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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】溶融金属スクラップ浸漬システム
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240206BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C22B7/00 F
F27B3/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548679
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2019021886
(87)【国際公開番号】W WO2019178122
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】15/921,047
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257689
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン リチャード エス.
(72)【発明者】
【氏名】テットコスキー ジェーソン
(72)【発明者】
【氏名】ビルデ クリス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シリング エドワード
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/044842(WO,A1)
【文献】特表2015-514954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
F27B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属スクラップ浸漬システムであって、
前記溶融金属スクラップ浸漬システムは、
溶融金属を循環させるポンプウェルと、
チャージウェルである渦巻きスクラップ浸漬ウェルとドロスウェルとに分割される溶融ベイと
を有し、
前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルにおいて、リサイクルされる金属スクラップチップが、溶融物の表面上に堆積され、
前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルは、前記ポンプウェルと流体連通する入口と、当該渦巻きスクラップ浸漬ウェルの側壁又は底壁に位置し前記ドロスウェルと流体連通する出口と、を含み、
前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルは、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルの出口を覆うダイバータと、前記出口に通じるキャビティを囲むランプを含む基部が設けられたチャンバとを含み、
前記ダイバータは、中空内部を規定する円筒状の本体を含み、
前記ダイバータは、前記基部の上部で前記キャビティの入口に接続されており、前記ダイバータの側壁には、複数の通路が設けられており、
前記複数の通路が前記円筒状の本体内に形成されて前記中空内部と連通し、前記中空内部は、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルの出口と流体連通しており、
前記ダイバータは、前記ダイバータと前記チャンバの内壁との間の溶融金属槽の表面上に溶融金属スクラップを堆積させることによって機能し、これにより、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェル内の溶融金属の表面上でのより長い滞留時間を提供し、スクラップ材料が溶融金属に浸漬される前にスクラップ材料の表面から湿潤性および処理流体を蒸発させて、ドロスフォームの生成を減少させる、
溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項2】
前記ダイバータは、前記出口とつながるように構成されたネックをさらに含む、
請求項1に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項3】
前記通路に隣接する傾斜した入口領域
をさらに含む請求項1に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項4】
前記ダイバータは、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルから選択的に取り外し可能である、
請求項1に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項5】
前記ダイバータは、サスペンションアセンブリによって吊り下げられ、
前記サスペンションアセンブリは、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルの外側の位置に取り付けられた第1の端部を有するアームと、前記第1の端部を有し前記アームに取り付けられたポストとを含み、
前記ポストの前記第1の端部と対向する第2の端部は、前記ダイバータに取り付けられる、
請求項1に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項6】
前記アームは水平方向に回転可能である、
請求項5に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項7】
前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルは、円筒形状を有し、
前記アームは、前記渦巻きスクラップ浸漬ウェルの直径への浸透深さに関して調整可能である、
請求項5に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【請求項8】
前記ポストは、金属ロッドと耐火性シースとを有する、
請求項5に記載の溶融金属スクラップ浸漬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムなどの金属スクラップ(metal scrap)を溶融するための改良された方法および装置に関する。しかしながら、本開示は、アルミニウムとの使用に限定されず、むしろ、全ての溶融金属に関連する。
【0002】
アルミニウムスクラップは、2つの一般的なカテゴリに分けることができる。スクラップの第1のカテゴリは、一般に自己浸漬(self-submerging)する内燃機関部品のような大きな部品から成る。スクラップの第2のカテゴリは、細断された食品容器および飲料容器または機械加工の切粉およびやすり粉(machining chips and filings)のような軽量スクラップと呼ばれる。軽量スクラップは浸漬しにくく溶融しにくい。
【0003】
軽量スクラップのための従来の溶融システムは、浮遊スクラップが溶融ベイ(melting bay)に蓄積し、プロセスの効率を著しく妨害するという問題を有する。このような従来のシステムは、また、より高いレベルのスキム形成(skim formation)、及び酸化物及びスキム(skim;表層膜)中に埋め込まれた(occluded)遊離アルミニウム金属に変換される浮遊アルミニウムスクラップから生じる溶融損失(melt loss)をもたらす。溶融損失に加えて、高レベルのスキムは、精製された金属を提供するために、これらの材料を分離するためのより強力な処理を下流で必要とする。
【0004】
米国特許4,128,415は、溶融された媒体(molten media)中で金属スクラップを溶融するためのシステムを開示しており、システムは、断面略円筒形で上部および下部を有するハウジングを含む。金属スクラップは、ハウジングの上部に収容された、溶融された溶融媒体(molten melting media)の本体に導入される。溶融された溶融媒体の供給は、下部に位置する螺旋構造(volute)を介してハウジングの上部に加えられる。溶融された溶融媒体は、下部に配置され上部を通って延びる駆動シャフトに取り付けられたインペラの作用によって供給または追加される。駆動シャフトには、溶融された溶融媒体と金属スクラップとを混合させるために溶融された溶融媒体の本体内に渦を形成することにより、ハウジングの上部における溶融された溶融媒体の本体と金属スクラップの流れ運動を制御するための羽根が取り付けられている。
【0005】
米国特許3,997,336は、溶融された溶融媒体中で金属スクラップを溶融するためのシステムを開示しており、このシステムは、溶融媒体とスクラップが一緒になって溶融を開始する上部を有するハウジングを含む。ハウジングはまた、螺旋構造が配置される下部を有する。中心ハブと、ハブを囲む周方向バンドと、ハブからバンドまで半径方向に突出する傾斜羽根とを有するインペラが、ハウジングの下部に配置されて螺旋構造と協働し、インペラの回転時に金属スクラップおよび溶融媒体が下方に移動してハウジングから出るようにする。
【0006】
米国特許4,518,424は、溶融された溶融媒体中で金属スクラップを溶融する方法を開示している。この方法は、上部および下部を有するハウジング内に溶融された溶融媒体の本体を設けるステップを含み、下部はほぼ円筒形の壁部を有する。金属スクラップの供給がハウジングに加えられ、溶融された溶融媒体の供給がハウジングの上部に導入される。金属スクラップの溶融は、金属スクラップを取り込み、下部に位置するインペラの作用により、溶融された溶融媒体をハウジング内で下方に向けることにより開始され、インペラは、中央に開口部を有する平坦なリング部材を有し、該リング部材から実質的に円形のディスク部材まで延びるブレードを有する。
【0007】
米国特許4,486,228は、溶融された溶融媒体中で金属スクラップを溶融する方法を開示している。この方法は、上部および下部を有するハウジング内に溶融された溶融媒体の本体を設けるステップを含み、下部はほぼ円筒形の壁部を有する。金属スクラップの供給がハウジングに加えられ、溶融された溶融媒体の供給がハウジングの上部に導入される。金属スクラップの溶融は、下部に配置されたインペラの作用により、金属スクラップと溶融された溶融媒体とをハウジング内の下方に取り込んで開始され、インペラは、中央に開口部を有する平坦なリング部材を有し、該リング部材から実質的に円形のディスク部材に延びるブレードを有する。スクラップおよび溶融媒体は、軸方向にリング部材の開口に入り、ブレードを用いてそこから半径方向に推進される。インペラは、少なくともリング部材が協働して、ハウジング内の溶融された溶融媒体の上部への再循環を実質的に回避しながら、スクラップおよび溶融媒体を上部からインペラを通って移動させるように、円筒壁部内に配置される。
【0008】
米国特許4,437,650は、溶融された溶融媒体(molten melting media or medium)中で金属スクラップの比較的大きな浮遊ユニット(floating units)を溶融するための装置を開示しており、このユニットは、酸化膜と、固体、液体および気体の介在物とを有する。ユニットが溶融媒体に投入された後、新たに溶融された金属の層が溶融媒体に現れる。装置は、溶融媒体を加熱するためのベイと、加熱ベイから金属スクラップの大きなユニットを受け入れるための円形ベイに媒体をポンピング(pumping)するための手段とを含む。
【0009】
その開示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許4,286,985は、溶融された溶融媒体の表面に浮遊する傾向のある金属スクラップを摂取して溶融するための渦溶融システムを開示している。この方法は、溶融媒体の供給源を提供するステップと、供給源からの媒体を、その下部に出口開口を有するレセプタクル(receptacle)の上部に向けるステップとを含む。溶融媒体がレセプタクルに流入すると、媒体が下部開口から流出するにつれて、レセプタクル内に媒体の渦が生じる。レセプタクルへの溶融媒体の流れの量および下部開口のサイズは、レセプタクル内で媒体の所定のレベルが維持されるようなものである。
【0010】
米国特許6,036,745;6,074,455;6,217,823では金属スクラップの浸漬装置についても記載している。これらの特許の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許4128415号明細書
【文献】米国特許3997336号明細書
【文献】米国特許4518424号明細書
【文献】米国特許4486228号明細書
【文献】米国特許4437650号明細書
【文献】米国特許4286985号明細書
【文献】米国特許6036745号明細書
【文献】米国特許6074455号明細書
【文献】米国特許6217823号明細書
【発明の概要】
【0012】
以下、本開示の種々の詳細を要約して、基本的な理解を提供する。本要約は、本開示の広範な概要ではなく、本開示の特定の要素を特定することも、その範囲を示すことも意図していない。むしろ、本要約の主な目的は、以下に提示されるより詳細な説明の前に、本開示のいくつかの概念を簡略化した形式で提示することである。
【0013】
第1の実施形態によれば、金属スクラップ浸漬装置(metal scrap submergence device)が提供される。この装置は、耐熱性材料の壁を有する開放頂部チャンバと、チャンバの基部(base)または側壁に配置された入口と、チャンバの基部または側壁に配置された出口と、チャンバの側壁に隣接するランプ(ramp:斜面,傾斜路)とを含む。側壁はさらに、チャンバの上端縁(top edge)と係合するのに適したフック要素を含む取り外し可能な羽根を含む。
【0014】
さらなる実施形態によれば、溶融金属スクラップ浸漬システムが提供される。このシステムは、渦巻きスクラップ浸漬ウェル(vortexing scrap submergence well)を含む。渦巻きスクラップ浸漬ウェルは出口を覆うダイバータ(diverter)を含む。ダイバータは、円筒状の本体であってもよく、円筒状の本体は、本体内に形成された複数の通路によって中空内部を規定し、中空内部と連通する。中空内部は、渦巻きスクラップ浸漬ウェルの出口と流体連結(fluid communication)することができる。
【0015】
別の実施形態によれば、溶融金属スクラップ浸漬システムが提供される。このシステムは渦巻きスクラップ浸漬ウェルを含む。渦巻きスクラップ浸漬ウェルは、渦巻きスクラップ浸漬ウェルの出口を覆うダイバータを含んでいる。ダイバータはサスペンションアセンブリによって吊り下げられる。サスペンションアセンブリは、スクラップ浸漬ウェルの外側の位置に取り付けるための第1の端部と、ポスト(post)の第1の端部を受ける第2の端部とを有するアームを含む。ポストの第2の端部は、ダイバータに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の溶融金属リサイクル炉の概略図である。
図2図1の炉の従来のポンプウェルおよびチャージウェルの断面図である。
図3】本発明のチャージウェルの第1の実施形態の部分的断面における上面図である。
図4図3のチャージウェルの断面図である。
図5】本発明のチャージウェルの代替的な実施形態の断面図である。
図6】本発明のチャージウェルのさらなる代替的な実施形態の断面図である。
図7】本発明のチャージウェルの第4の代替的な実施形態の断面図である。
図8】本発明のチャージウェルの第5の代替的な実施形態の断面図である。
図9】本発明のチャージウェルの第6の代替的な実施形態の断面図である。
図10図9のチャージウェルの上面図である。
図11】チャージ壁の形状が修正されるさらなる代替的な実施形態の断面図である。
図12】代替的な羽根を含むチャージウェル構成の斜視図である。
図13】チャージウェルの出口内に挿入されたファントム(phantom)で示されるダイバータ要素を含む代替的なチャージウェルの実施形態である。
図14図13のダイバータ要素の斜視図である。
図15】チャージウェルに関連するダイバータ位置決めアームの斜視図である。
図16】ポストを有するダイバータの斜視図である。
図17図16のダイバータの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の種々の実施形態を詳細に参照し、その実施形態の例を添付の図面に示す。本発明は、図示された実施形態に関連して説明されるが、本発明をこれらの実施形態に限定することは意図されないことが理解されよう。それどころか、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得るすべての代替物、改変物、および均等物をカバーすることが意図される。
【0018】
本発明は、アルミニウムのリサイクルのような金属リサイクルプロセスにおいて典型的に使用されるタイプのスクラップ浸漬システムに関する。金属のリサイクルでは、処置及び処理(treatment and processing)のために、スクラップ片を溶融する必要がある。アルミニウムスクラップ片の大部分は、それらが形成されるシェービング、ボーリング及び冷間圧延のような機械的成形作用(mechanical shaping action)の結果として、薄肉(thin walled)である。薄肉スクラップ片の溶融は、溶融金属中への急速な浸漬が、薄肉スクラップ片が溶融金属上に浮遊するという事実によって厳しく妨げられるため、特に困難である。問題となるのは(Problematically)、従来の溶融炉での不利な(hostile)雰囲気への長時間の暴露は、極端に高い酸化損失をもたらすことである。
【0019】
軽量スクラップをインゴット(ingot)に変換するために使用される典型的な溶融操作では、溶融炉は、密閉された炉床(hearth)と、連結された開いたサイドウェル(sidewell)とを備えている。通常、サイドウェルはポンプウェル(pump well)と溶融ベイ(melting bay)とに分割される。ポンプ又は他の溶融金属の流れを誘導する装置が、溶融ベイの外部に(例えば、ポンプウェル内に)配置され、溶融金属を炉床から溶融ベイに流す。典型的には、溶融ベイは、さらに、チャージウェル(charge well)とドロスウェル(drosswell)とに分割される。金属スクラップ片は、溶融ベイ、特にそのチャージウェル成分に送り込まれる。浮遊ドロスはドロスウェル中の溶融金属の表面からすくい取られる(skimmed)。
【0020】
次に図1を参照すると、アルミニウム再生炉10が示されている。炉10は、主炉床構成要素12を含み、この主炉床構成要素12は、例えば、ガスバーナーまたはオイルバーナーを用いて、または当技術分野で公知の任意の他の手段によって、加熱される。炉床12に隣接し流体連通(fluid communication)するようにして(典型的には水没したアーチ)、主リサイクル領域が、ポンプウェル14、チャージウェル16およびドロスウェル18から構成される。図示していないが、炉床12の壁はポンプウェル14に対して開口し、ポンプウェルはチャージウェル16に対して開口し、チャージウェルはドロスウェル18に対して開口し、ドロスウェルは炉床12に対して開口して、矢印で示す循環パターンを可能にする。ポンプウェルは、当業者に公知の任意のタイプの溶融金属ポンプを含み得る。あるいは、ウェルおよびポンプは、例えば、電磁ポンプに置き換えられてもよい。溶融金属ポンプは、溶融金属を炉床12からチャージウェル16に循環させ、そこで、リサイクルされる金属のスクラップチップが溶融物の表面上に堆積される。チャージウェルはまた、所望の合金を得るために追加の金属またはフラックス(flux)を加えることができる場所でもある。チャージウェル16からの溶融金属は、ドロスウェル18に流入し、ドロスの形態の不純物は、溶融物が炉床12に戻る前に表面からすくい取られる。この特定の発明は、チャージウェル16の改良された設計に関する。
【0021】
チャージウェルは、耐熱性材料で構成された壁を含む無蓋チャンバ(open top chamber)を含むことができる。チャンバは、側壁(あるいは基部)に位置し、ポンプウェルと流体連通する入口と、それに対向する側壁に位置し、ドロス壁と流体連通する出口(しかしながら、側部出口に形成された内部導管を有するチャンバ底壁を通る溶融金属の出口は実現可能である)とを含む。一般に、チャンバの内部形態は、底部または低側壁入口、側壁に隣接して形成されたランプ(ramp)を有する底部出口として説明することができる。
【0022】
第1の実施形態によれば、ランプは、チャージウェル側壁からチャンバの中心に向かって延びるレッジ(ledge)を含むことができる。金属スクラップ浸漬装置は、入口に隣接するチャンバの基部上にランプの底縁を配置するように構成され得る。レッジは、少なくともほぼ上向きの表面(upward facing surface)を含み得る。上向きの表面は、基部に係合する第1の端部(下端)と、基部の上方に隆起した第2の端部とを含み得る。上向きの表面は、例えば、チャンバ直径の5%と33%の間の幅を有し得る。したがって、対向する2つの上向きの表面を考慮すると、全体の面積は66%であり得る。レッジはさらに、側壁と反対側の上向き表面の縁からチャンバ基部まで延び、出口を規定するのに役立つ、少なくとも実質的に水平な壁を含み得る。水平壁は内側または外側に傾斜していてもよい。あるいは、上向きの表面は、側壁に対向する縁部でチャンバへの出口を形成する内壁と係合してもよい。壁の上端は、ランプの終端(terminal edge)とほぼ同じ高さであり得る。
【0023】
さらなる実施形態によれば、ランプは、チャンバの周りを完全に360度囲み(travel)、基部から側壁まで傾斜して延びる、傾斜面(sloped surface)も含むことができ、円錐形のチャンバ基部を効果的に形成する。
【0024】
ランプは、チャンバの少なくとも180°、270°、320°、または全ての周囲を螺旋状に通過し得る。ランプ上向き表面は、約5°又は10°から15°の傾斜を有する部分を含み得る。しかしながら、チャンバ周囲の周りのランプの範囲は大きく変化し得、傾斜(slope)はランプの寸法全体にわたって変化し得ることを理解されたい。
【0025】
次に図2を参照すると、図1のポンプウェル14およびチャージウェル16が表示されている。ポンプ20は、ポンプウェル14内に配置され、溶融アルミニウムを炉床12から吸引し、それを強制的にチャージウェル16内に押し込む。より詳細には、インペラ22の回転は、溶融アルミニウムを槽(bath)24からポンプ20内に引き込み、出口26を通過させ、通路28を上昇させ、入口30を通ってチャージウェル16内に押し込む。溶融アルミニウムは、ランプ32を通ってチャージウェル16内を上昇し、内側エッジ34を通ってキャビティ36内にこぼれ、出口38を通って出る。ランプ32の前縁44は、入口30に隣接して配置され得る。
【0026】
ランプ32が傾斜していることは有益であるが、これは一定の傾斜によって達成される必要はない。むしろ、ランプ32は、最初の180度の部分40上で傾斜し、最後の約120度の部分42上で水平を維持することができる。したがって、本発明は、傾斜したランプ(sloped ramp)の全てのバージョンを包含することを意図している。同様に、本発明は、チャージウェル16の周囲のわずか45度から360度までをカバーするランプを包含することを意図している。しかしながら、180度から270度の間に延びるランプが典型的である。
【0027】
本発明は、既存のチャージウェルを改造するための構成要素として適用可能であるため、図2から、設計が、耐火材料の基部46を含み、この耐火材料の基部46がキャビティ36を上昇させて出口38のためのクリアランスを提供し、溶融金属が図1のドロスウェル18に流入することを可能にすることが、理解されよう。当業者には理解されるように、リサイクルされる金属チップは、チャージウェル16内の溶融物48の表面上に堆積される。
【0028】
次に、米国特許第6,217,823号のスクラップ浸漬装置の簡単な参照文献を参照すると、図2に示されているように、非常に商業的に成功したシステムが示されていることに留意されたい。さらに、そこに示されるシステムは、溶融アルミニウムの2万ポンド/時までの回転率(turnover)を容易にすることが見出されている。スクラップおよび所望の合金化合物の導入を達成するために溶融アルミニウムを炉床全体に循環させる炉の能力は、明らかに、その炉の経済的生産量に直接結びついている。
【0029】
炉の回転率を高めるために、(図2の)溶融金属ポンプ部品をより高い回転数で運転することができる。同様に、より大きな溶融金属ポンプを使用することができる。しかしながら、チャージウェル(図2の16)は、その中に形成される渦がより多くの空気を噴射し、その結果、溶融損失が増加するため、そのような増加した溶融金属流を十分に利用しないことが分かっている。さらに、ポンプによるチャージウェルへの溶融金属出力の流れを単純に増加させても、それがそこに形成される渦の最適な形状を変化させる可能性があるため、スクラップの浸漬を改善しない可能性があることが分かった。さらに、典型的な炉構造におけるスペースの制約のために、より高いポンプ処理能力(throughput)を利用するために、より大きな浸漬ボウルを設置するためのチャージウェル寸法を増加させる能力は、必ずしも実行可能な選択肢ではない。
【0030】
また、チャージウェル16は、その外壁に隣接して比較的「デッドゾーン(dead zone)」を有することも知られている。本明細書で使用するデッドゾーンという用語は、溶融金属がチャンバ内で回転するが、限られた部分のみが渦およびキャビティ36に入る領域を表す。デッドゾーンは、追加されたスクラップの有効な浸漬面積を減少させ、炉床を循環することができない溶融金属の量を提供し、エネルギー効率を低下させ、システムに対するBTU要求を高めるので、問題がある。
【0031】
次に、本発明の第1の実施形態について、図3及び図4を参照する。この実施形態では、スクラップ溶融装置100は、耐火材料のブロック102から構成され、耐火材料のブロック102は、既存のチャージウェル(例えば図1のチャージウェル16)の寸法に比較的近い公差はめ合い(tolerance mating)を提供するのに適したサイズで構成される。好ましくは、ブロック102は、アルミナ-シリカ耐火物または当業者に公知の他のキャスタブル(castable)耐火物のような硬化材料から構成される。本発明の好ましい形態では、鋳造体(cast body)の表面は、熱処理の前に窒化ホウ素で処理される。ブロック102は、ほぼ円筒形の側壁118を有するチャンバ116と、ランプ121を含む基部120とを含み、内壁122が中央に配置されたキャビティ123を形成し、キャビティ123は出口124および出口ダクト125に通じる。ランプ121は、チャンバ116への入口126に隣接する前縁127から再び始まる。この例では、入口126はテーパ状開口128を含む。
【0032】
例えば翼または羽根の形態で、流れを乱す(flow-disruptive)バッフル302がチャンバ116の壁に含まれる。より詳細には、複数のバッフル302がチャンバ壁の周囲に分散している。バッフルは、連続的であり得、チャンバの周囲に等間隔または不均等に間隔を置いて配置された複数のバッフルを含み得、チャンバ内の1つまたは様々な高さにあり得ることが想定される。一般に、バッフルは、チャンバ116の中心から流れる溶融金属が下方に向けられるように、下方に傾斜した下面を有してもよい。あるいは、溶融金属の流れが主にチャンバ115の壁118に対して上方に向かっているチャンバの場合、バッフルは、壁上の位置からチャンバ116の中心に近接する端部に向かって下方に傾斜することが望ましい。同様に、バッフルは、チャンバ116内で回転する溶融金属の方向にその長手方向の範囲で下方に傾斜することが望ましい。この点に関して、バッフルの所望の特徴は、溶融金属をチャンバ内で下方に駆動することである。米国特許第6,036,745号のバッフルは一例を提供する。
【0033】
次に図5を参照すると、ランプ121に内向き傾斜(inward slant)502を設けることは、ランプを上昇する際に金属の内向き折り曲げ部(inward fold)を介して混合チャンバ(mixing chamber)の壁を囲むデッドゾーンを有利に破壊するのに役立つことが分かっている。本明細書において、内向き(inward)とは、ランプがチャンバ側壁に隣接する高い縁部とチャンバの中心に近い比較的低い縁部とを有することを指す。外向き傾斜(outward slant)とは、反対方向を有するランプを指す。内向きおよび外向きは、一般に、チャンバ側壁とチャンバ中心との間の相対的位置を指すために、本開示全体を通して考慮され得る。
【0034】
次に図6を参照すると、同様に、ランプ121に外向き傾斜602を設けることは、ランプを上昇する際に、金属の外向き折り曲げ部(outward fold)を介して混合チャンバの壁を囲むデッドゾーンを有利に破壊するのに役立つことが分かっている。より詳細には、図2の装置において水平である表面126は、図5及び図6の設計においてそれぞれ内側又は外側に傾斜している。
【0035】
ランプの傾斜は、必ずしも連続的ではないことに留意されたい。さらに、領域内では傾斜し、領域内では水平のままであり得る。さらに、傾斜の程度は変化し得る。
【0036】
次に図7を参照すると、同様に、チャンバ116の側壁に、ランプ121との界面に隣接する内向き斜面(inward slope)702(収束;converging)を設けることにより、チャンバ116の外壁に隣接するデッドゾーンにおいて、有用な穏やかな乱流を提供することができると考えられる。
【0037】
図8を次に参照すると、同様に、チャンバ116の側壁に、ランプ121に隣接する外向き斜面(outward slope)802(発散;diverging) を設けることにより、チャンバ116の外壁に隣接するデッドゾーンにおいて、有用な緩やかな乱流を提供できると考えられる。さらに、図7および図8を参照すると、チャンバ116の側壁に対してランプ121に隣接する直径(diameter)の変化を与えることが有利であると考えられる。直径の変化は、チャンバの周囲全体にわたって連続的または不連続的であり得る。
【0038】
側壁の内向きおよび外向き斜面は、ランプの上方の限られた範囲にのみ延在するように示されているが、この斜面は、デッドゾーンにおいて緩やかな外乱(disturbance)を達成するために必要なだけ高く継続し得ると考えられる。同様に、壁の傾斜は、壁の範囲全体にわたって必ずしも連続的ではなく、また、その形状および/または傾斜は、必ずしも一定ではないことに留意されたい。
【0039】
図3図8を参照すると、傾斜したランプ、傾斜したチャンバ壁及びバッフルの組み合わせを利用することができることに留意されたい。
【0040】
次に図9及び図10を参照すると、ブロック102を通過してドロスウェル18に直接連通する、比較的小さなポート902を設けることが、潜在的に有利であると考えられる。ポート902は、ランプ121の最も高い縁部よりわずかに高いなど、スクラップ溶融装置内の任意の高さにあってもよい。さらに、ポート902は、チャージウェル16の壁に隣接するデッドゾーンからの溶融金属の移動を容易にし、その中に流れを生じさせることができると考えられる。加えて、ポート902は、チャンバとドロスウェルとの間の循環を改善することができ、それにより、バーナーから炉床槽への熱伝達(burner to hearth bath heat transfer)を改善し、溶融金属が高温でチャージウェルに戻ることを可能にする。これは、チャージウェルの中心に隣接して適切な渦を維持しながら、チャージウェルにおける滞留時間を減少させることができる。
【0041】
外壁デッドゾーンを減少させることを目的とした図3図8の特徴は、当業者が適切と考える任意の方法で、図9および図10の排出ポートと組み合わされ得ることが想定される。
【0042】
次に図11を参照すると、ランプとの界面に隣接するダイバータ、通路および成形側壁を含む本開示の特徴は、代替的に成形されたランプと関連して利用され得ることが実証される。特に、チャンバ基部から側壁への相対的に一定の斜面を有し、効果的に円錐形を形成する360度ランプ1002は、同様に、バッフル1302、または内向きに形成された側壁1702、またはドロスウェルおよび/またはポンプウェルに連通する通路1902を含み得る。
【0043】
次に図12を参照すると、取り外し可能な羽根1501が、スクラップ浸漬ウェル100の上面1503から吊り下げられている。羽根は、矩形などの細長い形状を有し得る。チャージウェル内の溶融金属に浸漬(immersion)するように設計された羽根の部分は、グラファイトまたはセラミックのような耐火性材料で形成され得る。フック端部1505は、鋼などの金属で形成され得る。フック端部は、チャージウェルの外部表面と係合するように成形され得る。特定の実施形態では、フックはチャージウェルから取り外し可能であり、これにより羽根1501が取り外され得る。これにより、羽根の有無にかかわらず、チャージウェルを選択的に動作させることができる。さらに、チャージウェルの1つまたは複数の壁上の複数の羽根が使用され得ることに留意されたい。
【0044】
図13および14は、ダイバータを示す。特に、スクラップ浸漬装置100は、耐火性材料のブロック2002から構成され得、耐火性材料のブロックは、既存のチャージウェルの寸法に比較的近い公差はめ合いを提供するのに適したサイズで構成され得る。ブロックは、アルミナ-シリカ耐火物または当業者に公知の他のキャスタブル耐火物のような硬化材料で構成され得る。
鋳造体の表面は、熱処理の前に窒化ホウ素で処理され得る。
【0045】
ブロック2002は、ほぼ円筒形の側壁2018を有するチャンバ2016を規定する。チャンバ2016内には、ランプ2021を含む基部が設けられている。ランプ2021は、出口2014に通じる、中央に位置するキャビティ2013を囲む。ダイバータ要素2030が出口2014を覆う。
【0046】
ダイバータは、出口2014の縁部の表面と通じるように相補的に形成されたネック領域2033を含み得る。ダイバータは、複数の通路2035を側壁2037に含み得る。通路はまた、代替的に、または追加的に上面2039に設けられてもよい。通路は、溶融金属を通路2035内に導く傾斜した入口領域2041A及び入口領域2041Bを含み得る。
【0047】
ダイバータ要素2030は、グラファイトまたはセラミックなどの耐火性材料で構成され得る。ダイバータは、その全体の質量を増加させ、チャンバ内を流れる溶融金属内の流れ(current)がダイバータを物理的に移動させないようにするために、ダイバータ内に鋳造された緻密化材料(densifying material)(例:鉛(lead))をさらに含み得る。
【0048】
あるいは、ダイバータ2030は、アーム3002を介して適所に保持されてもよい。図15図17を参照すると、アーム3002は、ダイバータ2030をスクラップ浸漬チャンバ2016内の所望の位置に配置することを可能にする。アーム3002は、ポスト3006への取り付けに適した第1の端部3004を含み得る。ポスト3006は、一端がアーム3002に固定され、対向する端部でダイバータ2030に係合する。
【0049】
アーム3002は、スクラップ浸漬チャンバの外壁3008にカップリング3010を介して取り付けられている。カップリング3010は、水平回転を提供するために、アーム3002にボルト止めされ、スリーブ3014内に受け入れられる円筒形突起3012を含み得る。細長いスロット3016と組み合わせたボルト締結は、アーム長さの長手方向の調節を可能にする。
このように、アームは、スクラップ浸漬ウェルの直径への浸透深さ(penetration depth)に関して調節可能である。これは、同様に、異なるサイズのウェルでアセンブリを使用することを可能にする。
【0050】
ポスト3006は、金属ロッド3018と耐火性シース3020とを含む。ロッド3018は、ヘッド要素3022を含み、ヘッド要素は、ダイバータ2030内のポケット3024内に受容される。耐火プラグ3026はポケット3024をシール(seal)する。
【0051】
ポスト3006は、シース(sheath)3020に圧縮力を与えるばね要素3028を含む。さらに、キャップ3030が、ばね要素3028とシース3020との間に配置される。ボルト3032がロッド3018内にねじ込まれるように受け入れられてインサート(insert)3034と係合し、ばね要素3028を圧縮してキャップ3030を介してシース3020に力を与える。キャップ3030は、ポスト/ダイバータアセンブリを渦巻きチャンバ(vortexing chamber)から取り出すために容易に把持できるようにリング部材3040を含むことができる。
【0052】
ダイバータ2030は、金属スクラップ片の浸漬を遅らせるために使用され得る。緩やかな浸漬は溶融金属の表面上の滞留時間の対応する増加をもたらす。これにより、処理流体のチャージウェルの上方の大気中への蒸発を増加させることができ、ドロスフォーム(dross foam)の形成を低減する。
【0053】
ダイバータは、ダイバータとチャンバの内壁との間の溶融金属槽の表面上に溶融金属スクラップを堆積させることによって機能する。チャンバ内に形成される渦の有効性はチャンバの中心に近づくにつれて効率が増加することが分かった。この点に関し、ダイバータとチャンバの壁との間に金属スクラップチップを堆積させるとは、スクラップ浸漬チャンバからのチップの排出を遅らせることができ、チャージウェル内の溶融金属の表面上でのより長い滞留時間を提供し、スクラップ材料が溶融金属に浸漬される前にスクラップ材料の表面から湿潤性および処理流体を蒸発させることができることが分かった。特定の実施形態では、ダイバータディスクに穴または通路を設けることが望ましい場合がある。さらに、チャージウェル内のスクラップ滞留時間を増加させる間、有孔ダイバータ(ディスクまたはドラム)は、所望の溶融金属の流量を調整するのを支援してもよい。
【0054】
例示的な実施形態は、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。明らかに、上記の詳細な説明を読んで理解すると、修正及び変更を思いつくだろう。例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲内にある限り、そのような全ての修正および変更を含むものとして解釈されることが意図される。
【0055】
本出願は、2018年3月14日に出願された米国特許出願第15/921,047号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体を参照により本明細書に明示的に援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図17