(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】固体分散組成物、粉末製剤及びその製造方法、並びに飲食品等
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240206BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240206BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240206BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240206BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20240206BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240206BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K8/04
A61K8/67
A61K8/73
A61K31/047
A61K9/14
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2020534703
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2019029987
(87)【国際公開番号】W WO2020027190
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018144326
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴明
(72)【発明者】
【氏名】野村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊介
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第13/084518(WO,A1)
【文献】国際公開第18/062554(WO,A1)
【文献】特表2011-521658(JP,A)
【文献】特開2018-093846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143332(US,A1)
【文献】特開2005-065525(JP,A)
【文献】特開2017-169508(JP,A)
【文献】橋本 正史,機能性表示食品におけるルテインとゼアキサンチンの科学的根拠,ファルマシア,2016年,Vol.52, No.6,pp.534-538
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00
A23L 2/00
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、ガティガム、及び水を含有する、固体分散組成物であって、
前記固体分散組成物において、前記固体ルテインと前記固体ゼアキサンチンとの含有比率(質量%比率)が20:1~2:1であり、
前記固体ルテイン、及び固体ゼアキサンチンの平均粒子径が、
0.1~
0.6μmであり、
前記固体分散組成物において、前記固体ルテイン、及び前記固体ゼアキサンチンの総含有量が0.1~30質量%であり、
前記固体ルテイン、及び前記固体ゼアキサンチンの総含有量1質量部に対して、ガティガムの含有量が0.1~15質量部である、固体分散組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の固体分散組成物を調製する工程、
前記固体分散組成物を湿式粉砕する工程、及び、
湿式粉砕された前記固体分散組成物を粉末化する工程、
を含む、粉末製剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の固体分散組成物を含有する、粉末製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、及びガティガムを含む固体分散組成物、粉末製剤及びその製造方法、並びにそれらを用いた飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテイン、及びゼアキサンチンは、強い抗酸化作用を有するカロテノイドの1種であり、ケールやホウレンソウ等の緑黄色野菜に多く含まれている。上記ルテインは、眼の網膜の保護や治癒において有益な成分であって、眼の視覚機能向上、眼精疲労に起因する肩凝りや全身の倦怠感の緩和にも有益な作用があることから、飲料をはじめとする飲食品にも配合されている。また、近年、ルテインの機能性(例えば、生理活性)を訴求した飲食品(例えば、機能性表示食品)も検討されている。
【0003】
これまでに、ルテイン含有飲食品として、ルテイン及びブルーベリーエキスを主成分とするルテイン含有飲料(例えば、特許文献1参照)、及び、ルテインを含み、pH3.8以上4.8以下である飲料(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-65525号公報
【文献】特開2017-169508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたルテイン含有飲料は、乳化物であるルテインを用いている。しかしながら、ルテインを乳化した製剤は、光によりルテイン残存率が下がる(耐光性が不十分)という問題を有している。また、ルテインの機能性を訴求した飲食品においては、組成物中のルテイン含量を明示することが望ましいが、従来の乳化ルテイン製剤は、ルテイン含量の定量が困難であるという問題も有している。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術は、飲料のpHが制限されるなど、汎用性が低い技術である。また、ルテイン製剤自体に着目すること、及び耐光性を改善する技術について何ら検討されていない。
【0007】
以上の従来技術に鑑み、本発明における解決しようとする課題は、ルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた固体分散組成物を提供することにある。より詳細には、光によるルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた固体分散組成物、保管後等におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散安定性に優れた固体分散組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明における他の解決しようとする課題は、飲食品などに用いた際に、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた粉末製剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明における他の解決しようとする課題は、飲食品などに用いた際に、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた粉末製剤を得るための製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明における他の解決しようとする課題は、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた飲食品等を提供することにある。
【0011】
また、本発明における他の解決しようとする課題は、ルテイン、及びゼアキサンチンを定量可能な固体分散組成物、及び粉末製剤、並びにルテイン、及びゼアキサンチンの配合量が定量的に表示可能な飲食品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、ガティガム、及び水を含有する、固体分散組成物、並びに、固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、及びガティガムを含有する、粉末製剤を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた飲食品等を得ることが可能になることを見出し、このような知見に基づき、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、次の各項に記載の態様を含む。
【0014】
項1.固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、ガティガム、及び水を含有する、固体分散組成物。
【0015】
項2.上記固体分散組成物において、上記固体ルテインと上記固体ゼアキサンチンとの含有比率(質量%比率)が20:1~2:1である、項1に記載の固体分散組成物。
【0016】
項3.上記固体ルテイン及び固体ゼアキサンチンの平均粒子径が、0.03~2μmである、項1又は2に記載の固体分散組成物。
【0017】
項4.上記固体分散組成物において、上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量が0.1~30質量%である、項1~3のいずれか1項に記載の固体分散組成物。
【0018】
項5.上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量1質量部に対して、ガティガムの含有量が0.1~15質量部である、項1~4のいずれか1項に記載の固体分散組成物。
【0019】
項6.pHが5未満である、項1~5のいずれか1項に記載の固体分散組成物。
【0020】
項7.項1~6のいずれか1項に記載の固体分散組成物を調製する工程、及び、
上記固体分散組成物を粉末化する工程、
を含む、粉末製剤の製造方法。
【0021】
項8.固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、及びガティガムを含有する、粉末製剤。
【0022】
項9.上記粉末製剤において、上記固体ルテインと上記固体ゼアキサンチンとの含有比率(質量%比率)が20:1~2:1である、項8に記載の粉末製剤。
【0023】
項10.上記固体ルテイン及び固体ゼアキサンチンの平均粒子径が、0.03~2μmである、項8又は9に記載の粉末製剤。
【0024】
項11.上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量1質量部に対して、ガティガムの含有量が0.1~15質量部である、項8~10のいずれか1項に記載の粉末製剤。
【0025】
項12.1質量%水溶液とした際のpHが5未満である、項8~11のいずれか1項に記載の粉末製剤。
【0026】
項13.項1~6のいずれか1項に記載の固体分散組成物、又は項8~12のいずれか1項に記載の粉末製剤を含む、飲食品、着色料、着色添加物、香粧品、芳香剤、身体洗浄剤、ヘアケア製品、スキンケア製品、口腔用品、入浴剤、医薬品、又は医薬部外品(以下、これらを飲食品等と呼ぶ場合もある。)。
【0027】
項14.pHが、3.8未満である、項13に記載の飲食品、着色料、着色添加物、香粧品、芳香剤、身体洗浄剤、ヘアケア製品、スキンケア製品、口腔用品、入浴剤、医薬品、又は医薬部外品。
【発明の効果】
【0028】
本発明の固体分散組成物を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた固体分散組成物、粉末製剤、及び飲食品等を得ることが可能となる。より詳細には、例えば、ルテイン、及びゼアキサンチンの光に対する安定性(耐光性)に優れた固体分散組成物、保管後等におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散安定性に優れた固体分散組成物、粉末製剤、及び飲食品等を得ることが可能になる。
【0029】
また、本発明の粉末製剤を用いることにより、飲食品等に用いた場合、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた粉末製剤、及び飲食品等を得ることが可能となる。
【0030】
また、本発明の粉末製剤の製造方法を用いることにより、飲食品などに用いた際に、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた上記粉末製剤を簡便に得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明の飲食品等を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの耐光性、分散安定性に優れた飲食品等を得ることが可能になる。
【0032】
また、本発明によれば、ルテイン、及びゼアキサンチンを定量可能な固体分散組成物、及び粉末製剤、並びにルテイン、及びゼアキサンチンの配合量が定量的に表示可能な飲食品等を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】試験例1の耐光性試験の結果(ルテイン、ゼアキサンチン残存率)を示す。
【
図2】試験例2の定量性試験において、実施例1の固体分散組成物のHPLC分析結果を示す。
【
図3】試験例2の定量性試験において、ルテイン、ゼアキサンチン含有乳化製剤(1)のHPLC分析結果を示す。
【
図4】試験例2の定量性試験において、ルテイン、ゼアキサンチン含有乳化製剤(2)のHPLC分析結果を示す。
【
図5】試験例3の保存試験において、実施例1の固体分散組成物の保存後の顕微鏡写真像を示す。
【
図6】試験例3の保存試験において、比較例2の固体分散組成物の保存後の顕微鏡写真像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<固体分散組成物>
本発明は、固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、ガティガム、及び水を含有する、固体分散組成物に関するものである。
【0035】
本発明において、固体ルテイン、及び固体ゼアキサンチンとは、ルテイン、及びゼアキサンチンの各々の結晶、又は結晶性形状の固体をいい、飲食品等に通常利用できる固形状の成分を微細化して添加できるものも含まれる。また、固体ルテイン、及び固体ゼアキサンチンは、各々単独の純粋な結晶、又は結晶性形状の固体であってもよく、ルテイン、及びゼアキサンチンの両者を含む結晶、又は結晶性形状の固体を用いてもよい。
【0036】
本発明で使用できる固体ルテインは、一般に入手可能なものであれば限定はされない。なかでも、結晶性ルテインが好ましく、結晶ルテインが特に好ましい。
【0037】
なお、ルテインは、例えば、マリーゴールドからの抽出物のように、天然物由来成分として得られる物質であって、下記の構造式を有する。
【化1】
【0038】
また、本発明におけるルテインとは、上記構造式で示されるルテイン、及びその誘導体を含む。上記誘導体とは、上記化学構造式の一部が置換されている化合物や、その塩を含む。望ましくは、上記構造式で示されるルテインである。
【0039】
また、本発明において、結晶性とは、純粋結晶のように均一に繰り返し単位で結晶構造を形成しているものに限らず、例えば、結晶質や結晶状の固体を含み、任意の適切な結晶形であってよく、天然源から入手されたものであってもよく、又は人工的に製造されたものであってもよい。
【0040】
本発明の固体分散組成物における上記固体ルテインの含有量は、他成分の量や種類に応じて適宜変更することも可能であるが、上記組成物中0.01~30質量%であることが好ましく、0.02~25質量%であってもよく、0.03~20質量%であってもよく、0.05~18質量%であってもよく、0.05~15質量%であってもよく、0.05~12質量%であってもよく、0.1~10質量%であってもよく、0.2~8質量%であってもよく、0.3~5質量%であってもよく、0.3~3質量%であってもよく、0.5~3質量%であってもよく、0.5~2.5質量%であってもよい。上記含有量であることにより、より確実にルテインの安定性が優れた組成物となる。
【0041】
本発明において、上記固体ルテインの平均粒子径が、0.03~2μmであることが好ましく、0.03~1.5μmであってもよく、0.05~1.2μmであってもよく、0.05~1.0μmであってもよく、0.08~1.0μmであってもよく、0.05~0.8μmであってもよく、0.05~0.6μmであってもよく、0.05~0.5μmであってもよく、0.1~0.6μmであってもよく、0.1~0.5μmであってもよい。上記平均粒子径とすることにより、より確実にルテインの安定性が優れた組成物となる。
【0042】
本発明で使用できる固体ゼアキサンチンは、一般に入手可能なものであれば限定はされない。なかでも、結晶性ゼアキサンチンが好ましく、結晶ゼアキサンチンが特に好ましい。
【0043】
なお、ゼアキサンチンは、例えば、マリーゴールドからの抽出物のように、天然物由来成分として得られる物質であって、下記の構造式を有する。
【化2】
【0044】
また、本発明におけるゼアキサンチンとは、上記構造式で示されるゼアキサンチン、及びその誘導体を含む。上記誘導体とは、上記化学構造式の一部が置換されている化合物や、その塩を含む。望ましくは、上記構造式で示されるゼアキサンチンである。
【0045】
本発明の固体分散組成物における上記固体ゼアキサンチンの含有量は、他成分の量や種類に応じて適宜変更することも可能であるが、上記組成物中0.001~15質量%であることが好ましく、0.002~13質量%であってもよく、0.003~10質量%であってもよく、0.005~10質量%であってもよく、0.005~7質量%であってもよく、0.005~6質量%であってもよく、0.01~5質量%であってもよく、0.02~4質量%であってもよく、0.03~3質量%であってもよく、0.03~2質量%であってもよく、0.05~2質量%であってもよく、0.05~1質量%であってもよく、0.05~0.5質量%であってもよく、0.05~0.4質量%であってもよく、0.06~0.4質量%であってもよく、0.05~0.3質量%であってもよく、0.06~0.3質量%であってもよく、0.08~0.3質量%であってもよい。上記含有量であることにより、より確実にゼアキサンチンの安定性が優れた組成物となる。
【0046】
本発明において、上記固体ゼアキサンチンの平均粒子径が、0.03~2μmであることが好ましく、0.03~1.5μmであってもよく、0.05~1.2μmであってもよく、0.05~1.0μmであってもよく、0.08~1.0μmであってもよく、0.05~0.8μmであってもよく、0.05~0.6μmであってもよく、0.05~0.5μmであってもよく、0.1~0.6μmであってもよく、0.1~0.5μmであってもよい。上記平均粒子径とすることにより、より確実にゼアキサンチンの安定性が優れた組成物となる。
【0047】
また、本発明において、上記固体分散組成物において、上記固体ルテインと上記固体ゼアキサンチンとの含有比率(質量%比率)が20:1~2:1であることが好ましく、上記含有比率(質量%比率)が20:1~3:1であってもよく、20:1~4:1であってもよく、20:1~5:1であってもよく、19:1~2:1であってもよく、18:1~2:1であってもよく、18:1~3:1であってもよく、18:1~4:1であってもよく、18:1~5:1であってもよく、17:1~2:1であってもよく、17:1~3:1であってもよく、17:1~4:1であってもよく、17:1~5:1であってもよく、16:1~2:1であってもよく、15:1~2:1であってもよく、14:1~2:1であってもよく、13:1~2:1であってもよく、12:1~2:1であってもよく、11:1~2:1であってもよく、10:1~2:1であってもよく、9:1~2:1であってもよく、8:1~3:1であってもよく、7:1~4:1であってもよく、6:1~4:1であってもよく、6:1~5:1であってもよい。ルテイン、及びゼアキサンチンの含有比率が上記比率にあることで、ルテイン、及びゼアキサンチンの機能性(例えば、生理活性)に訴求した飲食品を提供することができる。
【0048】
また、上記固体分散組成物において、上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量が0.01~30質量%であることが好ましく、上記組成物中0.02~25質量%であってもよく、0.03~20質量%であってもよく、0.05~18質量%であってもよく、0.05~15質量%であってもよく、0.05~12質量%であってもよく、0.1~10質量%であってもよく、0.2~8質量%であってもよく、0.3~5質量%であってもよく、0.3~3質量%であってもよく、0.5~3質量%であってもよく、0.5~2質量%であってもよい。
【0049】
本発明で使用できるガティガムは、一般に入手可能なものであれば限定はされない。例えば、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus latifolia Wallich)の樹液(分泌液)に由来する多糖類であり、通常、室温、又はそれ以上の温度条件下で、30質量%程度まで水に溶解する水溶性多糖類があげられる。
【0050】
本発明ではこれに限定されないが、例えば、ガティガムの重量平均分子量として、1.1×106~2×106の範囲を例示することができる。
【0051】
また、商業上入手可能なガティガム製剤としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガティガムSD」等があげられる。
【0052】
また、本発明で使用できるガティガムとして、例えば、低分子ガティガムを用いることもできる。低分子ガティガムの重量平均分子量は、例えば、0.020×106~0.60×106の範囲内であり、好ましくは0.025×106~0.50×106の範囲内、より好ましくは0.030×106~0.40×106の範囲内、さらに好ましくは0.030×106~0.30×106の範囲内、及びよりさらに好ましくは0.040×106~0.30×106の範囲内である。
【0053】
上記低分子ガティガムの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)(Mw/Mn)は、好ましくは1.1~13の範囲内、より好ましくは1.1~10の範囲内、さらに好ましくは1.1~8の範囲内、よりさらに好ましくは1.1~6の範囲内、及び特に好ましくは1.1~4の範囲内である。
【0054】
本発明のガティガムの分子量、及びその分布は、例えば、以下の方法で測定される。
(GPC分析条件)
検出器:RI
移動相:100mMK2SO4
流量:1.0ml/min
温度:40℃
カラム:TSKgel GMPWXL 30cm(ガードPWXL)
インジェクション:100μl
プルランスタンダード:Shodex STANDARD P-82
【0055】
また、上記固体分散組成物において、上記ガティガムの含有量が、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であってもよく、2.5~20質量%であってもよく、3~15質量%であってもよく、3~10質量%であってもよく、3.5~15質量%であってもよく、4~12質量%であってもよく、5~10質量%であってもよい。上記含有比率とすることにより、より確実にルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた組成物となる。
【0056】
また、本発明において、上記固体分散組成物中における、上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量1質量部に対して、ガティガムの含有量が0.1~15質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であってもよく、1~15質量部であってもよく、0.1~12質量部であってもよく、0.5~12質量部であってもよく、1~12質量部であってもよく、0.1~10質量部であってもよく、0.5~10質量部であってもよく、1~10質量部であってもよく、0.3~9質量部であってもよく、0.5~9質量部であってもよく、0.5~8質量部であってもよく、0.8~7質量部であってもよく、1~6質量部であってもよい。上記含有比率とすることにより、より確実にルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた組成物となる。
【0057】
本発明で使用される水は、飲食品等に用いることができる水であれば、特に制限なく用いることができる。好ましくは、飲食品に用いることができる水であり、例えば、イオン交換水である。
【0058】
また、本発明において、上記固体分散組成物において、上記水の含有量が、10~85質量%であることが好ましく、10~80質量%であってもよく、20~85質量%であってもよく、30~85質量%であってもよく、50~85質量%であってもよく、10~80質量%であってもよく、20~80質量%であってもよく、40~80質量%であってもよく、10~75質量%であってもよく、15~75質量%であってもよい。上記含有比率とすることにより、用途に応じた組成物を調製することが可能となる。
【0059】
本発明において、固体分散組成物とは、固体ルテイン、及び固体ゼアキサンチンが分散している状態にある組成物を意味する。なお、上記固体分散組成物は、例えば、固体状、ペースト状、ジェル状・半液体状、液体状等の形態であってもよい。本発明の固体分散組成物は固体であるため、乳化製剤に比べて呈味に優れたものとなる。
【0060】
本発明において、上記固体分散組成物のpHが5未満であるものとすることが可能である。たとえば、特許文献2に記載があるように、pH3.8未満の酸性中では脱水酸基化によりルテインが分解しやすく、従来は、酸性で安定なルテイン、ゼアキサンチン製剤を提供することが困難であった。また、例えば、従来は酸性にすることにより沈殿や凝集が生じてしまう等の問題があった。
【0061】
しかしながら、本発明によれば、pHが5未満と低い場合であっても、安定性に優れる固体分散組成物を提供でき、よりpHが低い飲食品等においても用いることが可能となる。上記固体分散組成物のpHは5未満であってもよく、4.5未満であってもよく、4未満であってもよく、3.8未満であってもよく、3.5未満であってもよく、3.3未満であってもよく、3未満であってもよく、下限値としては、例えば、pH1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、又はpH3などをあげることができる。また、上記固体分散組成物は水を含むため、一般には、そのまま測定したpHを用いることができるが、そのままでは適切な測定が困難である場合には、固形分が1質量%水溶液とした際のpHを基準とする。本発明の固体分散組成物を用いることにより、例えば、3.8~4.8という特定のpHとする特許文献2の提案では不可能であるpH3.8未満の飲食品等(例えば、下限値として、pHが1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、pH3、pH3.3、pH3.5、又はpH3.7等、上限値として、pH3.7、pH3.6、pH3.5、pH3.4、pH3.3、pH3.2、pH3.1、又はpH3.0等の適宜組み合わせた範囲である飲食品等)であっても、安定性に優れた飲食品等が得られる。
【0062】
また、本発明の固体分散組成物において、例えば、その他、飲食品等に使用される、pH調整剤、香料、着色剤、ビタミンC(誘導体を含む)等を適宜配合してもよい。
【0063】
また、従来の乳化製剤は、ルテイン、ゼアキサンチンを油相に溶解させるための加熱処理を必須とするため、上記ルテインやゼアキサンチンのシス-トランス変性、熱劣化等の変質を引き起こす場合がある。しかしながら、本発明の固体分散組成物は、一般に、ルテイン、ゼアキサンチンの油相への溶解等のための加熱処理等を必要としないため、上記ルテインやゼアキサンチンの変質を伴うことなく使用することが可能となる。
【0064】
さらに、本発明の固体分散組成物は、上記の構成を有することにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの含量を容易に定量することが可能である。これにより、本発明の固体分散組成物を用いた飲食品において、ルテイン、及びゼアキサンチンの正確な含量を明記することが可能になる。これは、ルテイン、及びゼアキサンチンの機能性を訴求する飲食品において、大きなアドバンテージとなる。
【0065】
<粉末製剤>
本発明は、固体ルテイン、固体ゼアキサンチン、及びガティガムを含有する、粉末製剤に関するものである。
【0066】
なお、粉末製剤として特に記載がない項目については、基本的には、本明細書中における上記固体分散組成物において用いられる各成分等の記載を同様に読み替えるものとする。
【0067】
粉末製剤で使用できる固体ルテインは、一般に入手可能なものであれば限定はされない。なかでも、結晶性ルテインが好ましく、結晶ルテインが特に好ましい。
【0068】
本発明の粉末製剤における上記固体ルテインの含有量は、他成分の量や種類に応じて適宜変更することも可能であるが、上記粉末製剤中、0.01~30質量%であることが好ましく、0.02~25質量%であってもよく、0.03~20質量%であってもよく、0.05~18質量%であってもよく、0.05~15質量%であってもよく、0.05~12質量%であってもよく、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、7~25質量%であってもよく、3~20質量%であってもよく、4~20質量%であってもよく、5~20質量%であってもよく、7~20質量%であってもよく、8~18質量%であってもよく、3~15質量%であってもよく、5~15質量%であってもよい。上記含有量であることにより、より確実にルテインの安定性が優れた粉末製剤となる。
【0069】
本発明において、上記固体ルテインの平均粒子径が、0.03~2μmであることが好ましく、0.03~1.5μmであってもよく、0.05~1.2μmであってもよく、0.05~1.0μmであってもよく、0.08~1.0μmであってもよく、0.05~0.8μmであってもよく、0.05~0.6μmであってもよく、0.05~0.5μmであってもよく、0.1~0.6μmであってもよく、0.1~0.5μmであってもよい。上記平均粒子径とすることにより、より確実にルテインの安定性が優れた粉末製剤となる。
【0070】
粉末製剤で使用できる固体ゼアキサンチンは、一般に入手可能なものであれば限定はされない。なかでも、結晶性ゼアキサンチンが好ましく、結晶ゼアキサンチンが特に好ましい。
【0071】
本発明の粉末製剤における上記固体ゼアキサンチンの含有量は、他成分の量や種類に応じて適宜変更することも可能であるが、上記粉末製剤中0.001~15質量%であることが好ましく、0.002~13質量%であってもよく、0.003~10質量%であってもよく、0.005~9質量%であってもよく、0.005~8質量%であってもよく、0.005~6質量%であってもよく、0.1~15質量%であってもよく、0.3~13質量%であってもよく、0.5~13質量%であってもよく、0.7~13質量%であってもよく、0.3~10質量%であってもよく、0.4~10質量%であってもよく、0.5~10質量%であってもよく、0.7~10質量%であってもよく、0.8~9質量%であってもよく、0.3~8質量%であってもよく、0.5~8質量%であってもよく、0.5~6質量%であってもよく、0.8~5質量%であってもよい。上記含有量であることにより、より確実にゼアキサンチンの安定性が優れた粉末製剤となる。
【0072】
本発明において、上記固体ゼアキサンチンの平均粒子径が、0.03~2μmであることが好ましく、0.03~1.5μmであってもよく、0.05~1.2μmであってもよく、0.05~1.0μmであってもよく、0.08~1.0μmであってもよく、0.05~0.8μmであってもよく、0.05~0.6μmであってもよく、0.05~0.5μmであってもよく、0.1~0.6μmであってもよく、0.1~0.5μmであってもよい。上記平均粒子径とすることにより、より確実にゼアキサンチンの安定性が優れた粉末製剤となる。
【0073】
また、上記粉末製剤において、上記固体ルテインと上記固体ゼアキサンチンとの含有比率(質量%比率)が20:1~2:1であることが好ましく、上記含有比率(質量%比率)が20:1~3:1であってもよく、20:1~4:1であってもよく、20:1~5:1であってもよく、19:1~2:1であってもよく、18:1~2:1であってもよく、18:1~3:1であってもよく、18:1~4:1であってもよく、18:1~5:1であってもよく、17:1~2:1であってもよく、17:1~3:1であってもよく、17:1~4:1であってもよく、17:1~5:1であってもよく、16:1~2:1であってもよく、15:1~2:1であってもよく、14:1~2:1であってもよく、13:1~2:1であってもよく、12:1~2:1であってもよく、11:1~2:1であってもよく、10:1~2:1であってもよく、9:1~2:1であってもよく、8:1~3:1であってもよく、7:1~4:1であってもよく、6:1~4:1であってもよく、6:1~5:1であってもよい。ルテイン、及びゼアキサンチンの含有比率が上記比率にあることで、ルテイン、及びゼアキサンチンの機能性(例えば、生理活性)に訴求した飲食品を提供することができる。また、上記含有比率とすることにより、例えば、マリーゴールドからの抽出物のように、天然物由来の固体ルテイン、及び固体ゼアキサンチンを用いることが容易となる。
【0074】
また、上記粉末製剤において、上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量が0.01~30質量%であることが好ましく、上記粉末製剤中0.02~25質量%であってもよく、0.03~20質量%であってもよく、0.05~18質量%であってもよく、0.05~15質量%であってもよく、0.05~12質量%であってもよく、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、7~25質量%であってもよく、3~20質量%であってもよく、4~20質量%であってもよく、5~20質量%であってもよく、7~20質量%であってもよく、8~18質量%であってもよく、3~15質量%であってもよく、5~15質量%であってもよい。
【0075】
本発明で使用できるガティガムは、上記固体分散組成物で述べたものを、適宜、同様に用いることができる。
【0076】
また、本発明において、上記粉末製剤において、上記ガティガムの含有量が、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であってもよく、2.5~25質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、3.5~25質量%であってもよく、4~25質量%であってもよく、4.5~25質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、5~23質量%であってもよい。上記含有比率とすることにより、より確実にルテイン、及びゼアキサンチンの安定性の優れた粉末製剤となる。
【0077】
また、本発明において、上記粉末製剤中における、上記固体ルテイン及び上記固体ゼアキサンチンの総含有量1質量部に対して、ガティガムの含有量が0.1~15質量部であることが好ましく、0.1~12質量部であってもよく、0.1~10質量部であってもよく、0.2~8質量部であってもよく、0.2~7質量部であってもよく、0.3~7質量部であってもよく、0.2~5質量部であってもよく、0.3~5質量部であってもよく、0.3~5質量部であってもよく、0.3~4質量部であってもよく、0.3~3質量部であってもよく、0.5~5質量部であってもよく、0.5~4質量部であってもよく、0.5~3質量部であってもよい。上記含有比率とすることにより、より確実にルテイン、及びゼアキサンチンの安定性の優れた粉末製剤となる。
【0078】
本発明で使用される水は、飲食品に用いることができる水であれば、特に制限なく用いることができる。
【0079】
また、上記粉末製剤において、上記水の含有量が、0~10質量%であることが好ましく、1質量%以上10質量%未満であってもよく、1~9質量%であってもよく、2~8質量%であってもよく、3~7質量%であってもよい。上記含有比率とすることにより、用途に応じた粉末製剤を調製することが可能となる。
【0080】
本発明において、粉末製剤とは、飲食品等の製造、調製に使用可能な形態であればよく、パウダー状、顆粒状のものなどを含む。本発明の粉末製剤は固体であるため、乳化製剤に比べて呈味に優れたものとなる。
【0081】
本発明において、上記粉末製剤の1質量%水溶液とした際のpHが5未満であるものとすることが可能である。上記粉末製剤を用いることにより、例えば、従来は酸性にすることにより沈殿や凝集が生じてしまう等の問題があった、よりpHが低い飲食品等においても用いることが可能となる。上記粉末製剤のpHは5未満であってもよく、4.5未満であってもよく、4未満であってもよく、3.8未満であってもよく、3.5未満であってもよく、3.3未満であってもよく、3未満であってもよく、下限値としては、例えば、pH1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、又はpH3などをあげることができる。本発明の粉末製剤を用いることにより、例えば、3.8~4.8という特定のpHとする特許文献2の提案では不可能であるpH3.8未満の飲食品等(例えば、下限値として、pHが1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、pH3、pH3.3、pH3.5、又はpH3.7等、上限値として、pH3.7、pH3.6、pH3.5、pH3.4、pH3.3、pH3.2、pH3.1、又はpH3.0等の適宜組み合わせた範囲である飲食品等)であっても、沈殿や凝集などを生じることなく、安定性に優れた飲食品等が得られる。
【0082】
また、本発明の粉末製剤において、例えば、その他、飲食品等に使用される、pH調整剤、香料、着色剤、ビタミンC(誘導体を含む)等を適宜配合してもよい。
【0083】
本発明の粉末製剤は、上記の構成を有することにより、光によるルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた固体分散組成物、並びに保管後等におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散安定性に優れた粉末製剤、及び飲食品等を得ることが可能となる。
【0084】
また、従来の乳化製剤は、ルテイン、ゼアキサンチンを油相に溶解させるための加熱処理を必須とするため、上記ルテインやゼアキサンチンのシス-トランス変性、熱劣化等の変質を引き起こす場合がある。しかしながら、本発明の粉末製剤は、一般に、ルテイン、ゼアキサンチンの油相への溶解等のための加熱処理等を必要としないため、上記ルテインやゼアキサンチンの変質を伴うことなく使用することが可能となる。
【0085】
さらに、本発明の粉末製剤は、上記の構成を有することにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの含量を定量することが可能である。これにより、本発明の粉末製剤を用いた飲食品において、ルテイン、及びゼアキサンチンの正確な含量を明記することが可能になる。これは、ルテイン、及びゼアキサンチンの機能性を訴求する飲食品において、大きなアドバンテージとなる。
【0086】
<固体分散組成物、及び粉末製剤の製造方法>
本発明は、上記固体分散組成物を調製する工程、及び、
上記固体分散組成物を粉末化する工程、
を含む、粉末製剤の製造方法に関するものである。
【0087】
なお、固体分散組成物、及び粉末製剤として特に記載がない項目については、基本的には、本明細書中における上記固体分散組成物、及び粉末製剤において用いられる各成分等の記載を同様に読み替えるものとする。
【0088】
本発明の粉末製剤は、上記固体分散組成物を調製する工程、及び、上記固体分散組成物を粉末化する工程、を含む製造方法を用いることにより、上記粉末製剤を簡便に得ることが可能となるが、この製造方法に限定するものではない。
【0089】
上記固体分散組成物を調製する工程は、上記固体分散組成物を形成する各成分が含まれていれば、公知の手法を特に制限なく用いてよい。
【0090】
上記固体分散組成物は、例えば、ガティガムを含有する水溶液と、固体ルテイン、及び、固体ゼアキサンチンを混合することで調製できる。
【0091】
例えば、ガティガムを含む水溶液(a)を調製する。上記水溶液(a)に、固体ルテイン、及び、固体ゼアキサンチンを添加、及び攪拌して水溶液(b)を調製する。
【0092】
水溶液(b)はそのまま固体分散組成物として提供してもよく、均質化処理を行ってもよい。また、上記水溶液(a)、(b)は、グリセリン、プロピレングリコール、糖アルコール等の多価アルコール、L-アスコルビン酸、クエン酸(無水)など、任意の成分を含有してもよい。
【0093】
前記均質化処理は特に制限されず、例えば、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機等を用いて実施できる。処理条件も特に制限されず、処方に応じて適宜調整し実施することができる。例えば、高圧ホモジナイザーであれば、100~500kg/cm2で1~10回等があげられる。
【0094】
前記攪拌処理も特に制限されず、例えば、プロペラ攪拌機等の慣用の攪拌機を用いることができる。
【0095】
平均粒子径が0.03~2μmである固体ルテイン、及び、固体ゼアキサンチンを含有する固体分散組成物を調製する場合は、例えば、微細化処理を実施することができる。本場合、本発明の固体分散組成物を調製する工程は、固体ルテイン、及び、固定ゼアキサンチンを所定の粒子径以下まで微細化(微粉砕化)する工程を含むことができる。
【0096】
微細化処理は特に制限されず、固体ルテイン、及び、固体ゼアキサンチンの平均粒子径を所定値以下まで微粒子化することが可能な装置(例えば、粉砕機)を用いて実施できる。例えば、ウルトラビスコミル、ダイノミル、サンドミル、コボールミル等の湿式粉砕機を用いた微細化処理をあげることができる。
【0097】
上記固体分散組成物を粉末化する工程は、公知の手法を特に制限なく用いてよい。
【0098】
上記固体分散組成物を粉末化する工程として、例えば、湿式粉砕等の手段によって結晶ルテイン、結晶ゼアキサンチン等の固体ルテイン、固体ゼアキサンチンを微細化した後、スプレードライ、フリーズドライ等の手段によって粉末化する方法をあげることができる。
【0099】
本発明の粉末製剤の製造方法を用いることにより、飲食品などに用いた際に、光によるルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた粉末製剤、並びに保管後等におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散安定性に優れた上記粉末製剤を簡便に得ることが可能となる。また、例えば、サブミクロンオーダーの微細粉末製剤を簡便に得ることが可能となる。
【0100】
さらに、本発明の粉末製剤の製造方法を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの含量を定量することが可能な上記粉末製剤を簡便に得ることが可能である。
【0101】
<飲食品等>
本発明は、上記固体分散組成物、又は上記粉末製剤を含む、飲食品等に関するものである。
【0102】
なお、飲食品等として特に記載がない項目については、基本的には、本明細書中における上記固体分散組成物、及び粉末製剤において用いられる各成分等の記載を同様に読み替えるものとする。
【0103】
本発明の飲食品等は、上記固体分散組成物、上記粉末製剤、又はその両方が含まれていれば、添加、混合(溶液状、半固体状、固体状等)等、公知の手法を特に制限なく用いてよい。
【0104】
本発明の飲食品としては、例えば、
飲料(例えば、緑茶、紅茶、ハーブティー、コーヒー、ココア)、清涼飲料(例えば、炭酸飲料、果実飲料、果汁飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニアウォーター、乳性飲料、栄養飲料、機能性飲料、ゼリー飲料、ノンアルコールテイスト飲料等)、乳酸菌飲料、及びアルコール飲料等の飲料類;
冷菓(例えば、アイスキャンディ、アイスクリーム等)、砂糖菓子(例えば、キャンディ、ヌガー、グミ、マシュマロ、チューインガム、チョコレート等)、パティスリー(例えば、ケーキ、クッキー、マカロン、ゼリー、プリン、ババロア等)、スナック菓子、和菓子(例えば、団子、煎餅、ドーナツ、カステラ等)、等の菓子類;
乾燥野菜、及び漬け物等の農産加工品;
蒲鉾等の海産物加工品;
麺類、米飯、パン等の穀類加工品;
調味料;
シロップ、ジャム等;
サプリメント、菓子類;並びに
畜肉加工品等があげられる。
【0105】
本発明の飲食品等とは、飲食品の他、飲食品以外の対象物に上記固体分散組成物、上記粉末製剤、又はその両方を適宜添加、混合等したものを含む。
【0106】
上記飲食品等として、例えば、
着色料、着色添加物;
香粧品(例えば、香水などのフレグランス製品、基礎化粧品(洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど)、仕上げ化粧品(ファンデーション、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなど)、頭髪化粧品(ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など)、日焼け化粧品(サンタン製品、サンスクリーン製品など)、薬用化粧品(制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料など));
芳香剤(固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど);
トイレタリー製品(例えば、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など);
身体洗浄剤(ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど);
ヘアケア製品(シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、ヘアカラーなど);
スキンケア製品(リップクリーム、ハンドクリーム)、シェービング製品(シェービングフォームなど)
口腔用品(歯磨き粉、口腔洗浄料、マウスウォッシュ、トローチ、チューインガム類など);
入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブ等;
医薬品;
医薬部外品;
等があげられる。
【0107】
好ましくは、飲食品、着色料、着色添加物、医薬品、又は医薬部外品があげられ、さらに好ましくは飲食品、着色料、着色添加物があげられ、最も好ましくは飲食品である。
【0108】
本発明の飲食品等における、固体分散組成物の含量は特に制限されないが、例えば、飲食品等における、ルテイン及びゼアキサンチンの総含有量が、0.00001~30質量%であることができ、0.0001~25質量%であることができ、0.001~20質量%であることができ、0.00001~1質量%であることができ、0.0001~1質量%であることができ、0.00001~0.1質量%であることができ、0.0001~0.1質量%であることができ、0.00001~0.01質量%であることができ、0.0001~0.01質量%であることができ、1~30質量%であることができ、1~25質量%であることができ、1~10質量%であることができる。また、飲食品等が飲料である場合、例えば、飲料におけるルテイン及びゼアキサンチンの総含有量が、0.00001~0.1質量%であることができ、0.0001~0.05質量%であることができ、0.001~0.01質量%であることができる。
【0109】
本発明において、上記飲食品等のpHが5未満であるものとすることが可能である。上記飲食品等を用いることにより、例えば、従来は酸性にすることにより沈殿や凝集が生じてしまう等の問題があった、よりpHが低い飲食品等においても用いることが可能となる。上記飲食品等のpHは5未満であってもよく、4.5未満であってもよく、4未満であってもよく、3.8未満であってもよく、3.5未満であってもよく、3.3未満であってもよく、3未満であってもよく、下限値としては、例えば、pH1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、又はpH3などをあげることができる。また、上記飲食品等が水を含む場合、一般には、そのまま測定したpHを用いることができるが、そのままでは適切な測定が困難である場合には、固形分が1質量%水溶液とした際のpHを基準とする。本発明の飲食品等を用いることにより、例えば、3.8~4.8という特定のpHとする特許文献2の提案では不可能であるpH3.8未満の飲食品等(例えば、下限値として、pHが1、pH1.5、pH2、pH2.5、pH2.8、pH3、pH3.3、pH3.5、又はpH3.7等、上限値として、pH3.7、pH3.6、pH3.5、pH3.4、pH3.3、pH3.2、pH3.1、又はpH3.0等の適宜組み合わせた範囲である飲食品等)であっても、沈殿や凝集などを生じることなく、分散安定性に優れた飲食品等が得られる。
【0110】
また、本発明においては、上記飲食品のpHを、5を超えるものとすることが可能である。例えば、本発明の飲食品は、pHが5を超えるものであることができ、pHが5.1~7の範囲であってもよく、pHが5.3~6.9の範囲であってもよく、pHが5.5~6.5の範囲であってもよい。本発明によれば、上記pHの範囲においても、ルテイン及びゼアキサンチンの優れた安定性を有する飲食品を提供することができる。
【0111】
また、本発明の飲食品等において、例えば、その他、飲食等に使用される、pH調整剤、香料、着色剤、ビタミンC(誘導体を含む)等を適宜配合してもよい。
【0112】
本発明の飲食品等を用いることにより、光によるルテイン、及びゼアキサンチンの安定性に優れた飲食品等、並びに保管後等におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散安定性に優れた飲食品等を得ることが可能になる。
【0113】
さらに、本発明の飲食品等を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンの含量の定量表示が可能な飲食品等を得ることが可能である。
【0114】
また、本発明の飲食品等を用いることにより、ルテイン、及びゼアキサンチンに基づく機能に関する表示が付された飲食品等を提供することが可能である。例えば、視覚機能の調整、視覚機能の向上、眼の疲労感の軽減、眼の黄斑色素を補う作用(例えば、黄斑色素量の維持、又は増加作用、並びに、黄斑色素密度の維持、又は増加作用等)、睡眠の質の改善、肩凝りの改善、記憶の精度の改善、抗認知機能低下、注意力の維持もしくは向上、又は思考の柔軟性の維持もしくは向上に基づく機能に関する表示が付された飲食品等を提供することが可能である。
【実施例】
【0115】
本発明について、以下に実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0116】
〔実施例1〕
表1の処方に基づき、実施例1の組成物を調製した。
【0117】
(固体分散製剤の調製)
詳細には、イオン交換水、ガティガム(「ガティガムSD」三栄源エフ・エフ・アイ社製)、L-アスコルビン酸、クエン酸(無水)、及びプロピレングリコールを含有するガティガム水溶液に、ルテイン、ゼアキサンチンを混合して混合液を得た。当該混合液を湿式粉砕機で微細化処理(粉砕処理、「ダイノーミルKDL(WAB社製)」を行った後、ホモジナイザーにて均質化処理を行い(500kg/cm2×5回)、実施例1の組成物を調製した。実施例1の固体ルテイン、固体ゼアキサンチンの平均粒子径は約0.2μmであった。また、実施例1の固体分散組成物のpHは2.76(25.6℃)であった。
【0118】
【0119】
〔試験例1 耐光性試験〕
実施例1で調製した固体分散組成物、及び市場で流通しているルテイン、ゼアキサンチン乳化製剤について、耐光性試験を実施した。
【0120】
(使用ルテイン、ゼアキサンチン試料)
実施例1の固体分散組成物
ルテイン、ゼアキサンチン含有乳化製剤(1):ルテインエステルの乳化製剤
ルテイン、ゼアキサンチン含有乳化製剤(2):ルテインフリー体の乳化製剤
【0121】
(モデル飲料処方)
果糖ブドウ糖液糖13.3質量%、クエン酸(無水)0.2質量%、クエン酸三Na0.08質量%、L-アスコルビン酸0.02質量%、各ルテイン、ゼアキサンチン試料(ルテイン、ゼアキサンチン総含量20ppm)、残部イオン交換水からなるモデル飲料を調製した(pH3.2、Brix10°)。
【0122】
(照射試験)
50mLスクリュー瓶に、各上記モデル飲料を充填し、以下照射条件にて照射試験を実施した(照射量1000Langley)。
(照射条件)
装置:キセノンロングライトフェードメーターXML-75R
強度:600W/m2
時間:20時間
温度:20℃
湿度:50%
【0123】
照射試験前後でのルテイン、ゼアキサンチン含有量を測定し、ルテイン、ゼアキサンチン残存率を算出した。結果を表2、及び
図1に示す。
【0124】
(ルテイン、ゼアキサンチン残存率測定)
照射前後の各モデル飲料10gに99.5%エタノールを40mLを加え、10分間ソニケーションを行い、99.5%エタノールにて50mLにメスアップした。当該溶液10mLを99.5%エタノールで20mLにメスアップし、0.2μmPTFEフィルターにてろ過後、ろ液の極大吸収波長(450nm前後)の吸光度を測定した。
【0125】
以下式1からルテイン、ゼアキサンチン総含量を算出した。
また、以下式2から残存率(%)を算出した。
(式1)
ルテイン、ゼアキサンチン総含量(ppm)=吸光度×50×2×10000/2550×秤量(g)
(式2)
残存率(%)=(光照射後ルテイン、ゼアキサンチン総含量/光照射前ルテイン、ゼアキサンチン総含量)×100
【0126】
【0127】
表2、及び
図1より、本発明の固体分散組成物が耐光性に優れることが示された。
【0128】
〔試験例2 定量性試験〕
上記試験例1で用いた、各ルテイン、ゼアキサンチン試料について、HPLC分析を行った。結果を
図2~4に示す。なお、HPLC分析条件は下記のとおりである。
(HPLC分析条件)
検出器:紫外可視吸光光度計(測定波長:450nm)
カラム:4.6×250mm ODS
カラム温度:50℃
移動相:メタノール/テトラヒドロフラン/超純水=45/30/25
流量:1.0mL/分
注入量:30μL
分析時間:30分
【0129】
図3、4に示されるように、市場で流通しているルテイン、ゼアキサンチン乳化製剤は、ルテイン、ゼアキサンチンの定量が困難であることが示された。また、
図4から、「ルテイン、ゼアキサンチン含有乳化製剤(2)」は、一部がシス化していると推測される。
【0130】
一方、
図2に示されるように、実施例1の固体分散組成物は、ルテイン、ゼアキサンチンの定量が可能であり、その含有比率は、ルテイン:ゼアキサンチン=5:1であった。
【0131】
〔試験例3 保存試験〕
実施例1の固体分散組成物において、ガティガムを加工澱粉、又は各種乳化剤に置きかえる以外は同様にして、ルテイン、ゼアキサンチン含有固体分散組成物(比較例1~4)を調製した。
【0132】
(使用素材)
比較例1:加工澱粉(オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム)
比較例2:ポリグリセリン脂肪酸エステル(1):デカグリセリンモノオレイン酸エステル
比較例3:ポリグリセリン脂肪酸エステル(2):デカグリセリンモノステアリン酸エステル
比較例4:ショ糖脂肪酸エステル:ショ糖パルミチン酸エステル
【0133】
(分散性評価)
実施例1、比較例1~4で得られた組成物を60℃で7日間保管し、保管後におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散性を評価した結果を表3、及び
図5~6に示す。
【0134】
(評価手法)
D50μm:メジアン径(μm)
粒子変動率:保管後のメジアン径/保管前のメジアン径×100(%)
1.3μm↑:粒子径が1.3μm以上の粒子径の頻度(%)
凝集の有無:光学顕微鏡観察(600倍(接眼15倍、対物40倍))にて、粒子の凝集の有無を確認した。
【0135】
前記メジアン径又は粒子径の頻度は、以下に示す条件で、固体分散組成物の粒度分布を測定した。
(測定条件)
粒度分布測定装置:Microtrac MT3000EX-II(マイクロトラック・ベル社製)
測定方法:屈折率:1.81、測定範囲:0.021~
【0136】
【0137】
表3、及び
図5に示されるように、実施例1の組成物を用いた場合、保管時に凝集が生じることもなく、分散性に優れたものとなった。また、保管前後で固体ルテイン、固体ゼアキサンチンの粒子径に変動がなく、安定性に優れたものであった。
【0138】
一方、実施例1のガティガムに代えて、加工澱粉や界面活性剤を用いた比較例1~4の組成物を用いた場合、比較例1~3では保管時に凝集が生じ、D50μm値も初発から大きくなることや、粒子サイズの安定性がよくないことが分かった。凝集は、固体分散組成物中における固体ルテイン、固体ゼアキサンチンの偏在を引き起こし、ルテイン、ゼアキサンチンの正確な定量に支障をきたす。本観点からも、比較例1~3の組成物は望ましくないものであることが示された。また、比較例4では、調製を試みたが、凝集が著しく、調製ができなかった。
【0139】
〔試験例4 長期保存試験〕
実施例1の固体分散組成物について、長期保存試験を実施した。
【0140】
実施例1の固体分散組成物を用いてモデル飲料を調製し、このモデル飲料を40℃条件下で2ヶ月間保管し、保管前後のルテイン、ゼアキサンチン含有量を各々測定し、残存率を算出した。ルテイン、ゼアキサンチン含有量は、試験例2の定量性試験と同条件のHPLC分析により測定した。
【0141】
(モデル飲料)
果糖ブドウ糖液糖13.3質量%、実施例1の組成物0.23質量%、クエン酸(無水)0.2質量%、クエン酸三ナトリウム0.08質量%、L-アスコルビン酸0.02質量%、残部イオン交換水からなるモデル飲料を調製した。また、モデル飲料のpHは3.0、及びBrixは10°であった。
【0142】
(結果)
40℃で2ヶ月保管後のルテイン、ゼアキサンチンの残存率は99.2%、及び95.8%であった。また、実施例1の固体分散組成物において、沈殿、凝集物は確認されなかった。
【0143】
本結果から、本発明の固体分散組成物は、長期保管中においても、ルテイン、及びゼアキサンチンの安定性が高いことが示された。
【0144】
〔試験例5 耐光性試験〕
試験例4と同処方のモデル飲料に対して耐光性試験を実施した。照射前後のルテイン、ゼアキサンチン含有量をHPLC分析により測定し、ルテイン、ゼアキサンチンの残存率を算出した。
(照射条件)試験例1に同じ。
(HPLC分析条件)試験例2に同じ。
【0145】
(結果)
耐光性試験後のルテイン、ゼアキサンチンの残存率は96%、及び95.8%であり、高い残存率を示した。
【0146】
〔実施例2〕
表4の処方に基づき、実施例2-1~2-4の固体分散組成物を調製した(液体製剤)。
【0147】
(固体分散製剤の調製)
イオン交換水、ガティガム、精製塩、L-アスコルビン酸、クエン酸(無水)、及びプロピレングリコールを含有する水溶液に、ルテイン及びゼアキサンチンの混合物(固体)を添加して混合液を得た。当該混合液を粉砕機で微細化処理(粉砕処理、「ダイノーミルKDL(WAB社製)」を行った後、ホモジナイザーにて均質化処理を行い(500kg/cm2×5回)、実施例2-1~2-4の組成物を調製した。表4に、ルテイン及びゼアキサンチンの含量を示す。なお、実施例2-1~2-4の固体分散組成物のpHは2.5~2.9の範囲であった。
【0148】
【0149】
〔試験例5 保存試験〕
調製した実施例2-1~2-4の固体分散組成物について、試験例3と同様にして、保存試験を実施した。
【0150】
実施例2-1~2-4の固体分散組成物を60℃で7日間保管後、保管後におけるルテイン、及びゼアキサンチンの分散性を評価した。結果を表5に示す。
【0151】
【0152】
表5に示されるように、実施例2-1~2-4のいずれの固体分散組成物も、保管前後で固体ルテイン、固体ゼアキサンチンの粒子径に変動がなく、安定性に優れていることが確認された。
【0153】
〔試験例6 耐光性試験〕
実施例2-1で調製した固体分散組成物について、耐光性試験を実施した。
【0154】
(モデル飲料処方)
pH3.0のモデル飲料
果糖ブドウ糖液糖13.3質量%、クエン酸(無水)0.2質量%、クエン酸三ナトリウム0.07質量%、L-アスコルビン酸0.02質量%、実施例2-1の固体分散製剤0.2質量%、及び残部がイオン交換水からなるモデル飲料を調製した。試験には、モデル飲料を、500mLペットボトルに93℃でホットパック充填したものを用いた。
【0155】
pH6.3のモデル飲料
果糖ブドウ糖液糖13.3質量%、クエン酸(無水)0.2質量%、クエン酸三ナトリウム3.7質量%、L-アスコルビン酸0.02質量%、実施例2-1の固体分散製剤0.2質量%、及び残部がイオン交換水からなるモデル飲料を調製した。試験には、モデル飲料を、500mLペットボトルに93℃でホットパック充填したものを用いた。
【0156】
(耐光性試験)
500mLペットボトルに充填された、各上記モデル飲料に対して、耐光性試験を実施した。
装置:キセノンロングライトフェードメーターXML-75R(スガ試験機株式会社製)
【0157】
耐光性試験前後でのルテイン、ゼアキサンチン含有量を測定し、ルテイン、ゼアキサンチン残存率を算出した。結果を表6に示す。ルテイン、ゼアキサンチンの残存率測定は、試験例1と同様にして実施した。
【0158】
【0159】
表6より、本発明の固体分散組成物は、pH3.0及びpH6.3のいずれのpH域においても耐光性に優れることが示された。
【0160】
〔試験例7 耐熱性試験〕
実施例2-1で調製した固体分散組成物について、耐熱性試験を実施した。モデル飲料は試験例6と同様のものを用いた。
【0161】
(耐熱性試験)
500mLペットボトルに充填された、各上記モデル飲料に対して、耐熱性試験を実施した。耐熱性試験前後で、目視観察、顕微鏡観察を行い、濁度、及び、ルテイン、ゼアキサンチン含有量を測定した。
条件:表7を参照。
濁度:モデル飲料を以下の装置及びセルを用いて、720nmにおける吸光度を測定した。
装置:分光光度計V-550(日本分光工業株式会社製)
セル:石英セル10mm×10mm
ルテイン、ゼアキサンチン含有量:試験例1と同様にして測定した。
【0162】
pH3.0のモデル飲料に対する耐熱性試験の条件、及び結果を表7、pH6.3のモデル飲料に対する耐熱性試験の条件、及び結果を表8に示す。
【0163】
【表7】
表中、ルテイン含量、ゼアキサンチン含量は(mg/bottle)を意味する。
【0164】
【表8】
表中、ルテイン含量、ゼアキサンチン含量は(mg/bottle)を意味する。
【0165】
表7、及び表8に示すように、本発明の固体分散組成物は、長期保存試験、並びに90℃以上の高温試験においても高い安定性を示した。
【0166】
〔試験例8 振とう耐性試験〕
実施例2-1で調製した固体分散組成物について、振とう耐性試験を実施した。モデル飲料は試験例6と同様のものを用いた。結果を表9に示す。
【0167】
(振とう耐性試験)
振とう試験:振幅 2cm、140ストローク/分、12時間
装置:振とう機 NR-150(タイテック株式会社製)
輸送試験:調製したモデル飲料を、トラック輸送にて東京―大阪間で3往復した。
【0168】
【0169】
表9に示すように、本発明の固体分散組成物は、振動による衝撃を加えた場合であっても凝集が発生せず、安定性が高いことが確認された。
【0170】
〔実施例3〕
表10の処方に基づき、実施例3の固体分散組成物を調製した(粉末製剤)。
【0171】
(スプレー液の調製)
ガティガム、クエン酸、マルトース、デキストリン、及び水の混合物を90℃まで加熱後、60℃以下まで冷却し、ガティガム水溶液を調製した。当該水溶液と、ルテイン、ゼアキサンチン混合物、エタノール及びアスコルビン酸を混合後、粉砕機で微細化処理(粉砕処理、「ダイノーミルKDL(WAB社製)」を行った後、ホモジナイザーにて均質化処理を行い、スプレー液を得た(500kg/cm2×5回)。得られたスプレー液を、スプレードライにて粉末化処理することで、実施例3の固体分散組成物(粉末製剤)を調製した。粉末後の、粉末製剤の処方を表11に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
〔試験例9 保存試験〕
粉末化前のスプレー液、及び調製した実施例3の固体分散組成物について、保存試験を実施した。
【0175】
粉末化前のスプレー液を60℃で1日間保管し、保管前後のメジアン径(D50μm)、及び粒子径が1.3μm以上の粒子径の頻度(1.3μm↑/%)を測定した。装置、及び条件は試験例3と同様に実施した。
【0176】
同様に、実施例3の固体分散組成物を60℃で7日間保管し、保管前後のメジアン径(D50μm/μm)、及び粒子径が1.3μm以上の粒子径の頻度(1.3μm↑/%)を測定した。メジアン径又は粒子径の頻度の測定は、粉末をイオン交換水で10%に希釈した溶液に対して実施した。
【0177】
結果を表12に示す。
【0178】
【0179】
表12に示すように、実施例3の固体分散組成物は、保管前後で固体ルテイン、固体ゼアキサンチンの粒子径の変動が少なく、安定性に優れていることが確認された。