(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】テトラヒドロナフチルウレア誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20240206BHJP
C07D 303/04 20060101ALI20240206BHJP
C07C 213/04 20060101ALI20240206BHJP
C07C 215/44 20060101ALI20240206BHJP
C07D 301/12 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D303/04
C07C213/04
C07C215/44
C07D301/12
(21)【出願番号】P 2020511064
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019013916
(87)【国際公開番号】W WO2019189717
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018068290
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-537001(JP,A)
【文献】特開平06-247993(JP,A)
【文献】特開2008-255086(JP,A)
【文献】KONDO, S. et al.,Angewandte Chemie International Edition,2008年,Vol. 47,pp. 10195-10198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
[式(TH-1)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒と、下記式(LG-1):
で表わされる配位子と、過酸化水素水と、緩衝液とを、溶媒中に加えて混合溶液(1)を得る工程、
(2)前記混合溶液(1)を、外温30℃~50℃の範囲の温度で反応を行い、下記式(EP-1):
[式(EP-1)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(3)前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、
(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(5)下記式(AM-1):
[式(AM-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表わされる化合物と、トリホスゲン、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-ニトロフェニル、クロロギ酸p-トリル、N,N′-カルボニルジイミダゾール、及びN,N′-ジスクシンイミジルカルボナートから選ばれるウレア化剤と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(5)を得る工程、
(6)前記混合溶液(5)を、0℃から前記混合溶液(5)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(CB-1):
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、及び(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基から選ばれる基である]で表わされる化合物を得る工程、
(7)前記式(AM-X)で表わされる化合物と、前記式(CB-1)で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
式(I)中、pは0又は1であり、
R
1は、ハロゲン原子、又はC
1-6アルコキシC
1-6アルキル基であり、
工程(1)中のチタン触媒は、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、又はチタンテトラターシャリーブトキシドであり、
工程(1)中の溶媒は、有機溶媒であり、
工程(1)中の緩衝液は、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、リン酸緩衝液、又はKH
2PO
4/NaOH緩衝液であり、
工程(5)中のウレア化剤は、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-トリル、又は2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートであり、
工程(5)中の塩基は、有機塩基であり、
工程(5)中の溶媒は、非プロトン性極性溶媒であり、
式(CB-1)中のYは、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、又は2,2,2-トリクロロエトキシ基であり、
工程(7)中の塩基は、有機塩基であり、
工程(7)中の溶媒は、非プロトン性極性溶媒である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(I)中、pは0であり、
工程(1)中のチタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり、
工程(1)の溶媒は、ジクロロメタンであり、
工程(1)中の緩衝液は、リン酸緩衝液であり、
工程(5)中のウレア化剤は、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートであり、
工程(5)中の塩基は、ピリジンであり、
工程(5)中の溶媒は、1,2-ジクロロエタンであり、
式(CB-1)中のYは、2,2,2-トリクロロエトキシ基であり、
工程(7)中の塩基は、ジアザビシクロウンデセンであり、
工程(7)中の溶媒は、ジメチルスルホキシドである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(1)において、過酸化水素水の量が、式(TH-1)で表される化合物1等量に対して、1.5~10等量の範囲であり、かつ、チタン触媒の量が、式(TH-1)で表される化合物に対し0.1~10mol%の範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程(1)において、反応溶液のpHが、pH=7.4~8.0である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程(1)において、溶媒の量が、式(TH-1)で表される化合物の質量に対して、5~20倍量の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程(1)において、反応温度(外温)が35~45℃の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
工程(4)の反応が、封管反応瓶を用いる封管反応である、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
[式(TH-1)中、p及びR
1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒と、下記式(LG-1):
で表わされる配位子と、過酸化水素水と、緩衝液とを、溶媒中に加えて混合溶液(1)を得る工程、
(2)前記混合溶液(1)を、外温30℃~50℃の範囲の温度で反応を行い、下記式(EP-1):
[式(EP-1)中、p及びR
1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(3)前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、及び
(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、前記式(AM-X)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
下記式(I):
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(5)下記式(AM-1):
[式(AM-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表わされる化合物と、トリホスゲン、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-ニトロフェニル、クロロギ酸p-トリル、N,N′-カルボニルジイミダゾール、及びN,N′-ジスクシンイミジルカルボナートから選ばれるウレア化剤と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(5)を得る工程、
(6)前記混合溶液(5)を、0℃から前記混合溶液(5)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(CB-1):
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、及び(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基から選ばれる基である]で表わされる化合物を得る工程、
(7)下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、前記式(CB-1)で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項11】
下記式(I):
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
[式(TH-1)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒と、下記式(LG-1):
で表わされる配位子と、過酸化水素水と、緩衝液とを、溶媒中に加えて混合溶液(1)を得る工程、
(2)前記混合溶液(1)を、外温30℃~50℃の範囲の温度で反応を行い、下記式(EP-1):
[式(EP-1)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(3)前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、
(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(7)前記式(AM-X)で表わされる化合物と、式(CB-1):
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、及び(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基から選ばれる基である]で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
下記式(I):
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(3)下記式(EP-1):
[式(EP-1)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、
(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(
3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(7)前記式(AM-X)で表わされる化合物と、式(CB-1):
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、及び(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基から選ばれる基である]で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
下記式(I):
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R
1は、ハロゲン原子、シアノ基、C
1-6アルキル基、ハロゲン化C
1-6アルキル基、ヒドロキシC
1-6アルキル基、シアノ化C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン化C
1-6アルコキシ基、C
1-6アルコキシC
1-6アルキル基、モノ/ジC
2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC
1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(7)下記式(AM-X):
[式(AM-X)中、p及びR
1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、式(CB-1):
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、及び(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基から選ばれる基である]で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記Scheme 7の式(I)で表されるトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)阻害作用を有するテトラヒドロナフチルウレア誘導体の製造方法、及び式(I)で表される化合物を製造する為の中間体である式(EP-1)で表される化合物並びに式(AM-X)で表される化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)で表されるテトラヒドロナフチルウレア誘導体は、式(AM-1)で表されるアミノ化合物、及び式(AM-2-RRS)で表されるアミン塩を用いる、ウレア化反応により製造されている(Scheme 1)(特許文献1)。
【0003】
【0004】
式(AM-2-RRS)で表わされるアミン塩は、(Scheme 2)に示すように、式(TH-1)で表わされる化合物を出発原料として、2工程を経て得られる式(RAM-2)で表わされる化合物を、D-酒石酸により式(RAM-2-S)で表わされる塩へ変換した後、分別再結晶により製造ができる。
【0005】
【0006】
前記分別再結晶を用いる製造法は、式(AM-2-RRS)が光学純度の高い化合物として得られる点で優れているものの、分割後の他の異性体(例えば、(1S,2S)体、等)の再利用が難しい点が課題であり、式(I)で表わされる化合物の大量合成又は工業的生産においては、その改良製法が求められる。即ち、式(I)で表わされる化合物の大量合成もしくは工業的生産を考えた場合には、式(AM-2-RRS)で表わされるアミン塩を用いる製造方法とは異なる新規な製造方法を見出すことが求められており、特に、式(AM-2-RRS)で表わされるアミン塩に代わるScheme 1のウレア化反応で使用し得るアミン塩であって、式(AM-2-RRS)に比べて分別再結晶後の他の異性体の再利用が容易な化合物が求められている。
【0007】
式(AM-2-RRS)で表わされるアミン塩の等価体の1つである、下記式(AM-X)においてp=0の化合物である、(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オールは、国際公開第2014/078454(p165、IntermediateX2)にて、その製造方法が開示されている。しかし、当該製造方法は、式(RAM-2)で表わされる化合物のキラルカラムを用いたカラム分割方法であることから、当該方法を用いた場合でも対応する異性体(式(AM-Y))の再利用が出来ない点で、当該製法も前記課題が解決できていない製法であり、又、式(AM-X)で表わされる化合物を大量合成又は工業的生産できる製造方法ではない(Schem 3)。(特許文献2)
【0008】
【0009】
よって、式(AM-X)で表わされる化合物を高収率かつ高光学純度で大量合成する製造方法は、未だ知られてないことから、式(AM-X)で表わされる化合物を短工程、高い化学収率、かつ高い光学純度で大量合成する製造方法を見出すことができれば、上記課題が解決できると考えられる。更に(Scheme 4)に示される、式(AM-X)で表される化合物を用いる新規製造方法により、式(I)の化合物を大量又は工業的生産レベルで得ることが可能となり、その方法が望まれていた。
【0010】
【0011】
[Scheme 4中、p、R1、Y及び環Aは、後述する本発明の第1の態様中に定義されている基と同じ基である]
【0012】
下記(Scheme 5)に示されるように、式(AM-X)で表わされる化合物の合成中間体になり得る式(EP-1)で表わされる化合物の合成法が、Chemistry Letters,(11),P2231-4,1992年(非特許文献1)、又はBulletin of the Chemical Society of Japan,67(8),p2248-56,1994年(非特許文献2)に開示されている。しかし、当該合成法は、酸素ガス、マンガン触媒を用いた酸化反応であり大量合成に好適ではなく、更に、化学収率が35%と低く、光学純度も63%と医薬品原料として用いるには低いことから、式(AM-X)で表わされる化合物の大量合成もしくは工業的生産においては、本反応条件は用いられない。又、式(EP-1)を用いた式(AM-X)への不斉アミノヒドロキシル化反応は、知られていない。(但し、前記式(AM-X)、(EP-1)、及び式(REP-1)においてp=0である)
【0013】
尚、本発明の式(TH-1)で表わされる化合物とは異なるが、式(TH-2)で表わされる化合物(式(TH-1)において、P=0、1,2-ジヒドロナフタレン環の1位のジメチル基を除去した化合物)に対して、過酸化水素及びチタン触媒を用いる酸化反応が、Synlett,20,p3545-3547,2006年(非特許文献3)、又はSynlett,15,p2445-2447,2007年(非特許文献4)に開示されている(Scheme 6)。
【0014】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2018/199166号パンフレット
【文献】国際公開第2014/078454号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【文献】Chemistry Letters, (11),P2231-4,1992年.
【文献】Bulletin of the Chemical Society of Japan,67(8), p2248-56,1994年.
【文献】Synlett,20,p3545-3547,2006年.
【文献】Synlett,15,p2445-2447,2007年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
式(I)で表されるテトラヒドロナフチルウレア誘導体の大量合成もしくは工業的生産に適した効率的な製造方法、とりわけ、当該誘導体の大量合成もしくは工業的生産するにあたり、前記式(RAM-2)で表される化合物の分別再結晶法を経由する式(I)で表される化合物の製造方法とは異なる、即ち、式(AM-X)で表される化合物を用いる、式(I)で表される化合物の新規な製造方法の提供、及び式(AM-X)で表される化合物を高化学収率かつ高光学純度で大量合成する製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねてきた。その結果、下記(Scheme 7)にて、式(TH-1)で表される化合物を出発物質とし、過酸化水素を酸素源とする、チタン触媒を用いる、不斉エポキシ化反応を行うことで、式(EP-1)で表わされる望む立体配置を有するエポキシ化合物を高化学収率かつ高光学純度で得られることを見出した。又、続く、アミノヒドロキシル化反応により式(AM-X)で表される化合物を、高化学収率かつ高光学純度で得られることを見出した。これら連続する反応により、式(AM-X)の化合物の異性体の生成を抑制できた、式(AM-X)の化合物の製造方法を見出した。更に、式(AM-1)で表されるアミノ化合物から導かれる式(CB-1)の化合物とのウレア化反応により、化学収率良く、高い光学純度で、短工程にて、かつ容易に下記式(I)で表されるテトラヒドロナフチルウレア誘導体を製造する方法を見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0019】
【0020】
[Scheme 7中、p、R1、Yは及び環Aは、後述する本発明の第1の態様中に定義されている基と同じ基である]
【0021】
本明細書において環Aの構造は下記式:5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、式(I)で表されるトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)阻害作用を有するテトラヒドロナフチルウレア誘導体の製造方法、及び式(AM-X)で表される(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オール誘導体の高収率かつ高光学純度で大量合成する製造方法に関する。本発明は、下記式(I)で表されるトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)阻害作用を有するテトラヒドロナフチルウレア誘導体の製造に使用される中間体を、化学収率良く、高い光学活性純度で、短工程、容易、かつ工業的に有利な方法で製造する新規な方法を提供することができ、産業上の有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下の態様に示される下記式(I)で表されるテトラヒドロナフチルウレア誘導体、式(AM-X)で表される(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オール誘導体、及び式(EP-1)で表されるエポキシ誘導体の製造方法に関する。より具体的に、本発明の例示的な態様は、以下の〔1〕~〔5〕のとおりであり得る。
【0024】
〔1〕下記(Scheme 7)中[(Scheme 7)中、p、R1、Y、及び環Aは、後述する本発明の第1の態様中に定義されている基と同じ基であり;各工程の反応条件は、後述する本発明の第1の態様中の各工程の反応条件と同じである]の、式(I)で表される化合物の製造方法。
【0025】
【0026】
〔2〕下記(Scheme 8)中[(Scheme 8)中、p及びR1は、後述する本発明の第2の態様中に定義されている基と同じ基であり;各工程の反応条件は、後述する本発明の第2の態様中の各工程の反応条件と同じである]の、式(AM-X)で表される化合物の製造方法。
【0027】
【0028】
〔3〕下記(Scheme 9)中[(Scheme 9)中、p、及びR1は、後述する本発明の第3の態様中に定義されている基と同じ基であり;各工程の反応条件は、後述する本発明の第3の態様中の各工程の反応条件と同じである]の、式(EP-1)で表される化合物の製造方法。
【0029】
【0030】
〔4〕下記(Scheme 10)中[(Scheme 10)中、p及びR1は、後述する本発明の第4の態様中に定義されている基と同じ基であり;各工程の反応条件は、後述する本発明の第4の態様中の各工程の反応条件と同じである]の、式(AM-X)で表される化合物の製造方法。
【0031】
【0032】
〔5〕下記(Scheme 4)中[(Scheme 4)中、p、R1、Y及び環Aは、後述する本発明の第5の態様中に定義されている基と同じ基であり;各工程の反応条件は、後述する本発明の第5の態様中の各工程の反応条件と同じである]の、式(I)で表される化合物の製造方法。
【0033】
【0034】
[本発明の態様]
本発明の例示的な態様は、より具体的には、以下の態様[1]~[5]のとおりであり得る。
[1]本発明の第1の態様は、下記式(I):
【0035】
【0036】
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R1は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基、シアノ化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン化C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
【0037】
【0038】
[式(TH-1)中、p及びR1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒(例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、チタンアルコキシド(チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド(Ti(OCH2CH2CH3)4)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)、チタンテトラノルマルブトキシド(Ti(OCH2CH2CH2CH3)4)、チタンテトラターシャリーブトキシド(Ti(OC(CH3)3)4)、等)と、配位子としての下記式(LG-1):
【0039】
【0040】
である、3,3’’-((((1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(アザネジル))ビス(メチレン))ビス(2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)[CAS番号:928769-12-4]と、過酸化水素水(例えば、約30~60%濃度)と、緩衝液(例えば、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)/HCl緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、ホウ酸Na/HCl緩衝液、等)とを、溶媒(例えば、反応に関与しない溶媒、好ましくは有機溶媒、より好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等ニトリル系溶媒)中に加えて混合溶液(1)を得る工程、(2)前記混合溶液(1)を、反応温度(外温)30℃~50℃の範囲、好ましくは、35~45℃の範囲の温度で反応を行い、下記式(EP-1):
【0041】
【0042】
[式(EP-1)中、p及びR1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、(3)前記式(EP-1)で表される化合物をアンモニア水に加え、前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(AM-X):
【0043】
【0044】
[式(AM-X)中、p及びR1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(5)下記式(AM-1):
【0045】
【0046】
[式(AM-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表わされる化合物と、トリホスゲン、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-ニトロフェニル、クロロギ酸p-トリル、N,N´-カルボニルジイミダゾール、及びN,N´-ジスクシンイミジルカルボナート等から選ばれるウレア化剤と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(5)を得る工程、(6)前記混合溶液(5)を、0℃から前記混合溶液(5)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(CB-1):
【0047】
【0048】
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基、等から選ばれる基である]で表わされる化合物を得る工程、(7)前記工程(4)で得られる式(AM-X)で表わされる化合物と、前記式(CB-1)で表わされる化合物と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、を含む製造方法である。
ここで、上記式(AM-1)は、以下に示す5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-アミンである。
【0049】
【0050】
[1-1-1]前記態様[1]の工程(1)において、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、好ましくは、1.5~10等量の範囲であり;より好ましくは、1.5~5等量の範囲であり;特に好ましくは、1.5又は5.0等量である。ここで、「等量」とは、モル比で1:1であることを意味する。即ち、式(TH-1)1等量に対して、過酸化水素水の量が1.5~10等量の場合は、過酸化水素水の量が、モル比で1:1.5~1:10を意味する。
【0051】
[1-1-2]前記態様[1]の工程(1)において、過酸化水素水の濃度は、約30%のものを用いることが好ましい。
【0052】
[1-2-1]前記態様[1]の工程(1)において、チタン触媒は、好ましくは、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、又はチタンテトラターシャリーブトキシドであり;より好ましくは、チタンテトライソプロポキシドである。
【0053】
[1-2-2]前記態様[1]の工程(1)において、チタン触媒の量は、好ましくは、式(TH-1)に対し0.1~10mol%の範囲であり;より好ましくは1.0~5.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.0、3.0、又は5.0mol%である。
【0054】
[1-3]前記態様[1]の工程(1)において、配位子は、式(TH-1)に対して、好ましくは、0.1~12mol%の範囲であり;より好ましくは1.2~6.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.2、3.6、又は6.0mol%である。
【0055】
[1-4]前記態様[1]の工程(1)において、溶媒は、好ましくは反応に関与しない溶媒であり、より好ましくは、有機溶媒であり、さらに好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒であり;より好ましくは、ジクロロメタンである。
【0056】
[1-5]前記態様[1]の工程(1)において、溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、好ましくは、1~20倍量の範囲であり;より好ましくは、5~20倍量の範囲であり;特に好ましくは、5又は20倍量である。
【0057】
[1-6-1]前記態様[1]の工程(1)において、緩衝液は、好ましくは、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;より好ましくは、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;特に好ましくはリン酸緩衝液である。当該緩衝液によって、反応溶液等のpHを調製することができる。
[1-6-2]前記態様[1]の工程(1)において、反応溶液のpHは、好ましくは、pH=7.4~8.0であり;より好ましくは、pH=7.4、又はpH=8.0である。
【0058】
[1-7-1]前記態様[1]の工程(2)において、反応時間は、好ましくは、20時間以下であり;より好ましくは4.0時間以下である。
【0059】
[1-8-1]前記態様[1]の工程(4)の反応は、好ましくは、封管反応瓶を用いる封管反応である。
【0060】
[1-8-2]前記態様[1-8-1]の封管反応の反応温度は、好ましくは、100℃である。
【0061】
[1-8-3]前記態様[1-8-1]の封管反応の好ましい反応時間は2時間である。
【0062】
[1-9]前記態様[1]の工程(5)において、ウレア化剤は、好ましくは、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-トリル、又は2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートであり;より好ましくは、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートである。
【0063】
[1-10]前記態様[1]の工程(5)において、塩基は、好ましくは、ピリジン、トリエチルアミン、又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等の無機塩基、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又は水素化カルシウム等の水素化金属化合物、メチルリチウム、又はブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、又はリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド、又は、それらの混合物等であり;より好ましくは、ピリジンである。
【0064】
[1-11]前記態様[1]の工程(5)において、溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はアセトニトリル、等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、又は酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒、又は、それらの混合溶媒等であり;より好ましくは、1,2-ジクロロエタンである。
【0065】
[1-12]前記態様[1]の工程(6)において、式(CB-1)中のYは、好ましくは、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、又は2,2,2-トリクロロエトキシ基であり;より好ましくは、2,2,2-トリクロロエトキシ基である。
【0066】
[1-13]前記態様[1]の工程(7)において、溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はアセトニトリル、等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、又は酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒、又は、それらの混合溶媒等であり;より好ましくは、N-メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。
【0067】
[1-14]前記態様[1]の工程(7)において、塩基は、好ましくは、ピリジン、トリエチルアミン、又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等の無機塩基、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又は水素化カルシウム等の水素化金属化合物、メチルリチウム、又はブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、又はリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド、又は、それらの混合物等であり;より好ましくは、トリエチルアミン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)である。
【0068】
[1-15]前記態様[1]の各式中において、pは、好ましくは、0または1の整数であり、より好ましくは0の整数である。
【0069】
[1-16]前記態様[1]の各式中において、R1は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;より好ましくは、ハロゲン原子、又はC1-6アルコキシC1-6アルキル基であり;更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、又はメトキシメチル基から選ばれる置換基が1~2個置換しても良く;特に好ましくは、無置換である。
【0070】
[1-17]前記態様[1]の各式中において、R
1の置換様式は、好ましくは、1個の置換基がR
1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式(PH-1)ないし式(PH-4)で表わされる置換様式をとり;
2個の置換基がR
1によって置換する場合の部分構造式は、下記部分構造式(PH-5)ないし式(PH-10))で表わされる置換様式をとり;
より好ましくは、1個の置換基がR
1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式:
で表わされる置換様式をとり;より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
から選ばれる置換様式をとる。
2個の置換基がR
1によって置換する場合(p=2)は、下記部分構造式:
で表わされる置換様式をとり;
より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
の置換様式をとる。
【0071】
[1-18]前記態様[1]の工程(1)において、好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、1.5~5等量の範囲であり;チタン触媒の量は、式(TH-1)に対して、1.0~5.0mol%の範囲であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2~6.0mol%の範囲であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、5~20倍量の範囲であり;反応溶液のpHは、pH=7.4~8.0であり;反応時間は、20時間以下である。
【0072】
[1-19]前記態様[1]の工程(1)において、より好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対し、1.5又は5.0等量であり;チタン触媒の量は式(TH-1)に対し、1.0又は3.0mol%であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2又は3.6mol%であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、5倍量であり;反応溶液のpHは、pH=7.4又はpH=8.0であり;反応時間は、4時間以下である。
【0073】
[2]本発明の第2の態様は、下記式(AM-X):
【0074】
【0075】
[式(AM-X)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R1は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基、シアノ化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン化C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
【0076】
【0077】
[式(TH-1)中、p及びR1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒(例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、チタンアルコキシド(チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド(Ti(OCH2CH2CH3)4)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)、チタンテトラノルマルブトキシド(Ti(OCH2CH2CH2CH3)4)、チタンテトラターシャリーブトキシド(Ti(OC(CH3)3)4)、等)と、配位子としての下記式(LG-1):
【0078】
【0079】
である、3,3’’-((((1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(アザネジル))ビス(メチレン))ビス(2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)[CAS番号:928769-12-4]と、過酸化水素水(例えば、約30~60%濃度)と、緩衝液(例えば、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)/HCl緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、ホウ酸Na/HCl緩衝液、等)とを、溶媒(例えば、反応に関与しない溶媒、好ましくは有機溶媒、より好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等ニトリル系溶媒)中に加えて混合溶液(1)を得る工程、
(2)前記混合溶液(1)を、反応温度(外温)30℃~50℃の範囲、好ましくは、35~45℃の範囲の温度で反応を行い、下記式(EP-1):
【0080】
【0081】
[式(EP-1)中、p及びR1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物を得る工程、
(3)前記式(EP-1)で表される化合物をアンモニア水に加え、前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液を得る工程、及び
(4)前記混合溶液を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(AM-X)で表される化合物を得る工程、を含む製造方法である。
【0082】
[2-1-1]前記態様[2]の工程(1)において、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、好ましくは、1.5~10等量の範囲であり;より好ましくは、1.5~5等量の範囲であり;特に好ましくは、1.5又は5.0等量である。
【0083】
[2-1-2]前記態様[2]の工程(1)において、過酸化水素水の濃度は、約30%のものを用いることが好ましい。
【0084】
[2-2-1]前記態様[2]の工程(1)において、チタン触媒は、好ましくは、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、又はチタンテトラターシャリーブトキシドであり;より好ましくは、チタンテトライソプロポキシドである。
【0085】
[2-2-2]前記態様[2]の工程(1)において、チタン触媒の量は、好ましくは、式(TH-1)に対し0.1~10mol%の範囲であり;より好ましくは1.0~5.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.0、3.0、又は5.0mol%である。
【0086】
[2-3]前記態様[2]の工程(1)において、配位子は、式(TH-1)に対して、好ましくは、0.1~12mol%の範囲であり;より好ましくは1.2~6.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.2、3.6、又は6.0mol%である。
【0087】
[2-4]前記態様[2]の工程(1)において、溶媒は、好ましくは反応に関与しない溶媒であり、より好ましくは、有機溶媒であり、さらに好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒であり;より好ましくは、ジクロロメタンである。
【0088】
[2-5]前記態様[2]の工程(1)において、溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、好ましくは、1~20倍量の範囲であり;より好ましくは、5~20倍量の範囲であり;特に好ましくは、5又は20倍量である。
【0089】
[2-6-1]前記態様[2]の工程(1)において、緩衝液は、好ましくは、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;より好ましくは、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;特に好ましくはリン酸緩衝液である。当該緩衝液によって、反応溶液等のpHを調製することができる。
【0090】
[2-6-2]
前記態様[2]の工程(1)において、反応溶液のpHは、好ましくは、pH=7.4~8.0であり;より好ましくは、pH=7.4、又はpH=8.0である。
【0091】
[2-7]前記態様[2]の工程(2)において、反応時間は、好ましくは、20時間以下であり;より好ましくは4.0時間以下である。
【0092】
[2-8-1]前記態様[2]の工程(2)の反応は、好ましくは、封管反応瓶を用いる封管反応である。
【0093】
[2-8-2]前記態様[2-8-1]の封管反応の反応温度は、好ましくは、100℃である。
【0094】
[2-8-3]前記態様[2-8-1]の封管反応の好ましい反応時間は2時間である。
【0095】
[2-9]前記態様[2]の各式中において、pは、好ましくは、0または1の整数であり、より好ましくは0の整数である。
【0096】
[2-10]前記態様[2]の各式中において、R1は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;より好ましくは、ハロゲン原子、又はC1-6アルコキシC1-6アルキル基であり;更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、又はメトキシメチル基から選ばれる置換基が1~2個置換しても良く;特に好ましくは、無置換である。
【0097】
[2-11]前記態様[2]の各式中において、R1の置換様式は、好ましくは、1個の置換基がR1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式(PH-1)ないし式(PH-4)で表わされる置換様式をとり;
【0098】
【0099】
2個の置換基がR1によって置換する場合の部分構造式は、下記部分構造式(PH-5)ないし式(PH-10))で表わされる置換様式をとり;
【0100】
【0101】
より好ましくは、置換基が1個の置換基がR1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式:
【0102】
【0103】
で表わされる置換様式をとり;より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造
式:
【0104】
【0105】
から選ばれる置換様式をとる。
2個の置換基がR1によって置換する場合(p=2)は、下記部分構造式:
【0106】
【0107】
で表わされる置換様式をとり;
より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
【0108】
【0109】
[2-12]前記態様[2]の工程(1)において、好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、1.5~5等量の範囲であり;チタン触媒の量は、式(TH-1)に対して、1.0~5.0mol%の範囲であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2~6.0mol%の範囲であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、5~20倍量の範囲であり;反応溶液のpHは、pH=7.4~8.0であり;反応時間は、20時間以下である。
【0110】
[2-13]前記態様[2]の工程(1)において、より好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対し、1.5又は5.0等量であり;チタン触媒の量は式(TH-1)に対し、1.0又は3.0mol%であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2又は3.6mol%であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、5倍量であり;反応溶液のpHは、pH=7.4又はpH=8.0であり;反応時間は、4時間以下である。
【0111】
[3]発明の第3の態様は、下記式(EP-1):
【0112】
【0113】
[式(EP-1)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R1は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基、シアノ化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン化C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(1)下記式(TH-1):
【0114】
【0115】
[式(TH-1)中、p及びR1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物と、チタン触媒(例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、チタンアルコキシド(チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド(Ti(OCH2CH2CH3)4)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)、チタンテトラノルマルブトキシド(Ti(OCH2CH2CH2CH3)4)、チタンテトラターシャリーブトキシド(Ti(OC(CH3)3)4)、等)と、配位子としての下記式(LG-1):
【0116】
【0117】
である、3,3’’-((((1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(アザネジル))ビス(メチレン))ビス(2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)[CAS番号:928769-12-4]と、過酸化水素水(例えば、約30~60%濃度)と、緩衝液(例えば、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)/HCl緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、ホウ酸Na/HCl緩衝液、等)とを、溶媒(例えば、反応に関与しない溶媒、好ましくは有機溶媒、より好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等ニトリル系溶媒)中に加えて混合溶液(1)を得る工程、(2)前記混合溶液(1)を、反応温度(外温)30℃~50℃の範囲、好ましくは、35~45℃の範囲の温度で反応を行い、式(EP-1)で表される化合物を得る工程を含む製造方法である。
【0118】
[3-1-1]前記態様[3]の工程(1)において、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、好ましくは、1.5~10等量の範囲であり;より好ましくは、1.5~5等量の範囲であり;特に好ましくは、1.5又は5.0等量である。
【0119】
[3-1-2]前記態様[3]の工程(1)において、過酸化水素水の濃度は、約30%のものを用いることが好ましい。
【0120】
[3-2-1]前記態様[3]の工程(1)において、チタン触媒は、好ましくは、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、又はチタンテトラターシャリーブトキシドであり;より好ましくは、チタンテトライソプロポキシドである。
【0121】
[3-2-2]前記態様[3]の工程(1)において、チタン触媒の量は、好ましくは、式(TH-1)に対し0.1~10mol%の範囲であり;より好ましくは1.0~5.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.0、3.0、又は5.0mol%である。
【0122】
[3-3]前記態様[3]の工程(1)において、配位子は、式(TH-1)に対して、好ましくは、0.1~12mol%の範囲であり;より好ましくは1.2~6.0mol%の範囲であり;特に好ましくは、1.2、3.6、又は6.0mol%である。
【0123】
[3-4]前記態様[3]の工程(1)において、溶媒は、好ましくは反応に関与しない溶媒であり、より好ましくは、有機溶媒であり、さらに好ましくは、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒であり;より好ましくは、ジクロロメタンである。
【0124】
[3-5]前記態様[3]の工程(1)において、溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、好ましくは、1~20倍量の範囲であり;より好ましくは、5~20倍量の範囲であり;特に好ましくは、5又は20倍量である。
【0125】
[3-6-1]前記態様[3]の工程(1)において、緩衝液は、好ましくは、クエン酸/NaOH緩衝液、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸/NaOH緩衝液、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;より好ましくは、リン酸緩衝液、KH2PO4/NaOH緩衝液であり;特に好ましくはリン酸緩衝液である。当該緩衝液によって、反応溶液等のpHを調製することができる。
【0126】
[3-6-2]前記態様[3]の工程(1)において、反応溶液のpHは、好ましくは、pH=7.4~8.0であり;より好ましくは、pH=7.4、又はpH=8.0である。
【0127】
[3-7]前記態様[3]の工程(2)において、反応時間は、好ましくは、20時間以下であり;より好ましくは4.0時間以下である。
【0128】
[3-8]前記態様[3]の各式中において、pは、好ましくは、0または1の整数であり、より好ましくは0の整数である。
【0129】
[3-9]前記態様[3]の各式中において、R1は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;より好ましくは、ハロゲン原子、又はC1-6アルコキシC1-6アルキル基であり;更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、又はメトキシメチル基から選ばれる置換基が1~2個置換しても良く;特に好ましくは、無置換である。
【0130】
[3-10]前記態様[3]の各式中において、R1の置換様式は、好ましくは、1個の置換基がR1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式(PH-1)ないし式(PH-4)で表わされる置換様式をとり;
【0131】
【0132】
2個の置換基がR1によって置換する場合の部分構造式は、下記部分構造式(PH-5)ないし式(PH-10))で表わされる置換様式をとり;
【0133】
【0134】
より好ましくは、1個の置換基がR1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式:
【0135】
【0136】
で表わされる置換様式をとり;より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
【0137】
【0138】
から選ばれる置換様式をとる。
2個の置換基がR1によって置換する場合(p=2)は、下記部分構造式:
【0139】
【0140】
で表わされる置換様式をとり;
より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
の置換様式をとる。
【0141】
[3-11]前記態様[3]の工程(1)において、好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対して、1.5~5等量の範囲であり;チタン触媒の量は、式(TH-1)に対して、1.0~5.0mol%の範囲であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2~6.0mol%の範囲であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、式(TH-1)の質量に対して、5~20倍量の範囲であり;反応溶液のpHは、pH=7.4~8.0であり;反応時間は、20時間以下である。
【0142】
[3-12]前記態様[3]の工程(1)において、より好ましくは、過酸化水素水の量は、式(TH-1)1等量に対し、1.5又は5.0等量であり;チタン触媒の量は式(TH-1)に対し、1.0又は3.0mol%であり;配位子は、式(TH-1)に対して、1.2又は3.6mol%であり;チタン触媒は、チタンテトライソプロポキシドであり;緩衝液は、リン酸緩衝液であり;溶媒(反応に関与しない溶媒)は、ジクロロメタンであり;溶媒(反応に関与しない溶媒)の量は、5倍量であり;反応溶液のpHは、pH=7.4又はpH=8.0であり;反応時間は、4時間以下である。
【0143】
【0144】
[式(AM-X)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R1は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基、シアノ化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン化C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(3)下記式(EP-1):
【0145】
【0146】
[式(EP-1)中、p及びR1は、前記式(AM-X)中の定義と同じである]で表される化合物をアンモニア水に加え、前記式(EP-1)で表される化合物とアンモニア水とを含む混合溶液(3)を得る工程、及び
(4)前記混合溶液(3)を、0℃から前記混合溶液(3)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(AM-X)で表される化合物を得る工程、を含む製造方法である。
【0147】
[4-1-1]前記態様[4]の工程(4)の反応は、好ましくは、封管反応瓶を用いる封管反応である。
【0148】
[4-1-2]前記態様[4-1-1]の封管反応の好ましい反応温度は100℃である。
【0149】
[4-1-3]前記態様[4-1-1]の封管反応の好ましい反応時間は2時間である。
【0150】
[4-2]前記態様[4]の各式中において、pは、好ましくは、0または1の整数であり、より好ましくは0の整数である。
【0151】
[4-3]前記態様[4]の各式中において、R1は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;より好ましくは、ハロゲン原子、又はC1-6アルコキシC1-6アルキル基であり;更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、又はメトキシメチル基から選ばれる置換基が1~2個置換しても良く;特に好ましくは、無置換である。
【0152】
[4-4]前記態様[4]の各式中において、R1の置換様式は、好ましくは、1個の置換基がR1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式(PH-1)ないし式(PH-4)で表わされる置換様式をとり;
【0153】
【0154】
2個の置換基がR1によって置換する場合(p=2)の部分構造式は、下記部分構造式(PH-5)ないし式(PH-10))で表わされる置換様式をとり;
【0155】
【0156】
より好ましくは、1個の置換基がR
1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式:
【0157】
で表わされる置換様式をとり;より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
【0158】
から選ばれる置換様式をとる。
2個の置換基がR
1によって置換する場合(p=2)は、下記部分構造式:
【0159】
で表わされる置換様式をとり;
より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
の置換様式をとる。
【0160】
【0161】
[式(I)中、pは、0、1、及び2から選ばれる整数であり;R1は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基、シアノ化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン化C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表される化合物の製造方法であって、以下の工程:
(5)下記式(AM-1):
【0162】
【0163】
[式(AM-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基である]で表わされる化合物と、トリホスゲン、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-ニトロフェニル、クロロギ酸p-トリル、N,N´-カルボニルジイミダゾール、及びN,N´-ジスクシンイミジルカルボナート等から選ばれるウレア化剤と、塩基とを、溶媒に加えて混合溶液(5)を得る工程、(6)前記混合溶液(5)を、0℃から前記混合溶液(5)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、下記式(CB-1):
【0164】
【0165】
[式(CB-1)中、環Aは、5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル基であり;Yは、トリクロロメトキシ基、塩素原子、2,2,2-トリクロロエトキシ基、フェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、イミダゾール-1-イル基、(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ基、等から選ばれる基である]で表わされる化合物を得る工程、
前記式(CB-1)で表わされる化合物と、
下記式(AM-X):
【0166】
【0167】
[式(AM-X)中、p及びR1は、前記式(I)中の定義と同じである]で表される化合物と、塩基とを、溶媒に加え混合溶液(7)を得る工程、及び
(8)前記混合溶液(7)を、0℃から前記混合溶液(7)が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(I)で表される化合物を得る工程、を含む製造方法である。
【0168】
[5-1]前記態様[5]の工程(5)において、ウレア化剤は、好ましくは、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-トリル、又は2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートであり;より好ましくは、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメートである。
【0169】
[5-2]前記態様[5]の工程(5)において、塩基は、好ましくは、ピリジン、トリエチルアミン、又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等の無機塩基、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又は水素化カルシウム等の水素化金属化合物、メチルリチウム、又はブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、又はリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド、又は、それらの混合物等であり;より好ましくは、ピリジンである。
【0170】
[5-3]前記態様[5]の工程(5)において、溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はアセトニトリル、等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、又は酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒、又は、それらの混合溶媒等であり;より好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0171】
[5-4]前記態様[5]の工程(5)において、式(CB-1)中のYは、好ましくは、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、又は2,2,2-トリクロロエトキシ基であり;より好ましくは、2,2,2-トリクロロエトキシ基である。
【0172】
[5-5]前記態様[5]の工程(7)において、溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はアセトニトリル、等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、又は酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒、又は、それらの混合溶媒等であり;より好ましくは、N-メチルピロリドンである。
【0173】
[5-6]前記態様[5]の(7)において、塩基は、好ましくは、ピリジン、トリエチルアミン、又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等の無機塩基、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又は水素化カルシウム等の水素化金属化合物、メチルリチウム、又はブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、又はリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド、又は、それらの混合物等であり;より好ましくは、トリエチルアミンである。
【0174】
[5-7]前記態様[5]の各式中において、pは、好ましくは、0または1の整数であり、より好ましくは0の整数である。
【0175】
[5-8]前記態様[5]の各式中において、R1は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、カルボキサミド基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選ばれる置換基であり;より好ましくは、ハロゲン原子、又はC1-6アルコキシC1-6アルキル基であり;更に好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、又はメトキシメチル基から選ばれる置換基が1~2個置換しても良く;特に好ましくは、無置換である。
【0176】
[5-9]前記態様[5]の各式中において、R
1の置換様式は、好ましくは、1個の置換基がR
1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式(PH-1)ないし式(PH-4)で表わされる置換様式をとり;
【0177】
2個の置換基がR
1によって置換する場合の部分構造式は、下記部分構造式(PH-5)ないし式(PH-10))で表わされる置換様式をとり;
【0178】
より好ましくは、1個の置換基がR
1によって置換する場合(p=1)は、下記部分構造式:
【0179】
で表わされる置換様式をとり;より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
【0180】
から選ばれる置換様式をとる。
2個の置換基がR
1によって置換する場合(p=2)は、下記部分構造式:
【0181】
で表わされる置換様式をとり;
より具体的な置換基との組み合わせとしては、下記部分構造式:
の置換様式をとる。
【0182】
以下に、本発明の態様[1]~[5]中の各置換基について具体的に説明する。本発明の化合物に関する説明において、例えば「C1-6」とは、構成炭素原子数が1から6であることを示し、特に断らない限り、直鎖、分枝鎖又は環状の基の総炭素原子数を表わす。鎖状の基と環状の基を含む基については「鎖と環の総炭素原子数」を意味する。
【0183】
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン化C1-6アルキル基」等における「ハロゲン化」とは、置換基として数個の、好ましくは1~5個の前記「ハロゲン原子」を有していてもよいことを意味する。
本明細書中、特に断りのない限り、「シアノ化C1-6アルキル」等における「シアノ化」とは、置換基として数個の、好ましくは1~5個の「シアノ基」を有していてもよいことを意味する。
【0184】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、又はヘキシル等の基が挙げられる。
【0185】
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン化C1-6アルキル基」とは、前記「C1-6アルキル」が数個の、好ましくは1~5個のハロゲン原子で任意に置換されている基を意味し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、又はペンタフルオロエチル等の基が挙げられる。
【0186】
本明細書中、特に断りのない限り、「ヒドロキシC1-6アルキル基」とは、前記「C1-6アルキル」が数個の、好ましくは1~5個の水酸基で任意に置換されている基を意味し、例えば、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、又は2,2-ジメチル-2-ヒドロキシエチル(=2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)等の基が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「シアノ化C1-6アルキル基」とは、前記「C1-6アルキル」が数個の、好ましくは1~5個のシアノで任意に置換されている基を意味し、例えば、シアノメチル、1-シアノエチル、又は2-シアノエチル等の基が挙げられる。
【0187】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシ基」とは、前記した「C1-6アルキル」が酸素原子に結合したアルコキシを表し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、又はヘキシルオキシ等の基が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン化C1-6アルコキシ基」とは、前記した「ハロゲン化C1-6アルキル」が酸素原子に結合したハロゲン化アルコキシを表し、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、又は1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ等の基が挙げられる。
【0188】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシC1-6アルキル基」とは、前記「C1-6アルコキシ」が前記「C1-6アルキル」に置換した基を意味する。本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシC1-6アルキル」としては、例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、1,1-ジメトキシメチル、又は1,1-ジエトキシエチル等の基が挙げられる。
【0189】
本明細書中、特に断りのない限り、「モノ/ジC2-7アルカノイルアミノ基」とは、「アミノ基」の窒素原子上の一つ又は二つの水素原子が、後述する「C2-7アルカノイル基」で置換したアミノ基を意味し、例えば、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、バレルアミド、イソバレルアミド、ピバルアミド、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、シクロプロパンカルボキサミド、シクロブタンカルボキサミド、シクロペンタンカルボキサミド、シクロヘキサンカルボキサミド、2-メチルシクロプロパンカルボキサミド、又はジアセトアミド等の基が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「C2-7アルカノイル基」とは、前記「C1-6アルキル基」にカルボニル基が結合した、「C1-6アルキルカルボニル基」を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、シクロプロピルメチルカルボニル、又は2-メチルシクロプロピルカルボニル等の基が挙げられる。
【0190】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、「カルボキシ基(-COOH)」の水素原子が前記「C1-6アルキル基」に置換した基、即ち「エステル基」を意味し、例えば、メトキシカルボニル(メチルエステル)、エトキシカルボニル(エチルエステル)、又はtert-ブトキシカルボニル(tert-ブチルエステル)等の基が挙げられる。
【0191】
本明細書前記態様中、特に断りのない限り、「ウレア化剤」としては、トリホスゲン、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p-ニトロフェニル、クロロギ酸p-トリル、N,N´-カルボニルジイミダゾール、又はN,N´-ジスクシンイミジルカルボナート等が挙げられる。但し、上記に記載したウレア化剤に必ずしも限定されるわけではない。
【0192】
本明細書前記態様中、特に断らない限り、「塩基」としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、2,6-ルチジン、イミダゾール、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N-ジメチルアニリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、又はN-メチルモルホリン等の有機塩基、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、又はフッ化セシウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、等の金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、又はナトリウムアミド、等の水素化金属化合物、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、又はtert-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、又はリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド、又は、それらの混合物等が挙げられる。但し、上記に記載した塩基に必ずしも限定されるわけではない。これらの塩基は、単独で用いてもよく、又は適宜選択し二種以上の塩基を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0193】
本明細書前記態様中、「溶媒」若しくは「反応に関与しない溶媒」は、例えば、水、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、及び1,2-ジクロロエタン等から選ばれる当該反応に影響がでない溶媒が挙げられる。但し、上記に記載した溶媒に必ずしも限定されるわけではない。これらの溶媒は、溶媒は、一種の溶媒を単独で用いてもよく、又は適宜選択し二種以上の溶媒を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0194】
本明細書において、化合物の構造式中に不斉炭素がある場合、当該不斉炭素の近傍に立体配置を示すR又はSの記号を付す場合もある。例えば、下記式(AM-X)又は式(AM-Y)では、1位及び2位が不斉炭素であり、各式において当該不斉炭素の近傍にR又はSの記号を付している。
【0195】
本明細書中の化合物(例えば、式(SM-2)、式(IM-6)、式(IM-7)、式(AM-1)、式(AM-X)、及び式(I)、等)は、置換基の種類によって、無機又は有機の酸との塩(酸付加塩)を形成する場合や、無機又は有機の塩基との塩を形成する場合がある。かかる塩としては、製薬学的に許容し得る塩であれば特に限定されないが、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性、又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
【0196】
金属塩の好適な例としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩などが挙げられる(例えば、モノ塩の他、二ナトリウム塩、二カリウム塩も含む)。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミン、t-オクチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、ピコリン、リシン、アルギニン、オルニチン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、フェニルグリシンアルキルエステル、グアニジン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。
【0197】
無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸等との塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等の脂肪族ジカルボン酸との塩、クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸との塩、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸との塩、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸の塩、桂皮酸、グリコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類との酸付加塩が挙げられる。
【0198】
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、又、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、又は酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
【0199】
前記塩は、常法に従い、例えば、本明細書中の化合物と適量の酸もしくは塩基を含む溶液を混合することにより目的の塩を形成させた後に分別濾取するか、もしくは該混合溶媒を留去することにより得ることができる。又、本明細書中の化合物又はその塩は、水、エタノール、グリセロール等の溶媒と溶媒和物を形成し得る。塩に関する総説として、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、Stahl&Wermuth(Wiley-VCH、2002)が出版されており、本書に詳細な記載がなされている。
【0200】
本明細書中の化合物は、非溶媒和形態もしくは溶媒和形態で存在することがあり得る。本明細書において、「溶媒和物」は、本明細書中の化合物と1種または複数の薬学的に許容される溶媒分子(例えば、水、エタノール等)を含む分子複合体を意味する。前記溶媒分子が水であるとき、特に「水和物」と言う。
【0201】
本明細書中の化合物が、幾何異性体(ジオメトリカルアイソマー)、配置異性体(コンフィギュレーショナルアイソマー)、互変異性体(トウトメリックアイソマー)、光学異性体(オプティカルアイソマー)、立体異性体(ジアステレオマー)、位置異性体(レジオアイソマー)、回転異性体(ロテイショナルアイソマー)などの異性体を有する場合がある。
【0202】
本明細書中の化合物に、幾何異性体、配置異性体、立体異性体、配座異性体等が存在する場合には、公知の手段によりそれぞれを単離することができる。
【0203】
本明細書中の化合物が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体、互変異性体を含有する場合には、自体公知の合成手法、分離手法により各々の異性体を単一の化合物として得ることができる。例えば、光学分割法としては、自体公知の方法、例えば、(1)分別再結晶法、(2)ジアステレオマー法、(3)キラルカラム法等が挙げられる。
【0204】
(1)分別再結晶法:ラセミ体に対して光学分割剤をイオン結合させることにより結晶性のジアステレオマーを得た後、これを分別再結晶法によって分離し、所望により、中和工程を経てフリーの光学的に純粋な化合物を得る方法である。光学分割剤としては、例えば、(+)-マンデル酸、(-)-マンデル酸、(+)-酒石酸、(-)-酒石酸、(+)-1-フェネチルアミン、(-)-1-フェネチルアミン、シンコニン、(-)-シンコニジン、ブルシン等が挙げられる。
【0205】
(2)ジアステレオマー法:ラセミ体の混合物に光学分割剤を共有結合(反応)させ、ジアステレオマーの混合物とした後、これを通常の分離手段(例、分別再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)等)等を経て光学的に純粋なジアステレオマーへ分離した後、加水分解反応等の化学的な処理により、光学分割剤を除去することにより、光学的に純粋な光学異性体を得る方法である。例えば、本発明の化合物に分子内水酸基または1級、2級アミノ基を有する場合、該化合物と光学活性な有機酸(例、MTPA〔α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸〕、(-)-メントキシ酢酸等)等とを縮合反応に付すことにより、それぞれエステル体またはアミド体のジアステレオマーが得られる。一方、本発明の化合物にカルボキシ基が有る場合、該化合物と光学活性アミンまたはアルコール試薬とを縮合反応に付すことにより、それぞれアミド体またはエステル体のジアステレオマーが得られる。上記の分離された各ジアステレオマーは、酸加水分解または塩基性加水分解反応に付すことにより、元の化合物の光学異性体に変換される。
【0206】
(3)キラルカラム法:ラセミ体またはその塩をキラルカラム(光学異性体分離用カラム)でのクロマトグラフィーに付すことで、直接光学分割する方法である。例えば、高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography:HPLC)の場合、ダイセル社製CHIRALシリーズ等のキラルカラムに光学異性体の混合物を添加し、水、種々の緩衝液(例、リン酸緩衝液)、有機溶媒(例、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、ジエチルアミン)を単独で、または混合した溶液として用いて、展開させることにより、光学異性体を分離することができる。また、例えば、ガスクロマトグラフィーの場合、CP-Chirasil-DeX CB(ジーエルサイエンス社製)等のキラルカラム使用して分離することができる。
【0207】
本明細書中の化合物は、結晶となり得る場合もある。結晶である場合、その結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても良い。
【0208】
本明細書中の化合物は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
【0209】
本明細書中の化合物には、同位元素(例えば、水素の同位体:2Hおよび3Hなど、炭素の同位体:11C、13C、および14Cなど、塩素の同位体:36Clなど、フッ素の同位体:18Fなど、ヨウ素の同位体:123Iおよび125Iなど、窒素の同位体:13Nおよび15Nなど、酸素の同位体:15O、17O、および18Oなど、リンの同位体:32Pなど、ならびに硫黄の同位体:35Sなど)で標識、又は置換された化合物も含まれる。
【0210】
ある種の同位元素(例えば、11C、18F、15O、および13Nなどの陽電子放出同位元素)で標識または置換された本発明の化合物は、例えば、陽電子断層法(Positron Emission Tomography;PET)において使用するトレーサー(PETトレーサー)として用いることができ、医療診断などの分野において有用である。
【0211】
ある種の同位体標識で標識または置換された本発明の化合物は、薬物および/または基質の組織分布研究において有用である。例えば、3Hおよび14Cは、それらの標識または置換が容易であり、かつ検出手段が容易である点から、該研究目的において有用である。
【0212】
同位体標識された本発明の化合物は、当業者に知られている通常の技法によって、または後述の実施例に記載する合成方法に類似する方法によって得る事ができる。また、非標識化合物の代わりに、得られた同位体標識化合物を薬理実験に用いる事ができる。
【0213】
本明細書前記態様中又は本明細書中の製造方法において、「0℃から前記混合溶液・・・が還流する温度までの間のいずれかの温度」「0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度」等の記載が意味する処は、それぞれ、0℃から各混合溶液(溶媒)が還流する温度迄の範囲内の任意の温度(一定温度)を意味する。
なお、本明細書において、特に断らない限り、「室温」とは、実験室、研究室等の温度の意味であり、通常約1℃から約30℃、好ましくは通常約5℃から約30℃、より好ましくは通常約15℃から約25℃、更に好ましくは20±3℃の温度を示すものとする。
【0214】
本発明の製造方法において、使用する溶媒は、一種の溶媒を単独で用いてもよく、又は反応条件により適宜選択し二種以上の溶媒を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明の製造方法において、化合物の抽出、乾燥、精製等の工程は、周知の方法で適宜行い得る。
本発明の製造方法において、各工程における反応時間は、特に断らない限り、反応が十分に進行する時間であればよく、適宜選択し得る。
【0215】
[製造方法A]本発明中の式(TH-1)で表される化合物の製造方法:
以下に、本発明における、式(TH-1)[式(TH-1)中のp及びR1の定義は、態様[1]中の式(I)の定義と同じである]で表される化合物の製造方法について詳細に説明する。式(TH-1) で表される化合物及びその溶媒和物は、市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により容易に得ることが出来る化合物を出発原料若しくは合成中間体として、既知の一般的化学的な製造方法を組み合わせることで容易に製造することが可能であり、例えば、以下に示す代表的な製造方法に従い製造することができる。
[製造方法A]中、RAは、特に断らない限り、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基等のC1-6アルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。
【0216】
【0217】
<工程1> 式(SM-1)[式(SM-1)の化合物は、市販化合物、又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である]で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第4版 22 有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド、1-82頁、1992年、丸善』等に記載された方法に準じて、塩酸、硫酸、塩化チオニル、塩化アセチル等の酸性試薬存在下、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-1)で表される化合物を製造することができる。
又、式(SM-1)で表される化合物を用い、文献公知の方法、例えば、『シンセッティク コミュニケーションズ(Synthetic Communications)、31(14)、2177-2183頁、2001年』等に記載された方法に準じて、アルキルハライド剤(例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等)存在下、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基存在下、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の極性溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-1)で表される化合物を製造することができる。
【0218】
又、式(SM-1)で表される化合物を用い、文献公知の方法、例えば、『ケミカル アンド ファーマシューティカル ブレティン (Chemical & Pharmaceutical Bulletin)、29(5)、1475-1478頁、1981年』等に記載された方法に準じて、ジアゾメタン、トリメチルシリルジアゾメタン等のメチル化剤、エーテル、メタノール等の反応に関与しない溶媒、又はこれらの混合溶媒中、0℃から室温で反応を行い、式(IM-1)で表される化合物を製造することができる。 又、式(SM-1)で表わされる化合物及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等)を用い、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第4版 22 有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド、191-309頁、1992年、丸善』等に記載された方法に準じて、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、ベンゾトリアゾール-1-イロキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(BOP試薬)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィニッククロリド(BOP-Cl)、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェイト(CIP)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)、ポリリン酸(PPA)、2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート メタンアミニウム(HATU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)等の縮合剤の存在下、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等反応に関与しない溶媒中、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基の存在下又は非存在下、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応させることにより、式(IM-1)で表わされる化合物を製造することができる。
【0219】
又、式(SM-1)で表わされる化合物を、文献公知の方法、例えば、『ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、109(24)、p7488-7494、1987年』等に記載された方法に準じて、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等の塩基の存在もしくは非存在下、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン等のハロゲン化剤と、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等の反応に不活性な溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い酸ハライドに変換した後に、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等)を用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第4版 22 有機合成IV酸・アミノ酸・ペプチド、144-146頁、1992年、丸善』等に記載された方法に準じて、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の塩基の存在下、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、ベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等反応に関与しない溶媒中、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応させることにより、式(IM-1)で表わされる化合物を同様に製造することができる。
【0220】
<工程2>[製造方法A]<工程1>で得られる式(IM-1)で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第4版 25、有機合成VII、有機金属試薬による合成、13-19頁、59-72頁、1992年、丸善』等に記載された方法に準じて、Grignard試薬(例えば、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、等)、もしくはアルキル金属試薬(例えば、メチルリチウム、等)の存在下、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の反応に不活性な溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、-78℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-2)で表される化合物を製造することができる。
【0221】
<工程3> [製造方法A]<工程2>で得られる式(IM-2)で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『Tetrahedron Letters,54(32),p4330-4332,2013年』等に記載された方法に準じて、酸として、トリフルオロメタンスルホン酸、五酸化二リン、五塩化リン、硫酸、リン酸、ビスマス(III)トリフルオロメタンスルホネート等の酸試薬存在下、ジクロロメタン、クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、2-プロパノール、水等の反応に不活性な溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-3)で表される化合物を製造することができる。
【0222】
<工程4> [製造方法A]<工程3>で得られる式(IM-3)で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『Chemistry Letters,70(10),p1042-1043,2013年』等に記載された方法に準じて、オキソン(登録商標)(DuPont)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、クロム酸等の酸化剤存在下、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、アセトニトリル、tert-ブチルアルコール、水等の反応に不活性な溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-4)で表される化合物を製造することができる。
【0223】
<工程5> [製造方法A]<工程4>で得られる式(IM-4)で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第4版 26 有機合成VIII 不斉合成・還元・糖・標識化合物、234-245頁、1992年、丸善』等に記載された方法に準じて、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)、ボラン-テトラヒドロフラン(BH3・THF)、ボラン-ジメチルスルフィド(BH3・Me2S)等の還元剤存在下、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の溶媒(反応に関与しない溶媒)、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-5)で表される化合物を製造することができる。
【0224】
<工程6> [製造方法A]<工程5>で得られる式(IM-5)で表される化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『国際公開2014/078454号パンフレット』等に記載された方法に準じて、酸として、p-トルエンスルホン酸等の酸試薬存在下、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,2-ジメトキシエタン等の反応に不活性な溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(TH-1)で表される化合物を製造することができる。
【0225】
[製造方法B]本発明中の式(AM-1)で表される化合物の製造方法:
以下に、本発明における、式(AM-1)で表される化合物の製造方法について詳細に説明する。式(AM-1) で表される化合物及びその溶媒和物は、市販化合物又は市販化合物から文献公知の製造方法により容易に得ることが出来る化合物を出発原料若しくは合成中間体として、既知の一般的化学的な製造方法を組み合わせることで容易に製造することが可能であり、例えば、以下に示す代表的な製造方法に従い製造することができる。
下記製造方法中、[B]は、ボロン酸、ボロン酸エステル、又はボロン酸N-メチルイミノ二酢酸(MIDA)エステル等である。
【0226】
【0227】
<工程1>式(SM-2)及び式(RG-1)[式(SM-2)及び式(RG-1)の化合物は、市販化合物、又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である]で表わされる化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第5版 18 有機化合物の合成 VI -金属を用いる有機合成-、327‐352頁、2004年、丸善』、及び『Journal of Medicinal Chemistry、48(20)、p6326‐6339、2005年』に記載された方法に準じて、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(Pd(PPh3)2Cl2)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(PdCl2(dppf))等のパラジウム触媒、トリフェニルホスフィン、トリス(tert-ブチル)ホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等のホスフィン系試薬、及びトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の有機又は無機塩基存在下、トルエン(トルエン/水)、キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリル(アセトニトリル/水)、1,4-ジオキサン(1,4-ジオキサン/水)、テトラヒドロフラン(テトラヒドロフラン/水)、メタノール、エタノール(エタノール/水)、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ジメトキシエタン(ジメトキシエタン/水)、水等の溶媒(反応に関与しない溶媒)、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-6)で表される化合物を製造することができる。又はホスフィン系試薬の替わりにテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド等を用いて、同様の方法にて製造することができる。
【0228】
<工程2>[製造方法B]<工程1>で得られる式(IM-6)の化合物、及びN-ブロモスクシンイミド(NBS)を用いて、文献公知の方法、例えば、『国際公開2009/088103号パンフレット』に記載された方法に準じて、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の溶媒(反応に関与しない溶媒)、もしくはこれらの混合溶媒を用いて、0℃から溶媒が還流する温度までの間のいずれかの温度で反応を行い、式(IM-7)で表される化合物を製造することができる。
<工程3>[製造方法B]<工程2>で得られる式(IM-7)及び式(RG-2)[式(RG-2)の化合物は、市販化合物、又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である]で表わされる化合物を用いて、上記[製造方法B]<工程1>に準じる反応を行い、式(AM-1)の化合物を製造することができる。
【0229】
上記、[製造方法A]又は[製造方法B]において、式(SM-1)、式(SM-2)、式(IM-1)、式(IM-2)、式(IM-3)、式(IM-4)、式(IM-5)、式(IM-6)、及び式(IM-7)の化合物は、塩を形成していてもよく、かかる塩としては、製薬学的に許容し得る塩であれば特に限定されないが、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性、又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩などが挙げられる(例えば、モノ塩の他、二ナトリウム塩、二カリウム塩も含む)。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミン、t-オクチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、ピコリン、リシン、アルギニン、オルニチン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、フェニルグリシンアルキルエステル、グアニジン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸等との塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等の脂肪族ジカルボン酸との塩、クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸との塩、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸との塩、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸の塩、桂皮酸、グリコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類との酸付加塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、又、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、又は酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
【0230】
また、上記、[製造方法A]又は[製造方法B]において、式(IM-1)、式(IM-2)、式(IM-3)、式(IM-4)、式(IM-5)、式(IM-6)、及び式(IM-7)の化合物は、反応液のままか粗製物として次の反応に用いることもできるが、常法に従って反応混合物から単離することもでき、それ自体が公知の手段、例えば、抽出、濃縮、中和、濾過、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの分離手段により容易に精製することができる。
【0231】
上記、[製造方法A]又は[製造方法B]において、製造方法中の反応条件については、特に断らない限り、以下の如きとする。反応温度は、-78℃から溶媒が還流する温度の範囲であれば、限定されない。又、反応時間は、特に断らない限り、反応が十分に進行する時間であれば、限定されない。
前記反応温度における、「-78℃から溶媒が還流する温度の範囲」の意味する処は、-78℃から反応に用いる溶媒(又は混合溶媒)が還流する温度迄の範囲内の温度を意味する。例えば、溶媒にメタノールを用いる場合、「-78℃から溶媒が還流する温度で」とは、-78℃からメタノールが還流する温度迄の範囲内の温度を意味する。また、同様に「-78℃から反応溶液が還流する温度で」とは、-78℃から反応溶液が還流する温度迄の範囲内の任意の温度を意味する。
【0232】
また、上記、[製造方法A]又は[製造方法B]の各工程は、無溶媒、あるいは反応前に原料化合物を適当な溶媒に溶解又は懸濁して行うことができる。前記溶媒としては、反応に関与しない溶媒が好ましく、例えば、水、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、無水酢酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、及び硫酸等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いることも可能であり、又は反応条件により適宜選択し二種以上の溶媒を適宜の割合で混合して用いることも可能である。これらの溶媒は、反応条件に応じて適宜選択される。
本明細書の製造方法中、特に断らない限り、「溶媒」、「反応に関与しない溶媒」又は「反応に不活性な溶媒」と記載した場合、使用する溶媒は、一種の溶媒を単独で用いてもよく、又は反応条件により適宜選択し二種以上の溶媒を適宜の割合で混合して用いてもよいことを意味する。
【0233】
上記、[製造方法A]又は[製造方法B]の各工程で用いられる塩基(又は脱酸剤)としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、フッ化セシウム、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ピリジン、ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、イミダゾール、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等が挙げられる。但し、上記に記載したものに必ずしも限定されるわけではない。これらの塩基は、反応条件に応じて適宜選択される。
【0234】
上記[製造方法A]又は[製造方法B]の各工程で用いられる酸、又は酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、三フッ化ホウ素エーテル錯体、ヨウ化亜鉛、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄等が挙げられる。但し、上記に記載したものに必ずしも限定されるわけではない。これらの酸又は酸触媒は、反応条件に応じて適宜選択される。
【実施例】
【0235】
次に、本発明をさらに詳細に説明するために実施例をあげるが、これらの例は単なる実施であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0236】
核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、JEOL JNM-ECX400 FT-NMR又はJEOL JNM-ECX300 FT-NMR(日本電子)を用いた。実施例中の1H-NMRデータにおいて1H-NMR(#)と記載した場合、JEOL JNM-ECX300 FT-NMR(日本電子)を用いて測定をしたことを意味する。液体クロマトグラフィー-質量分析スペクトル(LC-Mass)は以下の方法で測定した。[UPLC]Waters AQUITY UPLCシステム及びBEH C18カラム(2.1mm×50mm、1.7μm)(Waters)を用い、参考例ではアセトニトリル:0.05%トリフルオロ酢酸水溶液=5:95(0分)~95:5(1.0分)~95:5(1.6分)~5:95(2.0分)の移動相及びグラジエント条件を、実施例ではアセトニトリル:10mM重炭酸アンモニウム水溶液(5%アセトニトリル)=5:95(0.5分)~100:0(7.0分)~100:0(7.5分)~5:95(7.51分)の移動相およびグラジエント条件を用いた。超臨界流体液体クロマトグラフィー(SFC)による光学純度分析はWaters SFC UPC2および対応するキラルカラムを用いて実施した。
【0237】
1H-NMRデータ中、NMRシグナルのパターンで、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、brはブロード、Jはカップリング定数、Hzはヘルツ、CDCl3は重クロロホルム、DMSO-D6は重ジメチルスルホキシド、CD3ODは重メタノールを意味する。1H-NMRデータ中、水酸基(OH)、アミノ基(NH2)、カルボキシル基(COOH)のプロトン等、ブロードバンドであるため確認ができないシグナルについては、データに記載していない。
【0238】
LC-Massデータ中、Mは分子量、RTは保持時間、[M+H]+,[M+Na]+は分子イオンピークを意味する。
参考例、実施例、及び実験例中のLC-Mass測定条件は、Waters AQUITY UPLCシステムおよびBEH C18カラム(2.1mm×50mm、1.7μm)(Waters)を用い、アセトニトリル:0.05%トリフルオロ酢酸水溶液=5:95(0分)~95:5(1.0分)~95:5(1.6分)~5:95(2.0分)の移動相およびグラジエントである。
【0239】
参考例及び実施例中の「室温」は、通常約20~25℃の温度を示すものとする。
(実施例2)の表中の溶媒の欄のDCMは、ジクロロメタン、DCEは、1,2-ジクロロエタンを意味する。
【0240】
(参考例1)1,1-ジメチル-1,2-ジヒドロナフタレン(式(TH-1)においてp=0の化合物)の合成法:
【0241】
<工程1> 4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オールの合成:
市販の4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン(CAS番号:2979-69-3)(1.0g)のメタノール(10mL)溶液に、氷水冷下、水素化ホウ素ナトリウム(0.24g)を2回に分けて加え、室温で1時間攪拌した。減圧下にてメタノールを除去し、得られた残渣に1規定水酸化ナトリウム水溶液(30mL)と酢酸エチル(40mL)を加えて分配した。有機層を飽和食塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより標記化合物(1.0g)を淡黄色油状物として得た。
【0242】
1H-NMRデータ(δ:ppm)<300MHz>:(CDCl3) δ:7.43(1H,dd,J=8,2Hz),7.35(1H,dd,J=8,2Hz),7.30-7.17(2H,m),4.82-4.69(1H,m),2.16-2.04(1H,m),1.97-1.83(2H,m),1.74-1.54(1H,m),1.35(3H,s),1.26(3H,s).
MS-ESI(m/z)[M+H]+=159(-OH)、保持時間=1.04(分)。
【0243】
<工程2>1,1-ジメチル-1,2-ジヒドロナフタレンの合成:
(参考例1)<工程1>で得られた化合物(1.0g)とp-トルエンスルホン酸・1水和物(0.05g)のトルエン(10mL)溶液を90℃で1.5時間攪拌した。室温まで放冷後、酢酸エチル(40mL)と飽和炭酸水素化ナトリウム水溶液(30mL)を加えて分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥した有機層をろ過後、得られた酢酸エチルを減圧下にて濃縮することにより標記化合物(0.86g)を黄色油状物として得た。
【0244】
1H-NMRデータ(δ:ppm)<400MHz>:(CDCl3)δ:7.30(1H,d,J=7Hz),7.22-7.12(2H,m),7.04(1H,dd,J=7,2Hz),6.48-6.43(1H,m),5.97-5.91(1H,m), 2.26(2H,dd,J=4,2Hz),1.28(6H,s).
MS-ESI(m/z)[M+H]+=159、保持時間=1.25(分)。
【0245】
(参考例2)5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-アミン(式(AM-1))の合成法:
【0246】
<工程1> 5-メチル-2-フェニルピリジン-3-アミンの合成:
市販の2-クロロ-5-メチル-3-ピリジンアミン(CAS番号:34552-13-1)(1.0g)、フェニルボロニックアシッド(0.86g)およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.81g)を、エタノール(15mL)、トルエン(35mL)、および2規定炭酸カリウム水溶液(11mL)の混合溶媒に加え、窒素雰囲気下、100℃で18時間攪拌した。放冷後、撹拌して得られた反応液に酢酸エチルと水を加えて分配し、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層をろ過後、得られた酢酸エチルを減圧下にて留去し、得られた残渣をヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘプタン/酢酸エチル=70:30-65:35-60:40)を通して得られた溶液を減圧下にて留去することで、標記化合物(1.2g)を無色固体として得た。
【0247】
1H-NMRデータ(δ:ppm)<400MHz>:(CDCl3)δ:7.97(1H,s),7.69-7.63(2H,m),7.50-7.43(2H,m),7.42-7.33(1H,m),6.87(1H,s),3.79(2H,br s),2.29(3H,s)。
MS-ESI(m/z)[M+H]+=185、保持時間=0.58(分)。
【0248】
<工程2> 6-ブロモ-5-メチル-2-フェニルピリジン-3-アミンの合成:
(参考例2)<工程1>で得られた化合物(0.19g)のN-メチルピロリドン(2.0mL)溶液にN-ブロモスクシンイミド(0.21g)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に水(2.0mL)を加え、tert-ブチルメチルエーテルで二回抽出、有機層を水で洗浄した。得られたtert-ブチルメチルエーテルを減圧下にて留去し、得られた残渣を、ヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:アミノ-シリカゲル、移動相:ヘプタン/酢酸エチル=90:10~30:10)を通して得られた溶液を減圧下にて留去することで、標記化合物(0.20g)を褐色固体として得た。
【0249】
1H-NMRデータ(δ:ppm)<300MHz>:(CDCl3)δ:7.67-7.61(2H,m),7.50-7.42(2H,m),7.41-7.34(1H,m),6.93(1H,d,J=1Hz),3.81(2H,br s),2.34(3H,s)。
MS-ESI(m/z)[M+H]+=263,265、保持時間=1.02(分)。
【0250】
<工程3>5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-アミンの合成:
(参考例2)<工程2>で得られた化合物(0.40g)の1,2-ジメトキシエタン(10mL)と水(2.0mL)の混合溶液に、2-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリミジン(0.44g)、炭酸セシウム(1.5g)およびジクロロ[1,1‘ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム ジクロロメタン付加物(0.12g)を加え80℃で4時間攪拌した。放冷後、反応液に水を加えた。反応液及び水の混合溶液中の不溶物をセライトパッドで濾別し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液から有機層を分離し、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層をろ過後、得られた酢酸エチルを減圧下にて留去し、得られた残渣をヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:アミノ-シリカゲル、移動相:ヘプタン/酢酸エチル=100:0~50:50)を通して得られた溶液を減圧下にて留去することで、標記化合物(0.31g)を得た。
【0251】
1H-NMRデータ(δ:ppm)<300MHz>:(CDCl3)δ:8.96(2H,s),7.74-7.69(2H,m),7.53-7.46(2H,m),7.44-7.38(1H,m),7.02(1H,s),3.99(2H,br s),2.41(3H,s),1.64(3H,s)。
MS-ESI(m/z)[M+H]+=277(-OH)、保持時間=0.66(分)。
【0252】
(実施例1)
2,2,2-トリクロロエチル (5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル)カルバメート(式(CB-1)においてY=2,2,2-トリクロロエトキシ基の化合物)の合成(前記態様中の工程(5)(6)):
【0253】
(参考例2)で得られた化合物(0.30g)の1,2-ジクロロエタン(100mL)溶液にピリジン(0.22mL)および2,2,2-トリクロロエチルクロロホルメート(0.36mL)を室温で加え、同温にて1時間攪拌した。撹拌して得られた反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:アミノ-シリカゲル、移動相:ヘプタン/酢酸エチル=2:1)で精製し、標記化合物(0.41g)を白色固体として得た。
1H-NMR(#)(CDCl3) δ: 8.89 (2H, s), 8.41 (1H, br s), 7.67-7.61 (2H, m), 7.60-7.47 (3H, m), 7.06 (1H, br s), 4.86 (2H, s), 2.81 (3H, s), 2.50 (3H, s).
LCMS m/z [M+H]+=451、453、455.UPLC保持時間:1.12分
【0254】
(実施例2)
(1aR,7bS)-3,3-ジメチル-1a,2,3,7b-テトラヒドロナフト[1,2-b]オキシレン(式(EP-1)においてp=0の化合物)の合成(前記態様中の工程(1)(2)):
【0255】
文献公知、例えば『国際公開第2006/087874号パンフレット』に記載された方法に準じて合成した配位子の、3,3’’-((((1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(アザネジル))ビス(メチレン))ビス(2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール):(CAS番号:928769-12-4) を、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンに溶解させた後、チタン触媒であるチタンテトライソプロポキシドを加え、15℃~25℃で1時間撹拌した。撹拌した混合溶液に、(参考例1)で得られた化合物(式(TH-1)においてp=0の化合物)及びリン酸緩衝液を加えた。(以下、i室温反応する場合、又はii加熱反応する場合の条件に分けて記載する)。
[i室温反応する場合]その後、前記反応溶液に30%過酸化水素水を加え、室温で撹拌した。反応後、室温下にて飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え有機層と水層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層と抽出溶液の混合溶液を減圧下濃縮し、標記化合物の粗生成体を褐色油状物質として得た。
[ii加熱反応する場合]その後、当該反応溶液が還流する温度(ジクロロメタンの場合:外温が40℃±5℃、1,2-ジクロロエタンの場合:外温が60℃±5℃)に昇温させ、前記反応溶液に30%過酸化水素水を加え、更に反応溶液が還流する温度(ジクロロメタンの場合:外温が40℃±5℃、1,2-ジクロロエタンの場合:外温が60℃±5℃)で撹拌した。反応後、室温下にて飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え有機層と水層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層と抽出溶液の混合溶液を減圧下濃縮し、標記化合物の粗生成体を褐色油状物質として得た。
【0256】
上記反応を、下表の各種条件にて実施した(実施例2A~2D;参考例2a~2c)。
表A
なお、表A中の溶媒のDCEは1,2-ジクロロエタンを意味し、DCMはジクロロメタンを意味する。
【0257】
表B
なお、表B中の溶媒のDCEは1,2-ジクロロエタンを意味し、DCMはジクロロメタンを意味する。
参考例2aは、Synlett,20,p3545-3547,2006年(非特許文献3)に記載の反応条件下での反応であり、参考例2bは、Synlett,15,p2445-2447,2007年(非特許文献4)に記載の反応条件下での反応である。
【0258】
上記表中の転化率は、反応により消失した反応物質(出発物質)の供給量に対する割合を意味する。即ち、転化率が高いほど、反応物質(出発物質)が消失しており、反応が進行していると解することができる。転嫁率の測定は、UPLCの220nmUVスペクトル強度から算出した。又、測定収率は、NMRから内部標準物質(テレフタル酸ジメチル)との比較により算出した。
【0259】
[(1aR,7bS)-3,3-ジメチル-1a,2,3,7b-テトラヒドロナフト[1,2-b]オキシレンのデータ];
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.42 (1H, dd, J = 8.0, 1.2 Hz), 7.37-7.30 (2H, m), 7.20 (1H, td, J = 7.2, 1.2 Hz), 3.86 (1H, d, J = 4.1 Hz), 3.73-3.71 (1H, m), 2.21 (1H, dd, J = 15.2, 2.8 Hz), 1.84 (1H, d, J = 15.2 Hz), 1.36 (3H, s), 1.31 (3H, s).
LCMS m/z [M+H]+=175、UPLC保持時間: 4.08分
光学純度分析:1% イソプロパノール (0.1%ジエチルアミン含有), 3.0mL/分, CHIRALCEL OD-H(4.6mm×150mm、5.0μm)(daicel), major 2.35, minor 2.20.
【0260】
(実施例3)
(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オール(式(AM-X)においてp=0の化合物)の合成(前記態様中の工程(3)(4)):
【0261】
(実施例2j)の方法で得られた(1aR,7bS)-3,3-ジメチル-1a,2,3,7b-テトラヒドロナフト[1,2-b]オキシレン(2.0g, 51%純度)のエタノール(5.1mL)溶液中に、25%アンモニア水(5.1mL)を加え、封管中100℃で2時間攪拌した。放冷後、反応液に水と飽和食塩水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後に減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(固定相:アミノ-シリカゲル、移動相:ヘプタン/酢酸エチル=100:0~0:100)で精製し、標記化合物(0.76g)を得た。
[(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オールのデータ];
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 7.62-7.60 (1H, m), 7.29-7.26 (1H, m), 7.17-7.10 (2H, m), 4.79 (1H, d, J = 4.0 Hz) 3.49-3.40 (2H, m), 1.85 (2H, br s), 1.78 (1H, dd, J = 13.2, 2.8 Hz), 1.28 (3H, s), 1.23 (3H, s).
LCMS m/z [M+H]+=192、UPLC保持時間: 2.39分
光学純度分析:10% メタノール (0.1%ジエチルアミン含有), 3.0mL/分, CHIRALCEL OD-H(4.6mm×150mm、5.0μm)(daicel), major 1.90分, minor 2.32分. 鏡像体過剰率99%.
得られた、(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オールは、下記(実験例1)に示すように有機酸との付加塩・水和物を形成できる。
【0262】
(実験例1)(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オール (2S,3S)-2,3-ジヒドロスクシネート 1水和物の合成
(実施例3)の方法で得られた化合物(9.5g)とD-(-)-酒石酸(7.4 g)をアセトニトリル(113mL)と水(12.5mL)の混合溶媒に溶解し、75℃で1時間加熱還流した。反応液を冷却し、室温で2時間撹拌後、析出した白色固体を濾取し、水とアセトニトリルの混合溶液で洗浄することで標記化合物(12g)を得た。
[(1R,2R)-1-アミノ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-オール (2S,3S)-2,3-ジヒドロスクシネート 1水和物のデータ];
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 7.48 (1H, d, J = 7.4 Hz), 7.44 (1H, dd, J = 7.6, 1.0 Hz), 7.33 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.27 (1H, td, J = 7.4, 1.0 Hz), 4.06 (1H, d, J = 9.0 Hz), 3.96 (2H, s), 1.89 (1H, dd, J = 12.8, 3.4 Hz), 1.72 (1H, t, J = 12.8 Hz), 1.32 (3H, s), 1.27 (3H, s).
LCMS m/z [M+H]+= 192、UPLC保持時間: 2.43分
光学純度分析:10% メタノール (0.1%ジエチルアミン含有), 3.0mL/分, CHIRALCEL OD-H(4.6mm×150mm、5.0μm)(daicel), major 1.89分, minor 2.38分. 鏡像体過剰率100%.
【0263】
(実施例4)
1-((1R,2R)-2-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)-3-(5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル)ウレア(式(I)においてp=0の化合物)の合成(前記態様中の工程(7)(8)):
【0264】
【0265】
(実施例3)で得られた化合物(0.75g)と(実施例1)で得られた化合物(1.77g)のジメチルスルホキシド(10mL)溶液に、ジアザビシクロウンデセン(0.59mL)を加えて室温で一夜攪拌した。撹拌して得られた反応液に水(10mL)とエタノール(10mL)を加え、55℃で1時間攪拌した。撹拌して得られた反応液を冷却し、室温で3時間攪拌後、析出した沈殿を濾取し、水とエタノールの混合溶液で洗浄、減圧乾燥することにより標記化合物(1.59g、82%)を得た。
[1-((1R,2R)-2-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)-3-(5-メチル-6-(2-メチルピリミジン-5-イル)-2-フェニルピリジン-3-イル)ウレアのデータ];
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 8.94 (2H, s), 8.42 (1H, s), 7.79 (1H, br s), 7.65 (2H, d, J = 6.8 Hz), 7.52-7.43 (3H, m), 7.32 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.21-7.16 (4H, m), 4.94 (1H, d, J = 4.4 Hz), 4.58 (1H, t, J = 8.8 Hz), 3.75-3.68 (1H, m), 2.68 (3H, s), 2.43 (3H, s), 1.84 (1H, dd, J = 12.8, 3.6 Hz), 1.70 (1H, t, J = 12.0 Hz), 1.31 (3H, s), 1.23 (3H, s).
LCMS m/z [M+H]+=494.UPLC保持時間: 3.75分
光学純度分析:30% エタノール, 3.0mL/分, CHIRALPAK IC(4.6mm×150mm、5.0μm)(daicel), major 3.34分, minor 2.83分. 鏡像体過剰率100%.
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明によれば、式(I)で表される化合物を、短工程、かつ工業的生産に適した製造方法が提供される。また、式(I)で表される化合物の製造の為の中間体である式(AM-X)で表される化合物の有用な製造方法が提供される。