(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/16 20230101AFI20240206BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240206BHJP
C07D 403/10 20060101ALI20240206BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20240206BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20240206BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20240206BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20240206BHJP
C07D 417/14 20060101ALI20240206BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240206BHJP
【FI】
H05B33/22 B
C07D401/14
C07D403/10
C07D403/14
C07D405/14
C07D409/14
C07D413/14
C07D417/14
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020534790
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2018007642
(87)【国際公開番号】W WO2019045252
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0109538
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520069590
【氏名又は名称】ソリュース先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】SOLUS ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソン イ
(72)【発明者】
【氏名】オム、ミン シク
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェ イ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ファン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウ ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒョン
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】河原 正
【審判官】宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069442(WO,A1)
【文献】特開2013-235846(JP,A)
【文献】特表2017-503347(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0149041(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
C07D 401/00-421/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、正孔輸送領域;発光層;電子輸送領域;及び、陰極が順次積層された構造を含み、
前記電子輸送領域は、電子輸送補助層、電子輸送層、及び電子注入層を含み、
前記電子輸送層は、HOMOとLUMOとのエネルギー差(E
HOMO-E
LUMO)が、3.2eV以上である下記化学式1で示される化合物を含み、
前記電子輸送補助層は、電子求引性基(EWG)と、下記EDG-1乃至EDG-7のいずれか1つから選択される電子供与性基(EDG)と、をいずれも有する双極性(バイポーラ)化合物を含み、
前記双極性化合物は、下記化学式4で示される電子求引性基(EWG)モイエティを含み、ΔEst<0.5eV(ΔEstは、前記化合物の一重項エネルギーS1と三重項エネルギーT1との差である)であり、
前記電子輸送補助層は、(i)イオン化ポテンシャルが5.5eV以上であり、(ii)E
HOMO-E
LUMO≧3.0eVであることを特徴とする有機電界発光素子
であって、
前記発光層は、下記化学式Aで表される化合物を含まない、有機電界発光素子。
【化1】
式中、X
1及びX
2のうちの1つはCR
1であり、X
1及びX
2の残りの1つはNであり;
R
1は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、及び核原子数5乃至60のヘテロアリール基からなる群から選択され;
Ar
1乃至Ar
4は、それぞれ独立に、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
6~C
60のアリールホスフィン基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基から選択され、但し、Ar
1乃至Ar
4がいずれも同一である場合を除外し;
前記R
1、Ar
1乃至Ar
4の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、アリールホスフィン基、アリールホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
6~C
60のアリールホスフィン基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換もしくは非置換であり、前記置換基が複数個である場合、これらは、互いに同一もしくは異なっている。
【化2】
式中、
Zは、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、C(R)又はNであり、少なく1つは、Nであり、
ここで、複数のRは、それぞれ同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は、これらは、隣接した基と縮合環を形成することができ、
前記Rの、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換もしくは非置換であることができる。
【化3】
式中、
X
3
は、O、S、Se、N(
Ar
11
)、C(
Ar
12
)(
Ar
13
)、及びSi(
Ar
14
)(
Ar
15
)からなる群から選択され、
Ar
11
乃至Ar
15
は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1
~C
40
のアルキル基、C
2
~C
40
のアルケニル基、C
2
~C
40
のアルキニル基、C
3
~C
40
のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6
~C
60
のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1
~C
40
のアルキルオキシ基、C
6
~C
60
のアリールオキシ基、C
1
~C
40
のアルキルシリル基、C
6
~C
60
のアリールシリル基、C
1
~C
40
のアルキルボロン基、C
6
~C
60
のアリールボロン基、C
1
~C
40
のホスフィン基、C
1
~C
40
のホスフィンオキサイド基、及びC
6
~C
60
のアリールアミン基からなる群から選択され、
Ar
11
乃至Ar
15
の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1
~C
40
のアルキル基、C
2
~C
40
のアルケニル基、C
2
~C
40
のアルキニル基、C
3
~C
40
のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6
~C
40
のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1
~C
40
のアルキルオキシ基、C
6
~C
60
のアリールオキシ基、C
1
~C
40
のアルキルシリル基、C
6
~C
60
のアリールシリル基、C
1
~C
40
のアルキルボロン基、C
6
~C
60
のアリールボロン基、C
1
~C
40
のホスフィン基、C
1
~C
40
のホスフィンオキサイド基、及びC
6
~C
60
のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能であり、
Z
1及びZ
2は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、O、S、Se、N(Ar
6)、C(Ar
7)(Ar
8)、及びSi(Ar
9)(Ar
10)からなる群から選択され、
Ar
6乃至Ar
10は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択され、
前記Ar
6乃至Ar
10の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能である。
【化4】
前記化学式Aで、
L
1
~L
3
は、それぞれ独立して、単一結合、または置換もしくは非置換のC
6
~C
30
アリーレン基、または置換もしくは非置換のC
2
~C
30
ヘテロアリーレン基であり、Ar
21
~Ar
23
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC
6
~C
30
アリール基、置換もしくは非置換のC
2
~C
30
ヘテロ環基、またはこれらの組み合わせであり、
前記化学式Aの「置換」とは、少なくとも1つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、C
1
~C
30
アミン基、C
6
~C
30
アリールアミン基、ニトロ基、C
1
~C
40
シリル基、C
1
~C
30
アルキル基、C
3
~C
30
シクロアルキル基、C
2
~C
30
ヘテロシクロアルキル基、C
6
~C
30
アリール基、C
2
~C
30
ヘテロ環基、C1~C
20
アルコキシ基、C
1
~C
10
トリフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。
【請求項2】
前記化学式1で示される化合物は、下記化学式2又は3で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化5】
式中、
X
1及びX
2、Ar
1乃至Ar
4は、それぞれ請求項1で定義した通りである。
【請求項3】
前記Ar
1乃至Ar
4は、それぞれ独立に、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基から選択され;
前記Ar
1乃至Ar
4の、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換もしくは非置換であり、前記置換基が複数個である場合、これらは、互いに同一もしくは異なっていることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記化学式1で示される化合物は、LUMOが2.5eV以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記電子輸送領域は、n型ドーパントと共蒸着されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記化学式1で示される化合物は、下記ET-01乃至ET-21のうちのいずれか1つで示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項7】
前記化学式4で示されるモイエティは、下記化学式で示される構造から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化9】
【請求項8】
前記双極性化合物が有する電子供与性基(EDG)は、前記電子求引性基(EWG)より電子供与性が大きい電子供与性基(EDG)モイエティであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子輸送能力が改善された電子輸送層材料を備えることにより、低駆動電圧及び高効率を同時に発揮することができる、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
1965年のアントラセン単結晶を利用した青色系電気発光に続いた有機電界発光(Electroluminescent、「EL」)素子(以下、「有機EL素子」と称する)に関する研究が続けられ、1987年には、Tangらによって正孔層(NPB)と発光層(Alq3)とから構成された2層積層構造の有機EL素子が提示された。以後、有機EL素子は、商用化のために必要な高効率、長寿命の特性を具現するため、素子内に、正孔の注入及び輸送を担当する有機層、電子の注入及び輸送を担当する有機層、正孔と電子との結合によって電界発光が生じるように誘導する有機層などのように、それぞれの特徴的かつ細分化した機能を付与した多層積層構造の形態が提案された。多層積層構造が導入されることにより、有機EL素子の性能が商用化のための特性まで向上し、1977年の車載用ラジオディスプレイ製品をはじめとして、携帯用情報表示機器及びテレビ用ディスプレイ素子にまで、その適用範囲を拡大させようとしている。
【0003】
ディスプレイの大型化、高精細化の要求によって、有機EL素子の高効率化、長寿命化の課題が課されている。特に、同面積でより多い画素を形成することで実現される高精細化の場合は、有機EL画素の発光面積を減少させる結果をもたらし、これによって寿命短縮が生じ、これは、有機EL素子が克服すべき最も重要な課題となっている。
【0004】
有機EL素子では、両電極に電流又は電圧を印加すると、陽極からは正孔が有機物層に注入され、陰極からは電子が有機物層に注入される。注入された正孔と電子とが結合して励起子(Exciton)が形成され、この励起子が基底状態に戻る際に発光する。なお、有機EL素子は、形成された励起子の電子スピンの種類によって、一重項励起子が発光に寄与する蛍光EL素子と、三重項励起子が発光に寄与する燐光EL素子とに区分される。
【0005】
電子と正孔との再結合によって形成される励起子の電子スピンは、一重項励起子と三重項励起子とが、25%:75%の比率で生成される。一重項励起子によって発光がなされる蛍光EL素子は、生成比率に応じて理論的に内部量子効率が25%を超えることができず、外部量子効率は、5%が限界であるといわれている。三重項励起子によって発光が行われる燐光EL素子では、Ir、Ptのような遷移金属重原子(Heavy atoms)が含まれた金属錯体化合物を燐光ドーパントとして使用する場合、蛍光に比べて、最高4倍も発光効率を向上させることができる。
【0006】
上記のような燐光EL素子は、理論的事実からみて、発光効率の面で蛍光より高い効率を示すが、緑色と赤色を除外した青色燐光素子においては、濃青色の色純度と高効率の燐光ドーパント、及びこれを満足させる広いエネルギーギャップを有するホストの開発が充分な水準に至っていないため、青色燐光素子が商用化されておらず、青色蛍光素子が製品に使用されている現状である。
【0007】
上述した有機EL素子の特性を向上させるため、正孔の電子伝達層への拡散を防止し、素子の安定性を増大させるための研究の結果が報告されている。しかし、満足する結果が得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するために案出されたものであって、電子輸送能力が改善された電子輸送層材料を備えることにより、高効率、低電圧、長寿命を同時に発揮する有機EL素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、陽極、正孔輸送領域;発光層;電子輸送領域;及び、陰極が順次積層された構造を含み、前記電子輸送領域は、電子輸送層及び電子注入層を含み、前記電子輸送層は、下記化学式1で示される化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【化1】
式中、
X
1及びX
2は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、CR
1又はNであり、いずれもCR
1である場合、複数のR
1は、互いに同一もしくは異なり;
R
1は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、及び核原子数5乃至60のヘテロアリール基からなる群から選択され;
Ar
1乃至Ar
4は、それぞれ独立に、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
6~C
60のアリールホスフィン基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基から選択され、但し、Ar
1乃至Ar
4がいずれも同一である場合を除外し;
前記R
1、Ar
1乃至Ar
4の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、アリールホスフィン基、アリールホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
1~C
40のアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
6~C
60のアリールホスフィン基、C
6~C
60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換もしくは非置換であり、前記置換基が複数個である場合、これらは、互いに同一もしくは異なっている。
【0010】
また、本発明は、陽極、正孔輸送領域;発光層;電子輸送領域;及び、陰極が順次積層された構造を含み、前記電子輸送領域は、電子輸送補助層、電子輸送層、及び電子注入層を含み、前記電子輸送層は、前記化学式1で示される化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電子輸送能力が改善された電子輸送層材料を有機電界発光素子に導入することにより、低い駆動電圧及び高い発光効率を有する有機電界発光素子を提供することができる。また、本発明の有機電界発光素子をディスプレイパネルに適用することにより、性能及び寿命が向上したディスプレイパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の他の実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0013】
100、200:有機電界発光素子
A、A’:有機層
10:陽極、20:陰極
30:正孔輸送領域、31:正孔注入層
32:正孔輸送層、40:発光層
50:電子輸送領域、51:電子輸送層
52:電子注入層、53:電子輸送補助層
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳述する。
【0015】
本発明は、陽極;陰極;及び、陽極と陰極との間に介在した有機物層を含み、前記有機物層は、正孔輸送領域、発光層、及び電子輸送領域を含み、前記電子輸送領域、好ましくは電子輸送層に、前記化学式1で示される化合物を備える有機電界発光素子に関するものである。
【0016】
前記化学式1で示される化合物は、電子求引性基(EWG)特性に優れた2つの6員ヘテロ環(例えば、ピリミジンとトリアジン)が、メタ-メタで結合したビフェニレン連結基(リンカー)を介して連結されることで電気化学的に安定している。なお、前記ビフェニレン連結基によって、化合物の長軸を基準にしてジグザグ状に折り曲げられた構造(twisted structure)を有するようになり、2つのEWGモイエティ間の距離を延長させ、これらのEWGモイエティ間の相互作用を最小化させるようになる。これによって、前記ビフェニレン連結基が導入された本発明の化合物は、電気化学的及び立体化学的に安定しており、広いバンドギャップエネルギーを有する。
【0017】
また、メタ-メタで結合したビフェニレン連結基によって、有機層の結晶化の抑制にも効果があり、本発明に係る化学式1の化合物を含む素子は、耐久性及び寿命特性が大きく向上される。
【0018】
なお、電子(electron)は、有機電界発光素子内でLUMOレベルに乗って移動されるが、電子輸送層(ETL)は、陰極と発光層との間でLUMOステップを形成することで、電子の陰極から発光層への円滑な注入を助ける。これによって、電子輸送層材料のLUMO値が2.5eV以上であると、陰極から発光層に電子を円滑に輸送することが可能である。実際に、本発明の化学式1で示される化合物は、LUMO値が2.5eV以上であるため、電子輸送層の役割を充分に果たすことができる。
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る有機電界発光素子の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、種々に変形して実施することができ、本発明の範囲が後述の実施形態に限定されることはない。
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す図である。
【0021】
本発明に係る第一の実施形態の有機電界発光素子は、前記化学式1で示される化合物を電子輸送層(ETL)材料として備えるものである。
【0022】
図1を参照して説明すると、前記有機電界発光素子100は、陽極10;陰極20、前記陽極10と陰極20との間に位置した発光層40;前記陽極10と前記発光層40との間に位置した正孔輸送領域30;及び、前記発光層40と前記陰極20との間に位置した電子輸送領域50;を含み、前記電子輸送領域50は、電子輸送層51及び電子注入層52を含む構造を有する。
【0023】
陽極
本発明に係る有機電界発光素子100において、陽極10は、正孔を有機物層Aに注入する役割を果たす。
【0024】
前記陽極10をなす物質は、特に限定されず、当業界で周知のものを使用することができる。例えば、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属;これらの合金;亜鉛酸化物;インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:Al、SnO2:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロール、ポリアニリンなどの電導性高分子;及び、カーボンブラックなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0025】
前記陽極10を製造する方法は、特に限定されず、当業界で周知の常法で製造することができる。一例として、シリコンウェハ、石英、ガラス板、金属板、又はプラスチックフィルムからなる基板上に陽極物質をコーティングする方法が挙げられる。
【0026】
陰極
本発明に係る有機電界発光素子100において、陰極20は、電子を有機物層Aに注入する役割を果たす。
【0027】
前記陰極20をなす物質は、特に限定されず、当業界で周知のものを使用することができる。例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリウム、アルミニウム、銀、錫、鉛などの金属;これらの合金;及び、LiF/Al、LiO2/Alなどの多層構造物質が挙げられるが、これらに制限されない。
【0028】
また、前記陰極20を製造する方法は、特に限定されず、当業界で周知の常法で製造することができる。
【0029】
有機物層
本発明に係る有機電界発光素子に含まれる有機物層Aは、既存の有機EL素子の有機物層として使用される通常の構成を制限なく採用することができ、一例として、正孔輸送領域30、発光層40、電子輸送領域50からなる群から選択される1種以上を含むことができる。なお、有機電界発光素子の特性を考慮して、前記有機物層をいずれも含むことが好ましい。
【0030】
正孔輸送領域
本発明の有機物層Aに含まれる正孔輸送領域30は、陽極10から注入された正孔を発光層40に移動させる役割を果たす。このような正孔輸送領域30は、正孔注入層31及び正孔輸送層32からなる群から選択される1種以上を含むことができる。なお、有機電界発光素子の特性を考慮して、前記正孔注入層31と正孔輸送層32とをいずれも含むことが好ましい。
【0031】
前記正孔注入層31及び正孔輸送層32をなす物質は、正孔注入障壁が低く、かつ正孔移動度が大きいものであれば、特に限定されることなく、当業界で使用される正孔注入層/輸送層物質を制限なく使用することができる。例えば、アリールアミン誘導体が挙げられるが、これに制限されない。なお、前記正孔注入層31及び正孔輸送層32をなす物質は、互いに同一もしくは異なっている。
【0032】
発光層
本発明の有機物層Aに含まれる発光層40は、正孔と電子とが結合して励起子(exciton)が形成される層であって、発光層40をなす物質によって、有機電界発光素子が発する光の色が変わるようになる。
【0033】
このような発光層40は、ホストとドーパントとを含むことができるが、その混合比率は、当該分野で公知の範囲内で適切に調節可能である。一例として、前記ホストを70~99.9重量%の範囲で含み、前記ドーパントを0.1~30重量%の範囲で含むことができる。より具体的に、前記発光層40が青色蛍光、緑色蛍光、又は赤色蛍光である場合、前記ホストを80~99.9重量%の範囲で含み、前記ドーパントを0.1~20重量%の範囲で含むことができる。また、前記発光層40が青色蛍光、緑色蛍光、又は赤色燐光である場合、前記ホストを70~90重量%の範囲で含み、前記ドーパントを1~30重量%の範囲で含むことができる。
【0034】
本発明の発光層40に含まれるホストは、当業界で公知のものであれば、特に限定されることなく、例えば、アルカリ金属錯化合物;アルカリ土類金属錯化合物;又は、縮合芳香族環誘導体などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0035】
より具体的に、前記ホスト材料としては、有機電界発光素子の発光効率及び寿命を向上させることができる、アルミニウム錯化合物、ベリリウム錯化合物、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、又はこれらの1種以上の組み合わせを使用することが好ましい。
【0036】
また、本発明の発光層40に含まれるドーパントとしては、当業界で公知のものであれば、特に限定されることなく、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、アリールアミン誘導体、イリジウム(Ir)又は白金(Pt)を含む金属錯体化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0037】
上述の発光層40は、単層又は2層以上の複数層からなることができる。ここで、発光層40が複数個の層である場合、有機電界発光素子は、種々の色の光を出すことができる。具体的に、本発明は、異種の材料からなる発光層を直列に複数個備えることで、混合色を呈する有機電界発光素子を提供することができる。また、複数個の発光層を含む場合、素子の駆動電圧は大きくなるが、有機電界発光素子内の電流値は一定になることで、発光層数分だけ発光効率が向上した有機電界発光素子を提供することができる。
【0038】
電子輸送領域
本発明に係る有機電界発光素子100において、前記有機物層Aに含まれる電子輸送領域50は、陰極20から注入された電子を発光層40に移動させる役割を果たす。
【0039】
このような電子輸送領域50は、電子輸送層51及び電子注入層52からなる群から選択される1種以上を含むことができる。なお、有機電界発光素子の特性を考慮して、前記電子輸送層51及び電子注入層52をいずれも含むことが好ましい。特に、本発明では、電子輸送層51をなす物質として、前記化学式1で示される化合物を含む。
【0040】
具体的に、前記化学式1で示される化合物は、2つの電子求引性基(Electron Withdrawing Group、EWG)が連結基(linker)を介して連結された構造を基本骨格とし、この時、2つの電子求引性基は、それぞれピリミジンとトリアジンであり、連結基は、m,m-ビフェニレンである。前記化学式1で示される化合物は、電子求引性基(EWG)特性に優れた2つの6員ヘテロ環(ピリミジンとトリアジン)が連結基を介して連結され、電気化学的に安定しており、電子輸送性に優れるとともに、高い三重項エネルギー、優れたガラス転移温度及び熱的安定性を有する。このような化学式1で示される化合物は、化合物の分子量が有意に増大することでガラス転移温度が向上し、これによって、従来の単一6員ヘテロ環化合物に比べて、高い熱的安定性を有することが可能となる。
【0041】
また、前記化学式1で示される化合物は、m,m-ビフェニレン(m,m-biphenylene)連結基によって有機物層の結晶化抑制に効果を示すことができる。それで、前記化学式1で示される化合物が適用された有機電界発光素子は、耐久性及び寿命特性が大きく向上される。なお、連結基としてm,m-ビフェニレンを有する化学式1で示される化合物が適用された有機電界発光素子は、連結基としてp,p-ビフェニレン又はm,p-ビフェニレンを有する化合物が適用された有機電界発光素子に比べて、優れた駆動電圧、発光ピーク及び電流効率を示すことができる。
【0042】
さらに、前記化学式1で示される化合物は、電子輸送に非常に有利であるとともに、長寿命特性を示す。このような化合物の優れた電子輸送能力によって、有機電界発光素子において高効率及び高移動性(mobility)を有することができ、置換基の方向や位置に応じてHOMO及びLUMOエネルギーレベルを容易に調節することができる。
【0043】
本発明の一具体例によれば、前記化学式1で示される化合物は、LUMOが、2.5eV以上であり、かつHOMOとLUMOとのエネルギー差(EHOMO-ELUMO)が、3.2eV以上であることができる。
【0044】
具体的に、本発明に係る化学式1で示される化合物は、下記化学式2又は3で示される。
【化2】
式中、X
1及びX
2、Ar
1乃至Ar
4は、それぞれ化学式1で定義した通りである。
【0045】
本発明の好適な一例としては、前記X1及びX2のうちの少なくとも1つは、Nであることができる。より好ましくは、前記X1及びX2のうちの1つはCR1であり、残りの1つはNであることができる。
【0046】
本発明の好適な他の例としては、前記Ar1乃至Ar4は、それぞれ独立に、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C6~C60のアリールオキシ基、C6~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC6~C60のアリールアミン基からなる群から選択される。より好ましくは、C6~C60のアリール基及び/又は核原子数5乃至60のヘテロアリール基であることができる。一例として、前記Ar1乃至Ar4のうちの1~3個がC6~C60のアリール基(例えば、フェニル基)である場合、残りは、C6~C60のアリール基及び/又は核原子数5乃至60のヘテロアリール基であることができ、また、Ar1乃至Ar4がいずれもC6~C60のアリール基であることができる。
【0047】
前記Ar1乃至Ar4の、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C6~C60のアリールオキシ基、C6~C60のアリールホスフィンオキサイド基、及びC6~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換もしくは非置換であり、前記置換基が複数個である場合、これらは、互いに同一もしくは異なることができる。
【0048】
本発明において、Ar
1乃至Ar
4は、いずれも同一である場合を除いては、それぞれ独立に、下記構造式から選択される置換体により具体化され得る。
【化3】
【化4】
【化5】
【0049】
前記構造式に例示される置換体が本発明の化学式1に連結される位置は、特に制限されず、当該分野で周知の連結位置を選択して化学式1に適切に連結することができる。
【0050】
上述のような本発明に係る化学式1で示される化合物は、下記に例示される化合物ET-01乃至ET-21のうちのいずれか1つで示される化合物により具体化され得る。しかし、本発明の化学式1で示される化合物は、これらの例示によって限定されるものではない。
【化6】
【化7】
【化8】
【0051】
本発明の電子輸送領域50において、電子注入層52をなす物質は、電子注入が容易で、かつ電子移動度が大きいものであれば、特に限定されることなく、例えば、双極性化合物、アントラセン誘導体、ヘテロ芳香族化合物、アルカリ金属錯化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0052】
より具体的に、本発明の電子輸送領域50、さらに具体的に、前記電子輸送層51及び/又は電子注入層306は、陰極から電子が容易に注入されるようにn型ドーパントと共蒸着されたものを使用することもできる。なお、前記n型ドーパントとしては、当該分野で公知のアルカリ金属錯化合物を制限なく使用することができ、一例として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属などが挙げられる。
【0053】
図2は、本発明の他の一実施例に係る有機電界発光素子の構造を示す図である。
【0054】
図2を参照して説明すると、前記有機電界発光素子200は、陽極10;陰極20;前記陽極10と陰極20との間に位置した発光層40;前記陽極10と前記発光層40との間に位置した正孔輸送領域30;及び、前記発光層40と前記陰極20との間に位置した電子輸送領域50を含むが、前記電子輸送領域50は、電子輸送補助層53、電子輸送層51、及び電子注入層52を含む構造を有する。
【0055】
本発明に係る第2の実施形態の有機電界発光素子200は、上述した化学式1の化合物を含有する電子輸送層51を備えるとともにイオン化ポテンシャルが5.5eV以上である双極性(bipolar)化合物からなる電子輸送補助層53を備えるものである。
【0056】
電子輸送補助層
本発明に係る有機電界発光素子200において、電子輸送補助層53は、正孔の電子輸送層51への拡散又は移動を防止する役割を果たし、これによって、有機電界発光素子の寿命を改善することができる。即ち、正孔は、電子輸送補助層53の高いエネルギー障壁によって、電子輸送層51に拡散又は移動されず、発光層40に留まるようになる。
【0057】
前記電子輸送補助層53をなす物質は、電子求引性基(EWG)モイエティと電子供与性基(EDG)モイエティとをいずれも有する当該分野で周知の双極性化合物であることができる。
【0058】
より具体的に、前記電子輸送補助層53を構成する双極性化合物は、イオン化ポテンシャル(ionization potential)が5.5eV以上で、具体的に、5.5~7.0eVの範囲であることができ、好ましくは、5.5~6.5eVの範囲であることができる。
【0059】
即ち、正孔は、有機電界発光素子内でイオン化ポテンシャルレベルに乗って移動されるが、正孔が発光層40を経て電子輸送層51に拡散又は移動する場合は、酸化による非可逆的分解反応が起こり、有機電界発光素子の寿命が低減される。これに対して、本発明では、イオン化ポテンシャル[Ip]5.5eV以上である双極性化合物からなる電子輸送補助層53を備えることにより、正孔の電子輸送層31への拡散又は移動が防止されるため、有機電界発光素子の寿命を改善することができる。
【0060】
また、前記双極性化合物のHOMO値とLUMO値との差(EHOMO-ELUMO)は、3.0eV以上であり、具体的に、3.0eV以上、3.5eV以下の範囲であることができる。さらに、前記双極性化合物の一重項エネルギーS1と三重項エネルギーT1のとの差(ΔEst)が0.5eV未満であり、具体的に、0.5eV未満、0.01eV以上の範囲である化合物である。
【0061】
なお、前記双極性化合物は、HOMO値とLUMO値との差(EHOMO-ELUMO)が3.0eV以上であり、一重項エネルギーS1と三重項エネルギーT1のとの差(ΔEst)が0.5eV未満であるため、これを電子輸送補助層53に使用する場合、発光層40で形成された励起子の電子輸送層51への拡散を防止し、発光層40と電子輸送層51との界面で発光が起こる現象を防ぐができる。これは、結果的に、有機電界発光素子のスペクトル混色を防止するとともに安定性を向上させ、有機電界発光素子の寿命を改善することができる。
【0062】
より具体的に、前記双極性化合物は、電子吸収性が大きい電子求引性基(EWG)及び電子供与性基(EDG)をいずれも有し、HOMOとLUMOの電子雲が分離される特性を有する。これによって、化合物の三重項エネルギーと一重項エネルギーとの差(ΔEst)が少なく、ΔEst<0.5eVの関係式を満たすので、HOMO値とLUMO値との差(EHOMO-ELUMO)が3.0eV以上であっても、高い三重項エネルギーT1を有することが可能である。
【0063】
本発明の電子輸送補助層53材料として含まれる双極性化合物は、電子求引性基(EWG)モイエティと電子供与性基(EDG)モイエティとが結合して形成される。なお、前記電子求引性基(EWG)として、下記化学式4で示される電子求引性基(EWG)モイエティを1つ以上含むことを特徴とする。
【化9】
式中、
Zは、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、C(R)又はNであり、少なくとも1つはNであり、
ここで、複数のRは、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択されるか、又は、これらは、隣接した基と縮合環を形成することができ、
前記Rの、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換もしくは非置換であることができる。
【0064】
本発明において、前記電子求引性基(EWG)モイエティは、下記化学式に示される構造により具体化され得るが、最も好ましくは、窒素を1乃至3個含む6員含窒素ヘテロ芳香族炭化水素である。好適な電子求引性基(EWG)モイエティとしては、例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピラジンなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【化10】
【0065】
本発明の電子輸送補助層53材料として含まれる双極性化合物は、前記化学式4の電子求引性基(EWG)より電子供与性が大きい、当該分野で周知の電子供与性基(EDG)モイエティを含む。
【0066】
このような電子供与性基(EDG)特性を有するモイエティとしては、例えば、インドール、カルバゾール、アゼピン、フラン、チオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンなどの縮合ヘテロ芳香族環;又は、ビフェニル、トリフェニレン、フルオランテン、フルオレンなどの縮合多環芳香族環などを使用することができるが、これらに制限されない。より具体的に、下記化学式5で示すことができる。
【化11】
式中、
X
1は、O、S、Se、N(Ar
1)、C(Ar
2)(Ar
3)、及びSi(Ar
4)(Ar
5)からなる群から選択され、
Y
1乃至Y
4は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R
1)であり、この時、複数のR
1は、同様に表示されても、それぞれ同一もしくは異なり、これらは、隣接した基と縮合環を形成することができ;
X
2及びX
3は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R
2)であり、この時、複数のR
2は、同様に表示されても、それぞれ同一もしくは異なり、これらは、隣接した基と縮合環(例えば、縮合芳香族環又は縮合ヘテロ芳香族環)を形成することができ;
前記R
1乃至R
2、及びAr
1乃至Ar
5は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択され、
前記R
1乃至R
2、及びAr
1乃至Ar
5の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
1~C
40のアルケニル基、C
1~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能である。
【0067】
本発明において、前記化学式5は、A-1乃至A-24のうちのいずれか1つにより具体化され得る。しかし、これに限定されない。
【化12】
式中、
R
2、Y
1乃至Y
4、及びAr
1乃至Ar
5は、上述の化学式5で定義した通りである。
【0068】
なお、本発明の双極性化合物において、電子供与性基(EDG)モイエティは、前記化学式5の構造で単独使用され、又は、前記化学式5と下記化学式6;又は、前記化学式5と化学式7とが結合して縮合された構造で示すことができる。
【0069】
より具体的に、前記化学式5において、Y
1乃至Y
4は、それぞれ独立に、N又はC(R
1)であるが、これらが複数個のC(R
1)である場合、Y
1とY
2、Y
2とY
3、又はY
3とY
4のうちの1つは、下記化学式6と縮合環を形成する。なお、複数のR
1は、それぞれ同一もしくは異なることができる。また、前記化学式5においてX
2及びX
3がいずれもC(R
2)である場合、複数のR
2は、下記化学式6又は化学式7とそれぞれ結合して縮合環を形成することができる。
【化13】
式中、
Y
5乃至Y
14は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R
3)であり、この時、C(R
3)が複数個である場合、複数のR
3は、それぞれ同一もしくは異なり、前記化学式5と結合して縮合環を形成することができ、
X
4は、X
1と同一であり、この時、複数のAr
1乃至Ar
5は、それぞれ同一もしくは異なっている。
【0070】
縮合環を形成しない複数のR3は、同様に表示されても、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C1~C40のアルキル基、C2~C40のアルケニル基、C2~C40のアルキニル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C1~C40のアルキルオキシ基、C6~C60のアリールオキシ基、C1~C40のアルキルシリル基、C6~C60のアリールシリル基、C1~C40のアルキルボロン基、C6~C60のアリールボロン基、C1~C40のホスフィン基、C1~C40のホスフィンオキサイド基、及びC6~C60のアリールアミン基からなる群から選択され、
前記R3の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C1~C40のアルキル基、C1~C40のアルケニル基、C1~C40のアルキニル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C6~C40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C1~C40のアルキルオキシ基、C6~C60のアリールオキシ基、C1~C40のアルキルシリル基、C6~C60のアリールシリル基、C1~C40のアルキルボロン基、C6~C60のアリールブロン基、C1~C40のホスフィン基、C1~C40のホスフィンオキサイド基、及びC6~C60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能である。
【0071】
本発明において、前記化学式5と化学式6とが縮合して形成された双極性化合物は、下記化学式B-1乃至B-30のうちのいずれか1つに具体化可能である。しかし、これに限定されない。なお、下記化学式B-1乃至B-30は、1つ以上の縮合されたインドール又は縮合されたカルバゾールのモイエティを含むことで、電子供与性が大きい、強い電子供与性基(EDG)特性を有するようになる。
【化14】
前記化学式B-1乃至B-30中、Ar
1及びR
1乃至R
3は、化学式5及び化学式6で定義した通りである。
【0072】
本発明の好適な一例としては、Ar1は、置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基、又は、置換もしくは非置換の核原子数5乃至40のヘテロアリール基であり、
R1乃至R3は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは非置換のC1~C40のアルキル基、置換もしくは非置換のC6~C40のアリール基、又は、置換もしくは非置換の核原子数5乃至40のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0073】
また、本発明において、化学式5と化学式7とが縮合して形成される双極性化合物は、下記化学式5a乃至5hで示される化合物のうちのいずれか1つに具体化可能である。なお、下記化学式5a乃至5hで示される化合物は、1つ以上の縮合されたアゼピンモイエティを含むことで、電子供与性が大きい、強い電子供与性基(EDG)特性を有するようになる。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
式中、X
1、X
3乃至X
4、及びY
1乃至Y
14は、化学式5及び化学式7で定義した通りである。
【0074】
より具体的に、X1及びX4は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、O、S又はN(Ar1)であることが好ましく、いずれもN(Ar1)であることがさらに好ましく、この時、複数のAr1は、同一もしくは異なっている。
【0075】
Y1乃至Y4は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R1)であり、このうち、Y1乃至Y4がいずれもC(R1)であることが好ましく、この時、複数のR1は、同一もしくは異なっている。
【0076】
X3は、それぞれ独立に、N又はC(R2)である。
【0077】
Y5乃至Y14は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R3)であり、このうち、Y5乃至Y14がいずれもC(R3)であることが好ましく、この時、複数のR3は、同一もしくは異なっている。なお、Ar1、及びR1乃至R3は、化学式5及び化学式7で定義した通りである。
【0078】
本発明に係る化学式5a乃至5hにおいて、X1及びX4は、それぞれ独立に、N(Ar1)又はSであることが好ましい。即ち、X1がN(Ar1)、X4がSであるか、又は、X1がS、X4がN(Ar1)であるか、又は、X1及びX4がいずれもN(Ar1)であることが好ましい。
【0079】
また、Ar1は、C6~C60のアリール基、又は核原子数5乃至60のヘテロアリール基であることが好ましく、Ar2乃至Ar5は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のC1~C40のアルキル基(具体的に、メチル基)、又は置換もしくは非置換のC6~C60のアリール基(具体的に、フェニル基)であることが好ましい。
【0080】
上述の化学式5a乃至5hで示される化合物において、R1乃至R3、及びAr1乃至Ar5のうちの少なくとも1つは、電子吸収性が大きい、電子求引性基(EWG)特性を有する前記モイエティと結合を形成する。
【0081】
本発明に係る双極性化合物において、電子供与性基(EDG)モイエティは、下記化学式8の構造で示される。
【化19】
式中、
X
1は、O、S、Se、N(Ar
1)、C(Ar
2)(Ar
3)、及びSi(Ar
4)(Ar
5)からなる群から選択され、
Y
1乃至Y
4は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、N又はC(R
1)であり、前記Y
1乃至Y
4のうちの0~2個は、Nであり、この時、複数のR
1は、それぞれ同一もしくは異なり、これらは、隣接した基と縮合芳香族環又は縮合ヘテロ芳香族環を形成することができ、
前記R
1、及びAr
1乃至Ar
5は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択され、
A環は、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、又は単環もしくは多環のヘテロ芳香族環であり、
前記R
1、及びAr
1乃至Ar
5の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能である。
【0082】
本発明において、A環は、当該分野で周知の炭化水素系又はヘテロ原子(例えば、N、O、S、Siなど)を1つ以上含む炭化水素系環であることができ、これらが隣接した他の環と、縮合、融合、架橋、又はスピロ(spirocyclic)結合された形態であることができる。一例として、前記A環は、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、又は単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択される。具体的に、A環は、C6~C18の芳香族環、又は核原子数5乃至18個のヘテロ芳香族環であることが好ましい。
【0083】
本発明において、前記化学式8の電子供与性基(EDG)モイエティは、下記化学式で示される構造により具体化され得るが、これらに限定されない。
【化20】
式中、
X
1は、前記化学式8で定義した通りであり、
Z
1及びZ
2は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、O、S、Se、N(Ar
6)、C(Ar
7)(Ar
8)、及びSi(Ar
9)(Ar
10)からなる群から選択され、
Ar
6乃至Ar
10は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
60のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択され、
前記Ar
6乃至Ar
10の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルボロン基、アリールボロン基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、及びアリールアミン基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C
1~C
40のアルキル基、C
2~C
40のアルケニル基、C
2~C
40のアルキニル基、C
3~C
40のシクロアルキル基、核原子数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、C
6~C
40のアリール基、核原子数5乃至40のヘテロアリール基、C
1~C
40のアルキルオキシ基、C
6~C
60のアリールオキシ基、C
1~C
40のアルキルシリル基、C
6~C
60のアリールシリル基、C
1~C
40のアルキルボロン基、C
6~C
60のアリールボロン基、C
1~C
40のホスフィン基、C
1~C
40のホスフィンオキサイド基、及びC
6~C
60のアリールアミン基からなる群から選択される1種以上で置換可能である。
【0084】
なお、
図2に示された有機電界発光素子の各構成要素10、20、30-32、40、51-52は、上述した
図1の構成と同様であるため、その個別説明は、省略する。
【0085】
上記のように構成される本発明の有機物層A、A’は、正孔輸送領域30と発光層40との間、好ましくは、正孔輸送層32と発光層40との間に、電子と励起子をブロッキングする有機膜層(図示せず)をさらに含むことができる。
【0086】
このような有機膜層は、高いLUMO値を有することで、電子の正孔輸送層への移動を防止し、高い三重項エネルギーを有することで、発光層40の励起子の正孔輸送層32への拡散を防止する。このような有機膜層をなす物質は、特に限定されず、例えば、カルバゾール誘導体又はアリールアミン誘導体が挙げられるが、これらに制限されない。
【0087】
このような本発明の有機物層A、A’を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、溶液塗布法を挙げられるが、これらに制限されない。前記溶液塗布法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、インクジェット印刷法、熱転写法などが挙げられる。
【0088】
上述した本発明に係る有機電界発光素子100、200は、陽極10、有機物層A、A’、及び陰極20が順次積層された構造を有するが、陽極10と有機物層A、A’との間、又は陰極20と有機物層A、A’との間に、絶縁層又は接着層をさらに含むこともできる。上記のような本発明の有機電界発光素子は、電圧、電流、又はこの両方を印加する場合、最大発光効率を維持しながら初期明るさの半減時間(Life time)が増加するので、優れた寿命特性を有することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例を挙げて詳述するが、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0090】
[準備例]化合物ET-01乃至ET-21の準備
本発明の化合物として下記ET-01乃至ET-21で示される化合物を準備し、これらのLUMO及びEHOMO-ELUMOを、当業界で公知の常法でそれぞれ測定し、下記表1に示す。
【0091】
参考に、EHOMO-ELUMOについては、UV-Vis spectrophotometer(JASCO、V-500)を使用して測定し、LUMOは、HOMO値をCV(Cyclic Voltammetry)方法を用いて電気化学計測装置(Potentiostat/Galvanostat、Princeton社製、273A)で測定し、EHOMO-ELUMOから算出した。
【0092】
以下、ET-01乃至ET-21の化合物をそれぞれ示す。
【化21】
【化22】
【化23】
【0093】
【0094】
[実施例1乃至21]青色有機電界発光素子の製造
ITO(Indium Tin Oxide)が1500Åの厚さでコートされたガラス基板を蒸留水で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥させた後、UV OZONE洗浄機(Powersonic405、ファシンテック社製)に移送させた後、UVを用いて前記基板を5分間洗浄し、真空蒸着機に基板を移送した。
【0095】
上述のように準備されたITO透明電極(基板)上に、DS-205(80nm)/NPB(15nm)/ADN+5%DS-405(30nm)/表1の化合物(30nm)/Al(200nm)の順に積層し、有機EL素子を製作した。
【0096】
【0097】
[比較例1]青色有機電界発光素子の製作
電子輸送層物質として、化合物1(ET-01)の代わりに、Alq3を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、青色有機電界発光素子を製作した。
【0098】
[比較例2]青色有機電界発光素子の製作
電子輸送層材料として、化合物1(ET-01)の代わりに、T-1を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、青色系有機電界発光素子を製作した。
【0099】
[比較例3]青色有機電界発光素子の製作
電子輸送層材料として、化合物1(ET-01)の代わりに、T-2を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、青色有機電界発光素子を製作した。
【0100】
上述の実施例1乃至21及び比較例1乃至3において使用された、NPB、ADN、Alq3、T-1、及びT-2の構造は、下記の通りである。
【化24】
【0101】
[実験例1]
実施例1乃至21及び比較例1乃至3において製作されたそれぞれの青色有機LE素子について、電流密度10mA/cm2での駆動電圧、電流効率及び発光ピークを測定し、その結果を下記表3に示す。
【0102】
【0103】
前記表3に示されるように、本発明の化合物を電子輸送層に使用した青色有機電界発光素子(実施例1~21)は、従来の、Alq3、T-1及びT-2を電子輸送層に使用した青色有機電界発光素子(比較例1-3)に比べて駆動電圧及び電流効率の面で優れた性能を奏するものであることがわかった。
【0104】
[実施例22乃至41]青色蛍光有機電界発光素子の製造
ITO(Indium Tin Oxide)が1500Åの厚さでコートされたガラス基板を蒸留水で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥させた後、UV OZONE洗浄機(Powersonic405、ファシンテック社製)に移送させた後、UVを用いて前記基板を5分間洗浄し、真空蒸着機に基板を移送した。
【0105】
上述のように準備されたITO透明電極(基板)上に、DS-205(80nm)/NPB(15nm)/ADN+5%DS-405(30nm)/LE-1乃至LE-19(5nm)/表2の電子輸送材料(25nm)/LiF(1nm)/Al(200nm)の順に積層し、有機EL素子を製作した(下記表4参照)。
【0106】
【0107】
以下、LE-1乃至LE-19の化合物をそれぞれ示す。
【化25】
【化26】
【0108】
[実験例2]
実施例22~40において製作したそれぞれの青色有機EL素子について、電流密度10mA/cm2での駆動電圧、電流効率、及び発光ピークを測定し、その結果を下記表5に示す。
【0109】
【0110】
前記表5に示されるように、本発明の化合物を含む電子輸送層と電子輸送補助層と混用する場合、比較例1~2に比べて素子の駆動電圧及び電流効率の面で非常に優れた性能を奏するものであることがわかった。