(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20240206BHJP
H01M 8/0265 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/2432 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20240206BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240206BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0265
H01M8/04 Z
H01M8/0612
H01M8/1226
H01M8/2432
H01M8/2484
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2020509381
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014381
(87)【国際公開番号】W WO2019189916
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018070345
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 久男
(72)【発明者】
【氏名】越後 満秋
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183177(JP,A)
【文献】特開2016-195029(JP,A)
【文献】特開2015-207509(JP,A)
【文献】特開2017-041404(JP,A)
【文献】特開平08-255617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内部流路を有する導電性の板状支持体を備え、
前記板状支持体は、当該板状支持体の少なくとも一部において、当該板状支持体の内側である前記内部流路と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で、少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とを記載順に有する電気化学反応部と、を有し、
前記板状支持体は、
前記内部流路内に、同方向に気体が通流する複数の流路を形成して
おり、
第一板状体と、第二板状体と、前記内部流路に収容されており、前記複数の流路を形成する複数流路形成体とを有し、
前記複数流路形成体は、長手方向の任意の箇所において形状が変わるように当該長手方向において分割されている、電気化学素子。
【請求項2】
内部に内部流路を有する導電性の板状支持体を備え、
前記板状支持体は、当該板状支持体の少なくとも一部において、当該板状支持体の内側である前記内部流路と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で、少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とを記載順に有する電気化学反応部と、を有し、
前記板状支持体は、
前記内部流路内に、同方向に気体が通流する複数の流路を形成しており、
第二板状体と、少なくとも前記内部流路に複数の流路を形成している第
一板状体とを含
み、
前記第一板状体は、長手方向の任意の箇所において形状が変わるように当該長手方向において分割されて一連に形成されている、電気化学素子。
【請求項3】
前記板状支持体の少なくとも一部が波状と成すように構成されている、請求項
2に記載の電気化学素子。
【請求項4】
前記複数流路形成体の少なくとも一部が波状と成すように構成されている、請求項
1に記載の電気化学素子。
【請求項5】
前記第一板状体が前記第二板状体と接触する接触部と、前記第一板状体が前記第二板状体と接触しない非接触部とによって前記内部流路内に前記複数の流路が形成されている、請求項
2または3に記載の電気化学素子。
【請求項6】
前記板状支持体は、長手方向に延びた板状に形成されており、
前記複数の流路は、前記長手方向に沿って延びている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電気化学素子。
【請求項7】
前記気体通流許容部は、前記板状支持体の少なくとも一部を貫通する複数の貫通孔が設けられている孔領域である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電気化学素子。
【請求項8】
前記複数の流路と一括して連通し前記気体が流通するマニホールドをさらに備える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の電気化学素子。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか一項に記載の複数の電気化学素子を有し、一の電気化学素子と他の電気化学素子とが電気的に接続される形態で、かつ前記板状支持体同士を対向させる形態で、複数の前記電気化学素子を並列に配置してなる、電気化学モジュール。
【請求項10】
請求項1~
8の何れか一項に記載の電気化学素子もしくは請求項
9に記載の電気化学モジュールと燃料変換器とを少なくとも有し、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールと前記燃料変換器との間で還元性成分を含有するガスを流通する電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~
8の何れか一項に記載の電気化学素子もしくは請求項
9に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから電力を取り出すインバータとを少なくとも有する電気化学装置。
【請求項12】
請求項1~
8の何れか一項に記載の電気化学素子もしくは請求項
9に記載の電気化学モジュールと、燃料変換器と、電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから電力を取り出す、あるいは電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを有する電気化学装置。
【請求項13】
請求項1~
8の何れか一項に記載の電気化学素子もしくは請求項
9に記載の電気化学モジュールに対して燃料変換器からの還元性成分ガスを流通する、あるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから燃料変換器に還元性成分ガスを流通する燃料供給部を有する電気化学装置。
【請求項14】
請求項
10~
13のいずれか一項に記載の電気化学装置と、電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するエネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部空間を有する長尺の筒状支持体と、筒状支持体の一面側に長手方向に沿って設けられた発電を行う電気化学反応部とを備える電気化学素子が開示されている。筒状支持体の長手方向の一端部は、水素を含む改質ガスを流通するガスマニホールドに接続されており、筒状支持体の内部空間に改質ガスが流通される。改質ガスは、筒状支持体の内部空間を長手方向の一端部から他端部に向かって流れる。また、筒状支持体には、内部空間から電気化学反応部に通じる貫通孔が設けられている。よって、電気化学反応部には、貫通孔を介して筒状支持体の内部空間から改質ガスが流通される。電気化学反応部は、筒状支持体に面する側から、電極層、電解質層及び対極電極層が順に積層されており、電極層に改質ガスが流通される。一方、対極電極層にはブロアから空気が流通される。これにより、電気化学反応部は改質ガスと空気とを電気化学反応させて発電を行う。
このような特許文献1の電気化学素子は、電気化学反応部が筒状支持体に支持されているので、電気化学素子全体の機械的強度を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の電気化学素子を改質ガスを燃料とした電気化学反応による発電素子として機能させた場合、筒状支持体の内部空間を長手方向の一端部から他端部に向かって改質ガスが通過するが、長手方向の任意の複数地点において、長手方向と直交する短手方向の各位置における改質ガスの流速が一定ではない。例えば、内部空間の短手方向の中央部では両端部よりも改質ガスの流速が速い。そのため、改質ガスの流速の遅い短手方向の両端部では、長手方向の一端部側では改質ガスが電極層に十分に流通されていても、長手方向の一端部から他端部に向かうほど改質ガスの濃度が減少し、長手方向の他端部側では電極層に流通される改質ガスが不足する場合がある。この場合、長手方向の他端部側の電極層では、燃料が欠乏する状態となり、電極層が酸化劣化して電極性能や機械的強度が低下する恐れがある。
【0005】
一方、短手方向の中央部では、長手方向の一端部から他端部に向かうほど改質ガスの濃度が減少するものの、短手方向の両端部に比べ改質ガスの流速く単位時間当りに流通される改質ガスが多いため、電極層で利用されなかった未反応の改質ガスが長手方向の他端部において排出される。
【0006】
よって、短手方向の両端部での電極層の酸化劣化を抑制するために、電気化学反応を抑制して長手方向の他端部側まで改質ガスを流通可能とすることが考えられる。この場合、短手方向の両端部だけでなく中央部においても電気化学反応が抑制されるため、電極層で利用されず長手方向の他端部で排出される未反応の改質ガスの量が増加する。そのため、電極層の酸化劣化を抑制できるものの、燃料利用率が低下して電気化学素子の電気化学反応の反応効率が低下する。
【0007】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、あるいは電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気化学素子の特徴構成は、
内部に内部流路を有する導電性の板状支持体を備え、
前記板状支持体は、当該板状支持体の少なくとも一部において、当該板状支持体の内側である前記内部流路と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で、少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とを記載順に有する電気化学反応部と、を有し、
前記板状支持体は、
前記内部流路内に、同方向に気体が通流する複数の流路を形成しており、
第一板状体と、第二板状体と、前記内部流路に収容されており、前記複数の流路を形成する複数流路形成体とを有し、
前記複数流路形成体は、長手方向の任意の箇所において形状が変わるように当該長手方向において分割されている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、板状支持体は、内部流路内に複数の流路を形成している。そのため、気体は、内部流路において複数の流路を流れることで、複数の流路それぞれに沿って別れて流れる。このように複数の流路に分かれて流れることによる整流作用により、気体は、複数の流路が形成されていない内部流路を流れる場合に比べて、気体の流れ方向と交差する流れ交差方向の任意の複数地点での流速が概ね一定となる。つまり、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、気体の流速が概ね一定である。よって、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、電気化学反応部に流通される気体の量を概ね一定にできる。これにより、電気化学反応部において、気体が不足する部分と、過剰に気体が流通される部分との差を小さくし、電気化学素子全体において電気化学反応を行わせて、電気化学素子の反応効率を向上できる。
本特徴構成によれば、複数流路形成体により内部流路に複数の流路が形成されている。気体は、複数の流路に沿って流れることによる整流作用により、各流路を流れる気体の流速が、流れ交差方向の任意の複数地点において概ね一定となる。よって、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、電気化学反応部に流通される気体の量を概ね一定とし、電気化学素子の反応効率を向上できる。
【0010】
本発明に係る電気化学素子の特徴構成は、
内部に内部流路を有する導電性の板状支持体を備え、
前記板状支持体は、当該板状支持体の少なくとも一部において、当該板状支持体の内側である前記内部流路と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で、少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とを記載順に有する電気化学反応部と、を有し、
前記板状支持体は、
前記内部流路内に、同方向に気体が通流する複数の流路を形成しており、
第二板状体と、少なくとも前記内部流路に複数の流路を形成している第一板状体とを含み、
前記第一板状体は、長手方向の任意の箇所において形状が変わるように当該長手方向において分割されて一連に形成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、板状支持体は、内部流路内に複数の流路を形成している。そのため、気体は、内部流路において複数の流路を流れることで、複数の流路それぞれに沿って別れて流れる。このように複数の流路に分かれて流れることによる整流作用により、気体は、複数の流路が形成されていない内部流路を流れる場合に比べて、気体の流れ方向と交差する流れ交差方向の任意の複数地点での流速が概ね一定となる。つまり、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、気体の流速が概ね一定である。よって、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、電気化学反応部に流通される気体の量を概ね一定にできる。これにより、電気化学反応部において、気体が不足する部分と、過剰に気体が流通される部分との差を小さくし、電気化学素子全体において電気化学反応を行わせて、電気化学素子の反応効率を向上できる。
本特徴構成によれば、例えば第二板状体に、少なくとも前記内部流路に複数の流路を形成している第一板状体を組み合わせることで容易に複数の流路を形成できる。
本特徴構成によれば、分割されて形成された一連の第一板状体によって第二板状体が支持されるため、第二板状体の機械的強度が高まる。その結果、第二板状体を含む板状支持体に支持される電気化学素子の曲げ強度が高まる。
【0014】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記板状支持体の少なくとも一部が波状と成すように構成されている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、板状支持体の少なくとも一部を波状に構成することで容易に複数の流路を形成できる。
【0016】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記複数流路形成体の少なくとも一部が波状と成すように構成されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、複数流路形成体の少なくとも一部を波状に構成することで容易に複数の流路を形成できる。
【0018】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記第一板状体が前記第二板状体と接触する接触部と、前記第一板状体が前記第二板状体と接触しない非接触部とによって前記内部流路内に前記複数の流路が形成されている点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、第一板状体と第二板状体との接触部及び非接触部によって、内部流路内に複数の流路が形成されている。つまり、非接触部が存在することで複数の流路のうち少なくとも一部は連通しており、流路を超えて気体が通流可能でありつつも、気体は、複数の流路それぞれに沿って別れて流れる。よって、複数の流路それぞれを流れる気体の整流作用によって、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、気体の流速を概ね一定にできる。
【0020】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記板状支持体は、長手方向に延びた板状に形成されており、
前記複数の流路は、前記長手方向に沿って延びている点にある。
【0021】
長手方向に延びる複数の流路に気体を流すことで、電気化学反応部との反応のための流路長を確保し、電気化学素子の反応効率を向上できる。
【0022】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記気体通流許容部は、前記板状支持体の少なくとも一部を貫通する複数の貫通孔が設けられている孔領域である点にある。
【0023】
本特徴構成によれば、気体通流許容部は、板状支持体の少なくとも一部を貫通する複数の貫通孔が設けられている孔領域であるので、板状支持体の少なくとも一部に気体通流許容部をより容易に選択的に設けることができる上に、板状支持体の強度をより高めることができる。したがって、強度および耐久性にすぐれた電気化学素子をより容易に実現できる。
【0026】
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、
前記複数の流路と一括して連通し前記気体が流通するマニホールドをさらに備える点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、流路の気体が流通される入口にマニホールドが備えられた場合には、複数の流路には、気体が溜められたマニホールドから一括して気体が流通される。よって、複数の流路において気体が流通される入口での圧力差を小さくでき、流れ交差方向の任意の地点における複数の流路間の気体の流速を概ね一定にできる。また、流路の気体が流通される出口にマニホールドが備えられた場合には、電気化学反応による排出ガスや生成ガスを効率良く収集することができる。
【0028】
本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、
複数の上記電気化学素子を有し、一の電気化学素子と他の電気化学素子とが電気的に接続される形態で、かつ前記板状支持体同士を対向させる形態で、複数の前記電気化学素子を並列に配置してなる点にある。
【0029】
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと燃料変換器とを少なくとも有し、前記電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと前記燃料変換器の間で還元性成分を含有するガスを流通する点にある。ここで、「供給部」とは、電気化学素子を「燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する」燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、還元性成分を含有するガスを供給する機能を担うが、電気化学素子を「電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する」電解セルとして機能させる場合には、還元性成分を含有するガスを排出する機能を担う。
つまり、電気化学モジュールと燃料変換器を有し電気化学モジュールと燃料変換器の間で還元性成分を含有するガスを流通する燃料供給部とを有するので、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用い、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
【0030】
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと、前記電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールから電力を取り出す電力変換器とを少なくとも有する点にある。
【0031】
上記の特徴構成によれば、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールから得られる電気出力を、電力変換器によって昇圧したり、直流を交流に変換したりすることができるため、電気化学モジュールで得られる電気出力を利用しやすくなるので好ましい。
【0032】
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと、燃料変換器と、電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールから電力を取り出すあるいは電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを有する点にある。
【0033】
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールに対して燃料変換器からの還元性成分ガスを流通する、あるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから燃料変換器に還元性成分ガスを流通する燃料供給部を有する点にある。
【0034】
上記の構成によれば、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する」燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、還元性成分を含有するガスを供給することができ、電気化学素子を「電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する」電解セルとして機能させる場合には、還元性成分を含有するガスを燃料変換器に導くことが出来る。
つまり、電気化学モジュールと燃料変換器とを有し電気化学モジュールと燃料変換器との間で還元性成分を含有するガスを流通する燃料供給部を有するので、電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用いて供給される天然ガス等より改質器などの燃料変換器により水素を生成する構成とすると、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
【0035】
電気化学素子モジュールを電解セルとして動作させる場合は、電極層に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層と対極電極層との間に電圧が印加される。そうすると、電極層において電子e-と水分子H2Oや二酸化炭素分子CO2が反応し水素分子H2や一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。酸素イオンO2-は電解質層を通って対極電極層へ移動する。対極電極層において酸素イオンO2-が電子を放出して酸素分子O2となる。以上の反応により、水分子H2Oが水素H2と酸素O2とに、二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素O2とに電気分解される。
水蒸気と二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学モジュールで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物を合成する燃料変換器を設けることができる。燃料供給部により、この燃料変換器が生成した炭化水素等を電気化学モジュールに流通したり、本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することができる。
【0036】
本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、
上記電気化学装置と、電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部を有する点にある。
【0037】
上記の特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、耐久性・信頼性および性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。なお、電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
したがって、部品点数が少なく、作製容易な電気化学素子積層体を、取り扱い容易な構造の電気化学素子により実現でき。また、電気化学素子積層体を利用した電気化学モジュール、電気化学装置やエネルギーシステムを安価に提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施形態に係るエネルギーシステムの全体構成を示す概略図である。
【
図2A】実施形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図2B】実施形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図3】実施形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図10】別の形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図15】別の形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図17】別のエネルギーシステムの全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<実施形態>
以下、実施形態に係るエネルギーシステム、電気化学装置、電気化学モジュールおよび電気化学素子について図面に基づいて説明する。
【0040】
<エネルギーシステム、電気化学装置>
図1には、エネルギーシステムおよび電気化学装置の概要が示されている。
エネルギーシステムは、電気化学装置と、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器23とを有する。
電気化学装置は、電気化学モジュールMと、脱硫器1と改質器(改質器等の燃料変換器、以下、改質器と記載する。)4とを有し電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを流通する燃料供給部と、電気化学モジュールMから電力を取り出すインバータ(電力変換器の一例)8とを有する。
【0041】
詳しくは電気化学装置は、脱硫器1、改質水タンク2、気化器3、改質器4、ブロア5、燃焼部6、インバータ8、制御部9、収納容器10および電気化学モジュールMを有する。
【0042】
脱硫器1は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器1を備えることにより、硫黄化合物による改質器4あるいは電気化学素子Eに対する影響を抑制することができる。気化器3は、改質水タンク2から流通される改質水から水蒸気を生成する。改質器4は、気化器3にて生成された水蒸気を用いて脱硫器1にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガス(気体)を生成する。
【0043】
電気化学モジュールMは、改質器4から流通された改質ガスと、ブロア5から流通された空気(気体)とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部6は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
【0044】
電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eとガスマニホールド17とを有する。複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。電気化学素子Eは、ガスマニホールド17を通じて流通される改質ガスと、ブロア5から流通された空気とを電気化学反応させて発電する。
【0045】
インバータ8は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数にする。制御部9は電気化学装置およびエネルギーシステムの運転を制御する。
【0046】
気化器3、改質器4、電気化学モジュールMおよび燃焼部6は、収納容器10内に収納される。そして改質器4は、燃焼部6での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
【0047】
原燃料は、昇圧ポンプ11の作動により原燃料供給路12を通して脱硫器1に流通される。改質水タンク2の改質水は、改質水ポンプ13の作動により改質水供給路14を通して気化器3に流通される。そして、原燃料供給路12は脱硫器1よりも下流側の部位で、改質水供給路14に合流されており、収納容器10外にて合流された改質水と原燃料とが収納容器10内に備えられた気化器3に流通される。
【0048】
改質水は気化器3にて気化され水蒸気となる。気化器3にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路15を通して改質器4に流通される。改質器4にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガスが生成される。改質器4にて生成された改質ガスは、改質ガス供給路16を通して電気化学モジュールMのガスマニホールド17に流通される。
【0049】
ガスマニホールド17に流通された改質ガスは、複数の電気化学素子Eに対して分配され、電気化学素子Eとガスマニホールド17との接続部である下端(一端部)EDから電気化学素子Eに流通される。改質ガス中の主に水素(還元性成分)が、電気化学素子Eにて電気化学反応に使用される。反応に用いられなかった残余の水素ガスを含む反応排ガスが、電気化学素子Eの上端(他端部)EUから燃焼部6に排出される。
【0050】
反応排ガスは燃焼部6で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出口20から収納容器10の外部に排出される。燃焼排ガス排出口20には燃焼触媒部21(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去する。燃焼排ガス排出口20から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路22により熱交換器23に送られる。
【0051】
熱交換器23は、燃焼部6における燃焼で生じた燃焼排ガスと、流通される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。すなわち熱交換器23は、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
【0052】
<電気化学モジュールM>
次に、
図2を用いて電気化学モジュールMについて説明する。電気化学モジュールMは、電気化学素子Eを複数有し、一の電気化学素子Eの電気化学反応部43における筒状支持体31とは反対側の面と、他の電気化学素子Eの筒状支持体31とが電気的に接続される形態で、かつ、複数の筒状支持体31同士が互いに対向する形態で、複数の電気化学素子Eを並列配置してなる。
【0053】
また電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eの筒状支持体31の内部に還元性成分を含有する改質ガスを流通するガスマニホールド17を有し、電気化学素子Eの端部のうち筒状支持体31の軸方向の下端EDがガスマニホールド17に接続されている。
【0054】
そして電気化学モジュールMは、ブロア5を介して、筒状支持体31の外部から電気化学反応部43に対して酸化性成分を含有する空気を流通する気体供給空間Sを有する。
【0055】
なお電気化学素子Eが他の部材(本実施形態ではガスマニホールド17)に取り付けられる際には、筒状支持体31の軸方向の端部のうち下端EDが当該他の部材に固定されて、電気化学素子Eが他の部材に片持ち支持される。
【0056】
詳しくは
図2Aおよび
図2Bに示されるように、電気化学モジュールMは、電気化学素子E、ガスマニホールド17、集電部材26、終端部材27および電流引出し部28を有する。
【0057】
電気化学素子Eは、中空の筒であり、内部空間を有する筒状支持体31の表面(後述の
図4の金属支持体32(第二板状体)の上面32a)に電気化学反応部43を備えて構成されており、全体として長尺な平板あるいは平棒の形状をとる。また、電気化学素子Eは、その内部空間である、後述する改質ガス通流部36(内部流路)に、改質ガス通流部36を複数の分割流路Aに分割する分割体(第一板状体、複数流路形成体)70を備えている。複数の分割流路Aは、電気化学素子Eの下端EDと上端EUとの間に沿って、互いに概ね平行に延びている。なお、電気化学素子Eは、下端EDと上端EUとの間が長手方向となるように構成されており、この長手方向に沿って分割流路Aが延びている。電気化学素子Eの短手方向は、分割流路Aが延びる長手方向と概ね直交する方向である。
【0058】
そして、電気化学素子Eの長手方向の下端EDが、ガスマニホールド17に対してガラスシール材等の接着部材により気密に固定されている。これにより、電気化学素子Eとガスマニホールド17との接続部において改質ガスが漏出せず、かつ空気が流入しないように、筒状支持体31の内部空間である改質ガス通流部36とガスマニホールド17の内部空間(図示省略)とを連通できる。なお、筒状支持体31とガスマニホールド17との間は電気的に絶縁されている。
【0059】
ガスマニホールド17は、例えば、一つの内部空間を有する直方体状に形成されており、改質器4から流通される改質ガスのバッファとして機能する。よって、ガスマニホールド17内の改質ガスは、複数の電気化学素子Eそれぞれに対して、同程度の圧力、同程度の流量、同程度の流速等で概ね均一に分配される。さらに、ガスマニホールド17内の改質ガスは、電気化学素子Eの複数の分割流路Aのそれぞれに対して、同程度の圧力、同程度の流量、同程度の流速等で概ね均一に分配される。
【0060】
電気化学素子Eの電気化学反応部43は、全体として膜状に構成される。電気化学反応部43の表裏の面のうち、筒状支持体31と反対側の面に、接着材29によって集電部材26が接着されている。そして別の電気化学素子Eの背面39と集電部材26とを接触させた状態あるいは溶接等により接合した状態で、複数の電気化学素子Eが並列配置されている。
【0061】
集電部材26には、導電性と、気体透過性と、電気化学素子Eの並列配置の方向に弾性とを有する部材が用いられる。例えば集電部材26には、金属箔を用いたエキスパンドメタルや金属メッシュ、フェルト様部材が用いられる。接着材29には、導電性と気体透過性とを有する材料が用いられる。例えば接着材29には、セラミック系接着材が用いられる。これにより集電部材26および接着材29は気体透過性・気体通流性を有し、ブロア5から流通される空気が集電部材26および接着材29を透過または通流して電気化学反応部43に流通される。
【0062】
また集電部材26が電気化学素子Eの並列配置の方向に弾性を有するので、ガスマニホールド17に片持ち支持された筒状支持体31は並列配置の方向にも変位することができ、振動や温度変化等の外乱に対する電気化学モジュールMのロバスト性が高められる。
【0063】
並列配置された複数の電気化学素子Eは、一対の終端部材27に挟持されている。終端部材27は、導電性を有し弾性変形可能な部材であり、その下端がガスマニホールド17に固定されている。終端部材27には、電気化学素子Eの並列配置の方向に沿って外側に向けて延びる電流引出し部28が接続されている。電流引出し部28はインバータ8に接続され、電気化学素子Eの発電により生じる電流をインバータ8へ送る。
【0064】
図2A及び
図2Bに示す通り、並列配置された電気化学素子Eは、電気化学反応部43の側方に電気化学反応部43での反応に用いられる空気(反応気体、酸化性成分を含有する空気)が流通される気体供給空間Sを有する。そして複数の電気化学素子Eが有する気体供給空間Sは、筒状支持体31の側方で互いに連通し、ひと繋がりの空間となっている。ここで電気化学反応部43の側方とは、筒状支持体31の軸方向と電気化学反応部43の並列配置の方向との両方に直交する方向である。
【0065】
図2A及び
図2Bを用いて詳しく説明すると、電気化学素子E1は気体供給空間S1を有し、電気化学素子E2は気体供給空間S2を有し、電気化学素子E3は気体供給空間S3を有する。そして気体供給空間S1と気体供給空間S2とが、電気化学素子E2の筒状支持体31の側方を介して連通している。また気体供給空間S2と気体供給空間S3とが、電気化学素子E3の筒状支持体31の側方を介して連通している。なお
図2A及び
図2Bでは気体供給空間Sの矢印は電気化学反応部43の図中上側を指しているが、電気化学反応部43の図中下側の側方にも気体供給空間Sが存在している。
【0066】
すなわち、並列配置される複数の電気化学素子Eのうち隣接する2つの電気化学素子(E1、E2)であって、電気化学反応部43が他方の電気化学素子E2に接続される第1電気化学素子E1と、筒状支持体31が第1電気化学素子E1に接続される第2電気化学素子E2に関し、第1電気化学素子E1の気体供給空間S1と第2電気化学素子E2の気体供給空間S2とが、第2電気化学素子E2の筒状支持体31の側方を介して連通している。
【0067】
このように気体供給空間Sは相互に連通しているから、ブロア5から収納容器10の内部に流通された空気は、気体供給空間Sに到達し、電気化学反応部43へと流通される。また、筒状支持体31の内部空間である改質ガス通流部36にはガスマニホールド17から改質ガスが流通される。改質ガス通流部36は、分割体70により複数の分割流路Aに分割されているため、各分割流路Aを介して改質ガスが電気化学反応部43へと流通される。これにより電気化学反応部43にて反応が進行する。
【0068】
<電気化学素子E>
図3~5に電気化学素子Eの概略構成が示されている。電気化学素子Eは、導電性を有し、内部に改質ガス通流部36が形成された筒状支持体31と、筒状支持体31一方の面に設けられ、電気化学反応により発電を行う電気化学反応部43とを有する。改質ガス通流部36を流れる改質ガスは、筒状支持体31の後述の貫通孔38を介して電気化学反応部43に流通される。電気化学反応部43が筒状支持体31に支持されることで、電気化学素子E全体の機械的強度が向上する。
【0069】
<筒状支持体31>
筒状支持体31(板状支持体)は、全体として平板あるいは平棒状であり、長方形の金属支持体32と、長手方向に直交する断面がU字状のU字部材33(第一板状体、内部流路形成体)と、蓋部34とを有する。金属支持体32の長辺とU字部材33の長辺(U字の2つの頂点に対応する辺)とが接合され、一方の端部が蓋部34で塞がれている。これにより、内部空間を有し全体として平板あるいは平棒状の筒状支持体31が構成される。金属支持体32は、筒状支持体31の中心軸に対して平行に配置される。
【0070】
筒状支持体31の内部空間は、改質ガス通流部36として機能する。蓋部34に反応排ガス排出口37が形成される。蓋部34が設けられる端部に対向する反対側の端部は開口しており、改質ガス流入口35として機能する。
【0071】
内部空間である改質ガス通流部36には、改質ガス通流部36を複数の分割流路Aに分割する分割体70が配置されている。分割体70は、
図7に示すように、例えば一連の波板であり、厚みが概ね一定である。そして、波板は、一方向には複数の同一形状の山及び谷が繰り返し形成されており、一方向と直交する直交方向には各山及び各谷が延びて形成されている。
図7の分割体70の場合、隣接する山の頂部71間の幅が概ね一定となるように山及び谷が形成されている。例えば、幅d1、d2は概ね一定である。なお、波板の形状には、山及び谷の形状が三角形状、四角形状及びサイン曲線等が含まれる。例えば、波板はコルゲート板であってもよい。
【0072】
このような分割体70は、山及び谷が延びる方向が筒状支持体31の中心軸に沿った、つまり長手方向に沿うように改質ガス通流部36に配置される。分割体70の山の頂部71は、金属支持体32の下面32bと接し、谷の底部73は、U字部材33の改質ガス通流部36に面する底面33aと接する。これにより、改質ガス通流部36には、金属支持体32の下面32bと分割体70とに囲まれた空間により、筒状支持体31の長手方向に延びる複数の分割流路Aが形成される。また、改質ガス通流部36には、U字部材33の底面33aと分割体70とに囲まれた空間により、筒状支持体31の長手方向に延びる複数の分割流路Bが形成される。分割流路Aと分割流路Bとは、
図4に示すように交互に形成される。
【0073】
図8を用いて、複数の分割流路Aにおける改質ガスの流速について説明する。ガスマニホールド17から、電気化学素子Eの下端EDに位置する改質ガス流入口35を介して複数の分割流路Aに改質ガスが流通される。複数の分割流路Aに流通された改質ガスは、筒状支持体31の軸方向である長手方向(気体の流れ方向)に沿って、下端EDから上端EUに向かって各分割流路A内を流れる。改質ガスは、複数の分割流路Aに沿って流れることによる整流作用により、分割されていない改質ガス通流部36を流れる場合に比べて、長手方向と直交する短手方向(流れ交差方向)の任意の複数地点での流速が概ね一定となる。
【0074】
図8では、筒状支持体31の長手方向の任意の複数地点での流速V1~V4を示している。V4は、筒状支持体31の短手方向の中央部での改質ガスの流速の大きさを示している。V3、V2、V1は、短手方向の中央部から端部に向かう流速の大きさを順に示している。この
図8に示すように、筒状支持体31の短手方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、改質ガスの流速が概ね一定である。よって、短手方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、分割流路Aから筒状支持体31の貫通孔38を介して電気化学反応部43に流通される改質ガスの量を概ね一定にできる。これにより、短手方向の中央部及び両端部のいずれの地点においても、電気化学素子E全体において電気化学反応を行わせて、発電効率を向上できる。
【0075】
なお、前述の通り、ガスマニホールド17の一の内部空間に収容されている改質ガスは、電気化学素子Eの複数の分割流路Aのそれぞれに対して、同程度の圧力、同程度の流量、同程度の流速等で概ね均一に分配される。このように、改質ガスが導入される複数の分割流路Aの各入口において、改質ガスの圧力差、流量差及び流速差をほぼ生じさせないことによっても、分割流路Aでの改質ガスの流速を概ね一定にすることができる。
【0076】
金属支持体32、U字部材33および蓋部34の材料としては、導電性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル基合金などが用いられる。すなわち筒状支持体31は堅牢に構成される。特にフェライト系ステンレス鋼が好適に用いられる。なお、後述する気体通流禁止部P1を構成するために、金属支持体32、U字部材33および蓋部34は気体を透過しない材料で形成する必要がある。
【0077】
筒状支持体31の材料にフェライト系ステンレス鋼を用いた場合、電気化学反応部43にて材料に用いられるYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近くなる。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子Eがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。
【0078】
なお筒状支持体31の材料としては、熱伝導率が3Wm-1K-1を上回る材料を用いることが好ましく、10Wm-1K-1を上回る材料であればさらに好ましい。例えばステンレス鋼であれば熱伝導率が15~30Wm-1K-1程度であるため、筒状支持体31の材料として好適である。
【0079】
また、筒状支持体31の材料としては、脆性破壊を起こさない高靱性材料である事がさらに望ましい。セラミックス材料などと比較して金属材料は高靱性であり、筒状支持体31として好適である。
【0080】
金属支持体32には、金属支持体32の表面と裏面とを貫通して複数の貫通孔38が設けられる。この貫通孔38を通して筒状支持体31の内側と外側との間で気体の通流が可能となっている。すなわち、複数の貫通孔38が設けられている孔領域P2が、気体通流許容部P2として機能する。他方、金属支持体32やU字部材33における貫通孔38が設けられない領域は、筒状支持体31の内側と外側との間で気体が通流できない。したがって当該領域は気体通流禁止部P1として機能する。
【0081】
<電気化学反応部43>
図4および
図5に示されるように、電気化学反応部43は、金属支持体32の上に形成された電極層44と、電極層44の上に形成された中間層45と、中間層45の上に形成された電解質層46とを有する。そして電気化学反応部43は、更に、電解質層46の上に形成された反応防止層47と、反応防止層47の上に形成された対極電極層48とを有する。つまり対極電極層48は電解質層46の上に形成され、反応防止層47は電解質層46と対極電極層48との間に形成されている。電極層44は多孔質であり、電解質層46は緻密である。なお電気化学素子Eにおいて電気化学反応部43の側方の全部または一部を覆う部材は設けられず、電気化学反応部43の側方は開放されている。
【0082】
(金属支持体32)
金属支持体32は、電極層44、中間層45および電解質層46等を支持して電気化学素子Eの強度を保つ。つまり金属支持体32は、電気化学素子Eを支持する支持体としての役割を担う。
【0083】
金属支持体32の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。本実施形態では、金属支持体32は、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe-Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有するFe-Cr系合金、Tiを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、Zrを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、TiおよびZrを含有しTiとZrとの合計の含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下であるFe-Cr系合金、Cuを0.10質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金であると特に好適である。
【0084】
金属支持体32は全体として板状である。そして金属支持体32は、電極層44が設けられる面を表側面として、表側面から裏側面へ貫通する複数の貫通空間を有する。貫通空間は、金属支持体32の裏側面から表側面へ気体を透過させる機能を有する。なお、板状の金属支持体32を曲げたりして、例えば箱状、円筒状などの形状に変形させて使用することも可能である。
【0085】
金属支持体32の表面に、拡散抑制層としての金属酸化物層(図示せず)が設けられる。すなわち、金属支持体32と後述する電極層44との間に、拡散抑制層が形成されている。金属酸化物層は、金属支持体32の外部に露出した面だけでなく、電極層44との接触面(界面)にも設けられる。また、貫通空間の内側の面に設けることもできる。この金属酸化物層により、金属支持体32と電極層44との間の元素相互拡散を抑制することができる。例えば、金属支持体32としてクロムを含有するフェライト系ステンレスを用いた場合は、金属酸化物層が主にクロム酸化物となる。そして、金属支持体32のクロム原子等が電極層44や電解質層46へ拡散することを、クロム酸化物を主成分とする金属酸化物層が抑制する。金属酸化物層の厚さは、拡散防止性能の高さと電気抵抗の低さを両立させることのできる厚みであれば良い。
金属酸化物層は種々の手法により形成されうるが、金属支持体32の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、金属支持体32の表面に、金属酸化物層をスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、スパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、金属酸化物層は導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
【0086】
金属支持体32としてフェライト系ステンレス材を用いた場合、電極層44や電解質層46の材料として用いられるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子Eがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。
【0087】
(電極層)
電極層44は、
図4に示すように、金属支持体32の表側の面であって貫通空間が設けられた領域より大きな領域に、薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。貫通空間が設けられた領域の全体が、電極層44に覆われている。つまり、貫通空間は金属支持体32における電極層44が形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通空間が電極層44に面して設けられている。
【0088】
電極層44の材料としては、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO2、Cu-CeO2などの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeO2を複合材の骨材と呼ぶことができる。なお、電極層44は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに、良好な電極層44が得られる。そのため、金属支持体32を傷めることなく、また、金属支持体32と電極層44との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0089】
電極層44は、気体透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔を有する。
すなわち電極層44は、多孔質な層として形成される。電極層44は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
【0090】
(中間層)
中間層45(挿入層)は、
図4に示すように、電極層44を覆った状態で、電極層44の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは4μm~25μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。中間層45の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリ
ニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
【0091】
中間層45は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに中間層45が得られる。そのため、金属支持体32を傷めることなく、金属支持体32と電極層44との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できる。また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0092】
中間層45としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有することが好ましい。また、酸素イオン(酸化物イオン)と電子との混合伝導性を有すると更に好ましい。これらの性質を有する中間層45は、電気化学素子Eへの適用に適している。
【0093】
(電解質層)
電解質層46は、
図4に示すように、電極層44および中間層45を覆った状態で、中間層45の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。詳しくは電解質層46は、
図4に示すように、中間層45の上と金属支持体32の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層46を金属支持体32に接合することで、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
【0094】
また電解質層46は、
図4に示すように、金属支持体32の表側の面であって貫通空間が設けられた領域より大きな領域に設けられる。つまり、貫通空間は金属支持体32における電解質層46が形成された領域の内側に形成されている。
【0095】
また電解質層46の周囲においては、電極層44および中間層45からのガスのリークを抑制することができる。説明すると、電気化学素子EをSOFCの構成要素として用いる場合、SOFCの作動時には、金属支持体32の裏側から貫通空間を通じて電極層44へガスが流通される。電解質層46が金属支持体32に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、本実施形態では電解質層46によって電極層44の周囲をすべて覆っているが、電極層44および中間層45の上部に電解質層46を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
【0096】
電解質層46の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等の酸素イオンを伝導する電解質材料や、ペロブスカイト型酸化物等の水素イオンを伝導する電解質材料を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層46をジルコニア系セラミックスとすると、電気化学素子Eを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスや種々の水素イオン伝導性材料に比べて高くすることができる。例えば電気化学素子EをSOFCに用いる場合、電解質層46の材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。
【0097】
電解質層46は、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層46が得られる。そのため、金属支持体32の損傷を抑制し、また、金属支持体32と電極層44との元素相互拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
【0098】
電解質層46は、アノードガスやカソードガスのガスリークを遮蔽し、かつ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層46の緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層46は、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層46が、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層の一部に含まれていると、電解質層が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層を形成しやすくできるからである。
【0099】
(反応防止層)
反応防止層47は、電解質層46の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは3μm~15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。反応防止層47の材料としては、電解質層46の成分と対極電極層48の成分との間の反応を防止できる材料であれば良いが、例えばセリア系材料等が用いられる。また反応防止層47の材料として、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。なお、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0質量%以上10質量%以下であるとよい。反応防止層47を電解質層46と対極電極層48との間に導入することにより、対極電極層48の構成材料と電解質層46の構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学素子Eの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層47の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体32の損傷を抑制し、また、金属支持体32と電極層44との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0100】
(対極電極層)
対極電極層48は、電解質層46もしくは反応防止層47の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。対極電極層48の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物およびこれらの混合物を用いることができる。特に対極電極層48が、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層48は、カソードとして機能する。
【0101】
なお、対極電極層48の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体32の損傷を抑制し、また、金属支持体32と電極層44との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0102】
(固体酸化物形燃料電池)
以上のように電気化学素子Eを構成することで、電気化学素子を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。例えば、金属支持体32の裏側の面から貫通空間を通じて水素を含む燃料ガスを電極層44へ流通し、電極層44の対極となる対極電極層48へ空気を流通し、例えば、500℃以上900℃以下の温度で作動させる。そうすると、電解質層46に酸素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、対極電極層48において空気に含まれる酸素O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層46を通って電極層44へ移動する。電極層44においては、流通された燃料ガスに含まれる水素H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。電解質層46に水素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層44において流通された燃料ガスに含まれる水素H2が電子e-を放出して水素イオンH+が生成される。その水素イオンH+が電解質層46を通って対極電極層48へ移動する。対極電極層48において空気に含まれる酸素O2と水素イオンH+、電子e-が反応し水H2Oが生成される。以上の反応により、電極層44と対極電極層48との間に起電力が発生する。この場合、電極層44はSOFCの燃料極(アノード)として機能し、対極電極層48は空気極(カソード)として機能する。
【0103】
(電気化学素子の製造方法)
次に、電気化学素子Eの製造方法について説明する。
【0104】
(電極層形成ステップ)
電極層形成ステップでは、金属支持体32の表側の面の貫通空間が設けられた領域より広い領域に電極層44が薄膜の状態で形成される。金属支持体32の貫通孔はレーザー加工等によって設けることができる。電極層44の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体32の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0105】
電極層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず電極層44の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、金属支持体32の表側の面に塗布する。そして電極層44を圧縮成形し(電極層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(電極層焼成工程)。電極層44の圧縮成形は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、電極層の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。また、電極層平滑化工程と電極層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
なお、中間層45を有する電気化学素子を形成する場合では、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を省いたり、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を後述する中間層平滑化工程や中間層焼成工程に含めることもできる。
なお、電極層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
【0106】
(拡散抑制層形成ステップ)
上述した電極層形成ステップにおける焼成工程時に、金属支持体32の表面に金属酸化物層(拡散抑制層)が形成される。なお、上記焼成工程に、焼成雰囲気を酸素分圧が低い雰囲気条件とする焼成工程が含まれていると元素の相互拡散抑制効果が高く、抵抗値の低い良質な金属酸化物層(拡散抑制層)が形成されるので好ましい。電極層形成ステップを、焼成を行わないコーティング方法とする場合を含め、別途の拡散抑制層形成ステップを含めても良い。いずれにおいても、金属支持体32の損傷を抑制可能な1100℃以下の処理温度で実施することが望ましい。また、後述する中間層形成ステップにおける焼成工程時に、金属支持体32の表面に金属酸化物層(拡散抑制層)が形成されても良い。
【0107】
(中間層形成ステップ)
中間層形成ステップでは、電極層44を覆う形態で、電極層44の上に中間層45が薄層の状態で形成される。中間層45の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体32の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0108】
中間層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。
まず、中間層45の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、金属支持体32の表側の面に塗布する。そして中間層45を圧縮成形し(中間層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(中間層焼成工程)。中間層45の圧延は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、中間層45の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。このような温度であると、金属支持体32の損傷・劣化を抑制しつつ、強度の高い中間層45を形成できるためである。また、中間層45の焼成を1050℃以下で行うとより好ましく、1000℃以下で行うと更に好ましい。これは、中間層45の焼成温度を低下させる程に、金属支持体32の損傷・劣化をより抑制しつつ、電気化学素子Eを形成できるからである。また、中間層平滑化工程と中間層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
なお、中間層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
【0109】
(電解質層形成ステップ)
電解質層形成ステップでは、電極層44および中間層45を覆った状態で、電解質層46が中間層45の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成されても良い。電解質層46の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体32の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0110】
緻密で気密性およびガスバリア性能の高い、良質な電解質層46を1100℃以下の温度域で形成するためには、電解質層形成ステップをスプレーコーティング法で行うことが望ましい。その場合、電解質層46の材料を金属支持体32上の中間層45に向けて噴射し、電解質層46を形成する。
【0111】
(反応防止層形成ステップ)
反応防止層形成ステップでは、反応防止層47が電解質層46の上に薄層の状態で形成される。反応防止層47の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体32の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。なお反応防止層47の上側の面を平坦にするために、例えば反応防止層47の形成後にレベリング処理や表面を切削・研磨処理を施したり、湿式形成後焼成前に、プレス加工を施してもよい。
【0112】
(対極電極層形成ステップ)
対極電極層形成ステップでは、対極電極層48が反応防止層47の上に薄層の状態で形成される。対極電極層48の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体32の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0113】
以上の様にして、電気化学素子Eを製造することができる。
【0114】
なお電気化学素子Eにおいて、中間層45(挿入層)と反応防止層47とは、何れか一方、あるいは両方を備えない形態とすることも可能である。すなわち、電極層44と電解質層46とが接触して形成される形態、あるいは電解質層46と対極電極層48とが接触して形成される形態も可能である。この場合に上述の製造方法では、中間層形成ステップ、反応防止層形成ステップが省略される。なお、他の層を形成するステップを追加したり、同種の層を複数積層したりすることも可能であるが、いずれの場合であっても、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0115】
そして、以上のように構成した電気化学素子Eは、電気化学モジュールMとして構成され、電気化学素子を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、以下のように動作し、発電することができる。
【0116】
電気化学素子Eは、
図2および
図6に示されるように、複数の電気化学素子Eが集電部材26および接着材29を介して電気的に接続された状態で、ガスマニホールド17に並列配置される。そして蓋部34および反応排ガス排出口37が設けられた上端EUと反対側の下端ED(
図5における紙面中下方の端部)が、ガスマニホールド17に対して固定される。ガスマニホールド17は、改質ガス流入口35に対して改質ガスを流通する。なお、電気化学素子Eは700℃程度の作動温度に維持される。
なお、
図5では、分割体70は、下端EDから反応排ガス排出口37が設けられた上端EUまで延びている。ただし、分割体70は、反応排ガス排出口37からの気体の排出を阻害しない程度に、反応排ガス排出口37とは接触しないように、反応排ガス排出口37から離隔した位置まで延びるように形成されているのが好ましい。
【0117】
改質ガス流入口35に流通された改質ガスは、改質ガス通流部36に形成された複数の分割流路Aを通って反応排ガス排出口37に向けて流れる。その途中で、改質ガスの一部は貫通孔38を通って筒状支持体31の内側から外側へと流出し、電気化学反応部43の電極層44に到達する。ここで、複数の分割流路Aを流れる改質ガスは、前述の
図8の通り、筒状支持体31の短手方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、改質ガスの流速が概ね一定である。よって、筒状支持体31の短手方向の任意の複数地点において、分割流路Aから筒状支持体31の貫通孔38を介して電気化学反応部43に流通される改質ガスの量を概ね一定にできる。
一方、ブロア5から収納容器10に流通された空気が、電気化学素子Eの気体供給空間Sに到達する。そして気体供給空間Sから空気が、集電部材26および接着材29を通って、あるいは電気化学反応部43の側方から直接、電気化学反応部43の対極電極層48に到達する。
【0118】
そうすると、対極電極層48において空気に含まれる酸素O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層46を通って電極層44へ移動する。電極層44においては、流通された改質ガスに含まれる水素H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。また、流通された改質ガスに含まれる一酸化炭素COが酸素イオンO2-と反応し、二酸化炭素CO2と電子e-が生成される。以上の反応により、電極層44と対極電極層48との間に起電力が発生する。
【0119】
一つの電気化学反応部43の対極電極層48に接着材29を介して集電部材26が接続され、その集電部材26が他の筒状支持体31の背面39に接触する。このようにして複数の電気化学素子Eが直列に接続されているので、電気化学素子Eに発生した起電力が足し合わされた電圧が、電流引出し部28に生じる。
【0120】
改質ガス通流部36の終端まで到達した改質ガスは、電気化学反応部43で消費されなかった残余の水素ガスと共に、反応排ガスとして反応排ガス排出口37より電気化学素子Eの外部に排出される。反応排ガス排出口37より排出された反応排ガスは、ブロア5から収納容器10に流通された空気と混合され、反応排ガス排出口37の近傍の燃焼部6にて燃焼し、改質器4を加熱する。
【0121】
上記の構成によれば、改質ガスは、複数の分割流路Aに沿って流れることによる整流作用により、筒状支持体31の短手方向の任意の複数地点において、流速が概ね一定となり、電気化学反応部43に流通される改質ガスの量が概ね一定となる。これにより、改質ガスの不足する部分と、過剰に流通される部分との差を小さくし、電気化学素子E全体において電気化学反応を行わせて、燃料利用率を向上して電気化学素子Eの発電効率を向上できる。
【0122】
例えば、改質ガス通流部36を改質ガスが流れており、筒状支持体31の短手方向の両端部と中央部とで改質ガスの流速が異なる場合には、改質ガスが長手方向に進むほど、流速の遅い両端部から電極層44への改質ガスの流通が不足し、気体中の改質ガスの濃度が低下してしまい、電極層44が酸化劣化する。一方で、短手方向の中央部では、電極層44で利用されないまま改質ガスが電気化学素子Eの上端EUの反応排ガス排出口37から排出される。つまり、濃度が高いままの改質ガスが反応排ガス排出口37から排出される。そのため、流速の遅い両端部での電極層44の酸化劣化を抑制するために、電気化学反応を抑制して電極層44で消費する改質ガスの量を抑制すると、流速の速い中央部においてさらに電極層44で利用されない改質ガスの量が増加する。結果として、電気化学素子Eの電気化学反応の反応効率が低下し、発電効率が低下してしまう。
【0123】
上記本実施形態によると、前述の通り、筒状支持体31の短手方向の任意の複数地点において改質ガスの流速が概ね一定であるので、流速の遅い地点に合わせて電気化学反応を抑制する必要がなく、電気化学素子Eの発電効率を向上できる。つまり、電極層44で利用される改質ガスの量を多くして改質ガスの利用率を高めることができる。発電効率は、電気化学モジュールMのセル電圧と、改質ガスの利用率との積に比例する。よって、改質ガスの利用率を高めることで、発電効率を向上できる。
【0124】
なお、本実施形態では、電気化学反応部43は、金属支持体32の概ね全面に形成されている。しかし、電気化学反応部43は、長手方向に延びる複数の分割流路Aそれぞれに対応して、長手方向に沿って分割されて形成されていてもよい。例えば、一の分割流路Aに対応して一の電気化学反応部43が長手方向に延びて形成され、別の分割流路Aに対応して、一の電気化学反応部43から分離された別の電気化学反応部43が長手方向に延びて形成されていてもよい。ただし、電気化学反応部43を金属支持体32の概ね全面に形成する場合には、各分割流路Aに対して別々に電気化学反応部43を形成するよりも、簡単に電気化学反応部43を形成可能である。
【0125】
次に
図9を参照して、電気化学素子Eの製造の手順を説明する。
まず、金属支持体32に複数の貫通孔38を形成する(♯1)。貫通孔38の形成は、例えばレーザー加工等により行うことができる。これにより、金属支持体32に選択的に気体通流許容部P2(孔領域P2)と気体通流禁止部P1とが設けられる。
【0126】
次に、金属支持体32の孔領域P2の全体を覆って、電気化学反応部43を設ける(♯2)。電気化学反応部43は、電極層44、中間層45、電解質層46、反応防止層47、対極電極層48の順に設けられる。これらは全て膜の状態で金属支持体32の上に形成される。電気化学反応部43の形成は、印刷やスプレー等による湿式法、エアロゾルデポジション法、溶射法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法などを適宜用いて行うことができる。
【0127】
次に、U字部材33を金属支持体32に接合し、U字部材33と金属支持体32とにより形成された改質ガス通流部36に分割体70を挿入する(♯3)。
【0128】
最後に、あらかじめ反応排ガス排出口37を形成した蓋部34を、U字部材33及び金属支持体32に接合する(♯4)。各部材の接合には、溶接等の適宜の方法を用いることができる。
【0129】
〔他の実施形態〕
(1)上記実施形態の電気化学素子Eでは、電気化学反応部43が、改質ガス通流部36である内部空間を有する筒状支持体31に配置されている。しかし、電気化学反応部43は筒状支持体31に支持される形態でなくてもよい。
【0130】
例えば、
図10に示すように、筒状支持体31においてU字部材33が省略され、金属支持体32(第二板状体)のみを有していてもよい。一の電気化学素子E1において、金属支持体32の上面32aに電気化学反応部43が配置されている。また、金属支持体32の下面32bに複数の分割流路A及びBを有する分割体70(第一板状体)が配置されており、分割体70の山の頂部71と金属支持体32の下面32bとは接触している。金属支持体(第二板状体)32と分割体(第一板状体)70とが板状支持体を構成している。
ここで、分割流路Aにはガスマニホールド17から改質ガスが流通されるように、分割流路Aとガスマニホールド17とが接続されている。よって、分割流路Aでは、下端EDから上端EUに向かって改質ガスが流れる。分割流路Aと電極層44とが金属支持体32を介して対向しており、分割流路Aを流れる改質ガスが金属支持体32の貫通孔38を介して電極層44に流通される。一方、分割流路Bにはブロア5から空気が流通され、下端EDから上端EUに向かって空気が流れる。また、一の電気化学素子E1において、電気化学反応部43の表裏の面のうち、金属支持体32と反対側の面に、接着材29によって集電部材26が接着されている。
【0131】
そして、一の電気化学素子E1の集電部材26と、別の電気化学素子E2の分割体70とを接触させた状態あるいは溶接等により接合した状態で、複数の電気化学素子Eが並列配置されている。この場合、一の電気化学素子E1の集電部材26は、別の電気化学素子E2の分割体70の分割流路Bと接触している。集電部材26及び接着材29は気体透過性を有しており、別の電気化学素子E2の分割体70の分割流路Bを流れる空気が、一の電気化学素子E1の対極電極層48に流通される。
このような構成により、電気化学反応部43には改質ガス及び空気が流通されて電気化学反応が生じ、発電が行われる。
図10には、集電部材26を介して、電気化学素子E1と別の電気化学素子E2とが接続されている例が示されているが、集電部材26を省略しても良い。この場合も、分割流路Bにはブロア5(
図1)から空気が流通され、下端EDから上端EUに向かって空気が流れる。
【0132】
上記では、各分割体70において、山の頂部71と、金属支持体32の下面32bとが接触しているため、複数の流路が完全に分割されて分割流路Aが形成されている。しかし、分割体70が金属支持体32とともに閉じた空間を形成しているのであれば、各分割流路が完全に分割されている必要はない。例えば、左の端部における分割体70の山の頂部71及び右の端部における分割体70の山の頂部71と、金属支持体32の下面32bとが接触して空間が形成され、その他の分割体70の山及び谷がその空間内に互いに連通可能な複数の流路を形成していてもよい。
【0133】
なお、分割体70は、電気化学素子Eの長手方向に沿ってのびており、これにより、分割体70の山及び谷が電気化学素子Eの長手方向に沿うように延びている。
【0134】
(2)上記実施形態では、分割体70は波板が使用された。しかし、分割体70の形状はこれに限定されず、例えば
図11に示すように、断面視の形状が台形状の分割流路Aを有する分割体70であってもよい。
図11の分割体70の場合、断面視において、山及び谷が交互に形成されており、山の頂面74及び谷の底面75が互いに平行な直線状であり、山の頂面74と谷の底面75とが斜面76によって接続されている。
【0135】
このような分割体70が改質ガス通流部36に配置された場合、山の頂面74は、金属支持体32の下面32bと接し、谷の底面75は、U字部材33の改質ガス通流部36に面する底面33aと接する。これにより、改質ガス通流部36には、金属支持体32の下面32bと分割体70とに囲まれた空間により、筒状支持体31の長手方向に延びる複数の分割流路Aが形成される。また、改質ガス通流部36には、U字部材33の底面33aと分割体70とに囲まれた空間により、筒状支持体31の長手方向に延びる複数の分割流路Bが形成される。分割流路Aと分割流路Bとは、
図11に示すように交互に形成される。
ここで、例えば、分割流路Aの幅d3及び分割流路Bの幅d4は概ね同一であってもよいし、幅d3が幅d4よりも大きくてもよい。幅d3が大きい場合には、分割流路A内を流れる改質ガスの量を多くし、発電効率を大きくすることができ好ましい。
【0136】
また、例えば
図12に示すように、断面視の形状が上方が開口したU字状の分割流路Aを有する分割体70であってもよい。
図12の分割体70の場合、断面視において、底壁77に対して上方に延びる複数の縦壁78が形成されている。隣接する縦壁78間の間に分割流路Aが形成される。このような分割体70が改質ガス通流部36に配置された場合、底壁77は、U字部材33の改質ガス通流部36に面する底面33aと接し、縦壁78の頂部78aは、金属支持体32の下面32bと接する。これにより、改質ガス通流部36には、金属支持体32の下面32bと分割体70とに囲まれた空間により、筒状支持体31の長手方向に延びる複数の分割流路Aが形成される。
その他、断面視の形状が長方形状、正方形状及び三角形状等の流路を有する分割体70であってもよい。
【0137】
(3)上記実施形態では、
図6及び
図7に示すように、分割体70の山の頂部71は、金属支持体32の下面32bと接し、谷の底部73は、U字部材33の改質ガス通流部36に面する底面33aと接している。つまり、全ての分割流路Aが互いに分離されている。
しかし、複数の分割流路Aに沿って改質ガスが流れることによる整流作用がある程度確保されるのであれば、分割体70の山の頂部71と、金属支持体32の下面32bとの間には、少なくとも一部において隙間が形成されていてもよい。この場合、分割体70の山及び谷によって複数の分割流路Aが形成されているものの、隙間において少なくとも一部の分割流路Aどうしが連通しており、それぞれが完全に分離されているわけではない。
【0138】
例えば、全ての分割流路Aにおいて、分割体70の山の頂部71と、金属支持体32の下面32bとの間に隙間が形成されていてもよい。また、流れ交差方向の両端に位置する分割流路Aにおいて、分割体70の山の頂部71と金属支持体32の下面32bとが接触するものの、その他の両端以外の分割流路Aにおいて、分割体70の山の頂部71と金属支持体32の下面32bとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0139】
前記構成のように分割流路Aが連通している場合であっても、改質ガスは、改質ガス通流部36において複数の分割流路Aを流れることで、複数の分割流路Aそれぞれに沿って案内されて流れる。よって、複数の分割流路Aを流れることによる整流作用により、流れ交差方向の中央部及び両端部を含む任意の複数地点において、電気化学反応部43に流通される気体の量を概ね一定とし、電気化学素子Eの電気化学反応の反応効率を向上して発電効率を向上できる。
【0140】
(4)上記実施形態では、分割体70は筒状支持体31の長手方向において概ね同一形状で延びている。しかし、分割体70は、長手方向の任意の箇所において形状が変わるように形成されていてもよい。
例えば改質ガスを分割流路AおよびBに流通する場合、
図13及び
図14に示すように、分割体70は、長手方向に例えば2つの異なる形状の分割流路が接続されて形成されている。
図13では、紙面手前側の分割体70aと、紙面奥側の分割体70bとは、それぞれの分割体70aの山及び谷の断面視における位相が概ね180°異なる。これにより、分割体70aの例えば分割流路B1、B2、B3、B4は、分割体70bの例えば分割流路A1a、A2a、A3a、A4aに対応づけられて配置されている。よって、分割体70aの分割流路B1に沿って流れた改質ガスは、分割体70bの分割流路A1aに送り込まれ、分割流路A1aに沿って流れる。同様に、分割体70aの分割流路B2、B3、B4に沿って流れた改質ガスは、分割体70bの分割流路A2a、A3a、A4aに送り込まれ、分割流路A2a、A3a、A4aに沿って流れる。
【0141】
一方、分割体70aの例えば分割流路A1、A2、A3、A4は、分割体70bの例えば分割流路B1a、B2a、B3a、B4aに対応づけられて配置されている。よって、分割体70aの分割流路A1、A2、A3、A4に沿って流れた改質ガスは、分割体70bの分割流路B1a、B2a、B3a、B4aに送り込まれ、分割流路B1a、B2a、B3a、B4aに沿って流れる。
【0142】
このように分割流路A、B、Aa、Baを構成することで、分割体70aにおいて金属支持体32とは分離された分割流路Bを流れる改質ガスを、分割体70bにおいて金属支持体32に面する分割流路Aaに流れるようにすることができる。これにより、分割体70aの分割流路Bを流れることで電気化学反応部43に流通されなかった改質ガスを、分割体70bの分割流路Aaに流して、分割流路Aaから金属支持体32を介して電気化学反応部43に流通することができる。そのため、電極層44で利用される改質ガスの量を多くして改質ガスの利用率を高め、発電効率を向上できる。つまり、電極層44において、下端EDの改質ガス流入口35側の端部と、電気化学素子Eの上端EUの反応排ガス排出口37側の端部とで、改質ガス濃度を適度に調整することも可能となり、前記課題であった反応排ガス排出口37側の端部での改質ガス不足による反応効率の低下を防ぐことが可能となる。
【0143】
また、分割体70aでは、改質ガスが分割流路Aから電気化学反応部43に流通されることで、分割流路Aに沿って電気化学反応部43が高温となる。一方、分割体70bでは、電気化学反応部43に面していない分割流路Bからは改質ガスが流通されないため、分割流路Bに沿った電気化学反応部43の高温化を抑制できる。同様に、分割体70bでは、分割流路Aaに沿った電気化学反応部43が高温となるものの、分割流路Baに沿った電気化学反応部43の高温化は抑制される。よって、電気化学反応部43全体において、高温となる領域を分散できるため、電気化学反応部43の劣化を抑制できる。
【0144】
なお、分割体70が長手方向に形状が異なる部分は、長手方向において2カ所以上の複数個所に設けられていてもよい。この場合も上記と同様に、波形の分割体70の断面視において、長手方向に互いに隣接する一方の波形の位相と他方の波形の位相とが概ね180°異なるように形成されるようにする。
【0145】
(5)上記実施形態では、
図7に示すように、隣接する山の頂部71間の幅が概ね一定となるように山及び谷が形成されているが、これに限定されない。例えば、短辺方向の任意の複数地点における改質ガスの流速が異なる場合には、改質ガスの流速に応じて山の頂部71間の幅d1等を異ならせてもよい。例えば、改質ガスの流速が速い分割流路Aでは、山の頂部71間の幅d1を大きくしてもよい。
【0146】
(6)上記実施形態では、筒状支持体31の改質ガス通流部36がガスマニホールド17に接続されており、分割流路A及び分割流路Bの両方に改質ガスが流通される。分割流路Bは、電気化学反応部43とは分離されており改質ガスを電気化学反応部43に流通できない。そこで、分割流路Aのみをガスマニホールド17に接続し、分割流路Aのみに改質ガスを流通してもよい。また、分割流路Bに改質ガスが流れないように分割流路Bの開口を塞ぐようにしてもよい。これにより、電気化学反応部43に流通されず発電に利用されない改質ガスの量を減らすことができる。
【0147】
(7)上記実施形態では、電気化学反応部43は、電極層44、中間層45、電解質層46、反応防止層47および対極電極層48を有し、この順番にて金属支持体32に積層される。しかし、積層順が逆であってもよい。例えば、電気化学反応部43は、対極電極層48、反応防止層47、電解質層46、中間層45および電極層44の順番にて金属支持体32に積層されていてもよい。
【0148】
(8)上記実施形態では、電気化学反応部43は、筒状支持体31の表面(
図4の金属支持体32(第二板状体)の上面32a)に形成されている。しかし、電気化学反応部43は、改質ガス通流部36(内部流路)内に配置され、筒状支持体31の表面とは反対の面に形成されていてもよい。
【0149】
(9)上記実施形態では、
図6等に示すように金属支持体32に貫通孔38が設けられている。しかし、金属支持体32に貫通孔38が設けられる代わりに、U字部材33に貫通孔が設けられていてもよい。この場合、例えば、筒状支持体31の分割流路Bに空気を流し、分割流路Bを流れる空気を、U字部材33に形成された貫通孔を介して、隣接する電気化学素子Eの対極電極層48に流通できる。
あるいは、金属支持体32及びU字部材33の両方に貫通孔が設けられていてもよい。この場合、分割流路Aを流れる改質ガスを金属支持体32の貫通孔を介して電極層44に流通し、分割流路Bを流れる空気をU字部材33に形成された貫通孔を介して、隣接する電気化学素子Eの対極電極層48に流通できる。
【0150】
(10)上記実施形態では、分割体70は一連の波板から形成されている。しかし、筒状支持体31の改質ガス通流部36において、改質ガスが複数の流れとなって流れるのであれば、分割体70は一連の波板から形成されている必要はない。例えば、改質ガスを各流れとする、個々に分かれた長手方向に延びる流路が分割体70として改質ガス通流部36に配置されていてもよい。
【0151】
(11)上記実施形態では、金属支持体32に貫通孔38が形成されている。しかし、例えば、金属支持体32に開口部を設け、その開口部に気体透過部材が嵌め込まれてもよい。金属支持体32には、上述の実施形態と同様の材料である、導電性と気体不透過性を有する金属や金属酸化物が用いられる。気体透過部材には、導電性と気体透過性を有する材料が用いられる。例えば、多孔質金属や金属酸化物が用いられる。金属支持体32の気体透過部が嵌め込まれた領域が気体通流許容部P2となり、金属支持体32の開口部を形成する枠体の領域が気体通流禁止部P1となる。
【0152】
(12)上記の実施形態の電気化学素子Eを、電気化学装置としての固体酸化物形燃料電池に利用することで、電気化学素子Eの電気化学反応の反応効率を向上させ、発電効率を向上できる。また、上記の実施形態の電気化学素子Eを、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することで、電気化学素子Eの電気化学反応の反応効率を向上できる。
【0153】
(13)上記実施形態では、電極層44で利用される改質ガスの量を多くして改質ガスの利用率を高め、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を向上できる構成について説明した。
つまり、上記実施形態では、電気化学反応部43を燃料電池として動作させ、電極層44に水素ガスが流通され、対極電極層48に酸素ガスが流通される。そうすると、対極電極層48において酸素分子O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層46を通って電極層44へ移動する。電極層44においては、水素分子H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。以上の反応により、電極層44と対極電極層48との間に起電力が発生し、発電が行われる。
【0154】
一方、電気化学反応部43を電解セルとして動作させる場合は、電極層44に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層44と対極電極層48との間に電圧が印加される。そうすると、電極層44において電子e-と水分子H2O、二酸化炭素分子CO2が反応し水素分子H2や一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。酸素イオンO2-は電解質層46を通って対極電極層48へ移動する。対極電極層48において酸素イオンO2-が電子を放出して酸素分子O2となる。以上の反応により、水分子H2Oが水素H2と酸素O2とに、二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素O2とに電気分解される。
【0155】
水蒸気と二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学反応部43で生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物などを合成する燃料変換器を設けることができる。燃料供給部により、この燃料変換器が生成した炭化水素等を電気化学反応部43に流通したり、本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することができる。
【0156】
図17に示すエネルギーシステムZでは、電気化学モジュールM(電気化学装置100の一部)は、複数の電気化学素子Eとガスマニホールド17及びガスマニホールド171とを有する。複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されており、他方の端部(上端部)がガスマニホールド171に固定されている。電気化学素子Eの一方の端部(下端部)において、複数の分割流路A及び複数の分割流路Bの少なくともいずれかは水蒸気及び二酸化炭素の供給を受ける。そして、電気化学素子Eの電気化学反応部43では上述の反応が生じる。そして、複数の分割流路A及び複数の分割流路Bの少なくともいずれかの他方の端部(上端部)と一括して連通し、出口に備えられたガスマニホールド171によって電気化学反応部43で生成した水素及び一酸化炭素等を効率良く収集することができる。
図17中の熱交換器24を、燃料変換器25で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化する排熱利用部として動作させるとともに、
図17中の熱交換器23を、電気化学素子Eによって生ずる排熱と水蒸気および二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることにより、エネルギー効率を高めることが出来る。
【0157】
また、電力変換器93は、電気化学素子Eに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子Eは電解セルとして作用する。
よって、上記構成によれば、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学装置100及びエネルギーシステムZ等を提供することができる。
【0158】
(14)上記の
図10では、板状支持体は、金属支持体(第二板状体)32と分割体(第一板状体)70とにより構成されている。ここで、金属支持体(第二板状体)32と分割体(第一板状体)70とは、別体の板状体から構成されていてもよいし、
図15に示すように一の板状体から構成されていてもよい。
図15の場合、一の板状体が折り曲げられることで、金属支持体32と分割体70とが重ね合される。そして、周縁部1aが溶接等されることで金属支持体32と分割体70とが一体化される。なお、金属支持体32と分割体70とは一連の継ぎ目のない板状体から構成されていてもよく、一連の板状体が折り曲げられることで
図15のように成型されてもよい。
また、後述しているが、第一板状体である分割体70が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。同様に、第二板状体である金属支持体32が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。
【0159】
また、
図4では、筒状支持体31(板状支持体)は、U字部材(第一板状体)33と、金属支持体32(第二板状体)とにより形成されている。また、改質ガス通流部(内部流路)36に、改質ガス通流部36を複数の分割流路Aに分割する分割体(第一板状体、複数流路形成体)70が備えられている。ここで、U字部材33(第一板状体)と、金属支持体32(第二板状体)とは、別体の板状体から構成されていてもよいし、上述したような一の板状体又は一連の板状体から構成されていてもよい。さらには、U字部材33(第一板状体)と、金属支持体32(第二板状体)と、分割体(第一板状体、複数流路形成体)70とは、上述したような一の板状体又は一連の板状体から構成されていてもよい。
また、第一板状体であるU字部材33が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。また、後述しているが、第一板状体である分割体70が、一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。さらに、第二板状体である金属支持体32が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。
【0160】
(15)上記の分割体70は、改質ガス通流部36を複数の分割流路Aに分割する。この分割体70は、電気化学素子Eの下端EDと上端EUとの間の長手方向、つまり改質ガスの通流方向に沿って延びている。分割体70は、下端EDと上端EUとの間で一連の波状の板状体から形成されていてもよいし、2以上の波状の板状体から構成されていてもよい。分割体70は、例えば、長手方向に沿う方向に沿って分離した2以上の波状の板状体から構成されていてもよいし、短手方向に沿う方向に沿って分離した2以上の波状の板状体から構成されていてもよい。
【0161】
また、分割体70は、
図7に示すように同一形状の山及び谷が繰り返し形成されることで波形に構成されている。しかし、分割体70は、板状部分を有していてもよい。例えば、分割体70は、板状部分と突状部分とが交互に形成されることで構成されていてもよい。そして、突状部分を改質ガス等の流体が通流する部分とすることができる。
【0162】
(16)上記の分割体70は、全面が波板状に形成されている必要はなく、少なくとも一部が波板状に形成されていればよい。分割体70は、例えば、下端EDと上端EUとの間において、長手方向の一部が平板状であり、残りが波板状であってもよい。また、分割体70は、短手方向の一部が平板状であり、残りが波板状であってもよい。
図16の分割体70は、一部が波板状に、残りが平板状に構成されている。
図16に示すように、長手方向の下端ED側に平板状部分PDが設けられており、長手方向の上端EU側に平板状部分PUが設けられている。そして、
図16の分割体70は、平板状部分PDと平板状部分PUとの間に、波板状部分Wを有している。波板状部分Wは、改質ガス通流部36を複数の分割流路Aに分割している。
【0163】
図16の分割体70において、下端ED側の平板状部分PDに、平板状部分PDから突出する少なくとも1つの構造体130が設けられている。
図16の場合、複数の構造体130が設けられている。隣接する構造体130の間は凹状となっており、改質ガスが通過可能な凹状流路として形成されている。よって、突出している構造体130によって改質ガスの通流が妨げる障壁となり、改質ガスの通流には圧力損失が生じている。そして、構造体130によって圧力損失が生じた状態の改質ガスが、構造体130間の凹状流路を通過する。
このような構成により、構造体130は、平板状部分PDに導入された改質ガスを、平板状部分PDに一時的に貯留させつつ、平板状部分PDから複数の分割流路Aに概ね均一に供給する。よって、各分割流路A内を通流する改質ガスの分布、つまり、改質ガスの流速、流量及び圧力等が概ね一定になる。これにより、電気化学反応部において、改質ガスが不足する部分と、過剰に改質ガスが通流される部分との差を小さくし、電気化学素子全体において電気化学反応を行わせて、改質ガスの利用率を向上して電気化学素子の反応効率を向上できる。
なお、構造体130は、上端EU側に平板状部分PUにも設けることができる。
【0164】
(17)
図4、
図6、
図8、
図10、
図15では、金属支持体32と分割体70とが複数点において接触しており、複数の分割流路が完全に分画されている例が示されている。しかし、必ずしも、金属支持体32と分割体70とが複数点において接触しておらず複数の流路が完全に分画されていなくとも、各流路を流れる気体の流速が、流れ交差方向の任意の複数地点において概ね一定となる整流作用が得られればよい。
【0165】
(18)上記の気体通流許容部P2では、筒状支持体31(板状支持体)の金属支持体32(第二板状体)の少なくとも一部の領域において、金属支持体32を厚み方向に貫通する複数の貫通孔38がマトリクス状に配置されるように形成されている(
図9等)。
これとは異なり、気体通流許容部P2では、金属支持体32を厚み方向に貫通する前記複数の貫通孔38の代わりに、厚み方向に概ね直交する方向に沿って延びる独立孔が形成されてもよい。当該独立孔は、延在する方向の少なくともいずれかの地点において金属支持体32を厚み方向に貫通している。例えば、当該独立孔は、各分割流路Aそれぞれに対応して当該厚み方向に概ね直交する方向に延びており、かつ延在する方向の少なくともいずれかの地点で金属支持体32を貫通して分割流路Aに連通している。そして、各独立孔は、隣接する独立孔とは連通していない。
また、気体通流許容部P2では、前記複数の貫通孔38の代わりに、金属支持体32の少なくとも一部の領域において、三次元(網目状)連続孔が形成されてもよい。例えば、当該連続孔は、多孔質性の金属支持体32において、各孔が連続的に連結されて形成される。当該連続孔は、連続孔のいずれかの地点において金属支持体32を貫通している。
【0166】
(19)
図2には、流路の気体が流通される入口にガスマニホールド17が備えられた場合が示されている。しかし、流路の気体が流通される出口にガスマニホールドが備えられていてもよく、この場合、電気化学反応による排出ガスや生成ガスを効率良く収集することができる。
【0167】
(20)上記実施形態において、電気化学装置は、複数の電気化学素子を備える電気化学モジュールMを備えている。しかし、上記実施形態の電気化学装置は1つの電気化学素子を備える構成にも適用可能である。
【0168】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0169】
17 :ガスマニホールド
31 :筒状支持体
32 :金属支持体
32a :上面
32b :下面
33 :U字部材
36 :改質ガス通流部
38 :貫通孔
43 :電気化学反応部
44 :電極層
45 :中間層
46 :電解質層
47 :反応防止層
48 :対極電極層
70 :分割体
A :分割流路
B :分割流路
E :電気化学素子
E3 :電気化学素子
ED :下端
EU :上端
Ea :下端
P1 :気体通流禁止部
P2 :気体通流許容部