(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】4-クロロキヌレニンおよび中間体の合成
(51)【国際特許分類】
C07C 227/18 20060101AFI20240206BHJP
C07C 229/40 20060101ALI20240206BHJP
C07C 271/22 20060101ALI20240206BHJP
C07C 269/06 20060101ALI20240206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C07C227/18
C07C229/40
C07C271/22
C07C269/06
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020542907
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 US2019017448
(87)【国際公開番号】W WO2019157426
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515198393
【氏名又は名称】ヴィスタゲン セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レビン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リーミング、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンライク、エメリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シュエジュン、カール
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513718(JP,A)
【文献】特表2016-513709(JP,A)
【文献】特開平05-086027(JP,A)
【文献】J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1,1997年,865-870,1997,865-870https://doi.org/10.1039/A606394B
【文献】Organic Syntheses,2005年,Vol. 81,pp. 77-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、スキームIによる4-クロロキヌレニン(8)のエナンチオ特異的調製の方法:
【化1】
スキームIにおいて、式中、
Rは、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12アルカリール(alk-aryl)基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、
*は、全体を通して維持される単一のエナンチオマーまたはエナンチオマーの混合物であってもよい不斉炭素を示し、
PGは、アミノ保護基であり、
Tsは、トシル基であり、
R
1は、NH
2、NH(PG)、またはNO
2であり、
Xは、Cl、Br、I、トリフレート、またはトシレートであり、
スキームIは、
好適な反応条件下で、保護されたセリンエステル(1)をトルエンスルホニルクロリドと反応させて、前記保護されたセリンエステルをその対応するトシレート(2)に変換する、ステップ1と、
光の非存在下
及び不活性雰囲気下
、かつ好適な反応条件下において、前記トシレート(2)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムと反応させて、前記トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3)を形成する、ステップ2と、
光の非存在下、
かつ好適な反応条件下
において、前記ヨード中間体(3)をin situで亜鉛試薬(4)に変換し、好適な反応条件下、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、前記亜鉛試薬(4)を化合物(5)と反応させるカルボニル化反応を介して、保護されたエステル化合物(6)を形成し、
任意選択的に、前記保護されたエステル化合物(6)を精製する、ステップ3と、
光の非存在下、
かつ好適な反応条件下
において、前記保護されたエステル化合物(6)を脱保護して、いずれの保護基PGを除去し、R
1がNO
2である場合は前記NO
2基をNH
2基に還元して、エステル(7)を形成し、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下、pHを酸性pHに調整して、前記エステル(7)を脱保護して4-クロロキヌレニン(8)を形成し、ここで、保護されたエステル化合物(6)の脱保護、エステル(7)の脱保護およびNO
2基のNH
2基への還元反応は、単一のステップまたは複数のステップで行われる、ステップ4。
【請求項2】
以下のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法:
ステップ1において、触媒量の4-ジメチルアミノピリジンが存在すること、および任意選択的に、前記トシレート(2)を単離して再結晶化すること、
ステップ2において、前記反応混合物を水に水性クエンチして、前記ヨード中間体(3)を沈殿させること、および任意選択的に、前記ヨード中間体(3)の再結晶化を行うこと、
ステップ3において、前記パラジウム(0)触媒[Pd]がテトラキスPd(0)であり、CO圧が1psig~1,000psigの範囲であること、ならびに
ステップ4において、ジオキサン中でHClを使用して、前記保護されたエステル化合物(6)を脱保護して、いずれの保護基PGも除去し、空気または湿気に曝すことなく、光の非存在下で、前記エステル(7)を単離し、別個の脱保護ステップで、12.0~12.5のpHおよびpHを酸性pHに調整して(7)を加水分解して、4-クロロキヌレニン(8)を形成すること。
【請求項3】
ステップ4において、pHを酸性pHに調整して4-クロロキヌレニン(8)を形成する工程が以下のステップを含む、請求項1又は2に記載の方法:
水性酸を用いる調整によりpHを6.5未満にすることにより、前記4-クロロキヌレニン(8)を遊離酸としてアルカリ性溶液から単離するステップと、
前記単離された遊離酸(8)を2未満のpHで水性酸中に溶解するステップと、
pHを4.5~6.5に調整することによって、前記遊離酸(8)を沈殿させるステップと、
前記沈殿した遊離酸(8)を収集するステップと、
前記収集された遊離酸(8)を乾燥させ、
任意選択的に、前記収集された遊離酸(8)を有機溶媒または有機溶媒混合物を使用して粉砕し、前記粉砕された遊離酸(8)を乾燥させるステップ。
【請求項4】
Rは、C
1~C
6アルキル基であり、
PGは、BOC、Fmoc、ベンジル、ベンゾイル、アルキルアミン、アリールアミン、TFA、およびCBzから選択されるアミン保護基であり、
Xは、Iである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Rは、メチル基であり、
PGは、前記アミノ保護基BOCであり、
Xは、Iである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下を含む、スキームIIによるL-4-クロロキヌレニン(8a)の調製方法:
【化2】
スキームIIにおいて、式中、Tsは、トシル基であり、
スキームIIは、
好適な反応条件下で、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)を1~2モル当量のトルエンスルホニルクロリドと反応させて、前記BOC-L-セリンメチルエステル(1a)をその対応するトシレート(2a)に変換する、ステップ1と、
光の非存在下
及び不活性雰囲気
下、
かつ好適な反応条件下において、前記トシレート(2a)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムと反応させて、前記トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3a)を形成する、ステップ2と、
光の非存在下、
かつ好適な反応条件下
において、前記ヨード中間体(3a)をin situで亜鉛試薬(4a)に変換し、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、前記亜鉛試薬(4a)を5-クロロ-ヨードアニリン化合物(5a)と反応させるカルボニル化反応を介して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を形成し、
任意選択的に、前記保護されたエステル化合物(6a)を精製する、ステップ3と、
光の非存在下、
かつ好適な反応条件下
において、前記BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護して、前記保護基を除去し、メチルエステル(7a)を形成し、空気または湿気に曝さないように注意して、次いで、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、pHを酸性pHに調整して前記メチルエステル(7a)を脱保護して、4-クロロキヌレニン(8a)を形成し、ここで、OC保護エステル化合物(6a)の脱保護、およびメチルエステル(7a)の脱保護は、単一のステップまたは2つのステップで行われる、ステップ4。
【請求項7】
以下のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項6に記載の方法:
ステップ1において、触媒量の4-ジメチルアミノピリジンが存在すること、および任意選択的に、前記トシレート(2a)を単離して再結晶化すること、
ステップ2において、前記反応混合物を水中に水性クエンチして、前記ヨード中間体(3a)を沈殿させること、および任意選択的に、前記ヨード中間体(3a)の再結晶化を行うこと、
ステップ3において、前記パラジウム(0)触媒[Pd]がテトラキスPd(0)であり、CO圧が1psig~1,000psigの範囲であること、ならびに
ステップ4において、ジオキサン中でHClを使用して、前記BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護し、前記単離された固体を空気または湿気に曝すことなく、光の非存在下で、前記メチルエステル(7a)を単離し、別個の脱保護ステップで、NaOH、KOH、およびLiOHから選択される水性塩基で(7a)を加水分解すること。
【請求項8】
ステップ4において、pHを酸性pHに調整してL-4-クロロキヌレニン(8a)を形成する工程が以下のステップを含む、請求項6または請求項7に記載の方法:
水性酸を用いる調整によりpHを6.5未満にすることにより、前記L-4-クロロキヌレニン(8a)を遊離酸としてアルカリ性溶液から単離するステップと、
前記単離された遊離酸(8a)を2未満のpHで水性酸に溶解するステップと、
pHを4.5~6.5に調整することによって、前記遊離酸(8a)を沈殿させるステップと、
前記沈殿した遊離酸(8a)を収集するステップと、
前記収集した遊離酸(8a)を乾燥させ、
任意選択的に、前記収集された遊離酸(8a)を有機溶媒または有機溶媒混合物を用いて粉砕し、前記粉砕された遊離酸(8a)を乾燥させるステップ。
【請求項9】
以下を含む、化合物3から化合物6を調製する方法:
【化3】
式中、
Rは、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12アルカリール(alk-aryl)基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、
PGは、アミノ保護基であり、
R
1は、NH
2、NH(PG)、またはNO
2であり、
Xは、Cl、Br、I、トリフレート、またはトシレートであり、
光の非存在下
、かつ好適な反応条件下において、前記ヨード中間体(3)をin situで亜鉛試薬(4)に変換するステップと、好適な反応条件下、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、前記亜鉛試薬(4)を化合物(5)と反応させるカルボニル化反応を介して、保護されたエステル化合物(6)を形成し、
任意に、前記保護されたエステル化合物(6)を精製するステップ。
【請求項10】
前記パラジウム(0)触媒[Pd]がテトラキスPd(0)であり、CO圧が1psig~1,000psigの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
化合物3aから化合物6aを調製する方法であって、
【化4】
光の非存在
下、
かつ好適な反応条件下において、前記ヨード中間体(3a)をin situで亜鉛試薬(4a)に変換するステップと、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、前記亜鉛試薬(4a)を5-クロロ-ヨードアニリン化合物(5a)と反応させるカルボニル化反応を介して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を形成し、
任意選択的に、前記保護されたエステル化合物(6a)を精製するステップと、を含む、方法。
【請求項12】
前記パラジウム(0)触媒[Pd]がテトラキスPd(0)であり、CO圧が1psig~1,000psigの範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下を含む、化合物(6a)からL-4-クロロキヌレニン(8a)を調製する方法:
【化7】
光の非存在
下、
かつ好適な反応条件下において、前記BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護して、前記保護基を除去して、空気または湿気に曝さないように注意してメチルエステル(7a)を形成するステップと、
次いで、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、pHを酸性pHに調整して前記メチルエステル(7a)を脱保護して4-クロロキヌレニン(8a)を形成するステップと、
を含み、ここで、前記BOC保護エステル化合物(6a)の脱保護、およびメチルエステル(7a)の脱保護は、単一のステップまたは2つのステップで行われる。
【請求項14】
以下を含む、請求項13に記載の方法:
前記脱保護ステップが、
ジオキサン中でHClを使用して、前記BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護し、前記単離された固体を空気または湿気に曝すことなく、光の非存在下で、前記メチルエステル(7a)を単離し、別個の脱保護ステップで、LiOH、NaOH、およびKOHから選択される水性塩基で、12.0~12.5のpHおよびpHを酸性pHに調整して(7a)を加水分解して、L-4-クロロキヌレニン(8a)を形成すること。
【請求項15】
メチルエステル(7a)をから4-クロロキヌレニン(8a)を形成するステップにおいて、pHを酸性pHに調整してL-4-クロロキヌレニン(8a)を形成する工程が以下のステップを含む、請求項13または請求項14に記載の方法:
水性HClで、pH4.8~6.0にpHを調整することによって、アルカリ性溶液から前記遊離酸(8a)を単離するステップと、
前記単離された遊離酸(8a)を0.5~0.9のpHで水性酸に溶解するステップと、
pH4.8~6.0に、pHを調整することによって、前記遊離酸(8a)を沈殿させるステップと、
前記沈殿した遊離酸(8a)を収集するステップと、
前記収集した遊離酸(8a)を乾燥させるステップ。
【請求項16】
調製された前記L-4-クロロキヌレニン(8a)は、D-4-クロロキヌレニンのキラル純度が0.5%以下である、請求項6、7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月9日に出願された米国特許出願第62/628,580号の優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、4-クロロキヌレニン化合物のエナンチオ制御合成に関し、具体的には、L-4-クロロキヌレニンのエナンチオ制御合成に関する。本発明の合成法は、商業量でL-4-クロロキヌレニンを生成し、商業製造のために拡張可能である。本発明はまた、本発明の合成における特定の化学中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
キヌレン酸は、抗けいれんおよび神経保護の特性を有する代謝関連の脳成分である(Stone,T.W.;Pharmacal.Rev.1993,45,309-379)。キヌレン酸およびそのキヌレニン前駆体の種々の誘導体の生物学的活性が研究されている(Camacho,E.et al.J.Med.Chern.2002,45,263-274、Varasi,M.et al.Eur.J.Med.Chern.1996,31,11-21、Salituro,F.G.etal.J.Med.Chern.1994,37,334-336)。キヌレニン化合物は、インビボでキヌレン酸に変換される。米国特許第5,547,991号には、4,6-二置換トリプトファン誘導体の製造方法およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)のアンタゴニストとしてのそれらの使用が記載されている。
【0004】
一酸化炭素雰囲気下で、ヨードアラニン由来有機亜鉛試薬とヨウ化アリールとのパラジウム(0)触媒反応を介したL-キヌレニンの実験室規模の合成が、Jackson,et al.,J.Chem Soc.,Perkin Trans.1,1997,865によって報告されている。Jacksonらが報告した実験手順では、確かに実験室規模でL-キヌレニンを提供するものの、手順には問題および制限があり、医薬品グレードの製造における直接的な使用には適していない。例えば、その手順は、許容される生成物純度を達成するのに、高価で低負荷の分取クロマトグラフィーが必要とされるように、副生成物に関して不良な選択性を示す。温度および発熱に関する制御が不十分であるため、スケールアップするには、手順が適しておらず、安全ではない。この合成は、いくつかの置換ヨウ化アリールを伴う効率(収率)の悪化が示されており、気液界面を横切るガス物質移動のような、他の未対処のスケール限定要因が存在する。記載された反応条件は、スケールアップ効率を制限するカルボニル化反応の反応混合物において、十分なCO溶解速度およびCO濃度を可能にするのに必要なCOガス物質移動効率を達成するために、低い静的CO圧力を有し、反応混合物の表面積対体積比が非常に大きい。そのような問題および欠点のため、それに記載された実験室規模での合成は、商業規模での直接的な使用、および経済的で高品質な医薬品活性成分の製造には適していない。
【0005】
L-4-クロロキヌレニンは、L-7-クロロキヌレン酸のプロドラッグであり、L-4-クロロキヌレニンは、投与後、中枢神経系(CNS)に容易に到達する。L-4-クロロキヌレニンは、おそらく、生理学的pHで両性イオンであり、活性化アストロサイト内でL-7-クロロキヌレン酸に効率的に変換され、L-4-クロロキヌレニンの投与後、アストロサイト活性化の結果として、神経細胞損傷または興奮毒性傷害の部位で、L-7-クロロキヌレン酸の脳内レベルが増加する。前臨床研究では、L-4-クロロキヌレニンは、ラットで抗けいれん活性を示している。また、この化合物は、ラットの脳内のドーパミン作動性ニューロンの発火頻度およびバースト発火活性を増加させることが見出された。国際特許出願第WO2014/116739(A1)号およびWO2016/191352(A1)号、ならびにそれらに引用されている参考文献を参照されたい。L-4-クロロキヌレニンの有益な薬理学的特性および有効性を考慮すると、大きな商業規模で医薬品品質のL-4-クロロキヌレニンを製造するプロセスが必要とされる。
【0006】
Salituroらによって記載されたL-4-クロロキヌレニンのエナンチオ選択的な合成を、グラム量のL-4-クロロキヌレニンの合成に使用した(Salituro,F.G.et al.J.Med.Chern.1994,37,334-336)。この合成は、塩化トリメチルスズ、水素化ナトリウム、およびtert-ブチルリチウムのような危険性および/または毒性のある試薬を使用すること、ならびに特定の構成要素(building block)の利用可能性が低いことから、商業的製造規模でのスケールアップには実用的ではない。
【0007】
L-4-クロロキヌレニンを含む4,6-二置換キヌレニン誘導体のクラスの合成方法、およびNMDA受容体に対するアンタゴニストとしてのそれらの使用は、米国特許第5,547,991号に記載されている。また、これらの化合物を含有する医薬組成物およびそれらの治療的使用も記載されている。
【0008】
4-クロロキヌレニンのラセミ合成は、Varasai et al.,Eur.J.Med.Chern.
1996,31,11-21に報告されている。しかしながら、それに記載されているジアステレオマー塩の結晶化によるエナンチオマーの分離について、実験は成功せず、また、それに記載されている分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ついても、難溶解性のために実質的に成功しなかった。
【0009】
L-4-クロロキヌレニンへの2つのエナンチオ選択的な合成経路は、国際特許出願第WO2014/152752号および第WO2014/152835号に開示されている。WO2014/152752は、アニリン出発物質からのL-4-クロロキヌレニンの合成を開示している。WO2014/152835による合成は、インドールアルデヒド出発物質を使用して、酸化的開環ステップを通して進行する。
【0010】
毒性および/または危険性のある試薬、あるいは高価で低収率な精製技術の使用を必要とせず、商業的に入手可能な試薬を使用して商業的に適切なスケールで達成することができる、改良されたL-4-クロロキヌレニンの合成が必要とされている。高い化学純度、かつ高いキラル純度で、クロロキヌレニン化合物、特にL-4-クロロキヌレニンを生成することができる、大規模製造に好適な合成が必要性とされている。商業的製造規模で安全かつ頑強な操作についても好適である一方、規制要件を満たす医薬品品質の物質の商業製造に好適なL-4-クロロキヌレニンの効率的かつ頑強な合成が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
一つの実施形態では、本発明は、以下のスキームIおよびIIに示されるように、4-クロロキヌレニン化合物(8)、特に、L-4-クロロキヌレニン(8a)の全体的なエナンチオ特異的合成に関する。本発明は、安全、効率的、および拡張可能な立体制御製造に好適な改良されたプロセス条件を有するそれらの調製方法に関する。本発明の方法は、以前に報告された合成の限界および欠点を克服する。
【0012】
本発明は、スキームIによる4-クロロキヌレニン(8)のエナンチオ特異的な調製方法に関し、
【化1】
スキームIにおいて、式中、Rは、C
1~C
12アルキル基、C
1~C
12アルカリール基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、*は、全体を通して維持される単一のエナンチオマーまたはエナンチオマーの混合物であってもよい不斉炭素を示し、PGは、アミノ保護基であり、Tsは、トシル基であり、R
1は、NH
2、NH(PG)またはNO
2であり、および、Xは、Cl、Br、I、トリフレートまたはトシレートである。本発明の方法は、以下のステップを有する:
好適な反応条件下で、保護されたセリンエステル(1)をトルエンスルホニルクロリドと反応させて、保護されたセリンエステルをその対応するトシレート(2)に変換する、ステップ1と、
好適な反応条件下、光の非存在下、不活性雰囲気下で、トシレート(2)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムと反応させて、トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3)を形成する、ステップ2と、
好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3)をin situで亜鉛試薬(4)に変換し、好適な反応条件下、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4)を化合物(5)と反応させるカルボニル化反応を介して、保護されたエステル化合物(6)を形成し、
任意選択的に、保護されたエステル化合物(6)を精製する、ステップ3と、
好適な反応条件下、光の非存在下で、保護されたエステル化合物(6)を脱保護して、いずれの保護基PGも除去し、R
1がNO
2である場合はNO
2基をNH
2基に還元して、エステル(7)を形成し、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、エステル(7)を脱保護(加水分解)して、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8)を形成する、ステップ4と、
を含み、ここで、脱保護および還元反応は、単一のステップまたは複数のステップで行われる。
【0013】
本発明はまた、スキームIIによるL-4-クロロキヌレニン(8a)の調製方法に関し、
【化2】
スキームIIにおいて、式中、Tsは、トシル基である。本発明の方法は、以下のステップを有する:
好適な反応条件下で、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)をトルエンスルホニルクロリドと反応させて、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)をその対応するトシレート(2a)に変換する、ステップ1と、
好適な反応条件下、光の非存在下、不活性雰囲気下で、トシレート(2a)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムと反応させて、トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3a)を形成する、ステップ2と、
好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3a)をin situで亜鉛試薬(4a)に変換し、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4a)を5-クロロ-ヨードアニリン化合物(5a)と反応させるカルボニル化反応を介して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を形成し、
任意選択的に、保護されたエステル化合物(6a)を精製する、ステップ3と、
好適な反応条件下、光の非存在下で、BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護して、保護基を除去し、メチルエステル(7a)を形成し、単離された固体を空気または湿気に曝さないように注意して、次いで、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、メチルエステル(7a)を脱保護(加水分解)して、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8a)を形成する、ステップ4と、
を含み、ここで、脱保護反応は、単一のステップまたは2つのステップで行われる。
【0014】
本発明の他の実施形態では、スキームIおよびIIに示される方法は、また、
pH調整として、水性酸を用いて4-クロロキヌレニン(8)/L-4-クロロキヌレニン(8a)を遊離酸としてアルカリ性溶液から単離して、pHを6.5未満にするステップと、
単離された遊離酸(8)/(8a)を2未満のpHで水性酸に溶解するステップと、
pHを4.5~6.5に調整することによって、遊離酸(8)/(8a)を沈殿させるステップと、
沈殿した遊離酸(8)/(8a)を収集するステップと、
収集された遊離酸(8)/(8a)を乾燥させ、
任意選択的に、収集された遊離酸(8)/(8a)を有機溶媒または有機溶媒混合物を用いて粉砕し、粉砕された遊離酸(8)/(8a)を乾燥させるステップと、を含んでもよい。
【0015】
本発明の別の実施形態は、化合物3から化合物6を調製する方法に関し
【化3】
式中、Rは、C
1-C
12アルキル基、C
1-C
12アルカリール基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、*は、全体を通して維持される単一のエナンチオマーまたはエナンチオマーの混合物であってもよい不斉炭素を示し、PGは、アミノ保護基であり、Tsは、トシル基であり、R
1は、NH
2、NH(PG)またはNO
2であり、および、Xは、Cl、Br、I、トリフレートまたはトシレートである。本方法は、以下のステップを有する:好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3)をin situで亜鉛試薬(4)に変換するステップと、好適な反応条件下、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続した溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4)を化合物(5)と反応させるカルボニル化反応を介して、保護されたエステル化合物(6)を形成し、任意選択的に、保護されたエステル化合物(6)を精製するステップ。
【0016】
本発明の別の実施形態は、化合物3aから化合物6aを調製する方法に関し、
【化4】
好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3a)をin situで亜鉛試薬(4a)に変換するステップと、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4a)を5-クロロ-ヨードアニリン化合物(5a)と反応させるカルボニル化反応を介して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を形成し、任意選択的に、保護されたエステル化合物(6a)を精製するステップと、を含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、式6aの合成中間体に関する:
【化5】
【0018】
別の実施形態では、本発明は、式7aの合成中間体:
【化6】
およびその酸塩に関する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、化合物(6a)からのL-4-クロロキヌレニン(8a)の調製方法である
【化7】
本方法は、
好適な反応条件下、光の非存在下で、BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護して、保護基を除去し、メチルエステル(7a)を形成し、単離された固体を空気または湿気に曝さないように注意して、次いで、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、メチルエステル(7a)を脱保護(加水分解)して、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8a)を形成し、ここで、脱保護および還元反応は、単一のステップまたは2つのステップで行われる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、以下に示されるL-4-クロロキヌレニン(8a)などの4-クロロキヌレニン化合物(8)、(化学名(S)-2-アミノ-4-(2-アミノ-4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸とも称される)のエナンチオ特異的合成に関する。
【化8】
【0021】
以下のスキームIおよびIIで繰り返して示されるように、本発明の方法は、4-クロロキヌレニンの調製全体にわたって2-位置でエナンチオ特異性を保持し、高いエナンチオマー純度を有する生成物をもたらす。アスタリスク(*)は、不斉炭素を示し、単一のエナンチオマー(DまたはL)またはエナンチオマーの混合物(DおよびL)であってもよく、本発明の方法を通じて維持される。「エナンチオマー純度」または「キラル純度」は、組成物中の他のエナンチオマーと比較したときの組成物中の1つの特定のエナンチオマーの、全体的なレベルを意味する。いずれかのエナンチオマー以外の組成物の成分は、「エナンチオマー純度」または「キラル純度」の計算において考慮されない。エナンチオマー純度またはキラル純度は、キラルHPLC分析を含む様々な技術によって測定することができる。エナンチオ特異性およびキラル純度は、化合物(3)/(3a)の調製に使用される出発物質(1)/(1a)のキラル純度によって制御され、その後、最終生成物(8)/(8a)に転送される。キラル中心は、合成全体を通じて保存される。L-4-クロロキヌレニン(8a)に関して、本発明の方法は、望ましくないD-異性体が0.5%以下のキラル純度を達成する。
【0022】
以下のスキームIは、本発明による4-クロロキヌレニン化合物(8)の一般的かつ全体的なエナンチオ特異的調製を示す。
【化9】
【0023】
スキームIにおいて、基Rは、C1~C12アルキル基、C1~C12アルカリール基、アリール基、またはヘテロアリール基である。アルキル基またはアルカリール基のアルキル部分は、直鎖状または分枝状であり得る。アルカリール基のアルキルまたはアルキル部分は、C1~C12アルキルであり、好ましくはC1~C6アルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、および上記の各アルキルの分岐変形であり得る。RがC1~C12アルキル基である場合、最も好ましくはメチルまたはエチルである。RがC1~C12アルカリール基である場合、C1~C12アルキル基(または先ほど論じた好ましいアルキル基のうちの1つ)は、フェニル、ナフチル等のアリール基と結合する。C1~C12アルカリール基は、例えば、ベンジル(CH2C6H5)、エチルフェニル(CH2CH2C6H5)、メチルナフチル(CH2C10H9)等であり得る。Rに好適なアリール基としては、限定されないが、フェニル、ナフチル等が挙げられる。Rに好適なヘテロアリール基としては、限定されないが、フリル、チエニル、ピリジル等が挙げられる。
【0024】
当該技術分野で既知の任意のアミン保護基PGを使用してもよい。好適なアミン保護基としては、限定されないが、アセチル(Ac)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオロエニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル、ベンゾイル、カルボキシベンジル(CBz)、p-メトキシベンジルカルボニル(MOZ)等が挙げられる。例えば、Isidro-Liobet,et.Al.Chem Rev.,2009,109(6),2455-2504.を参照されたい。好ましい保護基としては、BOCおよびFmocが挙げられる。
【0025】
化合物(2)上の基Tsは、トシル基、CH3C6H4SO2である。
【0026】
基Xは、限定されないが、Cl、Br、I、トリフレート、またはトシレート等の脱離基である。当該技術分野で既知の他の離脱基を使用してもよい。好ましい離脱基は、Iである。
スキームIによる本発明の好ましい方法では、Rは、C1~C6アルキル基であり、PGは、BOC、Fmoc、ベンジル、ベンゾイル、アルキルアミン、アリールアミン、TFA、およびCBzから選択されるアミン保護基であり、Xは、Iである。別の方法では、Rは、メチル基であり、PGは、アミノ保護基BOCであり、Xは、Iである。
【0027】
スキームIIは、本発明の特定の方法、本発明によるL-4-クロロキヌレニン(8a)の全体的な合成を示す。スキームIIの合成は、スキームIの好ましい合成である。
【化10】
【0028】
一般に、本発明による4-クロロキヌレニンの調製方法は、スキームIおよびIIに示されるように、以下の合成経路に沿って進行する。ステップ1では、保護されたセリンエステル(1)、例えば、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)は、まず、その対応するトシレート(2)/(2a)に変換される。ステップ2では、トシル基をヨウ素と置換して、ヨード中間体(3)/(3a)を形成する。ステップ3として、中間体(3)/(3a)のヨード基を、in situでヨード亜鉛試薬(4)/(4a)に変換し、次いで(同ステップの一部として)、L-4-クロロキヌレニン(8a)の完全に保護された形態である保護エステル中間体(6)、例えば、BOC保護メチルエステル中間体(6a)、を形成するために、一酸化炭素およびパラジウム(0)触媒[Pd]を使用して、脱離基Xを有する5-クロロアニリン化合物(5)、例えば、5-クロロ-2-ヨードアニリン(5a)、に結合される。保護されたエステル中間体(6)は、スキームIまたはスキームIIの合成において、次のステップの前に精製してもよい。ステップ4において、脱保護が生じ、中間体(6)を、L-4-クロロキヌレニン(7)のエステル、例えば、L-4-クロロキヌレニン(7a)のメチルエステルに変換し、次いで、酸性pHに調整後、L-4-クロロキヌレニン(8)、例えば、L-4-クロロキヌレニン(8a)の酸形態にエステル(7)の変換を行う。ステップ4における脱保護ステップは、当該技術分野で既知のように使用される特定の保護基に適切な反応条件を使用して、逐次的、または平行して行うことができる。
【0029】
本発明の一つの実施形態は、スキームIによる4-クロロキヌレニン化合物(8)の調製方法である。本発明の別の実施形態は、下に記載のステップ1~4を使用して、スキームIにより4-クロロキヌレニン(8)を調製する方法である。以下の実施例は、本発明の方法の付加的なステップおよび好ましい実施形態を記載する。
【0030】
スキームIのステップ1では、好適な反応条件下で、保護されたセリンエステル(1)をトルエンスルホニルクロリドと反応させて、保護されたセリンエステルをその対応するトシレート(2)に変換する。好ましい実施形態では、1~2モル当量のトルエンスルホニルクロリドが、-50℃~50℃、-40℃~40℃、-30℃~30℃、-20℃~20℃、-10℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃の範囲の反応温度で使用され得る。さらに好ましい実施形態では、ステップ1は、触媒量の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で行われ、任意選択的に、トシレート(2)を単離して再結晶化することを含む。
【0031】
スキームIのステップ2では、好適な反応条件下、光の非存在下、不活性雰囲気下で、トシレート(2)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウム、好ましくはヨウ化ナトリウムと反応させて、トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3)を形成する。好ましい実施形態では、反応温度は、-20~60℃、-10~50℃、0~40℃、より好ましくは10~30℃の範囲であってよい。さらに好ましい実施形態では、ステップ2は、0℃~40℃、0℃~30℃、0℃~20℃、より好ましくは0℃~10℃の範囲の温度で、反応混合物を水中に水性クエンチして、ヨード中間体(3)を沈殿させることを含み、任意選択的に、ヨード中間体(3)を再結晶することを含む。
【0032】
スキームIのステップ3では、好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3)をin situで亜鉛試薬(4)に変換し、好適な反応条件下、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4)を化合物(5)と反応させるカルボニル化反応を介して、保護されたエステル化合物(6)を形成する。好ましい実施形態では、反応温度は、0~50℃、10~40℃、15~35℃、より好ましくは20~30℃の範囲であってよい。カップリング反応に使用されるパラジウム(0)触媒を使用することができる。例えば、Colacot,Platinum Metals Rev.,2012,56,(2),110-116を参照されたい。Pd(0)触媒の配位子としては、例えば、dppm、dppe、dppp、dcpe、PPh3、P(シクロヘキシル)3、P(t-Bu)3、P(C6F5)3、P(2,4,6-MeC6H2)3等が挙げられる。好ましいPd(0)触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、([Pd(PPh3)4]またはテトラキスPd(0))およびビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。ステップ3の好ましい実施形態では、パラジウム(0)触媒[Pd]は、テトラキスPd(0)であり、持続的な溶存CO濃度は、COガスの連続的な表面下添加またはCOガス圧によって維持される。カルボニル化反応混合物中へのCOガスの連続的な表面下添加またはCOガス圧による添加は、好ましくは反応混合物の総容量に対して約2~8%(好ましくは約4%)の定常状態の気泡容量を提供する速度で行われる(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。好ましいCO圧は、1psig~100psigの範囲である。COの連続的な表面下添加で操作するには、1~5psigのCO圧が好ましい。連続的に維持されたCO加圧を有する閉鎖型加圧反応器で操作するには、20~100psigのCO圧が好ましい(より好ましくは80~100psig)。ステップ3に続いて、任意選択的なステップで、保護されたエステル化合物(6)を精製してもよい。
【0033】
本発明の別個の実施形態は、化合物3から化合物6を調製する方法である
【化11】
本発明のこの実施形態では、基R、PGおよびR
1は、好ましい実施形態を含む上に記載のものと同じである。この方法は、スキームIのステップ3についてちょうど記載されたものと同じ方法で達成され、その好ましい実施形態を含む。以下の実施例は、この付加的なステップおよび好ましい実施形態ならびに本発明の他の方法を記載する。
【0034】
スキームIのステップ4では、好適な反応条件下、光の非存在下で、保護されたエステル化合物(6)を脱保護して、いずれの保護基PGも除去し、R1がNO2である場合はNO2基をNH2基に還元して、エステル(7)を形成し、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、エステル(7)を脱保護(加水分解)して、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8)を形成する。好ましい実施形態では、反応温度は、-20~60℃、0℃~50℃、10~40℃、15~35℃、より好ましくは20~30℃の範囲であってよい。脱保護および還元反応は、単一のステップまたは複数のステップで行われる。好ましい実施形態では、ステップ4は、保護されたエステル化合物(6)を脱保護して、ジオキサン中でHClを使用して、いずれの保護基PGを除去し、単離された固体を空気または湿気に曝すことなく、光の非存在下で、エステル(7)を、二塩酸塩のような酸塩として単離する。固体状態で敏感な空気または湿気への曝露は、計画外の/意図しない酸加水分解をもたらす可能性がある。次いで、別個の脱保護ステップでは、pH10.5~14.0、11.0~13.5、11.5~13.0、より好ましくはpH12.0~12.5で、(7)を加水分解し、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8)を形成する。(7)の加水分解は、LiOH、NaOH、およびKOHから選択される水性塩基、最も好ましくはLiOHを用いるような、当該技術分野で既知の方法によって達成することができる。その調整は、後述するように、HClのような水性酸で、pH8、7または6.5未満、好ましくはpH4.8~6.0に酸性化してもよい。
【0035】
本発明の別の実施形態では、上記スキームIIにより、L-4-クロロキヌレニン(8a)を調製する。本発明の別の実施形態では、以下に記載のステップ1~4を使用して、スキームIIにより、L-4-クロロキヌレニン(8a)を調製する方法である。以下の実施例は、本発明の方法の付加的なステップおよび好ましい実施形態を記載する。スキームIIに示される本発明の方法では、粗L-4-クロロキヌレニン(8a)に対する全体的な収率は、32%~39%であり、これは、全体的な収率が4%~6%である国際特許出願第WO2014/152835号に報告された合成のような以前の合成に対して有意な改善である。
【0036】
スキームIIのステップ1では、好適な反応条件下で、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)をトルエンスルホニルクロリドと反応させて、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)をその対応するトシレート(2a)に変換する。好ましい実施形態では、1~2モル当量のトルエンスルホニルクロリドが、-50~50℃、-40~40℃、-30~30℃、-20~20℃、-10~10℃、より好ましくは-5~5℃の範囲の反応温度で使用され得る。さらに好ましい実施形態では、ステップ1は、触媒量の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で行われ、任意選択的に、トシレート(2a)を単離して再結晶化することを含む。
【0037】
スキームIIのステップ2では、好適な反応条件下、光の非存在下、不活性雰囲気下で、トシレート(2a)をヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウム、好ましくはヨウ化ナトリウムと反応させて、トシル基をヨウ素で置換し、対応するヨード中間体(3a)を形成する。好ましい実施形態では、反応温度は、-20~60℃、-10~50℃、0~40℃、より好ましくは10~30℃の範囲であってよい。好ましい実施形態では、ステップ2は、0℃~40℃、0℃~30℃、0℃~20℃、より好ましくは0℃~10℃の範囲の温度で、反応混合物を水中に水性クエンチして、ヨード中間体(3a)を沈殿させることを含み、任意選択的に、ヨード中間体(3a)を再結晶することを含む。
【0038】
スキームIIのステップ3では、好適な反応条件下、光の非存在下で、ヨード中間体(3a)をin situで亜鉛試薬(4a)に変換し、パラジウム(0)触媒[Pd]の存在下で、かつ連続的な表面下CO添加および/またはCO圧のいずれかにより持続的な溶存CO濃度を維持しながら、亜鉛試薬(4a)を5-クロロ-ヨードアニリン化合物(5a)と反応させるカルボニル化反応を介して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を形成する。好ましい実施形態では、中間体(3a)のin situでの亜鉛試薬(4a)への変換は、
0~50℃、10~40℃、15~35℃、より好ましくは23~27℃の範囲、または25℃の反応温度で行ってもよく、次いで、カルボニル化反応は、15~35℃、より好ましくは20~26℃の範囲の反応温度で行ってもよい。カップリング反応に使用されるパラジウム(0)触媒を使用することができる。例えば、Colacot,Platinum Metals Rev.,2012,56,(2),110-116を参照されたい。Pd(0)触媒の配位子としては、例えば、dppm、dppe、dppp、dcpe、PPh3、P(シクロヘキシル)3、P(t-Bu)3、P(C6F5)3、P(2,4,6-MeC6H2)3等が挙げられる。好ましいPd(0)触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、([Pd(PPh3)4]またはテトラキスPd(0))およびビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。ステップ3の好ましい実施形態では、パラジウム(0)触媒[Pd]は、テトラキスPd(0)であり、持続的な溶存CO濃度は、COガスの連続的な表面下添加またはCOガス圧によって維持される。カルボニル化反応混合物中へのCOガスの連続的な表面下添加またはCOガス圧による添加は、好ましくは反応混合物の総容量に対して約2~8%(好ましくは約4%)の定常状態の気泡容量を提供する速度で行われる(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。好ましいCO圧は、1psig~100psigの範囲である。COの連続的な表面下添加で操作するには、1~5psigのCO圧が好ましい。連続的に維持されたCO加圧を有する閉鎖型加圧反応器で操作するには、20~100psigのCO圧が好ましい(より好ましくは80~100psig)。ステップ3に続いて、任意選択的なステップで、保護されたエステル化合物(6a)を精製してもよい。
【0039】
本発明の別個の実施形態は、化合物3aから化合物6aを調製する方法である
【化12】
本発明のこの実施形態では、スキームIIのステップ3についてちょうど記載されたものと同じ方法で(6a)の調整が達成され、その好ましい実施形態を含む。以下の実施例は、この付加的なステップおよび好ましい実施形態ならびに本発明の他の方法を記載する。
【0040】
スキームIIのステップ4では、好適な反応条件下、光の非存在下で、BOC保護エステル化合物(6a)を脱保護して、保護基を除去し、メチルエステル(7a)を形成し、単離された固体を空気または湿気に曝さないように注意して、次いで、好適な反応条件下、空気に曝すことなく、光の非存在下で、メチルエステル(7a)を脱保護(加水分解)して、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8a)を形成する。好ましい実施形態では、反応温度は、-20~60℃、0℃~50℃、10~40℃、15~35℃、より好ましくは20~30℃の範囲であってよい。脱保護および還元反応は、単一のステップまたは複数のステップで行われる。好ましい実施形態では、ステップ4では、ジオキサン中でHClを使用して、BOC保護メチルエステル化合物(6a)を脱保護して、単離された固体を空気または湿気に曝すことなく、光の非存在下で、二塩酸塩のようなメチルエステル(7a)を単離する。空気または湿気への曝露は、計画外の/意図しない酸加水分解をもたらす可能性がある。次いで、別個の脱保護ステップでは、pH10.5~14.0、11.0~13.5、11.5~13.0、より好ましくはpH12.0~12.5で、(7a)を加水分解し、酸性pHに調整後、4-クロロキヌレニン(8a)を形成する。(7)の加水分解は、LiOH、NaOH、およびKOHから選択される水性塩基、最も好ましくはLiOHを用いるような、当該技術分野で既知の方法によって達成することができる。その調整は、後述するように、HClのような水性酸で、pH8、7または6.5未満、好ましくはpH4.8~6.0に酸性化してもよい。
【0041】
本発明の別個の実施形態は、化合物(6a)からのL-4-クロロキヌレニン(8a)の調製方法である。
【化13】
本発明のこの実施形態では、スキームIIのステップ4についてちょうど記載されたものと同じ方法で(8a)の調整が達成され、その好ましい実施形態を含む。以下の実施例は、この付加的なステップおよび好ましい実施形態ならびに本発明の他の方法を記載する。
【0042】
別の実施形態では、本発明はまた、式(6a)の化合物に関する。
【化14】
【0043】
別の実施形態では、本発明はまた、式(7a)の化合物、
【化15】
または、その酸付加塩に関する。好ましくは、酸付加塩は、二塩酸塩である。
【0044】
スキームIまたはスキームIIによる本発明の方法は、スキームIの4-クロロキヌレニン生成物(8)またはスキームIIのL-4-クロロキヌレニン生成物(8a)を精製するためにさらなるステップを含んでもよい。それらの精製ステップは、pH調整として、水性酸、例えばHClを用いて、4-クロロキヌレニン(8)/L-4クロロキヌレニン(8a)を遊離酸としてアルカリ性溶液から単離し、pHを8、7または6.5未満のpH、好ましくは4.8~6.0のpHにするステップと、単離された遊離酸(8)/(8a)を2未満のpH、好ましくは0.5~0.9のpHで水性酸中に溶解するステップと、pHを4.5~6.5、好ましくは4.8~6.0のpHに調整することによって遊離酸(8)/(8a)を沈殿させるステップと、沈殿した遊離酸(8)/(8a)を収集するステップと、収集した遊離酸(8)/(8a)を乾燥させ、任意選択的に、当該技術分野で既知の有機溶媒または有機溶媒混合物を使用して収集された遊離酸(8)/(8a)を粉砕し、粉砕された遊離酸(8)/(8a)を乾燥させるステップと、を含んでもよい。遊離酸(8)/(8a)を沈殿させることは、当該技術分野で既知のように、アンモニア水等の塩基を添加することによって行われ得る。任意選択的な粉砕ステップにおける有機溶媒は、メタノール/酢酸エチルであり得る。
【0045】
本発明の方法は、4-クロロキヌレニン化合物(8)、特にL-4-クロロキヌレニン(8a)の安全で、効率的で、拡張可能な立体制御製造に適した改善されたプロセス条件を有し、以前に報告された合成の限界を克服する。本発明の方法では、特にステップ4およびステップ5において、不純物形成を軽減し、制御するためのプロセス条件が開発された。例えば、そのような改善された条件には、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):
●ヨード置換保護アミノ酸の新鮮な調製により、分解を軽減する。
●Pd触媒の一酸化炭素による事前飽和により、不要な副反応を緩和する。
●一酸化炭素の効率的な導入と存在の維持により、高い一酸化炭素活性とPd触媒への可用性を保証し、連続的な表面下CO流またはCO圧いずれかを通して不要な副反応を軽減する。
●ヨードアニリンおよび一酸化炭素で事前に配位されたPd触媒への保護アミノ酸亜鉛酸塩の制御された逆添加(inverse addition)(亜鉛酸塩への芳香族ヨウ化物およびPd触媒の「オールイン」添加を含む従来技術条件とは異なる)。Jackson et al.,JCS Perkin 1,1997,865を参照されたい。また、THF中のセリン誘導有機亜鉛試薬および新規のエナンチオマーとして純粋なアレン、アセチレンおよびヘテロアリールアミノ酸の合成におけるその使用が記載されているDunn et al.,SYNLETT,1993,499を参照のこと。
●試薬の制御された添加により、スケールアップ時の安全性の向上とスケールアップ時の反応選択性の向上および製品品質の向上のため、スケールアップ時の反応温度をより良好に制御するために、反応の速度および発熱の速度を緩和する。
●反応選択性の向上により、低負荷分画クロマトグラフィーの必要性を回避する。
●最終生成物のエステル二塩酸塩を生じさせるアミノBOC脱保護のための含水ジオキサン中でのHClの使用、次いで、制御された弱塩基性条件下での別個のエステル加水分解、次いで、L-4-クロロキヌレン酸(8a)などの4-クロロキヌレニン生成物(8)を両性イオン状の中性形態として単離する制御された酸性化による、反応制御、選択性、効率を改善し、副生成物を減らすカップリング後の2ステップ脱保護の採用。これは、先行技術(Jacksonら)に記載されている(6)~(8)/(6a)~(8a)の単一酸性二重脱保護を使用する場合に、副生成物形成に対する反応感度の増大を回避し、これはまた、不要な副生成物および他の分解副生成物経路を形成する傾向を増大させる。
●生成物および中間体の光、熱、酸、および塩基に対する感受性の認識により、そのような状態への曝露を軽減することによって、分解を緩和する。
【実施例】
【0046】
以下の実施例1~5は、本発明のプロセスに従って、かつスキームIおよびII(上記)に示されるように、L-4-クロロキヌレニンの実験室規模および大規模の合成を実証する。実施例1~5はまた、本発明のプロセスの改善についても説明するもので、これらは、個々に、および組み合わせて、本発明のプロセスの実施形態である。生成物L-4-クロロキヌレニンは、以下に記載の当該技術分野で既知の方法によってさらに精製され得る。
【0047】
実施例1-ステップ1
【化16】
実施例1.1-ステップ1:実験室規模
2リットルの丸底フラスコに、メカニカルオーバーヘッドスターラーを用いて、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)(0.91mol)およびピリジン(800mL)を窒素雰囲気下で充填した。0~5℃に冷却後、4-ジメチルアミノピリジン(91mmol)をフラスコに充填した。トルエンスルホニルクロリド(1.36mol)を、4回に分けて合計30分間かけて充填した。0~5℃で26時間撹拌した後、0.25mLの反応混合物を、水(20mL)およびジクロロメタン(20mL)を使用して抽出した。有機層を蒸発させると、淡黄色の油が残った。次いで、20mgの油をCDCl
3に溶解し、
1H NMR分光法によって、BOC-L-セリンメチルエステル(1a)の対応するトシレート(2a)への変換を決定した。反応完了後、反応混合物を、0~5℃の水(3L)に1時間かけて添加した。次いで、混合物を0~5℃で2時間撹拌し、その間に白色固体が沈殿した。次いで、固体をフリット漏斗を通して濾過し、水(3x400mL)ですすぎ、16時間脱液した。粗固体を、tert-ブチルメチルエーテル(1L)とともに5Lの丸底フラスコに充填した。溶液を40℃に温め、この時点で全ての固体が溶解した。相分離を行い、下部の水層を排出し、廃棄した。35~40℃の温度を維持しながら、水(30mL)をフラスコに充填し、5分間撹拌した。攪拌を停止し、下部の水層を排出し、廃棄した。35~40℃で、残りの有機層に45分間かけてヘプタン(2L)を添加した。ヘプタンを完全に添加後、溶液を0~5℃に冷却し、2時間撹拌した。白色固体を、フリット漏斗を使用して濾過した。フラスコを濾液を使用してすすぎ、次いで、きれいなヘプタン(2x20mL)で洗浄した。固体を1時間脱液し、次いで周囲温度で20時間真空乾燥オーブンに入れ、純粋な生成物2aを82%の収率で得た。
【0048】
実施例1.2-ステップ1:大規模
2aの合成:1a(7.00Kg、31.93mol、1.00当量)を、きれいな乾燥した容器中で秤量し、次いで窒素パージされた50Lのガラス反応器(反応器A)に充填した。無水ピリジン(27.38Kg、4容量)を反応器に充填した。一部のピリジンを使用して、1aに使用される容器をすすぎ、次いで、すすぎ液を反応器に充填した。反応混合物を窒素下で約9分間、約15℃で撹拌し(目標:10~30℃)、その後、1時間46分かけて-3.4℃に冷却した(目標:-5~0℃)。きれいな乾燥した容器中で予め秤量されたDMAP(392.0g、3.209mol、0.10当量)を一度に反応器に充填した。反応混合物を、-3.7℃で5分間撹拌した。TsCl(9.1Kg、1.5当量)を、-5~0℃で1時間36分かけて4回に分けて充填した。第1のTsCl部分(2.28Kg)は、5分間かけて反応器に充填した。反応混合物を、41分間撹拌した。第2のTsCl部分(2.26Kg)は、4分間かけて反応器に充填した。反応混合物を、20分間撹拌した。第3のTsCl部分(2.29Kg)は、2分間かけて反応器に充填した。反応混合物を、19分間撹拌した。第4の最終TsCl部分(2.27Kg)は、5分間かけて反応器に充填した。
【0049】
その後、反応混合物を0±5℃で18時間41分撹拌し、次いで1H NMRで確認した。1aの1.5%(2aに対する積分)で、反応が不完全であった。反応物を0±5℃でさらに1時間44分撹拌し、次いで1H NMRによって確認した。結果は、1.4%の1aを残して(2aに対する積分)、反応が完了したことを示した。
【0050】
粗2aの沈殿:必要な総ワークアップ容量(約150L)に基づいて、2つの反応器(50Lおよび100L)を使用して、生成物の沈殿を二分して行った。ワークアップ前の総反応容量は約42Lであった。反応容量の3分の1を、沈殿用に50L反応器(反応器B)に移し、反応容量の3分の2を、沈殿用に100L反応器(反応器C)に移すことにした。
【0051】
沈殿#1:脱イオン(DI)水(34.99Kg、1aに対して15容量)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Bに充填した。バッチを4.5℃(目標:3~10℃)に冷却した。反応混合物の一部(約14L、バッチの1/3)を、1時間25分かけて冷水中にゆっくりと移した。最初に、反応混合物を2リットル移し、添加を休止し、クエンチ混合物を45分間撹拌した。固体沈殿がすぐに観察されたが、油性生成物の一部が冷えた反応器壁に沈殿した(ジャケット温度設定点:1℃)。冷えた壁面での油沈殿を回避するために、ジャケット温度を5℃に上昇させると、バッチ温度が12.1℃に上昇した。反応混合物の移送を再開し、反応混合物を完全に移した後、予め秤量されたピリジン(1.14Kg、移送すすぎ用)を充填した。クエンチしたバッチを10±2℃で61分間撹拌した。スラリーをフィルター漏斗に移した。底弁が一部の粘着性固体で閉塞したため、真空吸引管を使用して上部よりバッチを移した。スラリーの濾過に約2時間かかり、ウェットケーキを10分間脱液した。フィルター漏斗中のウェットケーキを水で洗浄し(4x4.67kg、または4x2容量、1aに対して)、フィルター漏斗に真空を適用することによって14時間脱液して、8.09kgの湿状の粗2a.を得た。
【0052】
沈殿#2:DI水(70Kg、1aに対して15容量)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Cに充填した。クエンチ水を6.5℃(目標:3~10℃)に冷却した。計画された約28Lの全反応混合物の移送のうち、約14Lの反応混合物が、操作者の過誤により、5分間かけて冷水中に移された。クエンチ混合物の底に多量の油層が沈殿し、突然凝固した。沈殿した固体の一部が反応器の底に蓄積し、攪拌器を停止させた。クエンチへのバッチ移送を中止した。反応器C中のクエンチされた物質を、0~10℃で5時間沈降させた。
【0053】
反応器C中の上部の透明な溶液(~40L)を反応器B(以前の沈殿に使用された)に移した。反応器Aからの残りのクエンチされていない反応混合物(約14L)を、2aの沈殿のために、0~15℃で40分間かけて反応器Bにゆっくりと移した。得られたスラリーを0~15℃で17時間撹拌した。
【0054】
反応器Cからのクエンチされたバッチ部分を5℃で20時間沈降させ、次いでフィルター漏斗に移した。底弁が一部の固体で閉塞したため、真空下で、上部よりバッチを移した。移送中、再利用される濾液を使用して、反応器Cをすすいでフィルター漏斗上の生成物ケーキに流した。反応器Cからのバッチ移送が完了した後、反応器Bからのバッチ部分をフィルター漏斗内のフィルターケーキの上に移した。濾過に6時間を要した。次いで、ウェットケーキを水で洗浄し(4x9.33Kg、または4x2容量、1aに対して)、最終的に真空を適用して15時間30分脱液し、20.34Kgの湿状の粗2aを得た。
【0055】
実験室規模の実施例1.1では、水クエンチ/沈殿は良好に機能するが、大規模では、混合条件が慎重に制御されなければ、撹拌不能な混合物が得られる。粗2aは、均一な沈殿を確保する慎重に制御された添加により、ピリジン中の反応混合物を冷水に加えることによって沈殿させる必要がある。冷水クエンチへの反応混合物の添加は、特に添加開始時に、緩徐で良好に制御されていなければならない。流量制御ポンプを利用すると、反応混合物とクエンチ水を同時に共混合して(約3:1 v/v)、良好に制御された沈殿が得られる。ゆっくり添加しても、反応器の壁に多少の油性沈殿が観測された。すべての油性物質を濾過可能な固体に変換するには、一晩の攪拌で十分であった。粗2aのクエンチおよび沈殿の後、スラリーを0~15℃で少なくとも12時間撹拌すると、容易に移送可能なスラリーが得られる。流量制御ポンプを利用すると、反応混合物とクエンチ水を同時に共混合して(約3:1 v/v)、良好に制御された沈殿が得られる。
【0056】
湿状の粗2aの精製:固体をスラリー化して移送を容易にするためにMTBE(25.90Kg、1aに対して5容量)を使用し、合わせた湿状の粗2a(28.43Kg)を、窒素下で少しずつ反応器Aに移した。バッチを45℃に加熱し、45~47℃で18分間撹拌して、透明な溶液(二相性)を得た。底部の水層(約20L)を除去した。バッチを水で洗浄し(1.4L、0.2容量)、下部の水層を除去した。バッチを、40~50℃で、真空下(419~630トル)、1時間45分還流して、約75mLの水を除去した(Dean-Starkトラップ採取)。バッチを反応器Cに移した。バッチ温度を30~50℃に維持しながら、ヘプタン(47.88Kg、1aに対して10容量)を62分間かけて反応器Cに添加した。スラリーを3時間かけて0±5℃に冷却し、0±5℃で12時間40分撹拌した。バッチを1時間45分かけてフィルター漏斗に移した。底弁が一部の固体で閉塞したため、真空吸引を使用して上部からバッチを移した。移送中、再利用される濾液を使用して、反応器をすすいでフィルター漏斗上に流した。フィルターケーキを冷ヘプタン(9.58Kg、0℃、1aに対して2容量)で洗浄し、次いで1時間40分脱液した。湿状のフィルターケーキ(13.389Kg)を10個のガラス乾燥トレイに移し、20~40℃で72時間かけて真空下(≦50トル)で乾燥させ、乾燥した2a(9.388Kg、収率79%)を得た。
【0057】
実施例1.3-ステップ1:2aの大規模調製
2aの合成(反応):1a(7.00Kg、31.93mol、1.00当量)を、きれいな乾燥した容器中で秤量し、次いで窒素パージされた50Lのガラス反応器に充填した。無水ピリジン(27.40Kg)を反応器に充填した。反応混合物を窒素下で約20分間、約22℃で撹拌し(目標:10~30℃)、その後、2時間1分かけて-1.8℃(目標:-5℃~0℃)に冷却した。きれいな乾燥した容器中で予め秤量されたDMAP(392g、3.21mol、0.10当量)を一度に反応器に充填した。反応混合物を-2.7~-3.9℃で15分間撹拌した。トシルクロリド(TsCl)(9.10Kg、1.5当量)を、-5~0℃で2時間56分かけて4回に分けて充填した。
第1のTsCl部分(2.30Kg)は、4分間かけて反応器に充填した。反応温度を、1時間41分かけて-5~0℃に調整した。反応混合物を-5~0℃で20分間撹拌した。
第2のTsCl部分(2.22Kg)は、1分間かけて反応器に充填した。反応温度を、13分かけて-5~0℃に調整した。反応混合物を-5~0℃で10分間撹拌した。
第3のTsCl部分(2.30Kg)は、3分間かけて反応器に充填した。反応温度を、5分間かけて-5~0℃に調整した。反応混合物を-5~0℃で12分間撹拌した。
第4の最終TsCl部分(2.28Kg)は、4分間かけて反応器に充填した。反応温度を、1分間かけて-5~0℃に調整した。反応混合物を-5~0℃で15分間撹拌した。
【0058】
反応混合物を13分間かけて-5~5℃に調整し、次いで0±5℃で16時間20分撹拌し、次いでサンプリングし、1H NMRによって確認した。残っている2aに対して1aが0.02%であり、反応が不完全であった(目標:≦0.01)。反応物を、0±5℃でさらに1時間35分撹拌し、次いでサンプリングし、1H NMRによって確認した。結果は、残っている2aに対して1aが0.01%であり、反応が完了したことを示した。
【0059】
粗2aの沈殿(生成物の単離):このバッチの総算出ワークアップ容量(約150L)に基づいて、バッチレコードにより、2つ反応器(50Lおよび100L)で生成物を沈殿する必要があった。総反応容量は約45Lであった。反応容量の3分の2を、沈殿用に100L反応器に移し、反応容量の3分の1を、沈殿用に50L反応器に移すことにした。
【0060】
100L反応器における沈殿#1(バッチの2/3用)および粗2aの単離:DI水(70.01Kg)をきれいなカーボーイ中で秤量して、冷蔵庫で予冷した(6~7℃)。予め冷却したDI水(約3.5L)をペリスタルティックポンプを介して100Lの反応器に移し、次いでピリジン(1.27Kg)を添加した。備考:このステップでの反応器内のDI水およびピリジンの比率は、約10:3(v/v)である必要がある。混合物を6.8℃(目標:3~10℃)に調整した。カーボーイ中の予め冷却されたDI水および30Lの反応混合物を全て、バッチ温度を3~10℃に維持しながら、2台のペリスタルティックポンプを介して、167分かけて100L反応器に同時に移した。反応混合物の移送ラインを、ピリジン(1.26Kg)ですすいだ。バッチを6.6℃(目標:0~10℃)に調整した。反応混合物を0~10℃で17時間撹拌し、9時間かけてフィルター漏斗中で濾過した。フィルター漏斗に真空を適用することによって、フィルターケーキをフィルター漏斗中で30分間脱液した。次いで、ウェットケーキをDI水(4×9.33Kg)で洗浄し、フィルター漏斗に真空を適用することによって、フィルター漏斗中で9時間29分吸引乾燥させ、粗2aのウェットケーキを得た(負荷#1、21.65Kg)。
【0061】
50L反応器における沈殿#2(バッチの1/3用)および粗2aの単離:DI水(35.01Kg)をきれいなカーボーイ中で秤量して、冷蔵庫で予冷した(7℃)。予め冷却したDI水(約1.75L)をペリスタルティックポンプを介して50Lの反応器に移し、ピリジン(0.51Kg)を添加した。備考:このステップでの反応器内のDI水およびピリジンの比率は、約10:3(v/v)である必要がある。混合物を3.2℃(目標:3~10℃)に調整した。カーボーイ中の予め冷却されたDI水および15Lの残りの反応混合物(残り全て)を全て、バッチ温度を3~10℃に維持しながら、2台のペリスタルティックポンプを介して、113分かけて50L反応器に同時に移した。反応混合物の移送ラインを、ピリジン(0.63Kg)ですすいだ。バッチを8.6℃(目標:0~10℃)に調整した。反応混合物を0~10℃で15時間47分撹拌し、5時間33分かけてフィルター漏斗中で濾過した。フィルター漏斗に真空を適用することによって、フィルターケーキをフィルター漏斗中で25分間脱液した。次いで、ウェットケーキをDI水(4x4.67Kg、または4x2L/Kg 1aインプット)で洗浄し、フィルター漏斗に真空を適用することによって、フィルター漏斗中で14時間分吸引乾燥させ、粗2aのウェットケーキを得た(負荷#2、10.20Kg)。
【0062】
粗2aの精製(再結晶化):合わせた湿状の粗2a(31.85Kg)を50L反応器に移し、窒素下で、MTBE(25.91Kg)を添加した。この混合物を42~44℃に加熱し、44~45℃で15分間撹拌して、透明な溶液を得た(二相性、ラグ層は観察されず)。底部の水層(約24L)を除去した。バッチを水(2.8L)で洗浄し、下部の水層を除去した。Dean-Starkトラップを使用して、バッチを37~45℃で1時間50分真空下(400-500トル)で還流して、約155mLの水を除去した。バッチを100Lの反応器に移した。バッチ温度を45~48℃に維持しながら、n-ヘプタン(47.90Kg)を80分かけて100L反応器に添加することによって、溶液を希釈した。スラリーを14時間40分かけて1.13℃(目標:0±5℃)に冷却し、1.1℃(目標:0±5℃)で2時間撹拌した。バッチを15分間かけてフィルター漏斗に移した。フィルター漏斗に15分間真空を適用することによって、フィルター漏斗中のフィルターケーキを脱液し、次いで冷n-ヘプタン(9.60Kg、0℃)で洗浄し、次いで3時間脱液した。湿状のフィルターケーキを乾燥トレイに移し、20~40℃で24時間かけて真空下(≦50トル)で乾燥させ、乾燥した2a(9.75Kg、収率81.8%)を得た。NMR純度(1H NMR)は99%であり、KF滴定により0.59%の残留水分含量を有した。
【0063】
ステップ1での好ましいプロセスパラメータおよび実施形態-2/2aの調製
以下に列挙するものは、上記スキームI、II、およびIIIに示されるように、本発明の合成におけるステップ1についての特定の好ましいプロセスパラメータである。当ステップのような特定のステップについて記載される各好ましいプロセスパラメータは、本発明の別個の実施形態である。各ステップにおける好ましいプロセスパラメータは、好ましいプロセスパラメータの各組み合わせがまた本発明の別個の実施形態であるように、他のステップのプロセスパラメータとともに用いられ得る。1つまたは複数のステップにおいて1つまたは複数の好ましいプロセスパラメータを有する本発明による合成もまた、本発明の別の実施形態である。ステップ1の好ましいプロセスパラメータには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●トシルクロリド添加時の反応温度が-5~0℃(温かいと不要なアルケン副生成物につながる);
●反応完了のための反応温度が-5~5℃(温かいと不要なアルケン副生成物につながる);
●反応終点における出発物質対生成物の最終モル比が≦0.01(高いと不要な下流不純物につながる);
●再結晶温度が最大≦45℃(温かいと不要なアルケン副生成物につながる);
●乾燥温度が20~40℃(温かいと不要なアルケン副生成物につながる);
●2/2a純度が≧98%(NMR);
●1/1aに関してトシルクロリドのモル当量の範囲が1.0~2.0(好ましくは1.5)(少ないと不要な下流不純物につながり、多くても不要な下流不純物につながり得る);
●反応速度を向上させる触媒としての4-ジメチルアミノピリジンのモル当量(触媒量)の範囲が0.01~0.20(好ましくは0.10)(少量では有効性が低減または排除され、多いと不要な下流不純物につながり得る);
●トシルクロリド添加中に反応温度を-5~0℃に維持するために必要な、トシルクロリドの制御された添加(速度および/または部分制御)(不要なアルケン副生成物の形成を軽減する);
●水/ピリジンの最終比率が約10/3(v/v)である、水/ピリジン混合物からの反応混合物の温度制御された(0~10℃)沈殿および顆粒化による2/2aの単離、(不要なアルケン副生成物の形成を軽減する);および/または
●メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)/n-ヘプタン(0.5~0.6/1.0 w/w、好ましくは約0.54/1.0w/w)の混合物からの、2/2aの再結晶化(最終純度の制御を提供する)。
【0064】
実施例2-ステップ2
【化17】
実施例2.1-ステップ2:実験室規模
暗中で以下の手順全体を実施した。ホイルで覆われた2リットルの丸底フラスコに、BOC-L-セリンメチルエステル2aのトシレート(0.40mol)およびアセトン(855mL)を窒素雰囲気下で充填した。攪拌しながらヨウ化ナトリウム(1.0mol)を一度に添加し、薄層クロマトグラフィーによって反応が完了した時点までの(ヘプタン中30%の酢酸エチル、KMnO
4染色、2aの消失)22時間攪拌し続けた。反応混合物を1時間かけて0~5℃の水(3L)にゆっくりと添加し、その温度で2時間撹拌した。粗固体を、フリット漏斗を使用して濾過し、水(3x50mL)で洗浄し、次いで16時間脱液した。1リットルの丸底フラスコに、粗固体およびヘプタン(225mL)を充填した。混合物を35~40℃に温め、この時点で全ての固体が溶解した。相分離を行い、下部の水層を排出し、廃棄した。有機層を-15℃に冷却し、2時間撹拌した。固体をフリット漏斗を使用して濾過し、濾液で2回、次いで、きれいな0℃のヘプタン(20mL)ですすいだ。固体を周囲温度で真空乾燥オーブンで24時間乾燥させ、純粋なヨード中間体3aを80%の収率で得た。
【0065】
実施例2.2-ステップ2:大規模
3aの合成:2a(9.32Kg、24.96mol、1.00当量)を秤量し、窒素パージされた100Lのガラス反応器(反応器A)に充填した。アセトン(42.0Kg、5.7容量)を反応器Aに充填した。反応混合物を、窒素下、約15℃(目標:10~30℃)で6分間撹拌して、固体を溶解した。反応混合物が感光性であるため、反応器をアルミホイルで覆った。バッチ温度を10~30℃に維持しながら、NaI(9.36Kg、2.50当量)を30分間かけて反応器Aに充填した。反応はやや放熱性であった:部分#1:2KgのNaIを一度に添加したとき、温度が23.4℃から25.7℃に上昇した(ジャケット温度は20℃)、部分#2:2KgのNaIを一度に添加したとき、温度が25.7℃から27.6℃に上昇した(ジャケット温度は20℃)。外部冷却(ジャケット温度は20℃)および残りの部分の添加制御を使用して、プロセス温度を目標範囲内に維持した。反応混合物を20~30℃で21時間30分撹拌し、次いでTLCによって確認した。TLCにより、2aスポットが完全に消失していたことから、反応が完了した。
【0066】
粗3aの沈殿:必要な総ワークアップ容量(合計約260L)に基づいて、生成物の沈殿を100L反応器(各約87L、反応器A)で3回に分けて行った。ワークアップ前の反応混合物の総容量は、約66Lであった。反応混合物を、反応器Aからアルミホイルで覆われた2つの50L反応器(反応器Bおよび反応器C)に移した。反応容量の3分の1(約22L)を1回の沈殿のために50L反応器(反応器B)に移し、反応容量の3分の2(約44L)を2回の沈殿のために別の50L反応器(反応器C)に移した。
【0067】
沈殿#1および濾過#1A:DI水(62.10Kg、2aに対して20容量)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。クエンチ水を4.8℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応器B中の反応混合物(約22L)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、1時間13分かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した;全体的な添加速度:約2L/5分。最初に、反応混合物を2リットル移し、添加を休止し、クエンチ混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。添加を再開し、添加が完了した後、バッチを5±5℃で84分間撹拌した。バッチを33分間かけてフィルター漏斗に円滑に移した。バッチを、フィルター漏斗上で1時間脱液した。
【0068】
沈殿#2および濾過#1B:DI水(62.11Kg、2aに対して20容量)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。クエンチ水を4.5℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応混合物(約22L、反応器Cからのバッチの1/2)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、42分間かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した;全体的な添加速度:約2L/4分。最初に、反応混合物を2リットル移し、添加を休止し、クエンチ混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。添加を再開し、添加が完了した後、バッチを5±5℃で48分間撹拌した。バッチを17分間かけて以前の濾過からの漏斗中のフィルターケーキ上に円滑に移した。バッチを13分間脱液した。フィルター漏斗中のウェットケーキを水で洗浄し(4x31.1Kg、または4x5容量、2aに対して)、フィルター漏斗に真空を適用することによって2時間脱液して、8.92Kgの湿状の粗3aを得た。
【0069】
沈殿#3および濾過#2:DI水(62.17Kg、(2a)に対して20容量)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。クエンチ水を2.6℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応混合物(約22L、反応器Cからのバッチの1/2)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、1時間かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した;全体的な添加速度:約2L/5分。最初に、反応混合物を2リットル移し、添加を休止し、クエンチ混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。添加を再開し、添加が完了した後、バッチを5±5℃で71分間撹拌した。
【0070】
バッチを、25分間かけてフィルター漏斗に円滑に移した。バッチを、12分間脱液した。フィルター漏斗中のウェットケーキを水で洗浄し(4x15.5kg、または4x5容量、2aに対して)、フィルター漏斗に真空を適用することによって2時間脱液して、3.49Kgの湿状の粗3aを得た。
【0071】
粗3aは、良好に制御された様式で、アセトン反応混合物を冷水に添加することによって沈殿させる必要がある。最初に、約2リットル(合計22Lのうち)の反応混合物を冷水クエンチに添加し、クエンチ混合物を5分間撹拌して、均一なスラリーを形成し、次いで残り(約20L)の反応混合物を1時間以上かけて連続的に添加した。得られたスラリーは均一であり、容易に濾過した。
【0072】
湿状の粗3aの精製:合わせた湿状の粗3a(12.41Kg)を窒素下で反応器Bに移し、続いてヘプタン(9.58Kg、(2A)に対して1.5容量)を移した。バッチを39.5℃に加熱し、約39℃で5分間撹拌して、透明な溶液(二相性)を得た。底部の水層(約5L)を除去した。バッチ(約20L)を、1時間13分かけて20℃に冷却した。冷却中、約29℃で3aの結晶化が起きた。スラリーを10~20℃で1時間撹拌し、次いで、16時間45分かけて-22.8℃に冷却した。
【0073】
冷えたバッチを-20±5℃で2時間20分撹拌した。バッチを、窒素パージ下で35分間かけて大きなPE袋に包まれたフィルター漏斗に移した。移送中、再利用される濾液を使用して、反応器をすすいでフィルター漏斗上の生成物ケーキに流した。窒素下で11分間脱液した後、フィルターケーキを冷ヘプタン(3.19Kg、0℃、(2a)に対して0.5容量)で洗浄し、次いで窒素下で2時間6分脱液した。湿状のフィルターケーキ(7.74Kg)を6個のガラス乾燥トレイに移し、周囲温度で1時間26分真空オーブン(≦50トル)で乾燥させ、次いで20~30℃(≦50トル)で70時間かけて乾燥した(3a)を得た(6.85Kg、収率83.3%(6.85Kg、収率83%、AUC純度99.29%)。乾燥後の最終含水量はわずか0.013であった。
【0074】
-20±5℃のヘプタン中の精製された3aのスラリーをフィルター漏斗に移送するのが遅かった。ヘプタンの容量が非常に少なかったため(再結晶の場合は1.5容量のみ)、固体が沈降し、反応器から残留した固体を洗い流すために再利用される母液が必要となった。反応器からの残留固体は、フィルター漏斗内へと容易にすすがれた。(3a)は感光性であるため、プロセス全体を、可能な限り光の曝露を最小限に抑える必要がある。また、3aは、空気に非常に敏感であるため、濾過は窒素雰囲気下で行わなければならない。(窒素保護なしでフィルター漏斗に真空を適用してウェットケーキの脱液を行う実験室での実験では、フィルターケーキの上部で(3a)が濃く(褐色)なった)。空気露出を最小限に抑えるために、Kilo Lab濾過操作を、一定の窒素パージ下、大型のPEバッグ内で行った。
【0075】
実施例2.3-ステップ2:3aの大規模調製
3aの合成(反応):2a(9.69Kg、25.96mol、1.00当量)を秤量し、窒素パージされた100Lのガラス反応器(反応器A)に充填した。アセトン(43.70Kg)を反応器Aに充填した。反応混合物を、窒素下、約15℃(目標:10~30℃)で10分間撹拌して、固体を溶解した。反応混合物が感光性であるため、反応器をアルミホイルで覆って、光を除外した。バッチ温度を10~30℃に維持しながら、NaI(9.73Kg、2.50当量)を、22分間かけて反応器Aに充填した。反応混合物を、約25℃(目標:20~30℃)で16時間15分撹拌し、次いでTLCによって確認した。TLCで2aが検出されず、反応が完了した。
【0076】
粗3aの沈殿(粗生成物の単離):必要な総ワークアップ容量(合計約268L)に基づいて、バッチレコードにより、生成物を3回に分けて100L反応器で(それぞれ約89L、反応器A)沈殿する必要があった。クエンチされる反応混合物の総容量は約64Lであった。反応混合物を、反応器Aから、光を除外するためにアルミホイルで覆われた2つの50L反応器に移した。反応器Aからの反応混合物の3分の1(約21L)を第1の沈殿用に50L反応器(反応器B)に移し、反応器Aからの反応混合物の3分の2(約43L)を第2および第3の沈殿用に別の50L反応器(反応器C)に移した。
【0077】
沈殿#1および濾過#1パートA:DI水(64.65Kg)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。バッチを3.5℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応器B中の反応混合物(約21L)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、33分間かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した。沈殿開始時、反応混合物を2リットル移し、流れを停止し、クエンチされた混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。移送を再開し、完全に移し終えた後、次いで、クエンチされたスラリーを5±5℃で57分間撹拌した。スラリーを35分かけてフィルター漏斗に移した。バッチを1時間脱液した。
【0078】
沈殿#2および濾過#1パートB:DI水(64.65Kg)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。バッチを3.5℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応混合物(約21L、反応器Cからの容量の1/2)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、32分間かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した。沈殿開始時、反応混合物を2リットル移し、流れを停止し、クエンチされた混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。移送を再開し、完全に移送を終えた後、次いで、クエンチされたスラリーを5±5℃で48分間撹拌した。バッチは、フィルター漏斗の中へと、フィルター漏斗にある以前の濾過からのウェットケーキの上に円滑に移された。フィルター漏斗中の合わせた固体を10分間脱液した。フィルター漏斗中のウェットケーキを水で洗浄し(4x32.3kg)、最後に、フィルター漏斗に真空を適用することによって、2時間3分脱液して、9.85Kgの湿状の粗3aを得た。
【0079】
沈殿#3および濾過#2:DI水(64.65Kg)をきれいな容器に秤量し、冷蔵庫で予冷した後、反応器Aに充填した。バッチを4.0℃(目標:0~5℃)に冷却した。反応混合物(約21L、反応器Cからのバッチの残りの1/2)を、バッチ温度を0~10℃に維持しながら、35分間かけて反応器A中の冷水中にゆっくりと移した。沈殿開始時、反応混合物を2リットル移し、流れを停止し、クエンチされた混合物を5分間撹拌した。すぐに固体沈殿が観察された。移送を再開し、完全に移し終えた後、次いで、クエンチされたスラリーを5±5℃で42分間撹拌した。バッチを18分かけてフィルター漏斗に円滑に移した。バッチを12分間脱液した。フィルター漏斗中のウェットケーキを水で洗浄し(4x16.2Kg)、最後に、フィルター漏斗に真空を適用することによって、2時間10分脱液して、5.90Kgの湿状の粗3aを得た。
【0080】
湿状の粗3aの精製(再結晶化):合わせた湿状の粗3a(15.75Kg)を窒素下で反応器B(50L)に移し、続いてn-ヘプタン(9.95Kg)を移した。バッチを35.1℃に加熱し、約36.0℃で6分間撹拌して、固体を溶解した。2つの透明な相の間にラグ層が観察され、一部の不溶性物質が観察された。バッチを35~40℃でインラインフィルター(10μm)を通して濾過し、ラグ層なしの透明な溶液(二相性)を得た。相分離のために14分間バッチを沈降させた。底部の水層(約8.5L)を除去した。バッチ(約20L)を、1時間35分かけて38℃から約23℃に冷却した。冷却中、23.2℃で3aの結晶化が起きた。結晶化の熱により、結晶化中にバッチ温度が28.8℃に上昇し、次いで60分間かけて17.5℃に低下した(最終ジャケット温度は10℃)。スラリーを10~20℃で1時間撹拌し、次いで14時間かけて-20.4℃に冷却し、次いで-20.4℃で2時間25分撹拌した。濾過を陽圧窒素雰囲気下で行った。
【0081】
バッチを13分間かけてフィルター漏斗に移した。窒素下で10分間脱液した後、フィルターケーキを冷n-ヘプタン(3.32Kg、0℃)で洗浄し、次いで窒素雰囲気下で2時間4分脱液した。湿状のフィルターケーキ(8.33Kg)を乾燥トレイに移し、周囲温度で1時間15分真空下(≦50トル)で乾燥させ、次いで20~30℃で88時間かけて乾燥した3aを得た(6.94Kg、収率81.3%)。3aの分析により、3aの純度は99.2%(HPLCによるAUC)であり、水含量は0.006%(KF)であることが示された。
【0082】
ステップ2での好ましいプロセスパラメータおよび実施形態-3/3aの調製
以下に列挙するものは、上記スキームI、II、およびIIIに示されるように、本発明の合成におけるステップ2についての特定の好ましいプロセスパラメータである。当ステップのような特定のステップについて記載される各好ましいプロセスパラメータは、本発明の別個の実施形態である。各ステップにおける好ましいプロセスパラメータは、好ましいプロセスパラメータの各組み合わせがまた本発明の別個の実施形態であるように、他のステップのプロセスパラメータとともに用いられ得る。1つまたは複数のステップにおいて1つまたは複数の好ましいプロセスパラメータを有する本発明による合成もまた、本発明の別の実施形態である。ステップ2の好ましいプロセスパラメータには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●反応混合物、生成物溶液、および単離された生成物を光曝露から保護し、光分解を回避する(不要な副生成物形成を軽減する);
●NaIを反応混合物に添加する間の温度範囲が10~30℃(好ましくは15~20℃)(不要な副生成物の形成を軽減する);
●反応温度が20~30℃(不要な副生成物の形成を軽減する);
●反応混合物の水への制御された水性クエンチおよび3/3aの沈殿のための温度範囲が0~10℃(不要な副生成物の形成を軽減する);
●再結晶化時の溶解温度が30~40℃(不要な副生成物の形成を軽減する);
●再結晶時の反応器のジャケット温度が≦50℃(不要な副生成物の形成を軽減する);
●最終の単離温度が-25~-15℃(制御された純度で高収率);
●乾燥温度が20~30℃(不要な副生成物の形成を軽減する);
●3/3aの純度が≧98.0%HPLC(AUC);
●2aのインプットに対するNaIが、2.0~3.0(好ましくは2.5)モル当量の範囲(少ないと不要な下流の不純物につながり、多いとコストが増加する);
●反応溶媒としてアセトン(不要な副生成物の形成を軽減する);および/または
●2/2aのインプット重量に対して約1/1w/wのn-ヘプタンからの再結晶化(制御された純度で高収率)。
【0083】
実施例3-ステップ3
【化18】
実施例3.1-ステップ3:実験室規模
500mLの丸底フラスコに亜鉛(0.54mol))、テトラヒドロフラン(39mL)、および1,2-ジブロモエタン(23mmol)を窒素雰囲気下で充填した。反応混合物を60℃に温め、60℃で5分間撹拌した。次いで、反応混合物を30~35℃に冷却し、トリメチルシリルクロリド(4.4mmol)をフラスコに充填した。反応混合物を30~35℃で30分間撹拌した。反応物を20~25℃に冷却した後、テトラヒドロフラン(180mL)中のヨード中間体(3a)(91mmol)を1時間かけてフラスコに充填した。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、その時点で、これを薄層クロマトグラフィー(ヘプタン中の30%酢酸エチル、メタノールクエンチ、KMnO
4染色、3aの消失)により完了とした。ポーター・フィッシャー圧力ボトルに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)(4.6mmol)およびテトラヒドロフラン(30mL)を窒素雰囲気下で充填した。次いで、窒素を溶液中に通気し、真空を適用した。次いで、一酸化炭素を溶液中に通気し、真空を適用した。次いで、一酸化炭素を真空なしで15分間反応物に通気した。次いで、ポーター・フィッシャー圧力ボトルに、テトラヒドロフラン(25mL)中の5-クロロ-2-ヨードアニリン(5a)(91mmol)を充填した。5-クロロ-2-ヨードアニリン(5a)を添加した後、一酸化炭素の通気を維持しながら、亜鉛試薬(4a)を1時間かけて500mLの丸底フラスコからポーター・フィッシャー圧力ボトルに移した。激しく撹拌しながら、一酸化炭素を反応物にさらに2時間通気した。次いで、通気装置を圧力継手のために切り替え、反応物を一酸化炭素(6x15psi)でパージし、次いで一酸化炭素下(3~4psi)で20時間放置した。反応物を窒素雰囲気下に戻した後、反応物を、酢酸エチルを用いて詰めたセライトのパッド(50%wt/wt)を通して濾過した。反応容器を酢酸エチル(3x100mL)ですすいだ。水(200mL)およびセライト(20%wt/wt)を濾液に加えて、5分間撹拌した。混合物をセライトパッド(50%wt/wt)を通して濾過し、酢酸エチル(150mL)ですすいだ。濾液を分液漏斗に移し、相分離を行った。下部の水層を排出し、廃棄した。水(150mL)を漏斗に充填し、溶液を3分間振盪した。相分離を行い、下部の水層を排出し、廃棄した。有機溶媒を減圧下で除去することで、粗中間体6aの定量的な収率が明らかになった。
【0084】
粗中間体6aの精製:粗中間体(6a)を50mLの酢酸エチルで溶解した。この溶液をシリカゲルパッド(300g)に負荷し、ヘプタン(500mL)、5%酢酸エチル/ヘプタン(1.5L)、10%酢酸エチル/ヘプタン(1.0L)、20%酢酸エチル(4.0L)でフラッシュした。生成物画分をHPLCによって分析し、画分(80%AUCを超える純度)を合わせた。合わせた生成物溶液を濃縮後、精製中間体(6)(27.0g、収率83%、AUC純度95.2%)を得た。
【0085】
実施例3.2-ステップ3:大規模
4aの合成:(単離されていない中間体):亜鉛(7.74kg、5.9当量)を窒素下で50Lガラス反応器(反応器A)に充填し、続いてTHF(7.63kg、1.3容量)および1,2-ジブロモエタン(0.941kg、0.25当量)を充填した。バッチを撹拌し、1.5時間かけて16℃から61℃に加熱した(目標:60~65℃)。バッチを60~65℃で7分間撹拌し、次いで65分間かけて36.8℃に冷却した。トリメチルシリルクロリド(109g、0.05当量)を13分間かけて添加した。バッチを32~38℃で58分間撹拌し、次いで、52分間かけて36.5℃から25.8℃に冷却した。(3a)(6.60kg、1.0当量)を周囲温度でTHF(29.3kg、5.0容量)を有する容器中に溶解した。(3a)溶液を、23±5℃で2時間10分間かけて反応器A(光を除外するためにアルミホイルで包まれた)に添加した。バッチを2時間20分間撹拌した。TLCにより、(3a)が完全に消失したことが示された。(4a)の合成が完了した。
【0086】
(4a)のin situ調製の一環として、亜鉛粉末の活性化が必要である。実験室規模の調製は容易に進行するが、製造規模では亜鉛粉末の懸濁を維持するために、混合のパラメータに注意が必要である。亜鉛粉末の沈降は、不完全な活性化と不完全な反応をもたらす。攪拌器の設定は、反応器/攪拌器の種類、幾何学的形状、および構成について経験的に決定される。
【0087】
(6a)の合成:容器中でテトラキス(テトラキス(トリフェニホスフィン)パラジウム(0)、1.161kg、0.05当量)をTHF(合計:5.87kg、数回のすすぎに使用、1.0容量)を混合し、スラリーを100Lガラス反応器(反応器B)に移した。反応器Bを窒素で4回パージした(真空を用いて反応器Bを200~250トルの圧力まで排気し、次いで窒素で真空を大気圧まで開放する)。反応器Bを一酸化炭素(CO)で4回パージした(真空を用いて反応器Bを200~250トルの圧力まで排気し、次いでCOで真空を大気圧まで開放する)。バッチを、表面下添加を介して、COで連続的にパージして、反応器B中のCO流量を4~6LPMで10分間維持した。表面下CO流量を4~6LPMに維持ながら、THF(4.87kg、0.83容量)に予め溶解した(5a)(5.08kg、1.0当量)の溶液を、9分間かけて反応器Bに添加した。表面下CO流量を4~6LPMに維持ながら、(4a)反応混合物を、20~26℃で61分間かけて、ペリスタルティックポンプを介して反応器Aから反応器Bに移した。反応器AをTHF(1.76kg)ですすぎ、すすぎ液を反応器Bに移した。少なくとも20時間、4~6LPMの流速での表面下CO通気によってCO圧を1~3psigに維持しながら、バッチを少なくとも20~26℃で撹拌した。20時間後のHPLC分析は、(6a)(対(5a)+(6a))が94.53%AUCに達したことを示した。気液界面にわたるCOガスの適切な物質移動は、表面積、ガス圧、および混合の組み合わせによって提供される必要がある。4時間後の第2の分析では、(6a)(対(5a)+(6a))が0.46%(HPLCにより94.99%AUCに)増加したことを示し、これは、反応完了を定義するために指定された目標増加率よりも小さかった(4時間以上の間隔での2つの連続試料にわたる(6a)についてのHPLC AUC増加が1.0%以下)。反応が完全であると判定された。
【0088】
反応後処理(ワークアップ):反応器Bにおける反応が完了した後、一酸化炭素の通気を停止し、システムを真空を用いて200トル以下の圧力まで排気し、次いで窒素で大気圧にパージした。このパージ処理を3回繰り返した。次いで、バッチを、表面下4~6LPMで、窒素で4時間パージして、ヘッドスペースでのCOレベルが35ppm以下に達した。バッチを15分間沈降させ、上部液体層を吸引管でデカントし、セライトパッド(4.7kg、酢酸エチルで事前に湿らせた)を通して43分間かけて濾過した。酢酸エチル(59.52kg、10容量)を反応器Bに添加して、反応器B中の固体をすすいだ。バッチのすすぎ液を15分間撹拌し、20分間沈降させた。上層を吸引管でデカントし、次いで濾過のためにフィルター漏斗に移した。濾液(約120L)を55ガロンHDPEドラム中で合わせ、水(39.6kg、6.0容量)を添加し、続いてセライト(2.3kg)を添加した。ドラム中の混合物をドラム撹拌器で15分間撹拌した。混合物の半分を、酢酸エチルで予め湿らせたセライトパッド(5.54kg)を通して、(洗浄した)反応器B中に濾過した。非常に遅い濾過が観察された(約4時間)。セライトパッドを酢酸エチル(8.96kg、1.5容量)で洗浄し、すすぎ液の濾液を反応器Bに移した。反応器B中の濾過混合物を5分間撹拌し、10分間沈降させた。底部の水層(約19L)を除去し、上部の有機層(約72L)を水(16.5kg、2.5容量)で洗浄した。下部の水層を除去し、上部の有機層(約64L)をきれいな容器に移した。混合物を含むドラム状セライトのあとの半分を、使用済のセライトパッドを介して濾過し、システムを酢酸エチル(8.93kg、1.5容量)ですすいだ。非常に遅い濾過および洗浄が観察された(3時間超)。濾過した混合物を反応器Bに移し、6分間撹拌し、8時間沈降させた。底部の水層を除去し、上部の有機層(約82L)を水(16.5kg、2.5容量)で洗浄し、次いで下部の水層を除去した。
【0089】
粗6aの単離:反応器B中の有機層(約82L)を、反応器B中で真空濃縮して約30Lにし、次いで、きれいな容器に保管していた保持有機層(約64L)を反応器B中に移した。反応器Bから合わせた6aに富む有機溶液を4つのロータリーエバポレーターフラスコ(Rota-vapor flask)に濃縮して、粗6a(油性物質、半固体、合計11.98kg)を得た。4つのロータリーエバポレーターフラスコからの単離された粗(6a)を、酢酸エチル(約10L)で溶解して、一部不溶性の赤色固体を有する溶液(20.25kg)を得た。次いで、酢酸エチル中の粗6a混合物を、シリカゲル精製によって6回に分けて精製した。
【0090】
シリカゲル上の粗6aの精製(6回の負荷):酢酸エチル(約20kg)に溶解した粗(6a)をシリカゲルパッド上に6回負荷して精製した(表1)。各負荷は、1.1kgの3aインプット(合計6.6kg)に基づいて計算された。(3a)インプットに対するシリカゲル重量は、10wt/wtであった。シリカパッドは、ヘプタン中のシリカゲルのスラリーから調製した。粗(6a)溶液を薄い均一層に塗布した後、重力流を用いて容量(v/v)ベースの酢酸エチル/ヘプタンの混合物(0%、5%、10%、20%および30%v/v酢酸エチル)で溶出し、生成物の画分を収集することによって精製を行った。分析後、各負荷の合わせた比較的純粋な画分(HPLCにより、≧70%AUCの6aを含有する)を活性炭で処理し、セライトパッドを通して濾過した。濾液を濃縮して、精製された6aを得た。全体の精製結果を、表1にまとめた。表2は、各負荷に使用される溶媒を列挙する。
【表1】
【表2】
【0091】
精製(6a)/酢酸エチル溶液の全てを組み合わせて、5.88kgの6aを含有する単一の(6a)/酢酸エチル生成物溶液(17.72kg)を得た(総収率:82.2%)。この溶液のHPLC分析で、HPLC純度が95.68%AUCであることが示された。
【0092】
実施例3.3-ステップ-3:6aの調製
4aの合成:(単離されていない中間体):反応器A(50Lガラス反応器)をTHF(約15L)で流し、すすぎ液を除去した。次いで、反応器をTHF(約10L)ですすぎ、すすぎ液の含水量を確認した。含水量は0.1%未満であり、反応器が乾燥していることが確認された。
【0093】
酸化亜鉛をその表面から除去するために、亜鉛粉末を、水中50%w/wのNaOH溶液を用いて、Zn金属と水との反応を防いで水素ガスを解放するように十分に希釈した約2:1のZn:NaOHモル比で処理した。乾燥処理された亜鉛(8.09Kg、5.9当量)を、窒素下で反応器A(50L)に充填し、続いてTHF(8.00Kg)および1,2-ジブロモエタン(0.984g)を充填した。攪拌速度を200RPMに設定した。バッチを、54分間かけて20.4℃から63.1℃に加熱した(目標:63~65℃)。バッチを63~65℃で10分間撹拌し、次いで68分間かけて33.1℃に冷却した。バッチ温度を32~38℃に維持しながら、トリメチルシリルクロリド(114.1g)を25分間かけて添加した。バッチを32~38℃で60分間撹拌した。必要に応じて攪拌を調整して、亜鉛固体の完全な混合を確保した。バッチを、45分間かけて33.4℃から25.3℃に冷却した。3a(690g、そのバッチの3aの10%:6.90Kg)を、周囲温度で反応器B(50L)中のTHF(3.07Kg)と混合した。3aの混合物を22.5℃(目標:20~26℃)に調整して溶液を得、次いで、ペリスタルティックポンプを介して23~27℃で40分間かけて反応器A(光を除外するためにアルミホイルで覆われた)に添加した。バッチを30分間撹拌した。TLCにより、3aが完全に消失したことが示された。4a形成の開始が完了した。
【0094】
残りの3a(合計6.90Kg)を窒素下で反応器Bに充填し、続いてTHF(27.65Kg)を充填した。混合物を15.2℃から20.8℃に調整し、10分間撹拌して溶液を得た。次いで、この溶液を、ペリスタルティックポンプを介して23~28℃で3時間かけて反応器Aに添加した。バッチを2時間撹拌した。TLCにより、3aが完全に消失したことが示された。4aの形成が完了した。
【0095】
6aの合成:テトラキスPd(0)(1.21Kg)をTHF(合計:6.15Kg)と容器中で混合し、スラリーを100Lのガラス反応器(反応器C)に移した。反応器Cを窒素で4回パージした(反応器を200~250トルまで排気し、次いで窒素で真空を大気圧まで開放する)。反応器Cを一酸化炭素(CO)で4回パージした(反応器Cを200~250トルまで排気し、次いでCOで真空を大気圧まで開放する)。次いで、バッチを、COでパージして、反応器C中のCO流量を4~6LPMで10分間維持した。CO流量を4~6LPMに維持ながら、THF(5.10Kg)に予め溶解した5a(5.34Kg)の溶液を、ペリスタルティックポンプを介して8分間かけて反応器Cに添加した。4a反応混合物を、20~26℃で2時間かけて、ペリスタルティックポンプを介して反応器Aから反応器Cに移した。反応器AをTHF(1.84Kg)ですすぎ、すすぎ液を反応器Cに移した。バッチを、少なくとも20時間4~6LPM(1psig排気リリーフ弁を介して)の流速でCOを通気することによって、CO圧を1~3psigに維持しながら、20~26℃で撹拌した。20時間後のHPLC分析は、6a(対5a+6a)がHPLCにより85.04%AUCに達したことを示した。さらに4時間後の第2のHPLC分析では、6a(対5a+6a)が0.48%(HPLCにより85.52%AUCに)増加したことを示し、これは、反応完了の基準を満たしていた(連続試料間での6aのAUC HPLC増加が1.0%未満)。
【0096】
6aの反応ワークアップ:反応が完了した後、一酸化炭素の通気を停止し、システムを真空を用いて200~250トルの圧力まで排気し、窒素で大気圧にパージした。このパージ処理を4回繰り返した。バッチを窒素で50分間通気して、ヘッドスペースのCOが35ppm以下に達した。バッチを65分間沈降させ、上部の液体層を吸引管で移し出し、セライトパッド(5.0Kg、酢酸エチルで事前に湿らせた)を通して25分間かけて濾過した。酢酸エチル(62.25Kg)を反応器Cに添加して、反応器をすすいだ。バッチを25分間撹拌し、19分間沈降させた。上層を濾過のためにフィルター漏斗に移した。濾液(約120L)を55-Gドラム中で合わせ、水(41.40Kg)を添加し、続いてセライト(2.34Kg)を添加した。ドラム中の混合物を3時間15分撹拌した。混合物の半分を、酢酸エチルで事前に湿らせたセライトパッド(6.01Kg)を通して反応器C(事前に洗浄済)中に濾過した。セライトパッドを酢酸エチル(9.35Kg)で洗浄し、濾液を反応器Cに移した。反応器C中の混合物を6分間撹拌し、19分間沈降させた。底部の水層(約19L)を除去し、上部の有機層(約83L)を水(17.25Kg)で洗浄した。得られた有機層(約72L)を容器に移した。スラリー状の混合物のあとの半分を、使用済のセライトパッドを介して濾過し、システムを酢酸エチル(9.35Kg)ですすいだ。混合物を反応器Cに移し、10分間撹拌し、10分間沈降させた。底部の水層を除去し、上部の有機層(約82L)を水(17.25Kg)で洗浄した。
【0097】
粗6aの単離:反応器C中の有機層(約79L)を真空濃縮(≦50℃、≦75トル)して62Lにし、得られた有機層(約83L)をさらに4つのロータリーエバポレーターフラスコ中で濃縮して、粗6a(油性固体、合計11.10Kg)を得た。粗6aを酢酸エチル(約9L)で溶解し、溶液(19.47Kg)を得た。粗6a混合物を、シリカゲルプラグ精製によって6回に分けて精製した。
【0098】
粗6aの精製:酢酸エチル(約9L)中に溶解した粗6aを、シリカゲルプラグ上に6回負荷して精製した。各負荷は、1.15Kgの3aインプット(合計6.9kg)に基づいて計算した。3aインプットへのシリカゲル負荷は10.43X wt/wtであった。シリカパッドはn-ヘプタンで調製した。酢酸エチル含有量を増加させながら酢酸エチル/n-ヘプタン部分を用いて、6aを溶出した。画分を回収し、HPLCによって分析し、比較的純粋な画分(≧85%HPLC AUC 6a)を合わせた。各負荷から合わせた比較的純粋な画分を、活性炭で処理し、セライトパッドを通して濾過した。濾液を濃縮して、精製された6a(5.57Kg、収率74.5%、HPLC AUC純度95.63%)を得た。
【0099】
ステップ3での好ましいプロセスパラメータおよび実施形態-6/6aの調製
以下に列挙するものは、上記スキームI、II、およびIIIに示されるように、本発明の合成におけるステップ3についての特定の好ましいプロセスパラメータである。ステップ3のプロセス条件およびパラメータは、高収率のカルボニル化ステップであり、カルボニル化ステップにおいて4-クロロ-2-X-アニリン(5)または4-クロロ-2-ヨードアニリン(5a)を使用し、収率(約70~75%)は、置換アリールヨウ化物について公表されている結果を上回っている(Jackson et al.,JCS Perkin 1,1997,865では12~29%)。これらには、6a(これ自体も新規の化合物である)を調製するための大規模で高収率なカルボニル化の頑強な条件が含まれる。当ステップのような特定のステップについて記載される各好ましいプロセスパラメータは、本発明の別個の実施形態である。各ステップにおける好ましいプロセスパラメータは、好ましいプロセスパラメータの各組み合わせがまた本発明の別個の実施形態であるように、他のステップのプロセスパラメータとともに用いられ得る。1つまたは複数のステップにおいて1つまたは複数の好ましいプロセスパラメータを有する本発明による合成もまた、本発明の別の実施形態である。ステップ3の好ましいプロセスパラメータには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●3/3aおよび亜鉛粉末からの本明細書でのヨード亜鉛中間体4/4a(Jackson et al.,JCS Perkin 1,1997,865では6/6aとしても知られる)の形成のための反応温度の範囲が23~27℃(好ましくは約25℃)(対して、引用された先行技術の参照では35℃の水浴)(熱分解を最小限に抑えながら好適な反応動態を提供する);
●光分解を防ぐための、4/4a反応混合物の光からの保護(望ましくない副生成物の形成を軽減する);
●反応混合物を23~27℃(好ましくは約25℃)に維持する速度で、3/3a溶液を亜鉛粉末スラリーに制御しながら添加する(熱分解を最小限に抑えながら好適な反応動態を提供する);
●5/5aを反応混合物に添加する前にTHF中のテトラキスPd(0)触媒のスラリーをCOガスで予め飽和させる(5/5aのホモカップリングから望ましくない副生成物の形成を軽減する);
●4/4a混合物の添加中に、同時にテトラキスPd(0)/THF/5またはテトラキスPd(0)/THF/5a混合物へCOガスを表面下で添加するまたはCOガス圧を加える(望ましくない副生成物の形成を軽減する);
●制御された一定の速度で、4の混合物をテトラキスPd(0)/THF/5混合物に、または4a混合物をテトラキスPd(0)/THF/5a混合物に添加して、60分以上(好ましくは約2~3時間)で移し終えるようにする(望ましくない副生成物の形成を軽減する);
●光分解を防ぐために、4/テトラキスPd(0)/THF/5反応混合物または4a/テトラキスPd(0)/THF/5a反応混合物を光から保護する(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。
●カルボニル化反応の反応温度が20~26℃(望ましくない副生成物の形成を軽減する);および/または
●カルボニル化反応混合物への連続的なCOガスの表面下添加またはCOガス圧による添加は、反応混合物の総容量に対して約2~8%(好ましくは約4%)の定常状態での気泡容量をもたらす速度である(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。
【0100】
COガスの添加またはCOガス圧を制御することは、反応混合物へのCO溶解の動態および溶存CO濃度の両方から、大規模で高収率のカルボニル化を成功させる。好ましい実施形態において上に記載されたように、COの制御された表面下ガス添加を維持することで、製造規模で高収率のカルボニル化のために十分な持続的溶存CO濃度が提供された。あるいは、ガス巻き込み撹拌を備えた加圧反応容器を使用しても、高収率のカルボニル化のために十分な持続的溶存CO濃度を伴う有効なCOガス物質移動が提供され得る。加圧容器はまた、高すぎる、すなわち、所望のカルボニル化反応を阻害してしまうほど高い溶存CO濃度ももたらし得る。好ましいCO圧は、1psig~100psigの範囲である。連続的な表面下添加のモードで操作するには、1psig~5psigのCO圧が好ましい(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。連続的に維持されたCO加圧を備える閉鎖型加圧反応器で操作するには、20~100psigのCO圧が好ましい(最も好ましくは80~100psig)(望ましくない副生成物の形成を軽減する)。
【0101】
実施例4-ステップ4
【化19】
実施例4.1-ステップ4:実験室規模
500mLの三つ口丸底フラスコに、酢酸メチル(180mL)中の中間体6a(18g、50.45mmol)の溶液を窒素下で充填した。この溶液を18℃に冷却した。次いで、バッチ温度を18~25℃に維持しながら、ジオキサン中の4NのHCl(75mL、6当量)を45分間かけて滴下した。この反応物を攪拌し、HPLCによってモニターした。5.5時間後に反応が完了した。得られたスラリーを濾過し、ウェットケーキを酢酸メチル(2x10mL)で洗浄し、真空下で一晩乾燥させて、L-4-クロロキヌレニン二塩酸塩7aのメチルエステルを得た(16.64g、定量的な収率、AUC純度99.04%)。
【0102】
実施例4.2-ステップ4:大規模
7aの合成:BOC脱保護反応:酢酸エチル(計39.55kg、合計10容量)を100Lのガラス反応器(反応器A)に充填し、次いでDI水(288g、1当量)を充填した。ジオキサン(29.59kg、7当量)中のHCl溶液(4N)を反応器Aに充填した。バッチを20~30℃に調整した。6aの酢酸エチル溶液(合計:16.99kg、11.35kgの酢酸エチル中に5.64kgの6a)を、20~30℃で3時間かけて均一の速度(100mL/分)で孔径10μmのインラインフィルターを介して反応器Aに添加した。6aの容器および移送ラインを、必要な酢酸エチルの総容量からの約3Lですすぎ、すすぎ液を反応器Aに移した。6aの溶液の添加中に、固体が沈殿した。バッチを、20~30℃で暗中、窒素下で16.5時間撹拌し、反応の変換を確認するために試料(均一なスラリー試料)を提示した。結果は、6aの残りが0.4%HPLC AUCであり、反応が完了したことを示した(目標:6aの2.0%以下)。
【0103】
7aの単離:濾過および洗浄:バッチを、窒素で15分間パージした4手PEグローブバッグの中で、PEブフナー漏斗上に濾過した。バッチを、1時間かけてペリスタルティックポンプを介して、反応器Aからフィルター漏斗に移した。ウェットケーキを15分間脱液し、酢酸エチルで2回洗浄した。第1の洗浄では、酢酸エチル(10.2kg)を反応器Aに充填して反応器をすすぎ、次いでフィルターケーキ上に移した。酢酸エチル(10.2kg)洗浄による第2の洗浄を、同様な方法で行った。
【0104】
ウェットケーキを、窒素下で、漏斗に真空を適用することによって、フィルター漏斗中で2時間20分間乾燥させ、次いで、グローブバッグを使用して6つのガラス乾燥トレイ(12.754kg)に移して窒素雰囲気を維持した。物質を真空オーブン(≦50トル)で加熱せずに15時間30分乾燥させ、次いで20~30℃(≦50トル)で24時間40分乾燥させて、乾燥した7a(5.52kg)を得た。物質をさらに4時間35分乾燥させ、5.085kgにした(LOD:7.9%)。物質をさらに66時間45分乾燥させ、4.854kgにした(LOD:4.5%)。次いで、物質を4時間5分間乾燥させて、4.849kgを得た(LOD:0.1%;規格に合格:≦0.5%)。最終乾燥物質(4.82kg、収率92.5%)を、二重にcGMP認証低密度ポリエチレン(LDPE)袋を張ったきれいな容器に荷下ろし、密封前に窒素でパージした。HPLC分析で、純度が96.37%AUCであることが示された。
【0105】
7aの調製では、プロセス制御で、不純物の形成を回避する。実施例4.1における添加の順序では、許容できないレベルのプロセス不純物を与えることが判明した。これは、実施例4.2において添加の順序を変更し、反応混合物に水を含ませることによって軽減された。このプロセスは窒素保護下で操作され、特に7aの単離および非常に吸湿性かつ潮解性である単離された固体の取扱いのためには、厳格に湿気を除外する必要がある。7aは、非常に吸湿性かつ感光性でもあり、光から保護して窒素下で保管する必要がある。基質溶液(酢酸エチル中の6a)をジオキサン中の過剰な4NのHClに添加した。また、4NのHCl/ジオキサンは添加された水(6aに対して最大1モル当量)を意図的に含有した。基質に対する大過剰の酸を維持し、水(t-ブチルカチオンをすべて捕捉するため)を存在させることで、望ましくないt-ブチル置換副生成物の形成が軽減された。7aは、非常に吸湿性(および感光性)であるため、生成物の単離を窒素雰囲気下で行った。この生成のために、濾過を、窒素パージされたプラスチックグローブバック中で行った。この構成で、ウェットケーキの脱液が制限され、フィルターケーキ中に所望レベル以上の残留溶媒が生じ、乾燥時間の延長につながった。
【0106】
実施例4.3-ステップ4 7aの調製
7aの合成:BOC脱保護反応:酢酸エチル(計38.05Kg)を100Lのガラス反応器Aに充填し、次いでDI水(284g)を充填した。ジオキサン(28.70Kg、7.0当量)中のHCl溶液(4N)を反応器Aに充填した。バッチを撹拌し、温度を20~30℃に調整した。6aの酢酸エチル溶液(合計:17.75Kg、12.18Kgの酢酸エチル中に5.57Kgの6a)を、20~30℃で4時間46分かけて均一の速度(100mL/分)で孔径10μmのインラインフィルターを介して反応器Aに添加した。6aの容器および移送ラインを、約3Lの酢酸エチルですすぎ、すすぎ液を反応器Aに移した。6aの溶液の添加中に、固体が沈殿した。バッチを、窒素下で光を除外して20~30℃で16時間42分間撹拌し、反応の変換を確認するために試料(均一のスラリー)を提示した。結果は、6aの残りが0.36%HPLC AUCで反応が完了したことを示した(目標:6aの2.0%以下)。
【0107】
7aの単離:濾過および洗浄:バッチを窒素でパージしたグローブバッグ内のフィルター漏斗で濾過した。バッチを35分間かけてペリスタルティックポンプを介して反応器Aからフィルター漏斗に移し、ウェットケーキを30分間脱液化し、次いで酢酸エチルで2回洗浄した。
●最初の洗浄:酢酸エチル(10.05Kg)を反応器Aに充填して反応器をすすぎ、その後フィルターケーキ上に移した。ウェットケーキを10分間脱液した。
●第2の洗浄:酢酸エチル(10.05Kg)を反応器Aに充填して反応器をすすぎ、その後フィルターケーキ上に移した。ウェットケーキを10分間脱液した。
【0108】
ウェットケーキを陽圧窒素雰囲気下で漏斗に真空を適用してフィルター漏斗内で25分間乾燥させ、その後ガラス乾燥トレイに移した。物質を真空オーブン(≦50トル)で加熱せずに1時間5分乾燥させ、次いで20~30℃で110時間乾燥させた。物質(4.78Kg、収率92.85%)を、二重にAPI袋を張ったきれいな容器に荷下ろした。単離された7aのHPLC分析は、純度が95.80%AUCであることを示した。
【0109】
ステップ4での好ましいプロセスパラメータおよび実施形態-7/7aの調製
ステップ4は、(7/7a)の二塩酸塩としての脱保護中間体の脱保護および単離を伴う(7a自体がまた、新規化合物である)。以下に列挙するものは、上記スキームI、II、およびIIIに示されるように、本発明の合成におけるステップ4についての特定の好ましいプロセスパラメータである。当ステップのような特定のステップについて記載される各好ましいプロセスパラメータは、本発明の別個の実施形態である。各ステップにおける好ましいプロセスパラメータは、好ましいプロセスパラメータの各組み合わせがまた本発明の別個の実施形態であるように、他のステップのプロセスパラメータとともに用いられ得る。1つまたは複数のステップにおいて1つまたは複数の好ましいプロセスパラメータを有する本発明による合成もまた、本発明の別の実施形態である。
ステップ4の好ましいプロセスパラメータには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●1,4-ジオキサン中のHClに6/6aの溶液を添加する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●1,4-ジオキサン中のHClに6/6aの溶液を制御された定常速度で添加し、2~6時間(好ましくは4~6時間)かけて完全に添加する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●反応温度が20~30℃(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●光分解を防ぐための光曝露からの保護(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●7aが非常に吸湿性かつ潮解性であるため、単離された7/7aを空気/湿気曝露から保護する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える)。
●乾燥温度が20~30℃(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);および/または
●7/7aの収率が95.0%HPLC(AUC)以上。
【0110】
実施例5-ステップ5
【化20】
実施例5.1-L-4-クロロキヌレニン(8a)の実験室規模の調製250mLの丸底フラスコに、L-4-クロロキヌレニン二塩酸塩(7a)(4.04g、12.26mmol)のメチルエステルおよび水(10mL)を充填した。反応混合物を10分間撹拌して、混濁溶液にした。5.0NのLiOH水溶液を反応混合物に滴下して、pH(11~13)にし、10~30分後に反応を完了した。反応混合物をMIBK(50mL)で抽出した。HCl(1Nの水溶液)を添加することによって、水層をpH5~6に酸性化した。スラリーを30分間撹拌し、濾過した。ウェットケーキを水(2x10mL)で洗浄し、真空下25~30℃で一晩乾燥させて、L-4-クロロキヌレニン(8a)を得た(2.81g、収率94.6%)。
【0111】
実施例5.2-L-4-クロロキヌレニン(8a)の実験室規模の精製L-4-クロロキヌレニン(8a)(2g)を200mLのメタノールと混合し、次いで濾過した。濾液を、活性炭(0.1g)で周囲温度で10分間処理した。次いで、混合物をセライトパッドを通して濾過し、メタノール(20mL)で洗浄した。濾液を約10mLに濃縮し、次いで酢酸エチル(30mL)を添加した。スラリーを10分間撹拌し、濾過して、純粋なL-4-クロロキヌレニン(8a)を得た(0.8g、収率40%、AUC純度99.98%)。
【0112】
実施例5.3-L-4-クロロキヌレニンの大規模調製(8a)
7aの遊離塩基溶液の調製:7a(4.76kg、1.0当量)を、生成物を光から保護するためにアルミホイルで覆われ窒素パージされた100L反応器(反応器A)で、20~25℃で水(47.61kg、10容量)で溶解した。一部の不溶性油性物質が観察された。トルエン(32.9kg、10容量)を反応器に添加した。反応混合物を、濃NH4OH溶液(28~30%wt/wt水中、1.63kg)を添加することによって、pH0.83(水層)からpH8.45(水層、目標:pH8.0~9.0)へとアルカリ性にした。反応混合物を20~25℃で10分間撹拌して、透明な溶液(二相性溶液)を得た。反応混合物を35分間沈降させて、相を分離した。生成物を光から保護するためにアルミホイルで覆われた50Lの反応器(反応器B)に、底部の水相(約52L)を移した。光を除外するためにアルミホイルで覆われた50L反応器(反応器C)に、上部の有機層(約42L)を移した。反応器Bからの水溶液を、反応器Aに戻した。トルエン(20.6kg、5容量)を反応器Aに添加した。反応器A中の反応混合物を13分間撹拌し、水層のpHは8.60であった(目標:pH8.0~9.0)。混合物を17分間沈降させ、相分離を可能にした。底部の水層(約52L)を容器(廃棄用)に移し出した。上部の有機層(約25L)を反応器Aに保持した。反応器Cからの有機溶液を反応器に移して合わせた(合計:67L)。水(9.53kg,、2容量)を反応器Aに添加し、混合物を12分間撹拌した。反応器A中の混合物を、相分離のために11分間沈降させた。底部の水層(約10L)を廃棄のために容器に移した。7aに富む有機溶液(7aの遊離塩基溶液、67.5L)を反応器Aに保持した。
【0113】
(7a)の遊離塩基溶液のSiliaMetSチオール処理-前半-パートA:反応器A中の7aに富む有機性遊離塩基溶液(約34L、全溶液の50%)の一部を反応器Cに移し、SiliCycle Inc.のSiliaMetSチオール(0.85kg、0.3wt/wt、目標:0.71kg)を反応器Cに添加した。反応器Cをアルミホイルで覆い、混合物を20~25℃で15時間撹拌した。一定分量の混合物(約10mL)を取り、0.45μmのシリンジフィルターを使用して濾過した。濾液を油(0.5470g)に濃縮し、Pd(限界<10ppm)およびZn(限界<500ppm)分析のために提示した。IPC結果:Pd(1.0ppm)およびZn(20ppm)。反応混合物をブフナー漏斗中のセライトパッド(0.43kg)を通して濾過した。濾液を、孔径0.4μmのインラインフィルターを介して反応器Bに移した。トルエン(2x2.06kg、2x0.5容量)を使用して反応器Cをすすぎ、次いでセライトフィルターパッドを通して反応器Bに入れた。
【0114】
水(19.04kg、4容量)を反応器Bに添加し、混合物を20~25℃で撹拌した。水層は、20~25℃で6NのHCl溶液(1.86kg)を添加することによって、pH8.95からpH0.74に調整した。混合物を20~25℃で10分間撹拌し、次いで相分離のために11分間沈降させた。底部の水層(22L、7aに富む溶液)をきれいな55ガロンHDPEドラム中に収集し、後の処理のために保持した。さらなる抽出のために上部の有機相を保持した。
【0115】
7aの遊離塩基のSiliaMetSチオール処理-後半-パートB:反応器A中の残りの7aに富む有機性遊離塩基溶液(約34L、全溶液の50%)を反応器Cに移し、SiliaMetSチオール(0.71kg、0.3wt/wt)を反応器Cに添加した。反応器Cをアルミホイルで覆い、混合物を20~25℃で約16.5時間撹拌した。一定量の混合物(約10mL)を取り、0.45μmのシリンジフィルターを使用して濾過した。濾液を油(0.5508g)に濃縮し、Pd(限界<10ppm)およびZn(限界<500ppm)分析のために提示した。IPC結果:Pd(1.0ppm)およびZn(1.0ppm)。反応混合物を、ブフナー漏斗中のセライトパッド(0.45kg)を通して濾過した。濾液を、孔径0.4μmのインラインフィルターを介して反応器Aに移した。トルエン(2x2.06kg、2x0.5容量)を使用して反応器Cをすすぎ、次いでセライトフィルターパッドを通して反応器Aに入れた。
【0116】
水(19.04kg、4容量)を反応器Aに添加し、混合物を20~25℃で撹拌した。水層は、20~25℃で6NのHCl溶液(1.75kg)を添加することによって、pH8.55からpH0.81に調整した。混合物を20~25℃で10分間撹拌し、次いで相分離のために12分間沈降させた。底部の水層(23L、(7a)に富む溶液)を、パートAからの7aに富む酸性溶液とともに、きれいな55ガロンHDPEドラム中に収集した。
【0117】
反応器B中の保持有機相(約37L、パートAから)を反応器Aに移し、パートBからの有機相と混合した。合わせた有機溶液(約73L)を水(4.78kg)と混合した。水層を、6NのHCl(0.25kg)を添加することによって、pH3.96からpH0.62に調整した。混合物を20~25℃で10分間撹拌し、次いで相分離のために10分間沈降させた。底部の水層(4L、7aに富む溶液)を反応器Bに移した。55ガロンHDPEドラムからの保持された(7a)に富む酸性溶液(パートAおよびBから約45L)を反応器Bに移した。
【0118】
7aの加水分解:反応器B中の酸性7a溶液を10.2℃(5~15℃)に冷却した。4.5Mの水酸化リチウム溶液(7.06kg)を、10~20℃で31分間かけて反応器Bに添加した。pHが、pH1.05からpH10.93に増加した。反応混合物のpHを、4.5MのH LiOH(2.19kg)を添加することによって、10~20℃でpH12.0~12.5に調整し、維持した。反応混合物を10~20℃で1時間、pH12.0~12.5で維持し、次いで試料をHPLC分析に提示した。結果は、反応が完了したことを示した((7a):0.0%HPLC AUCが反応混合物中に残存、目標:≦0.5%AUC)。反応混合物を、55分間かけて10~25℃で6N HCl(2.53kg)をゆっくりと添加することによってクエンチし、時間をかけてpH12.20からpH4.87に調整した(目標pH:4.8~6.0)。クエンチ中、が約9pHで固体生成物が沈殿し始めた。pH4.8~6.0のスラリーを10~25℃で65分間撹拌した。スラリーを、約2.5時間かけてPEフィルター漏斗を通して濾過した。濾過が非常に遅かった。反応器Bを水(2x9.54kg、2x2容量)ですすぎ、すすぎ液を用いてフィルターケーキを洗浄した。フィルターケーキの洗浄もまた、非常に遅かった(少なくとも各2時間)。フィルター漏斗中のAV-101ウェットケーキを、フィルター漏斗に真空を適用することによって13時間脱液した。
【0119】
粗半精製8aの再沈殿:ウェットケーキ(粗8a、21.09kg)を水(23.83kg、5容量)をスラリーとして反応器Aに移し、移送を容易にした。反応器A中のスラリーを、6NのHCl溶液(3.46kg)を添加することによって、10~25℃でpH5.02からpH0.65に酸性化した。この混合物を15分間撹拌して、全ての固体を溶解した(いくつかの塊をゆっくりと溶解した)。反応器A中の酸性水溶液を、45分間かけてインラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器B中に濾過し、不溶性物質をすべて除去した。濃水酸化アンモニア(0.82kg)を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Bに添加した。反応混合物のpHが、pH0.65からpH1.77に増加した。希釈したNH4OH溶液(10%、3.5kg)をインラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Bに添加し、pHをpH=5.15に調整した。混合物を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して6NのHCl溶液(必要に応じて約100mL)を添加することによって、pHをpH4.8~6.0に維持しながら、10~25℃で1時間撹拌した。最終スラリーを20分間かけてPEフィルター漏斗上に濾過した。ウェットケーキを10分間脱液した。水(2x7.14kg、2x2容量)をインラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Bに移して、反応器をすすぎ、洗浄液をフィルターケーキに移してすすいだ。最終的な脱液には、25分を要した。ウェットケーキ(10.669kg、半精製8a)を6つの乾燥トレイに移し、真空オーブン(≦50トル)で40時間加熱せずに乾燥させ、次いで20~30℃(≦50トル)で21時間乾燥させて、9.486kgを得た。乾燥を、20~30℃でさらに4時間続け、4時間の時間間隔での減量は0.4%であった。このステップの理論的収率8a(3.50kg)に対する最終重量(9.486kg)に基づいて、半精製8aは5.99kgの水を含有した。
【0120】
実施例5.4-L-4-クロロキヌレニンの大規模精製(8a)
半精製8a(9.38kg)を反応器Bに移し、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して濾過したメタノール(11.29kg、3.0容量)と混合した。酢酸エチル(12.92kg、3.0容量)を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Bに添加した。混合物を20~30℃で18時間20分間撹拌した。スラリーをPEブフナーフィルター漏斗上で45分間かけて濾過した。ウェットケーキを1時間45分間脱液し、次いで、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して事前に濾過されたメタノール/酢酸エチル(1/1、v/v、2.27kg/2.58kg、1.2容量)で洗浄し、反応器B中で混合した。ウェットケーキを1時間脱液し、次いで濾過した酢酸エチル(2x5.15kg、2x2.0容量)で洗浄した。ウェットケーキを50分間脱液した。試料(約2g、ウェットケーキ)を、HPLCによる純度(%AUC)分析に提示した。HPLCの結果で、純度が99.80%AUCであることが示された。すべての不純物は、0.1%HPLC AUC未満に制御された。
【0121】
ウェットケーキ(5.577kg)を6つのガラス乾燥トレイに移し、真空オーブンで加熱せずに1時間15分(≦50トル)乾燥させ、次いで20~30℃で加熱して(加熱設定点28~30℃、≦50トル)52時間乾燥させ、2.043kgの乾燥物質を得た。物質を20~30℃でさらに16時間乾燥させ、最終LOD=0.0%を得た。残留溶媒の分析のために、試料(1g)を提示した。GCの結果は、5つの残留溶媒が全て、プロセス溶媒(メタノール(MeOH)、酢酸エチル(ETOAc)、トルエン、アセトンおよびヘプタン)のICH Q3C準拠規格限界を下回っていたことを示した。
【0122】
実施例5.5-ステップ-5:8aの調製
7aの遊離塩基溶液の調製および残留金属の軽減:二塩酸塩としての7a(4.77Kg)を、生成物を光曝露から保護するためにアルミホイルで覆われた100L反応器(反応器A)で、20~25℃で水(47.66Kg)で溶解した。トルエン(32.98Kg)を反応器に添加した。反応混合物を、濃NH4OH溶液(28~30%wt/wt水中、1.64kg)を添加することによって、pH8.37(目標:pH8.0~9.0)に調整した。反応混合物を20~25℃で15分間撹拌して、透明な溶液(二相性)を得た。反応混合物を53分間沈降させて、相を分離した。下部の水相(約52L)を、生成物を光から保護するためにアルミホイルで覆われた50L反応器(反応器B)に移した。上部の有機層(約41L)を50L反応器(反応器C)に移した。反応器Bからの水溶液を、反応器Aに戻した。トルエン(20.61Kg)を反応器Aに添加した。反応器A中の混合物を13分間撹拌し、水層のpHは8.60であった(目標:pH8.0~9.0)。混合物を10分間沈降させ、相分離を可能にした。底部の水層(約52L)を容器(廃棄用)に移し出した。反応器Cからの有機溶液を反応器Aに移し、混合した(合計:65L)。水(9.53Kg)を反応器Aに添加し、混合物を22分間撹拌した。反応器A中の混合物を、相分離のために11分間沈降させた。底部の水層(約12L)を廃棄のために容器に移した。反応器Aで、合計65Lのトルエン中の7aの遊離塩基溶液が得られた。
【0123】
7aの遊離塩基の金属スカベンジャー処理-前半:反応器Aからの7aに富む有機溶液(約33L、合計約50%)の一部を反応器Bに移し、金属スカベンジャーの、SiliaMetS Thiol(登録商標)(0.715Kg)を反応器Bに添加した。反応器Bをアルミホイルで覆って光を除去し、混合物を20~25℃で15時間22分撹拌した。ICP/MSにより、試料の残留金属を確認した:Pd(1.0ppm)およびZn(20ppm)。反応混合物を、フィルター漏斗中のセライトパッド(約0.5Kg)を通して濾過した。濾液を、孔径10μmのインラインフィルターを介して反応器Cに移した。トルエン(2x2.06Kg)を使用して反応器Bをすすいで、反応器C上のセライトフィルターパッドに流した。
【0124】
水(19.07Kg)を反応器Cに添加し、混合物を20~25℃で撹拌した。水層は、20~25℃で6NのHCl溶液(1.81Kg)を添加することによって、pH8.84からpH0.75に調整した。混合物を20~25℃で25分間撹拌し、次いで28分間沈降させた。底部の水層(22L、7aに富む溶液)を、きれいな55ガロンHDPEドラム中に収集した。
【0125】
7aの遊離塩基の金属スカベンジャー処理-後半:反応器A中の残りの7aに富む有機溶液(約31L、合計約50%)を反応器Bに移し、金属スカベンジャーのSiliaMetS Thiol(登録商標)(0.72Kg)を反応器Bに添加した。反応器Bをアルミホイルで覆って光を除去し、混合物を20~25℃で約18.3時間撹拌した。ICP/MSにより、試料の残留金属を確認した:Pd(1.0ppm)およびZn(10ppm)。反応混合物を、フィルター漏斗中のセライトパッド(0.25Kg)を通して濾過した。濾液を、孔径10μmのインラインフィルターを介して反応器Aに移した。トルエン(2x2.06Kg)を使用して反応器Bをすすいで、反応器A上のセライトフィルターパッドに流した。
【0126】
水(19.07Kg)を反応器Aに添加し、混合物を20~25℃で撹拌した。水層は、20~25℃で6NのHCl溶液(1.74Kg)を添加することによって、pH9.03からpH0.74に調整した。混合物を20~25℃で19分間撹拌し、次いで25分間沈降させた。底部の水層(23L、7aに富む溶液)を、きれいな55ガロンHDPEドラム中に収集した。
【0127】
反応器B中の有機溶液(約35L)を反応器Aに移し、混合した。合わせた有機溶液(約73L)を水(4.78Kg)と混合した。水層を、6NのHCl(0.25Kg)を添加することによって、pH3.96からpH0.62に調整した。混合物を20~25℃で10分間撹拌し、次いで10分間沈降させた。底部の水層(4L、7aに富む溶液)を反応器B(事前に洗浄済)に移した。HDPEドラムからの7aに富む溶液(約45L)を反応器Bに移した。
【0128】
7aの加水分解および粗8aの分離:反応器B中の7aの酸性水溶液を10.5℃(目標:5~15℃)に冷却した。4.5Mの水酸化リチウム溶液(7.07Kg)を、10~20℃で31分間かけて反応器Bに添加した。pHは、LiOH添加中にpH0.92からpH11.0になった。反応混合物のpHを、4.5MのH LiOH(2.48Kg)を添加することによって、10~20℃でpH12.0~12.5に調整した。反応混合物を1時間5分間かけて10~20℃でpH12.0~12.5で維持し、反応完了の判定のために試料を提示した。HPLCの結果は、反応が完了したことを示した(7a:未検出、目標:≦0.5%AUC)。反応混合物を、73分間かけて10~25℃で6NのHCl(2.69Kg)をゆっくりと添加することによってクエンチした。pHを、pH12.20からpH5.30に調整した(目標pH:4.8~6.0)。pHの調整中、pHが約9で、固体生成物が沈殿した。pH4.8~6.0の最終スラリーを10~25℃で65分間撹拌した。スラリーを、フィルター漏斗上で濾過した。反応器Bを水(2x9.50kg)ですすぎ、すすぎ液をフィルターケーキに移した。フィルター漏斗中のウェットケーキ(8a)を、フィルター漏斗に真空を適用することによって15分間脱液した。
【0129】
粗8aの再沈殿(精製#1):粗8a(11.50Kg)のウェットケーキを反応器Aに移し、続いて水(23.85Kg)に移した。スラリーを、6NのHCl溶液(2.92Kg)を添加することによって、10~25℃でpH5.60からpH0.70に酸性化した。反応混合物を52分間撹拌して、全ての固体を溶解した。反応器A中の酸性水溶液を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して18分間かけて反応器C中に濾過した。濃水酸化アンモニウム(0.82Kg)を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器C中に添加した。反応混合物のpHが、pH0.70からpH1.95に増加した。希釈したNH4OH溶液(10%wt/wt、2.16Kg)をインラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Cに添加し、pHをpH5.30に調整した。混合物を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して6NのHCl溶液(必要に応じて約105mL)を、pHを4.8~6.0に維持しながら、10~25℃で1時間撹拌した。スラリーを21分間かけてフィルター漏斗上に濾過した。ウェットケーキを11分間脱液した。水(2x7.15Kg)をインラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して反応器Cに移して、反応器をすすぎ、フィルターケーキを洗浄した。最終的な脱液には、15分を要した。8a(6.12Kg)のウェットケーキを乾燥トレイに移し、真空オーブンで加熱せずに15時間17分乾燥させ、次いで20~30℃で72時間乾燥させると、最終重量が3.82Kgになった。
【0130】
8aの最終精製:乾燥した8a(3.82Kg)を反応器Cに移し、次いで、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通して濾過したメタノール(11.31Kg)と混合した。酢酸エチル(12.92Kg)を、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を通じて反応器Cに添加した。混合物を、光曝露から保護して、20~30℃で22時間30分撹拌した。スラリーをフィルター漏斗上に濾過した。ウェットケーキを13分間脱液し、次いで、インラインフィルターカプセル(0.4μm、孔径)を介して事前に濾過されたメタノール/酢酸エチル(1/1v/v、2.26Kg/2.58Kg)で洗浄し、反応器C中で混合した。ウェットケーキを30分間脱液し、濾過された酢酸エチル(2x5.16Kg)で洗浄した。ウェットケーキを60分間脱液した。ウェットケーキ(3.99Kg)を乾燥トレイに移し、真空オーブンで乾燥させた。物質を加熱せずに4時間30分間真空乾燥(約50トル)し、次いで20~30℃で加熱して23時間乾燥させた(加熱設定点25℃)。8aの固体を機械的に粉砕し、次いで乾燥トレイに戻して、乾燥を続けた。物質を20~30℃で64時間45分間乾燥させると、LOD=0.48%に達した(LOD目標:≦0.5%)。これらの操作で、8a(2.00Kg、HPLC AUC純度99.36%)を得ることに成功した。
【0131】
ステップ5での好ましいプロセスパラメータおよび実施形態-8の調製
ステップ5は、残留金属の効果的なパージ/制御ならびにL-4-クロロキヌレニン(8a)のエステル加水分解、単離および精製を伴う。以下に列挙するものは、上記スキームI、II、およびIIIに示されるように、本発明の合成におけるステップ5についての特定の好ましいプロセスパラメータである。当ステップのような特定のステップについて記載される各好ましいプロセスパラメータは、本発明の別個の実施形態である。各ステップにおける好ましいプロセスパラメータは、好ましいプロセスパラメータの各組み合わせがまた本発明の別個の実施形態であるように、他のステップのプロセスパラメータとともに用いられ得る。1つまたは複数のステップにおいて1つまたは複数の好ましいプロセスパラメータを有する本発明による合成もまた、本発明の別の実施形態である。ステップ5における残留金属の軽減のための好ましいプロセスパラメータには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
●水溶液からトルエンへの7/7aの抽出には、pH=8.0~9.0(プロセス不純物の相分配を提供する);
●7/7a溶液の光曝露からの保護(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);および/pr
●残留Znを500ppm未満、および残留Pdを10ppm未満(API品質の制御)に制御するための、SiliaMetS Thiol(登録商標)(7/7a二塩酸塩インプット重量に対して約20%w/w)による7/7aの遊離塩基溶液の処理。
【0132】
ステップ5におけるL-4-クロロキヌレニン(8a)のエステル加水分解、単離および精製の好ましいプロセスパラメータとして、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
●7/7a溶液の光分解を防ぐための光曝露からの保護(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●7/7a遊離塩基をトルエン溶液からpH=0.5~0.9で水性酸へ、好ましくはHCl水溶液を用いて抽出する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●アルカリ水性条件下で7/7aの加水分解には、LiOH溶液を用いてpH=12.0~12.5を達成する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●7/7aの加水分解による8aの形成には、pHが12.0~12.5(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●7/7aの加水分解による8aの形成には、pHが12.0~12.5で、温度範囲が10~20℃で、光分解を防ぐために光曝露から保護する(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●pH=4.8~6.0への制御されたpH調整による8aの単離;
●水性HClを用いたpH=4.8~6.0への制御されたpH調整による8aの単離;
●pH=0.5~0.9で水性酸中に溶解することによる8aの精製、次いで、アンモニア水でpH=4.8~6.0に調整することによるpH制御された沈殿;
●20~30℃での湿状の8aの乾燥(不要な副生成物の形成を最小限に抑える);
●メタノール/酢酸エチル1/1v/v中での粉砕による8aの最終精製;および/または
●20~30℃での、8aの最終的な乾燥(不要な副生成物の形成を最小限に抑える)。