の行動に応じて移動体12の外観を決定し、この決定された外観に変化するように、移動体12に対して変化指令を出力する。移動体12は、当該変化指令に従い、その外観を変化せる。このように、ゲスト100の行動に応じて移動体12の外観を変化させることで、ゲスト100が、運営者にとって望ましい行動を積極的にとり、望ましくない行動を避けるように誘導できる。
【0031】
次に、移動体12および管理装置14の具体的な構成について説明する。図2は、移動体12の構成を示すブロック図である。移動体12は、自律的に移動可能となっている。この移動を実現するために、移動体12は、駆動ユニット30を有している。駆動ユニット30は、移動体12を移動させるためのユニットで、例えば、車輪や無限軌道等の走行体と、当該走行体に動力を付与するモータと、を有している。環境センサ34は、移動体12の周囲の状態を検知するためのセンサであり、例えば、位置を検知するセンサ(例えばGPSセンサ等)、周囲の物体を検知するセンサ(例えばLidar、ミリ波レーダ、ソナー、磁気センサ等)、周囲の様子を撮像するカメラ等を含む。後述するコントローラ46は、これらの環境センサ34で検知された情報に基づいて駆動ユニット30の駆動を制御する。
【0032】
バッテリ32は、移動体12に設けられた電気部品、例えば、モータやコントローラ46等に供給する電力を蓄積している。このバッテリ32は、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ32は、移動体12に分離不能に取り付けられていてもよいし、必要に応じて、移動体12から取り外しできてもよい。
【0033】
変形機構36は、移動体12の外観を変化させるための機構で、例えば、移動体12に設けられた変形要素を伸縮、膨縮、格納、展開するためのアクチュエータ(例えばモータや電磁シリンダ、空圧シリンダ等)と、アクチュエータの動力を変形要素に伝達する伝達機構と、を有する。こうした変形機構36の駆動も、コントローラ46により制御される。
【0034】
通信装置44は、移動体12の外部の情報機器と無線通信するためのものである。特に、本例では、通信装置44は、管理装置14およびゲスト100の携帯端末104と通信可能となっている。通信装置44は、管理装置14および携帯端末104との通信を可能にするために、複数種類の通信規格に対応していてもよい。例えば、通信装置44は、WiFi(登録商標)またはモバイルデータ通信を利用してインターネット通信ができるものでもよい。また、通信装置44は、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応していてもよい。
【0035】
さらに、移動体12は、決済装置42を有している。決済装置42は、ゲスト100の決済処理を受け付ける。決済の形態は、特に限定されず、現金決済、プリペイドカード決済、自動引き落とし決済、クレジットカード決済、バーコード決済の少なくとも一つを含んでもよい。これらの決済に対応するために、決済装置42は、投入された現金の金額を計数して必要に応じて釣銭を出す金銭装置や、カードリーダ、RFIDリーダ、バーコードリーダ等を有してもよい。ゲスト100は、この決済機能を利用して、各種物品(例えば土産や食事等)が購入できるほか、パーク内のアトラクションのチケットも購入できる。こうした決済装置42を用いた決済の履歴は、決済データとして、管理装置14に送信される。管理装置14は、決済データを解析し、ゲスト100の消費行動を認識する。
【0036】
移動体12には、さらに、カメラ38およびマイク40も搭載されている。カメラ38およびマイク40は、ゲスト100およびゲスト100の同行者の行動を記録するために設けられている。すなわち、カメラ38は、ゲスト100を撮像し、マイク40は、ゲスト100の発話を録音する。撮像データおよび録音データは、移動体12から管理装置14に送信される。管理装置14は、この撮像データおよび録音データを解析し、ゲスト100の行動を認識する。なお、カメラ38およびマイク40の設置個数は、一つでもよいし、複数でもよい。
【0037】
コントローラ46は、移動体12を構成する各部の駆動を制御する。また、コントローラ46は、必要に応じて、ゲスト100の行動を示す情報、すなわち、行動情報を、管理装置14に送信する。行動情報としては、カメラ38での撮像データ、マイク40での録音データ、決済履歴を示す決済データが含まれる。
【0038】
また、移動体12は、ゲスト100のサポートが必要な場合には、サポートリクエストを出力する。サポートリクエストは、ゲスト100にサポート動作の実行を要求するものである。要求するサポート動作としては、例えば、バッテリ32の交換動作や、移動体12の少なくとも一部の清掃動作、脱輪や転倒した移動体12を走行可能な状態に復帰させる復帰動作等が含まれる。こうしたサポートリクエストは、携帯端末104を介して出力されてもよいし、移動体12に設けられたディスプレイやスピーカー(いずれも図示せず)を介して出力されてもよい。いずれにしても、コントローラ46は、このサポートリクエストを出力した後、一定時間内に、ゲスト100により、リクエストしたサポート動作が実行されたか否かを確認し、その確認結果を、サポートデータとして記憶装置46bに記憶する。すなわち、サポートデータは、ゲスト100が実行したサポート動作の内容を示すデータといえる。コントローラ46は、このサポートデータも、行動情報の一種として、管理装置14に送信する。
【0039】
なお、コントローラ46は、プロセッサ46aと記憶装置46bとを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ46aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ46aの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、記憶装置46bも、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、記憶装置46bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0040】
次に、移動体12の外観の変化について図3を参照して説明する。図3は、移動体12の外観の変化の一例を示す図である。繰り返し述べる通り、移動体12は、その外観を変化させることができる。この外観の変化は、生物の「成長」や「変態」を連想させるような変化であり、例えば、体形の変化を含む。こうした外観の変化は、移動体12の一部を伸縮、膨縮、格納、展開することで実現できる。
【0041】
図3の例では、移動体12は、伸縮可能な胴部72と、展開または格納できる頭部70と、を有している。胴部72は、入れ子状に配置され、互いにスライド移動できる第一胴部72a、第二胴部72bおよび第三胴部72cを有しており、これらを相互にスライド移動させることで、胴部72が伸縮する。また、頭部70は、第三胴部72cの内部に格納した状態から、第三胴部72cの外側に展開した状態に変化可能である。図3の例では、胴部72が完全に収縮し、かつ、頭部70が第三胴部72cの内部に格納された状態が初期外観となる。また、胴部72が完全に伸長し、かつ、頭部70が第三胴部72cの上側に展開した状態が、最終外観となる。以下の説明では、この初期外観を、外観レベルLa=1、最終外観を外観レベルLa=4とし、その中間の外観を、La=2,La=3として取り扱う。
【0042】
また、移動体12は、その外観の変化に伴い、ゲスト100に提供可能な機能を増減させてもよい。例えば、移動体12は、その外観が最終外観に近づくにつれて、ゲスト100に提供可能な機能を増加させてもよい。かかる構成とすることで、移動体12が見た目だけでなく中身も「成長」しているような印象をゲスト100に与えることができる。そして、これによりゲスト100は、移動体12を単なる道具ではなく、「生き物」のように感じることができ、ゲスト100の移動体12への愛着を向上できる。
【0043】
図3の例では、移動体12は、最終外観に近づくことで、ゲスト100の荷物の運搬という機能が提供可能となる。すなわち、図3の例では、移動体12が初期外観のときには、第一胴部72aの内部に第二胴部72bが収容されているため、当該第一胴部72aに、ゲスト100の荷物を収容できない。一方、移動体12の外観レベルLaが3以上になれば、第二胴部72bの大部分が第一胴部72aの外側に移動するため、第一胴部72aの内部に荷物収容の空間が形成できる。この状態になれば、移動体12は、荷物の運搬機能をゲスト100に提供する。なお、図3に示す構成は一例であり、最終外観に近づくことで増加する機能は、荷物の運搬に限らず、他の機能でもよい。例えば、増加する機能は、ゲスト100の輸送機能や、ゲスト100との会話機能、ゲスト100の代わりに物品購入を行う代行機能等でもよい。
【0044】
さらに、移動体12は、その外観の変化に伴い、ゲスト100に対する挙動を変化させてもよい。例えば、移動体12は、その外観が最終外観に近づくにつれて、ゲスト100への愛情表現動作を増加させてもよい。愛情表現動作は、例えば、ゲスト100の周囲を旋回する動作や、ゲスト100の発話に呼応して特定の音声を出力する動作等が含まれる。かかる構成とすることで、ゲスト100の移動体12への愛着がより増加する。
【0045】
次に、管理装置14の構成について説明する。管理装置14は、上述した通り、移動体12の外観の変化を管理するもので、物理的には、図1に示すように、プロセッサ16と、記憶装置18と、通信装置20と、を有するコンピュータである。
【0046】
プロセッサ16は、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサや、専用のプロセッサを含む。また、以下に述べるプロセッサ16の動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、記憶装置18も、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、記憶装置18は、半導体メモリおよび磁気ディスクの少なくとも一つを含んでもよい。通信装置20は、管理装置14の外部の機器と通信するためのもので、例えば、WiFi(登録商標)またはモバイルデータ通信を利用してインターネット通信ができる。
【0047】
図4は、管理装置14の機能ブロック図である。管理装置14は、機能的には、図4に示すように、通信装置20と行動収集部62と外観管理部64とを有している。通信装置20は、上述した通り、管理装置14の外部機器と通信する。より具体的には、通信装置20は、移動体12や、ゲスト100の携帯端末104、監視カメラ、アトラクションの管理サーバ、パークのスタッフが所有する端末等と通信する。
【0048】
行動収集部62は、通信装置20を介して、ゲスト100の行動を示す行動情報を収集し、一時記憶する。行動情報としては、例えば、ゲスト100を撮像した画像データ、ゲスト100の発話を録音した音声データ、ゲスト100の決済履歴データ、移動体12から取得したサポートデータ等が含まれる。
【0049】
外観管理部64は、行動収集部62に一時記憶された行動情報に基づいて、ゲスト100の行動を解析し、その解析結果に応じて、移動体12の外観を管理する。この外観管理部64の構成の説明に先立って、当該外観管理部64で管理記憶している管理リスト66について図5を参照して説明する。
【0050】
図5は、管理リスト66の一例を示す図である。管理リスト66は、外観管理部64が、各移動体12の外観の変化を管理するために、管理記憶しているリストである。管理リスト66には、外観レベルLaの管理に必要な各種情報を、ゲストグループ102ごとに分けて記憶されている。図5の例では、管理リスト66には、ゲストID、サポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Sc、外観レベルLa、および、移動体IDが記録されている。さらに、図5には図示しないが、管理リスト66には、上述の項目の他、ゲスト100の携帯端末104の識別情報や、決済に用いるクレジットカードの情報、ゲスト100の連絡先、ゲスト100の属性(性別や住所等)等も記録されてもよい。
【0051】
ゲストIDは、ゲストグループ102を構成する1以上のゲスト100のうち、代表者のゲスト100の識別情報である。また、移動体IDは、ゲストグループ102に貸与された移動体12の識別情報である。ゲストグループ102が、パークに、まだ来園しておらず、ゲストグループ102に移動体12が貸与されていない場合、移動体IDの項目には、Nullが記録される。
【0052】
サポート評価点Ssは、ゲスト100による移動体12へのサポート動作の量を示す評価点である。サポート動作の種類は、特に限定されないが、例えば、移動体12の清掃や、バッテリ32の交換、転倒や脱輪等により走行不能になった移動体12を復帰させる動作等がサポート動作に該当する。ゲスト100は、移動体12からのサポートリクエストを受けて、こうしたサポート動作を実行する。
【0053】
道徳評価点Smは、ゲスト100の行動を道徳的観点で評価した評価点である。したがって、道徳評価点Smは、ゲスト100が、道徳的に望ましい行動を多く取るほど高くなり、道徳的に望ましくない行動を多く取るほど低くなる。道徳的に望ましい行動としては、例えば、路上のゴミを拾ったり、座席を高齢者に譲ったり、移動体12に適度な愛情表現(例えば頭部70を撫でる等)を行ったりすることが挙げられる。道徳的に望ましくない行動としては、ゴミのポイ捨てや、行列への割り込み、移動体12および他者への暴力・暴言等が挙げられる。消費評価点Scは、ゲスト100のパーク内での消費行動を評価した評価点である。消費評価点Scは、消費行動が活発であるほど、高くなる。
【0054】
外観管理部64は、行動収集部62に一時記憶された行動情報を解析し、各ゲストグループ102のサポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Scを随時、算出し、管理リスト66に記録する。また、外観管理部64は、算出された評価点Ss,Sm,Scに基づいて、ゲストグループ102に適用される外観レベルLaを決定する。この外観レベルLaの決定方法は、特に、限定されないが、例えば、サポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Scの合計点Ssumに基づいて、外観レベルLaを決定してもよい。また別の形態として、サポート評価点Ssから求まるレベルLsと、道徳評価点Smから求まるレベルLmと、消費評価点Scから求まるレベルLcと、をそれぞれ算出し、算出された三つのレベルLs,Lm,Lcのうち最も低いレベルを、ゲストグループ102に適用する外観レベルLaとして採用してもよい。いずれにしても、外観管理部64は、決定された外観レベルLaを管理リスト66に記録する。また、外観管理部64は、記録されている外観レベルLaを含む変化指令を移動体12に通知する。この変化指令を受けた移動体12は、当該変化指令に含まれる外観レベルLaに応じた外観をとる。なお、管理リスト66に記録されるサポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Sc、外観レベルLaの値は、ゲストグループ102が、パークを出た時点で初期値にリセットしてもよいし、パークを出た後も維持されるようにしてもよい。前者の場合、ゲスト100は、パークに来るたびに、移動体12の育成を楽しむことができる。後者の場合、過去の来園実績が移動体12の外観に反映されるため、パークに繰り返し来園する動機付けがゲスト100に生じる。
【0055】
図4に戻り、外観管理部64の具体的構成を説明する。外観管理部64は、機能的には、図4に示すように、画像解析部64a、音声解析部64b、評価点算出部64c、および、レベル決定部64dを有する。
【0056】
画像解析部64aは、行動収集部62に一時記憶されている撮像データを解析し、ゲスト100の動作を認識する。例えば、画像解析部64aは、予め、複数の対象動作を記憶しており、当該対象動作に合致する動作を撮像データから抽出し、ゲスト100の動作を認識する。予め記憶される対象動作は、評価点の算出に関係する動作であり、例えば、ゴミ拾いやポイ捨て等の動作である。画像解析部64aは抽出された動作の種類を、評価点算出部64cに出力する。
【0057】
音声解析部64bは、行動収集部62に一時記憶されている音声データを解析し、ゲスト100の発話内容を認識する。例えば、音声解析部64bは、音声データに公知の音声認識技術を適用し、当該音声データをテキストデータに変換する。さらに、音声解析部64bは、得られたテキストデータに対してテキストマイニング処理を施し、発話内容を把握する。把握された発話内容は、評価点算出部64cに出力される。
【0058】
評価点算出部64cは、各ゲストグループ102のサポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Scを算出し、算出された値を管理リスト66に記録する。この算出のために、外観管理部64は、行動リスト68を記憶している。行動リスト68は、様々な行動に対応する各評価点の値を記録したリストである。例えば、「ゴミ拾い」という行動には「Sm=1」という値が、「ポイ捨て」という行動には「Sm=-1」という値が、他者に対して好意的な発話という行動には、「Sm=1」という値が、「バッテリ交換」という行動には「Ss=1」という値が、それぞれ設定される。
【0059】
評価点算出部64cは、画像解析部64aにおいて撮像データから抽出された動作の種類を行動リスト68に照らし合わせ、抽出された動作に対応する評価点の加算値を特定し、現在の評価点に反映する。例えば、画像解析部64aにおいて、あるゲスト100に関して、「ポイ捨て」の動作が抽出された場合、評価点算出部64cは、当該ゲスト100の現在の道徳評価点Smから1だけ減算した値を、新たな道徳評価点Smとして算出する。同様に、評価点算出部64cは、音声解析部64bから送られた。発話内容を発話リストに照らし合わせ、ゲスト100の発話内容に対応する評価点の加算値を特定し、現在の評価点に反映する。
【0060】
また、評価点算出部64cは、行動収集部62に一時記憶されているサポートデータに基づいてサポート評価点Ssを算出する。サポートデータは、上述した通り、移動体12からのサポートリクエストに対するゲスト100の反応を記録したデータであり、ゲスト100が行ったサポート動作の内容を示すデータである。評価点算出部64cは、このサポートデータに記録されているサポート動作の内容を、行動リスト68に照らし合わせて、評価点の加算値を特定し、現在の評価点に反映する。
【0061】
また、評価点算出部64cは、行動収集部62に一時記憶されている決済データに基づいて、消費評価点Scを算出する。消費評価点Scは、例えば、消費金額に比例してもよい。別の形態として、消費評価点Scは、消費金額の他に、消費頻度、消費費目および決済方法の少なくとも一つを、考慮して算出されてもよい。例えば、消費金額が同じでも、消費頻度が高いほうが、消費評価点Scが高くなるようにしてもよい。また、消費金額が同じでも、消費費目によって消費評価点Scが異なるようにしてもよい。例えば、消費金額が同じでも、土産物購入の場合、レストランでの飲食よりも、消費評価点Scが高くなるようにしてもよい。また、消費金額が同じでも、電子決済の場合、現金決済よりも、消費評価点Scが高くなるようにしてもよい。
【0062】
レベル決定部64dは、管理リスト66に記録された評価点を定期的に確認し、この評価点に基づいて、ゲスト100に適用される外観レベルLaを決定する。この決定方法は、上述した通り、特に限定されず、例えば、サポート評価点Ss、道徳評価点Sm、消費評価点Scの合計点Ssumに基づいて外観レベルLaを決定してもよいし、各評価点ごとに決定されたレベルのうち最小のレベルを外観レベルLaとして決定してもよい。
【0063】
レベル決定部64dは、決定された外観レベルLaが、管理リスト66に記録されている外観レベルLaと異なる場合には、決定された外観レベルLaを管理リスト66に記録するとともに、移動体12に、決定された外観レベルLaの外観への変化を指示する変化指令を出力する。変化指令を受けた移動体12は、当該変化指令で指令された外観レベルLaの外観に変化する。また、移動体12は、外観レベルLaに応じて、ゲスト100に提供する機能を増減させてもよい。また、移動体12は、外観レベルLaに応じて、ゲスト100に対する愛情表現動作が増減するように、その挙動を変化させてもよい。
【0064】
次に、こうした移動体システム10における移動体12の外観変化の管理の流れについて図6を参照して説明する。図6は、外観変化の管理のために管理装置14が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
管理装置14は、移動体12の外観変化を管理するために、各ゲストグループ102のID登録を受け付ける(S10)。このID登録では、ゲストグループ102内の代表者のゲスト100の携帯端末104の識別情報や、決済に用いるクレジットカードの情報、ゲスト100の連絡先、ゲスト100の属性(性別や住所等)等をゲスト100から取得し、管理リスト66に記録する。また、ID登録がなされれば、管理装置14は、当該ゲストグループ102に対応する評価点および外観レベルLaを初期化する(S12)。すなわち、ゲストグループ102の評価点として、Ss=0,Sm=0,Sc=0,La=1を管理リスト66に記録する。
【0066】
その後、管理装置14は、ゲストグループ102に移動体12が貸与されるまでは、待機する。一方、ゲストグループ102に移動体12が貸与された場合(S14でYes)、管理装置14は、貸与された移動体12のIDを管理リスト66に記録する(S15)。また、管理装置14は、管理リスト66に記録された外観レベルLaを確認し、当該外観レベルLaへの変化を指令する変化指令を、貸与された移動体12に送信する(S16)。
【0067】
その後、管理装置14は、ゲスト100の行動情報を収集する(S18)。具体的には、管理装置14は、撮像データや、音声データ、サポートデータ、および、決済データを、行動情報として収集する。また、管理装置14は、収集された行動情報に基づいて、ゲスト100の評価点を算出し、その値を管理リスト66に記録する(S20)。さらに、管理装置14は、管理リスト66に記録された評価点に基づいて、ゲストグループ102に適用される外観レベルLaを決定する(S22)。外観レベルLaを決定すれば、管理装置14は、算出された外観レベルLaと、管理リスト66に記録されている現在の外観レベルLaと、を比較する(S24)。比較の結果、算出された外観レベルLaが、現在の外観レベルと同じ場合(S24でNo)、管理装置14は、ステップS28に進む。
【0068】
一方、算出された外観レベルLaが、現在の外観レベルと異なる場合(S24でYes)、管理装置14は、算出された外観レベルLaを管理リスト66に記録するとともに、移動体12に、外観の変化を指示する変化指令を送信する(S26)。これにより、移動体12は、指令された外観レベルLaに応じた外観に変化する。また、移動体12は、この外観変化に応じて、ゲスト100に提供する機能や、ゲスト100に対する愛情表現動作を増減させてもよい。
【0069】
ステップS28では、管理装置14は、移動体12のパークへの返却の有無を確認する。移動体12が返却されず、引き続きゲスト100に貸与されている場合(S28でNo)、管理装置14は、ステップS18に戻り、行動情報の収集および外観レベルLaの算出を繰り返す。一方、ゲスト100がパークから退出し、移動体12がパークに返却された場合(S28でYes)、管理装置14は、管理リスト66において、ゲスト100に対応する移動体12の識別情報を削除したうえで(S30)、ステップS14に戻る。
【0070】
なお、図6の例では、各評価点および外観レベルLaは、移動体12が返却された後も維持されている。しかし、これらの値は、移動体12が返却された時点でリセットされてもよい。この場合、管理装置14は、ステップS30において、移動体12のIDを削除した後、ステップS12に戻る。
【0071】
以上の説明から明らかな通り、本例では、ゲスト100の行動に応じて、移動体12の外観が変化する。かかる構成とすることで、ゲスト100は、移動体12に対する愛着が向上し、パークでの滞在をより楽しむことができる。また、パークの運営者にとって望ましい行動が多いほど、移動体12は、成長量の多い、または、希少性の高い外観に変化する。かかる構成とすることで、ゲスト100には、パークの運営者にとって望ましい行動を積極的に取ろうとする動機付けが生まれる。換言すれば、本例によれば、ゲスト100の行動を、パークの運営者にとって望ましい方向に誘導できる。
【0072】
例えば、本例では、ゲスト100の行動を、道徳的観点から評価している。かかる構成とすることで、ゲスト100は、道徳的に望ましい行動を積極的に取るようになる。ここで、道徳的に望ましくない行動は、一般的に他者を不快にしたり、迷惑を与えたりする。こうした道徳的に望ましくない行動が抑制されることで、ゲスト100は、パーク内で気持ちよく過ごすことができる。
【0073】
また、本例では、ゲスト100が、移動体12に対して行ったサポート動作も評価している。かかる構成とすることで、ゲスト100は、移動体12のサポート動作を積極的に取るようになる。これにより移動体12をより円滑に運営することが可能となる。また、本例では、ゲスト100の消費行動も評価している。かかる構成とすることで、ゲスト100が、積極的に消費を行うようになり、パークの収益性を高めることができる。
【0074】
次に、移動体システム10の他の例について説明する。図7は、移動体システム10の他の例を示す図である。この移動体システム10は、移動体12の外観を変化させる原理以外は、図1図6で説明した移動体システム10とほぼ同じである。そこで、以下では、当該移動体システム10における移動体12の外観変化の原理についてのみ説明する。
【0075】
図7の移動体システム10では、移動体12の機械的構造を変化させることなく、拡張現実技術を用いて、ゲスト100から見た移動体12の外観を変化させる。具体的には、図7の例において、移動体システム10は、移動体12および管理装置14に加え、さらにARグラス80を有している。
【0076】
ARグラス80は、現実空間を撮像したリアル画像に、仮想のオブジェクト画像を重畳した重畳画像を生成し、この重畳画像をユーザの視野画像として提供するメガネ型の表示装置である。リアル画像にオブジェクト画像を重畳することで、ユーザは、オブジェクト画像が示すオブジェクトが現実に存在しているかのような錯覚を覚える。図8は、このARグラス80によって移動体12の外観を変化させる様子を示すイメージ図である。
【0077】
図8に示すように、ARグラス80は、リアル画像90を取得するためのカメラ82と、重畳画像92を表示するメガネ型表示部84と、カメラ82およびメガネ型表示部84の駆動を制御するとともに重畳画像92を生成するコントローラ86と、を有している。また、ARグラス80は、オブジェクト画像として、各外観レベルLaに対応する移動体12の三次元画像データ94を記憶している。
【0078】
ARグラス80は、移動体12とともにゲスト100に貸与される。管理装置14は、ゲスト100の行動に基づいて、移動体12の外観レベルLaを決定する。この外観レベルLaの決定方法は、図1の移動体システム10と同じである。管理装置14は、決定された外観レベルLaをARグラス80および移動体12に通知する。ARグラス80は、通知された外観レベルLaに対応するオブジェクト画像12*(すなわち移動体12の三次元画像データ94)を選択し、選択されたオブジェクト画像12*をリアル画像90における移動体12の像に重畳し、重畳画像92を生成する。そして、ARグラス80は、生成された重畳画像92を、メガネ型表示部84に表示させる。これにより、ARグラス80を装着したゲスト100は、移動体12の外観が、オブジェクト画像12*で示された外観であると認識する。換言すれば、ARグラス80を用いることで、移動体12の機械的構造を変えることなく、ゲスト100から見た移動体12の外観を変化させることができる。そして、この場合、移動体12の機械的構造を変化させる必要がないため、移動体12の外観の変更の自由度がより高くなる。
【0079】
以上の説明で明らかなとおり、図7図8の移動体システム10においても、ゲスト100の行動に応じて、ゲスト100から見た移動体12の外観が変化する。そのため、この場合でも、ゲスト100は、移動体12に対する愛着が向上し、パークでの滞在をより楽しむことができる。また、ゲスト100の行動を、パークの運営者にとって望ましい方向に誘導できる。
【0080】
なお、ここまで説明した構成は一例であり、ゲスト100の行動に応じて、ゲスト100から見た移動体12の外観を変化させるのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、外観を変化させる基準は、適宜変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、サポート行動、道徳的行動、消費行動の三種の行動全てに基づいて外観レベルLaを決定しているが、この三種の行動全てを考慮する必要はない。したがって、例えば、サポート行動の量だけで外観レベルLaを決定してもよいし、道徳的行動の量だけで外観レベルLaを決定してもよい。さらに、ゲスト100の行動に応じて外観を決定するのであれば、他の基準に基づいて外観を決定してもよい。例えば、ゲスト100のパークへの来園回数や、ゲスト100がパーク内において特定のミッションをクリアしたか否か、等に基づいて外観レベルLaを決定してもよい。
【0081】
また、移動体12の外観を決定するにあたっては、ゲスト100のパーク内における行動に加えて、パーク外での行動も考慮してもよい。例えば、ゲスト100のパーク内での行動に加えて、パークのグッズの通信販売での購入履歴や、当該パークに関するコンテンツのSNSへの投稿等も考慮して、移動体12の外観を決定してもよい。さらに、別の形態として、移動体12を育成するコンピュータゲームを配信しておき、そのコンピュータゲームでのスコアも考慮して、移動体12の外観を決定してもよい。また、移動体12の形状や変化の態様は、適宜、変更されてもよい。例えば、移動体12は、電動カートや電動キックスケータ、飛行体のような形状でもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 移動体システム、12 移動体、14 管理装置、16 プロセッサ、18 記憶装置、20,44 通信装置、30 駆動ユニット、32 バッテリ、34 環境センサ、36 変形機構、38,82 カメラ、40 マイク、42 決済装置、46,86 コントローラ、62 行動収集部、64 外観管理部、64a 画像解析部、64b 音声解析部、64c 評価点算出部、64d レベル決定部、66 管理リスト、68 行動リスト、70 頭部、72 胴部、80 ARグラス、84 メガネ型表示部、90 リアル画像、92 重畳画像、94 三次元画像データ、100 ゲスト、102 ゲストグループ、104 携帯端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8