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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ガス流の脱炭酸方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/02 20060101AFI20240206BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240206BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240206BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B01D53/02
B01J20/18 B
B01J20/28 Z
F27D17/00 104G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020550133
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2019050570
(87)【国際公開番号】W WO2019186013
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】1852301
(32)【優先日】2018-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,レオネル
(72)【発明者】
【氏名】テリジョル,アレクサンドル
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505050(JP,A)
【文献】特表2010-527751(JP,A)
【文献】特開2009-222352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/02-53/12
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
F27D17/00-99/00
C01B33/20-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流の総体積に対して15体積%~60体積%の二酸化炭素(CO )を含むガス流を脱二酸化炭素する方法であって、
a)前記15体積%~60体積%の二酸化炭素(CO)を含むガス流を供給する工程、
b)前記ガス流をゼオライト凝集体に通過させる工程、及び
c)CO低減ガス流を回収する工程
を少なくとも含み、
前記ゼオライト凝集体が、少なくとも1つのクレイバインダーと少なくとも1つのゼオライトとを含み、0.02cm・g-1~0.15cm・g-1のメソ細孔容積と0.1~0.5のメソ細孔容積率とを有し、
前記ゼオライト凝集体の前記クレイバインダーが、繊維状マグネシウムクレイから選択される少なくとも1つのクレイを含み、
前記ゼオライト凝集体の前記少なくとも1つのゼオライトが、X、LSX、MSX及びYゼオライト及びそれらの混合物から選択されるフォージャサイト型ゼオライト結晶状のゼオライトであり、
前記ゼオライト凝集体の前記少なくとも1つのゼオライトが、前記凝集体の総重量に対して9.0重量%を超える酸化物である酸化ナトリウム(Na O)として表されるナトリウム含有量のナトリウム型で存在する結晶状ゼオライトである、方法。
【請求項2】
脱炭酸される前記ガス流が、前記ガス流の総体積に対して、20体積%~50体積%の二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱炭酸される前記ガス流が、前記ガス流の総体積に対して、15体積%~60体積%の含有量を有し、以下のガス:
前記ガス流の総体積に対して、20体積%~50体積%である、一酸化炭素(CO)、
前記ガス流の総体積に対して、15体積%~25体積%である、水素(H)、
前記ガス流の総体積に対して、5体積%~15体積%である、窒素(N)及び/又はアルゴン(Ar)、
前記ガス流の総体積に対して、0.5体積%~50体積%である、メタン(CH)、
0ppm(体積で、すなわちppmv)から4体積%までである、水(HO)、
80ppmv~100ppmvである、硫化水素(HS)
の1つ以上をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライト凝集体が、前記ゼオライト凝集体の総重量に対して、1重量%~30重量%の量のクレイバインダーで凝集したゼオライト結晶を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
0℃~100℃の温度、例えば周囲温度で実施される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
200kPa~400kPaの圧力で実施される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に定義されるゼオライト凝集体の、ガス流の総体積に対して15体積%~60体積%の二酸化炭素(CO )を含むガス流を脱二酸化炭素するための使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一酸化炭素ガス流が非常に多量の二酸化炭素(CO)を含むことが多い製鋼所のガス流などにおいて、二酸化炭素を含むガス流から、脱炭酸すること、すなわち、この二酸化炭素を分離することに関する。
【背景技術】
【0002】
実際のところ、ガス流、特に高含量の一酸化炭素(少なくとも10%)及び場合により硫化水素(10ppmv~5000ppmv)を含むガス流において、程度の差はあるが多くの割合、例えば15体積%~60体積%の範囲で、COを検出可能であることは既に周知である。
【0003】
過剰量のCOによって、多数の不利な点や問題さえも引き起こされる。例えば、飽和が速まることによって吸着容量が制限され、これによって、さらに頻繁に再生が必要となり、製品の老朽化が加速する。これらの多量のCOは、膜処理だけでなく、溶剤、低温蒸留システムなどを使う処理にもさらなる制限をかけることも意味する。そして、分離に非常に多くのエネルギーが消費され、非常にコストがかかる。
【0004】
より具体的な例としては、脱炭酸されるガス流として、典型的に20%~50%のCO及び20%~50%のCOを含み、場合によってはH、N、CH、HS、HOなどの少数種を含む製鋼所のガスが挙げられる。
【0005】
鉄を製造する際(他の金属を製造する際も同じく)、還元性ガスに接触するように酸化鉄を置く。この還元性ガスは、本質的にCOとHから構成される混合物であることが多い。この還元性ガスは、酸化鉄と反応し、元素鉄から、CO及びHOを生じさせる。したがって、生成されたガスは、CO、HO、CO及びHの混合物からなる。使用可能となる前に、このガスを再度CO及びHで豊富なガスにする必要がある。一つの解決法は、望ましくない成分、特に、不純物CO及びHOを、例えば選択吸着などの分離によって除去することであり得る。
【0006】
特許US3161461は、特定の溶剤を用いてガス混合物に存在する酸性ガスを分離する吸着方法を記載する。しかしながら、工業規模で溶剤の使用を実施することは難しく、溶剤の再生は非常に多量のエネルギーを必要とすることが多く、腐食及び非常に大きな環境規制をもたらすという問題を引き起こす。その結果、この方法は、費用効率が良くないことが多いため、ほとんど使われていない。
【0007】
特許US8192524は、COの体積比が10%を超えるガス流を脱二酸化炭素する方法を記載する。この方法は、少なくとも95体積%のCOを含む透過流及びCO低減ガス流を生成するために、複数のポリマー膜を含む少なくとも1つの膜ユニットを実施する。しかしながら、この方法を完全に効果的なものとし、良好な程度の分離を確保するには、数段階の膜が必要である。これは、複雑で高コストな処理が必要となり、工業規模で利用することが難しい。
【0008】
特許US4459142は、C―C10炭化水素の流れに存在するCOを分離する低温蒸留法を開示する。しかしながら、このような低温蒸留システムを用いた処理は、非常に低い温度でドライアイスの形成を扱う必要があるという問題点がある。
【0009】
他に知られている方法は、ガス流を脱二酸化炭素するために固定床吸着法を使用することである。したがって、例えば、特許US4775396は、固定吸着床を用いたPSA(圧力スイング吸着)法によって、非酸性ガス(N、H及びCHなど)に存在する二酸化炭素を選択的に吸着することを記載する。この固定吸着床には、亜鉛、希土類、水素及びアンモニウムから構成される群から選択される少なくとも1つのカチオン種を少なくとも20%含むとともにアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンを最大で80%含む、フォージャサイト型ゼオライトアルミノシリケートが含まれる。
【0010】
他に知られている方法は、TSA(温度スイング吸着)型の方法であり、少量のCOを含む流れを脱炭酸するのに概して適切である。
【0011】
特許US5531808は、COよりも極性の低いガスを大部分に含むガス流を、20℃よりも高い温度で、Si/Al原子比率が約1.15よりも低いX型ゼオライトの吸着床を通過させることによる脱炭酸について記載している。
【0012】
特許US7608134は、特にCOで汚染された空気におけるガス流を脱二酸化炭素するために、Si/Al原子比率が1.0~1.15であり、高度にナトリウム交換され、20%の最大結合材料比率で凝集したX型ゼオライトの使用を提案している。
【0013】
特許US6143057は、0.6μmよりも小さいサイズの微粒子状ゼオライトとマクロ細孔不活性バインダーから構成される複合吸着剤を記載する。これらの複合吸着剤は、ガス混合物に存在するガス状成分を分離するのに使用され、特に空気中に存在する窒素又はCOを分離するのに使用される。
【0014】
特許US6537348B1は、50mmHg(67mbar)のCOを含むガスを脱炭酸するために、0.5~3.0mmのNaLSX又はLiLSXビーズを使用することを開示している。
【0015】
特許US5906675には、空気の前処理精製方法が提案されている。この方法は、PSAにおいて機能し、少なくとも2つの吸着剤(1つは水及び少量のCOを除去するためのアルミナ化合物であり、もう1つは残りのCOを吸着するためのゼオライトから構成される)を含む、三床吸着アレイを用いる。筒1及び筒2をPSA形態で操作する一方で、3つ目の筒を加熱によって再生する。そして、筒2及び筒3をPSA形態で操作する一方で、筒1を加熱によって再生する。以下同様に続く。
【0016】
特許US7309378は、H/CO型又はH/N型合成ガスの精製方法を記載する。この方法は、CO及び他の不純物を、NaLSX型吸着剤を用いて除去した後、再生工程中に脱着し、温度上昇(TSA)及び/又は減圧(VSA(体積スイング吸着:Volume Swing Adsorption)又はPSA)によって実施され得る。
【0017】
しかしながら、COを多く含むガス流を脱二酸化炭素することは、特に、精製されるガス流が高濃度のCOを含む場合に難しい。この理由は、使用された分離システムが、高いCO分離容量及び選択性に加えて十分な再生能を有する必要があるためである。
【0018】
特許US6027545は、CO及びHから構成される(不純物CO、HO及びCHを含む)ガスを用いて、CO(及び少量のCO)を吸着して高純度のHを生成するPSAユニットで、直接還元鉄を生成する方法を説明する。ただし、使用した固体は明記されていない。
【0019】
国際出願WO2017/042466は、高度にカルシウム交換され、繊維状マグネシウムクレイで凝集したA型分子ふるいを用いた、天然ガスの脱炭酸方法を提案している。しかしながら、この方法は、天然ガス中において少量のCO、典型的に2体積%未満のCOを除去する時のみに好適である。
【0020】
ゼオライトと並んで、他の固体もガス流を脱二酸化炭素するのに試されてきた。例えば、特許US8298986に記載されるようなシリカゲルなどである。しかしながら、効果的なシリカゲルを製造する費用は比較的高いため、容量及びCO吸着選択性が高い吸着剤へのニーズは依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許第3161461号明細書
【文献】米国特許第8192524号明細書
【文献】米国特許第4459142号明細書
【文献】米国特許第4775396号明細書
【文献】米国特許第5531808号明細書
【文献】米国特許第7608134号明細書
【文献】米国特許第6143057号明細書
【文献】米国特許第6537348号明細書
【文献】米国特許第5906675号明細書
【文献】米国特許第7309378号明細書
【文献】米国特許第6027545号明細書
【文献】国際公開第2017/042466号
【文献】米国特許第8298986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、多量のCO、典型的に、脱炭酸されるガス流の総体積に対して15体積%を超えるCOを含むガス流を脱二酸化炭素する方法を提供することである。
【0023】
本発明のもう一つの目的は、ガス流を脱二酸化炭素することにより、ガス流の総体積に対して、CO2の最終含有量が5体積%未満、好ましくは3体積%未満、よりさらに好ましくはCO2の最終含有量が数体積ppm程度となる方法を提案することである。
【0024】
もう一つの目的は、多量のCO2、脱炭酸されるガス流の総体積に対して、典型的に15体積%~60体積%、実際に20体積%~50体積%、例えば25体積%~40体積%であるCO2を含むガス流を脱二酸化炭素する方法を提案することである。この方法によって、このガス流の総体積に対して、COの最終含有量が5体積%未満、好ましくは3体積%未満、よりさらに好ましくはCOの最終含有量が数体積ppm程度となる。
【0025】
もう一つの目的は、効果的で経済的であり、費用効率の高い工業操作、特にエネルギー費用の減少及び選択性向上に合致する手段を実施する、ガス流の脱炭酸方法を提案することである。
【0026】
他の技術的課題は、以下の本発明の記載において見られるであろう。驚くべきことに、これらの提示された目的は、以下に詳細が記載される本発明の方法により、全て又は少なくとも部分的に達成されることが発見されている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、第一の態様によると、本発明は、ガス流を脱二酸化炭素する方法であって、
a)ガス流の総体積に対して15体積%~60体積%の二酸化炭素を含むガス流を供給する工程、
b)前記ガス流をゼオライト凝集体に通過させる工程、及び
c)CO低減ガス流を回収する工程を少なくとも含み、
前記ゼオライト凝集体が、少なくとも1つのバインダーと少なくとも1つのゼオライトとを含み、0.02cm・g-1~0.15cm・g-1のメソ細孔容積と0.1~0.5、好ましくは0.15~0.45のメソ細孔容積率とを有する、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の凝集体状のゼオライト吸着剤は、マクロ細孔、メソ細孔及びミクロ細孔を含む。「マクロ細孔」は、50nmより大きい開口を有する細孔であると理解される。「メソ細孔」は、2nm~50nm(境界値を含む)の開口を有する細孔であると理解される。「ミクロ細孔」は、2nm未満、典型的に厳密には0よりも大きく2nm以下の開口を有する細孔であると理解される。
【0029】
本発明の記載において、「Vma」は、吸着剤のマクロ細孔容積をcm.g-1で示し、「Vme」は、吸着剤のメソ細孔容積をcm.g-1で示し、「Vmi」は、吸着剤のミクロ細孔容積をcm.g-1で示す。
【0030】
マクロ細孔容積Vma及びメソ細孔容積Vmeは、水銀圧入ポロシメトリによって測定される。マイクロメリティックス(Micromeritics)社によるAutopore(R)9500などの水銀圧入ポロシメータを、マクロ細孔及びメソ細孔に含まれる細孔容積の分布を分析するために使用する。
【0031】
実験方法は、標準ASTM D4284-83を参照する装置の操作マニュアルに記載されており、予め計量した吸着剤試料(測定される凝集体状ゼオライト吸着剤)(既知の強熱減量)をポロシメータのセルに配置し、事前に脱気(30μmHgの排気圧で少なくとも10分間)した後、所与の圧力(0.0036MPa)でセルを水銀で満たし、段階的に圧力を400MPaまで高め、試料の細孔ネットワーク内に徐々に水銀を入り込ませることからなる。この圧力は、少なくとも15段階かけて0.2MPaとし、0.1MPaずつ1MPaまで、0.5MPaずつ10MPaまで、2MPaずつ30MPaまで、5MPaずつ180MPaまで、最終的に10MPaずつ400MPaまで増加させる。
【0032】
印加された圧力と細孔入口閾値の特徴的な寸法(見かけの細孔径に相当する)との関係は、ヤング・ラプラス方程式を使用することと、円筒状の細孔開口であり、水銀と細孔の壁との接触角が140°であり、水銀表面張力が485ダイン/cmであると仮定することによって確立される。各圧力段階Piで導入される水銀の体積の増加ΔViを記録する。これにより、その後、印加された圧力V(Pi)の関数として、又は見かけの細孔径V(li)の関数として、導入された水銀の累積体積をトレースすることが可能となる。
【0033】
水銀が全ての粒子間空間を満たす値を0.2MPaに設定し、この値を超えると、吸着剤の細孔に水銀が入り込むとみなす。吸着剤のマクロ細孔容積Vmaは、0.2MPa~30MPaの圧力で導入された水銀の累積体積として定義され、50nmを超える見かけの直径を有する細孔に含まれる容積に相当する。吸着剤のメソ細孔容積Vmeは、30MPa~400MPaの圧力で導入された水銀の累積体積であると定義される。
【0034】
水銀圧入によって細孔容積を測定する方法は、細孔容積の入手を可能としないため、水銀圧入によって測定される総細孔容積Vtotは、マクロ細孔容積Vma及びメソ細孔容積Vmeの合計に相当する。
【0035】
本記載では、ゼオライト吸着剤のマクロ細孔容積Vma及びメソ細孔容積Vme並びにそれらの合計(総細孔容積Vtot)は、cm.g-1で表されるため、試料の無水等価物の重量、すなわち、強熱減量で調整されたこの吸着剤の重量に関して、水銀圧入ポロシメトリによって測定される。
【0036】
メソ細孔容積率(MVF)は、メソ細孔容積Vmeを総細孔容積で割った商であり、すなわち、MVF=Vme/(Vma+Vme)である。
【0037】
本発明で使用される「脱炭酸」とは、COを含むガス流の除去処理として理解される。「除去」とは、処理完了時に、ガス流がもはやCOを含まないか、又はこのガス流の総体積に対して、5体積%未満、好ましくは3体積%未満の量のCOを含み、より好ましくはCOの最終含有量が数体積ppm程度であることを意味するとして理解される。「CO低減」ガス流とは、上記したような処理完了時のガス流である。
【0038】
本発明の方法は、このガス流の総体積に対して、15体積%~60体積%、好ましくは20体積%~50体積%、より好ましくは25体積%~40体積%の二酸化炭素(CO)を含むガス流の脱炭酸に特に適している。
【0039】
本発明の方法の一実施形態によると、CO低減ガス流は、概して数ppmv~10%、好ましくは0.01%~5%、典型的に2~4%の量のCOを含むが、該当用途によっては、より高い値やより低い値を得ることができる。
【0040】
本発明の方法は、硫化水素(H2S)を、例えば10ppmv~5000ppmvの濃度で含むガス流の脱炭酸にも特に適する。
【0041】
このようなCO高含量のガス流は、非常に多くの産業分野に存在し、特に以下のガスにおいて、見つけることができる。COを例えば50%まで含み得るバイオガス、ガス流の総体積に対して、ガス流が例えば10体積%~50体積%のCO含有量を有し得る製鋼所における、燃焼ガス、COを50%まで含み得る天然ガス、これに加えて、例えば炭素のガス化によって生じるとともに約20%のCOと約20%~50%のCOを含むガスなどの合成ガス、である。ここでは、CO高含量のガス流の中でも、最も一般的なガス流のみを引用する。
【0042】
したがって、本発明の方法に最も適したガス流は、CO含有量が、ガス流の総体積に対して15体積%~60体積%、好ましくは20体積%~50体積%、より好ましくは25体積%~40体積%、さらに好ましくは約35体積%であるガス流である。
【0043】
これらの特に適したガス流は、好ましくは以下のガスを1つ以上含む。
【0044】
一酸化炭素(CO)、このガス流の総体積に対して、概して20体積%~50体積%、より概して30体積%~45体積%であり、典型的に約40体積%である。
【0045】
水素(H)、このガス流の総体積に対して、概して15体積%~25体積%であり、典型的に約20体積%である。
【0046】
窒素(N)及び/又はアルゴン(Ar)、このガス流の総体積に対して、概して5体積%~15体積%であり、典型的に約10体積%である。
【0047】
メタン(CH)、このガス流の総体積に対して、概して0.5体積%~50体積%、好ましくは1体積%~20体積%、さらにより好ましくは1体積%~10体積%、典型的に約1体積%~2体積%である。
【0048】
水(HO)、概して数ppm(体積で、すなわちppmv)から4体積%まで、典型的に約3体積%である。
【0049】
硫化水素(HS)、概して80ppmv~100ppmvである。
【0050】
本発明の方法に使用されるゼオライト凝集体は、バインダー、好ましくはクレイバインダーで凝集したゼオライトの結晶を典型的に含む。クレイバインダーの量は、ゼオライト吸着剤の総重量に対して、概して1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%である。
【0051】
好適な態様によれば、本発明の方法に使用されるゼオライト凝集体のクレイバインダーは、マグネシウムクレイ類から選択され、典型的にマグネシウムクレイ及び繊維状マグネシウムクレイである、少なくとも1つのクレイを含むことが好ましい。「繊維状マグネシウムクレイ」とは、マグネシウムを含む繊維状クレイであり、好ましくはホルマイトであり、ホルマイトの主要な代表例がセピオライト及びアタパルジャイト(又はパリゴルスカイト)であると理解される。セピオライト及びアタパルジャイトは、本発明の内容において好ましいホルマイトである。
【0052】
さらに、ゼオライト吸着剤材料は、ホルマイトファミリーに由来する1つ以上のクレイのみを含むバインダーを有することが好ましい。別の実施形態によると、バインダーは、少なくとも1つの繊維状マグネシウムクレイ、例えばホルマイトと、少なくとも1つの他のクレイ、例えばモンモリロナイトから選択されるクレイ(例えばベントナイト)とから構成されるクレイの混合物を含む。別の好ましい実施形態によると、バインダーは、少なくとも1つのホルマイトを、バインダーの総重量に対して少なくとも50重量%含むことが好ましい。好ましいクレイの混合物は、セピオライト/ベントナイト混合物及びアタパルジャイト/ベントナイト混合物であり、より好ましくはアタパルジャイト/ベントナイト混合物であり、最も好ましくは、これらの混合物に、ホルマイト(セピオライト又はアタパルジャイト)がバインダーの総重量に対して少なくとも50重量%存在する。
【0053】
上記に定義したゼオライト凝集体のこの少なくとも1つのゼオライトは、結晶状ゼオライトであり、好ましくはフォージャサイトゼオライト結晶であり、例えば、ゼオライトX、LSX、MSX、Y及びそれらの混合物から選択されるゼオライト結晶である。ゼオライト結晶は、好ましくはナトリウム型として存在し、概してナトリウム含有量が、凝集体の総重量に対して9.0重量%を超える酸化物である酸化ナトリウム(NaO)として表される。上記のゼオライトは、全てSi/Al原子比率が1~3(境界値を含む)である。
【0054】
ゼオライト結晶の量は、吸着剤の総重量に対して、概して70重量%~99重量%、好ましくは80重量%~95重量%である。
【0055】
上記に定義したゼオライト凝集体は、当業者に周知の1つ以上の添加剤及び/又は充填剤をさらに含み得、例えば、細孔形成剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、一般的な補強剤、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー(R)繊維などの繊維、カーボンナノチューブ(NTC)、コロイド状シリカ、ポリマー、織物などである。添加剤及び/又は充填剤は、本発明の範囲内で使用可能なゼオライト吸着剤材料の総重量に対し、最大10重量%、好ましくは最大5重量%を占める。
【0056】
既に示されたように、本発明の脱炭酸方法に使用可能なゼオライト吸着剤は、非常に特定の細孔プロファイルを有し、以下の特徴を有する。
【0057】
メソ細孔容積が0.02cm.g-1~0.15cm.g-1(<50nm)Hgである。
【0058】
メソ細孔容積率が0.1~0.5であり、好ましくは0.15~0.45である。
【0059】
本発明の方法に使用可能なゼオライト凝集体は、当業者に知られているいずれの形状でも使用でき、スパン糸、ビーズ、三葉状(trilobe)などが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、吸着剤をビーズ状で使用することが好ましく、0.5mm~5mm、好ましくは1mm~3mm、より好ましくは1.6mm~2.5mmのサイズのビーズであることがより好ましい。したがって、凝集体ゼオライト吸着剤材料は、好ましくは、押出、圧縮、造粒機台部上や造粒機ドラム上の凝集体、霧化などの当業者に知られている全ての技術によって形成される。
【0060】
この吸着剤ゼオライト凝集体は、当業者に周知の技術で得られ、特に、ゼオライト結晶を、1つ以上のクレイと、場合によっては凝集体用及び形成用の添加剤及び他の助剤とで、凝集体とすることによって得られる。本発明の方法で使用されるゼオライト凝集体の特定の細孔プロファイルは、当業者に周知の従来技術によって得られ、例えば、ゼオライト凝集体の焼成中に、燃焼によりメソ細孔を作り出すのに好適な1つ以上の造孔剤(porogenic agent)を導入することによって得られる。
【0061】
上記のゼオライト凝集体は、単独で、又は1つ以上の他のゼオライト凝集体及び/又は他の吸着剤の混合物と一緒に使用され得る。例えば、上記のゼオライト凝集体は、1つ以上の積層された床、交互の床又は連続した床に使用され得る。例示を目的とし、限定するものではないが、既に定義したゼオライト凝集体と、ガス流を乾燥させるために上流に、1つ以上の活性アルミナ又は他のゼオライト凝集体とを一緒に使うことが可能である。
【0062】
したがって、本発明の方法によると、多量のCO、特に、COが豊富な流れに存在する多量のCOを、上記に定義したような凝集体ゼオライト吸着剤を用いて除去することが可能になる。このゼオライト吸着剤の特徴は、強いCO親和性及び速い吸着速度をもたらす。
【0063】
好適な実施形態によると、本発明の方法は、従来及び周知の吸着技術、特に体積、圧力、温度、体積及び圧力、又は圧力及び温度によって調節される吸着技術を実施する。これらの技術は、英語の頭字語で、それぞれVSA、PSA、TSA、VPSA及びPTSAとして、より良く知られている。特に、とりわけ製鋼所のガスなどのCO及びCOが豊富なガスを脱炭酸するために、好ましくはVSA、VPSA、ESA又はPTSA技術によって、さらに好ましくはVSA、PSA又はVPSA技術によって、本方法を使用する。
【0064】
本発明の方法は、当業者に周知の温度及び圧力条件下で実施され得る。
【0065】
典型的には、本発明の方法は、0℃~100℃、好ましくは0℃~80℃、さらに好ましくは10℃~60℃、典型的に20℃~50℃の温度、例えば周囲温度で、実施され得る。
【0066】
本発明の方法において印加される圧力もまた、大きく変動し得る。しかしながら、概して200kPa~400kPaの圧力、より好ましくは約300kPaの圧力で、操作することが好ましい。
【0067】
本発明の方法は、当業者に知られている各種処理反応装置で実施できる。この処理反応装置は、吸着/再生サイクルを実施するのに、特に温度及び圧力に関して上記に定義した操作条件に耐え得る、典型的には、VSA、PSA、TSA、VPSA及びPTSS型である。非制限例としては、反応装置、充填筒又は他の筒、管型反応装置などが挙げられる。本発明の方法は、上記に定義した反応装置の1つ以上において実施できる。この反応装置は、直列に又は並列に、いずれの好適な配置においても、垂直に及び/又は水平に置くことができる。例えば、吸着段階用に、1つ以上の筒反応装置を並列に置き、再生段階用に、1つ以上の筒反応装置を並列に置くことができる。
【0068】
本発明における脱炭酸方法において、脱炭酸されるガス流を入れる前に、例えばアルミナの床上でこの脱炭酸されるガス流を乾燥させる工程を設けることも可能であり、好都合であることが多い。
【0069】
本発明はまた、ガス流の脱炭酸のために、上記に定義したように、ゼオライト凝集体を使用することに関する。すなわち、このゼオライト凝集体は、既に定義したように、少なくとも1つのバインダーと少なくとも1つのゼオライトを含み、メソ細孔容積が0.02cm.g-1~0.15cm.g-1であり、0.1~0.5、好ましくは0.15~0.45のメソ細孔容積率とを有する。
【0070】
したがって、ゼオライト凝集体は、バインダー、好ましくはクレイバインダーを、ゼオライト吸着剤の総重量に対して、概して1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%の量で含む。
【0071】
既に示されたように、このクレイバインダーは、好ましくは、マグネシウムクレイ類から選択され、典型的にマグネシウムクレイ及び繊維状マグネシウムクレイであり、セピオライト及びアタパルジャイト(又はパリゴルスカイト)から選択される、少なくとも1つのクレイを含み、場合によっては、混合物中に、例えばモンモリロナイトから選択される少なくとも1つの他のクレイ(特にベントナイト)をともに含む。バインダーがクレイ混合物である場合、バインダーは、少なくとも1つのホルマイトを、バインダーの総重量に対して少なくとも50重量%含むことが好ましい。好ましいクレイの混合物は、セピオライト/ベントナイト混合物及びアタパルジャイト/ベントナイト混合物であり、より好ましくはアタパルジャイト/ベントナイト混合物であり、最も好ましくは、これらの混合物に、ホルマイト(セピオライト又はアタパルジャイト)がバインダーの総重量に対して少なくとも50重量%存在する。
【0072】
ゼオライト凝集体のゼオライト結晶は、好ましくはフォージャサイトゼオライト結晶であり、例えば、X、LSX、MSX、Yゼオライト及びそれらの混合物から選択されるゼオライト結晶である。ゼオライト結晶は、好ましくはナトリウム型として存在し、概してナトリウム含有量が、凝集体の総重量に対して9.0重量%を超える酸化物である酸化ナトリウム(NaO)として表される。上記のゼオライトは、全てSi/Al原子比率が1~3(境界値を含む)である。
【0073】
ゼオライト結晶の含有量は、吸着剤の総重量に対して、概して70重量%~99重量%、好ましくは80重量%~95重量%である。
【0074】
上記に定義したゼオライト凝集体は、当業者に周知の1つ以上の添加剤及び/又は充填剤をさらに含み得、例えば、細孔形成剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、一般的な補強剤、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー(R)繊維などの繊維、カーボンナノチューブ(NTC)、コロイド状シリカ、ポリマー、織物などである。添加剤及び/又は充填剤は、本発明の範囲内で使用可能なゼオライト吸着剤材料の総重量に対し、最大10重量%、好ましくは最大5重量%を占める。
【0075】
本発明の方法に使用可能なゼオライト凝集体は、既に示されたように、当業者に知られているいずれの形状でもあり得る。
【0076】
上記のゼオライト凝集体は、単独で、又は1つ以上の他のゼオライト凝集体及び/又は他の吸着剤の混合物と一緒に使用され得る。例えば、上記のゼオライト凝集体は、1つ以上の積層された床、交互の床又は連続した床に使用され得る。例示を目的とし、限定するものではないが、既に定義したゼオライト凝集体と、ガス流を乾燥させるために上流に、1つ以上の活性アルミナ又は他のゼオライト凝集体とを一緒に使うことが可能である。
【0077】
ガス流、特に、処理されるガス流の総体積に対して二酸化炭素(CO)を15%~60%(体積)、好ましくは20%~50%、さらに好ましくは25%~40%含むガス流を脱二酸化炭素するために、上記に定義したゼオライト凝集体を使用することは、多くの利点がある。
【0078】
したがって、本発明のゼオライト吸着剤は、特に、上記の特定の細孔プロファイルを有するために、容量が非常に大きく、選択性も非常に高いことが認められる。
【0079】
さらに、本発明の特許請求の範囲に記載されている利用において、ゼオライト吸着剤は、寿命が相当に魅力的であり、特に、従来知られている他の脱炭酸システムの大部分に認められる寿命よりも長い。
【0080】
機械強度と吸着選択性及び吸着容量との両方に関して、このように特性が優れているおかげで、本発明の方法で使用されるゼオライト凝集体は、サイズに関して非常に小型で、エネルギー使用に関してはるかに費用効率が高い脱炭酸ユニットを作り出すことが可能である。
【0081】
さらに、本発明の使用によって、従来知られているものと比較して、吸着時間が比較的短くなることが認められ、例えば、吸着時間が5秒程度~10分、好ましくは5秒~4分、典型的に10~60秒であることができる。
【0082】
別の非常に興味深い利点は、本発明のゼオライト凝集体によって、従来記載されている他の脱炭酸システムに必要とされるよりも少なく、真空条件下の再生工程を実施することができるという事実である。
【0083】
したがって、処理完了時のガス流のCO濃度を、5体積%近くに、さらに3体積%に、さらにわずか数ppmvにすることが容易にできる。
【0084】
理論に制約されるわけではないが、上記のゼオライト凝集体の使用によって、COの拡散が高速になり、物質移動前線が非常に狭くなる。
【0085】
本発明の方法に使用され得るゼオライト凝集体は、さらに、汎用性が非常に高い製品となることが示されており、したがって、非常に広い用途に使用され、特に、例えば、乾燥、脱炭酸、脱硫における操作などの液体又は気体の炭化水素分野において、又は、例えば、空気の脱炭酸、窒素/酸素分離などの操作などの産業ガス分野において、使用され得る)。
【0086】
分析方法
ゼオライト凝集体の化学分析
本発明の方法に使用可能なゼオライト複合体の元素化学分析は、当業者に知られている様々な分析技術によって実施し得る。これらの技術の中でも、例えば、ブルカー(Bruker)社によるTigerS8分光器の波長分散型分光器(WDXRF)における標準NF EN ISO 12677:2011に述べられているような蛍光X線化学分析の技術がある。
【0087】
蛍光X線は、試料の元素組成を明らかにするために、X線領域で、原子のフォトルミネセンスを用いた非破壊スペクトル技術である。原子の励起は、通常一般的には、X線ビームによって又は電子との衝撃によって実施され、原子が基底状態に戻ると、特定の放射線を生じさせる。各酸化物を校正した後、従来の方法において、0.4重量%未満の測定不確実性が得られる。
【0088】
蛍光X線法は、元素の化学的組合せにほとんど依存しないという利点があり、定量的及び定性的の両方で正確な決定を提供する。各酸化物SiO及びAlに加えてNaOを校正した後、従来の方法において、0.4重量%未満の測定不確実性が得られる。
【0089】
他の分析方法は、例えば、原子吸光法(AAS)及び高周波誘導プラズマによる原子発光法(ICP-AES)によって例示され、例えば、パーキンエルマー(Perkin Elmer)社4300DV型装置において、標準NF EN ISO21587-3又はNF EN ISO21079-3に記載される。
【0090】
上記の元素化学分析によって、ゼオライト凝集体に使用されたゼオライトのSi/Al原子比率を確かめることと、この凝集体のSi/Al原子比率を確かめることの両方が可能となる。本発明の記載において、Si/Al原子比率の測定不確実性は±5%である。ゼオライト凝集体に存在するゼオライトのSi/Al原子比率の測定は、固相ケイ素核磁気共鳴(NMR)分光法によってもまた測定可能である。
【0091】
X線回折による定性分析及び定量分析
ゼオライト吸着剤材料のゼオライト含有量は、当業者に知られている方法によって、X線回折分析(DRx)によって求められる。この同定は、ブルカー(Bruker)社のDRX装置を用いて、実施できる。
【0092】
この分析により、ゼオライト吸着剤材料に存在する異なるゼオライトを同定することが可能となる。この理由は、それぞれのゼオライトが、回折ピークの位置と相対強度によって定義される特有の回折図形を有するためである。
【0093】
ゼオライト吸着剤材料は、粉砕後に、単純な機械的圧縮によって試料ホルダー上に広げて平滑化される。
【0094】
ブルカー(Bruker)社のD5000装置において実施された回折図形を得るための条件は、以下である。
【0095】
40kV、-30mAで用いられた銅管球
スロットのサイズ(発散、拡散及び分析)=0.6mm
フィルタ:Ni
試料回転装置:15rpm-1
測定範囲:3°<2θ<50°
ステップ:0.02°
ステップごとのカウント時間:2秒
回折図形の解釈は、EVAソフトウェアを用いて得られ、ICDD PDF―2データベース(2011年公開)からゼオライトが同定される。
【0096】
ゼオライトの重量分率量は、ブルカー(Bruker)社によるD5000装置におけるDRX分析によって測定される。その後、ゼオライトの重量分率量は、ブルカー社のTOPASソフトウェアを用いて求められる。
【0097】
本発明は、以下の実施例を踏まえると、より良く理解されることになる。以下の実施例は、単に例示目的に提供され、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例
【0098】
以下の例は、異なる吸着剤を使用して、VPSA型の方法によって、COが豊富なガス流に含まれるCOの吸着試験を示す。
【0099】
試験した吸着剤を以下に一覧とする。
【0100】
試料a:株式会社KD(KD Corporation)によるA2AW(R)シリカゲル。2~5mmのサイズのビーズ状である。
【0101】
試料B:メソ細孔容積が0.065cm-1で、メソ細孔容積率が0.31であるゼオライト凝集体。約20%のアタパルジャイトバインダー及び約80%のSi/Al比1.19のFAU型ゼオライトを含む。ゼオライト凝集体は、粒度分布が1.6~2.5mmのビーズ状である。
【0102】
試料C:試料Bに類似したゼオライト凝集体であるが、凝集体バインダーがセピオライトである。
【0103】
パイロット設備の吸着筒の投入量は、各試料で同じであり、379gである。吸着パイロットの筒は、直径が2.2cmであり、高さが2mである。筒内の投入量の高さは、各試料の密度によって、試料ごとに異なる。
【0104】
試料Aの高さ:1.45m
試料Bの高さ:1.59m
試料Cの高さ:1.49m
吸着筒に供給されるガス混合物の体積組成は、CO35%、CO35%、N10%及びH20%である。供給流速を、温度40℃及び圧力300kPaで、8NL.min-1及び16NL.min-1に設定する。
【0105】
吸着工程完了後、圧力を20~30kPaの真空度に減圧しながら、体積組成がCO約62%、CO2.7%及びN2が100%の残部であるガスを用いた、真空下での50秒のパージ工程を含む再生を100秒間行う。
【0106】
実施例1
シリカゲルとゼオライト凝集体の違いを検討するために、試料A及び試料BのCO総吸着容量を比較する。筒に供給されるガス混合物は、上記したとおりである。供給流速を、温度40℃及び圧力300kPaで、8NL.min-1に設定する。既に示されたように、各試料に同量の吸着剤379gを使用する。
【0107】
試料がCOで完全に飽和した時、すなわち、流入するガス流と流出するガス流の構成成分濃度が同じになる時、吸着段階を停止する。各試料の完全な飽和を得るために各試料に必要な吸着時間は、以下である。
【0108】
試料A:450秒
試料B:1055秒
CO体積濃度が0.1%に達する破過時間は、各試料において以下である。
【0109】
試料A:63秒
試料B:747秒
これらの結果によって、同量では、試料B(本発明によるゼオライト凝集体)のCO総吸着容量は、試料A(シリカゲル、比較例)に認められるCO総吸着容量の2倍を超えることが明らかに示される。破過開始時に吸着を停止する場合、試料Bの性能は、試料Aの性能よりも約12倍良好である。
【0110】
同量の吸着剤を用いた場合、試料B(本発明によるゼオライト凝集体)を使用することによって、シリカゲルを使用する場合よりもはるかに長時間の使用が可能となることが、この例によって明らかに示される。さらに、シリカゲルではなくゼオライト凝集体を使用することによって、吸着ユニットをさらに小型化できる。これにより、投資費用及び操作費用の両方を減少させることが可能となる。
【0111】
実施例2
本実施例は、実施例1と同じ操作条件下で、シリカゲルと分子ふるいの違いを検討するために、試料A及び試料CのCOの動的吸着容量を比較する。供給流速を、温度40℃及び圧力300kPaで、16NL.min-1に設定する。使用した各試料量は、379gである。
【0112】
流出するガス流のCO体積濃度が2.6%(破過濃度)に達すると、吸着段階を停止する。
【0113】
吸着工程完了後、圧力を20kPaの真空度に減圧しながら、体積組成がCO約62%、CO2.7%及びN100%の残部であるガスを用いた、真空下での50秒のパージ工程を含む再生を100秒間行う。各試料の安定した破過時間に達するには、吸着/脱着サイクルを15回実施する。
【0114】
CO体積濃度が2.6%に達する破過時間は、各試料において以下である。
【0115】
試料A:15秒
試料C:38秒
これらの結果によって、明らかに以下が示される。等量において試料C(本発明によるゼオライト凝集体)の性能が試料A(シリカゲル、比較例)よりも2.5倍良好である。これにより、同量の吸着剤を用いた場合、ゼオライト凝集体を使用することで、再生サイクル数が減少する可能性があるため、シリカゲルを用いた時よりも使用時間が長くなる。
【0116】
実施例3
本実施例は、実施例1と同じ操作条件下で、シリカゲルと分子ふるいの違いを検討するために、試料A及び試料CのCOの動的吸着容量を比較する。供給流速を、温度40℃及び圧力300kPaで、16NL.min-1に設定する。使用した各試料量は、379gである。シリカゲル及びゼオライト凝集体の違いを検討するために、試料A及び試料Cそれぞれの再生が比較される。吸着筒に入るガス混合物の体積組成は、CO35%、CO35%、N10%及びH20%である。供給流速を、温度40℃及び圧力300kPaで、8NL.min-1に設定する。吸着剤量は各試料で同じであり、379gである。
【0117】
CO体積濃度が2.6%(破過濃度)に達する時、吸着段階を停止する。吸着工程完了後、圧力を特定の真空度に減圧しながら、体積組成がCO約62%、CO2.7%及びNが100%の残部であるガスを用いた、真空下での50秒のパージ工程を含む再生を100秒間行う。上述の特定の真空度とは、各試料においてCO2.6%の出力体積濃度を得るのに36秒という同じ破過時間(多数のサイクル後に安定)を得るために、試料によって異なる。各試料の安定した破過時間に達するには、吸着/脱着サイクルを15回実施する。
【0118】
各試料の真空度は、以下である。
【0119】
試料A:20kPa
試料C:40kPa
これらの結果によって、以下が明らかに示される。等量の吸着剤及び同一の吸着性能では、試料C(本発明のゼオライト凝集体)に必要な真空量は、試料A(シリカゲル、比較例)に必要な真空量の半分である。これにより、ゼオライト凝集体(試料C)の使用によって、再生中の操作費用が減少可能となる。